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児童生徒を対象とした

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<展 望> 

問題と目的

 近年,児童生徒を対象としたストレスマネ ジメント教育(stress management education:以 下,SMEとする)が,学校教育現場において さかんに行なわれている(三浦・上里,2003)。

児童生徒を対象としたSMEは,児童生徒の不 登校やいじめ,攻撃行動などといった不適応行 動や心身症状の背景に存在していると指摘され る心理的ストレスを軽減し,児童生徒のストレ ス耐性を高めることを目指した介入技法であり

(嶋田・坂井・菅野・山﨑,2010),子どもの生 活と直結している内容を包括的に扱っているこ とから,学校生活における諸問題の予防的介入 として有効であると考えられている(竹中・富

児童生徒を対象とした

認知行動療法型ストレスマネジメント教育に関する 研究動向および今後の展望

森田 典子

*

 野中 俊介

*

 尾棹 万純

*

 嶋田 洋徳

**

要 約

 近年,児童生徒を対象としたストレスマネジメント教育の実践活動がさかんになってきた一方で,そ の導入の目的が比較的曖昧なまま集団介入が行なわれていることも少なくないことが指摘されている。

そこで本研究では,わが国において実施された学級単位の認知行動療法型ストレスマネジメント教育に 関して,メタ分析による体系的展望を試みることによって,その効果を明らかにするとともに,今後の ストレスマネジメント教育に求められる課題を明確にすることを目的とした。その結果,今後のストレ スマネジメント教育においては,一斉授業の形態の中で児童生徒の特徴に合わせたプログラムを実施す るために,さらなる個別化の方法や手続きの検討,効果測定に関する複数の指標を取り入れていくなど の,理論的,実践的検討を続ける必要性が示唆された。

キーワード:認知行動療法型ストレスマネジメント教育,集団介入,効果,メタ分析,個別化

*  早稲田大学大学院人間科学研究科

**早稲田大学人間科学学術院

永,2011)。

 これらのことを踏まえて,スクールカウンセ ラーをはじめとする学校心理臨床の専門家に は,児童生徒が学校で経験するストレスの緩和 や自己コントロール力の育成,適応的な社会的 スキルの獲得を目的とした,学級単位での心理 教育として実施されるSMEに関する知識や実 践力が期待されている(下田,2013)。児童生 徒を対象としたSMEが行なわれた初期には,

「リラクセーション技法」を教えることが中心 に据えられており,行動療法やカウンセリング などのそれ以前からある臨床心理学領域の技法 とエクササイズやエアロビクスといった運動処 方がその中心を占めていたが(坂野他,1995),

近年は,児童生徒を対象とした場合であって も,認知的再体制化などを含めた認知行動的技 法も用いられてきており,SMEは,ストレス

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状態から自分自身をコントロールすることを最 終目的とした包括的なプログラムを指すよう になってきた(嶋田,2010)。また,文部科学 省(2009)も,児童生徒を取り巻く環境・状況 を正しく把握し,適切なアドバイスやスキル教 育,環境調整などを行ない,問題の発生を未然 に防いでいくことを目指して,SMEの予防的 介入に対する役割として,ストレッサーに対す る対処方略の獲得やリラクセーション法の習得 などを例示している。このように,児童生徒に 対しては,認知的,行動的,情動的介入を中心 に,包括的なSMEを実施することが求められ ているといえる。

 実際に,近年のSMEにおいては,従来から 実質的なニーズのあった,すでに問題を抱えて いる児童生徒を対象とした3次予防や,問題 行動などのリスクの高い児童生徒を対象とし た2次予防という視点に加え,すべての児童生 徒を対象とした1次予防的介入を基本とするこ とが有用であることが指摘されている(嶋田,

