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飲水時の舌と口蓋の接触観察:ストローとコップの違いに着目して

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緒  言  臨床上,嚥下障害患者の中にはコップで液体を飲むと むせるが,ストローを用いるとむせないことがある.ま た,その逆も観察される.嚥下障害患者の液体摂取に関 し,臨床家が患者の口唇や舌の動き,嚥下反射のタイミ ング,嚥下- 呼吸パターンを考慮し,食具の選択を行う ことが多い.しかし,液体摂取時に用いられるストロー とコップの特徴に関する報告14)は限られているため, 経験に基づき食具の選択を行っているのが現状である.

短  報

飲水時の舌と口蓋の接触観察:ストローとコップの

違いに着目して

Tongue and Palate Contact during Cup and Straw Drinking

平田  文

1)

,柴本  勇

2)

Aya HIRATA1), Isamu SHIBAMOTO2)

要旨 【目的】ストローとコップで液体を摂取した際の舌と口蓋の接触点について,エレクトロパラト グラフィ(以下,EPG)を用いて観察した. 【方法】健常成人 6 名を対象とした.124 点の接触センサ付き人工口蓋床を製作し,舌と口蓋の接触点数を 観察した.食具はストローとコップ,試料は常温水とトロミ水(LST 値 40 mm)を用いた.課題は,スト ローで水を飲む課題(ストロー条件),ストローでトロミ水を飲む課題(トロミ条件),コップで水を飲む 課題(コップ条件)の 3 つとした.舌と口蓋の接触点は,嚥下前に舌と口蓋が完全に接触していることを EPGで確認した時点から,試料を口腔内に入れ嚥下音開始までの舌と口蓋の接触点を対象とした.EPG 計測結果から,舌と口蓋の接触点(舌口蓋接触点)と舌と口蓋の非接触時間(以下,舌口蓋開放時間)を 検討した.本研究では,舌口蓋接触点が 120 点を下回った時点から 120 点に戻るまでを舌口蓋開放と定義 した.舌と口蓋の接触点が最も少なかった点を舌口蓋最大開放点と定義した.統計学的有意差の検討に は,Wilcoxon の符号付き順位検定を用いた. 【結果】ストロー条件とコップ条件における舌口蓋最大開放は,コップ条件で有意に開放する結果となっ た( p=0.02).ストロー条件とトロミ条件では,有意な差はなかった( p=0.11).舌口蓋開放時間は, ストロー条件とコップ条件( p=0.02),ストロー条件とトロミ条件( p=0.02)の両比較とも,ストロー でトロミなし液体飲水が最も舌口蓋開放時間が短縮する結果となった. 【考察】コップとストローは飲水時の舌口蓋接触が異なっていた.食具によって液体飲水時の口腔運動は 異なり,その特徴を考慮して食具の選択をすることが重要である. key words:エレクトロパラトグラフィ 単独嚥下 液体粘度 ストロー嚥下 コップ嚥下 <所属> 1)国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科 2)聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部言語聴 覚学科

1)Department of Speech and Hearing Sciences, International University of Health and Welfare

2)Department of Speech Language and Hearing Sciences School of Rehabilitation Sciences, Seirei Christopher

Uni-versity <連絡先> 〒 324–8501 栃木県大田原市北金丸 2600–1 国際医療福祉大学保健医療学部言語聴覚学科     平田  文 TEL 0287–24–3028  FAX 0287–24–3100 e-mail address:[email protected]

