慈円
『拾 玉集
』第 三帖 所載
「略 秘贈 答和 謌百 首」 に次 の歌 が見 え、
同時 に第 二帖 所載
「日 吉百 首」 にも 一致 もし くは 類似 する 歌が 存す る。 歌番 号・ 本文 は多 賀宗 隼『 校本 拾玉 集』 に拠 る。 三悪 の家 には なに かか へる べき いで にし もの を五 相成 身( 三六 四
〇)
(第 三句
「本 ニか くる へき トア リ、 帰る へき 歟」 の校 異) かな らず よ夜 はの 煙と 身を ばな せ以 字焼 字の 法の むく ひに
(三 六 四一
) 後者 は「 日吉 百首
」と 完全 に一 致す るが
、前 者は 次の 歌に 差し 替え られ てい る。 今は よも まど ひす てゝ し六 の道 にか へら じも のを 五相 成身
(二 二 八四
)
(初
・二 句「 世も 迷も 捨て
」見 せ消 ちで
「よ もま とひ もす てゝ し」 の校 異) 前稿 では
、「 略秘 贈答 和謌 百首
」か ら書 陵部 蔵『 慈円 百首
』(150
・
(
)
363
)を 経て
、建 暦三 年「 日吉 百首
」へ と発 展し てゆ く進 展過 程を 立証
慈 円
「 略 秘 贈 答 和 謌 百 首 」 検 証
石 川
一
*
要 旨
慈円
『略 秘贈 答和 謌百 首』 は、 西山 隠棲 期に おけ る作 品で
、内 題右 下に
「本 ニハ 二 首ツ ヽ載 之。 其間 哥一 首斗 程闕 在之
」の 注記 があ り、 本百 首の 呼称 が贈 答歌 形態
(二 首で 一対 をな す) に由 来し てい るこ とが 確認 でき る。 前稿
「慈 円『 建暦 歴三 年日 吉百 首』 考」 で、 本百 首か ら書 陵部 蔵『 慈円 百首
』(
15 0 36
・
3
)を 経て
、建 暦三 年「 日吉 百首
」へ と発 展し てゆ く進 展過 程を 立証 した が、 その 指し 示す 宗教 内容 に深 く触 れる こと が出 来な かっ た ので
、本 稿で 改め て検 討し たい と思 う。 西山 隠棲 期の 著述 を精 査す るこ とに よっ て、 本百 首が 叡山 教学 と深 く関 連し てい るこ とが 分か る。 同時 に、 台密 の集 大成 者と して の安 然な どの 教 学に 深く 依拠 して いる こと が確 認で きる
。 キー ワー ド: 厭離 欣求 百首
、叡 山教 学、 安然
、胎 蔵界
・金 剛界
、大 日如 来
平成30年9月10日受理 *文学研究科国文学専攻 教授
した が、 その 指し 示す 宗教 内容 に深 く触 れる こと が出 来な かっ たの で、 改め て検 討し たい
。 本百
首に は「 日吉 百首
」と の重 複歌 の中 に、 次の よう な歌 があ り、 その 存在 によ り、 両百 首の 成立 はか なり 絞ら れる
。 逢ひ がた き法 に
あ
のり
近江あふみ の山 高み 三た び来 にけ る身 をい かに せん
たか
き
(三 四六 五・ 日吉 百首 二〇 八二
)
「三 たび 来に ける 身」 とは 建暦 二年 正月 十六 日の 座主 就任 第三 度を さす
。ま た「 日吉 百首
」跋 には
「建 暦二 年壬 申秋 九月 草之
」と 草稿 本 の詠 歌年 次が 記載 され
、し かも
「二 年壬 申秋 九月 草之
」に 見せ 消ち で
「三 年癸 酉待 三春 記一 篇而 已」 の校 異に 拠り
、清 書本 の完 成年 次が 判 明す るの であ る。 した がっ て、 両百 首共 に座 主就 任以 後に 詠ま れた こ とに なる
。 そも そも
「略 秘贈 答」 とは 浅略 深秘 の約 であ り、 通り 一遍 の浅 く簡 略な こと と、 深奥 な秘 密の 教え とい う、 相反 する 二つ の概 念を 対照 さ せよ うと の意 図の もと に「 贈答 和謌
」と いう 形態 を取 った もの と思 わ れる
。な お、 対を なす 二首 の中 央上 部に 部立 を示 す語 が記 され てい る。
(
)
版本 六家 集本 を除 く他 の伝 本は
、春 三・ 夏一
・秋 一一
・冬 四・ 恋一
・ 山家 三・ 閑居 一・ 神祇 二・ 釈教 五・ 述懐 二〇 とい う変 則的 な構 成で あ
(
)
る。 冒頭 六首
(三 対) を見 ると
、
(a
)音 羽山 深き 霞を 分け 入れ ば大 津の 宮に 春の 花園
(三 五八 二)
をと は
ふか
わ
い
みや
ぞの
春 春来 れば 打出 の浜 のは ま風 に長 等の 山を 志賀 の山 越え
(三 五八 三)
く
うち で
なが ら
が
ご
(b
)花 にあ かで 花を あは れと 思き ぬ散 るな らひ まで われ にな しつ ゝ
ち
(三 五八 四) 同 月に あか で寝 待ち の空 を待 から に来 ん世 の闇 を思 知る かな
(三 五
ね ま
こ
やみ
し
八五
)
(c
)吉 野山 そも むつ まし きな がめ 哉花 待つ 峰に かゝ る白 雲( 三五 八
よし の
ま
みね
しら
六) 同 うき 雲を 厭ふ 心に うれ しき は月 待つ 山の 峰の 松風
(三 五八 七)
いと
ま
みね
まつ かぜ
版本 六家 集本 のみ
(b
)( c) 例が
「秋
」「 同」 とな って いる
。( b)
(c
)双 方の 左歌 は秋 にふ さわ しい 内容 であ るが
、全 体の 構成 から も 例外 と考 えざ るを 得な い。
(版 本六 家集 本以 外の 伝本 はす べて
「春
」
(
)
とな って いる ので
、お そら く版 本六 家集 本の み合 理的 な処 理が 為さ れ たも のか
。)
(a
)に おい ては
、当 該百 首が
「日 吉百 首」 に進 展ゆ くこ とか らも
、 その 跋「 奉納 神居 筆」 から も、 日吉 社と いう 帰着 点が 見え てく る。
「音 羽山
」「 大津 宮」 に対 して
「打 出濱
」「 長等 山」
「志 賀山 越」 を配 する
。
(b
)に おい ては
、現 世無 益を 主題 とし て「 哀( あは れ)
」「
(花 の)
散る 慣ひ
」に 対し て「 来世 の闇
」を 配す る。 また
(b
)の
「花 にあ か で」
「月 にあ かで
」、
(c
)の
「花 待つ 峰」
「月 待つ 山」 のよ うに
、歌 句 の対 比( 詩型 の類 似を 含む
)が 認め られ る。 そも そも 青蓮 院本
