九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
乳酸菌の抗糖尿効果に関する研究
藤原, 実希
http://hdl.handle.net/2324/4060230
出版情報:Kyushu University, 2019, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)
氏 名 藤原 実希
論 文 名 乳酸菌の抗糖尿効果に関する研究
論文調査委員 主 査 九州大学 准教授 中山 二郎 副 査 九州大学 名誉教授 園元 謙二 副 査 九州大学 教授 竹川 薫 副 査 九州大学 教授 佐藤 匡央
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
2 型糖尿病の発症には食後高血糖状態の持続が関与しており、その予防あるいは進展抑制には食 事由来のグルコースの小腸からの吸収を抑制することが有効と考えられている。これまでに知られ る乳酸菌の抗糖尿効果の多くは、乳酸菌の長期投与を行い腸内に菌体を定着させ、その効果を評価 したものである。一方、長期投与を必要とせず食後血糖値の上昇を抑制し抗糖尿効果を発揮する乳 酸菌が望まれている。また、効果の他に基礎となる作用機序を特定し、同様の効果を持つ有用な乳 酸菌株を特定するためのさらなる研究が推奨されている。そこで、本研究では、先行研究でコレス テロール低減作用を持つ乳酸菌が分離されている津田カブ漬けを分離源として、新たに血糖値低減 効果を持つ乳酸菌を探索し、その作用機序の解析を行っている。
まず、津田カブ漬け汁から新たな乳酸菌 6株を分離し16S rRNAによる同定を行い、人工消化液 耐性について評価し、最も耐性の高いQU 19を選択している。そして分類学に基づく同定と遺伝子 比較による帰属分類を行い、QU 19の属種をPediococcus pentosaceusと決定している。
次に、QU 19の抗糖尿効果を、ICR系雄マウスを用いた血糖値上昇抑制試験により評価している。
試験は生菌と死菌両方を用いて行い、また比較として、同じく津田カブ漬け汁より分離された人工 消化液感受性のWeissella属乳酸菌の生菌を投与した場合と、マウスにQU 19生菌のみを投与した 場合の血糖値の推移も測定している。結果として、デンプンとQU 19生菌500 mg/kgの同時投与 により食後30分後の血糖値と500 mg/kg投与区の血糖値曲線下面積がQU 19非投与に比べて有意 に低下し(p < 0.01)、他の試験区では血糖値の低下がないことを確認している。そして、QU 19 は生菌としてのみ効果を示す、事前投与を必要としない食後血糖値の上昇抑制効果を有する乳酸菌 株であることを示している。
次に、QU 19の作用機序について検討している。乳酸菌生菌における食後血糖値の上昇抑制への
作用機序としては、これまで糖類分解酵素阻害が報告されていることから、まず、酵素阻害効果の 評価としてα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼに対するQU 19の阻害効果をin vitroで評価し ている。その結果、QU 19添加区ではグルコースがほとんど検出されず、同時に反応液のpH低下 が観察されている。よって、QU 19の血糖値上昇抑制は糖類分解酵素の阻害ではなく、生菌のグル コース資化消費によるものであると結論している。また、QU 19のグルコース資化速度は、食後血 糖値の上昇を穏やかにすると報告があるLactobacillus rhamnosus GG ATCC53103を凌駕するも のであることを示している。
以上本研究は、優れた血糖値上昇抑制能を有するQU 19を日本の乳酸発酵漬物より独自に分離し、
さらにそのグルコースを急速に資化消費する機能を明示したもので、応用微生物学の発展に寄与す る価値ある業績と認める。
よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。