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 Veiga1) らは,ストローとコップを用いた液体摂取時 の嚥下動態を嚥下内視鏡検査で検討し,ストローはコッ プに比べ液体を口狭に保持しておくことに適した食具で あることを報告している.また,Lawless2) らは,健常 成人においてストローはコップに比べ一口量が少ないこ とを報告している.一方,ストローはコップに比べ,高 い口輪筋の筋活動が必要であること3) や,ストローと コップで嚥下前後の呼吸相が変化すること4) が報告され ている.これらの先行研究や臨床経験より,液体摂取時 の食具は嚥下動態に影響を与えることが示唆されるが, それぞれの食具の特徴には不明な点が多い.また,液体 摂取時にむせや誤嚥のリスクが高い患者は,液体にトロ ミ調整食品を付与する.粘度が高い液体をストローで飲 水する場合に,通常より高い吸引圧が必要と想像する. その際の口腔器官の運動については不明である.  嚥下中の口腔運動を計測する手法として,VF 検査や 超音波診断装置で観測する方法がある.最近では,極薄 型の舌圧シートを用いて嚥下中の舌圧を計測し様々な知 見を得ているが,接触点が 5 点と限られている5) .一方, 構音中の舌と口蓋の接触を観察する手法として,1970 年代からエレクトロパラトグラフィ装置(Electropala-tography:以 下,EPG)を 用 い た 研 究 が 行 わ れ て き た6,7) .EPG とは,接触センサを埋め込んだ人工口蓋床 を装着し,構音時の舌と硬口蓋の接触を経時的に観察す る装置である.1990 年代には,非侵襲的に嚥下中の舌 と口蓋の接触を観察する目的で EPG を用いた嚥下動態 の観測が散見される813).しかし,一定の見解が得られ るまでの検討が積み重なっていないのが実情である.  本研究の目的は,食具の違いにより飲水時の舌と口蓋 の接触が異なるか否かについて EPG を用いて観察する ことである. 対象と方法 1.対  象  摂食嚥下障害の主訴がなく,摂食嚥下機能に関する神 経学的・器質的疾患の既往がない健常成人 8 名中,電極 の接触不良があった 2 名を除き解析が可能だった 6 名 (37(28∼40)歳, 男性 3 名 女性 3 名)を対象とした. 2.計測装置

 EPG は Complete Speech Palatometer System (Complete Speech 社製,米国)を用いた.接触センサ付

き人工口蓋床は,歯科医師が作製した口蓋印象模型を用 いて Complete Speech 社が製作した.Complete Speech 社が製作する人工口蓋床の規格は常に同じで,厚さ約 0.4 mmのプラスティック(アクリル樹脂)に 124 点の接 触センサが貼付されている.本研究で用いた人工口蓋床 も同様に対象者全員同じで,Mantie-Kozlowski12,13) ら の報告と同一製品であった.図 1 に EPG の構成を示す. 接触センサ付人工口蓋床を装着し,舌と口蓋の接触点 図 1 EPG 装置(接触センサ付き人工口蓋床)

