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エッセンシャルオイルの使用における男女差の抽出に基づく新製品開発

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Academic year: 2021

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(1)論 文 論 文. 開発工学 vol.40 No.1 2020. エッセンシャルオイルの使用における 男女差の抽出に基づく新製品開発 *1. . 青山 早苗 、平田 貞代. *2. New Product Development Based on the Extraction of Gender Differences in How to Use Essential Oils Sanae Aoyama, Sadayo Hirata The purpose of this research was to focus on gender differences, find potential needs and conditions, and identify opportunities and challenges for market expansion through new product development. In order to achieve the purpose, we analyzed the information of the words by potential customers obtained from the open-ended questionnaire using text mining. As a result, the characteristics of how to use new products and the differences in expected effects specific to gender were extracted. In addition, the points to keep in mind when reflecting these characteristics and differences to new product development were confirmed.. 1.はじめに. り上げ、その使用の男女差に着目し、新たな目的や条件. 製造技術や生産性が向上する一方で、市場にモノが溢. を見出し、新製品開発による市場拡大の機会や課題を洗. れ低価格化競争に陥る傾向がある 1)。この対策として、. い出すことを目的とした。その目的の達成のために、. 企業は新規性の高い製品を設計し、顧客にとっての新た. オープンクエスチョンの設問に対する自由記述形式のア. な価値を提供することが求められる 2)。そのためには、. ンケートから得た潜在顧客の言葉を対象とし、テキスト. 企業自身が得意とする技術や経験への固執を避けること、. マイニングを用いて解析を行った。. 従来の市場の常識に捕らわれないことに留意し 3)、新た. その結果、性別に特有の新製品の使用の特徴、期待す. な課題を探求し製品開発に取り組まなければならない。. る効果の違いなどを抽出することができた。また、それ. 新たな課題の一つに、性別やジェンダーに適した機能. らの特徴や違いを新製品開発へ反映する際の留意点を整. や効用の細分化への対応がある。中には、ジェンダーや 性別の違いの考慮不足により、生命に影響を及ぼした事 例も報告されている 4)。 一方で、未だ提供されていない新製品に対して評価項 目を設定したり、正確な評価を収集したりすることはで きない。そのため、不確実性が高い状況で、新たな課題 を推測することが重要である 5)。. 2.先行研究に基づく解くべき課題の分析. 2. 1 製品開発と顧客による購買との関係におけるジレ ンマ 市場への製品の提供が増すにつれ、製品のコモディティ 化が進み、コモディティ化が進むと低価格化が進む 1)。. 不確実性が高い状況において、人々の言葉を収集し、 言葉のデータの構造や関係性に基づき、認識や行動を分 析し探索する方法の一つとして、テキストマイニング. 理することができた。. 6). が知られている。 本研究では、エッセンシャルオイル 7)を事例として取 * 1 芝浦工業大学 本会会員 * 2 芝浦工業大学 准教授、学会理事、博士(学術) (受付:2020 年 3 月 25 日、再受付:2020 年 4 月 30 日、査読論文 受理:2020 年 5 月 5 日). こうした構造の中で、企業は、供給の拡大と利益の確保 のジレンマを抱えており、市場における消費者達の変化 に先行して開発を変革する必要がある 2)3)。 こうした製品の普及サイクルは、イノベーション普及 理論(Diffusion of innovations)5) により説明されてい る。イノベーション普及理論では、消費者はイノベー ター、アーリー・アドプター、アーリー・マジョリティ、 レイト・マジョリティ、ラガードの 5 種類に分類され、 製品はこの順序のとおり購買される。イノベーターは、 111.