2010)。このように学級においてすべての児童 生徒を対象として集団的介入を実施することの 利点としては,訓練場面と般化場面が同一であ るために,実用性および効率性が高いという点 や,すべての児童生徒が共通のスキルを学習す ることで,児童生徒間のフィードバックが日常 的に期待できるという点に加えて,特別な集団 形成を必要とせず,日常の学習形態に準拠した 手続きによって行なうことができるなど,わが 国の教育制度に合致している点などがあげら れている(小関・高橋・嶋田・佐々木・藤田,

2009)。

  特 に, 認 知 行 動 療 法 を 基 盤 と し た 包 括 的 なSMEは, ス ト レ ス 免 疫 訓 練 法(stress  inoculation training:以下,SITとする)の考え 方に立脚しており,ストレッサーに対する具体 的なコーピングレパートリーを身につけさせる ことによって,当該個人のストレス耐性を高め

ようとするという特徴を有する。すなわちSIT は,直面しているさまざまなストレッサーに対 して適切に対処し,不適応な認知的反応および 行動的反応を緩和することを目的とし,スト レス状況を解決するだけではなく,今後直面 するであろうさまざまなストレッサーにも応 用できるように,その人のストレスコーピン グスキルを向上させることをねらいとしてい る(Meichenbaum, 1977)。なお,成人を対象と したSITは,不安の軽減やパフォーマンスの 向上に対して有効であることが示されている

(Saunders, Driskell, Johnston, & Salas, 1996)な どのエビデンスが数多く収集されている。しか しながら,同じ認知行動療法に基づいて実践さ れているプログラムに限っても,児童生徒を対 象としたSMEに関する研究においては,どの 程度の効果があるのかに関するエビデンスが十 分に収集されているとは言いがたい。

 また,この分野に最も適合すると考えられる 学術団体として,日本ストレスマネジメント学 会があり(2003年設立),2015年現在までの間 に,機関誌「ストレスマネジメント研究」には,

全53件の原著論文,実践報告論文が掲載され ている。その中で実際に何らかの介入を行なっ た研究報告は,全25件であり,そのうち児童 生徒を対象としたものは17件(そのうち,学 級集団を対象としているものは13件)であっ

た(Table1)。なお,大学生および成人を対象

としたものは8件あった。介入を行なっている 研究報告の特徴としては,さまざまなストレス 反応を下げることを目的とするだけではなく,

介入によっていじめなどの問題行動を低減させ ることも目的としている点であり,さまざまな 目的を持ってSMEが行なわれうる可能性があ ることを示している。

 しかしながら,学級集団を対象とした(必ず しも研究目的でない)介入の実践活動がさかん になってきた一方で,教育現場においては「何

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となく児童生徒によさそうに感じる」などのよ うに,その導入の目的が比較的曖昧なまま集団 介入が行なわれることも少なくないことが指摘 されている(嶋田・五十川,2012)。そのよう な中,下田(2012,2013)は,それぞれ小学生 と中学生を対象とした予防的心理教育研究の実 践動向をそれぞれまとめている。その結果,児 童生徒を対象としたSMEは,ストレス反応の 低減に対して概ね肯定的な効果が得られている ということを報告している。しかしながら,そ れらの心理教育的介入がどの程度効果的であっ たかについては直接的に言及されておらず,効 果量の算出やメタ分析といった視点から基礎的 なデータを提示する必要があるということを指 摘している。

 そこで本研究では,わが国において実施され た学級単位のSMEに関して,メタ分析による 体系的展望を試みることによって,その効果を 明らかにするとともに,今後のSMEに求めら れる課題を明確にすることを目的とする。

方 法

文献収集

 学級単位で行われたSMEの効果に関する日 本国内で公刊された文献について,大学共同利 用機関法人国立情報学研究所が提供するNII論 文情報ナビゲーター(CiNii),および株式会社 メテオが提供するメディカル・オンラインを用 いて電子検索を行なった。論文名または要約に

「ストレス」,かつ,「マネジメント」または「教 育」,かつ,「小学生」または「中学生」または

「高校生」を含む文献を検索した結果,これら のキーワードを含む,延べ194編の論文が収集 された。収集された論文の発刊年は,1981年 から2014年であった。次に,検索結果に挙がっ た論文のうち,①学級集団を対象にストレスを ターゲットとした介入が行なわれている,②介 入前後における記述統計量が記載されている,