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(位置)と音声入力マイクで得た音をモニター上に時間 同期して表示した.サンプリング周波数は 100 Hz で あった.なお,本研究で用いた接触センサ付き人工口蓋 床は,接触センサのケーブルを前歯部より導出するタイ プであった. 3.試料および嚥下条件  嚥下試料として,常温水と常温水に対して 1% 程度の トロミ調整食品(ソフティア 1SOL,Nutri 社)を付与し た Line Spread Test(以下,LST)値 40 mm の嚥下調整 食学会分類 2013 段階 1,薄いトロミに該当するトロミ付 き液体(以下,トロミ水)を用いた.なお,LST は,目 盛りのついたシートでトロミ溶液の広がりを計測し,ト ロミ濃度を簡易に計測するテストである14) .食具は,外 径 0.5 cm 長さ 18 cm のストローとコップの縁がセンサに 当たらないよう縁を斜めにカットした 150 mL 用(直径 6.6 cm深さ 7.3 cm)紙コップを用いた.図 2 に紙コップ を示す.  嚥下方法は,単独嚥下とした.嚥下指示の後,10 mL の嚥下試料を 1 回で嚥下した.各嚥下課題は,ストロー で水を飲む課題(以下,ストロー条件),ストローでト ロミ水を飲む課題(以下,トロミ条件),コップで水を 飲むコップ課題(以下,コップ条件)の 3 つの課題を設 定した.本研究では,対象者の飲水量を少なくするため にストロー条件,トロミ条件,コップ条件の 3 課題のみ とし,コップでトロミ水を飲む課題は実施しなかった. 飲水時の頸部角度は,計測条件の統制のため,頸部を伸 展させないようにした.ストローを口腔内に挿入する位 置は,自然な飲水を観察するために規定しなかった. 4.計測手順  対象者は接触センサ付き口蓋床を装着し,ストロー挿 入箇所を除き舌と口蓋を完全に接触させた状態から嚥下 指示の後,10 mL の嚥下試料を取り込み 1 回で嚥下し た.安静時に舌は硬口蓋に接触しているため,本計測で は指示しなくても舌と口蓋が接触していた.ただし,安 静時に舌と口蓋が接触しない場合は,計測の条件を統制 する目的で接触させることを促した.ストローは,嚥下 指示の前に口腔内に挿入し,嚥下後に口腔から取り出し た.対象者は,接触センサ付き人工口蓋床を装着して 3 分以上経過した後に,EPG モニターは見ずに計測を 行った.  試行回数は,各条件に付き 8 試行,各条件をランダム に提示し合計 24 試行実施した. 5.分析方法  EPG で計測した舌と口蓋の接触点と EPG システム内 蔵マイクで録音し,嚥下音を EPG ソフトウェア上で時 間同期し分析した.Excel で時間軸上に舌と口蓋の全接 触点合計数を示し,EPG 波形を作成した.図 3 に EPG 波形の 1 例を示す.EPG 波形に嚥下音聴取時間をプロッ 図 2 計測用コップ(150 mL,直径 6.6 cm,高さ 7.3 cm) 0 20 40 60 80 100 120 140 ⯉ཱྀ⵹᥋ゐⅬᩘ䠄Ⅼ䠅 ᫬㛫 100msec ⯉ཱྀ⵹᭱኱㛤ᨺⅬ ⯉ཱྀ⵹㛤ᨺ᫬㛫 ᄟୗ㡢 図 3 舌口蓋最大開放点および舌口蓋開放時間

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トした.嚥下指示で試料を口腔内に取り込み,嚥下音が 発生するまでの時間を口腔期として定義した.舌と口蓋 の最小接触のポイントを舌口蓋最大開放点と定義した. 舌口蓋最大開放点における舌口蓋接触点数を算出した. また,舌と口蓋が開放している時間を舌口蓋開放時間と 定義して時間を算出した.なお,舌口蓋開放とは,舌口 蓋接触点が 120 点を下回った時点から 120 点に戻るまで と定義した. 6.統計学的手法  舌口蓋最大開放点の接触点数と舌口蓋開放時間の中央 値(四分位範囲)を算出した.統計学的分析には SPSS (Ver23)を用いた.  水を嚥下する際の食具の違いを比較するためにスト ロー条件とコップ条件,ストロー飲水における液体粘度 の比較をするためにストロー条件とトロミ条件をそれぞ れ,Wilcoxon の符号付き順位検定を用い,5% 水準に よって有意であることを判定した. 7.倫理面への配慮  実験内容を十分に文章および口頭で説明し,同意を得 た.本研究は,所属機関倫理審査委員会の承認(承認番 号 17-Io-174)を得た後に開始した. 結  果  舌口蓋最大開放点の接触点数は,ストロー条件 36 (25∼45)点,トロミ条件 52(40∼83)点,コップ条件 0(0∼1)点だった.図 4 に,各嚥下条件における舌口蓋 最大開放点の接触点数の比較を示す.ストロー条件と コップ条件の比較では,ストロー条件が有意に多かった ( p=0.02).ストローで液体を摂取する場合,舌側方部 が口蓋に接触していることが観察された(図 6).スト ローで水とトロミ水を嚥下するストロー条件とトロミ条 件の比較では,有意な差は認めなかった( p=0.11).  舌 口 蓋 開 放 時 間 は ス ト ロ ー 条 件 1114(557∼1930) ms,ト ロ ミ 条 件 1406(658∼2320)ms,コ ッ プ 条 件 1474(972∼2153)ms だった.ストロー条件とコップ条 件,ストロー条件とトロミ条件の両比較とも,ストロー 条件で舌口蓋開放時間が有意に短かった(ストロー条件 とコップ条件 p=0.02,ストロー条件とトロミ条件 p= 0.02)すべての嚥下条件で,舌口蓋開放時間の直後に舌 が口蓋(硬口蓋)にしっかりと押しつけられ,液体を咽 頭に送り込む「舌によるアンカー機能」が観察された. 図 5 に,各嚥下条件における舌口蓋開放時間の比較を 示す.  図 6 に,単独嚥下における対象者 A(女性,38 歳)の EPG波形と画像の典型例を提示する. 考  察  液体をストローとコップで摂取する際の口腔期におけ る舌と口蓋の接触を,EPG を用いて非侵襲的に観察し た.本研究では特に,液体を口腔内に取り込み保持する 口腔準備期の中で,最も舌と口蓋が開放している時点に 着目し,舌口蓋最大開放点として計測した.また,口腔 準備期と口腔送り込み期前半の舌と口蓋が開放している 時間についても計測した.本研究では,VF 検査や VE 検 査では観察できない,液体を口腔内に取り込んで保持 し,咽頭に送り込む際の舌運動が食具によって異なるこ とを 124 点の接触センサで観察した.  Mantie-Kozlowski12,13) らは,本研究で用いた EPG と 図 4 各嚥下条件における舌口蓋最大開放点の比較 右図:ストロー条件とコップ条件の比較,左図:ストロー条件とトロミ条件の比較 ɶ ɶځ͌ίᇹɟׄЎˮὊᇹɤׄЎˮὸ ᵵᶇᶊᶁᶍᶖᶍᶌᇷӭ˄Ẩ᪯ˮ౨ܭ ᵈᶎᾋᵎᵌᵎᵓ

