建設機械の排出ガス規制への取組み
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(2) 露天採掘特集:建設機械の排出ガス規制への取組み. Fig.4 Fig.1. Difficulty in Emission Gas Reduction.. Transition of NOx Regulation Value for 130-560kW Engines.. Fig.5. Cooled EGR.. ターボで圧縮した空気を,一旦冷却してから供給することで,燃 Fig.2. Transition of PM Regulation Value for 130-560kw Engines.. 焼 温 度 を 下 げ る 技 術 で あ る。 ③ の EGR は Exhaust Gas Recirculation の略であり,排気ガスの一部を再び吸入空気に戻し, 酸素の少ない状態で燃焼させ,燃焼温度を下げる技術である (Fig. 5)。日本では既にトラック用ディーゼルエンジンで採用さ れ,ある程度の実績がある。④の多段噴射は燃料噴射の制御技術 であり,次章で紹介する小社が採用する技術の中核である。また, HC や PM の低減技術としては,高圧噴射,高過給,吸気冷却, 後処理等が挙げられ,これらの技術を複合的に採用することによ り,メーカ各社,厳しい排出ガス規制をクリアするクリーンなエ ンジンの開発を目指している。 4.ACERTⓇ技術 3 章では一般的な排出ガス低減技術について述べたが,ここで は第 3 次規制に対応すべくキャタピラー社が開発した ACERTⓇ技. Fig.3. Mechanism of Combustion and Emission.. 術について紹介する。 「ACERTⓇ ( ア サ ー ト ) 」 と は,Advanced Combustion Emission. じく規制対象ガス成分である炭化水素 (HC) と PM は,不完全燃. Reduction Technology の略であり,キャタピラー社が 75 年にわた. 焼を起こすことにより発生しやすく,高温で完全燃焼に近づける. るエンジン開発の歴史の中で培った技術を集結し,開発した,最. ことでその発生を抑制することができる。この発生要因と低減策. 新の排出ガス低減技術の総称であり,各国の第 3 次規制をクリア. がそれぞれ相反する排出ガス成分の低減を両立させるためには, 非常に高度な技術が必要になる (Fig. 3,Fig. 4)。. することを目的に,さらには,第 4 次規制をも見据えて開発され. 第 3 次規制で主となる低減技術としては,まず NOx の低減技. Fig. 6 に Cat C15 ACERTⓇエンジンを示す。. 術として,第 2 次規制でも採用されている. ACERTⓇ 技術は,「燃焼のあらゆる工程を効率的に最適に制御. ① 燃料噴射時期遅延. できれば,排出ガスを最小限に抑えることができる」という極め. ② アフタクーラ. てシンプルな考えに基づいており,既存の第 2 次規制対応技術の. をはじめ,. 要素を 1 つずつ高度化したシンプル且つ極めて高度な燃焼制御技. ③ EGR. 術と言える。. ④ 多段噴射等の高度な電子制御. 従来のエンジン制御システムでは,エンジン回転数と負荷変動. が挙げられる。①の燃料噴射遅延では,燃焼効率が最適になる燃. の影響を受け,燃焼工程全般を最適に制御することは非常に困難. 料の噴射時期より遅らせて燃料を噴射するため,技術的におのず. であった。また,機械式のインジェクタでは噴射タイミングや噴. と限界があり,燃費の悪化を招きやすい。②のアフタクーラは,. 射 率 が カ ム の 形 状 で 制 限 さ れ, 自 由 度 が な か っ た。 し か し,. た技術である。. 資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122(2006)No.12. 651〈 89 〉.
