学生 の休 ・退学 につ いて

全文

(1)

西村優紀美,中 村 岡J

Yukirrll Nishilnura,Tsuyoshi Nakamura:

An lnvestigation for Long―Term Absence and Withdrawal from University

< 索 引用語 : 休学, 退 学, 大 学生>

<Keywords:long― terln absence from university,withdrawal frOlln university,university student>

は じめ に

少 子化 と高学 歴社 会 が急速 に進行 し,若 者 の多 くに大学 で学 ぶ機会 が与 え られ て い る。 それ 自体 は歓迎 すべ きことで あ ろ う。 しか しその一方 で, 大学 の相談 室 で は 「勉学意欲 が ないの に周 囲 の趨 勢 に押 し流 され るよ うな気持 ちで大学 の門を くぐっ て しま った」 とい う訴 えが毎年 の よ うに くり返 さ れてお り,そ れは休学,退 学者やスチ ューデ ン ト・

アパ シー 1)の増加 とい う具体 的事実 とな って表 わ れて い る。 この よ うな状況 に適切 に対応す るため, 富 山大学保健管理 セ ンター (以下,セ ンター)で

は1979年度 (昭和54年度)に 学部学生 につ いて年 度 ご との休 ・退学 に関 す る実態調 査 を始 めた6)。

調 査 は,休 ・退 学 の原 因 を究 明 し,学 園生活 へ の 援助 の幅 を広 め る こ とをお もな 目的 と してお り, 全 国大学 メ ンタルヘル ス研究 会 の共 同作業 の一環

と して現在 も継続 中で あ る。

調 査 方 法

毎 年度 の学 生 定員数 と現員数 (各年 度 5月 1日 現 在)は 富 山大学 (以下,本 学)学 生部 の統計 に 基 づ いて い る。 休 ・退学 の学生数 は,そ れ ぞれ正

規 の手続 きを した者 につ いての公式 な数字 であ る。

したが って この他 に,無 届 けの状態 で学業 を怠 っ て いた り,ア ルバ イ トな どに専念 して いた りす る, いわ ゆ るスチ ューデ ン ト ・アパ シーの一部 な どは この統計 に含 まれ ない。

休学 の理 由の調査 は,原 則 と して二段 階 に分 け て行 った。 第一段 階 は,当 該学生 が届 け出た とき の理 由で, これ を 「届 け出理 由」 と呼 ぶ。 第二段 階 は,届 け出理 由が 「一 身上 の理 由」 な ど とい っ た曖昧 な もの,あ るいは信 頼性 が乏 しい と判 断 さ れ た もの につ いて,面 接 や電話 によ る本 人 や保護 者 ,あ るい は友 人 ,教 員,事 務職員 に対 して行 う

「実 態調 査」 で あ る。 なお退 学 の場 合 は,本 人 が す で に大学 か ら物理 的 。心理 的両面 で疎遠 にな っ て い るため に実態調 査 の正 確 を期 しが たいので, 最 近 で は該 当者 の一部 につ いて しか実施 で きな い で い る。

この調査 の もう一 つ の狙 いは,休 学 と精神障害 との関係 をで きるだ け具体 的 に究 明す る ことで あ る。精神 障害 によ って休学 に追 い込 まれて い る学 生 が どの程度 の割合 を 占めて い るのか を把握 し, その予 防 とケアに有効 な手 だて を講 じよ うとい う

もので あ る。

著者所属 :富 山大学保健管理セ ンター,The Department of Health Services,Toyama University

(2)

調 査 結 果

表 1に ,本 学 における休 ・退学学生 の推移 を示 した。表の見方 を1980年度 (昭和55年度)を 例 に とって説明す ると, この年 の,① 総定員 (学部学 生)は 4,620,②現員数 (学部在籍学生)は 4,783 である。③ の 163は,定 員 を上回 って在籍す る学 生数 (②現員 4,783と①総定員 4,620の差)で , 定員を超過 して入学 を許可 された学生 と留年学生 の累積数 であ る。 ④休学者数 は32で,現 員4,783 のO.7%に ,同 様 に⑤退学者数 は44で,現 員のO.9

%に 相当す る。

休 ・退学者数 を, I期 1980〜81年度 (昭和55

〜56年度)〕,そ の 8年 後 にあたるⅡ期 〔1988〜89 年度 (昭和63〜平成元年度)〕,さ らにその 8年 後 にあたるⅢ期 〔1996〜97年度 (平成 8〜 9年 度)〕

