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哺乳類科学 51(1): ,2011 日本哺乳類学会 129 連載 食肉目の研究に関わる調査技術事例集 食肉目における食性研究とその方法その 1 イヌ科, イタチ科, ネコ科 福江佑子 1, 竹下毅 2, 中西希 3 1 NPO 法人生物多様性研究所あーすわーむ 2 北海道大学文学研究科

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連載「食肉目の研究に関わる調査技術事例集」

日本哺乳類学会

食肉目における食性研究とその方法 その 1

―イヌ科,イタチ科,ネコ科―

福江 佑子

1

, 竹下  毅

2

, 中西  希

3 1NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ 2北海道大学文学研究科地域システム科学講座 3琉球大学理学部海洋自然科学科 は じ め に 陸棲食肉目の食性は,ネコ科に代表されるような肉食 に特化したもの,クマ科のように植物質の割合の高い雑 食性を示すもの,テン属 Martes のように動物質の割合の 高い雑食性を示すものなど,大きな幅がある(Gittleman 1989).また単独で採食するものからグループでハンティ ングするものまで,その採食行動,採食物の大きさ,そ して採食環境も様々である.体重も約 100 g のイイズナ Mustela nivalisから最大 800 kg のホッキョクグマ Ursus maritimusにおよび(Gittleman 1989),体サイズに応じて, 採食量,排糞量も自ずと異なる. 「何をどの程度食べているか」は対象種の生態的特性を 把握する重要な手がかりの一つであり,生態研究におい ては基盤となる情報である.日本の哺乳類学研究では, 1970 年代後半から 1980 年代初頭にかけてフン学研究会 があり,食性分析の技術(糞の形態や糞の容積測定方法 など)や食性に関する研究の紹介等,研究者の情報交換 の場となっていた(フン学研究会 1979, 1980, 1981).当 時の研究の目的はその種の食性自体の解明が主であった が,その後,国内では同所的に生息する食肉目の共存メ カニズムやニッチの分化の解明のための種間比較,捕食 者による被食者の個体群や行動への影響,餌資源の分布 や年変動と利用可能量などによる環境評価など,さまざ まな生態学的視点の研究へと広がってきた(例えば Yoneda 1982a,b;Yoneda 1983;Tatara and Doi 1994;山本 1994;Tsukada and Nonaka 1996;Hashimoto et al. 2003; Kaneko et al. 2006,2009;Matsuo and Ochiai 2009 など). 近年では,イリオモテヤマネコ Prionailurus bengalensis iriomotensisやツシマヤマネコ P. b. euptilurus(以下,この 2 亜種をヤマネコとする)のように,絶滅の恐れのある

希少野生動物の保全のための食性研究も行われてきた (例えば Sakaguchi and Ono 1994;Watanabe et al. 2003).ま た外来生物の問題がクローズアップされ,在来種に対す る捕食や競争の影響を明らかにするための食性研究もな されてきた(例えば堀・的場 2001;小倉ほか 2002;関口 ほか 2002;城ヶ原ほか 2003;亘ほか 2007;Watari et al. 2008;Matsuo and Ochiai 2009).

さらに,新たな分析技術の導入として,安定同位体を 利用した食性解析による,農作物被害の加害個体の特定 や食性の履歴などの研究(例えば中下ほか 2007;Oi and Furusawa 2008 など)や希少種の個体数の減少要因を食性 の履歴から解明する研究(Mitani et al. 2009)も進められ ている. 日本国内での食肉目の食性分析に関しては,橋本・高 槻(1997)がツキノワグマ Ursus thibetanus の食性研究の レヴューを通して,食性分析の評価方法を論じた.上述 のように,食肉目は食性や採食様式が多様であることか ら,サンプルの採集,分析,評価手法においては各々の 種の特性を考慮した分析上の注意点も多くならざるを得 ない.しかしながら,それらについては今までほとんど 議論されてこなかった.特に分析方法において,手法や 専門用語が統一されていないことで結果に影響したと思 われることもあり,さらに比較研究に活用できないとい う問題もある.そこで本稿および次号では,これらを改 善するために,「食肉目調査にかかわる捕獲技術」(金子・ 岸本 2004),「食肉目調査にかかわる保定技術」(岸本・ 金子 2005),「生体捕獲調査における計測,採材,器具装 着および衛生上の諸注意」(淺野ほか 2006)と同様に,国 内に生息する食肉目を取り上げ,その食性研究の調査・ 研究者を対象に,1)食性研究の目的,2)用いたサンプ ルの種類,3)分析方法,4)評価方法,5)参考となる文

