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2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集

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Academic year: 2021

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(1)陸水学雑誌(Japanese Journal of Limnology)81 : 167 - 178. 資 料〔Material〕. 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集 長濱祐美1, *)・福島武彦1)・大内孝雄1)・湯澤美由紀1). Phytoplankton community in Lake Kasumigaura: 2005 to 2019. Yumi NAGAHAMA1, *), Takehiko FUKUSHIMA1), Takao OUCHI 1)and Miyuki YUZAWA1). Abstract The large shallow lake complex of Lake Kasumigaura comprises of three water bodies: Lake Nishiura, Lake Kitaura, and Lake Sotonasakaura, which are connected by three rivers. The community structure and biovolume of phytoplankton are important factors for the ecology and water quality of the lake. However, few studies have been conducted recently on the phytoplankton communities of the entire Lake Kasumigaura. The aim of this study was to clarify the changes in community structure and biovolume of phytoplankton from 2005 to 2019 in Lake Kasumigaura. The results showed that the dominant phytoplankton taxa were Bacillariophyceae from 2005 to 2007, Planktothrix (Oscillatoriales, Cyanophyceae) from 2008 to approximately 2010, and Bacillariophyceae since 2011. The change in the phytoplankton community structure differed between lakes Nishiura and Kitaura: the ratios of the dominant genera Cyclotella and Aulacoseira (Centrales, Bacillariophyceae) were higher in Nishiura than in Kitaura; the ratio of the dominant genus Synedra (Pennales, Bacillariophyceae) was lower in Nishiura than in Kitaura. Moreover, while the abundance of Planktothrix in Nishiura was higher than that in Kitaura, the period of Planktothrix dominance in Nishiura was shorter than that in Kitaura. The phytoplankton biovolume decreased in all three water bodies during the research period because the biovolumes of the main phytoplankton genera, Planktothrix, Cyclotella, and Cryptomonas, decreased. The values of the biodiversity indices decreased drastically in 2007 at all stations. The results suggested that Planktothrix was dominant from 2007 to 2011 across Lake Kasumigaura. Furthermore, the values of biodiversity indices increased rapidly in 2011 in Nishiura and Sotonasakaura, while the increase was slower in Kitaura. Keywords: Nishiura, Kitaura, Sotonasakaura, Dominant rate, Total Biovolume. 1). *. 茨城県霞ケ浦環境科学センター 〒300-0023 茨城県土浦市沖宿町1853番地 Ibaraki Kasumigaura Environmental Science Center (IKESC), 1853 Okijyuku, Tsuchiura, Ibaraki 300-0023, JAPAN 連絡先:長濱祐美 Coresponding author: Yumi NAGAHAMA, Email: [email protected]. 167.

(2) 長濱祐美ほか 摘 要 霞ヶ浦は,西浦・北浦・外浪逆浦の3水域が河川で連結した形の湖沼であり,広くて浅い特徴を持つ。 生態系構造や水質の理解のためには植物プランクトン群集の量や組成の把握が大切だが,近年の霞ヶ浦 全域における植物プランクトン群集を体積の視点から明らかにした報告はない。そこで,霞ヶ浦全域に おける2005年以降の植物プランクトン群集の変遷を明らかにした。 霞ヶ浦全域において,2005年から2007年は珪藻綱が,2008年から2010年ごろまでは藍色細菌綱ユレモ 目の Planktothrix が,2011年以降は再び珪藻綱が優占する傾向であった。また,西浦では,珪藻綱中心目 の Cyclotella や Aulacoseira の優占率が高く,また,Planktothrix が2008年から2010年に著しく優占してい たのに対し,北浦では珪藻綱羽状目の Synedra が多く,Planktothrix の優占化が西浦よりも弱く長期化し ている傾向がみられた。霞ヶ浦全域における植物プランクトンの総細胞体積は,西浦・北浦・外浪逆浦 すべてで減少傾向であり,その理由として Planktothrix,Cyclotella,Cryptomonas の細胞体積の減少が挙 げられた。多様度指数は2007年に全地点において急激に低下し,Planktothrix 一属優占型の植物プランク トン群集が全域で形成されていたと示唆された。多様度指数は,西浦と外浪逆浦では2011年に急激に回 復したが,北浦では回復は緩やかであった。 キーワード:西浦,北浦,外浪逆浦,優占率,総細胞体積 (2019年10月24日受付:2019年12月10日受理) Ouchi et al.(2018) は,Takamura and Nakagawa(2012). はじめに. のデータをもとに,1992年から1999年および2007年から. 茨城県東南部に位置する霞ヶ浦は,湖面積の大きな西. 2010年の間には Planktothrix のブルームが発生したと報. 浦と,南北に細長い北浦,西浦と北浦をつなぐ常陸利根. 告している。この Takamura and Nakagawa(2012)のデー. 川(外浪逆浦を含む)で構成されている複雑な形の湖沼. タは,1978年度から2016年度までの霞ヶ浦の植物プラン. 2. であり(茨城県,2019a) ,湖面積220 km ,最大水深7 m. クトン群集について,各分類群の合計体積を国立環境研. と,広くて浅い特徴を持つ(茨城県霞ケ浦環境科学セン. 究所(2016)において公開したものである。しかしなが. ター,2011) 。流域における人口の増加や産業活動の進. ら,調査地点は西浦内の2地点であり,北浦や外浪逆浦. 展などに伴い,1960年代頃から富栄養化が進んだ(茨城. については不明である。. 県霞ケ浦環境科学センター,2011) 。近年の水質は改善. 一方で,茨城県霞ケ浦環境科学センター(以下,当セ. 傾向にあるものの,2018年の全水域平均 COD は7.3 mg. ンターと記す)では,設立の2005年度以降,植物プラン. L-1と,依然として環境基準 (湖沼 A 類型:COD 3 mg. クトンの細胞数について,霞ヶ浦湖内の最大19地点で月. -1. L 以下)を上回っている(茨城県,2019b) 。霞ヶ浦の水. に一度のモニタリング調査を行っている。北浦や外浪逆. 質は,植物プランクトンに代表される内部負荷の影響を. 浦も含むことから,これらのデータを活用することがで. 大きく受けていることが知られており,懸濁態有機物の. きれば,霞ヶ浦の水質に関する理解が深まることが期待. 100 %,溶存態有機物の20 ~ 70 % 程度が植物プランク. できる。しかしながら,これらのデータは細胞数のデー. トン由来であると報告されている(花町・中村,2010)。. タである。植物プランクトンの細胞サイズは,数 µm の. このことから,霞ヶ浦における生態系構造の理解のみな. ものから数百 µm のものまで多様であり(Sum and Liu,. らず,水質の理解のためにも,植物プランクトン群集の. 2003),サイズの差は炭素含有量や物理学的挙動の違い. 把握が大切である。. (Sum and Liu, 2003),生態系への影響や消費エネルギー. 霞ヶ浦における植物プランクトン群集については,湖. の違い(Laws, 1975)などにも影響することから,水質. 心を中心とした西浦の調査結果に基づき,1970年代か. や生態系に与える影響の差に関係すると考えられてい. ら1986年 ま で に は Microcystis が 大 量 発 生 し て い た が,. る。よって,植物プランクトン群集と水質や生態系との. 1987年から1989年には Planktothrix の優占頻度が高かっ. 関係を明らかにするためには,植物プランクトンを体積. たと報告されている(Takamura and Aizaki, 1991)。また,. で捉えていくことが重要であると指摘されており(Sum. 168.