『拾 玉集
』本 文に 錯綜 があ るの は数 多の 押紙
(九 件) が存 在し てい るか らで あり
、『 校本 拾玉 集』 はそ れを その 位置 に
(
)
翻字 して いる こと に拠 る。 この 押紙 には
「正 本」 と合 致す るも のも あ
(
)
るが
、他 百首 の歌 も混 入し てお り、 これ ら別 草は かな り複 雑な 様相 を 呈し てい る。 明確 な位 置付 を持 たな いも のを 含む 別草 は捨 象す るに し ても
、青 蓮院 本底 本と
「正 本」 との 異同 は「 略秘 贈答 和謌 百首
」に も 推敲 が為 され た事 を物 語っ てい る。 この
「略 秘贈 答和 謌百 首」 と建 暦三 年「 日吉 百首
」と の間 に、 一七 首も の重 複歌 を見 出し 得る
。ま た「 略秘 贈答 和謌 百首
」に は「 以上 百
(
)
首大 略併 詠改 了、 乍百 首入 撰集 之程 計と て奉 納神 居畢
、具 有別 草」 と いう 跋が あり
、神 居に 奉納 した こと を示 して いる
。同 様に
、建 暦三 年
「日 吉百 首」 底本
(清 書本
)の 序に
「詠 百首 和歌 清書 以法 楽十 禅師 宮」 とあ り、 日吉 七社 中の 十禅 師宮 に法 楽し たこ とを 伝え てい る。 しか し、 日吉 社法 楽と いう 企画 の意 味か らす ると
、重 複歌 のあ る二 種の 百首 が 奉納 され るこ とは 考え られ ない ので
、こ れに つい ては 前稿 に譲 るこ と にし たい
。
(
)
両百 首に おけ る、 前掲 の三 例以 外の 歌の 組み 合わ せに 倣っ て具 体的 に検 討し てみ たい
。但 し、 歌の 逸脱 など の問 題は 一先 ず解 決し たの で、
これ 以後 は歌 本文
・番 号な どは 特に 断ら ない かぎ り『 新編 国歌 大観
』 に拠 るこ とに し、 番号 を半 角横 向き アラ ビア 数字 で表 記す るこ とに す る。
①郭 公松 に来 鳴か ぬ声 なれ ば常 磐の 杜に 聞事 もな し(3375
)
き な
こゑ
(き く)
わ 夏 れは 又待 つに 嬉し き命 とて 老蘇 の杜 に泣 く事 もな し(3376
)
ま
うれ
(お い) そ
な
前歌 の「 松」 は「 待つ
」を 掛け る。
「来 鳴か ぬ」 は「 郭公 思は ずあ りき 木の 暗の かく なる まで に何 か来 鳴か ぬ」
(万 葉・ 巻八
・一 四九 一 大伴 家持
)に 拠り
、郭 公を 松で はな いが 待っ てい るの に、 なか なか 来て 鳴い ては くれ ない ので
、常 磐の 杜で 鳴き 声を 聞く こと はな いの 意。 また 後歌 は「 東路 の思 出に せん 時鳥 老蘇 の杜 の夜 半の 一声
」( 後拾 遺・ 夏一 九五
大江 公資
)の よう に「 老蘇 の杜
」は 郭公 に関 係の 深い 歌枕 で、 時鳥 を待 つの が嬉 しい と同 時に 極楽 往生 を待 つこ とに 掛け る。 私 は郭 公を 待つ のが 嬉し いが
、同 じよ うに 極楽 往生 を待 つの が嬉 しい の で、 老蘇 の杜 で泣 くこ とも ない の意
。
「常 磐の 杜」
「老 蘇の 杜」 とい う歌 句の 対照 の他
、「
~事 もな し」 と いう 詩型 の類 似も 見ら れる
。
②染 めて おろ す峰 の紅 葉の くれ なゐ を袖 より 外の 物と やは 見る
(3381
)
そ
もみ ぢ
(ほ か)
み
同( 秋) 出で よ月 憂き 身世 に住 まぬ 山の 端を 心の ほか の空 とや は見 る(3382
)
い
う
す
は
前歌 は「 紅に 涙し 濃く は緑 なる 袖も 紅葉 と見 えま しも のを
」( 後撰
・ 恋八 一二
読人 不知
)の よう に、 紅葉 の色 に「 紅涙
」を 掛け る。 木の
葉を 紅に 染め て吹 きお ろす 紅葉 を、 袖と は関 係の ない もの とは 見な い のだ ろう かの 意。 後歌
「心 のほ かの 空」 は「 散る 花を 惜し まば とま れ 世の 中は 心の ほか の物 とや は聞 く」
(後 拾遺
・雑 一一 九一
伊世 中将
「三 界唯 一心
」) に拠 り、 仏の 比喩 であ る月 よ出 でよ
。憂 き身 は辛 く はか ない 住ま ない この 世の 山の 端を
、心 と無 関係 のも のと 見る だろ う かの 意。 反語
「や は」 を含 めて
、「 ほか の~ とや は見 る」 とい う詩 型の 類似 も見 られ る。
③も ろと もに 鹿こ そは 鳴け 暮の 秋も みぢ 散る 山の 峰の 嵐に
(3383
)
な
くれ
ち
みね
あら し
む 秋 ら柴 に雉 子立 つな り桜 狩花 散る 野辺 の春 のあ けぼ の(3384
)
しば
きゞ す た
さく らが り
ち
べ
前歌
「峰 の嵐
」は 紅葉 を散 らせ るも ので
、「 足曳 きの 山の 紅葉 は散 りに けり 嵐の 先に 見て まし もの を」
(後 撰・ 秋四 一一
読人 不知
)に 拠る
。私 と一 緒に 鹿よ 鳴け
、峰 吹く 嵐に 紅葉 が散 る暮 秋に の意
。後 歌
「桜 狩」 は桜 を尋 ねて 山野 を遊 び歩 くこ とで
、有 名な 俊成 歌「 又や 見 ん交 野の 御野 の桜 狩花 の雪 散る 春の 曙」
(新 古今
・春 一一 四) に拠 る もの
。む ら柴 から 雉が 飛び 立つ こと だ、 春の 曙に 桜狩 で花 が散 る野 辺 では の意
。
「紅 葉散 る山
」「 花散 る野 辺」 とい う歌 句の 対照 が看 取で きる
。
④よ しさ らば 涙に うと き身 なり せば 袖に は月 の宿 らざ らま し(3385
)
やど
同( 秋) 行ふ に真 の言 をな らは ずは 心に 月の 宿ら ざら まし
(3386
)
をこ な
(ま こと
) こと
やど
前歌
「涙 にう とき 身」 は涙 とは 縁が ない 身の こと で、
「逢 ひに あひ ても の思 ふ頃 のわ が袖 に宿 る月 さへ 濡る る顔 なる
」( 古今
・恋 七五 六 伊勢
)に 拠る
。そ れな らま まよ
、涙 とは 縁が ない 身な ら、 袖に 月が 宿 るこ とは ない であ ろう の意
。後 歌「 真の 言」 は仏 教語
「真 言」 の訓 読。 如来 の三 密の 一つ で、 深密 秘奥 の真 実の 語。