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献についてアンケートを行った.のべ 42 名の方から得ら れた回答をもとに,その 1(本稿)ではイヌ科,イタチ 科,ネコ科の 3 科,その 2(次号予定)ではクマ科,外 来生物(アライグマ Procyon lotor,ジャワマングース Herpestes javanicus,ハクビシン Paguma larvata)を扱う こととして,食性研究の方法論とその課題についてまと めた. なお,外来生物のうちアメリカミンク Neovison vison (以下,ミンク),イヌ Canis familiaris(主にノイヌ,一 部に飼いイヌを含む),ネコ Felis catus(主にノネコ,一 部に飼いネコを含む)については,同科内の近縁種の存 在によって生じる問題(糞の形態の類似など)や近縁種 間での比較研究もあるため,それぞれイタチ科,イヌ科, ネコ科に含めた. 本稿では,今まで行われてきた方法について利点,問 題点,課題について記述するが,各研究の目的に応じて, 記述の内容やアンケート結果を参考にしながら,適した 方法を選択,改良していただきたい.今後食肉目の食性研 究に携わる研究者に,何らかの指針になれば幸いである. 1.食性調査方法の概要 哺乳類の食性分析の方法は,(1)食痕調査法,(2)植 生変化調査法,(3)直接観察法,(4)胃内容物分析法, (5)糞分析法などに分けられる(例えば Takatsuki 1978; Litvaitis et al. 1994;Litvaitis 2000).(1)と(2)の方法は おもに草食獣に用いられるが,食性の幅が広く,採食場 所を特定しにくい森林性の食肉目においては適用が難し い.アフリカの大型肉食獣の食性研究では,1)胃内容物 分析法,2)糞分析法,3)足跡を追跡し,発見した食痕 を調査する方法,4)偶発的な直接観察,5)テレメトリー 追跡個体の直接観察,6)車によって追跡する直接観察が 挙げられ,それぞれ長所・短所が示されている(Mills 1996).アフリカのサバンナや疎まばらな植生という開けた生 息環境であること,大型で群れ生活(グループハンティ ング)する種が多いこと,昼間も行動することが,3)~ 6)を可能とするが,草原のような開けた環境がほとんど なく,夜行性および単独性の種がほとんどの我が国の食 肉目においては,これらの方法の適用は困難である.従っ て国内における食肉目の食性調査は,おもに 1)および 2)によって行われてきた.ただし,ヒグマ Urusu arctos, ツキノワグマに関しては,調査場所や季節は限られるが, 直接観察法によるもの(例えば伊藤ほか 2001)や食痕に よる食性研究も行われている(例えば高田 1979;水野・ 野崎 1985;溝口ほか 1996). 2.イヌ科,イタチ科,ネコ科における食性研究の目的, サンプルの種類と採取の際の注意点 2-1.食性研究の目的 日本国内では,イヌ科 3 種―キツネ Vulpes vulpes,タ ヌキ Nyctereutes procyonoides,イヌ,イタチ科(陸棲)8 種―イイズナ,オコジョ Mustela erminea,ニホンイタチ M. itatsi(以下,イタチ),シベリアイタチ M. sibirica,ミ ンク,ニホンテン Martes melampus(以下,テン),クロ テン M. zibellina,ニホンアナグマ Meles anakuma(以下, アナグマ),ネコ科 2 種―ヤマネコ,ネコが生息する.種 によって研究数の多少はあるが,イイズナを除いたすべ ての種において,食性に関する研究が行われてきた.イ ヌ科,イタチ科,ネコ科のアンケート回答者のうち,本 人が実際に行った食性研究に関するものはのべ 30 名か ら得られた.このアンケートおよび文献から得られた 3 科の食性研究の目的は,大きく 2 つに分けられた.1 つ は,食性の季節的変化,生息環境と食性との関係,食物 の体サイズや分布と食性の関係,食物の構成と採餌パ ターンの関係などに着目した生態把握のための食性研究 である.特に,希少種のヤマネコの保全においては,食 物の種類,分布,利用可能量などの研究は不可欠である. 人間の生活圏に入り込むこともあるキツネ,タヌキ,ア ナグマ,イタチなどでは,食性を通し人工物への依存度 を評価する研究(Tsukada and Nonaka 1996)や都市近郊 の環境に適応した個体群の生態情報の蓄積を目的とする 研究も多くなされてきた(例えば山本・木下 1994;藤井 ほか 1998;Kaneko et al. 2006 など).また,同所的に生息 する複数の食肉目の食性の比較研究(山本 1994;松尾ほ か 2007)も行われている. もう 1 つは,国内外来生物を含む外来生物(ノイヌ, ノネコ,ミンク,シベリアイタチ,イタチ,テン)を対 象とした,競争種もしくは捕食者として在来種や生態系 に及ぼす影響の把握のための食性研究である(例えば, 阿部ほか 1985;Ban et al. 1995;河内・佐々木 2002;関口 ほか 2002;Watanabe et al. 2003;箕口ほか 2004;亘ほか 2007;亘 2008).また捕獲効率をあげるための罠用の餌 を検討した研究事例もある. 2-2.食性分析のサンプルの種類 アンケートの回答者の 9 割以上およびすべての種にお いて,大別して糞内容物と消化管内容物がサンプルとし て使用されていた(表 1).ロードキルが頻繁に起こる地 域や駆除個体が手に入る地域では,胃,腸,直腸など消 化管内容物が使用されている.また,希少種であるヤマ

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表1 . アンケートによって得られた食肉目(イヌ科 ,イタチ科,ネコ科)の食性研究における サンプルの種類と採取の際の注意点 種 類 注  意  点 採取道具,器具 利点または問題点 糞 サンプル採取時 確 実に一回分と 判断できる糞のみを採取する. 複数の糞がある場合, 内容物を確認後 1 つの糞と判断 する. 比較的新しい物のみを採取し, 古 い糞は分析に用いな い. 雨などで内容物が残っていない場合は,採取しない. 糞に集まる昆虫を食物として扱わないように除去. 餌食物の同定となるようなもの (歯など) の取り残し が無いようにする. 採取の際には素手では触らない. 採取後は , 寄生虫を死滅させるためにも冷凍保存す る. 採集 ・ 保存用 : チャック付きビニール袋, ピンセットまたは割箸(ミンクのタール 状の糞の場合はヘラ) ,ポリプロピレンの 容器(キタキツネの場合,熱処理に耐え 得る容器に保存) ,冷凍庫,冷蔵庫  DNA 抽出用 : サ ンプリングチューブやプ ラスチック瓶, エタノール, ピンセット  記録用 : GPS , ノギス (最大直径計測用) , 折れ尺, ラベル, シール用パラフィルム, 油性ペン,ボールペン,シャープペンシ ル,画板,地図,デジタルカメラ  他:ビニール手袋,ビニールテープ 利点: 糞分析は,非侵襲的で対象動物の行動や 生態への撹乱が少ない. ある程度のサンプルサイズを確保するこ とが比較的容易であり,定量的分析を行 うことができる. 問題点: 個体識別ができないため,同一個体の糞 をダブルカウントする危険性がある. 種判別を誤る危険性がある. 個体情報がないため,性や齢クラスなど の層別解析が困難. 排糞日時の特定が困難. 季節によって糞の分解速度が異なるた め, 十分なサンプルサイズを得るには , 季節で採集努力が異なる. 種判別が必要な場合 太さや長さなどの形状 , 排 糞場所の特徴, 内容物, 臭 いなどの確認が必要. イタチやテンの場合, 目安として, 採集時には糞の最 大直径を計測するが,サイズは重複する. DNA 分析を行わない場合は, 外見上, 種 判定できない 糞は採集しない. DNA により種判別を 行う場合 コンタミを防止するため, 同じ道具での採取をおこな わない. 人獣共通感染症 がある 場合 (北海 道地 域 ,特にキタ キツネ) エキノコックスの虫 卵 が 入 っていることが 多 いため , 採取時には直 接 触れない. 運搬 時にも 接 触の危険性を 軽減 する注意が必要. エキノコックスの虫 卵 を死滅させるため, 加 熱処理や 低温 処理が必要. ため糞の場合 (タヌキ,ア ナ グ マ ) 同一のため糞 か らは, 排出時 期 あるいは排出個体の異 なるもののみを 区 別して採集. 個体 間 のコミュニケーシ ョ ンを 考慮 し, 必要 以 上の採 取をしない ( 1 回 分と 思 われる糞す べ てを採取しきら ない) . 胃 ( 消 化 管 ) 内 容 物 採取時の注意点 死 体 か らの 感染症 を防 ぐ ため, 手 袋や マ スクを 装着 し 作業 . 作業服 は 通常 のものとは分けて 洗濯 を行う. 手 洗 いうがいを 徹底 する. 解 剖 用:メス, ハ サミ,ピンセット  感染 防 御 用:手袋, マ スク, 作業服   保存用:チャック付きビニール袋,ポリ エチレン瓶,エタノール  記録用:油性ペン 利点: 個体情報がある. 問題点: ロー ド キルや 駆 除によりサンプルを集め る場合,季節性があるので,サンプル採 取に 偏 りが出る. 採食後,時 間 が 経過 している場合,サン プル採取ができないこともある. 人獣共通感染症 がある 場合 (北海 道地 域 ,特にキタ キツネ) ディスポー ザ ブルの 感染 防 御服 を 着 用し, 感染 性動物 試料専 用の実 験室 で解 剖 する. エキノコックスの虫 卵 を死滅させるため, 加 熱処理が 必要.

