2012 年度(平成 24 年度)卒業論文 FW
アニメにおける新しいマネタイズ戦略
2013 年 3 月
公立大学法人宮城大学
事業構想学部 事業計画学科
20921046 齋藤詩織
論文の構成 序章 はじめに 研究テーマ決定の背景と意義、本研究の目的や独自性を示していく。 第1 章 アニメビジネスの現状 アニメビジネスの歴史や現在のビジネスモデル、市場の動向などから アニメ業界が今抱えている課題を明確にしていく。 第2 章 フリー戦略とは フリー戦略の仕組み、オンライン上でのフリーを整理していく。 第4 章 青年向けアニメの新たなマネタイズ戦略 第1 章~第 3 章を踏まえて、フリー戦略を活用した青年向けアニメの 新たなマネタイズ戦略を提示していく。 第5 章 まとめ 本研究の成果と残された課題について言及していく。 第3 章 アニメ×フリー戦略の事例研究 既にオンライン上で展開されているアニメのフリー戦略の事例研究を行っていく。 研究対象はニコニコ動画、クランチロールである。
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目次
序章 はじめに 5 0.1 本研究の背景と意義 5 0.2 本研究の目的と独自性 5 0.3 論文の構成 5 第1 章 アニメビジネスの現状 7 1.1 アニメの歴史(アメリカ) 7 1.2 アニメの歴史(日本) 9 1.3 現在のビジネスモデル 11 1.4 市場の動向 15 1.4.1 制作分数の推移 15 1.4.2 パッケージ売上の動向 18 1.5 第 1 章まとめ 20 第2 章 フリー戦略とは 21 2.1 フリーの仕組み 21 2.2 フリーの心理学 23 2.3 オンラインにおける情報と消費者 24 2.4 オンラインにおけるフリー 24 第3 章 アニメ×フリー戦略の事例研究 27 3.1 ニコニコ動画 27 3.2 クランチロール 30 第4 章 青年向けアニメの新たなマネタイズ戦略 33 第5 章 まとめ 37 [参考文献] 39 [参考 URL] 395
序章 はじめに
0.1 本研究の背景と意義 日本のアニメは今や世界中から愛されている。世界各地で日本のアニメに関するイベン トが開催されており、声優やアニメソングの歌手を目指す外国人もいる。しかし、ビジネ スの側面に着目すると課題が山積している業界である。インターネット環境の普及と整備 に伴い、現在のビジネスモデルでは利益回収が厳しくなっている。日本のアニメが今後も 発展を続け、世界中から更に愛されるためには、ビジネスとしての成功、利益回収は必須 である。本研究ではアニメビジネスの抱える課題を明確にし、インターネットを活用した アニメビジネスの新たなマネタイズ戦略を提示する。 0.2 本研究の目的と独自性 パッケージ売上に収益を頼ることが厳しくなってきた青年向けアニメの新しいマネタイ ズ戦略を提案することで、日本のアニメが利益回収に成功し、更に発展する可能性を探っ ていくことが本論文の目的である。 テレビ放送を続けることに対して疑問を持ち、視聴することそのものからも収益を得る ことは出来ないか考察した点に本論文の独自性があると考える。 0.3 論文の構成 第 1 章では過去から現在までのアニメを追い、現在のビジネスモデルと市場の動向から 現在アニメビジネスが抱えている問題を明らかにする。 第 2 章ではフリー戦略について整理していく。フリー戦略を活用したアニメビジネスの 可能性を探るための土壌を形成するのが目的である。 第 3 章では第 2 章を踏まえて、現在フリー戦略を活用してアニメ配信を行っている事例 について考察している。事例研究を通して、新しいマネタイズ戦略に必要な要素を探って いく。 第 4 章では第 1 章から第 3 章までを踏まえ、新しいマネタイズ戦略を提案していく。 第 5 章はまとめと本論文の限界と課題について述べている。7
第
1 章 アニメビジネスの現状