「月
」は 悟り に至 った 心 を喩 えた もの
。仏 道修 行す るの に真 言を 習わ なか った なら
、心 に悟 り を得 るこ とが ない だろ うに の意
。
「月 の宿 らざ らま し」 とい う反 実仮 想の 詩型 の類 似が 見ら れる
。
⑤散 りつ もる 庭の 紅葉 に霜 さえ て赤 きは 月の 光な りけ り(3387
)
ち
もみ ぢ
あか
同( 秋) 月影 に雪 掻き わけ て見 る梅 の白 きに も猶 染む 心か な(3388
)
か
み
しろ
そ
前歌 は、 霜に 明る い月 光が 反射 する と白 く見 える が、 それ に紅 葉の 色が 加わ るの で「 明き
」を 掛け て、
「あ かき
」と 表現 して いる
。散 り 積も った 落葉 に霜 が冴 え冴 えと 置き
、そ れに 月の 光が 加わ り、 あか く 見え るの 意。 後歌 は白 梅の 上を 雪の よう に見 える 月光 が覆 って いる さ まで
、「 春歌
」。 白梅 の上 を雪 のよ うに 見え る月 光が 覆っ てお り、 心に 深く 感じ るの 意。
「月 の光
」に 拠る 色の 変化 とい う歌 句に 対照 が見 られ る。 また 部立 の表 記は 右歌 に拠 るも のな ので
、和 歌文 学大 系「 月光 と雪 が覆 って い るさ ま」
「当 該歌 は冬 歌で 不審
」を 訂正 した い。
⑥月 影の あら しに なび く有 明に うち 合せ たる 鐘の 音か な(3389
)
かげ
あは
かね
をと
同( 秋)
いつ はり と 思 知り ぬる 槇の 戸に さし あは せた る鳥 の声 哉(3390
)
(お もひ
)し
(か な)
前歌 は、
「有 明の 月待 ち出 でて 明か ぬ間 にい かに や鐘 の音 の聞 こゆ る」
(教 長集 四三 九) など に拠 り、 嵐に 吹か れ有 明の 月の 光が 横ざ まに 乱 れ流 れる よう に感 じら れる 時に
、折 から の鐘 の音 が聞 こえ るの 意。 後 歌「 いつ はり
」と は「 おし なべ て叩 く水 鶏に おど ろか ば上 の空 なる 月 もこ そ入 れ」
(源 氏物 語・ 澪標 二五 七) など に拠 り、 水鶏 の鳴 き声 が 戸を 叩く 音に 似て いる こと をい う。 槙の 戸で は偽 りの 叩く 音が して い るが
、重 ね合 わせ るよ うに 鳥の 鳴き 声が 聞こ えて くる の意
。
「~ あは せた る~ かな
」と いう 詩型 の類 似が 見ら れる
。
⑦世 の中 の人 の心 を思 ふ空 の雲 かき 分く る山 の端 の月
(3393
)
わ
は
つき
同( 秋) 違は ずよ 憂き 世の 人の 振舞 ひは しぐ るゝ 秋の 山の 端の 雲(3394
)
たが
う
ふる ま
は
前歌 は「 日吉 百首
」重 複歌
(2048
)で 三~ 五句
「思 ふ空 にに はか に 月の 雲隠 れゆ く」
。「 人の 心」 は衆 生の 煩悩 に悩 む心 で、
「暗 きよ り暗 き道 にぞ 入り ぬべ き遙 かに 照ら せ山 の端 の月
」( 拾遺
・哀 傷一 三四 二 和泉 式部
)な ど山 の端 にか かる 真如 の月 を詠 む。 世の 中の 人の 心中 を慮 って いる 時に 見上 げる 空に
、雲 を掻 き分 け山 の端 に月 が出 るこ と だの 意。 後歌 は、 衆生 の行 為こ そが
、仏 の比 喩で ある
「月
」を 隠す 時 雨の 秋雲 のよ うな もの
、間 違い ない の意
。
「山 の端 の月
」「 山の 端の 雲」 とい う歌 句の 対照 が見 られ る。
⑧秋 ふく る木 の葉 の色 に待 つ時 雨一 めぐ りせ ば山 の下 風(3397
)
あき
こ
は
ま
した
同( 秋)
思へ たゞ あだ なる 物は 人の 命野 分の 風に 萩の 上風
(3398
)
おも
いの ち( のわ き)
前歌
「時 雨」 は木 の葉 を色 付か せ、 散ら せる もの
。「 山の 下風
」は
「踏 みし だき 行か まく をし き紅 葉ば に道 踏み わけ よ山 の下 風」
(清 輔 集一 九四
)に 拠り
、山 から 吹き おろ して くる 風の こと
。秋 が更 け木 の 葉を 色付 かせ る時 雨が 一通 り廻 った なら
、山 から 吹き 下ろ す風 に散 る こと だろ うの 意。 後歌
「人 の命
」の はか なさ の比 喩で
、野 分に 吹か れ て、 萩の 上に 置い た露 が落 ちる とい う危 うさ を詠 む。 人の 命は 野分 に 吹か れて
、萩 の上 の露 が落 ちる よう には かな いも ので
、そ のこ とを た だひ たす ら想 像し てみ なさ いの 意。
「山 の下 風」
「萩 の上 風」 とい う歌 句の 対照 が見 られ る。
⑨神 無月 雲に あは れを 吹そ へて 梢に 渡る 夕あ らし かな
(3401
)
(ふ き)
わた
吉 冬 野山 花に あは れは 思な れぬ 色づ く野 辺に 春風 の吹
(3402
)
よし の
(お もひ
)
べ
(ふ く)
前歌 は、 神無 月を 覆う 雲に しみ じみ とし た情 趣を 吹き 加え て、 梢を 移動 する 夕あ らし よの 意。 後歌 二・ 三句 は花 にし みじ みと した 情趣 は 心に 思い 慣れ てし まい
、草 紅葉 に色 づい た野 辺に 春風 が吹 くよ うに 感 じる の意
。
「雲 にあ はれ
」「 花に あは れ」 とい う歌 句の 対照 が見 られ る。
⑩法 の水 に深 き心 は山 の井 の結 しづ くも 濁ら ざる らん
(3419
)
ふか
(む すぶ
)
にご
釈教 今は われ 浅き 心を 忘水 いつ 掘兼 の井 筒な らな ん(3420
)
あさ
こゝ ろ
(わ すれ
)
ほり かね
づゝ
前歌
「法 の水
」は
「法 水」 の訓 読で
、仏 の教 えの 比喩
。そ の本 歌は
「結 ぶ手 のし づく に濁 る山 の井 のあ かで も人 に別 れぬ るか な」
(古 今・ 離別 四〇 四 紀貫 之)
。下 句は 手に すく う水 の雫 も濁 らな いで あろ う の意
。後 歌「 忘水
」は 野中 など の茂 みに 隠れ て。 人目 に付 かな い流 れ のこ と。 また
「堀 兼の 井筒
」は 広場 に大 きな 穴を 掘り
