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皮膚における遊離D-アミノ酸の機能と,新たなバイオファクターとしての応用(シンポジウムⅠ「ビタミン・バイオファクター研究の企業展開」)

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Academic year: 2021

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240 〔ビタミン 94 巻 第 2 日目(午後)第Ⅳ会場

皮膚における遊離

D

-アミノ酸の機能と,

新たなバイオファクターとしての応用

東 條 洋 介

(資生堂グローバルイノベーションセンター)  

1.はじめに

 タンパク質構成アミノ酸 20 種のうち,グリシン以外の 19 種にはそれぞれ鏡像異性体(D体とL体)が存在する. L-アミノ酸の機能と重要性は広く認められている一方で, 哺乳類においてD体がほとんど検出されなかったことを 背景にD-アミノ酸に関する報告は相対的に少ない.しか しながら近年の分析技術の進歩は,次々に遊離D-アミノ 酸の哺乳類における分布や機能を明らかにしている1) 例えば遊離D-Asp は内分泌組織に局在する傾向があり, 特に成熟期の精巣中遊離 Asp に占めるD体の割合は 40% に達し2),テストステロン産生の亢進(精巣)3)に関与す ることが報告されているほかに,プロラクチン分泌の促 進(下垂体前葉)4),メラトニン合成・分泌の抑制(松果体) 5) 等の機能が報告されている.このような知見は哺乳類で 機能を有するアミノ酸がL体のみでは無いことを示して おり,種々の生体組織において光学異性体を区別したア ミノ酸の分布・機能の再検証や,D-アミノ酸の由来とし て食品や摂取後の動態の解明が必要である.そこで我々 は生体内微量D/L-アミノ酸の解析が可能な二次元 HPLC システム6)を用い,D-アミノ酸の新たなバイオファクター としての機能の解明とその応用を試みた.  

2. ヒト皮膚における内在性遊離

D

-アミノ酸

分布の解析

 ヒト真皮と表皮にはD-Asp,D-Glu,D-Ala,D-Ser,D-Pro

が存在し,角層においてはD-Pro を除く 4 種が見いだされ た.表皮中D-Ser は他のD-アミノ酸 4 種に比べて含量が高 く,その傾向は角層においてより一層顕著であった.今回 の検討で明らかになったヒト表皮におけるD-Ala 含量は, マウスで報告のある下垂体,肝臓中含量(約 20 nmol/g)と 同等の水準であることが示された7).角層における各遊離 アミノ酸の%D(L体とD体の総量に占めるD体の割合)は 高くても 0.2%程度であり,マウスで報告されている種々 の組織における%Dと比べても低い水準であった.角層に おけるアミノ酸含量は加齢に伴い変化することが知られて いることから,今回見いだされた角層中遊離D-アミノ酸 4 種についても加齢による含量変化を検証した.その結果, 検 討 し た 20 代 か ら 40 代 に か け て 遊 離D-Ser,D-Asp, D-Glu が減少することが明らかになった.  

3. ヒト皮膚における内在性遊離

D

-アミノ酸

機能の探索と応用

 正常ヒト表皮ケラチノサイトと,ヒト真皮ファイブロブ ラストにおける遊離D/L-アミノ酸の機能を網羅的に検討し た結果,特にヒト皮膚に内在することが確認された遊離 D-アミノ酸において機能を有することが見いだされた.例え ばヒト培養真皮線維芽細胞が産生する I 型コラーゲン量を ヒトプロコラーゲン I 型の C 末端ペプチドとして ELISA 法で検証した結果,D-Asp は濃度依存的に I 型コラーゲン 産生を促進することが明らかになった.次に,D-Asp また はL-Asp を添加して 8 週間培養した 3 次元真皮モデルを PFA 固定,パラフィン包埋後に切片とし,三重らせん構造 を持つコラーゲンが配向したコラーゲン線維束のみを観察 可能な第 2 高調波発生光(SHG 光)を用いる顕微鏡観察を 行った(Ex. 800 nm, Em. 400 nm).その結果,D-Asp を添加 した系では通常の培地を用いた系(Control)に比べ広範囲 に網目状のコラーゲン線維束が観察され,その密度も高い 傾向が示された.L-Asp を添加した系においては Control と比較して大きな違いは認められなかった.真皮線維芽細 胞の I 型コラーゲン産生と線維化は異なる因子で制御され ていることから,D-Asp がコラーゲンの線維束形成促進因 子の発現や活性に及ぼす影響に関する検討が待たれる. ワークショップではこの他D-アミノ酸の機能についても紹 介しながら皮膚における新たなバイオファクターとしての 可能性を議論する.また,応用として経口摂取における皮 膚への移行の確認や,塗布時の経皮吸収性を検討し,現在 では経口組成物や経皮組成物としての利用が行われている 事例を紹介したい.  なお,本研究を遂行するにあたり二次元 HPLC システムを 用いたキラルアミノ酸含量解析に関して御指導頂いた九州大 学薬学研究院,浜瀬健司教授に感謝申し上げます.

文  献

1)Hamase K, et al. (2002), J Chromatogr. B, 781: 73-91.

2) Hashimoto A., Oka T, Nishikawa T (1995), Eur. J Neurosci, 7: 1657-1663. 3) Nagata Y, Homma H, Lee JA, Imai K (1999), FEBS Lett, 444: 160-164. 4) Long Z, et al. (2000), Biochem Biophys Res Commun, 276: 1143-1147. 5) Wang H, Wolosker H, Pevsner J, Snyder SH, Selkoe DJ (2000), J

Endocrinol, 167: 247-252.

6)Hamase K, et al. (2010), J Chromatogr A, 1217: 1056-1062. 7)Miyoshi Y, et al. (2009), J Chromatogr B, 877: 2506-2512. 【略歴】 2002 年東京大学応用科学専攻修士課程修了. ㈱資生堂入社後,HPLC 用カラム研究,キラルアミノ 酸研究,皮膚科学研究および薬剤開発研究を担当.現 R&I 戦略部グループマネージャー.

2P -Ⅳ- S3

参照

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