1.1 アニメの歴史(アメリカ) 増田(2011)によれば、アニメビジネスが成り立っているのはアメリカと日本である。アメ リカと日本、それぞれのアニメビジネスの歴史を踏まえることで現在のアニメビジネス理 解へと繋げる。本節ではアメリカ、次節では日本におけるアニメビジネスの歴史を扱う。 本節は増田(2011)を参考とした。 アメリカにおけるアニメビジネスは映画ビジネスとほぼ同時に始まった。 ウィンザー・マッケイはニューヨーク・ヘラルド紙で連載し、国民的人気を獲得した漫 画家であったが、自分の作品をアニメ化した。しかし動画や背景をすべて一人で描いてい たため、数分の作品を制作するのに何カ月もの時間を費やした。当時の商業映画は週ある いは隔週でプログラムが変わるため、マッケイの制作したアニメは商業映画の配給ルート には乗らず、演芸場で上演されていた。アニメを配給ルートに乗せるためには、作品のク オリティだけでなく、毎週供給できる制作体制が必要であった。 それを成功させたのが、マッケイと同じ新聞漫画家であったジョン・ランドルフ・ブレ イである。彼は1913 年にスタジオを構え、制作工程の分業化・省略化に取り組み、1915 年末にパラマウント1と週1 本の作品供給契約を交わすことに成功した。 そして1919 年、パット・サリヴァンとオットー・メスマーのコンビによって発表された 『フィリックス』が大ヒットした。ファンたちはアニメだけでなくフィリックスのキャラ クターグッズにも飛びついた。キャラクター・マーチャンダイジング・ビジネス2の始まり である。 ウォルト・ディズニーは1923 年にディズニーブラザーズスタジオを設立し、1928 年に ミッキーマウスが誕生した。ミッキーマウスは映画上映前の短編アニメであるにも関わら ず、アニメを目的とする観客も現れるほどの人気を獲得した。キャラクターグッズも大き く売れ、いつしかキャラクターグッズからもたらされるロイヤリティ収入がフィルムレン タルの売り上げをはるかに上回るようになった。 その中でウォルト・ディズニーは長編アニメの制作に挑戦した。資金援助してくれる銀 行家の存在もあり、1937 年『白雪姫』が初の長編アニメとして発表された。『白雪姫』は 800 万ドルという興行収入を挙げ、大成功を収めた。これをきっかけに、『ピノキオ(1940 年)』『ダンボ(1941 年)』『バンビ(1942 年)』『シンデレラ(1950 年)』『ピーターパン(1953 年)』 『眠れる森の美女(1959 年)』などの不朽の名作を世に送り出してきた。1955 年にはディズ ニーランドがオープンし、キャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスが強化された。 1 パラマウント Paramount Pictures。1912 年に設立されたアメリカ最古の映画スタジ オ。映画制作・配給を行っている。 2 キャラクター・マーチャンダイジング・ビジネス キャラクターグッズ製作に伴い発生す るロイヤリティ収入によるビジネスのこと。後に詳しく述べる。8 1950 年代、ディズニーが名作を残す中で、アメリカアニメは凋落していった。1946 年に 出されたブロック・ブックキング禁止令によるものである。 当時アメリカでは映画会社が制作から配給、興行までをコントロールしており、大きな 力を持っていた。映画館館主はA 級作品を上映するために同時に何本かの B 級作品も購入 しなければならなかった。これがブロック・ブッキングである。このシステムで映画会社 は年間52 作品の財源が確保できていた。しかしこのシステムが禁止されたことにより、財 源の確保が厳しくなり、コストの掛かるアニメはカットされた。そのため1950 年代半ばか ら、たくさんのスタジオのアニメ部門が閉鎖されたのである。 1960 年代になるとテレビの時代へと移行し、映画産業と共にアメリカアニメも沈んだ。 1984 年、ディズニーの経営トップ陣が変わり、新体制となる。そこで発表された『リト ル・マーメイド(1989 年)』からディズニーが再び活気づく。『リトル・マーメイド』は興行 収入が8436 万ドル、『美女と野獣(1991 年)』では 1 億ドルを突破し、『アラジン(1992 年)』 が2 億ドル、『ライオン・キング(1994 年)』が 3 億ドルを超えた。 そして1995 年に発表された『トイ・ストーリー』からアニメの制作方法に変革が起こっ た。『トイ・ストーリー』を始めとして、それ以降フルCG アニメへと移行が進んだ。 フルCG アニメへの移行が進められた大きな要因は 2 つある。 1 つは制作費のスケジュール管理が容易になり、大幅なコストカットが実現したことにあ る。それまでのセルアニメは前述したように1 枚 1 枚アニメーターが手で描くため、膨大 な手間と暇が掛かる。制作費のほとんどは人件費であり、コストカットが難しい。そのた めスケジュールの遅れはそのまま予算オーバーを意味する。しかしフルCG アニメはデジ タル制作であるため、高クオリティでありながらスケジュールの管理がしやすいのである。 2 つ目は新たな視聴層獲得の可能性である。