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ネコ 2 亜種の消化管内容物については,ロードキルなど による死亡個体が発見された時にしか入手できないが, 長期に渡り収集,蓄積されてきている(中西未発表).ま た,ツシマヤマネコでは,安定同位体による食性の経年 変化を知るために,剥製や毛皮,糞からの毛がサンプル として使用されている例もある(Mitani et al. 2009). 2-3.サンプル採取時の注意点 1)糞 糞について回答者から挙げられた 3 科に共通するサン プル採取の際の問題点として,同所的に生息する他種と の混同があった.イヌ科ではキツネとイヌ,ネコ科では ヤマネコとネコ,イタチ科ではアナグマを除くイタチ科 動物間で(日本ではイイズナ,オコジョの生息は,地理 的および高標高域に限定されるので除く),外見だけでは 種判別は困難な場合も多い(Birks et al. 2004).このよう な場合,糞の大きさ,太さ,形状や排糞場所の特徴,内 容物(糞に含まれる毛の色などの特徴)の確認によって 判断すると 4 名から回答が得られた.これらに加え,テ ン,シベリアイタチ,クロテン,ヤマネコでは臭いによ る判別も行われた(Tatara and Doi 1994;荒井ほか 2003). イタチ科においては,糞の最大直径が種判別の一つの目 安とされ(西方 1979),採集時には糞の最大直径を計測 し判別材料とする回答者もいたが,種間でサイズの重複 がみられるため,種判別は困難である(金子ほか 2009). また,ノイヌの場合は飼いイヌとの混同を避けるため, 飼いイヌが徘徊していると思われる標高以下では採取し ないなどの注意も挙げられた.食性分析の信頼性を高め るためには,種判別が曖昧な糞は分析に使用しないとい う回答もあった.糞の判別ポイントは,金子ほか(2009) を参照されたい. タヌキやアナグマでは,ため糞場など,1 カ所に複数 の糞が存在する場合がある.その際,排出時期,排出個 体が異なると思われる 1 回分を区別して採取する必要が ある.また他の注意点として,比較的新しい糞を採取す る,古い糞や雨による洗い流しや分解により内容物が 残っていないものは採取しない,糞に集まる昆虫を除去 する,小さな骨など内容物の取り残しをしないなどが挙 げられた. 食性分析と並行して,種判別,性判別,系統分類解析 などのために,糞から得られる DNA を用いることも一 般化しつつある(増田ほか 2009).この場合は,他個体 の糞との混同を防ぐため,同じ採取道具は使用しない, 同じピンセットを使用する場合はその度ガスバーナーで 焼くなどの注意が必要である. 糞の採取と保存の際,人獣共通感染症にも注意を払わ なければならない(詳しくは淺野ほか 2006 を参照).特 に北海道のキツネの場合,エキノコックス症の問題があ る(高橋 2007).エキノコックス(=タホウジョウチュ ウ Echinococcus multilocularis)の成虫は終宿主の小腸に 寄生し虫卵は糞便に排出されるため,食性分析のサンプ ルとして胃よりも,糞の方が感染リスクは高まる.その 対処方法として,採取時には糞に直接触れないようにし, 運搬の際にも接触の危険性を軽減すること,糞分析を行 う前には,エキノコックスの虫卵を死滅させるために熱 処理(安全性を確保するために 70°C で一昼夜,エキノ コックスの寿命や生存の条件については,石下ほか 1993;八木・伊東 1999, 2003 を参照)や低温処理(-80°C で 1 週間)が必要であること,これらの処理に耐え得る 容器に糞を入れ,ホルマリン(虫卵検査や糞便内抗原検 出法などに使用する場合)やエタノール(DNA 抽出の場 合)で固定すると良い,との回答があった.高温下では DNAが熱変性を起こすことが懸念されたが,70°C で 3 日 間熱処理した後の糞でも DNA 抽出は可能であった(増 田ほか 2009).例は少ないがエキノコックスは本州でも 確認されており,キツネ以外の他のイヌ科の種やネコに も感染する(Takahashi et al. 2005;高橋 2007)ため,北 海道以外でも糞を熱処理することが推奨される.また, タヌキでは,素手で糞を扱った際に破傷風に感染した例 がある.糞に破傷風菌が存在していたかどうかは不明だ が,土壌中に常在する菌であるため,素手で糞を触る行 為は避けるべきである. 胃(消化管)と比べると,糞は定量的分析に必要なサ ンプル数を確保することが比較的容易であるが,個体識 別ができず,糞の採集範囲が狭い場合,同一個体の糞を 繰り返し採集する「偽反復」の可能性の問題も挙げられ た.そのため,研究目的に応じてサンプリング計画を立 てる必要がある[偽反復に関しては,金子ほか(2009) を参照のこと].また糞の場合は,DNA 分析などを併用 し個体識別や性判別を行わない限り排泄した個体情報に 乏しいため,性や年齢など属性別の食性解析は困難であ ることも指摘された. 糞を利用した食性分析は,直接的に対象動物に与える 影響が少ないという利点がある.しかしながら,糞で縄張 りをアピールしたり,ため糞をしたりと,糞による個体 間のコミュニケーションがある場合,サンプリングの方 法と頻度によっては,対象動物の社会的な行動に影響を 及ぼす可能性がある.タヌキやアナグマでは糞が情報交 換に利用されている(Yamamoto 1984;Kaneko et al. 2006) ため,1 回分と思われる糞のすべてを採りつくさない(個