、地 下水 が湧 き 出る まで 渦巻 き状 の踏 み付 け道 を造 って 掘り 下げ てゆ く井 戸の こと で、 仏教 に対 する 信仰 心を 忘れ 水か ら掘 兼の 井へ と深 める こと に喩 えた
。
「深 き心
」「 浅き 心」 とい う歌 句の 対照 が見 られ る。
⑪後 の世 を 思 忘れ て世 に住 まば この 世ば かり に楽 しか りな ん(3445
)
のち
(お もひ
)わ す
す
たの
同( 述懐
) 後の 世を 知る 心こ そ楽 しき を苦 しと いふ はい とゆ ふの 空(3446
)
よ
し
たの
い
前歌 は後 世の こと を忘 れて 此の 世に 住む なら ば、 此の 世だ けは 楽し いに 違い ない の意
。後 歌「 いと ゆふ
」は 漢語
「遊 糸」 に基 づく 語で
、 陽炎 の異 名。
「霞 晴れ みど りの 空も のど けく てあ るか なき かに 遊ぶ 糸 ゆふ
」( 和漢 朗詠
・晴 四一 五 読人 不知
)の よう に、 実態 のは っき り とせ ず、 はか ない こと の比 喩。
「後 の世 を~
」と いう 詩型 の類 似が 見ら れる
。
⑫わ が心 隠さ じば やと 思へ ども 見る 人も なし 知る もの もな し(3447
) 同( 述懐
) わが 心隠 さば やと ぞ思 へど もみ な人 の知 るみ な誰 も見 る(3448
) 前歌 は「 日吉 百首
」重 複歌
(2058
)で
、五 句「 知る 人も なし
」。
「隠 さじ ばや と思 へど も」 は隠 すま いと 思う けれ ども の意
。後 歌も
「日 吉 百首
」重 複歌
(2059
)で
、「 隠さ ばや と思 へど も」 は隠 した いも のだ と
思う けれ ども の意
。前 歌が 宗教 者の 秘め た本 心を 詠む のに 対し て、 後 歌は それ と相 反す る宗 教者 とし ての 立場 を詠 じて いる か。
「わ が心 隠さ
~思 へど も」 とい う詩 型の 類似 が見 られ る。
⑬先 の世 を 思 知る より 泣く 涙今 あが 袖に 乾く 間も なし
(3459
)
さき
(お もひ
)し
な
かは
ま
同( 述懐
) 後の 世は 今宵 か明 日か 泣く 涙思 ふば かり に猶 ぞた まら ぬ(3460
)
のち
よ
こよ ひ
あ す
な
前歌
「乾 く間 もな し」 は乾 く間 もな く涙 で濡 れて いる こと で、
「わ が袖 は水 の下 なる 石な れや 人に 知ら れで 乾く 間も なし
」( 和泉 式部 集 九四
)。 後歌 の初
・二 句は 命が 尽き るの は今 宵な のか
、明 日な のか の 意。
「猶 ぞた まら ぬ」 はさ らに 留ま らな いで 涙が 零れ 出す こと だの 意。
「先 の世
」「 後の 世」 とい う歌 句の 対照 が見 られ る。 以上
、両 百首 にお ける 対照 を為 す歌 の組 み合 わせ を具 体的 に検 討し てき たが
、概 して 歌句 の対 照や 詩型 の類 似に おけ る実 態は 理解 し易 い。 残る
課題 は、 前掲 の( a) 類に 見る よう な、 西山 隠棲 中に おけ る著 述活 動に 関す る対 比と 思わ れる ので
、両 百首 に存 する 重要 な組 み合 わ せを 詳述 した い。 三悪 の家 には 何か 帰る べき 出で にし 物を 五相 成身
(3427
)
(さ んあ く)
なに
かへ
い
(第 三句
「か へる へき
」に
「本 ニか くる へき トア リ、 帰る へき 歟」 の傍 記) 同( 釈教
) かな らず よ夜 半の 煙と 身を ばな せ以 字焼 字の 法の むく いに
(3428
)
(下 部に
「以 之為 遺戒
」。 歌自 体は 細字 行間 に補 入) 前歌
「三 悪の 家」 は仏 教語
「三 悪道
」の こと で、 この 世で の悪 業に より 来世 で落 ちる 三悪 道( 地獄 道・ 餓鬼 道・ 畜生 道)
。「 さん まく
」と も。
「五 相成 身」 は金 剛界 大日 如来 に対 する 行者 の精 神作 用の 五段 階 の観 想( 五相
)を 完成 させ て、 即身 成仏 を達 成す るこ と。 三悪 道に は どう して 帰る こと が出 来よ うか
、出 家し たか らに は五 相成 身( 即身 成 仏) を目 指す べき だの 意。 また 重複 する 日吉 百首
(2080
)で は「 今は 世も 迷も 捨て 六の 道に か へら し物 を五 相成 身」
(初
・二 句「 世も 迷も 捨て
」見 せ消 ち、
「よ もま とひ すて ゝし
」校 異) とな って おり
、今 は世 も迷 妄も 捨て て六 道に 帰 るま いと 思う のに
、そ う思 うな ら五 相成 身を 目指 そう の意
。異 文「 よ もま とひ すて ゝし
(世 も惑 ひ捨 てゝ し)
」で は、 この 世も 心の 乱れ も 捨て てし まっ ての 意と なる
。 これ に対 して
、後 歌「 夜半 の煙
」は 火葬 の煙 のこ と。
「旅 の空 夜半 のけ ぶり と上 りな ば海 人の 藻塩 火た くや とや 見ん
」( 後拾 遺・ 羇旅 五
〇三
花山 院)
。「 以字 焼字
」は 胎蔵 界の 五輪 成身 観に よる もの で、 本 有の 仏性 を顕 現せ しむ るこ と。 必ず 我が 身を 夜半 の煙 と成 すの だ、 五 輪成 身観 の法 の果 報で の意
。 ここ
で金 剛界 の五 相成 身観 およ び胎 蔵界 の五 輪成 身観 につ いて 述べ てお きた い。 五輪 成身 観お よび 五相 成身 観に つい ては
、慈 円の 著述
『法 華別 帖』 に、
(
)
問。 以此 観曼 荼羅 為入 三摩 地。 常行 法之 義不 似歟 如何
。 答。 凡入 三摩 地者
。本 尊行 者同 體観 也。 胎蔵 五輪 成身 念満 足句
。 金界 五相 成身 観身 為本 尊。 是皆 入三 摩地
。此 成身 皆道 場観 以前 令 入三 摩地 也。 両部 之軌 心。 胎四 所輪 布字 百光 王等 後又 在之
。金 ニ ハ五 相成 身之 外又 別無 入三 摩地 也。 胎ハ 一往 先修 因向 果行 法也
。 仍五 輪之 成身
。先 観性 得本 有之 理性 了後
。修 得布 字観 在之
。但 此 胎ニ モ有 従本 垂迹 之義
。此 時四 所輪 布字 八印 等遍 智院 之前 結之 云々 金ハ 自元 従本 垂迹 之行 法也