ᐾӝᔟஇٻ᧏્ໜίໜὸ ᐾӝᔟஇٻ᧏્ໜίໜὸ

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同様の装置で,唾液嚥下における舌と口蓋が接触した部 位と接触時間を計測している.本研究では,液体摂取時 の舌と口蓋の接触点の合計数を算出することで,定量的 に舌と口蓋の接触を把握することが可能であった.  単独嚥下における舌と口蓋の接触は,ストロー条件で コップ条件に比して有意に多く,コップ条件で少なかっ た.コップ条件では,頸部を伸展させずに少量の液体を 口腔内に取り込むために,下顎運動を用いてコップの高 さより下顎を下げている可能性がある.そのため,コッ プでの飲水は開口位になりやすいことが示唆された.ス トローを用いた液体摂取は,舌側方部が口蓋に接触して おり,舌側方部と舌中心部は分離した運動を行っている ɶ ɶځ͌ίᇹɟׄЎˮὊᇹɤׄЎˮὸ ᵵᶇᶊᶁᶍᶖᶍᶌᇷӭ˄Ẩ᪯ˮ౨ܭ ᵈᶎᾋᵎᵌᵎᵓ ʤὝʥ ʤὝʥ

図 5 各嚥下条件における舌口蓋開放時間の比較 右図:ストロー条件とコップ条件の比較,左図:ストロー条件とトロミ条件の比較 PVHF PVHF PVHF '2)ဒ΂ Ũ Ჴᐾӝᔟஇٻ᧏્ໜ ɦዴᲴᐾӝᔟ᧏્଺᧓ '2)ඬ࢟ '2)ဒ΂