(2) エッセンシャルオイルの使用における男女差の抽出に基づく新製品開発. 開発工学 vol.40 No.1 2020. 新製品を最初に採用する、極めて僅かしか存在しない者. 言葉を対象とし、学習の成果を確認した研究 16) など多. である。アーリー・アドプターは、新規性の高さを評価. くの成果が報じられている。本研究においても、言葉か. し、アーリー・マジョリティは、アーリー・アドプター. ら消費者達の認識や行動の特徴を把握し、将来の顧客像. の採択状況に基づき慎重に追従する。レイト・マジョリ. とその課題を探索しながら、新製品開発の着眼点や留意. ティは、過半数の消費者群に採択された後に低価格を重. 点の整理を試みた。. 視し採択する。ラガードは、採択者の多さや価格に依存 2. 3 製品開発における男女差の影響. せず、採択に抵抗する。 イノベーション普及理論の 5 種類の消費者群と新製品. 生まれながらの性別に加え、行動や役割により文化的. からデ. に形成されるジェンダーの差がある 17)。世界経済フォー. ジタル製品の購買まで広く適用できることが先行研究で. ラムによる各国のジェンダー不平等の分析結果を示す世. を採択する順番は、農家における新農薬の普及 実証されている. 5). 8)9). 。. 界 ジ ェ ン ダ ー・ ギ ャ ッ プ 報 告 書(Global Gender Gap. しかしながら、前述の先行研究は、製品を提供した後. Report)では、153 カ国のうち、日本は 121 位であった 18)。. に収集した、過去のデータに基づく分析結果による実証. 日本は、ジェンダー不平等が根強く残っていると言える。. である。一方、実際の市場では、前述した 5 種類の消費. 性別やジェンダーは、製品開発にも影響を及ぼしてい. 者群の購買の境界を事前に予知することは難しい。仮に、. る。製品開発において、製品の設計者やテストの対象者. 正確に予知できたとしても、遅かれ早かれ次の消費者群. がどちらかの性別に偏っているために生じた、製品の機. へ移る。. 能や性能の欠陥が報じられている。妊婦に危険が生じや. こうした問題を解決するためには、消費者が自ら明確. すいシートベルトや、社会的な行動や成果は常に男性の. には伝えられるに至っていない無意識の認識や行動のパ. ことと決めつけて誤訳する翻訳機を始め、製品開発の仕. ターンを洞察する方法を鍛錬しておく必要がある。繰り. 様誤りが散見される 4)。. 返される無意識の認識や行動を探索し、顧客にとっての. 製品開発における性別やジェンダーによる男女差に起. 価値として設計し、その価値を製品へ付加して提供する. 因する問題を予防し、製品の信頼性を高めるために、顧. 生産の価値拡大が推奨されている 10)。. 客の男女差の考慮は不可欠である。本研究では、顧客の 特定が難しい新製品について、購買機会や使用状態への. 2. 2 不確実な予兆を洞察する重要性と難しさ 未だ存在しない新製品については、顧客を限定するこ とはできず、将来の顧客の課題や不満を把握することは 難しい. 11). 。こうした不確実な予兆を洞察するために、. 人々の言葉が用いられている 12)。. 男女差の把握に取り組むことにした。. 3.本研究の目的と対象 3. 1 研究目的. 本研究では、顧客の特定が難しく、不確実性が高い新. 言葉のデータを用いて消費者のニーズを抽出する手法. 製品開発に焦点をあて、利用者に潜在する使い方を探索. として、インタビュー調査やアンケート調査が用いられ. すること、さらに、顧客の男女差を明らかにすることを. 13). 。インタビューやアンケートには、予め調査者. 目的とした。また、製品開発に先立ち、将来製品が使用. が仮説を立てたうえで設計するクローズド・クエスチョ. される状況を想定し、購買機会の拡大や使用時のリスク. ンの回答結果に基づき既存の仮説と比較する場合と、協. の回避の根拠となり得る事実を発見することをめざした。. ている. 力者による自由な発言や記述を対象とし調査者が既存の. 本研究では、新製品の分析対象として、エッセンシャ. 仮説や既知の情報に囚われずに探索する場合がある。前. ルオイル 7)を選択した。エッセンシャルオイルは、植物. 者の場合は、既知の仮説に基づく検証であり、後者は、. から圧搾した天然香油であり、消毒、神経の鎮静をはじ. 調査者の解釈を要する分析である。未だ認識されていな. め多くの療法に用いられている。諸外国では、エッセン. い新製品については、既知の仮説は未だ無いため、客観. シャルオイル製品は性別にかかわらず供給、購買されて. 的な検証に基づく分析は難しいという問題がある。. いる。一方、日本では、女性向け芳香用雑貨としての普. これらの問題を回避する方法の一つに、大量の言葉を. 及に留まっている 19)。日本市場において新製品開発の余. テキストデータとして分解、分類し、共起性や頻出順な. 地があるエッセンシャルオイルについて、より広い顧客. どを統計に基づき定量的に解析するテキストマイニング. に対し、従来とは異なる価値を提供できることをねらい. がある. 6)14). 。テキストマイニングは、テキストデータの. とした。. 構造から、特徴を可視化することができる。 例えば、研修の受講者によるアンケート回答欄の言葉. 3. 2 研究の対象. を対象としテキストマイニングを行った結果から、研修. 本研究では、エッセンシャルオイル製品を購買し得る. 費用が高い、受講時間の調整が難しいなどの問題を明ら. 顧客として、30 歳以上 60 歳未満の日本人の働く社会人. かにした研究 15)、授業の実施前後のアンケート回答欄の. を対象とした。. 112.