(3) 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集 and Liu, 2003) ,実際に水質と植物プランクトンの関係. 査データを抽出して整理した。なお,地点によって欠損. を検討する研究の多くが体積(Biovolume)を用いている. の時期(Table 1に ND と記載)が存在した (Table 1) 。. が(池田ら , 2018; 二木ら , 2018; Deng et al. 2018),近年. 採 水 方 法 は,2014年3月 ま で は 水 面 下50 cm の 湖 水. の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集を体積の視. (Table 1に0.5 m と記載)を電動ポンプ(Table 1に Pump. 点から明らかにした報告はない。. と記載)またはバンドーン型採水器(Table 1 に Van Dorn. そこで,本研究では,近年の霞ヶ浦全域における植物. と記載)でくみ上げたが,2014年4月からは内径5×200. プランクトン群集組成を体積の視点から明らかにするこ. cm のアクリル製カラム(Table 1に Column と記載)を. とを目的とした。これまでの筆者らの研究により,過去. 使って,湖底50 cm 直上から水面までの湖水を鉛直的に. の実測値をもとに整理した一細胞あたりの体積を細胞数 に乗じて総細胞体積の概略を算出したところ,増減の傾. Kitaura. Kasumigaura (Nishiura). 向や群集組成が実測値と類似していることが示されてい. N. N10. る(長濱ら , 2019) 。このことを利用し,当センターで. K1. N4. 測定された細胞数に,各種の一細胞体積の値を乗ずるこ. K2 N5. とで,霞ヶ浦全域における2005年以降の植物プランクト. N9. ン群集の変遷を明らかにしたので報告する。. N1. N2. K3. N3. N6. 調査および分析方法. K4 N7. 採水と固定. N8. K5. 採水ならびに固定は,当センターにおける霞ヶ浦モニ タリング事業の一環として,2005年6月から2019年3月ま Sotonasakaura. で実施された。今回の解析には,採水頻度の高い地点の. S2. データを用い,西浦湖内の10地点,北浦の5地点,外浪. 451. 5km. Table 1 各 年 度 (4 月 か ら 翌 年 3 月 ) に お け る ,採 水 地 点 ,採 水 器 具 ,水 深 ,. 逆浦の2地点,合計17地点を選定した(Fig. 1) 。調査頻. 457. 452. 度は年度によって異なっていたが,今回は月に1度の調 458 固定液ならびに保存液の一覧。. 図 1 調査地点概念図. Fig. 1 調 査 地 点 概 念 図 Fig. 1 Sampling sites at Lake Kasumigaura. Fig. 1 Sampling sites at Lake Kasumigaura.. 459. 453 454. 460 Table 1 Sampling station, sampler, sampling water depth, fixed solution, and. 表 1 各年度(4月から翌年3月)における,採水地点,採水器具,水深,固定液ならびに保存液の一覧. Table 1 Sampling station, sampler, sampling water(April depth, fixed saved solution saved solution at fiscal year tosolution, nextand March) . at fiscal year (April to next March). Fiscal Year Sampling Station Nishiura N1 N2 N3 N4 N5 N6 N7 N8 N9 N10 Kitaura K1 K2 K3 K4 K5 SotonaS1 S2 sakaura Sampler Depth Fixed solution Saved solution. 455 456. S1. 2005. ND. ND. 2006. ND. ND. 2007. ND. ND. 2008. ND. ND. 2009. ND. ND. 2010. 2011. 2012. 2013. 2014. 2015. 2016. 2017. 2018. ND ND. ND. ND. ND ND. ND ND ND. ND ND ND. ND. ND. ND. ND. ND. ND. ND. ND. ND. ND ND. ND ND. ND ND. ND ND. ND ND ND ND ND. ND ND ND ND ND. ND. ND ND ND. ND. ND Pump 0.5 m GA NBF. 18. Total 14 9 9 6 11 14 8 14 10 9 11 4 10 14 11 12 3. ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND Pump Pump Pump Van Dorn Pump Pump Pump Pump Column Column Column Column Column 0.5 m 0.5 m 0.5 m 0.5 m 0.5 m 0.5 m 0.5 m 0.5 m Full Full Full Full Full GA GA GA GA GA GA MixGA MixGA MixGA MixGA GA GA GA NBF NBF NBF None None None None None NBF NBF F F F ND: No data,GA: 1% Glutaric aldehyde,MixGA: 1% Mixed glutaric aldehyde,NBF: 1% Neutral buffered formalin,F: 1% Formalin. 169.