③査読付き学会誌および大学紀要に掲載されて いる,④論文中にセッションの概要が記載され ている,という4つの基準を満たす論文を抽出 した結果,5編の論文が収集された。さらに,

上記の電子検索に加えて,データベース登録の ない「ストレスマネジメント研究」(日本スト レスマネジメント機関誌)を中心にハンドサー チ,および,各論文の引用文献による検索を行 なった結果,7編の論文が抽出された。以上の 結果,最終的に合計12編の論文が分析に用い られた。

分析方法

 効果サイズ(d)は,各研究論文に記載され ている従属変数に関する記述統計量を用いて算 出した。また,本研究では,介入前後の得点の 変化について,介入群と統制群における効果サ イズをそれぞれ算出することとした。これは,

学級単位のSMEにおいては,参加者の介入前

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の状態像が必ずしも一定ではなく,むしろ差異 が大きいという理由によるものである。この点 を考慮すると,介入後の得点について介入群と 統制群を比較するという方法は,介入前の得点 および分散の差異の影響を強く受ける可能性が あり,本研究の目的に照らしあわせると,必ず しも適切ではないと考えられる。また,統制群 を設定していない実践研究が多く含まれている ことを考慮すると,介入後における介入群と統 制群の直接比較することを中心とした分析方法 に限定せず,介入前後の得点変化を分析に含め ることで,SMEの効果を促進する条件につい ての情報が得られやすくなる可能性もあると考 えられる。

 また,効果サイズ指標であるd値については,

d = 0.20は小さい,d = 0.50は中程度,d = 0.80

は大きいとした(Cohen, 1988)。効果量の均質 性については,I2値を算出し評価を行なった。

なお,メタ分析では,各研究に記されている従 属変数の平均値と標準偏差,およびプログラム 参加者の人数を入力値として,メタ分析ソフト

(ComprehensiveMeta-Analysis Version2)を用い て分析を行なった。

結 果

分析に含まれた研究の対象

 収集された文献に含まれた研究の概要を

Table2に示す。対象者の学年別の研究数は,小

学1〜3年生が2編,小学4〜6年生が6編,

中学生が3編,高校生が1編であった。した がって,小学校4年生から中学校3年生までの

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実践例が比較的多いことが示された。また,介 入の効果指標としての従属変数に関しては,抑 うつを含むストレス反応がすべての研究におい て用いられていた。さらに,研究論文の多くに 共通して読み取ることのできる介入実施条件の うち,研究デザインに関しては,統制群を設定 している研究,比較対象条件を設定している研 究,オープントライアルを行っている研究が見 受けられた。一方,SMEの実施者に関しては,

学級担任教師,臨床心理学に関する専門家(大 学教員を含む)がその役割を担っていたことが 示された。

学級単位のSMEの効果サイズ

 12編の論文を対象として,ストレス反応を 従属変数としたメタ分析を行なった。なお,メ タ分析における分析対象論文の数に関しては,

抽出した数が少ないと論文に偏りが生じやす くなることが指摘されているが(Borenstein,  Hedge, Higgins & Rothstein, 2009),野添・榊原

(2006)は,メタ分析研究の動向を整理する中 から,6〜10件を対象としている論文が最も 多いことを指摘している。したがって,本研究 においても文献収集等の際の偏りを考慮するこ とを前提としてメタ分析を行なうこととした。

 まず,すべての研究論文を対象として,SME 介入の有無に関する分析を行なった結果,介入 群(κ= 16)に関する効果はd = 0.263(95%CI   0.121 ‒ 0.404),統制群(κ= 6)における効果 はd = 0.045(95%CI  -0.151 ‒ 0.241)という効 果サイズが得られた。すなわち,SMEに関す る何らかの介入を実施すると,小から中程度,