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体の臭いを残すため)という注意も挙げられた.調査者 が頻繁にため糞場に通うことが,タヌキにとって撹乱と なり,ため糞場を放棄してしまった例も報告された. 2)胃(消化管) 胃や腸をサンプルとして扱う場合,解剖が必須となる ため,採取に手間がかかるだけでなく,解剖室や器具類 が必要となる.また,感染症予防に注意を要する.エキ ノコックスの存在する北海道でキツネを解剖する際は, 使い捨ての感染防護服を着用し,感染性動物試料専用の 実験室で行うなどの措置が必要である.解剖後採取した 胃の内容物は 70%エタノール中に保存し,エキノコック スの虫卵を死滅させるために,分析前に容器ごと 70°C で 1 晩以上加熱処理を行わなければならない.小腸から直 腸までをサンプルとして扱う場合は,エキノコックスの 感染リスクは高まるので胃以上に注意を要する. 胃や腸の場合,性,年齢,栄養状態などの個体情報が 得られることは利点である.海外では駆除されたオコ ジョやイイズナから得られた食性と個体データを分析 し,食性に性差があること,また餌のサイズと体サイズ との相関関係を示した研究例などがある(King 1991; McDonald et al. 2000).一方,ロードキル個体や駆除個体 の場合は,季節性があるため,サンプル収集に偏りが出 る問題も指摘された.また,採食後時間が経過して死亡 した個体は,内容物の採取ができないこともある.また 駆除個体を使用する場合,捕獲用の餌の影響を考慮しな ければならない. 3.食性の分析方法 3-1.ハンドソーティング法およびポイントフレーム法 回答者から得られた分析方法は,水洗した糞内容物(未 消化排出物)または胃内容物を採食項目(種)ごとに分 ける方法(以下,ハンドソーティング法とする)か,分 けない方法かに二分され,その後の評価方法もそれぞれ で異なってくる.ハンドソーティング法は,採食した餌 (種)を定性的に示す方法で,回答者の約 9 割がこの方法 を使用していた(表 2).他方は,採食項目(種)ごとに 分けずにグリッド入りのシャーレ(またはグリッド入り のトレイ)に内容物を展開し,各採食項目(種)がラン ダムに分布し,均等に混じり合っていることを前提に, グリッドの格子点の採食項目(種)を同定し記録する方 法(以下,ポイントフレーム法とする)で,回答者の約 1 割がこの方法を使用していた.どちらの方法において も,事前に文献等や事前調査によって,どのような分類 群レベルで採食項目を判断するかをある程度決めておく 必要がある.また,未消化物の同定のために,対象地域 の採食物となりそうな動植物を採集し,同定検索用の標 本を準備しておくとよいが,琉球列島など希少種の多い 地域では同定用標本が手に入りにくい場合もある.哺乳 類の毛の出現頻度が高い場合は,検索用のプレパラート を作成する場合もある(Day 1966;米田 1982;Litvaitis et al. 1994;邑井 1999;邑井ほか 2011). 糞サンプルを使うハンドソーティングの方法は,以下 の手順で行う. 1)サンプルを冷凍保存または熱処理後にエタノールや ホルマリンで保存. 2)保存していた糞 1 個ずつを水やエタノールでほぐし た後, 篩ふるいを使って水洗. 3)篩上の残渣を採食項目(種)ごとに分ける(または 残渣を乾燥した後,分ける).対象標本や図鑑などを 用い,肉眼または実体顕微鏡下で同定. 4)採食項目(種)ごとに測定事項[重量や相対容量 (%)など]を記録. 5)乾燥機などで乾燥させ,チャック付きビニール袋や 封筒などに採食項目(種)ごとに保存.乾燥重量を 測る場合は,乾燥温度,時間を一定にし,電子天秤 で測定後,保存. 未消化物として目視できないミミズについては,2)の 時点で,決めた水量を入れたトレイに篩を浸し,糞を指 で濾し,篩を通過した水の沈殿物の一部から実体顕微鏡 下で,一定面積のミミズの剛毛の数を実体顕微鏡下で数 える(Kruuk 1989;Reynolds and Aebisher 1991).ミミズ を食べているかどうかの確認だけであれば,湿らせたサ ンプルの一部を顕微鏡下で観察した例もある.これら以 外に,ピクリン酸を用いて観察する方法(Kruuk and Parish 1981;Doncaster et al. 1990)もある.国内では,アナグマ 以外のイタチ科ではミミズの確認はほとんど行われてこ なかったが,地域によってはミミズがおもな餌のひとつ であるタヌキ,キツネ,アナグマ,イタチでは,上述し た剛毛を確認する方法がとられてきた(山本 1991;金子 ほか 2001;Kaneko et al. 2006,2009;福江未発表).また 後述する出現頻度によって評価されることが多い(山本 1991;金子ほか 2001;Kaneko et al. 2006,2009). 使用されていた篩のメッシュサイズは0.1–2 mmで,最 も使用されていたメッシュサイズは0.5–1 mmであった. 篩を使わない方法として,茶こしやストッキングを使用 する例もあった.ストッキングの場合,一度に複数を処 理することができ,時間の短縮につながり,場所もとら ない利点があるが,ミミズを同定できない,乾燥させた 際にストッキングの中で固まるという難点も指摘され