アメリカにおいては現代でも尚、「アニメ= 子どもが見るもの」という意識が強く、年齢層が高い顧客の獲得が難しい。しかしフルCG アニメに関しては、大人の視聴層も獲得し始めているようである。 実際の興行収入もセルアニメが落ち込んでいく中、CG アニメは 2005 年までに発表され た作品のほとんどが1 億ドルを超えており、ビジネスとして成功を収めている。 2006 年には各社が新規参入を図った結果、メジャーのタイトルだけでも 10 作品が公開 された。この年の作品を幾つか挙げてみると、『カーズ』、『ハッピーフィート』、『アイス・ エイジ2』等がある。それ以降に発表された作品としては、『シュレック 3(2007)』、 『WALL.E(2008)』、『カールじいさんの空飛ぶ家(2009)』、『トイ・ストーリー3(2010)』等、 日本でも人気となった作品ばかりである。 2006 年以降、北米興行収入におけるアニメの割合は 10%を超えており、CG アニメは着 実に存在感を高めている。 しかし、増田(2011)は CG アニメにも課題があるという。CG アニメにおけるメインキャ ラの70%が人間以外の生物・非生物(動物・昆虫・モンスター・ロボット等)であることから、 本質はCartoon(漫画映画)であり、飽きが来るのが早いのではないかという危惧である。
9 果たしてアメリカのCG アニメはこのまま安定した存在となり得るのか。それとも飽き られてしまうのだろうか。確実に言えるのは、大人のために作られていないということで ある。「大人のためのアニメ」が制作され、アメリカの人々に受け入れられることが今後あ るとすれば、日本の青年向けアニメの脅威となるかもしれないし、日本の青年向けアニメ が更に受け入れられる糸口となるかもしれない、と考えられる。 1.2 アニメの歴史(日本) 本節では増田(2011)、多田(2002)を参考とした。 日本にアニメが登場したのは1917 年、アメリカアニメと同じく 1 作品 5 分前後であり、 劇場で公開されていた。1925 年からは文部省で予算が計上され、教育用漫画映画の需要が 高まったが、まだまだアニメビジネスとは言えない状況であった。 日本のアニメビジネスは1956 年、東映動画(現・東映アニメーション)の設立と共にスタ ートした。東映社長の大川博は債務超過状態の東映を立て直し、配給収入で松竹を抜いて トップを取るまでに成長させた人物である。大川は熟練の演出家やアニメーターを擁する 日動映画を買収し、最新設備を備えた巨大なスタジオを設立した。1958 年に日本初の劇場 長編カラーアニメ『白蛇伝』を発表し、国内で大ヒットしただけでなく、海外にも配給さ れた。この作品をきっかけとして手塚治虫はアニメ制作の決意を固め、宮崎駿は漫画家志 望からアニメへと転換したという。 手塚治虫は虫プロを設立し、1963 年に『鉄腕アトム』でテレビアニメに参入した。アト ムは子どもたちの厚い支持により最高視聴率 40.2%を記録し、関連商品も大いに売れた。 アトムの商業的成功により、テレビアニメへの参入が一気に増えた。また、アトムからテ レビアニメ1 話=30 分という形態が確立し、現在もほとんどのテレビアニメにおいてその 形態が守られている。 1968 年からは『巨人の星』、『アタック No.1』、『あしたのジョー』、『タイガーマスク』な どの人気アニメが連続して輩出され、アニメはテレビの 1 コンテンツとして確固たるポジ ションを獲得していった。 1977 年に公開された劇場アニメ『宇宙戦艦ヤマト』は日本のアニメ史においては欠かせ ない存在である。1974 年に放送されたテレビアニメ版を再編集したものであるにも関わら ず、公開前日から徹夜で並ぶファンが現れるほどの行列ができ、配給収入 9 億円を稼ぐほ どの人気であった。翌年には『宇宙戦艦ヤマト さらば愛の戦士たち』が公開され、観客 動員数は400 万人、配給収入は 21 億を超えた。 ヤマトにおいて注目すべきはそのファン層である。これまでに挙げたアニメはあくまで も子どもたちに向けられたものであった。しかし、ヤマトの行列を作ったのは青年の男性 たちだったのだ。今なら「オタク」と称し、称される人々である。このときに初めてアニ メを積極的に見る青年男性層が社会的に認知されたのである。 ヤマトの成功をきっかけとして、それ以降青年男性向けアニメが登場するようになった。