ストレス反応の軽減に有効な結果が得られる ことが示された(Table3)。なお,小関・小関

(2013),小関他(2009),三浦・上里(2003),

高橋・百々・大澤・金井・坂野(2006)では,

介入群が複数存在したため,介入群のκ値は 16であった。

 次に,各研究論文のSME実施条件ごとの効 果についての検討を行なった。SMEの対象と なった児童生徒の学年を小学生(κ= 11),中 学 生( κ= 4), 高 校 生( κ= 1) に 分 類 し,

SMEの効果サイズを算出した。その結果,小 学生に対する効果は= 0.325(95%CI  0.198 

‒ 0.451), 中 学 生 に 対 す る 効 果 はd = -0.032

(95%CI  -0.549 ‒ 0.486),高校生に対する効果 はd = 0.210(95%CI  -0.397 ‒ 0.816)という効 果サイズが得られた。すなわち,小学生を対象 とした場合には,小から中程度,ストレス反応 の軽減に有効な結果が得られることが示され た。一方で,中学生を対象とした場合にはほと んど効果が得られないことが明らかにされた。

なお,高校生を対象とした研究論文は1編のみ であったが,小さな介入効果が得られていた。

 さらに,各研究論文のSMEの実施者ごとの 効果についての検討を行なったところ,学級担 任教師が実施した介入(κ= 3)における効果 サイズはd = 0.056(95%CI  -0.485 ‒ 0.597), 臨 床心理学に関する専門家が実施した介入(κ

= 9)における効果サイズは= 0.292(95%CI   0.143 ‒ 0.441)であることが示された。この結 果を踏まえると,臨床心理学に関する専門家が 介入を実施した場合には,小から中程度,スト レス反応の軽減に有効な結果が得られていたこ とが示された一方で,学級担任教師が介入を実 施した場合には,ほとんど効果が得られていな いことが明らかにされた。

分析対象論文内容の異質性の検討

 メタ分析に用いた論文内容に関して,各条 件ごとに算出された統計量(d)の異質性に関 して検討するためにI2検定を行なったところ,

統制群に関しては認められなかった一方で,

SME介入群の条件において,中程度の異質性 が認められた(I2 = 0.532)。また,中学生を対 象としたSME介入群において,高い異質性(I2 

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= 11.282),臨床心理学に関する専門家が実施 したSME介入群において,低い異質性(I2 = 

0.281)がそれぞれ示された。一方で,小学生

を対象としたSME介入群,学級担任教師が実 施したSME介入群においては,異質性は認め られなかった。したがって,本研究で得られた 当該部分のデータに関しては,解釈に慎重を要 する必要があることがあらためて示された。

考 察

 本研究では,メタ分析による体系的展望を行 なうことによって,わが国において実施された 学級単位のSMEの介入効果を明らかにすると ともに,今後のSMEに求められる課題を明確 にすることを目的としていた。

 データ分析の結果,小学生から高校生の児童 生徒を対象としたSMEに関しては,本研究の 分析対象研究のうち,介入群は統制群と比較し て高い効果サイズが示されたことから,わが国 における学級単位のSMEは一定の効果を上げ ていることが明らかにされた。しかしながら,

分析対象とされた論文総数が12編にとどまっ ており,それらの内容の均質性に中程度の異質 性が認められたことから,このような結論の再 現性を高めるためには,今後の研究データの積 み重ねが必要であると考えられる。

 また,SMEの効果サイズを児童生徒の所属 学校別に比較すると,小学生において最も高い

効果サイズが得られた。ただし,中学生(4編)