(3) 開発工学 vol.40 No.1 2020. 幼児は嗅覚が未熟であり、高齢者は嗅覚が衰退するた. 4. 2 共起ネットワーク図の分析とねらい. め、本研究では対象外とした。また、働く社会人とその. 従来の量的分析手法には、計算前後のプロセスは調査. 他では、生活の場所、時間帯、習慣、制約、経験などが. 者に依存する、計算結果の信頼性が高くとも実態はイ. 大きく異なるため、両者は混合して分析することは難し. メージし難い、計算の原理を知らない人は分析に加わり. い。そこで、本稿では、その一方として社会人のみを対. 難い、といった課題があった 20)。. 象とした研究結果を報告することにした。. テキストマイニングには、ソフトウェアの活用により 前述の課題を低減するねらいがある。ソフトウェアの種. 4.研究方法. 類により多少差があるが、信頼性をより高めるために、. 4. 1 データ収集の方法とねらい. データ設定から、計算、分析までのプロセスが自動化さ. 新製品開発においては、顧客も開発者も事前に問題や. れている。加えて、分析結果を図表に自動変換し出力す. 理由を特定することは難しい。そこで、テキストマイニ. る機能により、計算の原理の理解度に関わらず、調査者. ングを用いて語句を客観的に分解し特徴を検出すること. 以外の人でも同一の情報に基づく理解や分析が可能とな. により、潜在する問題や理由の手掛かりを探索すること. るという特長がある 21)。. にした。. 本研究では、テキストマイニングのソフトウェアとし. テキストマイニングによる分析対象となるデータとし. て、日本語に対応し、厳密なトレーサビリティ機能を備. て、できる限り先入観や経験に捕らわれることなく、自. え、学術研究に長らく用いられている HK Coder13)を選. 由な発想による言葉を収集することをねらいとした。そ. んだ。. のため、選択式ではなく、オープンクエスチョンによる. テキストマイニングの計算および分析結果から自動出. 設問に対し自由記述形式で回答する無記名のアンケ―ト. 力される図表の中でも、特に視覚的に比較し易いものに、. を次のとおり設計した。. 共起ネットワーク図がある。共起ネットワーク図では、. エセンシャルオイルの利用についてのアンケート. 分析対象とした文中の間で互いに共起している語句のみ が表示される 20)。. (1)性別:必須回答 (2)年齢:必須回答. KH coder では、共起ネットワーク図に表示された語. (3)勤務地:必須回答. 句をノード、共起するノード間を結ぶ線をエッジと呼ぶ。. (4)エッセンシャルオイルは植物から圧搾した天然香. ノ ー ド 同 士 の 関 係 の 強 さ を エ ッ ジ 毎 に 表 す た め に、. 油で、療法にも用いられています。エッセンシャル. Jaccard 係数が用いられている。Jaccard 係数は、ある. オイルにどのようなイメージがありますか?自由に. 語句の出現数を n(X)とすると、語句 A と B の間の関. 回答してください。 :任意回答. 係の強さは、式(1)で定義されている 20)。. (5)エッセンシャルオイルを使うとしたら、いつ、ど んな目的で使いたいですか?自由に回答してくださ. jaccard (A , B) =. い。 :任意回答. n (A+B)  n (A,B). (1) . (6)どのような疾患や悩みを軽減するエッセンシャル. KH Coder では、Jaccard 係数またはエッジ数で閾値. オイルがあったらよいと思いますか?