(4) 170. 値 が 不 明 で あ る 77 種 類 (全 体 の 約 20%) は ,一 瀬 (2003) の 測 定 値 を. 171. さ ら に 不 明 な 20 種 類 (全 体 の 約 5%) に つ い て は 無 視 し ,算 定 に は. 172. った。. 173. 長濱祐美ほか. 174 多様度指数の算出 採水した(Table 1に Full と記載) 。固定方法は,上水試 多様度指数の算出 175 植 物 プ ラ ン ク ト ン 群 集 の 多 様 度 を 算 出 す る た め ,Shannon-Wiener 験方法(日本水道協会,2001)に記載されている,グル 植 物 プ ラ ン ク ト ン 群 集 の 多 様 度 を 算 出 す る た め, 指数 用 い た 。 なの多様度指数(H’)を用いた。なお,多 お , 多 様 度 指 数 (H’)の 算 出 式 に は 以 下 を 用 い 176(Table タルアルデヒドを終濃度1 % で添加する方法 1に(H’)を Shannon-Wiener GA と記載)を主としているが,2012年4月から2016年 177. 様度指数(H’)の算出式には以下を用いた。. 3月までの期間は,琵琶湖環境科学研究センターの方法 178 (滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 環境監視部門 179 生物圏担当,2015)を参考に,25 % グルタルアルデヒ. n N. H' H’=‒ ∑Si=1 i loge. ni N. …(1). …(1). このとき,S は種数,ni は i 番目の種の個体数,N は. ド500 ml に,37 % ホルマリン5 ml,塩化カルシウム12.5 180 こ の と 全個体数である。 き , 𝑆𝑆は 種 数 , 𝑛𝑛𝑖𝑖 は i 番 目 の 種 の 個 体 数 , 𝑁𝑁は 全 個 体 数 で あ g を加えた混合液を終濃度1 % になるように添加した 181 (Table 1に MixGA と記載) 。また,保存を目的に,2005 統計解析. 182 統 計 解 析 統計処理には統計解析ソフト R(ver. 3.3.1)を用い, 年6月 か ら2010年4月 な ら び に2014年4月 か ら2016年3月. までは中性緩衝ホルマリン(Table 1に NBF と記載)を, その運用には R Studio(ver. 1.0.136)を用いた。正規性の 183 統 計 処 理 に は 統 計 解 析 ソ フ ト R (ver. 3.3.1) を 用 い , そ の 運 用 2016年4月から2019年3月まではホルマリン(Table 1に F 検定には Kolmogorov-Smirnov 検定を,平均値の差の検 184 Studio (ver. 1.0.136) を 用 い た 。正 規 性 の 検 定 に は Kolmogorov-Smir と記載)をそれぞれ終濃度 1 % になるように添加した。 定には Mann-Whitney U test(以下 U test と記す)を,多. Holm 法を用い,相関係数は これらの違いが植物プランクトン群集組成に与える影響 185 を , 平 均 重比較には 値の差の検 定に は Mann-Whitney USpearman test (以の順 下 U test と 記 す については,今回は検討できていない。 同定・計数ならびにデータの整理. 位相関係を用いて算出した。. 186. 重 比 較 に は Holm 法 を 用 い ,相 関 係 数 は Spearman の 順 位 相 関 係 を. 187. 出した。. 結 果. 植物プランクトンの同定ならびに細胞数の計数は外部 188 委託にて行った。委託業者は年度によって異なるが,同 189 定・計数方法に関する仕様を同一とし,手法が同一にな 190 結果 るように委託した。すなわち,検水を濃縮したのち,生. 植物プランクトン群集の変遷 各地点における体積からみた植物プランクトン群集組 成を検討するため,各綱の優占率の変遷を Fig. 2に示す。. 物顕微鏡を用いて同定し,罫線入りスライドガラス等 季節変動を含めた全体の変動傾向を検討するため, 191 植 物 プ ラ なお, ンクト ン群集の変遷 を用いて細胞数を計数し,1 mL あたりに換算した。同 7ヵ月の移動平均処理を行った。 192 各地点における体積からみた植物プランクトン群集組成を検討す 定は図鑑(廣瀬・山岸,1997; 一瀬・若林,2008; 小林 ま ず,2005年 と2006年 の2年 間 の 変 動 と 地 点 間 の 違 193 各 綱 の 優 占 率 の 変 遷 を Fig. 2 に 示 す 。な お ,季 節変動 を含めた全体 ら,2006; Komárek and Anagnostidis, 1998; Komárek and いに着目した。N7を除く西浦湖内の地点 (N1–3, 5, 6, Anagnostidis, 2005; 水野,1977; 田中,2002; 渡邉,2007; と外浪逆浦 194 向 を 検 討 8–10) するた め , 7 ヵ(S1) 月 の では,2006年頃に珪藻綱中心目 移動平均処理を行った。 渡辺,2005)を参考にしたが,今回データを整理するに (主に Cyclotella)の優占率が高く,K1を除く北浦湖内の 195 ま ず , 2005 年 と 2006 年 の 2 年 間 の 変 動 と 地 点 間 の 違 い に 着 目 あたり, すべての不明種については, 一種(XXXX(属名) 地点(K3–5)では珪藻綱羽状目(主に Synedra)の優占率 除 く 西 が高かった。N7では,2006年3月に緑藻綱の 浦 湖 内 の 地 点 (N1–3, 5, 6, 8–10) と 外Staurastrum 浪 逆 浦 (S1) で は , (XXXXをspp.) sp.)ではなく,複数種が含まれる不明種196 と記した。その理由として,A 年に a 社によって XXXX sp. と記された不明種 A と,B 年に b 社によって XXXX. spp. が一時的に優占しており,その値に影響されて緑藻 7 綱が著しく優占したように見えているものの,前後月の. sp. と記された同属の不明種 B が同種かどうかについて,. 優占種は Cyclotella であったことから,N7も西浦湖内の. 過去に遡って精査することができなかったためである。. 他地点とおおむね類似した組成であったと考えられた。. 各種の合計体積の算出方法は既往研究(長濱ら,2019). つまり西浦・外浪逆浦と北浦との間では,優占する植物. に準拠し,当センターで測定された各種の細胞体積(単. プランクトンが,目レベルで異なっていたと示唆された。. 3. -1. 位は µm cell )の平均値を有効数字二桁で丸めたのち, -1. 次に,2007年から2010年の4年間に着目した。2007年. 各種の細胞数(単位は cells mL )に乗じて算出した。細. から2008年にかけて,N10と K1を除く地点では藍色細. 胞体積のわからない107種類(全体の約 30 %)に関して. 菌綱ユレモ目(Planktothrix)が優占する群集へと変化し. は,同属の平均値を用いて補完した。同属の値が不明で. ていた。2007年1月から2008年12月までのユレモ目の優. ある77種類(全体の約 20 %)は,一瀬(2003)の測定値. 占率は N10と K1で他地点と異なった(Holm, p < 0.01) 。. を利用し,さらに不明な20種類(全体の約 5 %)につい. N10と K1はいずれも湾奥部であることから,ユレモ目. ては無視し,算定には含めなかった。. の優占化は沖合地点を中心に起こっていたと示唆され た。2008年から2010年までの藍色細菌綱ユレモ目の優. 170.