(3) 三富亮治 . Fig.6. 燃料噴射システム. Cat C15 ACERTⓇ. 後処理システム. 吸気システム. Fig.7. Fig.9. Mechanism of Turbocharger with Wastegate.. 電子制御システム. ACERTⓇ Building Block.. Fig.10 HEUI and MEUI. 却し,燃焼温度上昇の抑制を図っている。それにより,NOx の 発生を抑制している。なお,第 3 次規制対応車では,総じてヒー トバランスが悪化するため,ラジエータ等の冷却装置は大型化さ れ,それに伴いファンの大型化により騒音が大きくなるケースも ある。この部分では,吸音材や可変スピードファン制御を採用し, 騒音を車両側で低減させている。 4・2 燃料噴射システム Fig.8. ACERTⓇ Intake & Exhaust Air system.. ACERTⓇ技術の中核となるのは,エンジンへの燃料供給の制御 である。最適な燃焼を可能にするためには,適切な圧力の下,適. ACERTⓇ技術では,様々な燃焼パターンをプログラミングされた 新 開 発 の 電 子 制 御 シ ス テ ム で あ る ADEM4 (Advanced Diesel. 正なタイミングで,適正な量の燃料をエンジンに供給することが. Engine Management) により燃焼工程全般を制御することで,非常. 用され,長時間にわたる稼働で実績のある,油圧作動式電子制御 ユ ニ ッ ト イ ン ジ ェ ク タ (Hydraulic Electronic Unit Injector: 以 下. に正確な燃焼を行い,排出ガスの低減を可能にした。ACERTⓇ技 術は,Fig. 7 に示す吸気システム,燃料噴射システム,電子制御. 必要である。これらを可能にするのが,既に多くのエンジンで採. システム,後処理システムの 4 つの技術を中心に構成されている。. HEUI) と 機 械 式 電 子 制 御 ユ ニ ッ ト イ ン ジ ェ ク タ (Mechanical, Electrical Unit Injector:以下 MEUI) (Fig. 10),および CAT コモン. 4・1 吸気システム. レールシステムである。これらの噴射システムは,後述するコン. ACERT エンジンの吸排気システムは,第 2 次規制のエンジン. トローラの ADEM4 との組み合わせにより,適切な噴射のタイミ. の吸排気システムと同じ構造であり,非常にシンプルなため,高 い信頼性を確保することができる (Fig. 8)。また,新鮮な空気だ. ングや時間,圧力などを細かく制御することが可能である。. Ⓡ. けをシリンダ内に供給するため,EGR で心配されるようなシリ. Fig. 11 に噴射サイクルの模式図を示した。ACERTⓇの噴射シス テム ( マルチインジェクション ) では,主噴射を含め,1 回の噴. ンダ内の腐食,磨耗等,耐久性低下の懸念も少ない。. 射サイクルの中で,最大で 5 回の多段噴射を行うことができる。. ACERTⓇ エンジンはクロスフロー型のシリンダヘッドを採用. さらに,メイン噴射の噴射率を,状況に応じて可変的に細かく制. し,その多くが 4 バルブ設計になっている。それにより,排気の. 御できるため,常に最適な燃焼が保たれる。この可変噴射率制御. 流れをスムースにし,吸入した空気をより均一に拡散することが. は,騒音,振動,耳鳴り音の制御にも貢献している。これらの噴. 可能であり,PM や HC 削減のための完全燃焼を行うことを実現. 射システムはエンジンの状況や周囲環境の変化に応じ様々な噴射. した。. パターンが可能であり,それらのパターンの組み合わせは理論上,. さらに,ターボチャージャには,既に多くのエンジンでその耐. 1,000 万通りにも及ぶ。. 久性,信頼性,性能等が実証済みのウェストゲート付ターボチャー. Fig. 12 にマルチインジェクションによる排出ガス低減のメカ. ジャを採用し,エンジン回転の低速から高速まで効率よくマッチ ングさせている (Fig. 9)。またそれらの中には,低サイクル疲労. ニズムを示す。通常の燃焼制御では細かい噴射制御が出来ないた め,燃焼初期に燃焼室内が極めて高温になり,この段階で NOx. 特性を持つ,チタン合金製コンプレッサー・ホイールを特徴とす. が多く生成されてしまう。しかし,ACERTⓇエンジンは,マルチ. るものもあり,ターボチャージャの寿命を向上させている。. インジェクションにより,最初にパイロット噴射を行うことで燃. ターボチャージャによって過給された空気はアフタクーラで冷. 焼のピーク温度を下げることが可能であり,NOx の発生を抑制. 652〈 90 〉. 資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122(2006)No.12.