10 『機動戦士ガンダム』もその一つである。ガンダムは再放送によって子どもから青年層 まで幅広い人気を獲得し、1 個 300 円で販売された『ガンダム・プラモ』は半年で 100 万個売れた。 また、このころからビデオが登場した。ビデオという映像パッケージの販売が可能に なったことと、青年層のアニメファンのニーズによって、ビジネスモデルに変化が起き た。それまではキャラクター・マーチャンダイジングが収益の柱であったが、映像パッ ケージの売上を収益の柱とすることが可能になった。 1980 年代、青年向けアニメへの需要が高まる中で OVA3が興隆した。青年向けアニメ は視聴層が限られていることからスポンサーがつきにくく、表現が放送コード的に厳し いためである。 1984 年に公開された劇場アニメ『風の谷のナウシカ』で初めて製作委員会方式4が導入 された。テレビアニメにおいては 1992 年に『無責任艦長タイラー』で初めて導入され、 『新世紀エヴァンゲリオン』から主流となっていった。 『新世紀エヴァンゲリオン』は1995 年に放送された青年向けのアニメである。このア ニメが大ヒットしたこと、さらに同時期に『ポケットモンスター』、『もののけ姫』とい うアニメの大ヒットにより、アニメビジネスに対する期待感が高まった。 ポケモンは国内だけでなく、全米で大ブームとなるほどであった。1999 年に公開され た劇場版『ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は3 日間で 3103 万ドルの興行収入 を挙げ、全米興行チャートの1 位を獲得した。1970 年代半ばからビデオの普及によって 日本のアニメがアメリカに徐々に浸透してはいたものの、ポケモンの大ヒットによって、 日本のアニメビジネスが世界から注目を集めるようになったのである。 アニメビジネスへの期待の高まりから、1997 年、テレビ東京を中心として深夜にアニ メ枠が開放された。深夜枠は放送権料が安価であることもあり、それまでアニメには縁 の無かった企業までもがアニメビジネスへの新規参入を試みた。また、表現の規制も緩 く、製作委員会方式で制作される青年向けアニメが爆発的に増えていった。 2000 年代は青年層に女性のアニメファンが増えたことが特徴である。深夜枠のアニメ の中には青年女性向けのアニメも登場した。2004 年にはテレビアニメにおける新作制作 分数5において、青年向けアニメは子ども向けアニメを越えた。 しかし2007 年から状況が一転する。それまではずっと右肩上がりであった制作分数が 3 OVA オリジナル・ビデオ・アニメーション。最近では OAD(オリジナル・アニメーショ ン・ディスク)と表現されることもある。主にテレビ放送をせずにパッケージ販売・レンタ ルによって発表されるアニメ作品を指す。スポンサーや放送コードに縛られず、自由な表 現が可能であるため、青年向けの内容が多い。 4 製作委員会方式 映像作品を製作するにあたり、関連会社が共同出資することによって製 作資金を調達する方法である。後に詳しく述べる。 5 新作制作分数 1 年間に制作された新作タイトルの制作分数。
11 2007 年以降減少し続けている。順調にみえていたパッケージ6売上にも陰りが見え始めた のである。製作委員会方式によってアニメの制作は増えたものの、実際にはリクープ7が 成立することがほとんどなかったためである。 更に、近年の特徴としてはインターネットの普及・進化によって合法・違法問わずイ ンターネットによってアニメ(その他エンターテインメントコンテンツも例外ではない が)を視聴するスタイルが浸透し始めている。 近年のアニメのビジネスモデル、及び市場の動向については次節以降で詳しく述べて いくことにする。 1.3 現在のビジネスモデル 日本とアメリカにおけるアニメビジネスの始まりから現在までを簡単に追ってきたが、 ここではあらためて日本におけるアニメの種類と特徴を整理し、ビジネスモデルについて 詳しく述べていく。 まず、日本のアニメは大きく2つに分けられる。子ども向けアニメと青年向けアニメで ある。 子ども向けアニメは増田(2009)ではキッズ・ファミリー向け(KF)アニメ、まつもと(2012) では全日帯アニメと表現されている。本論文では子ども向けアニメで統一していく。その 名の通り、子どもが見て楽しめるような内容のアニメを指す。テレビ放送される場合は 17~20 時或いは土曜日・日曜日の午前中といういわゆるゴールデンタイムに放送される。 例を挙げるならば『ポケットモンスター』、『ドラえもん』、『名探偵コナン』、『ワンピース』 などが該当する。