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表2 . アンケートによって得られた食肉目(イヌ 科,イタチ科,ネコ科)の食性の分析 方法 種 類 方     法 利点 問題点, 課 題 使 用する器具類 対象種・ 亜 種 糞 ハ ン ドソ ー ティング 法 糞を 篩 (またはスットキン グや 茶漉 し)で 水洗 後, 篩 に残った残 渣 を採食 項 目 (種) ご とに分類同定し, 記 録. 分類したサンプルは, 乾燥 機 に 入 れて, 乾燥 後,保存 する. ミミズ 検 出の場合: 水洗水 の量を 決 め, 水洗 後の 水 の 沈殿 物 か らミミズの 剛毛 を 実体 顕微鏡 で 観察 する. 先例 研究が 多 いため, 他地 域 との比較研究が 可能 . 比較的 簡便 で あ り,特 殊 な 機材 を必要としない. 大ま か な 評価 ができる. 食物の同定の 信頼 性が 高 く , 詳細 な分析が 可能 . 同定 基準 を定め, 精 度を一 定にすれ ば誰 でも 可能 . ストッキングを 使 用する 場合 , 一 度に複数を処理 することができ , 手 間 が かか らない , 場所をとら ない. 時 間 や手 間 が かか り, 分析数を 増 すの が困難. 特にネズミ類を採食した場合, 毛 が 多 いため時 間 が かか る. 分類や同定の 精 度に 差 がある. 完全 に分類しきれない場合がある. 消化率 が 高 いと 検 出できないものも ある. 消化 により同定できる 部位 が 限 られる. ハ ン ドソ ーティング だ けではミミズ は 検 出できない. 小 さい残 渣だ と同定困難な場合がある. 希 少種が 多 い地 域 ( 琉球列島 など) で は,同定用の 標本 が手に 入 りに く い. 採食種のリフ ァ レンスがあった 方 が よい. 同定困難なもの (昆虫や種 子 など) は 専門家 に 鑑 定してもらう 方 がよい. 水洗 : 篩 ( ストッキング , 茶漉 し, 金魚網 ), バ ット ( 洗面 器, ボウル) ,ビーカー またはメスシリンダー, ゴ ム手袋,ピンセット  分類 : 実 体 顕微鏡 ( 拡 大 鏡 , 光学顕微鏡 ), シ ャーレ, 漏 斗 , 濾紙 保存 : 乾燥機 ,保 存 袋 (チャック付きビニール袋, 封筒 )やサンプル瓶  ミミズ 検 出の場合:シャー レ( 5 mm 格子 ), ピペット, ビーカー ( メスシリン ダー) ,実 体 顕微鏡 , カウン ター  重量を測定する場合: 電子 天秤 (上 皿天秤 ) キツネ,タヌキ,ノイ ヌ,イタチ,シベリア イタチ,テン,クロテ ン, アメリカミンク , ア ナ グ マ ,イリ オモ テ ヤマ ネコ,ツシ マヤマ ネコ,ノネコ ポイント フレーム 法 篩 を用いて 水洗 し, 格子 付 きシャーレ上に残 渣 をラン ダムに 展開 し,実体 顕微鏡 下 で 未消化 物が 占 める 格子 点を数える. ソ ーティングする必要が ないため , 時 間 が 短縮 で きる. 精度に 差 が少ない. カウントするポイント数や 1 つの糞 の 中 に 含 まれる種数により, 出 現 しな い採食種も出て く る. 消化率 が 高 いと 検 出できないものも ある. 採食種を 詳細 に分析できない. リフ ァ レンスがあった 方 がよい. 先 行研究が少ない,またはない. 方法 として,確 立 している か不明 . 後の 評価 で, 採食 項 目の重量比分析が できない. 同 上 ,およ び 1 mm 格子 の シャーレ,カウンター タヌキ,イタチ( 未発 表 ) 胃 内 容 物 ハ ン ドソ ー ティング 解 剖 後, 胃 をアルコール保 存した後,熱処理. 篩上で 胃 の内容物を 濾 した あとに残った 未消化 物を実 体 顕微鏡下 で分類. 項 目 ご とに 乾燥 重量測定 , 項 目 ご とに 相 対容量記録. 残 渣 が残らない採食 項 目 でも 消化前 に 検 出 可能 . 採食種同定のための 標本収 集が困難. 消化途中 でも残 渣 の残らない 項 目は 同定困難なものが 多 い. 篩 ( 0. 1– 0.5 mm ) ,実体 顕 微鏡 ,アルコール, ホ ル マ リン, 電子天秤 ,ピンセット キツネ,タヌキ,イタ チ,イリ オモ テ ヤマ ネ コ( 未発表 ),ツ シ マヤ マ ネコ( 未発表 ) ポイント フレーム 法 解 剖 後, 胃 をアルコール保 存した後, 篩 を用いて 水洗 し, 格子 付きシャーレ上に 胃 内容物をランダムに 展開 する. 実体 顕微鏡下 で 胃 内容物が 占 める 格子 点を数える. 時 間 が 短縮 でき , 精 度に 差 が少ない. ソ ーティングをする必要 がないため時 間 が 短縮 で きる. サンプルを分けないた め, 採集時と同じ状態で 再 利用 可能 . ポイントフレーム 法 を利用した 先 行 研究がない. 方法論 として確 立 している か不明 . 1 mm メッシュの 篩 , 洗面 器, 5 mm 格子 の 入 った シャーレ,実体 顕微鏡 ,ピ ンセット , ボウル , ス ク リュー 管 ,カウンター タヌキ ( 未発表 ),ア ナ グ マ ( 未発表 )

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た.齧歯類や食虫類を捕食するツシマヤマネコでは,糞 をほぐしやすく,大量の毛の中で細かい骨などを探しや すいメッシュの細かい金魚網も使用されていた.対象動 物の糞サイズや採食された動物や植物(特に種子の細 かな果実)によっても篩のメッシュサイズや適した道 具は異なるので,研究目的に適したものを選択すると よい. 2)~ 3)は,作業効率を考えて行えばよいが,同定に 慣れるまでは,多量の糞を洗浄,乾燥させてから,未消 化物を見比べて,同定作業を行った方が効率的であろう. また,カエルの卵やキノコ類など,乾燥させてしまうと 消失してしまうものは,エタノールで液浸保存するなど 注意を要する.種子や昆虫の破片など同定が困難なもの は,専門家に同定を依頼することが望ましい. 胃(消化管)内容物をサンプルとして使用する場合も 糞と同様の方法をとる. 糞サンプルでポイントフレーム法を行った食性分析の 文献は,国内ではタヌキ 1 例(Hirasawa et al. 2006)のみ で,方法は以下の通りである. 1)~ 2)までハンドソーティング法と同様. 3)水洗した残渣を 1 mm 格子付きのシャーレにランダ ムにひろげ,実体顕微鏡下で格子点にある採食項目 (種)を同定しながら,200 ポイントになるまで記録. 4)各採食項目の割合を計算する. 5)記録後は,1 つのサンプルごとにエタノール保存. 胃内容物をポイントフレーム法で分析した回答では, 3)で 5 mm 格子のシャーレを使用していた以外は,糞と 同様の方法を用いていた. 3-2.分析方法の利点および問題点 3-2-1.サンプル別分析方法の利点および問題点 1)糞 糞をサンプルとする利点として,多くの回答者がサン プルを容易に確保でき,比較的容易に,かつ安価に分析 できることを挙げていた.そのため,定量的解析に用い ることが可能だとの意見もあった.また,非侵襲的で対 象動物の行動や生態への撹乱が少ないこと,古い糞でも 保存して分析可能であること,分析後の乾燥保存が容易 であることなどが挙げられた. 糞をサンプルとする場合の問題点は,ほとんどの回答 者が,消化率が高い採食項目(種)(例えばミミズやナメ クジなど)は出現しない,消化率の違いにより検出率が 異なり,正確な採食項目(種)を把握できない可能性が あることを指摘していた.海外では,ムナジロテン Martes

foina,イタチアナグマ Melogale moschata,シベリアイタチ の糞からミミズが出現している(Lucherini and Crema 1993;