。仍 念誦 前無 別入 三摩 地。 別尊 法之 時。 観種 子三 形根 本印 所別 用入 三摩 地。 是行 者為 所観 易心 得。 一 途説 用来 也 と見 える
。三 摩地 とい う悟 りの ため の精 神統 一の 行を 行う こと を述 べ、 仏の 性得 本有 の仏 性の 上に 修得 の布 字観
(阿 字観 など
)を 行ず る、 つ まり 胎蔵 界の 五輪 成身 観と 金剛 界の 五相 成身 観と の相 即の 上に 成佛 を 期す る立 場が 記さ れて いる
。胎 蔵界 は修 因向 果の 行法
、金 剛界 は従 本 垂迹 の行 法と 説く のだ が、 多賀 宗隼 に拠 れば
、こ の「 修因 向果
・従 本 垂迹
」と いう 教説 は安 然に 基づ くと して
、安 然『 教時 問答
』( 巻二
) の次 の一 節を 掲げ る。 凡真 言宗 曼荼 羅義 略有 二種
。一 者従 本垂 迹曼 荼羅
。是 一切 諸佛 内 証外 化之 三輪 也。 釈迦 一代 亦攝 此中
。諸 宗就 此釋 種種 身。 二者 修 因向 果曼 荼羅
。是 一切 行人
。従 凡入 聖之 三密 也。 釈迦 所化 亦攝 此 中。 諸宗 就此 釋種 種行
。( 大正 新修 大蔵 経七 五巻 三九 八頁
・天 台宗
叢書 七三 頁) また 五輪 成身 観に つい ても
、多 賀は 安然
『瑜 祇経 修行 法』
(二 巻) の一 節を 引用 して いる
、こ れに つい ては 別稿 に譲 るこ とに した い。 とこ
ろで 略秘 贈答 が浅 略深 秘の 約と いう こと を冒 頭で 述べ たが
、浅 略あ るい は深 秘と いう 文言 が彼 慈円 の著 述の 中に 頻出 する
。
*爾 時毘 盧迹 那仏
。在 蓮華 蔵世 界。 與千 萬億 化身 釈迦 牟尼 仏。 説心 地尸 羅淨 行品 教菩 薩法 証菩 提道 文 此初 段説 自証 心地 戒法 秘密 也。 而浅 略深 秘二 義在 之。 先浅 略如 文相
。梵 網心 地戒 品意 在之
。深 秘 者。 金剛 界頂 宗秘 密心 地戒 品依 三密 義或 説之
。義 決文 其意 分明 也。
(『 秘相 承
』)
*此 次聊 可記 開悟 事。 一切 諸人 以阿 弥陀 為後 世菩 提之 本尊
。諸 教所 讃多 在弥 陀。 故以 西方 而為 一准 云々
是或 四十 八願 荘厳 浄土 之 心。 最後 来迎 十念 具足 之義
。或 法蔵 比丘 無上 念王 等本 願。 以如 此 事為 基本 歟。 誠以 浅略 也。 真言 行者
。尤 可悟 深秘 之心 也。 今以 阿 弥陀 翻無 量寿
。今 延命 常住 之義
。尤 可符 合。 報仏 之智 恵。 虚空 之 月輪
。蓮 花部 教主
。成 菩提 之西 方。 妙観 察智 之心
。声 塵得 果之 国。 凡非 此土 者。 凡夫 初心 之行 者。 欣求 何浄 土哉
。愚 者信 浅略 之 義。 何況 覚者 悟深 秘之 旨哉
。先 生此 国之 後。 可傳 入寂 光海 會也
。
(『 毘逝 別(
)』
*法 花法 事
(10
が)
(11
集)
(12
下)
仰云
。此 法含 用諸 法義 理。 先行 法合 三部 大法
。本 尊三 身即 一仏 也。 三身 亦三 宝也
。仏 法僧 如次
。又 教主 釈尊 是仏 法也
。妙 経不 見 是法 僧也
。但 法寶 言説 ナル カ故 似無 體相
。然 而今 不見 菩薩 即約 理 辺。 法花 ノ體 質是 法寶 スカ タ也
。約 事亦 是僧 寶也 護摩 本尊 段。 誦三 身三 戒等 並請 釈迦 普賢
。是 則具 三身 於一 身収 三 宝一 法。 妙経 法寶 因果 二質 也。 今真 言之 中具 備一 乗ノ 妙理
。故 縮 八軸 妙文 用三 身真 言。 是誦 此真 言供 此尊 即誦 法花 経供 法花 経也
。 勧請 詞此 事。 本尊 釈迦 尊。 妙法 蓮花 経。 不見 大聖 尊可 請也
。若 依 此心
。爐 中釈 迦普 賢並 座。 其前 安経 巻可 観歟
。而 一師 説可 請供 黄 紙朱 軸経 云々
是浅 略義 也 次案 深秘 意。 勧請 詞唱 妙法 蓮花 経。 只二 尊外 別経 體不 可観 置歟
。 今二 尊已 本跡 二門 二 質也
。今 真言 又八 軸肝 心也
。依 之誦 此真 言妙 経功 徳自 備。 供此 尊 法花 経義 理無 闕。 為深 秘義 歟。
(『 四帖 秘決
』一
・一 六二
)
*熾 盛光 印事 承元 二年 三月 二十 九日 仰云
。真 言教 大意
。諸 尊皆 大日 如来 同體 也
主守取取取取取取取取取取取取取取取
イフ 事。 學者 存知 大略 一同 也。 但具 論之
。付 之可 有浅 深也
。所 謂 金輪
・仏 眼・ 尊勝
・愛 染・ 熾盛 光等 是深 也。 如観 音・ 地蔵
・弥 勒 等ハ 浅也
。以 此心 可察 餘尊
。又 付行 法可 有浅 深。 所謂 瑜祇 経行 法 是深 也。 不入 此浅 也。 其浅 手本 聖観 音軌 也。 其故 出大 日一 印。 以 之表 同體
。然 而又 行法 首尾 未必 出深 秘。 於瑜 祇経 者始 終顕 秘旨
。 二(13)
大日 如来 己証 也。 然以 両書 為本 修行 分際 浅深 分明 也。
・・ 以瑜 祇 為本 イハ 行位 等印 結五 輪五 相等 加彼 秘秘 中深 秘行 法等 也。 以此 等 心熾 盛光 根本 印所 上件 深秘 意結 アラ ハス 也云 々 熾盛 光印 先無 所不 至印 明( 是本 地大 日也
) 次金 輪印 明四 智拳 印一 字明
勝身 印三 字明
剣印 三字
鉢印 一字 是大 日如 来現 仏頂 給心 也。 釈迦 大日 両金 輪同 體之 義也
(『 四帖 秘決
』三
・四 七) 右の よう な文 言は
、跋 文に
「文 治六 年十 一月
」と ある 著述
『自 行私 記』
(和 尚御 次第
、外 題云
「八 深
」) や、 逆に
「承 久元 年」 執筆 とさ れる
『本 尊縁
』に も「 浅略 深秘 秘中 深秘
、秘 々中 深秘
」と 見え るの で、 生涯 を通 して 叡山 教学 にお ける 解釈
「四 重秘 釋」 に拠 って
、思 索 の分 類を 成し てい たの であ ろう
。す なわ ち浅 略釋
(表 面的 な解 釈)
・ 深秘 釋( 深い 趣旨 を見 出す 解釈
)・ 秘中 の深 秘釋
(表 面的 と深 遠と の 両者 を超 えた 解釈
)・ 秘秘 中の 秘釋
(厳 守の ほか に深 遠な もの はな い と悟 る解 釈) に拠 る。 とも あれ 西山 隠棲 期に 集中 する 著述 に頻 出し て いる こと は注 目し てよ い。 最後