キャラクター・マーチャンダイジングビジネスが主な収益回収方法であ る。近年の視聴率低迷や少子高齢化、不況などの理由によりスポンサー企業が撤退してい ることから、放送枠、作品数、制作分数の全てが減少傾向にある。しかし、ここで例に挙 げたような作品は長く安定した人気を保っており、リターンも大きいと考えられる。 青年向けアニメは、近年では深夜アニメと表現されることが多い。前節で言及した通り、 1997 年のテレビの深夜枠の開放以降、深夜に放送されることがほとんどであることに由来 する。しかし深夜枠の開放以前は子ども向けアニメと同様の時間帯でのテレビ放送、OVA、 劇場版アニメ等の様々な形態で存在していたことを考え、本論文では青年向けアニメとい う表現で統一していくことにする。青年以上を対象とした複雑なストーリーや描写(性的、 暴力的)が含まれることがある。内容は多岐にわたり、男性向けのいわゆる「萌え」アニメ やSF アニメ、女性向け恋愛シミュレーションゲームのアニメ化作品などがある。アニメフ ァンはそれぞれ自分の好みに合った作品を選び、視聴している。パッケージ売上を収益の 柱とした製作委員会方式が採用されることがほとんどである。 では、2 種のアニメの特徴を整理したところで、それぞれのアニメ制作にあたり行われて 6 パッケージ ビデオ、DVD、BD などの映像ソフトを指す。 7リクープ 資金提供者に対して最低限、出資した金額は戻すこと。まつもと(2012)より。
12 いる資金調達方法と収益回収方法について述べていく。 まず子ども向けアニメであるが、一般的には図1.1 のような流れで制作資金を得ている。 主に玩具メーカーや食品メーカーなどが広告費や電波料(放送権料)を含めてテレビ局から 放送枠を買い取る。テレビ局側はその支払われた金額からアニメ制作会社へ制作費を支払 うのである。制作資金を獲得した制作会社は子ども向けアニメを制作する。また、制作会 社は放送枠を買い取ってもらった対価としてスポンサー企業に対し、制作したアニメのキ ャラクター等を使用した商品の製作を許可する(商品化権を提供する)。 スポンサー企業はキャラクター商品を製作し販売する際、キャラクターの使用料(ロイヤ リティ)として定価の 3~5%を制作会社に支払うのである。このロイヤリティ収入を収益の 中心とするのがキャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスである。 キャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスはキャラクターが人気を獲得すれば上 限の無い収入をもたらすのである。さらにその人気が定番化すれば安定した収入を得るこ とが可能となるのである。 しかし、そのキャラクターが人気を獲得するためにはかなりの資金が必要となる。 ロイヤリティは定価の3~5%であり、商品対象は子どもが基本である。近年は高額な玩具 出典:『これがアニメビジネスだ』多田信 著(2002 年/廣済堂出版) 図 1-1 子ども向けアニメにおけるビジネスモデル
13 もあるが、食玩8等で考えると 100~500 円程度である。従って、これを収益の中心として 考える場合、非常に多くの子どもに購入してもらわなければならない。現在最も多くの子 どもに訴求可能なテレビ放送を選択することになり、中でも子どもとその家族が視聴可能 な時間帯(ゴールデンタイム)に放送しなければならない。そして子どもたちにキャラクター を認知させるためには時間が掛かるため、最低でも4 クール(1 年間 52 周分)は放送する必 要がある。つまり放送権料だけでも巨額の資金が必要となる。更に制作費や広告費等が掛 かってくる。これだけ巨額な投資をしても、アニメがヒットし、キャラクターが人気を獲 得する保証は全くないのである。 キャラクター・マーチャンダイジング・ビジネスはハイリスク・ハイリターンであり、 アニメ制作会社1 社で行えるものではない。大手企業のバックアップ(放送枠の提供、関連 商品の製作)があって初めて行えるものである。しかし、このようなバックアップを行って くれる企業はキャラクター商品を製作することによって直接的な売上上昇が見込める企業 (玩具メーカー、食品メーカー)がほとんどであり、数は多くない。参入が極めて難しいビジ ネスである。 次に青年向けアニメであるが、製作委員会方式が資金調達方法の主流となっている。 製作委員会方式とは、アニメーションビジネスに関係する複数の事業者が資金を出し合 って民法上の任意組合を組成し、出資比率に応じて利益分配を行う仕組みである。 