1.まえがき
二重反転形羽根車は、騒音の問題や駆動系 の複雑さなどから実用化が進んでいないと言わ れた時期があったが、二つの羽根車を個別のモ ータで駆動する手法を活用し、昨今では電子機 器冷却ファン、扇風機、ドローンなどあらゆる 分野で利用されるようになってきた。また、大 型のものでは日章丸などのタンカーにも導入さ れており、推進力の向上、低燃費、振動の低減 なども謳われている。二重反転形羽根車は、前 段羽根車からの旋回流れを考慮した後段羽根車 の設計が重要であり、設計の難易度も高いが、 二重反転形羽根車のポテンシャルを最大限生か すことができれば、その可能性はより大きく広 がるものと考えられる。 二重反転形羽根車の性能上の利点は実験結 果からも立証されており盧、その研究は、昨今、 世界で活発に実施されている。軸流ファンでは、 二重反転形軸流ファンの設計法が詳細に調査さ れており盪、羽根負荷が性能に及ぼす影響蘯や二 重反転形羽根車の騒音低減に向けた研究なども 実施されている盻。二重反転形羽根車を使用し たVTOL UAVについては、UAV用二重反転形羽 根車の離陸、着陸時の性能特性眈や音響特性眇も 実験的に調査され、VTOL UAVに採用された二 重反転形ダクテッドファンのチップクリアラン スの影響なども解明されている眄。二重反転形 羽根車は高い推進力を得ることができるが、ベ ルマウスを有するダクトを採用することで、そ の推進力がさらに増強される。その結果、同一 推力条件下では、羽根車の小型化が可能とな り、ダクトによる遮音効果も相まって低騒音化 も期待できる。そこで、大型の二重反転形ダク テッドファンを研究対象として、その高推力・ 高効率化に向けた研究開発を実施することにし た。 本稿では、数値流れ解析結果の妥当性を大型〔論文〕
二重反転形ダクテッドファンに関する研究開発
篠 原 大 河* 4 西 井 一 敏* 3 三 輪 昌 史* 2 重 光 亨* 1Research and Development of Contra-Rotating Ducted Fan
Toru SHIGEMITSU, Masafumi MIWA, Kazutoshi NISHII and Taiga SHINOHARA
The contra-rotating rotors are applied to UAVs because of the counter balance of the torque. High thrust can be obtained for the contra-rotating rotors, and its thrust can be increased by adopting a duct with a bellmouse. Therefore, we started the research of the large scale ducted fan having the contra-rotating rotors. The numerical analysis result is validated by the experimental result using a thrust measurement apparatus in this paper. Furthermore, research and development results of the contra-rotating ducted fan based on the numerical analysis are presented.
Keywords:UAV, Ducted fan, Contra-rotating rotor, CFD, Thrust
*1 徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 E-mail:[email protected] *2 徳島大学大学院 社会産業理工学研究部 *3 トヨタ自動車㈱ *4 徳島大学大学院 先端技術科学教育部 原稿受付日 令和2年7月15日
の二重反転形ダクテッドファンの推力試験装置 により検討した結果と、数値流れ解析を活用し た大型の二重反転形ダクテッドファンの研究開 発状況について報告する。
2.主な記号
:推力係数 (−) :羽根車直径(m) :軸動力(W) :回転数(rps) :重力加速度(m/s2) :流量(m3/s) :半径(m) :推力(N) :羽根車チップ周速(m/s) :軸方向速度(m/s) :ダクト内軸方向平均速度(m/s) :周方向速度(m/s) :迎え角(°) :流量係数 (−) :食違い角(°) :密度(kg/m3) :タイムステップ(s) :軸動力係数 (−) :効率 (%)3.推力試験装置
推力試験装置を活用し、規定回転速度で運 転した際の推力の計測を実施した。Fig.1に推 力試験装置の三次元CAD図を示す。二重反転 形ダクテッドファンは、Fig.1のフレームによ 試験時の回転数は規定回転数よりも、1∼5%程 度高くなった。また、羽根車の飛散を防止する ために、八面体カバーを(Fig.1参照)ダクテッ ドファンの周囲に設置している。4.数値流れ解析方法および計算条件