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可能性が考えられた.Chi-Fisman8,9) らの EPG を用いた 先行研究においても,液体を取り込んで咽頭に送り込む 際に舌側方部が他の部位より口蓋に接触することを報告 しており,本研究の結果を支持するものであった.  舌と口蓋の開放時間は,ストロー条件が他の条件と比 べて短かった.ストロー条件は,液体を短時間で吸引 し,舌背上で保持し,その後に続く口腔送り込み期や咽 頭期へスピーディーに移行できることが示唆された.一 方,コップ条件は,下顎運動を用いることで開口位にな りやすく,液体を保持した状態から口腔送り込み期や咽 頭期へ移行するのに時間を要することが推察された.  本研究の結果より,ストロー飲水はコップ飲水に比 し,舌と口蓋の接触が多く,舌と口蓋が開放している時 間も短いことが示された.食塊を口腔内で保持する口腔 準備期は,食塊を舌背部に載せて口蓋との間で保持する 場合が多いことが報告されている15) .ストローで飲水す る場合は,舌と口蓋を密着させて下顎の位置を安定させ ることで,液体を舌背と口蓋の間で保持することが示唆 された.Veiga1) らが報告したように,ストローは口腔 内に液体を留めておくのに適した食具である可能性が, 本研究からも考えられた.  ストロー飲水における液体粘度の影響は,トロミ水は 水に比して舌口蓋開放時間が有意に長かったが,舌口蓋 最大開放点の接触点数に有意な差は認められなかった. トロミ水は粘度が高いため,水に比べ吸引に時間を要し 舌口蓋開放時間が延長したことが推察されるが,対象者 を増やして,さらなる検討が必要である.  臨床上,舌と下顎の分離運動が困難な患者は,コップ 飲水による開口時に,舌で口腔後方を閉鎖できず,液体 の早期咽頭流入のリスクが高まる可能性がある.そのよ うな患者は,ストローを用いた飲水のほうが,顎位が安 定して液体を口腔内に保持しやすく,「むせ」を軽減で きるかもしれない.今後,嚥下障害患者に対して,EPG と VF を同期させた検討が必要である.  本研究の限界は,VF 検査や超音波診断装置などを用 いて計測した口腔運動と EPG を同期していない点であ り,舌と口蓋の接触特徴から口腔運動を言及している点 である.しかし,ストローとコップでは口腔運動が異な ることが本研究から示唆された.「コップだとむせるが, ストローだとむせない」という臨床所見の要因の 1 つ が,食具による口腔運動の違いである可能性が考えられ た.臨床においては,液体粘度の検討と同時に,食具の 選択も重要な活動であることが改めて示された.  本研究は,接触センサ付き人工口蓋床を個別に作製し て計測を実施したため,対象者数が少なく,嚥下におけ る個人差の影響は排除できない.また,EPG は主に構 音時の舌と口蓋の接触を観察する装置であるため,観察 できる範囲が口腔前方(硬口蓋部)のみに限られており, 咬合面を人工口蓋床で被覆することによる触覚などの感 覚入力が変化する可能性も否定できない.さらに,スト ローを口腔内に挿入する長さを規定していない点,飲水 時の頸部伸展を制限している点,コップ飲水時の液体粘 度の影響を検討していない点は,本研究の限界である.  しかし,液体摂取時の舌と口蓋の接触について,EPG を用いて非侵襲的に観察することは可能であった.今後 は,VF 検査などを用いて,実際の口腔・喉頭運動や呼 吸パターンを同時計測し,包括的に食具の違いや液体粘 度が嚥下動態に与える影響を検討していく必要がある. 結  論  液体摂取時の食具の違いと液体粘度が舌と口蓋の接触 に与える影響について,EPG を用いて観察した.単独 嚥下では,ストロー条件で,コップ条件に比して舌と口 蓋の接触が多かった.ストロー条件とトロミ条件では, 有意な差は認められなかった.単独嚥下の舌口蓋開放時 間は,ストロー条件で有意に短かった.このように, コップとストローの飲水とは舌口蓋接触が異なり,口腔 運動が異なることが示された.  本論文の要旨は,岡田澄子記念国際研究基金の助成を 受け,26th

Dysphagia Research Society Annual Meeting (Baltimore)において発表した.

 本稿の著者には,規定された COI はない. 文  献

1) Veiga HP, Fonseca HV, Bianchini EM: Sequential swallowing of liquid in elderly adults: Cup or straw? Dysphagia, 29: 249– 255, 2014.

2) Lawless HT, Bender S, Oman C, et al: Gender, age, vessel size, cup vs. straw sipping, and sequence effects on sip volume, Dysphagia, 18: 196–202, 2003.