青年向けアニメはその内容や表現、視聴層の狭さから、スポンサーが付きにくい。その ため、放送枠の獲得から行う必要がある。主流である深夜枠は放送権料が比較的安価とは いえ、1 クール(3 か月 12 周)でも数千万円は掛かる。30 分アニメ 1 話辺りの制作費は約 1000~1300 万円で、12 話制作すると総製作費は約 1 億 5000 万円である。しかし帝国デー タバンクの調査によれば、アニメ制作会社うち資本金1000 万円以下の事業者が 67.2%を占 めることから、このような費用をアニメ制作会社1 社で負担するとなると、アニメ 1 作品 が会社の経営を左右してしまうことになるのである。 そこで、1 社あたり・1 作品あたりの負担を減らすために採り入れられたのが製作委員会 方式である。この方式の場合、現在は主にビデオメーカーが主幹事(企画者)として委員会を 組成する。委員会には出版社やアニメ制作会社、レコード会社等が参加する。参加した企 業はそれぞれ出資し、制作費・放送権料・宣伝費等を捻出する。その代わりにビデオメー カーであればビデオグラム化9権等、それぞれの事業に合った権利(窓口権)を獲得し事業を 展開する(窓口権を行使する)。その結果もたらされた収益のうち、予め定められた数パーセ ント(窓口手数料)を事業者が確保し、残りを製作委員会に戻す。このような流れで委員会各 社が窓口権を行使して得た収益から窓口権手数料を差し引いた残りの金額が製作委員会へ 還元・蓄積されていく。その後一定期間が経過した段階で収支決算し、各社の出資比率に 8 食玩 食品玩具の略。食品(主にお菓子など)に玩具が添付された商品形態である。スーパ ーやコンビニエンスストアで主に販売される。 9 ビデオグラム化 映像作品をパッケージ化すること。
応じて配当金を分配するのである。 製作委員会方式を採り入れることで、アニメ関連事業者は クでアニメ制作が行うことが可能となった。スポンサーやテレビ局に依存することなくア ニメビジネスを展開することができるのである。また、アニメとは関連の無い企業も配当 金目的で出資をする事例も発生した。 このモデルであってもテレビ放送 収はパッケージの売上が中心となる。青年向けアニメのファンはキャラクターグッズより も、より高画質で、時間に縛られることがなく、繰り返し視聴可能な映像商品を求める傾 向にあることから、ファンのニーズに合致したビジネスであった。 またパッケージ製作は比較的コストが低く、制作費や商品製作に掛かる固定費の回収後 はほとんどお札を刷っているに等しいと表現されるほど、売れれば高利 る。 2000 年代の青年向けアニメに対する需要の高まりと上記の理由から、現在でも製作委員 会方式が主流となっている。 図 14 応じて配当金を分配するのである。 製作委員会方式を採り入れることで、アニメ関連事業者は 1 社で行うよりも少ないリス クでアニメ制作が行うことが可能となった。スポンサーやテレビ局に依存することなくア ニメビジネスを展開することができるのである。また、アニメとは関連の無い企業も配当 金目的で出資をする事例も発生した。 このモデルであってもテレビ放送による視聴は無料であることに変わりはなく、収益回 パッケージの売上が中心となる。青年向けアニメのファンはキャラクターグッズより も、より高画質で、時間に縛られることがなく、繰り返し視聴可能な映像商品を求める傾 向にあることから、ファンのニーズに合致したビジネスであった。 またパッケージ製作は比較的コストが低く、制作費や商品製作に掛かる固定費の回収後 はほとんどお札を刷っているに等しいと表現されるほど、売れれば高利益なビジネスであ 年代の青年向けアニメに対する需要の高まりと上記の理由から、現在でも製作委員 会方式が主流となっている。 1-2 製作委員会方式モデル(筆者作成) 社で行うよりも少ないリス クでアニメ制作が行うことが可能となった。スポンサーやテレビ局に依存することなくア ニメビジネスを展開することができるのである。また、アニメとは関連の無い企業も配当 による視聴は無料であることに変わりはなく、収益回 パッケージの売上が中心となる。青年向けアニメのファンはキャラクターグッズより も、より高画質で、時間に縛られることがなく、繰り返し視聴可能な映像商品を求める傾 またパッケージ製作は比較的コストが低く、制作費や商品製作に掛かる固定費の回収後 益なビジネスであ 年代の青年向けアニメに対する需要の高まりと上記の理由から、現在でも製作委員