Wu 1999).ミミズを検出する方法を用いることにより, ミミズが出現していなかった種や地域においても,ミミ ズの採食が明らかになる可能性がある.これは未消化 物として確認が難しいナメクジなどについても同様で ある. 2)胃(消化管) 胃内容物をサンプルとする利点は,糞では残渣が残ら ない餌種でも消化前に目視し,同定することが容易であ ることである.反面,糞と同様に,消化の程度によって は残渣が残らない採食種もあり,同定困難な場合もある. 3-2-2.ハンドソーティング法およびポイントフレーム法 の利点および問題点 1)ハンドソーティング法 糞および消化管内容物を採食項目(種)ごとに分ける ハンドソーティング法の利点として,多くの回答者が, 先例研究が多いため比較研究が可能であること,簡便で あることを挙げていた.ソーティングを経て同定を行う ので,同定の信頼性が高く,詳細な分析が可能であると いう意見や,ある程度の同定基準を取得できれば誰でも 行うことができるという意見も多かった.しかし一方で, ソーティング・同定の精度に個人差が生じるという指摘 も多数あった. ハンドソーティング法の問題点・課題として,ソーティ ング・同定の精度の個人差の他に,ポイントフレーム法 に比べ時間や手間がかかるとの意見も多かった.著者(福 江)は,タヌキの糞分析(水洗し乾燥後,ハンドソーティ ングおよび同定後,各採食項目の重量を計り,ミミズの 剛毛の有無を調べる)を行った際,1 日(約 8–10 時間) で最大 6 個の分析しかできなかった.ソーティングおよ び同定の精度は,文献上には記述されない事柄であり, 初心者の場合は経験者に指導を受けた方がよい. 2)ポイントフレーム法 シャーレに内容物をあけ,格子点数を数えるポイント フレーム法は,イヌ科,イタチ科,ネコ科では適用は少 なく,今回のアンケートでは 3 名(のべ 4 名)が使用し, 1 地域のタヌキにおいて論文発表されているのみであっ た(Hirasawa et al. 2006;Takatsuki et al. 2007).ポイント フレーム法は,水洗後の残渣をソーティングする必要が ないので時間が短縮できる,サンプルを採取した際とほ ぼ同じ状態で再利用できる利点が挙げられた.ポイント フレーム法の問題点については,食性分析の評価方法の 箇所で記述する.

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4.食性分析の評価方法 4-1.おもな評価方法 回答者から得られた各採食項目(種)の評価方法は, 頻度,重量比,容量比,面積比に大まかに分けることがで きた(表 3).回答者の 7 割以上が出現頻度を評価方法に 用いており,同時に相対出現頻度,目視による相対容量比 (全残渣の容量に対し各採食項目の占める容量の割合),乾 燥重量比(平均重量率等)を用いている場合も多かった. 出現頻度,相対出現頻度,相対容量比,乾燥重量比[平 均重量率は藤井ほか(1998)を用語のみ改変]の算出方 法は以下である. 出現頻度(Frequency of Occurrence): ある採食項目(種)の出現頻度(%)=ある採食項 目(種)の出現サンプル数 / 総サンプル数×100 相対出現頻度(Relative Frequency of Occurrence):

ある採食項目(種)の相対出現頻度(%)=ある採

食項目(種)の出現サンプル数 / 各採食項目(種) の出現サンプル数の総計×100

相対容量比(Relative Percentage of Volume):

ある採食項目の相対容量比(%)=ある採食項目の 総相対容量 / すべての採食項目の総相対容量×100 乾燥重量比(Percentage of Dry Weight)(平均重量率):

ある採食項目(種)の平均重量率(%)=[1 サンプ ル中のある採食項目(種)の乾燥重量 /1 サンプルの 乾燥重量]の総計 / 総サンプル数×100 4-2.ハンドソーティング法による分析結果の評価方法 の利点および問題点 ハンドソーティング法の分析試料は,出現頻度,相対 出現頻度,乾燥重量比(平均重量率,重量率),相対容量 比などで食性を評価することが多い. 出現頻度の利点は,比較的簡単に計算,実施すること ができ,先行研究が多いため地域間比較が可能なこと, 表 3.アンケートによって得られた食肉目(イヌ科,イタチ科,ネコ科)の食性のおもな評価方法 方法 利点 問題点,課題 対象種・亜種 出現頻度, 相対出現 頻度 過去の他地域との比較が可能.質的 評価が可能. 同所的に生息する種間の比較が可能. 季節変化をある程度評価できる. 単純な出現頻度は計算が容易で,特 別な装備やソフトウェアを必要とし ない. 比較的簡単に実施できる. 量的評価が困難なため,食物の重要性が 不明確. 消化率の違いが,過大評価または過小評 価を招く. 微量の採食項目を過大評価. 出現頻度だけでは,適切な評価はできな い. キツネ,タヌキ,ノイヌ, イタチ,シベリアイタチ, テン,クロテン,ミンク, アナグマ,イリオモテヤマ ネコ,ツシマヤマネコ,ノ ネコ 乾燥重量 (平均重量率, 重量率など) 比較的簡便に実施できる. 重量を計測することで,出現頻度で は過大評価するものを評価可能. 平均重量率では,頻度と重量の両面 から評価できる. 海外では重量を用いて量的評価を 行っているものが多く,比較可能. 採食種の消化率がわかれば実際の採 食量を計算できる. 消化率を求めないと評価の信頼性が損な われる. 手間がかかる. 乾燥重量の評価法は複数あり,スタン ダードな方法が確立していない. 体積を使用した評価方法とは,直接比較 ができない. キツネ(未発表),タヌキ (未発表),イタチ,シベリ アイタチ,テン 目視による 相対容量比 労力がかからない.採食種の重要性の判断が可能. 残渣の量を摂取した量に置き換えるのは 危険である(消化率の高いものは過小評 価される). 精度が粗い. キツネ(未発表),タヌキ (未発表),イタチ ポイントフ レーム法に よる比率 (割合) 量的評価が可能. 労力がかからず短時間でできる. 毛が多い場合過大評価する. 糞の場合,消化率が大きく影響し,植物 質を過大に,動物質を過小評価する可能 性がある. 普及率が低いため,他の評価方法と比較 ができない. 方法論の根拠が曖昧であり,また統一さ れていないので,種間比較ができない. 面的評価のため,量的評価といえるか不 明. 評価が妥当であるか不明. タヌキ,アナグマ(未発表), イタチ(未発表)