の 3つ の時期 について比較す る (表 1の 網か け部 分参照)。 ここで連続 した 2年 間分 を調査上 の 1 単位 と したのは,年 度毎 の体 0退 学者数が さほど 大 き くないので,資 料価値 の安定 を図 るための処 置である。

③,④ ,⑤ は,い ずれ も実数,百 分率 ともに I 期か らⅡ期へ, Ⅱ期か らⅢ期へ と増加傾向を示 し ている。たとえば,④ (休学者)は ,実 数が I期 :

70→ Ⅱ期 :160→ Ⅲ期 :231,現 員 に対 す る割 合 が0.7%→ ***1.4%→ *1.7%に ,⑤ (退学者 )の ば あ い も,同 様 に118→205→322, 1.2%→ **1.7

%→ ***2.4%と , コ ンス タ ン トな右 肩 上 が りの 増 加 傾 向が は っき りとみて とれ る。 留年,体 ・退 学 と密接 な関係 にあ るの は,③ (在学学生数 と総 定員数 の差)で あ り,こ れ も351→812→1,307,3.6%

→ ***6.9%→***9.7%と ,年 を追 って著 しい増加 率 を示 して い る。 これ らの増加傾 向 は,い ずれ の 時 点 を と って み て も統 計 的 に有 意 で あ る (χ2検 *:p<0.05,**:p<0.01, ***:p<0.001)。

休学 理 由 につ いて は, これ と精 神 障害 との関連 を軸 に して,で きるだ け具体 的 に調 査 した。結果 は表 2の とお りであ る。 この表で は休学 の理 由を,

「(al:精神 障害 の診 断 が つ くもの,(b):左 の疑 い が あ る もの,(C):精 神 的 に問題 が ない もの,(d):

不 明 また は未 調 査」 の 4つ の範 疇 に分類 して表記 したが, これ は全国大学 メ ンタルヘル ス研究 会 の 共 同作業 開始 当初 の基準 を踏襲 した もので あ る。

また,休 学者数 を(a,(bl,(c),ld)に4分 割 す ると 各範 疇 ご との数 値 が極端 に小 さ くな るので,小 論 で は,1979〜 81年 (A期 )と その16年後 の1995〜

97年 (B期 )の 各 3年 間 につ いて休学理 由を比較 した。 その結 果 は表 2の 網 か け部 分 に示 した。

表 1.休 学 ・退学学生 (学部)の 推移

①総定員  ② 現員 (女子) ③ =② ―① ④休学 ⑤退学 1980年度

1981年度

4,620 4,690

4,783(1,352)  163(3.4%) 4,878(1,373)  188(3.8%)

32(0.7%)   44(0.9%) 38(0.8%)   74(1.5%)

1■ 期 913101 9,661(2,725) 351(3.6%). 170(017%)││1118(1.2%) 1988年度

1989年度

5,369 5,606

5 , 7 7 3 ( 1 , 8 7 8 )     4 0 4 ( 7 . 0 % ) 6 , 0 1 4 ( 1 , 9 2 7 )     4 0 8 ( 6 . 8 % )

74(1.3%)   79(1.4%) 86(1.4%)  126(2.1%)

=■ 期‐ 101975‐ 111787 (3;805) 812(619%)●  160(1.4%):  205(1.7%) 1 9 9 6 年度

1 9 9 7 年度

6,038 6,072

6,716 (2,446) 6,701 (2,404)

678(10,1%)  118(1.8%)  166(2.5%) 629( 9.4%)  113(1.7%)  156(2.3%)

IE■1期 12:110 13:‐41711(4:850) 11:307(91796)││‐││123=(11796)│1322.(2:4%)

(3)

A 期 ( 1 9 7 9 〜8 1 ) に 比 べ て,   B 期 ( 1 9 9 5 〜9 7 ) で は(alの割 合 が減 り, ( b ) が増 加 して い るが, 統 計 的 に有 意 で はな い。 ま た, 「 精 神 衛 生 的 に問題 あ りとみ な し得 る学 生 〔分 類 ( a ) + ( b ) 〕」 につ いて比 較 す る と, A 期 は2 8 . 4 % ,   B 期 は2 6 . 4 % で , ほ ぼ 同 じ割 合 を 占め る。 要 す るに, 「精 神 衛 生 的 に問 題 あ りとみ な し得 る理 由」 で休学 して い る者 〔l a )