本研究開発では、主に数値流れ解析を活用 し、高推力・高効率な二重反転形ダクテッドフ ァンの研究開発を実施してきた。数値流れ解析 には、汎用数値解析コードANSYS CFX18.0を 使用している。最初に、数値流れ解析結果の検 証を行うために、前章の推力試験装置を模擬し た検証モデルを作成した。Fig.2に検証モデル における羽根車領域を示す。回転領域および非 回転領域を分けるため、外部流体領域、羽根車 外部冶具領域、上流スポーク領域、前段羽根車 領域、翼列間スポーク領域、後段羽根車領域、 TVavc L = / η L D N = /ρ 5 3 λ t ∆ ρ γ Q D N = / 3 φ α Vc Vave Va Ut T r Q g N L D T D N = /ρ 4 2 Ct羽根車領域、その他の非回転領域共にANSYS-Meshingを使用し、非構造四面体格子によりメ ッシュ生成を行っている。ダクトや羽根車の壁 面など壁面近傍ではインフレーション領域を7 層設定しており、メッシュの品質向上を図っ た。本研究で使用した検証モデルの計算格子数 をTable1に示す。 前後段羽根車およびハブ壁面で回転座標系で のすべりなし条件、ダクト壁面では絶対座標系 でのすべりなし条件を用いた。前後段羽根車の 計算領域の接合面はTransient Rotor-Stator Model を用いている。事前に定常解析を行い、定常解 析結果を初期値として非定常解析を行った。非 定常解析におけるタイムステップは動翼2°回転 分( =2.222×10-4(s))としている。6回転分の 解析を行い、6回転目の非定常数値流れ解析結 果により各種データを取得した。 流体は、非圧縮性流体かつ熱の移動を伴わな いと仮定し、計算コードでは質量保存方程式お よび運動量保存方程式を有限体積法により解い ている。数値流れ解析におけるチップクリアラ ンスも推力試験装置と同一である。乱流モデル には、はく離流れの予測に適したSSTモデルを 使用し、壁関数にはSSTモデルにおいて推奨さ れているAutomaticを採用した。各タイムステッ プにおける各種パラメータの残差は1.0×10-4以 下に設定しており、計算時間は、計算モデルに より変化するが、2週間程度費やした。 数値流れ解析の検証が完了した後は、推力試 験装置の地面、八面体カバーなどの幾何学的制 約を除いた直径 の球の中心(Fig.3参照) に、ダクテッドファンを設置し、食違い角など の変化が性能に及ぼす影響を調査した。このモ デルでは推力試験装置の治具などを除去し、ダ クト、二重反転形羽根車、スポークなどの基本 的なパーツのみを計算モデルに残している。外 部流体領域での境界条件などは検証モデルと同 じである。計算格子数については、食違い角を 変更させた各種モデルとも1,500万格子程度で ある。 D 60 t ∆
Fig.2 Rotor region of validation model
5.推力試験結果と
数値流れ解析結果との比較
数値流れ解析より得られた性能をTable2に 示す。また、Table2には推力試験装置より得 られた推力係数も併記する。実験結果と数値流 れ解析結果を比較すると、数値流れ解析結果の 推力は実験結果よりも14.6%大きな値となって いる。推力試験では、実験を実施できる空間に 制限があり、他の装置とのレイアウトの問題な どもあるため、数値流れ解析と比較し、ダクテ ッドファンに流入する流量が若干低くなるもの と考えられる。また、計算負荷の軽減の観点か ら、数値流れ解析においては、1 mm以下の推 力試験装置(実験装置)の非常に細かな形状に ついては簡略化されている。これらの影響によ り、実験値は数値流れ解析よりも小さな値にな ったものと考えられる。但し、上記の条件を加 味すると、数値流れ解析は、ある程度妥当な結 果が得られたものと判断できる。そこで、数値 流れ解析をもとに詳細な性能を調査した。検証 モデルの推力係数に着目すると、前段羽根車で の推力は、後段羽根車よりも若干大きく、ダク ト・スポーク部での推力は全体の推力の23.4% 占めていることがわかる(なお、数値流れ解析 より得られた羽根車内の流量より算出した検証 モデルの流量係数は =0.4528であった)。また、 効率については、大型なダクテッドファンを使 用していることもあり、前段および後段羽根車 を含めたファン全体で75.98%と比較的良好な 結果が得られている。そこで、ダクテッドファ ンの適用を検討しているより厳密な条件(より 高回転、高流量、高推力)に適合したモデルを φ作成し、数値流れ解析を実施した。
6.高推力モデルの数値流れ解析結果
高推力モデル(1stmodel)については、目標推 力(推力係数0.4779)を実現させるために、前述 の検証モデルよりも、規定回転速度を高く設定 した。ダクテッドファンの直径は変更せず、ハ ブ比を検証モデルよりも大きくし、羽根車内の 流速を増加させ、ダクトでの推力増加を図っ た。また、流入条件の変化を考慮して食違い角 については、検証モデルよりも9°減少させた。 Table3に高推力モデルの数値流れ解析より得 られた性能を示す。数値流れ解析より高推力モ デルは目標推力を超える推力係数が得られるこ とが確認できる。ダクトにおける推力は、全体 の推力の41.9%と検証モデルと比較してその比 率が大きく増加していることがわかる。ダクテ ッドファン全体の効率については、75.34%と 流量が増加した分(高推力モデルの流量係数は =0.7083)、検証モデルよりも若干低下してい る。一方、軸動力については、前段と後段の軸 動力の差が大きくなっている。二重反転形ダク テッドファンとしては、この軸動力の差は好ま しくないため、次のモデルでは、前段と後段羽 根車の軸動力の均一化を目的に食違い角の変更 を行った。7.前後段軸動力の
均一化へのアプローチ