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同所的に生息する他種(食肉類)との種間比較が可能で あることが回答者から挙げられた.また質的評価はでき る反面,量的評価が困難であるという問題点が回答者に 共通して挙げられた.特に糞サンプルでは,消化率が高 く,未消化物の残りにくい動物質の採食項目(種)では 過小評価される.反面,未消化物の残りやすい植物質(果 皮や種子など)や動物質の一部(毛や鱗など)は過大評 価される.例えば,体サイズが大きく,未消化物となる 毛のある哺乳類や鱗をもつヘビ類を採食した場合,複数 の糞に排出されるのに対し,体サイズが小さく未消化物 の少ないカエル類や昆虫類などは 1 個の糞で排泄される 可能性が高い.従って,出現頻度は空間的(地理的),経 時的変化において相対的な比較は可能であるが,採食量 の量的把握の指標に用いることはできない.また,出現 頻度だけでなく,相対出現頻度が併用されることもある (例えば山本 1994;Wu 1999;Bonesi et al. 2004).出現頻 度の%値だけでなく,ブートストラップ法を用いて 95% の信頼区間を示した研究例もある(Reynolds and Aebisher 1991;McDonald et al. 2000). 乾燥重量比(平均重量率)は,特にイタチの研究者に 比較的多く使用されていた.回答者からは比較的簡単に 実施できる,採食種の消化率がわかれば相対的な採食量 を計算できるとの利点が挙げられた.重量を計測するこ とで,出現頻度では過大評価する採食項目(種)を適切 に評価できる,平均重量率は出現頻度と重量の両側面か ら評価できるという意見もあった.国内の研究例は多く はないが,海外のイタチ科の研究では糞や胃の未消化物 の重量と消化率を用いて量的評価を行っている例もあり (King and Moody 1982;King 1991;Jedrzejewska et al. 2001),海外の研究と比較できるという意見も挙げられた. 一方,手間がかかる,消化率を求めないと信頼性が下が る,体積(容積)を使用した方法とは直接比較ができな い,乾燥重量の評価法は複数あるため,スタンダードな 方法が確立されていないなどの問題点も指摘された. 相対容量による評価では,目視で,簡便に短時間で優 占項目を知ることができ,労力がかからない,採食項目 (種)の重要性の判断が可能との意見があった.しかし, 他の評価法と共通して,消化率の高い項目(種)が過小 評価される問題があり,また精度が粗いという指摘もな された. 4-3.ポイントフレーム法による分析結果の評価方法の 利点および問題点 ポイントフレーム法での評価方法は,数えた交点の採 食項目(種)別の比率(割合)であることから,面的な 評価と言えよう.Takatsuki et al.(2007)は,タヌキの糞 分析において,ポイントフレーム法により得られた採食 項目(種)の出現頻度と比率の比較を行った.両方の評 価方法による結果はほぼ同じ傾向であったが,比率(割 合)の方がより量的な評価が可能だと述べている.海外 では,捕食する餌動物のサイズが比較的大きく,そして 単純な食性であるコヨーテ Canis latrans やオオカミ C. lupusなどでポイントフレーム法が適用されている

(Meinzer et al. 1975;Johnson and Hansen 1977;Ciucci et al. 2004).しかしながら,適用例が少ないため, 他研究と比 較することは難しい.また同所的に生息する他種との比 較も困難である.なぜならば,体サイズに伴う糞の大き さの違いにより,フレームの大きさ,グリッドサイズ, 数えるグリッドの交点数が異なるはずだが,サンプルの 大きさとそれに適した方法(フレームの大きさ,グリッ ドサイズ,交点数)が確立されていないためである[例 えばオオカミ(Ciucci et al. 2004)では 17 cm × 28 cm の トレイにあけ,1 cm × 3 cm のグリッド(図から判断), 交点数は 50;コヨーテ(Johnson and Hansen 1977)では 交点数 100;タヌキ(Hirasawa et al. 2006;Takatsuki et al. 2007)ではシャーレにあけ,1 mm × 1 mm のグリッド, 交点数 200].1 つの糞の中の採食項目(種)が多くかつ 少量であるほど,数える交点数によっては記録されない 項目も出てくる可能性がある.つまり,希少で利用可能 量の低い採食物(項目)を検出できないこともあり得る. また他の評価法と同様,消化率の高い採食項目(種)は 過小評価し,消化率の低い採食項目(種)は過大評価す る.また三次元的な評価がでないので,ボリュームのあ る採食物(種)を過小評価する点も指摘された. 以上の点から,ポイントフレーム法は,おもに有蹄類の 胃内容物分析で開発された方法であるが,雑食性で機会 主義的な採食行動により,採食項目が多岐の分類群にわ たり,かつそのために消化率の異なる動・植物質の食物 が一つの胃や糞に入る食肉目への適用については,さら に議論する必要がある.今後,サンプルの大きさ(容量), 採食項目(種)数,グリッドのサイズ,交点数を変える と,結果がどのように異なるかシミュレーションを行い, 目的に応じた最適なグリッドサイズや交点数の算出を行 い,他の評価方法と比較検討する必要があるだろう. 4-4.食性分析・評価方法の改善策およびその他の評価 方法 ここまで示してきた食性分析の方法論および評価の問 題は,オオカミ,キツネ,テンでは数十年前から指摘さ れており,改善策を見いだすために出現頻度,乾燥重量

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比,相対容量,バイオマス,ポイントフレーム法などい くつかの方法が比較研究されてきた(Johnson and Hansen 1977;Corbett 1989;Reynolds and Aebisher 1991;Ciucci et al. 1996;Cumberland et al. 2001;Ciucci et al. 2004;van Dijk et al. 2007;Takatsuki et al. 2007;Klare et al. 2011 in press). 特に Reynolds and Aebisher(1991)は,いくつかのキツ ネの糞分析方法を比較し,適切なサンプルサイズや室内 での作業手順など推奨される方法を検討しているので参 考となる[サンプルサイズについては,Trites and Joy (2005)も参考になる]. 採食項目(種)の消化率の違いが,量的評価の困難さ を招くことはすべての評価法に共通する問題点であっ た.この問題を解決するために,Yoneda(1982b)は北 海道のキツネの主要な餌について,給餌・消化実験を行 い,実験から得られた消化係数と糞分析で得られた乾燥 重量比から,キツネの餌の年間の相対重量比の変化を示 した.また,ピューマ Puma concolor でも,給餌・消化 実験が行われ,1 個の糞あたりの餌動物の体重を回帰式 によって算出し,糞分析の結果から餌動物の相対的な体 重比を算出している(Ackerman et al. 1984).しかし,2 kg 以下の小型の動物はこの回帰式にはあてはまらない.消 化係数や回帰式を用いて採食量を推定する試みは,海外 においては複数行われている(Lockie 1959;Goszczynski 1974;Meriwether and Johnson 1980;Jedrzejewska et al. 2001;Magdalena and Andrzej 2003)が,多様な採食物を 利用している動物にとっては,すべての採食物において 飼育下での給餌・消化実験を行うのは難しい. イリオモテヤマネコでは,特定の餌種に関しては未消 化物から推定される個体数によって評価をする方法や, 特定の種や分類群に注目し,糞内容物から頻繁に見つか る骨のサイズを用いて野外でサンプリングした餌動物か ら体重との相関式を求め,捕食された餌動物の生物体量 を推定する方法(Sakaguchi and Ono 1994;Watanabe and

Izawa 2005)などもある.しかし,この方法が適用でき

る種は同定が容易であり,かつ骨格を持つトカゲ類やカ エル類などに限られる.また,同定した種の平均的な体 重を文献等から引用し,糞から出現した個体数と体重を 掛け合わせることによって,捕食された各種の体重比を 求め比較を行っている研究例もある(Moleon and Gil-Sanchez 2003;Malo et al. 2004 など).