自由に回答し. を指定することにより、共起性の高い順に該当するノー. てください。 :任意回答. ドやエッジを選択し、ネットワーク図として表示するこ. このアンケートは、2015 年から 2019 年に実施し、合 計 217 名の協力を得て回答を収集した。協力者の内訳を. とができる。 また、本研究では、モジュラリティと呼ばれる分析論 理に基づくサブグラフ(subgraph)検出 22) を用いた。. 表 1 に示す。. モジュラリティのサブグラフ検出とは、共起ネットワー クを、共通の属性を持つ幾つかのグループ(community) に分割することである。一つの共起ネットワーク図にお. 表 1 協力者の内訳. いて、各グループの内部にエッジ数ができるだけ多く、. 性別 年齢 人数(人) 有効回答者(人) 無効回答者(人) 30代. 63. 男 40代. 60. 50代. 38. 30代. 10. 女 40代. 27. 50代. 7. 合計(人). 161. かつ、各グループの間にエッジ数ができるだけ少なくな るサブグラフとして分割される。. 9. こ の モ ジ ュ ラ リ テ ィ の サ ブ グ ラ フ の 決 定 方 法 は、 Newman と Clauset 22)により設計され、次の式により定. 44. 3. 205. 12. 義されている。先ず、グループ i に属するノードとグ ループ j に属するノードが結ばれたエッジ数の合計に対 217. する、全エッジ数に占める割合を eij とする。また、同 一グループ i に属すノード同士が結ばれるエッジの数の 113.

(4) エッセンシャルオイルの使用における男女差の抽出に基づく新製品開発. 全エッジ数に占める割合は eii となる。エッジが無作為. 開発工学 vol.40 No.1 2020. できる。. に配置された場合、エッジのうち少なくとも一端がグ ループ i に属すノードのエッジが選択される期待値であ る a i は式(2)で表される。 e ij  a i = ! j. 4. 3 頻出語の分布に基づく分析とねらい 4. 2 に示したとおり、頻出する語句であっても共起性. (2) . が低い場合は共起ネットワーク図に表示されない。その ため、本研究では、頻出語の分布に着目した分析も行っ た。. また、エッジの両端がグループ i に属すノードである. 具体的には、頻出順の上位の語句、頻出順序に対し、. 場合の期待値は a i の 2 乗である。そして、共起ネット. 特徴を探索した。さらに、性別や年代毎に細分化し特徴. ワークにおいて与えられた分割に対し、分割されたグ. を探索した。. ループに属すノード間のエッジの割合から、エッジが無. 性別や年代毎にデータを細分化すると、各小分類の. 作為に配置された場合の期待値を引いた値は、式(3). データ件数が少なくなり誤差の影響が増す可能性があ. で表される。. る。一方で、頻出順の上位の語句、頻出順序は、件数に. (e ii -a i2)  Q = ! i. (3) . 依存し難いデータの特徴を得ることができる。本研究で は従来にはない新たな仮説を見出す手がかりをできるだ け多く探索することと優先し、小分類の頻出語の分布も. このように、共起ネットワーク図は、これらの計算結 果に基づき、該当するノードとエッジを、調査者を介さ ずソフトウェアで配置し描画することにより、恣意性を 排除することができ、誰もが分析結果を再現することが. 図 1 男性の共起ネットワーク図 114. 分析することにした。.