(5) 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集. N1. 80 60 40. 20 0 2005. 2017. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 20 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. Dominant rate (%). 60. 40 20. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. Dominant rate (%). 60 40 20 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 60. 40 20. Dominant rate (%). 60 40 20 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 60 40 20. N7. 80 60 40. 20. Dominant rate (%). 40. 20 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 60 40 20. N8. 80 60. 40 20. Dominant rate (%). 100. 60. 40 20 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. S1. 0 2005. 2019. 80. K5. 80. 100. 60. K4. 0 2005. 2019. 80. K3. 80. 100. 80. 100. 2019. 80. 0 2005. 2019. N6. 0 2005. 2017. 20. 100. 80. 100. 2015. 40. 0 2005. 2019. N5. 0 2005. 2013. 60. 100. 80. 0 2005. 2011. 80. 0 2005. 2019. N4. 0 2005. 2009. K2 100. 40. 0 2005. 2007. K1. 0 2005. N3. 60. 100. 20. 0 2005. 2019. 80. 100. 40. 100. 20. 100. 60. 2019. Dominant rate (%). Dominant rate (%) Dominant rate (%). 2015. 40. 100. Dominant rate (%). 2013. 60. 0 2005. Dominant rate (%). 2011. 80. 100. Dominant rate (%). 2009. N2. 0 2005. Dominant rate (%). 2007. N10. 80. Dominant rate (%). Dominant rate (%). 100. Dominant rate (%). 100. Dominant rate (%). Dominant rate (%). 100. S2. 80. 60 40. 20 0 2005. 2019. N9. Other Cryptophyceae Cyanophyceae_Nostocales Chlorophyceae Bacillariophyceae_Centrales. 80 60. 40 20. 0 2005. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. Dinophyceae Cyanophyceae_Oscillatoriales Cyanophyceae_Chroococcales Bacillariophyceae_Pennales. 2019. 461. 図22各地点における細胞体積を基にした各植物プランクトン優占率の変化 Fig. 各 地 点 に お け る 細 胞 体 積 を 基 に し た 各 植 物 プ(7カ月移動平均) ラ ン ク ト ン.優 占 率 の 変. 462. 化 (7 カ 月 移 動 平 均 )。. Fig. 2 Seven–month moving average of phytoplankton composition (biovolume) at each station.. 171. 19.

(6) 長濱祐美ほか なっていたと推察された。今回は主には綱,属レベルで. 占率は,湾奥の N9, N10ならびに K1を除く西浦7地点 (N1–3, 5–8; n = 252)と北浦3地点(K3–5; n = 108)で有意. 群集を解析しており,Aulacoseira 属以外について,種. な差があり,北浦よりも西浦でユレモ目の優占化が著し. レベルでの組成変化については検討していない。しかし. かった(U test, p < 0.05) 。ユレモ目の優占傾向は,北浦. ながら,Aulacoseira 属の結果は,種レベルでの変遷に. では,2010年の夏季まで,西浦では2011年の夏季まで続. ついても注視する必要があることを示唆しており,今後. いていた。. の課題である。. 2011年から2012年までの2年間に着目した。2011年の 夏季には,西浦西湾奥の N9と北浦北部の K1, K2で,藍. 総細胞体積ならびに主な植物プランクトンの合計体積の. 色細菌綱クロオコックス目(主に Microcystis)が著しく. 変遷. 優占した。しかし,これは一時的であり,2011年夏季以. 霞ヶ浦における植物プランクトン細胞体積の長期的な. 降は,N9では珪藻綱中心目の Aulacoseira が,K1, 2では. 変遷を検討した。植物プランクトン相の変化から,西浦. 同じ中心目の Stephanodiscus が優占する傾向が強かった。. と北浦では群集組成が異なること,外浪逆浦は,西浦に. その他の地点でも同様に,2012年以降は珪藻綱が優占化. 類似している時期と北浦に類似している時期とが混在し. し,秋季に中心目(主に Aulacoseira)が優占し,春先に. ていることが明らかとなったことを受け,西浦・北浦・. 羽状目(主に Synedra)が優占する季節変化のみられる群. 外浪逆浦それぞれの水域ごとの植物プランクトン総細. 集組成へと変化した。. 胞体積を示した(Fig. 4)。その結果,地点間に差はみら. 一方で,2013年から2015年までの3年間に着目すると,. れず(Holm, p > 0.05),期間内における総細胞体積の中. 北浦(K3, 4)と外浪逆浦(S1)では藍色細菌綱ユレモ目. 央値はいずれの水域も,およそ6×108 µm3 mL-1であり,. (主に Planktothrix)の優占率が再度上昇する傾向がみら. 105 µm3 mL-1から 109 µm3 mL-1で変動し,2008年をピーク. れ,K4の2014年1月には,移動平均前で最大値 81 % を. とした山型を示した。また,2005年6月から2008年5月ま. 占めていた。西浦におけるユレモ目の優占率は,北浦よ. での3年間の平均値と2016年4月から2019年3月までの3年. りやや遅れて2014年から高まる傾向がみられたが,最大. 間の平均値を比較すると,すべての水域において有意な. 値は N1の2014年5月でおよそ 30 % であり,2013年から. 減少がみられた(U test, p < 0.05)。. 2016年の西浦(N1, 4, 6, 8; n = 192)の優占率と北浦(K4;. 次に,主要な植物プランクトンの変遷に着目した。. n = 48)の優占率を比較すると,西浦で有意に小さかっ. 主要な植物プランクトン種を選定するため,まず,各. た(U test, p < 0.05) 。. 地 点 に お い て 第 一 優 占 種 に な っ た 頻 度 が 高 い 上 位3. 2016年以降は,西浦の地点(N1, 3–6, 8–10)と比較し. 種 を 選 ん だ。 そ の 結 果, 珪 藻 綱 中 心 目 の Aul.distans,. て,北浦(K4, 5) ・外浪逆浦(S1)の地点では珪藻綱羽. Aul.granulata, Cyclotella meneghiniana, Cyclotella spp.,. 状目 (主に Synedra) の優占率が高い傾向がみられた。. Stephanodiscus spp., 珪 藻 綱 羽 状 目 の Synedra acus, 褐. 特に,2017年以降は,西浦(N1, 5, 6, 8)では珪藻綱中心. 色鞭毛藻綱の Cryptomonas spp.,藍色細菌綱ユレモ目. 目の優占率の季節変動が小さくなってきているように見. の Planktothrix suspensa が 挙 げ ら れ た。 年 度 に よ っ て. えた。そこで,西浦における2012年から2017年までの優. 同定のレベルに差がみられたため,これらを属にまと. 占種と,2017年から2019年までの優占種を比較した。す. め,Aulacoseira,Cyclotella,Stephanodiscus,Synedra,. ると,西浦のどの地点においても,2012年から2017年ま. Cryptomonas,Planktothrix について長期的変化を検討し. では珪藻綱中心目の Aulacoseira granulata の優占頻度が. た。また,霞ヶ浦における主なアオコ形成藍藻である. 高かったが,2017年以降は Aulacoseira distans の優占頻. Microcystis についても検討した。なお,Planktothrix は,. 度が高くなっていた。調査期間内(2005年6月から2019. 2005年6月から2008年3月まで旧分類体系(渡邉,2007;. 年3月)の,N6地点における Aul. granulata と Aul.distans. 水野,1977; 田中,2002)に従って Oscillatoria spp. もし. の合計細胞体積の変動を Fig. 3に示す。このことからわ. くは Phormidium spp. として同定されていた。これらは. かるように Aul.granulata が8月にピークをもって増加す. 複数の種を含んでおり,Planktothrix に再同定すること. るのに対し,Aul.distans は1月にピークをもって増加す. ができない。そこで,Planktothrix の合計細胞体積変遷. る。Fig. 2は7か月の移動平均値をとっていることから,. の解析には,2008年4月以降のデータを用いた。Fig. 5に,. 近年 Aul.distans の合計体積が増加してきたために,珪藻. 主だった植物プランクトン群集合計体積の時系列変化を. 綱中心目全体として検討した際に季節変化が見えづらく. 示す。なお,対数グラフとして図示するにあたり,すべ. 172.