上記評価の他に,同所に生息する複数種間の食性比較 や同一種内の食性の地域変異や経時比較において,栄養 ニッチ幅を推定する Levins B index を用いた研究,食性 ニッチの重複を Pianka’s index を用いて示した研究もみ られる(例えば山本 1994;Moleon and Gil-Sanchez 2003;

Manfredi et al. 2004;Biro et al. 2005;Canepuccia et al. 2007 など).Litvaitis et al.(1994)は,複数の食性の重複度の 測定方法を評価しているので参考となる. 5.イヌ科,イタチ科,ネコ科の食性研究の現状と展望 今回の検討により,研究目的が食性という共通分野で あっても,研究者によって焦点となる内容や研究背景が 異なり,そのため食性分析・評価方法が異なることが明 らかとなった.また方法自体にサンプル内容と関連して 一長一短があり,まだ方法として確立していないものも みられた.Reynolds and Aebischer(1991)は,食性研究 の数だけ方法のバリエーションがあることが問題である と指摘したが,現段階では分類群が同じだからといって, ひとつの方法に統一することは適切でないと思われる. 今回のアンケートにより,いくつかの方法が示されたが, さまざまな比較研究を考えると,複数の方法による分析・ 評価を行い,および将来的な再検討を見据えた元データ やサンプルの長期保存などを行うことが必要である. 現在までに国内で行われてきた食性研究の多くは, 短期間の研究が多く,同所での経年変化をモニタリング するような研究はほとんどない.しかし,現在ヤマネコ 2 亜種の生息地である西表島と対馬では,林野庁の巡視 事業により定期的に決められたルートを巡視員が踏査 し,糞や食痕などの痕跡を同一の調査方法で長期間継続 収集し,蓄積している.ヤマネコのような希少種および その生息地保全にとって,食性の経年変化や地域間比較 などの解析を可能にする長期的な食性情報の蓄積は,そ の種の現状把握と具体的保全計画の検討のために,大変 重要である. 一方,現在では外来生物として研究対象とされている ノイヌ,ミンク,テン,イタチ,ノネコなどでも食性研 究が進められている.特に,希少野生動物の生息地であ る沖縄島北部のやんばる(河内・佐々木 2002;城ヶ原ほ か 2003),西表島(Watanabe et al. 2003),小笠原諸島(川 上・益子 2008),三宅島(例えば Hasegawa and Nishikata 1991;Hasegawa 1999)などの島嶼で行われてきた.ノネ コの在来動物への捕食に関しては世界中で食性研究が報 告されており(例えば Bonnaud et al. 2007;Nogales and Medina 2009 など),国内でもその影響が懸念されている 地域は多い.

最近では,糞 DNA を用いた個体識別と食性の結果を 組み合わせた,個体レベルでの採食戦略の研究が始まっ ている(例えばコヨーテでは Fedriani and Michael 2001). 国内でも,タヌキやキツネの糞 DNA から個体識別や性

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判定の試みがなされつつある(松木ほか 2006,2008, 2009;増田ほか 2009;Oishi et al. 2010).直接観察が難し い我が国の食肉目においても,今までの糞による食性分 析だけでは得られなかった個体情報を付加することによ り,性,年齢,繁殖・栄養状態と食性との関係など,種 内,個体群内での詳細な食性研究の可能性が広がるだろ う.本稿では,雑食性で採食項目の多い食肉目において は,摂取食物の栄養価の観点からの研究は難しいため,3 科の採食物の質(栄養価)について言及しなかった.有 蹄類や霊長類では,雌雄間や年齢間で餌の栄養価に差が あることが報告されているように(岩本 1997;高槻 1998),今後は個体情報を組み合わせ,採食物の栄養価と 性,年齢,繁殖状態(妊娠・授乳)などの関係も検討す る必要がある. 謝 辞 本連載の掲載にあたり,哺乳類科学前編集長の伊澤雅 子先生および現編集長の横畑泰志先生をはじめとする諸 先生方には多大なご理解とご配慮をいただきました.ま た,食肉目メーリングリストのメンバーである,浦口宏 二氏,金子弥生氏,佐々木 浩氏,塚田英晴氏,村上隆 弘氏および伊澤雅子氏には,原稿の草稿の段階から目を 通していただき,貴重なコメントを賜りました.深くお 礼申し上げます.また,文献の紹介や複写などに関して, 伊澤雅子氏,上馬康生氏,上杉哲雄氏,中村俊彦氏,南 正人氏には大変お世話になりました. 本原稿は,食性研究に関するアンケートにご協力いた だいた以下の研究者の皆様からの回答やコメントを元に 作成しました.ここに厚くお礼申し上げます. イヌ科:浦口宏二氏,金子弥生氏,河内紀浩氏,岸本真 弓氏,佐伯 緑氏,佐々木 浩氏,關 義和氏,高 槻成紀氏,立脇隆文氏,塚田英晴氏,中田 篤氏, 伴 昌彦氏,谷地森秀二氏,亘 悠哉氏 イタチ科:上杉哲雄氏,浦口宏二氏,金子弥生氏,佐々 木 浩氏,鑪 雅哉氏,立脇隆文氏,中島卓也氏, 中村俊彦氏,藤井 猛氏,村上隆弘氏 ネコ科:河内紀浩氏,木下剛志氏,田中幸子氏,檜山智 嗣氏,渡辺伸一氏 引 用 文 献 阿部 永・斉藤 隆・浦口宏二・中川 元・渡辺 裕・川辺百 樹・近藤憲久・宮本雅美.1985.野生動物分布等実態調査 報告書(野生化ミンク),pp. 32–37.北海道生活環境自然保 護課,札幌.

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