+ ( b ) 〕は,人 数 的 に は31か ら88と大 幅 に増 え て い るが,休 学生 たちの間 で の割合 (25〜30%)は 16 年 を隔 て て もほ とん ど変 わ って いな い ことが分 か

る。

考   察

休 ・退学の年度別平均出現率を全国大学規模で

表 2.学 部学生 の休学理 由 la):精神障害の診断がつ くもの, C):精 神的に問題がないもの,

み る と,両 者 と もにゆ つ くりと, しか し確実 な右 肩上 が りを示 してお り, この歩調 は本 学 の それ と きれ い な平 行線 を描 いて い る (表 1, 3参 照 )。

ただ本学 の場合,退 学率 が高 く,率 の上 で常 に全 国平 均 の 1.5倍前後 とい うの は見過 ご しにで きな い問題 で あ る。 ところが,本 学 の 自己点検評価委 員 会 編 集 の 「富 山大 学 の現 状 と課 題 」 (1998年9 月発 行 )に は, この件 に関 して学 部 ご との短 い コ メ ン トが記 され て お り7),そ れ らを総 合 す る と

「休学 ,退 学 にあ ま り変化 はない」 とされて い る。

この コメ ン トには 「休学,退 学 の右肩上 が り傾 向」

を示唆 す る 「国立大学 にお ける休学 。退学 の年度 別 平 均 出現 率 (表 2)」 や わ れ わ れ の見 解 との間 に相 当の隔 た りが あ る。 この場合 「富 山大学 の現 状 と課 題」 の記載 内容 が休 ・退学 の実 勢 を反 映 し

( b ) : 左の疑 いがあるもの ( d ) : 不明または未調査

休学者数 (a)(%) (b)

79年度 80 81

( 1 0 . 3 ) (25.8) ( 2 1 . 1 )

( 1 2 . 8 ) ( 6 . 3 ) ( 2 . 6 ) 4

8 8

0 3 8

5 2 1 3 0 ( 7 6 . 9 ) ( 9 . 4 ) 1 9 ( 5 9 . 4 ) ( 2 1 . 1 ) 2 1 ( 5 5 . 3 )

95年度 96 97

16 (15.4) 1 4 ( 1 1 . 9 ) 9 ( 8 . 1 )

1 8 ( 1 7 . 3 ) 1 9 ( 1 6 . 1 ) 1 2 ( 1 0 . 8 )

68(65。4) 79(66.9) 90(74.2)

2 ( 2 . 0 ) 6 ( 5 。1 ) 0 1 0 4

1 1 8 1 1 1

││11,19〜,1111119?

3111995‑071‐1癖 2ell:(1813) 頴1)』留ぷ

391(11,7)

811(1713) 3111(││1214)

表 3。 国立大学 における休学 0退 学の年度別平均出現率 (%)

=F底:    82   83   84   85   86   87   88   89   90   91   92   93   95   97 休学  0.9

退学  1.0

0.9   0.8   0.9   0.9 1.0   1.1   1.2   1.1

1.0   1.1   1.2   1.3   1.3   1.4   1.4   1.6   1.8 1.1   1.2   1.3   1.3   1.3   1.3   1.3   1.4   1.6

(4)

て いな いの は,休 ・退学者数 とい う,資 料 と して は小 さな数値 を 5つ の学部単位 に細分 した うえで, その小 さ くな った数値 を至近 の年度 の数値 に比 べ て増 減 を云 々 したか らで あ る。 したが って その結 果 は 「変 化 が な い」 ので はな くて,「 変化 を見 え な くして しま った」 と言 えそ うで あ る。

さて,休 学 と精神障害 との関係 は重要 な課題 で あ り, この調査 の主要 な 目的 の一 つで あ る。前節 で も触れたよ うに,休 学理 由を精神障害の軸 に沿 っ て,lal「精 神 障害 の診 断 が下 せ る」,(b)「精 神 障 害 の疑 いが あ る」,斡 )「精神 的 には問題 が ない」, (dl「不 明 また は調 査 不能」,の 4つ に分類 した。