3) Murray KA, Larson CR, Logemann JA: Electromayographic response of the labial muscles during normal liquid swallows using a spoon, a straw, and a cup, Dysphagia, 13: 160–166, 1998.

4) Lisa JH, Gary AF, John G, et al: Swallow-induced alterations in breathing in normal older people, Dysphagia, 17: 152–161, 2002.

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テーションにおける嚥下時舌圧測定の有用性,Jpn J Rehabil Med, 54: 666–671, 2017. 6)今井智子,和久本雅彦,丹生かず代:パラトグラフィによ る構音の評価,音声言語医,41:159–169,2000. 7)藤 原 百 合,山 本 一 郎,前 川 圭 子:エ レ ク ト ロ パ ラ ト グ ラ フィ(EPG)臨床活用に向けた日本語音韻目標パターンの作製 と構音点の定量的評価指標の算定,音声言語医,49:101– 106,2008.

8) Chi-Fishman G, Stone M, McCall GN: Lingual Action in normal sequential swallowing, J Speech Lang Hear Res, 41: 771–785, 1998.

9) Chi-Fishman G, Stone M: A new application for electropala- tography: Swallowing, Dysphagia, 11: 239–247, 1996.

10)秋吉正敏,鈴木聖一,川村雅俊,他:嚥下時舌運動および 舌と口蓋の接触様相に関する研究,日矯歯会誌,54:102– 111,1995.

11) Ichida T, Takiguchi R, Yamada K: Measurement of

lingual-palatal contact duration associated with swallowing by dynamic palatography―Differences with the individual and day of measurement―, 九州歯会誌,50(3): 469–476, 1996. 12) Mantie-Kozlowski A, Pitt K: Treating myofunctional disor-

ders: A multiple-baseline study of a new treatment using elec-tropalatography, Am J Speech Lang Pathol, 23(4): 520–529, 2014.

13) Mantie-Kozlowski A, Pitt K: Electropalatography as an adjunct to nonspeech orofacial myofunctional disorder assessments: A feasibility study, Int J Orofacial Myology, 39: 31–43, 2013. 14)日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013,日摂食嚥下リハ会誌,17(3):266,2013. 15)松尾浩一郎,Jeffrey B Palmaer:摂食嚥下機能モデル,才藤 栄一,植田耕一郎監修,摂食・嚥下リハビリテーション第 3 版,医歯薬出版,東京,2016,97.

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Tongue and Palate Contact during Cup and Straw Drinking

Aya HIRATA1), Isamu SHIBAMOTO2)

1)Department of Speech and Hearing Sciences, International University of Health and Welfare 2)Department of Speech Language and Hearing Sciences School of Rehabilitation Sciences,

Seirei Christopher University Abstract

 Purpose: This study aimed to determine the tongue and palate contact time and areas during cup and straw drinking using electropalatography (EPG). The impact of viscosity on tongue and palate contact during cup and straw drinking was also investigated.

 Methods: Six healthy adults participated in this study. All participants were tested by an EPG that was created with 124 touch sensors. Any contact while swallowing liquids was measured by each of the sensors on the palate floor. Single swallows of cup drinking and straw drinking were investigated. The participants were asked to drink 10 mL of liquid at once. All participants were able to swallow 1) thin liquid using a straw (straw condition), 2) thickened liquid using a straw (thickened condition), and 3) thin liquid using a cup (cup condition). The minimum contact point (MCP) and the uncontacted time (UT) were calculated.

 Results: There were a significant number of MCPs and significantly shorter UT in a single swallow from a drinking straw.

 Conclusions: The findings of this study suggest that when a small amount of liquid was ingested, the mouth easily opened for the drinking cup. As the drinking straw maximized tongue and palate contact while opening the mouth, the straw was different from a cup in terms of tongue-palate contact when drink-ing water. The movement of the oral cavity while drinkdrink-ing water varied accorddrink-ing to the crockery or uten-sil used, so it is important to choose one while taking these characteristics into consideration.

図 6 対象者 A(女性,38 歳)の嚥下条件における EPG 波形と EPG 画像(典型例)

参照

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