演 「思春期の光と影」
著者 町沢 静夫
雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要
巻 6
ページ 1‑11
発行年 2006
出版者 東京家政大学附属臨床相談センター
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010029/
東京家政大学附属臨床相談センター新棟設立記念講演
「思春期の光と影」
町 沢 静 夫
私は主に思春期・青年期を治療・研究の対象と してきました。元々、精神分裂病を研究していた のですが、1983年の渡米をきっかけにボーダーラ イン研究にも携わるようになりました。当時のア メリカは人格障害研究が盛んで、Kernberg, Otto F.
やMahler, Margaret S.、 James F. Mastersonなどが
アメリカの学会を牛耳っていました。その頃の私 は普通の人と同じように、ボーダーラインを神経 症と分裂病の真ん中だと思っていたわけですから、
今からみたら笑いものであります。アメリカに行 ってみてすぐにわかったことですが、ボーダーラ インというものは人格障害という独自のものであ って、何かと何かの真ん中ということはないので す。従ってボーダーラインという言葉は不適切な わけであります。しかし、そうかといってそれに 代わる言葉が見つかりません。例えば、不安定人
格障害と言ってみたところで、みな不安定なので すからこれも妥当ではありません。もっとも ICD−10では、不安定な人格障害とボーダーライン 人格障害とを分けておりますが、不安定といえば 皆、不安定であって人格障害と言わずとも不安定 なわけで、やはりあまり妥当な言い方ではないよ
うに思われます。結局、ボーダーラインはボーダ ーラインにしておこうという形でおさまったよう であります。それなりの歴史を持っているのだか
ら、ボーダーラインを独自でユニークなもの、つ まり何かと何かの間というわけではないと、その
町沢メンタルクリニック
うちに認知されるだろうといった形でDSMにお けるボーダーラインパーソナリティディスオーダ ーが定着したわけであります。
私は最初、ボーダーラインというものを一つの 立派な人格障害として認めていいものか疑問を持 っておりました。日本に帰ればこのようなものは ない。アメリカの一時的な流行であると思ってい たわけであります。そこで、ボーダーラインとい う人格障害を証明するべく研究を始めました。多 変量解析を使い、ボーダーラインとその他の人格 障害、うつ病、分裂病などと区別できるかどうか を調べました。すると私の当ては外れまして、確 かにきれいに証明されたのです。こうなると私も ボーダーラインというものを認めざるを得なくな ってしまうわけでございます。当初、私はボーダ
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宴Cンを認めておりませんでしたから、これを
否定してやろうと思って研究した結果、認めざる を得ない数値が出てしまったのですね。まず
Conte,H.R.のボーダーラインスケールを和訳、ア レンジしまして、そこから信頼性の高い項目を選 び、様々な障害の患者に実施しました。ボーダー一・
ラインだけでなく、分裂病、うつ病、さらに神経 症圏の患者を対象としてこれを実施した結果、ど のような結果が出たかと言いますと、きれいに分 かれたわけであります。もしも、ボーダーライン が分離される疾患でないのならば分かれないこと になります。しかし、私が実施した結果はボーダ
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