に、 紙数 も尽 きた ので
、叡 山教 学に おけ る慈 円著 述が いか に叡 山教 学に 基づ いて いる のか
、し かも それ が安 然の 教説 に拠 って いる こ とに つい ては 改め て検 討し たい
。こ こで は慈 円の 叡山 教学 に関 する 教
(14
秘)
(15
起)
説と して
、五 大院 安然 に基 づい てい るこ との 証を
『續 天台 宗全 書』
(密 教3
)を 中心 に提 示し てお きた い。
*今 経題 名。 清浄 法身 毘盧 迹那 仏者
。絶 方処 中台 法界 體性 智所 具五 智一 體大 日也
。故 此経 正説 段清 浄法 界中 教主
。中 台一 智説 法也
。 大日 経等
。内 証五 智一 體一 智説 法也
。常 世間 学者 等。 自性 内証 分 別無 之。 唯八 葉中 台一 具自 性思 無下 事也
。内 証八 葉五 智望 中台 自 性五 智成 他受 用也
。准 餘教 自受 用也
。此 内証 八葉 自受 用出 色界 頂。 形貌 他受 用形 相。 故五 大院
。大 日経 教主 現他 受用 説自 受用 法 門釈 也。 凡今 経超 瑜祇 経等 也。 瑜祇 秘密 教中 相対 門至 極説
。其 故 両部 理智 相対 也。 而瑜 祇経
。理 智相 対而 説不 二極 理。 故煩 悩即 菩 提。 無明 則法 性源 奥。 即時 而真 極秘
。唯 在瑜 祇経
。愛 染染 愛秘 密。 仏願 部母 極理
。煩 悩御 即菩 提・ 菩提 即煩 悩。
(『 秘相 承集
』三 七頁
)
*問
。密 教大 旨大 日定 印。 其説 文以 右置 左上
。而 今何 違常 途密 教之 義乎
。以 邪押 正意 甚不 可也
。如 何 答。 五大 院和 尚決 此疑 云。 天台 大師 定印 口決
(安 然記
)
(『 別行 経抄 上』 五五 頁)
*五 大胎 蔵界 五輪 成身 意也
。是 等皆 為事 於面 兼理 意也
。故 五大 院釋 云。 両部 為理 於面 兼
事。 蘇悉 地為 事於 面兼 理云 々 即此 意也
(『 別行 経抄 下』 七八 頁)
*灌 頂瓶 水事
(● は梵 字、 以下 同様
) 顕教 元品 無明 断事
。等 覚智 断歟
。妙 覚智 断歟 云事
。天 台宗 大大 大
事也
。而 今支 分生 真言 者●
●也
。以 此普 賢印 明令 灌頂
。自 通顕 教 之談 者歟
。然 以等 覚智 断之 也。 但其 智者 妙覚 智下 加也
。・
・ 金剛 薩埵 者。 大日 所変 事業 成就 身也
。是 則妙 覚之 中等 覚也
。因 之 瑜祇 経行 法。 大日 成薩 埵身 薩埵 成本 尊身
。何 尊行 法深 行阿 闍梨
。 可用 此仏 眼大 成就 品至 第之 由。 師師 口伝 也云 々・
・ 次用 八印 事。 又五 大院 和尚 意也
。胎 蔵秘 密不 顕之
。金 界灌 頂曼 陀 羅分 明説 顕。 仍准 金界 用此 説。 何況 祖師 常用 給此 説云 々・
・ 凡真 言教 之習 常用 重點
。重 用之
。全 不可 背教 意歟
。何 況用 支分 生 一印 之時
。本 尊灌 頂作 法無 之。 只大 日等 覚智 瓶水 弟子 頂上 灌則 座 除断 元品 無明
。令 証得 大覚 朗然 之位 也。 以之 為灌 頂之 本意
。其 上 又四 智四 行無 所不 至等 功徳 重灌 顕。 事次 第相 叶其 理。 可然 歟・
・ 次又 両説 出来 者。 共不 棄之
。皆 可用 事浅 略深 秘等 之議
。令 出来 也。 而我 宗之 至極 大事
。無 過灌 頂大 法。 至此 事而 二説 難思 議 也。
・・ 凡以 灌一 渧水 於頂 上。 称密 教至 極灌 頂。 秘教 之本 懐在 之云 々 浅 智人 不得 其意
。又 不信 也。 悲哉 悲哉
。可 知。 以出 過語 言道 之● 水。 灌我 覚本 不生 之● 灰。 諸過 得解 脱之 火。 遠離 於因 果之 風。 萌 仏牙 於虚 空。 証究 竟之 仏果
。是 當教 之至 極也
。勿 致疑 網。 浅智 仰 可信 之。 深智 習可 悟之
。重 委論 之。
●字 方壇 大地 也。 真俗 二諦
。依 正二 法。 浄土 穢土
。界 内界 外。 併無 不出 生此
●字
。 此● 字之 中有
●●
●● 之四 字。 此● 智火 出自
●字 之中 還焼
●字
。 以字 焼字 云是 也。 俗諦 有漏 之迷 状萬 法悉 焼尽 訖。
●字 同體 出世 無
漏灰 成訖
。此 灰上 以● 字智 水灌 之。 解脱 之風
。扇 空界 之時
。究 竟 成佛 種子
。忽 以令 生長 也・
・ 又今 教以 瑜祇 経與 別行 経為 至極 也。 瑜祇 経両 部肝 心也
。毘 盧遮 那 別行 経蘇 悉地 肝心 也。 両部 肝心 者。 瑜祇 経仏 眼大 成就 品説 成身 行 法。 用行 位薩 埵仏 眼八 字。 以此 四ケ 印明 存七 分行 法。 其功 能広 可 勘見 之。 胎蔵 八字 明加
●字
。師 資口 伝秘
。何 事如 之哉
。但 対記 分 明也
。大 日変 作薩 埵身
。薩 埵又 変成 佛眼 部母 身。 此仏 眼部 母者
。 則是 胎蔵 界大 日身 也。 薩埵 経歴 両部
。成 事業 身也 云々
自此 仏眼 部母 身出 生十 凝誐 沙倶 胝仏 云々 師説 云。 此出 生仏 釈迦 金輪 也云 々 凡此 行法 次第 学真 言教 教相 生 義吉 吉可 心得 知也
。胎 蔵理 曼荼 羅云 々 此理 者中 台大 日● 字之 本 源也
。凡 一切 萬物
。無 不出 生是
。以 出生 之義
。名 胎蔵
。即 名詮 自 性者
。如 此名 也。 此胎 蔵● 字大 日。 金界
●字 大日 令出 生。 是従 本 垂迹 之源 也。 此金 大日 先現 事業 身。 又還 成部 母身
。此 仏眼 胎蔵 大 日也
。教 時義 云。 胎大 日亦 名仏 眼云 々 已其 義分 明也
。自 此部 母 身出 生諸 佛。 是釈 迦金 輪也 云々 釈迦 如来 亦名 金輪 也
(『 毘逝
別( 上)
』二 一二 頁)
*胎 蔵金 剛蘇 悉地 灌頂 護摩 等一 切行
。以 之可 准知 也云 々。 略抄
(『 毘逝
別( 下)
』二 三七 頁)
*今 一字 金輪 云尊
。大 日釈 迦令 合成 尊也
。是 則金 剛界 大日 也。 佛眼 云則 胎蔵 大日 也( 教時 義云
。亦 名佛 眼)
。令 成就 此合 身女 身 也。 世諦 陰陽 也。 世界 天地
。此 女身 自何 所出 生哉
。従 虚空 出生
。
仍云 虚空 眼以
●字 為種 子( 或● 或●