その意 図 は,休 学理 由 に占め る但)の割合 に時期 的 な変化 が あ るか否 か に あ ったが, 1979,80,81年 度 ( 昭和 5 4 , 5 5 , 5 6 年 度 ) と そ の1 6 年後 の 1 9 9 5 , 9 6 , 9 7 年度 ( 平成 7 , 8 ,   9 年 度 ) の 比 較 で,   a の割 合 に有意 差 はなか った。 また 〔l a ) 十( b l 〕, つ ま り 「精 神衛生 的 に何 らか の問題 あ りとみ な し得 る」学生 が休学者 に 占め る割合 をみて も, 統 計 的 に有意 な差 は認 め られ なか った。要 す るに, 精 神 障害 の た め に休学 を余儀 な くされ る学生 の実数 は 増 え て い る もの の, そ の増加率 は休学 全般 の それ と並行 して い るので あ り, 精 神 障害 が休学率 を左 右 して い るわ けで はな い。

しか し, 学 生 間 にみ られ るスチ ューデ ン ト・ア パ シーや無気力 2)などの病理事象 は,そ の臨床的 特異 性 が注 目を集 めて お り, 保 健管理 セ ンターに と って は決 して避 けて通 る ことが で きな い, 「 日 常 の」重 要課題 で あ る ことには変 わ りが ない。 以 下 , そ の辺 りの問題 につ いて, 具 体例 の観 察 の な かか ら若千 の考察 を付 け加 え たい と思 う。

( 事例 1 ( 進 路 に迷 って休学) 〕: 「・…。自分が現在の 学科で学んでいる学習の内容 と, い ま, 自 分の中で生 まれつつある夢 とのギャップに,   この学科での修学意 欲が薄れ, 目 指 した道を完全に心に決められないまま, それで も新たな夢の方に熱意を注 ぐようになりました。

( 中略) こ のままの気持 ちでこの学科に通 うに して も, いつ も疑間を抱えたままで集中できません。 いまは, 半年間の休学 というかたちで, 進 路を見つめなお した

いのです ( 以下, 略 ) 」( 本人が提出 した休学理由書よ り) 。

この事例 は, 学 習意欲 が低下 したので, い った ん休学 を した うえで今後 の進路 を再 考 した い と訴 えて い る。休学 の理 由 と して はあ りお、れ た もので, 大学 へ入 る こと自体 を 目的 と して進路 を選択 した 学 生 に多 くみ られ る。 彼 らの訴 え は, 高 学歴志 向 社 会 と高校 の進学指導 の あ り方, 大 学 の授業 内容 や教授指導法などの総合的,抜 本的な再点検を迫 っ ているよ うに思われ る (なお,事 例 3を 参照)。

事例 2 ( モ ラ トリア ム型 の海外留学) 〕: 「・…・休学 す ることで, よ り大 きな経験 を積みたいと思 います。

具体的 には, 学 生 と して しか経験 で きない こと, つ ま り, 学 生 と して○○国で多 くの ことを学 びたい と思 い ます。 ( 中略) ○ ○語,   ビ ジネス, 一 般教養 と日本 と 違 う所で, 新 鮮 な感性 を養 って きたいと考えています。

( 以下, 略 ) 」( 本人が提 出 した休学理 由書 よ り) 。 この事 例 は海 外 留 学 を表 向 きの理 由 と して い る が , 実 は留 学 す な わ ち モ ラ トリア ムの事 例 と考 え られ る。 したが って 海 外 留 学 の増 加 を休 学 の増 加 に結 びつ け る見 方 は必 ず し も正 鵠 を射 た もの で は な い。

事例 3 ( 無 気力) 〕: 理 系 ( 留年 1 年 , 男 子学生 の陳 述 よ り)

生 きて ゆ く上 での 目的 に値 す るものが ない。生 き て ゆ く上 での強 さがな く, 喜 びを感 じることが ない。

多 くの人達 はあま り考えず に就職 し, や りが いを見つ けて い く。一生 の仕事 になるのだか ら, 価 値 を見 いだ せ る仕事 に就 きたい。 1 ,   2 回 生 の ころは猶予期間が あ ったので, 専 門や適性 を考 えず に授業 を受 けて いた が,   4 回 生 にな って進路 を考え るよ うにな った。 こう い う職 に就 きたい とい うのが無 い。所属学科では, 就 職 は コ ンピュー ター関連 が多 いが, そ れ に生 き甲斐 を 見 いだせ るか ど うか ・・多分だめ ・・大学院 を受験 し たが落 ちた。後期 日程 もあるが受 けない。研究 の大変 さが分か って きて, 自 分の能力を こえて いると思 うの で」。