高推力モデルでは、後段羽根車での軸動力が 前段羽根車よりも、11.6%大きくなったため、 後段羽根車の食違い角を増加させ、定常解析を 実施した。後段羽根車の食違い角が異なる3種 類のモデルにおける定常解析結果をもとに、最 終的には、後段羽根車の食違い角を高推力モデ ルよりも2°増加させたモデル(2ndmodel)を採用 し、非定常解析を実施した。なお、前段羽根車 については、1stmodelと同一である。Table4に その結果を示す。前後段軸動力の均一化を図っ たモデルにおいても目標推力を上回る結果を得 φTable4 Performance of the same shaft power model(2nd
model) Table3 Performance of high thrust model(1stmodel)
ることができ、後段羽根車の軸動力と前段羽根 車の差は3.0%と大幅に改善した。一方、軸動 力均一モデルの効率については、前段羽根車の 効率は若干低下し、後段羽根車の効率は増加し た。 次に、高推力モデルと軸動力均一モデルの迎 え角分布をFig.4に示す。Fig.4における縦軸 はデータ取得半径をダクト内半径で除した無次 元半径である。軸動力均一モデルでは、後段羽 根車の食違い角が増加したため、流入流量が減 少し(2ndmodelにおける流量係数は =0.6964)、 前段羽根車での軸方向速度が低下する。そのた め、前段羽根車の迎え角が若干増加している。 一方、後段羽根車では、食違い角を2°増加さ せた効果もあり、迎え角は高推力モデルよりも 低下した。これらの迎え角の変化が、Table4 低減させるために、食違い角を増加させた3種 類のモデルを活用した定常解析を実施し、その 結果から食違い角を3°増加させたモデルを選定 し、その非定常数値流れ解析を実施した。この モデルにおける後段羽根車入口での速度分布を Fig.5に示す。図よりチップ側では、前段羽根 車の翼端漏れ流れやダクト出口近傍内周部での 逆流により、軸方向速度および周方向速度とも 大きく低下していることがわかる。また、ハブ 面の影響によりハブ近傍での軸方向速度も低下 していることが確認できる。そこで、この後段 羽根車入口での速度分布を考慮し、新たに後段 羽根車の設計を実施し、さらなる性能改善を図 った。Table5はこの最終モデル(3rdmodel)に おける性能を示す。前段羽根車の食違い角を増 加させたため、流入流量が減少し(3rdmodelに φ
Fig.4 Attack angle distribution of 1st model and 2nd model
羽根車は1%強改善し、ファン全体としても、 数値流れ解析を実施した全てのモデルの中で最 も良好な結果が得られた。Fig.6には、高推力 モデル(1stmodel)、軸動力均一モデル(2ndmodel)、 最終モデル(3rdmodel)の前段および後段羽根車 の迎え角分布を示す。最終モデルについては、 前段羽根車の食違い角を増加させた効果により 迎え角が他のモデルよりも小さくなっているこ とがわかる。また、後段羽根車については、前 段羽根車からの速度分布を考慮し、各半径位置 での食違い角を調整したため、良好な迎え角を 実現できている。しかし、2ndmodelの迎え角と の比較より、チップ、ハブでの迎え角の調整が 効率に及ぼす効果は限定的だと考えられる。ダ クテッドファンの場合、食違い角の変更に伴い 流入流量が変化するため、流量の変化に伴う迎 え角の変化にも配慮する必要がある。また、二 重反転形ダクテッドファンの場合、前段羽根車 からの旋回流れを的確に把握しなければならな い。そのため、その研究開発においては、三次 元モデルを活用した非定常数値流れ解析による 詳細な内部流れの調査結果を、設計へ適用する 必要があるものと考えられる。
Table5 Performance of final model(3rd
model)
秬 Axial velocity 秡 Circumferential velocity Fig.5 Velocity distribution at the inlet of rear rotor(Front rotor stagger angle is larger than 2nd
9.まとめ
大型ダクテッドファンの研究開発を実施し た。推力試験装置により数値流れ解析結果の妥 当性を検討した上で、数値流れ解析による基礎 研究開発を行った結果、以下の諸点が得られ た。 ① 大型ダクテッドファンの推力試験装置に より計測した推力と数値流れ解析結果を比 較した結果、数値流れ解析において妥当な 結果が得られることが確認できた。 ② 数値流れ解析において高推力モデル、前 段・後段羽根車軸動力均一モデル、最終モ デルとも目標推力を満足することが確認で きた。食違い角変更と迎え角の調整は二重 反転形ダクテッドファンの前段・後段羽根 段羽根車の旋回流れを考慮した後段羽根車 の設計を実施する必要があり、理論解析や 既存設計法の延長では、その高性能化は難 しい。現段階では、三次元モデルを使用し た数値流れ解析などを活用した詳細な内部 流れに基づく設計の提案が必要不可欠であ ると考えられる。 [謝辞] 本研究開発費は、トヨタ自動車㈱に支援を頂 いた。また、本研究開発を実施する上で、徳島 大学の三輪昌史氏ならびにトヨタ自動車㈱の西 井一敏氏に多くのご助言を賜った。ここに記し て深い謝意を表する。秬 Front rotor 秡 Rear rotor Fig.6 Attack angle distribution of 1st
model, 2nd
model and 3rd
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