(7) 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集. Biovolume (103 µm3 mL-1). 1) Aul. granulata 1,200 1,000 800 600 400 200 0 Jan Feb Mar Apr May Jun. Jul Aug Sep Oct Nov Dec. Biovolume (103 µm3 mL-1). 2) Aul. distans 1,200 1,000 800 600 400 200 0 Jan Feb Mar Apr May Jun. 479. Jul Aug Sep Oct Nov Dec. 図 3 2005年から2019年の N6地点における Aulacoseira granulata と Aulacoseira distans の細胞体積の月別変 化を示すテューキーの箱ひげ図.箱の最上端は75パーセンタイル,最下端は25パーセンタイル,太 線は中央値を示す.また,エラーバーは箱最上端および最下端から1.5倍四分位範囲内の最小および 最大のデータを示し,外れ値を〇で示した. Fig. 3 Variations in monthly biovolume of Aulacoseira granulata and Aulacoseira distans at St. N6 during 2005 to 2019 by Tukey boxplot. The boxes show that lower quartile (Q1) upper quartile (Q3), and heavy line show median. The error bar show that the data still within 1.5 interquartile range (IQR; Q3–Q1) of the lower quartile to the data still within 1.5 IQR of the upper quartile, and 〇 show outlier data.. Nishi Nishi(Ave.13M). Biovolume (Log µm3 mL-1). 9. Kita. Soto. Kita(Ave.13M). Soto(Ave.13M). 8 7 6 5 4. 480 481 482 483. 2005. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. ――. 図 4 各水域における総細胞体積の変化.点(■ , 〇 , ×)は, それぞれの水域における値を示し, 線( , , )は,各水域平均値の13カ月移動平均を示す. Fig. 4 各 水 域 に お け る 総 細 胞 体 積 の 変 化 。 点 (■ , 〇 , ×) は , そ れ ぞ れ の Fig. 4 Change of total biovolume in each water body. The points ( ■ , 〇 , ×) represent values at the respective , 線) represent the, 13-month in の each13 water 水stations, 域 に おand けthe る lines 値 を( 示,し , (― , ― ---) はmoving , 各 average 水 域 平value 均値 カ body. 月移動. ---. ――. ---. 平均を示す。. 484. 173 water body. The points ( ■ , 〇 , ×) Fig. 4 Change of total biovolume in each. 485. represent values at the respective stations, and the lines ( ― ,― ,---) represent the. 486. 13-month moving average value in each water body..

(8) 長濱祐美ほか. Nishi Nishi(Ave.13M). 1) Aulacoseira. Biovolume (Log µm3 mL-1). Biovolume (Log µm3 mL-1). 8. Kita Kita(Ave.13M). Soto Soto(Ave.13M). 7 6 5. 4 3 2 1 0. 2005 2007 2) Cyclotella. 2009. 2005. 2009. 2011. 2013. Nishi Nishi(Ave.13M). 8. 2015 Kita Kita(Ave.13M). 2017. 2019. Soto Soto(Ave.13M). 7. 6 5 4 3. 2 1 0. 2007. Biovolume (Log µm3 mL-1). 2011. 2013. Nishi Nishi(Ave.13M). 3) Stephanodiscus 8. 2015 Kita Kita(Ave.13M). 2017. 2019. Soto Soto(Ave.13M). 7 6 5 4 3 2 1 0 2005. 2007. 2009. Biovolume (Log µm3 mL-1). 4) Synedra. 2013. Nishi Nishi(Ave.13M). 8. 2015. Kita Kita(Ave.13M). 2017. 2019. Soto Soto(Ave.13M). 7 6 5 4 3 2 1 23. 0 2005. 2007. 5) Cryptomonas ume (Log µm3 mL-1). 2011. 8 7. 6 5 4. 3. 2009. 2011 2013 2015 2017 2019 Nishi Kita Soto Nishi(Ave.13M) Kita(Ave.13M) Soto(Ave.13M) 174.

