日本機械学会 2012 年度年次大会 [2012.9.9‐12]
CopyrightⒸ2012 一般社団法人 日本機械学会
[No.12-1] 日本機械学会 2012 年度年次大会講演論文集 〔2012.9.9‐12,金沢〕
G010013
引張りせん断荷重下の重ね合わせ継ぎ手に対する特異応力場の解析
* 関 恭平*1,古口 日出男*2Singular stress field analysis for adhesive joints under the tensile shear load
Kyohei SEKI
*1and Hideo KOGUCHI
*1
Graaduate School of Nagaoka University of Technology, 1603-1 Kamitomioka Nagaoka Niigata
A mismatch of different material properties in joints may cause stress singularities at the edge of interface, which lead to the failure of the bonding part in structures. Therefore, it is important for the bonding strength of the joints to estimate three-dimensional stress singularity at the vertex.In this paper, a boundary element method is used for evaluating the intensity of stress singularity. A model for analysis is three-layered joints.The singular stress field is investigated by changing the material property of adhesion layer.
Key Words : Stress Analysis, Boundary Element Method, Singular Stress Field, Intensity of Stress Singularity,
Adhesive Joint
1. 緒 言
現在,接着による結合は,小型化が求められる携帯電子機器,機密軽量化が求められる構造部材,美観性が求 められる車体外装など様々な場面で用いられている.しかし,接合界面が外力や熱変形によって剥離し,接合部 材が破損することがある.この原因として接合界面端に発生する特異応力場が考えられる.異材接合体における 接合界面端部には,材料定数の違いから,弾性論的には応力が無限大に発散する特異応力場が発生する.この部 分では応力が発散するための応力値のみでの単純な強度評価ができない.
一般的に,特異応力場内の応力
σ
ijは,応力特異点からの距離r
に対して近似的に式(1)で表されることが知られ ている.!
ij = Kijr"#(1)
ここで
K
ijは特異場の強さ,λ
は特異性のオーダである.本研究では,この二つのパラメータを用いて異材接合体の特異応力場の解析を行う.特異性オーダは有限要素 法を用いた固有値解析により求め,境界要素法を用いた応力解析により応力分布を求めた.解析結果から特異場 の強さを求め,引張せん断荷重下の重ね合わせ継手における,接着層の材料定数が特異応力場に及ぼす影響につ いて検討する.
2. 三次元異材接合体に置ける特異性 2・1 固有値解析手法
特異応力場を特徴づける特異性オーダ
λ
は,有限要素法を用いた固有値解析により求められる.固有値p
はλ
とλ =1-Re(p)の関係があり,p
は次式の固有方程式を解くことにより求められる.
(
p2[ ]
A +p B[ ]
+[ ]
C) { }u =0
(2)
ここで,[A],[B]および[C]は弾性定数と接合形状から決まる行列,{u}は節点の変位ベクトルである.
*1 長岡技術科学大学 工学研究科
*2 正員,長岡技術科学大学(〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603-1)
E-mail: [email protected]
2・2 三次元境界要素法(1)
一般に応力解析には有限要素法を用いることが多い.しかし,特異応力場など応力値の変化が顕著になる箇所 ではより微小な要素を用いる必要があるため,本研究では,境界のみの要素分割でよく,さらに高精度に解析で きる境界要素法を用いる.
三次元弾性体内における任意の点の変位は,式(3)の
Somigliana
の境界積分方程式で求めることができる.uj
( )
b =&
S"#Uij( )
b,Q tj( )
Q !Tij( )
b,Q uj( )
Q $%ds Q( ) (3)
ここで,bは領域の内点,Qは境界上のソース点,Uijおよび
T
ijは変位と作用力の基本解,tiとu
iは作用力ベクト ルと変位ベクトルである.また内点のひずみは式(4)で求められる.uj,k
( )
b =&
S"#Uij,k( )
b,Q tj( )
Q !Tij,k( )
b,Q uj( )
Q $%ds Q( ) (4)
ここで,Uij,kおよび
T
ij,kは着力点における変位および表面力の基本解の微分である.内点の応力は式(4)をHooke
則に代入した式(5)によって求められる.
!
ij( )
b ="
uk,k( )
b#
ij+2µ {
ui,j( )
b +uj,i( )
b} (5)
基本解には
Rongved
の二相体の解(2)を用いた.これにより,材料界面の要素分割が必要なくなり,高精度に解析 ができる.3. 解析モデル
本研究では,
JIS-K6850
にある引張せん断接着強さ試験で用いられる試験片(3)を解析モデルとした.その形状を 図1に示す.同寸法の2
平板の被着体が,重ね合わさる形で接着剤により接合される.この両端をつかみ引張荷 重を加えることで,接合部には引張せん断荷重が加わる.応力解析における境界条件は,継手つかみ部を平板の厚さ方向に変位拘束し,継手の片端は長手方向に変位拘束, もう片端に
1kN
の長手方向の荷重を付加した.また,対称性を考慮し1/2
モデルを用いて解析を行った.Figure1 Analysis model of adhesive joint
境界要素分割モデルには,セレンディピティ二次要素を用い,応力特異点となる接合界面端角部で約
10
-6mm
の最小要素とした.総要素数は6903,総節点数は 20717
である.被着体のヤング率はE
1=100GPa,ポアソン比は
ν
1=0.30
で固定し,接着層はE
2=0.01~20GPa
の範囲で変化させて解析を行った.またν
2は界面端角部での特異性オーダが
λ =0.35
となる値を用いた.この端部を基準とした理由については,後に示す解析結果から特異性オーダ・応力値とも高い値を示し,実際の継手において剥離起点になると考えられるためである.