(5) 開発工学 vol.40 No.1 2020. 図 2 女性の共起ネットワーク図. 5.研究結果. 5. 1 共起ネットワーク図に基づく分析結果 4. 1 の通り収集したデータを KH Coder に入力し、語 句の共起や頻出などの分析結果を得た。さらに、性別に よる違いを把握するために、男性と女性に分け、4. 2 に. 労」などの共起を中心とする「健康サブグラフ」、「匂 い」、 「汗」で構成される「臭いサブグラフ」、 「車」 、 「中」 などで構成される「外出先サブグラフ」、「加」 、「齢」、 「鬱」 、 「水虫」 、 「抜け毛」 、 「二日酔い」などの「疾患サ ブグラフ」といった特徴が現れた。. 示したモジュラリティのサブグラフ検出を行った。男性 と女性のいずれも、サ変名詞などを含む全ての名詞を選 択対象とし、集計単位を H5(セル内の文章) 、その最小 出現数を 2、最小文書数を 1、共起のエッジ数を上位 60 とした。 その結果、4. 2 に示したノード間の関係の強さを示す. (2)女性の特徴 女性のデータから 587 件の語句が抽出され、図 2 のと おり、サブグラフが検出された。「リラックス」、 「心地」 、 「部屋」などの共起を中心とする「自宅サブグラフ」 、 「気 分」 、 「体調」 、 「転換」で構成される「日常サブグラフ」. 共起性(coefficient) 、語句の頻出度(frequency)など. など、主に自宅でのリラックスに関するサブグラフが現. に基づき、図 1 および図 2 の右上の凡例に示すとおり、. れた。. 共起ネットワークが複数のサブグラフ(subgraph)に 分割された。. (3)男女の比較に基づく分析 男性については、 「不眠」や「匂い」に共起する語句. (1)男性の特徴 男性のデータから 1391 件の語句が抽出され、図 1 の とおり、サブグラフが検出された。 「不眠」 、 「体」、「疲. が多く検出されたことから、不眠や匂いの対策を求めて いる男性は少なくないと推測される。一方、この「不眠」 や「匂い」に関するサブグラフは、図 2 の女性の共起 115.

(6) エッセンシャルオイルの使用における男女差の抽出に基づく新製品開発. 開発工学 vol.40 No.1 2020. 25. 25. 20. 20. 15. 15. 10. 10. 5. 5. 0. 0. 図 3 男性の名詞の頻出順序 図 4 女性の名詞の頻出順序 ネットワーク図には出現しなかった。. 「気分」であった。. また、女性については、 「リラックス」や「気分」に. また、「リラックス」および「気分」のいずれも、図. 共起する語句が共起ネットワーク図の大半を占めたこと. 2 に示した共起ネットワーク図のサブグラフの中心で. から、気分の緩和を求めている女性は多いと考えられる。. あった。これらの結果から、女性の語句は、 「リラック. 一方、これらのサブグラフは、図 1 の男性の共起ネット. ス」や「気分」に比較的集中する傾向があることが確認. ワーク図には出現しなかった。. された。. 5. 2 頻出語の分布に基づく分析結果. 現したことから、女性は、エッセンシャルオイルの使用. また、上位 20 位以内に「気分」 、 「心地」 、 「心」が出 4. 1 の収集データのうち、頻出語に着目し、男女差に ついて分析を行ったところ、5. 1 のノードの共起やサブ. に関して何方かといえば身体に比べ気持ちに関心が強い ことが確かめられた。. グラフに基づく分析とは異なる特徴が現れた。 (3)男女差の分析 (1)男性の特徴 男性の語句のうち、名詞の頻出順の上位 20 件を図 3 に示す。 男性が最も多く用いた名詞は、 「リラックス」 、 「スト レス」であった。. 男女共に最も多く用いられた名詞は「リラックス」で あった。 しかしながら、男女それぞれの後続の頻出名詞に基づ けば、男性は、「ストレス」、「疲労」、「疾患」といった 様々な身体の問題の緩和としてのリラックス、女性は、. 一方、図 1 に示した男性の共起ネットワーク図のノー. 主に「気分」 、 「心地」といった感情の安定としてのリ. ドには、 「リラックス」や「ストレス」は検出されなかっ. ラックスに関心があるといった、違いが確かめられた。. た。 「リラックス」や「ストレス」は頻出順位が高くて. また、5. 2(1)と 5. 2(2)に示した頻出語の順位に基. も他のノードとの共起は少なかったことから、共起ネッ. づく特徴の比較により、男性の方が女性に比べ分散して. トワーク図としての表示は対象外となったためである。. いたことから、エッセンシャルオイルに対する男性の関. これらの結果から、男性の語句は「リラックス」 、 「スト. 心は女性に比べ多様であり、女性の関心は比較的固定さ. レス」をはじめ比較的分散する傾向があることが確認さ. れている傾向が伺えた。. れた。 また、上位 20 位以内に「不眠」 、 「睡眠」 、 「安眠」と いった名詞が出現したことから、睡眠に関心や悩みがあ る男性は少なくないと推測される。. (4)男性の年代による関心の変化 エッセンシャルオイルの製品や使用方法が未だ十分に 普及していない日本人男性について、さらに詳しく把握 するために、頻出語の順位を年代別に分類した結果を表. (2)女性の特徴 女性の語句のうち、名詞の頻出順の上位 20 件を図 4 に示す。女性が最も多く用いた名詞は、 「リラックス」 、 116. 2、表 3、表 4 に示す。 表 2 のとおり、30 代男性により最も用いられた名詞は 「ストレス」であった。一方、表 3 と表 4 のとおり、40.