こ の 事 例 は , 無 気 力 a p a t h y , 無 感 動 q u a s i ̲ d e p e r s o n a l i s a t i o n , 無快 楽 a n h e d O n i a の 主 観 症 状 が あ り, そ の背 景 に 「何 が 自分 に と って 可 能 で

(5)

あ り,か つ相応 しいか」 につ いての不確 か さが あ る。 そ して 自分 の所属 す る学部 や学科 の勉学,そ の延長線上 の就職選択 につ いて 自問 自答 を繰 り返

して い るが,結 論 は導 けそ うにない。 しか し,そ れ は深刻 な, したが って時 に は自殺 に至 るよ うな 自問 自答 で はな く, い わ ば 自我親和性 の悩 みで あ る。 笠 原3 ) は

,   この よ うな若者 の神経症性無気 力 に対 して 「退却神経症」 とい う臨床単位 を提 唱 し て い る。 患者 は 自 ら治療 を希望 して医療機 関 を訪 れ る ことは無 い とい って よ く, したが って,大 学 の保健管理 セ ンターや企業 の メ ンタルヘルス管理 業務 に携 わ るス タ ッフ以 外 が退却神経症 やそれ に 類縁 の状態 に出会 うことは きわめて稀 といわれ る。

次 に紹 介 す る事例 4 ,   5 は , 入 学年度 と学部学 科 ばか りか, 関 西 出身 で 2 浪 の経験 が あ る男子,

と驚 くほど似通 った条件 を具 えて入学 した学生 で あ るが,入 学後 はま った く正反対 の学 園生活 を送 る ことにな った。前者 は, 4年 後 に無事卒業 して 一部上場会社 に就職す るが,後 者 は 4年 間の在学 期 間 を無 為 に過 ご した後, セ ンターを訪 れ たが低 下 した意 欲 を回復 で きず, そ の 1 年 後 に退学 す る

ことにな る。

事例 4 〕: M K ( 男 ) , 理 系

入学後, オ リエンテーションに出ただけで登校 しな い。母親の希望で筆者がアパー トを訪問 し話を聞 く。

「自分 は未熟で,不 甲斐ないと思 う。祝福 されてや っ てきたので退学するの も難 しく夜 も眠れない。Jヽ学 2 年時の登校拒否状態を思い出 して情けない」 と言 う。

話 し合いの結果, 本 人は, 履 修手続 きだけはしてお く。

以来, セ ンターヘ頻繁に来談。

その後,多 少の転換症状がみ られたが, 4月 下旬か ら授業に出始め, 5月 の連休明けか ら週に一度,定 期 的にセ ンターヘ通所 し, 急 速に学園生活に適応。 5月 末の学園祭では, 焼 きそば売 りに参加。 これ以降,同

じ学科の同級生をセ ンターヘ紹介するなど,勉 学 ・交 友関係 ともに活発になる。

4 回 生の 3 月 ,彼 は卒論のコピーを持参 して謝辞を 述べ, 元 気に卒業 していった。

事例 5〕 :TO(男 ),理 系

(4回 生 の 3月 15日来室)入 学後 は教養科 目は簡単 とたか を括 り,夏 休 み以降 は下宿で読書 な ど して非社 交 的 な 日々を過 ご して いた。 1年 の秋 に某 カル トに勧 誘 され入会。 大学 の側 で 2年 の終 わ り頃 まで20人の共 同生活 を して いた。 カル トにいた間 は,教 義 の勉強 と 伝道 な どす る ことが多 く,初 めの頃 は充実 して いた。

カル トを抜 けてか らは,履 修届 けは出すが殆 ど授業 に 出ないで いた。 この間,焦 りはあ り,夜 には明 日こそ 学校 へ と思 うが,朝 にな ると,気 が重 くな って しま う。

セ ンターを訪 れ た きっか けは,高 校時代 の友人 と会 う 機会 が あ り,彼 らの助言,激 励 を受 けたか らである。

新学期 (5回 生)か らは学生 の本分 を貫 こうと思 って い る。

5年 目の前期 は何 とか登校 していたが,期 末試験 は 殆 ど受 けなか った 0,(11月 1日 母親 とともに来室) 本人 は 「後期 か らがんば る」 と言 う。 ・ ・以来, 3月 まで セ ンターに通所 した。 この間,本 人 は毎回のよ う に 「授業 に出て い るが毎 日の生活 は寂 しい」 と心細 そ うに言 う。 6年 目の前期 にまた欠席 しが ちにな り,結 局 この年一杯 で退学 した。