)。 委論 之言 語難 及
(『 法華
別帖
』二 六一 頁)
*四
・八 二 三種 意生 身事
(私 云。 桂林 房阿 闍梨 瑜等 指示 也) 仰云
。件 因昨 今披 見祖 師抄 物。 被書 付タ ルハ
。教 時義 二引 元暁 楞 伽疏 云。 法身 有二
。一 自性 法身
。本 有法 性也
。二 意成 法身
。成 正 覚時 以一 切法 為自 身也 云々
以之 思之
。五 輪成 身意 成身 可依 此意 歟 真言 宗三 種生 身極 大事 ナリ ト先 師所 示也
。仍 失顕 教歟
(已 上彼 抄 物文 也) 見此 文案 之。 秘教 意三 種意 生身 トイ ハ。 三身 成身 也可 心得 歟。 所 謂法 身成 身。 胎五 輪成 身也 以五 輪成 身意 生身 云事
。入 秘密 曼荼 羅品 義釋 見タ リ。 虚心 記引 之 報身 成身
。金 五相 成身 也 以報 仏成 道為 本故 也。 仍一 往義 相叶 歟 応神 ノ意 ハ。 成無 漏界 之時
。依 三諦 ノ理 観其 生三 種也
。指 之為 三 意生 身。 是通 教義 也 真言 教ノ 意ハ
。界 内依 身上 三仏 即身 成仏 観所 闕諸 教歟
。仰 趣大 略 如此 私 耳 云。 教時 文広 可見 之
(『 四帖 秘決
』四
・八 二)
以上
、五 大院 安然
(「 教時 義」
「略 抄」 を含 む) に関 する 記事 を拾 っ てみ たが
、も ちろ ん、 その 他に
、雙 林寺 僧正
(全 玄)
(『 四帖 秘決
』 一・ 七七
、二
・三 九、 二・ 六六
)・ 聖昭
(『 四帖 秘決
』二
・八
、四
・八 六)
・観 性法 橋(
『四 帖秘 決』 二・ 八、 二・ 二四
、四
・一
)な ど叡 山の 伝燈 の灌 頂相 承に 関わ る人 物の 名前 も見 える こと を付 け加 えて おき た い。 本百 首に みる 慈円 の真 言に 関す る研 鑽は 次の 一首 に集 約し てい るの では ない だろ うか
。言 い換 える と、
「略 秘贈 答和 謌百 首」 は名 称の 示 す通 り密 教研 究の 成果 を取 り扱 った もの と言 える ので はな いだ ろう か。 行ふ に真 の言 をな らは ずは 心に 月の 宿ら ざら まし
(3 38 6)
をこ な
(ま こと
) こと
やど
〔注
〕
⑴ 拙稿
「慈 円『 建暦 三年 日吉 百首
』考
(徳 島文 理大 学文 学論 叢2 号・ 昭60
→
『慈 円和 歌論 考』 笠間 書院
・平 10) 参照
。
⑵ 青蓮 院本
『拾 玉集
』に 拠れ ば、 その 内題 の右 下に
「本 ニハ 二首 ツヽ 載之
。 其間 哥一 首斗 程闕 在之
」の 注記 があ り、 この 百首 の呼 称が 贈答 歌形 態( 二首 で一 対を なす
)に 由来 する こと を確 認で きる
。二 首の 中間 上部 に「 春」 以下 の部 立が 書き 込ま れて いる
。但 し、 青蓮 院本
・高 松宮 本共 に混 乱が ある ので
、 欠落 する こと もあ る。
) 多賀 宗隼
『校 本拾 玉集
』の 逸脱 を青 蓮院 本写 真版 で補 訂。 本文 の性 質上
、 十題 百首
・廿 題百 首を 欠脱 する 他、 本文 的に 種々 の問 題を 抱え る『 新編 国歌 大観
』で はな く、 歌本 文・ 番号 は青 蓮院 本を 底本 とす る『 校本 拾玉 集』 に拠 るの で、 注意 され たい
。 ここ で略 秘贈 答和 謌百 首の 青蓮 院本 写真 版に 拠る 補訂 を掲 げて おき たい
。
(但 し、 押紙 は除 く。
) 三五 八二
・三 五八 三中 央上 部に
「○ 本」
(三 五八 二肩 の「 春」 が○ の位 置 にあ るこ と) 補入
。 三五 八四
・三 五八 五中 央上 部に
「本 同」 補入
。 三五 九〇
・三 五九 一中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 一〇
・三 六一 一中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 一七
・三 六一 九の 肩に ある
「同
」除 去。 三六 三〇
・三 六三 一中 央上 部に
「閑 居」 補入
。 三六 三一 注記
「四 首落 歟。 奥ニ 書入 之」 上部 に「
○神 祇」
「○ 同」 補入
。 三六 四一 及び 三六 五〇 は細 字で 行間 に書 入れ らる
。 三六 四二 第五 句「 世を はす てむ
」→
「世 をは すて なむ
」 三六 五七
・三 六五 九・ 三六 六一 の肩 にあ る「 国」
→「 同」
。 三六 六〇
・三 六六 一中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 六二 初句
「お もは やと
」→
「お もは しと
」 三六 六二
・三 六六 三中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 六七 左肩
「○ 本」
→初 句に
「本
」傍 記(
「正 本」 本文 が初 句通 りで あ るこ と)
。 三六 七〇
・三 六七 一中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 七一 と三 六七 四の 歌順 の交 代を 指示 する 記号
。( 三六 七一 第二 句「 な にな きち り」 の振 り仮 名)
。 三六 七五 後の
「○ 本」 除去
。 三六 七八 初句 に「 本」 傍記
(「 正本
」本 文が 初句 通り であ るこ と)
。 三六 八〇
・三 六八 一中 央上 部に
「同
」補 入。 三六 八三 第三 句「 殊す 霜は
」→
「残 す霜 は」
⑶ 青蓮 院本 には 三六 四一 歌の 後に 注記
「四 首落 歟。 奥ニ 書入 之」 が見 え、 底 本に 無い ので 奥に 補足 した こと が分 かる
。跋 後に 注記
「閑 居之 次此 二首 証本
在之 落歟
。仍 書入 之」 と神 祇四 首( 三六 六七
~三 六八
〇) を記 して いる
。青 蓮院 本と 同系 統の 国立 歴史 民俗 博物 館蔵 高松 宮本
(る
・二 四九
)な どで は
「正 本」 の指 示通 り「 閑居
」の 次に 確か に収 録さ れて いる
。
⑷ 秋一 一の 組み 合わ せ中 の三 五九 六・ 三五 九七 では 左歌