(7) 開発工学 vol.40 No.1 2020. 表 2 30 代男性の頻出名詞. 表 3 40 代男性の頻出名詞. (63 人). 順位. 頻出名詞. 出現数. 表 4 50 代男性の頻出名詞. (60 人). 順位. 頻出名詞. 出現数. (38 人). 順位. 頻出名詞. 出現数. 1. ストレス. 8. 1. リラックス. 8. 1. リラックス. 8. 2. エッセンシャルオイル. 7. 2. 効果. 6. 2. 不眠. 5. 3. リラックス. 6. 2. 匂い. 6. 3. ストレス. 4. 3. 香り. 6. 4. ストレス. 5. 4. 解消. 3. 5. 体臭. 5. 4. 体臭. 5. 4. 睡眠. 3. 代、50 代の男性により最も用いられた名詞は「リラック. 6. 2 顧客が新製品を使いたい場所. ス」であった。このことから、若いうちは比較的ストレ. 図 2 および 5. 1(2)に示したとおり、女性は自宅での. スに関心や悩みを抱えており、年齢を経ると共にストレ. 使用を重視していることから、従来の据え置き型のエッ. スよりリラックスへの関心が増加する傾向があると推測. センシャルオイル製品でも、使用場所の条件は既に満た. できる。. されていると考えられる。. また、5. 2(1)で示した、男性における睡眠に対する. 一方、男性は、図 1 および 5. 1(1)に示したとおり、. 関心や悩みについては、表 4 のとおり、50 代以降に急に. 会社、スポーツ、車中、仕事といった外出先での使用を. 増加する傾向があると推測できる。. 期待していることが確かめられた。このことから、従来. 表 2、表 3、表 4 で示した各内訳の件数は少ないため 総件数を増やして更に分析精度を高める必要がある。し. とは異なるポケットサイズなどの携帯可能な製品の需要 があることが示唆された。. かしながら、前述の「ストレス」と「リラックス」の言 葉の分布に基づく傾向は、本研究の目的であるエッセン. 6. 3 顧客が新製品を使う状況. シャルオイルの利用に関する潜在的な特徴の一つとして. 5. 2(4)で示したとおり、男性は、歳を重ねるにつれ. 抽出されたものであり、先ず本研究でこのような手がか. ストレスに比べリラックスへの関心や悩みが増加する傾. りを得たことにより、新たな仮説を設定し検証へ進める. 向が把握された。このことから、男性の年代に応じて、. ことができると考えられる。. 適切な効果を細分化し提供する留意が必要であることが. 6.男女差に基づく新製品開発についての考察. 示唆された。 エッセンシャルオイルには、心身への鎮静や刺激の機. 5. に示した分析結果から、エッセンシャルオイルの使. 能があることが認められている。さらに、エッセンシャ. 用について複数の男女差があることを明らかにすること. ルオイルの種類、含有成分の量や比率、濃度、吸引・塗. ができた。これらの男女差に基づけば、新製品開発に対. 布などの使用方法、使用時間、鎮静や刺激の機能の強さ. して次のような可能性や留意点が必要となると考えられ. は異なる。条件によっては毒性が強まる危険性がある 7)。. る。. また、顧客の年代によっては、ストレスやリラックス 以外に持病がある確率が高まる。そのため、顧客の総合. 6. 1 顧客が新製品を使う目的. 的な健康状態に適合したエッセンシャルオイルの選択と. 日本では、エッセンシャルオイルは主に女性向け芳香. いった配慮を要する可能性がある。さらに、諸外国のよ. 用雑貨として開発されてきた。今回の調査では、5. 1(2)、. うに医療を補う手段として用いる場合は、専門家の知識. 5. 2(2)、および、5. 2(3)に示したとおり、現時点の. を要する。. 女性は癒しや感情の安定を求めている傾向が伺えたこと. 本研究を通じて、エッセンシャルオイルの使用目的や. から、従来のエッセンシャルオイル製品の提供と現在の. 使用場所について男女差を抽出した。しかしながら、先. 女性が抱いている使用目的との間に大きな乖離は無いこ. 行研究において、エッセンシャルオイルの効果における. とが確かめられた。. 男女差については未だ解明されていない。また、好きな. 一 方、 男 性 は、5. 1(1) 、5. 2(1) 、 お よ び、5. 2(3). 