(9) Biovolume (Log µ. 5 4 3 2 1. 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集. 0 2005. 2007. 2009. Biovolume (Log µm3 mL-1). 5) Cryptomonas 8. 2011 2013 2015 2017 2019 Nishi Kita Soto Nishi(Ave.13M) Kita(Ave.13M) Soto(Ave.13M). 7. 6 5 4. 3 2 1. 0 2005. 2007. 2009. 2013. Nishi Nishi(Ave.13M). 6) Microcystis Biovolume (Log µm3 mL-1). 2011. 8. 2015. Kita Kita(Ave.13M). 2017. 2019. Soto Soto(Ave.13M). 7. 6 5 4 3 2 1 0 2005. 2007. 2009. Biovolume (Log µm3 mL-1). 7) Planktothrix. 8. 2011 2013 2015 2017 2019 Nishi Kita Soto Nishi(Ave.13M) Kita(Ave.13M) Soto(Ave.13M). 7 6 5 4 3 2 1 24. 0 2005. 2007. 2009. 2011. 2013. ― ― ― ― ---. 2015. 2017. 2019. 主要な植物プランクトンにおける合計細胞体積の変化.点 ,〇 ×) 487 図 5 Fig. 5 主 要 な 植 物 プ ラ ン ク ト ン に お け る 合 計(■ 細胞 体, 積 のは,それぞれの水域におけ 変 化 。 点 (■ , 〇 , る値を示し,線(. ,. ---. , )は,各水域平均値の13カ月移動平均を示す.. 488 Fig. ×) は ,ofそbiovolume れ ぞ れ of のdominant 水 域 に phytoplankton お け る 値 をtaxa. 示し ,points 線 (― は , 各values 水 域at平the 5 Change The ( ■,, ―〇,, ---) ×) represent 489 490. respective stations, and the lines ( , , ) represent the 13–month moving average value in each water 均 値 の 13 カ 月 移 動 平 均 を 示 す 。 body.. Fig. 5 Change of biovolume of dominant phytoplankton taxa. The points ( ■ , 〇 ,. -10 491 ×) represent values at the respective stations, and the lines ( ― は,全水域で著しく減少してお ,― ,---) represent れなかった。Cyclotella ての値にごく小さな値として1.0 を加えてからグラフ. (U test, < 0.05) ,2010年から2016年にかけては,北 化した。さらに,長期的な増減を明らかにする目的で, 492 the 13–month moving averageりvalue in peach water body. 浦・外浪逆浦よりも西浦で有意に少なかった(U test, p < 2005年6月からの3年間の平均値と2016年4月からの3年間 493 0.05)。Stephanodiscus は,一部データが欠損しているが, の平均値とを比較した。その結果,Aulacoseira の合計. nnon-wiener Index (H’). 2005年6月からの3年間の平均値と,2016年4月からの3年 体積には増加傾向があり,西浦と北浦では有意に増加し Nishi Kita Soto ていたが(U test, p < 0.05) ,外浪逆浦では有意差がみら Nishi (Ave. 13M) 間の平均値に有意な差は見られなかった。Aulacoseira, Kita (Ave. 13M) Soto (Ave. 13M) 3.0. 2.5 175. 2.0 1.5 1.0.