や高校生(1編)においては研究数の少なさ,

および高い異質性が明らかに分析結果に影響を 及ぼしていると考えられるため,現時点では,

中学生や高校生におけるSMEの効果は参考程 度にとどめておく必要があると考えられる。こ のような結果が得られた理由としては,三浦・

上里(2003)の報告において,SME実施前の ストレス反応の高低で群分けを行ない,介入結 果を検討している点があげられる。すなわち,

SME実施前のストレス反応高群の効果量は中 程度の効果サイズが得られている一方で,低群 は床効果を背景として効果量は負の値になっ ていることが示されている。本研究において は,高低群共に介入を行なっているという点に 鑑みて,低群のデータも分析に算入したが,今 後はデータ分析手続きの基準も適切に構築して いく必要があると考えられる。さらに,中学生 において異質性が高くなってしまった理由とし て,以下が考えられる。発達が進むにつれて認 知的活動が増加すると同時に,認知スタイルの 個人差が生じること(藤田,1985),児童期と 比較して青年期においては,友人関係が表面的 に希薄である一方,表面的に親密である可能性 もあることから(葛西・松本,2010),小学生 と比較して,中学生や高校生は,個人の認知発 達の程度の分散が大きいこと,学級集団の凝集 性自体の分散が大きいことが推測される。その ため,凝集性の分散や認知発達の分散に差異が あることによって,介入内容の定着の程度の個 人差が大きく生じ,結果的に異質性を高めてし まった可能性がある。いずれにしろ,今後は,

中学生や高校生を対象とした学級単位のSME の効果に対する実証的検討を行なうことができ る実践的研究が増加することが望まれる。

 一方で,介入実践の実施者による効果の差異 に関しては,学級担任教師と比較して,臨床心 理学の専門家とみなせる者が実践を行なった研

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究において,高い効果サイズの値が得られた。

これまでにも,心理的介入の中で実証性を示し た介入において,介入内容や周辺知識,テク ニックの専門性の高さという実践上困難な側面 があったことから,臨床心理学の専門家が直接 的な実践者の役割を担うことが多かったことが 指摘されている(嶋田,2008)。しかしながら,

山口・嶋田(2009)は,学級担任教師などの日 常的に児童生徒に関わる立場の者がSMEの考 え方や具体的方法を身につけ,日常生活への応 用を常に意識しながら実践することは,効果 的,効率的な介入を行なっていくために望まし いことであると示唆している。また,このよう な条件が整うことによって,日常の学校生活に おいて,本来あるべき児童生徒と学級担任教師 との間の良好な相互作用が形成される可能性が 高くなると考えられる。したがって,SMEに 関連する専門性の高い内容を,いかにして学級 担任教師等に教授し,相応の技量を獲得させる ことが可能になるかどうかが介入実践上の課題 になると考えられる。

 ところで,児童生徒を対象とした一般に SMEと称される介入は,介入する児童生徒に 等しく効果がもたらされることが暗黙のうちに 仮定されており,介入効果が対象集団の児童生 徒全員の平均値をもって論じられることが多く なっている。しかしながら,学級集団を対象と して同一のSMEプログラムを実施する際には,

さまざまな状態を呈する児童生徒が同じ学級集 団に所属していることが予測されるため,求め られる介入内容の構成,およびその介入効果は 大きく異なってしまうことが推測される。これ まで行なわれてきたSMEの実践研究の大多数 は,児童生徒それぞれの状態像のアセスメント に基づいたSMEが実施されているとは言えず,

実践する授業の時間枠や実践可能な時間数,介 入の補助者などがつけられるかどうかなどに よって介入内容が決定されることが多くなって

いる(嶋田,2008)。したがって,SMEの効果 をさらに高めるためには,児童生徒のそれぞれ の「状態像に合わせた介入内容」を選択するこ と,すなわち,個々の児童生徒のアセスメント を丁寧に行ない,プログラムの取捨選択や強弱 をつけるなどの「個別化」の手続きが必要であ ると考えられる。

 たとえば,これまで体系的にまとめられてい る具体的なSMEプログラムの内容としては,

導入と自己理解のワーク,認知的再体制化など の認知のワーク,社会的スキル訓練などの行 動のワーク,リラクセーションなどの情動の ワーク,ふり返りと総合のワークの5つの要素 で構成された,認知行動療法に基づくSMEプ ログラムがあげられる(嶋田・五十川,2012:

Table4)。これは,高校において学校設定科目

として設定された必修科目における35週(回)