香りの方が効果は高まるという報告 20) はあるが、香り. に示したとおり、加齢臭、水虫、二日酔いなどの男性特. の好みについての男女差の研究は事例の実証に留まって. 有の身体の疾患を軽減したいという目的があることが確. おり、確立されてはいない 21)。そのため、同一の新製品. かめられた。. であっても、性別により効果や危険の度合いが異なる可. したがって、日本では未ださほど知られていない、エッ センシャルオイルが本来有す心身への鎮静や刺激などの 機能を提供する製品の需要があることが示唆された。. 能性に十分に配慮する必要がある。 新製品開発にあたり、これらの留意点を踏まえて、ど のような顧客を対象とするかを取捨選択する必要がある。. 117.

(8) エッセンシャルオイルの使用における男女差の抽出に基づく新製品開発. 7.結論. 3. 1 に示した本研究の目的に対して、エッセンシャル. 開発工学 vol.40 No.1 2020. などの研究方法を加え新製品開発へ反映することが重要 である。. オイルを事例として取り上げ、潜在顧客の言葉を対象と しテキストマイニングを用いて分析した結果から、次の. 参考文献. ような特徴や留意点が導き出された。. 1) D’aveni, A. R.(2010)“Beating the commodity trap”, Harvard Business School Press. (1)新製品の使用に関する男女差 ・男性は主に身体の疾患、女性は主に精神の安定に関心 や悩みを抱えている。 ・男性はスポーツや外出先、女性は自宅という目的や場 所に関する要求の違いがある。. 2) ヘンリー・チェスブロウ(著) ,大前恵一朗(訳) (2004) 『OPEN INNOVATION:ハーバード流イノベーション戦略のすべて』 , Harvard business school press 3) 西河洋一,小平和一朗,淺野昌宏,杉本晴重(2020) 『西河技術経 営学入門』 ,芙蓉書房 4) Schiebinger, L.(著) ,小川眞理子(訳) (2017) 『自然科学,医学,. (2)男女差に基づく購買機会拡大の可能性 ・日本のエッセンシャルオイルの従来製品は芳香用雑貨 が主流であった。これに対し、本研究から、男性には、 加齢臭、抑鬱、水虫、二日酔いといった疾患を軽減す る新製品の需要があることがわかった。疾患に適した エッセンシャルオイルを選べるよう製品の種類を拡張. 工学におけるジェンダード・イノベーション』,学術の動向,vol. 2017. 11, pp.12-17 5) エベレット・ロジャーズ(著) ,三藤利雄(訳) (2007) 『イノベー ションの普及』 ,翔泳社 6) 齋藤朗宏(2011) 『日本におけるテキストマイニングの応用』 ,The society for economic studies, no.2011-12, pp.1-13. する、疾患毎に異なる療法や機能をわかりやすく説明. 7) ジェーン・バックル(著) ,前田和久, 岸田聡子, 今西二郎(監. する、疾患を抱える人数や程度に応じて製品を供給す. 訳) (2015) 『クリニカル・アロマテラピー第 3 版』 ,エルゼビア・. る、といった検討を要する。. ジャパン. ・日本では従来、主に屋内に据え置く芳香機と共にエッ. 8) ジェフリー・ムーア(著), 川又 政治(訳) (2014) 『キャズム. センシャルオイルが提供されていた。これに対し、本. Ver.2:新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論』 ,翔泳. 研究から、外出先やスポーツ前後に手軽に使用できる、 男性用の携帯型新製品の需要があることが確かめられ た。従来より、芳香機への補充用のエッセンシャルオ イルは遮光ガラスの小瓶で小売りされている。しかし、 外出先やスポーツに携帯しやすい形状、割れたり漏れ たりしない容器、芳香機を要しない利用形式などの検 討を要する。. 社 9) 平田貞代,長田洋(2006) 『デジタル技術開発と市場の共進化を実 現する品質管理モデル』 ,品質,vol.36, no.4, pp.490-501 10) ロバート・ラッシュ,ステファン・バーゴ(著) ,井上崇通(訳) (2016) 『サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用』,同文舘 出版 11) Reid, S. E., de Brentani, U.