4. 解析結果 4・1 固有値解析結果
本研究で用いた解析モデルの接合界面端において,特異応力場の形状は図
2
に示すように,応力特異点のVertex1,2
と応力特異線のLine1,2,3,4
の6
種類があるが,応力特異線のLine1
とLine3, Line4
は等しい値となるため,応力特異線は
Line2
とそれ以外の2
種類となる.これらにおける各固有値から特異性オーダを求めた結果を 表1
に示す.λ
Vertex1とλ
Vertex2,λ
Line1とλ
Line2 はE
2/E
1<0.01
で近い値となり,E2/E
1の増加に伴いλ
Vertex2とλ
Line1は減少,
λ
Line2は増加する.またE
1= E
2でλ
Vertex2= λ
Line1=0
となり,Vertex2とLine1
での特異性が消失する.Table1 Material property and order of stress singularity
Figure2 Edge shape of adhesion site Figure3 Spherical coordinate origin at the stress singular point
4・2 境界要素法による応力解析結果
ここで図
3
のような球座標系を,高い特異性オーダ・応力値を示すVertex1
を原点,界面をθ =90
o, Line1
をφ =0
o,Line2
をφ =90
oとして設定する.また解析結果については,応力特異場において応力成分の中で最も高い値を示し,剥離に強く影響すると考えられる界面上の垂直応力
σ
θθのみを示す.図
4
はθ =90
o,r=0.0001mmにおけるφ
に対するσ
θθの分布である.σ
θθは,各E
2/E
1においてφ =0
o,90
oの応力特異線 付近で高い値を示している.λ
Line1!λ
Line2となるE
2/E
1<0.01
ではφ =45
oでσ
θθが最小値となり,ほぼ対称な分布であ るが,E2/E
1>0.01
では,σ
θθが最小値を示すφ
の値が小さくなる.図
5
はθ =90
o,φ =45
oにおけるr
に対するσ
θθの分布である.σ
θθは特異応力場では両対数グラフ上で直線的に分 布する.またE
2/E
1の増加とともに高い値となっていることがわかる.4・3 特異応力場の強さ
三次元異材接合体における特異応力場は,これまでの研究(3)から式(6)のように表せることがわかっている.
!
"" rt
#
$%
&
'( =K1"" r t
#
$%
&
'(
)*
+K2""
(6)
Adhesive λ
E
2[GPa] ν
2E
2/E
1Vertex 1 Vertex 2 Line 1,3,4 Line 2
0.01 0.26 0.0001 0.35 0.26 0.26
0.02 0.26 0.0002 0.35 0.26 0.26
0.05 0.26 0.0005 0.35 0.26 0.26
0.1 0.26 0.001 0.35 0.26 0.26
0.2 0.26 0.002 0.35 0.26 0.26
0.5 0.26 0.005 0.34 0.26 0.27
1 0.26 0.01 0.34 0.25 0.27
2 0.26 0.02 0.32 0.24 0.27
5 0.25 0.05 0.28 0.21 0.28
10 0.25 0.1 0.23 0.17 0.31
20 0.25 0.2
0.35
0.15 0.12 0.34
ここで,K1θθは特異応力場の強さであり,特異点からの距離
r
は接着層の厚さt
で無次元化してある.図
5
に示した応力分布を式(6)によって最小二乗近似し,各E
2/E
1において求めたK
1θθを図6
に示す.特異性オー ダλ
はVertex1
におけるλ
Vertex1=0.35
を用いた.K
1θθはE
2/E
1の増加とともに高い値を示している.これらは,応力分 布がφ =45
oに対して対称となる,つまりλ
Line1!λ
Line2となるE
2/E
1=0.01
を境に,E
2/E
1>0.01
ではK
1θθ!24.2(E
2/E
1)
0.35,E
2/E
1<0.01
ではK
1θθ!7.40 (E
2/E
1)
0.10となった.Fig.4 Stress distribution of σ
θθagainst φ
and E2/E
1Fig.5 Stress distribution of σ
θθagainst r/t and E
2/E
1Fig.6 Intensity of stress singularity K
1θθagainst E
2/E
15. 結 言
本研究では,引張せん断荷重下の重ね合わせ継手における接着層の材料定数を幾つか変えたモデルに対して,
有限要素法による固有値解析と境界要素法による特異応力場の解析を行い,以下の結果を得た.
(1)
界面端角部での特異性オーダは, E2/E
1<0.01
でλ
Line1!λ
Line2,E2/E
1>0.01
でλ
Line1< λ
Line2となった.(2)特異応力場の強さ K
1θθは,E2/E
1>0.01
でK
1θθ!24.2(E
2/E
1)
0.35,E2/E
1<0.01
でK
1θθ!7.40(E
2/E
1)
0.10が得られた.文 献