「む ら柴 に雉 立つ な り桜 狩花 散る 野辺 の春 のあ けぼ の」 は「 春」 であ る。 此例 から も右 歌の 季節 に従 って 分類 され てい るよ うで ある
。ち なみ に三 五九 六「 暮の 秋」 に対 して
「春 の曙
」が 配さ れた もの
。
⑸
「三 五八 六・ 三五 八七
」「 三五 九八
・三 六一 四」
「三 六一 一a
・三 六一 二・ 三五 九六
・三 五九 七a
」「 三六 一六 a・ 三六 一七
・三 六一 八・ 三五 九九
・三 六一 九・ 三六 二四
・三 六二 五・ 三六 二六
・三 六二 七( 以上 九首 以校 本書 入 之)
」「 三六 三三
・三 六三 五・ 三六 三六
」「 五一 三八
・二 四六 三a
・三 九八 四 a・ 三六 四二
・三 六四 三・ 二二 一六
・五 一六 四・ 三五 八四
・三 五八 五( 此本 六十 首詠 改了
。勿 論之
。但 本数 百六 十六 首歟
)( 裏書
・・ 以上 任本 書入 之)
」
「三 六四 四・ 三六 四五
・三 六四 六・ 三六 五四
・三 六五 五・ 三六 五六
・三 六五 七・ 三六 五八
(裏 書・
・以 上八 首以 校本 書入 之。 但以 上八 首略 秘贈 答百 首中 ニ入 之御 哥也
)」
「三 六七 四・ 三六 七二
・三 六七 三・ 三六 七一
(裏 書・
・以 上 四首 以校 本書 入之
。但 四首 悉略 秘贈 答百 首哥 也)
」「 三六 七八 a・ 三六 七九
・ 三六 八一
」
⑹ 例え ば三 六七 一歌 と三 六七 四歌 の交 代を 指示 する 記号 があ り、
「正 本」 は
「三 六七 四・ 三六 七二
・三 六七 三・ 三六 七一
」の 歌序 であ るこ とが 分か る
(八 件め の押 紙と 合致
)。
⑺ 三五 八二
(日 吉百 首二 二二 二)
・三 五八 六( 同二 二一 八)
・三 六〇
〇( 同二 二二 七)
・三 六三 四( 同二 二八 一)
・三 六四 一( 同二 二八 五)
・三 六四 三( 同 二二 七五
)・ 三六 六六
(同 二二 四二
)・ 三六 六七
(同 二二 四三
)・ 三六 七〇
(同 二二 五七
)・ 三六 七五
(同 二二 七七
)・ 三六 七六
(同 二二 七二
)・ 三六 七七
(同 二二 七三
)・ 三六 七八
(同 二二 八六
)・ 三六 七九
(同 二二 八七
)・ 三六 八〇
(同
二二 九四
)・ 三六 八六
(同 二二 九七
)・ 三六 八四
(同 二二 九八
)
⑻ 拙稿
(同 注2
)参 照。
⑼ 吉水 蔵「 法華
別帖
」は 続天 台宗 全書
『密 教3
(経 典註 釋類
Ⅱ)
』に 拠る
。 末尾 に「 承元 四年 九月 二十 九日
。於 西山 御所
。法 花三 帖給 了。 即出 裏了
。同
主守取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取
十月 十四 日。 於岡 崎房 書写 了。 自去 四日 天変 御祈 熾盛 光法 伴僧 勤仕 之間
。速 速恩 恩。 仍書 写遅 遅也
求法 仏子 成源
」と いう 書写 奥書 が見 え、 また 表紙 に
「秘 秘中 深秘 也、 穴賢 穴賢 不可 他見
」と 記さ れる
。内 容に つい ては
、多 賀宗 隼『 慈圓 の研 究』
(吉 川弘 文館
・昭 55) 参照
。
⑽ 五大 院安 然著
『教 時問 答』 は別 に『 教時 義』
『真 言宗 教時 問答
』と も言 い、
『教 時諍 論』 二巻
、『 胎蔵 金剛 菩提 心義 略問 答抄
』一
〇巻 と併 せて
、台 密教 判の 集大 成と いえ よう
。『 大正 新修 大蔵 経』 七五 巻( 續諸 宗部
)及 び『 天台 宗叢 書』 に拠 る。 内容 につ いて は多 賀宗 隼『 慈圓 の研 究』
(吉 川弘 文館
・昭 55) 参照
。
⑾ 三千 院圓 融蔵
「秘 相承 集」 は続 天台 宗全 書『 密教 3( 経典 註釋 類Ⅱ
)』 に 拠る が、 特に 書写 奥書 が見 えな い。
⑿ 吉水 蔵「 毘逝
別」 は続 天台 宗全 書『 密教 3( 経典 註釋 類Ⅱ
)』 に拠 る。 末 尾に
「承 元三 年己 巳六 月。 於西 山草 庵。 書之 了」 とい う書 写奥 書が 見え る。
主守取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取取
また 表紙 に「 極ゝ 深ゝ 秘ゝ 秘ゝ
」と 記さ れる
。
⒀ 青蓮 院蔵
「四 帖秘 決」 は続 天台 宗全 書『 密教 3( 経典 註釋 類Ⅱ
)』 に拠 る。 巻頭 に「 鎮和 尚御 口伝
慈賢 筆 篇目 道覚 親王 真蹟 也」 とい う記 述が 見え る。
⒁ 叡山 南渓 蔵「 八深 秘」 は「 自行 私記
」と もい い、 多賀 宗隼
「法 橋観 性に つ いて
―と くに 慈円 との 関係
」( 歴史 地理 90巻
・1 昭 90
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『慈 圓の 研究
』) 参 照。 文治 六年 十一 月日
、為 成仏 欲修 此行 法、 仍為 暗( 諳カ
)誦 書之
、努 々穴 賢、 非機 人借 謬莫 令見 知之
、南 无金 剛薩 埵、 返々 守護 給、 此行 法大 日経 不説 之、 瑜祇 経仏 眼品 雖説 之、 猶於 委細 秘而 不明 之、 只師 資口 伝也
、哀 哉々 々、 慈覚
大師 十三 代師 資口 伝、 大日 如来 三密 修行
、成 仏之 期在 近、 可思 之、 私云
、自 大成 就品 出修 行此 法之 時、 仏眼 種智 真空 冥寂 如来 如実 知見 三界 之相
、無 有生 死之 故也
、即 身成 仏一 生妙 覚之 真因
、只 可在 此行 法、 深可 信仰
、終 焉之 時、 敢不 可廃 之 金剛 仏子 慈― 但し
、著 書に は右 の跋 文は 省略 され てお り、 また この 叡山 南渓 蔵本 は曼 殊 院本 に拠 って
「文 治六 年二 月」 と修 正す べき と記 され てい る。
⒂ 吉水 蔵「 本尊 縁起
」は 多賀 宗隼
『慈 圓の 研究
』に 全文 引用
。末 尾に
「小 僧 出家 受戒 之後
、・
・及 七旬
」「 太上 天皇 自十 一歳 御元 服之 時、 今令 四十 宝算 給 也」 とあ り、 起草 者は 慈円
、承 久元 年の 著作 であ るこ とは 確実 であ る。