(2010)“Market vision and market visioning competence, Impact on early performance for radically. (3)男女差から生じるリスクの回避 ・性別によって心身への関心や悩みは異なる。 ・男性は、年齢によって、ストレスやリラックスの関心 や悩みの度合いが異なる。 ・顧客個人の持病と関連する可能性があり、医学分野の 専門家の意見の反映が必要である。 本研究を通じて、性別や年代に応じ、個人の健康状態 に配慮する選択や細分化、専門家による知見による裏付 けを新製品開発へ取り入れる必要性があることが確かめ られた。このことから、従来の新製品開発では、さほど 取り上げられてはこなかった要点が引き出されたと言え る。したがって、本研究で用いたテキストマイニングは、 従来の傾向に囚われずに新製品開発の方向性を見出すた めの一手段として適していると考えられる。 一方で、本研究は不確実な状況から潜在的な手がかり を導出した段階にある。今後は、本研究を通じて得られ. new, high-tech products”, Journal of product innovation management, vol.27, no.4, pp.500-518 12) Navis, C., Glynn, M. A.(2010)“How new market categories emerge”, Administrative science quarterly, vol.55, No.3, pp.439-471 13) ロバート K. イン(著) ,近藤公彦(訳) (2011) 『ケース・スタディ の方法』 ,千倉書房 14) 樋口耕一(2004) 『テキスト型データの計量的分析,理論と方法』 , vol.19, no.1, pp.101-115 15) 牛田篤(2019) 『介護福祉ファーストステップ検収の受講意識と課 題抽出に関する研究』 ,福祉健康科学研究,vol.14, pp. 13-20 16) 室雅子,他(2019) 『生活場面で実践できる力の調査と授業への応 用』 ,杉山女学園大学教育学部紀要,vol.12, pp. 201-215 17) 鈴木淳子(2017) 『ジェンダー役割不平等のメカニズム : 職場と家 庭』 ,心理学評論,vol.60, no.1, pp.62-80 18) World Economic Forum(2019)“the Global Gender Gap Report 2020”. た仮説に基づき調査対象や条件を最適化し調査の精度を. 19) S.Aoyama, S.Hirata (2017) “Research on new product. 高めること、仮説検証型のアプローチに適した統計手法. development based on identification of the potential needs for. 118.

(9) 開発工学 vol.40 No.1 2020. essential oils for men”, JAMS International Conference on Business & Information 2017, no.38, pp.1-3 20) 樋口耕一(2014) 『社会調査のための計量テキスト分析』,ナカニ シヤ出版 21) 樋口耕一(2014) 『計量テキスト分析および KH Coder の利用状況 と展望』 ,社会学評論,vol.68, no.3, pp.334-350 22) Clauset, A., M. E. J. Newman, C. Moore (2004) “Finding community structure in Very large network”, Physical review E, vol.70, no 6, 066111 23) 長野真澄,他(1997) 『香りが生体におよぼす影響について』,日 本看護研究学会誌,vol.20, no.3, p.152 24) 青山早苗,平田貞代(2019) 『エッセンシャルオイルの香りに対す る感性における男女差の分析』,日本経営システム学会,vol.36, no.2, pp.119-126. 119.

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