MKは 元 来 気 が 小 さ く,小 学 2年 の と きに転 校 を き っか け に して 1か 月 ほ ど登 校 拒 否 に な った経 験 が あ る。 彼 は,一 人 で アパ ー トに籠 も って い る とそ の 嫌 な記 憶 が 蘇 って きて 自分 自身 の不 安 を か きたて る,と い う自己嫌 悪 感 を伴 った悪 循 環 に陥 っ て い た。 本 人 か らの電 話 を受 け た両 親 が 直 ち に セ ン ターヘ 相 談 を持 ちか け た の は機 敏 な処 置 で あ っ た と思 わ れ る6カ ウセ リ ングに よ って心 を 開 い た MKは : 5月 末 の学 園 祭 の ころ に は学 園 生 活 に十 分 に適 応 で き る よ うに な った の で あ る。

他 方 ,TOに は不本意 入学 とい う気持 ち も手 伝 っ て 「教 養 科 目 は手 抜 きを して も」 と い う思 い上 が りが あ った。 そ の結 果 ,時 間 の経 過 と と もに勉 学 意 欲 が 低 下 し,社 会 的 に は孤 独 に陥 り,そ の心 の 隙 を カ ル トに乗 じ られ て 2年 間 を無 為 に過 ごす こ と に な った。 ま た両 親 は,TOが 4年 間 ほ とん ど 登 校 して い な い こ とを知 らな か った。 彼 は在 籍 5 年 目 に初 め て セ ンタ ー を訪 れ た の で あ るが ,い っ た ん 衰 弱 した学 業 意 欲 は なか な か 回 復 で きず ,そ の 1年 後 に退 学 す る こ とに な った。

(6)

この両 者 に は, 入 学 の時 点 で きわ め て 多 くの共 通 点 が あ り, 入 学 後 , 学 園 生 活 に な じめ な い と い

う点 で も互 い に似 通 う面 が あ った。 た だ, M K の 方 が 向学 心 の純 粋 さの面 で わ ず か に T O を 凌 い で

い た た め に, 入 学 直 後 か らセ ンター の治 療 的 支 援 を受 け る こ とが で き, 結 果 と して両 者 の予 後 に大 きな差 異 が 生 じた の で あ った。 M K と T O は , 不 適 応 学 生 に対 す る早 期 の 治 療 的 援 助 が い か に重 要 で あ るか を示 す 格 好 の事 例 で あ ろ う。

文   献

1)Deutsch,H.:Some forms Of emotional disturbances and their relationship to schizophrenia.Psychoanal.

Quart.,11;301‑321,1942.

2 ) 笠 原嘉 : 大学生 に見 られ る特有の無気力 について。

全 国 大 学 保 健 管 理 協 会 会 誌 7 ; 6 4 , 1 9 7 1 . ( 笠原 嘉

「精神病 と神経症」 みすず書房, 1 9 8 4 収戴) 。 3 ) 笠 原嘉 : 無気力状態 の精神病理学 への一寄与

― 「退却神経症」あるいは 「退却反応」 の提唱―.

北陸神経精神 医学, 3 ; 1 ‑ 8 , 1 9 8 9 .

4 ) 湊   博 昭 : 留年生 との関わ り方。第 1 6 回大学精神 衛生 研究 会報告書 ( 平成 6 年 度) , 大 学精 神衛生 研 究会, 1 9 9 4 .

5 ) 中 島潤子, 張 谷秀章, 野 村正文 : 休学者 に関す る 調査. 学 生 の健康 白書 ( 1 9 9 5 ) ( 国立大学等保 健管理 施設協議会編) , 南 江堂, 東 京, 1 9 9 5 。

6 ) 中 村剛 : ( 昭和5 6 年度) 本 学 の留年, 休 ・退学学 生 につ いて。富 山大学学報 , M 2 3 1 : 卜 1 2 , 1 9 8 1 . 7 ) 富 山大学 自己点検評価委 員会 ( 編) : 富 山大学 の

現状 と課題, 1 9 9 8 .

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参照

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