(10) 長濱祐美ほか Cyclotella, Stephanodiscus はいずれも珪藻綱中心目に分. が2008年4月から 95 % 以上減少していたのに対し,北. 類されるが,その変動や増減の傾向は属毎に異なってい. 浦の減少は 85 % 程度にとどまった。また,変動にも水. た。. 域差があり,西浦では2013年ごろに向かって急激に減少. 一方で珪藻綱羽状目の Synedra は,増加傾向にある. し,そのあとやや増加に転じたものの,2014年頃から再. ものの,有意な差がみられたのは西浦のみであった(U. び減少している。一方北浦では,2012年ごろに向かって. test, p < 0.05) 。また,特徴的な変動として,2009年から. 急激に減少したのち,1×105 µm3 mL-1 程度まで回復し,. 2011年にかけて3水域で急激な合計体積の減少がみられ. その後変動しながらも横ばい傾向にあることが明らかと. Biovolume (Log µm3 mL-1). た。これは,前述した植物プランクトン組成からみた藍 なった。 Nishi Kita Soto 7) Planktothrix 色細菌綱ユレモ目の優占化していた時期と類似している Nishi(Ave.13M) Kita(Ave.13M) Soto(Ave.13M) が,ユレモ目の優占時期は西浦で2008年から2011年の夏 多様度指数の変遷 8 季まで,北浦で2008年から2010年の夏季までと(Fig.2) , 細胞数と種類数とを用いて算出した Shannon-Wiener 7 水域によって差がみられていたのに対し,Synedra 合計 6. の多様度指数(H’)を Fig. 6に示す。なお,同定のレベ. 体積の変動には水域差がみられなかった。 5. ルには年度差がみられたため,細胞数データは属で統合. Cryptomonas は,すべての水域において増加と減少が 4. したものを用いた。長期的な変化を検討する目的で13カ. 3年ほどの周期で繰り返されていたが,2016年ごろから 3. 月の移動平均を算出した結果,2007年に全地点におい. 2 は減少に転じ,2005年6月からの3年間の平均値と2016年. て多様度指数が急激に低下しており,Fig. 2を鑑みると,. 1 4月からの3年間の平均値を比較すると,全水域において. Planktothrix 一属優占型の植物プランクトン群集へとシ. 0 (U test, p < 0.05)。Microcystis は夏 有意に減少していた 2005 2007 2009 2011 季にのみ増殖することが非常に明瞭であり,2005年6月. フトしていたことが明らかとなった。一方で,多様度指 2013 2015 2017 2019 数の低下は北浦よりも西浦で大きく,Planktothrix の優. 487 Fig. 5 主 要 な 植 物 プ ラ ン ク ト ン に お け る占率が西浦で高かった結果を反映していた。さらに,優 合 計 細 胞 体 積 の 変 化 。 点 (■ , 〇 , からの3年間の平均値と2016年4月からの3年間の平均値 を比較すると,西浦と北浦では有意に減少していた 488 ×) は , そ れ ぞ れ の 水 域 に お け る (U 値 を 示 占率の推移と類似して,低下した多様度指数の回復過 し , 線 (― , ― , ---) は , 各 水 域 平 程には水域差がみられた。西浦湖内ならびに外浪逆浦の test, p < 0.05) 。 489 均 値 の 13 カ 月 移 動 平 均 を 示 す 。 平均多様度指数は2011年に急激に回復したが,北浦の回 2008年から2010年ごろにかけて著しく優占していた藍 Planktothrix 490 Fig. 5 Change of biovolume of dominant phytoplankton taxa. The points ( ■ , 〇 , 色細菌綱ユレモ目の は,測定が開始された 復は西浦よりも緩やかであり,西浦・外浪逆浦と同等の 2008年4月からの3年間の平均値と2016年4月からの3年間 多様度指数まで回復したのは2013年であった。その後は 491 ×) represent values at the respective stations, and the lines ( ― ,― ,---) represent の平均値を比較すると,すべての地点において著しく有 全水域においておおむね2前後で推移した。これらのこ 492 the 13–month moving average value in each water body. 意に減少していた(U test, p < 0.05)が,西浦・外浪逆浦 とから,2005年から2019年の間の霞ヶ浦の植物プランク. Shannon-wiener Index (H’). 493 Nishi Nishi (Ave. 13M). 3.0. Kita Kita (Ave. 13M). Soto Soto (Ave. 13M). 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5. 0.0. 494 495 496 497. 2005. ― ― ---. 2007. 2009. 2011. 2013. 2015. 2017. 2019. 図 6 各水域毎における多様度指数(H’)の変化.点(■ , 〇 , ×)は,それぞれの水域における値を示し, Fig. に お け る 多 様 度 指 数 (H’) の 変 化 。 点 (■ , 〇 , ×) は , そ 線(6 ,各 水 , 域)毎 は,各水域平均値の13カ月移動平均を示す. Fig. 6 Shannon–Wiener index of each area and 13-month moving average of each area. The points ( ■ , 〇 , ×) れ ぞ れ の 水 域 に お け る 値 を 示 し , 線 (― , ― , ---) は , 各 水 域 平 均 値 の 13 represent values at the respective stations, and the lines ( , , ) represent the 13–month moving average value in each water body. カ月移動平均を示す。. ――. ---. 498. Fig. 6 Shannon–Wiener index of each area and 13 -month moving average of each. 499. area. The points (■ , 〇 , ×) represent values at the respective stations, and the. 176. 25.

(11) 2005年から2019年の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群集 トン群集組成の大きな特徴として,2007年から2011年に. は,西浦・北浦・外浪逆浦すべてで減少傾向であった。. かけて,水域毎に時期や程度の違いはあるものの,全域. その理由として Planktothrix,Cyclotella,Cryptomonas の. において著しい Planktothrix の一属優占化が起こってい. 減少が挙げられた。一方で,Aulacoseira は西浦と北浦. たことが示された。Planktothrix の増殖に関しては西浦. ともに増加している傾向がみられた。. 湖心(本研究における N6)における霞ヶ浦データベース. (4)多様度指数は,2007年に全地点において急激に低下. (国立環境研究所 , 2016; Takamura and Nakagawa, 2012). し,霞ヶ浦全水域において,Planktothrix 一属優占型の. のデータを用いて光環境との関係が指摘(中村・相﨑,. 植物プランクトン群集が形成されていたと示唆された。. 2016; Ouchi et al., 2018)されているが,霞ヶ浦全域にお. 一方で,西浦と外浪逆浦では2011年に急激に回復したが,. いても今後検証していくことが必要である。. 北浦では回復は穏やかであった。. また,西浦・北浦・外浪逆浦の各水域では,主要な植. 今後は,モニタリングを継続するとともに,種レベル. 物プランクトン群集体積の変動はおおむね類似してい. での変遷,水質との相互作用や他生物との関係について. たものの,Planktothrix については大きく異なっていた。. 検討していくことが必要である。. さらに,2012年以降は珪藻綱が優占する傾向にあった が,西浦と北浦・外浪逆浦では優占種が異なっていた。. 謝 辞. これらの点から,西浦・北浦・外浪逆浦の各水域では, 植物プランクトン群集組成が異なっていたことが示され. 本研究における植物プランクトンデータの整理にあ. た。一般的にプランクトン群集組成は,滞留時間などの. たっては,故・渡邉眞之氏(国立科学博物館)ならびに. 物理的環境と水温や栄養塩濃度などの化学的な影響,摂. 中川惠氏(国立環境研究所)に多くの有益なご助言を頂. 餌などの生物学的な影響を受けると考えられる。西浦と. いた。また,茨城県霞ケ浦環境科学センターにおける植. 北浦は地理的には近く,また河川によって連続している. 物プランクトンモニタリングは,本間隆満,中村剛也,. が,滞留時間が異なる可能性があり,窒素やりん濃度が. 小日向寿夫,中川圭太,中谷仁崇,富永佳子ほか多くの. 異なっている(茨城県,2019b) 。さらに,魚類相や存在. 職員の尽力によって継続してきた。ここに記して謝意を. 量が異なることも指摘されていることから,植物プラン. 表す。. クトン群集組成と水質や他生物との関係について,今後 検討する必要がある。. 文 献 結 論. Deng, J., Zhang, W., Qin, B., Zhang, Y., Paerl, H.W. and Salmaso, N. (2018): Effects of climatically-modulated. 2005年以降の霞ヶ浦全域における植物プランクトン群 集組成を体積の視点から明らかにしたところ,以下の結. changes in solar radiation and wind speed on spring. 論が得られた。. phytoplankton community dynamics in Lake Taihu, China.. (1)霞ヶ浦全域において,2005年から2007年は珪藻類が, 2008年から2010年ごろまでは Planktothrix が,2011年以. PLoS ONE, 13: e0205260 二木功子・宮原裕一・齊藤保典・花里孝幸・朴虎東 (2018):. 降は再び珪藻類が優占する傾向が明らかとなった。. 諏訪湖における夏季に優占する植物プランクトン種と. (2)西 浦 と 北 浦 で は 植 物 プ ラ ン ク ト ン 群 集 組 成 が 異. 富栄養化指数の変遷,水環境学会誌,41: 43–54.. な っ て い た と 示 唆 さ れ た。 西 浦 で は,Cyclotella や. 花町優次・中村剛也 (2010): 13C トレーサーを用いた植. Aulacoseira の 優 占 率 が 高 く, 藍 色 細 菌 綱 ユ レ モ 目 の. 物プランクトン生産物の分解過程の解析.茨城県霞ケ. Planktothrix が2008年から2010年に著しく優占していた. 浦環境科学センター年報,6: 41–47.. が,北浦では,中心目に加え珪藻綱羽状目の Synedra も. 廣瀬弘幸・山岸高旺 (1997): 日本淡水藻図鑑.内田老鶴. 多く,Planktothrix の優占化が西浦よりも低濃度で長期. 圃,日本.. 化している傾向がみられた。外浪逆浦は年度によって,. 茨城県 (2019a):「霞ヶ浦」の呼称について . URL: https://. 西浦に類似している時期と,北浦に類似している時期と. www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/kantai/kasumigaura/. がみられた。. lake/name-kasumigaura.html(2019年11月26日時点). (3)霞ヶ浦全域における植物プランクトンの総細胞体積. 茨城県 (2019b): 霞ヶ浦に係る湖沼水質保全計画(第7期). 177.