に渡る一連のプログラムである。しかしなが ら,実際の学校現場においては,このような包 括的な介入プログラムが実施できることはむし ろ稀であり,その多くは,学校現場のニーズに あわせて,これらのプログラム内容の中のいく つかを選択することになる。その際に,児童生 徒の状態像に関するアセスメントに基づいてプ ログラムを選択することができれば,その介入 効果が高まることが期待できると考えられる。

 一方で,大沢・嶋田(2013)は,学級全体の 児童生徒に対して個別化の手続きの導入の試み として,個人差としての「報酬への感受性の低 さ」を取り上げている。そして,報酬となりう るポジティブな刺激に感受性が低い傾向を変容 するために,注意バイアスの修正訓練を実施 し,その後集団社会的スキル訓練を行なうこと を通じて,自身が適切な社会的スキルを遂行し た後の,周囲からのポジティブなフィードバッ クの効果性を高めることで,ストレス反応の軽 減効果の検討を行なっている。その結果,注意 バイアス修正訓練を取り入れた集団社会的スキ

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ル訓練を行なうことによって,SMEの効果が 高まる可能性が示唆されている。

 これらのことを踏まえると,児童生徒それぞ れが有する報酬への感受性などの個人差変数を 適切にアセスメントし,その個人差を踏まえた 手続きをSMEに取り入れることによって,学 級集団全体に対するSMEのさらなる効果の向 上が期待されると考えられる。

 さらに,本研究の結果,SMEの効果に関し て質問紙で測定されるストレス反応は一般に低 減することが示された一方で,その変化が日常 生活においてどのように作用しているのかにつ いては,十分に明らかにされてはいない点に関 しても,今後の課題としてあげられる。この課 題を解決するためには,質問紙による効果の確 認に加えて,行動観察などを通して,日常生活 における具体的な問題の改善あるいは適応行動 の増加という客観的事実を確認する必要がある と指摘されている(小関・小関,2013)。具体 的には,適応行動の指標としてチェックリスト を作成したり,シミュレーション場面を設定し

た際のパフォーマンステストを行なうなど,児 童生徒の日常における言動などから,学級担任 教師や保護者がコーピングスキルの獲得や問題 行動の改善の程度を,客観的に判断できるよう な手続きを取り入れるなどの工夫をすることが 必要であると考えられる。

 また,SMEプログラムの効果測定において は,ストレス反応の低減などのアウトカム変数 だけでなく,認知的評価の変容やコーピングレ パートリーの拡大などのプロセス変数を指標と して選択することも重要であると考えられる。

そして,SMEの実施後に,結果としてどのよ うな状態像の児童生徒に効果があったかの考察 をあらためて行なうことによって,今後の研究 に有効な知見の積み重ねにつなげることも有効 であると考えられる。

文 献

 著者名の前のアステリスクはメタ分析に用い た論文であることを示す。

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(11)

Stress Management Education Based on Cognitive Behavioral Therapy

for Children and Adolescents:

Recent Issues and Future Prospects

Noriko MORITA*, Shunsuke NONAKA*, Masumi OSAO*, and Hironori SHIMADA**

*Graduate School of Human Sciences, Waseda University

**Faculty of Human Sciences, Waseda University

Abstract

 In recent years, while the practical activities of stress management education for children and

adolescents have become popular, it has been pointed out that not a few group interventions that their purpose of introduction is ambiguous are conducted. In this study, our aim was to clarify not only the effects but also the future needs of stress management education. To achieve this aim, we conducted a meta-analysis of research on classroom stress management education based on cognitive behavioral therapy carried out in our country. As a result, in the future of stress management education, in order to implement the program to suit the characteristics of the children and adolescents in the form of lectures, the need to continue the theoretical and practical study such as study of methods and procedures for further individualization, to incorporate the multiple indicators of effect measurement, was suggested.

Key words:

stress management education based on cognitive behavioral therapy, group

intervention, effect, meta-analysis, individualization

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参照

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