(12) 長濱祐美ほか の策定について. 「霞ヶ浦の平成30年度水質概況につい. Nakagawa, Kazuhisa Sugaya and Morihiro Aizaki. て 」URL: https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/kantai/. (2018): Water quality and transparency characteristics. kasumigaura/lake/kasumi-plan7.html(2019年09月15日 時. during the Planktothrix abundance period in shallow Lake. 点). Kasumigaura, Japan. Lakes & Reservoir. 23: 163–167.. 茨城県霞ケ浦環境科学センター (2011): 霞ヶ浦について .. 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター (2015): プランクト. URL: https://www.pref.ibaraki.jp/soshiki/seikatsukankyo/. ンモニタリング調査マニュアル,滋賀県琵琶湖環境科. kasumigauraesc/04_kenkyu/kasumigaura/kasumigaura.htm. 学研究センター 環境監視部門 生物圏担当,3-5.. (2019年11月26日時点). Sum, Jun and Dongyan Liu (2003): Geometric models. 一瀬諭 (2003): Phytoplankton of the Lake Biwa. URL: http://. for calculating cell Biovolume and surface area for. www5f.biglobe.ne.jp/~lakebiwa/index.htm(2019年8月25. phytoplankton. Journal of plankton research, 25: 1331–. 日時点). 1346. Takamura, Noriko and Megumi Nakagawa (2012):. 一瀬諭・若林徹哉 (2008): 普及版 やさしい日本の淡水 プランクトン図解ハンドブック改訂版.合同出版株式. Phytoplankton species abundance in Lake Kasumigaura. 会社.東京都.. (Japan) monitored monthly or biweekly since 1978.. 池田将平・一瀬諭・古田世子・占部城太郎 (2018): 琵琶. Ecological Research, 27: 837.. 湖北湖における植物プランクトン群集の季節変化と. Takamura, Noriko and Morihiro Aizaki (1991): Change in. その長期変動 : PEG モデルとの比較.水環境学会誌,. Primary Production in Lake Kasumigaura (1986–1989). 41: 115–122.. Accompanied by Transition of Dominant Species. Japanese. 小林弘・真山茂樹・長田敬五・出井雅彦・南雲保 (2006):. Journal of Limnology, 52: 173–187.. 小林弘珪藻図鑑.内田老鶴圃,東京都.. 田中正明 (2002): 日本淡水産動植物プランクトン図鑑.. 国立環境研究所 (2016): 霞ヶ浦データベース . URL:. 名古屋大学出版会,愛知県. 渡邉眞之 (2007): 日本アオコ大図鑑.誠文堂新光社,日. http://db.cger.nies.go.jp/gem/inter/GEMS/database/kasumi/ index.html(2019年9月10日時点) .. 本.. Komárek, J. and K. Anagnostidis (1998): Süßwasserflora. 渡辺仁治 (2005): 淡水珪藻生態図鑑―群集解析に基づく 汚濁指標 DAIpo,pH 耐性能.内田老鶴圃,東京都.. von Mitteleuropa. Bd.19/1 Cyanoprokaryota 1. Teil Chroococcales. Spektrum Akademischer Verlag. Germany. Komárek, J. and K. Anagnostidis (2005): Süßwasserflora von Mitteleuropa. Bd.19/2 Cyanoprokaryota 2. Teil Oscillatoriales, Spektrum Akademischer Verlag. Germany. Laws, E. A. (1975): The importance of respiration losses in controlling the size distribution of marine phytoplankton. Ecology 56: 419–426 水野壽彦 (1977) : 日本淡水プランクトン図鑑.保育社, 大阪府. 長濱祐美・大内孝雄・湯澤美由紀・福島武彦 (2019): 霞ヶ 浦における植物プランクトン体積算出のための各細胞 体積の検討 . 土木学会論文集 G(環境) ,75: Ⅲ _273– Ⅲ _280. 中村剛也・相﨑守弘 (2016): 霞ヶ浦に入射した光の減衰 に対する懸濁物質の影響―光減衰機構の長期的変遷 ―.陸水学雑誌,77: 13–23. 日本水道協会 (2001): 上水試験方法 2001年度版.日本 水道協会,東京. Ouchi, Takao, Hisao Kobinata, Koichi Kamiya, Keita. 178.

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参照

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