(4) 露天採掘特集:建設機械の排出ガス規制への取組み. Fig.11 Injection cycle.. Fig.13 ADEM 4 Controller.. Fig.14 Aftertreatment.. Fig.12 Mechanism of Emission Gas Reduction.. 確保。 (3) メンテナンス性 第 2 次規制までのエンジンと基本構造. することが出来る。また,メイン噴射ではおよそ 2,000 気圧の高. で変化が少なく,メンテナンス性も必要なツールも同等で,維持・. 圧で燃料を噴射することが可能であり,可変噴射率制御とあわせ, 燃焼を最適化し燃焼効率を高め,PM,HC,黒煙を低減している。. 管理に伴う追加投資が少ない。 (4) 耐久性 シリンダライナ,ピストン周り,バルブ,ロッ. 4・3 電子制御システム. カシャフト及びベアリングの磨耗が従来エンジンと変わらないた. ACERTⓇに採用されている ADEM4 は,32 ビット,動作周波数. め,オーバホール時間も従来のエンジンと同等。. 56MHz,2 メガバイトのメモリを搭載しており,第 2 次規制エン. ACERTⓇ エンジンは以上に示した特長にあるように,信頼性,. ジンで採用されていた ADEM2 に比べ処理速度が 28 倍に向上し ている (Fig. 13)。これらの電子制御システムによってエンジンは,. 耐久性,性能を損なうことなく排出ガス規制に対応したエンジン. 他のコンポーネントと情報を交換することが出来るようになり, 油圧系統からの要求,周囲の環境条件,オペレータの作動要求等. ガスをクリーンに保つためには,ユーザのメンテナンスも重要で ある。適正なエンジンオイル (DH,CH 級 ) や燃料 ( 軽油 ) の使. に応答するように,エンジンの作動パラメータは最適に調整され. 用等,管理はますます重要になるであろう。. る。これによって排出ガスの低減,性能の向上を可能にした。 4・4 後処理装置. 小社の取扱製品の中では以下のモデルにこの ACERTⓇを採用し たエンジンを搭載している (2006 年 10 月 1 日時点 ) 。. エンジンのサイズによっては,後処理装置の装着も ACERTⓇ技. ・大型油圧ショベル. 術の選択肢の 1 つである。. ・中型油圧ショベル. ディーゼルエンジン用酸化触媒装置 (Fig. 14) は,触媒により 排出ガスの成分の炭化水素 (HC) を無害な二酸化炭素 (CO2) と水. である。なお,オフロード法,第 3 次規制対応のエンジンで排出. : 385C / 365CL / 345C (L) : 330D (L) / 328DLCR 325D (L) / 324D (L). ・大型ホイールローダ: 988H / 980H / 972H / 966H. (H2O) に分解する。そのプロセスは迅速,効率的かつ信頼できる. 962H / 950H : D10T / D9T / D8T / D6R Ⅲ. ものであり,米国では既に多くのオンハイウエイトラックに採用. ・大型ブルドーザ. されている。この酸化触媒装置を採用することにより,燃費の悪. ・アーティキュレートダンプトラック : 740 / 735 / 725. 化等を引き起こす無理なセッティングを行うことなく,効率よく HC の排出量を低減することが可能になる。また,酸化触媒装置. ・コンパクタ. : 836H / 826H / 825H. はエンジンのオーバーホール時までメンテナンスフリーである。. ・履帯式ローダ. : 973C. 4・5 ACERTⓇ技術の特長のまとめ これまで ACERTⓇ 技術の概要について述べてきたが,ここで. 5.お わ り に. ACERTⓇ 技術がもたらすユーザメリットについて以下に整理す. 地球規模での環境破壊が進む現在,環境負荷の少ない製品の開. る。 (1) 信頼性 既に多くの第 2 次規制エンジンで採用され,実. 発・生産はメーカに課せられた使命ともいえる。. 績のあるコンポーネント及び確立されたシステムを採用してお. ザの満足を得るよう,「最大の機械性能で最も低い運転経費」を. り,従来のエンジンと同等の信頼性を確保。. 実現した画期的な技術である。. 可能な限り確立された技術でオフロード法および第 3 次規制を. 今後は,ますます厳しくなる排出ガス規制に対応しつつ,ユー. クリア。 (2) 性能 良好な負荷応答性,高地性能,及び低温始動性を. ザの利益を第一に,新たなエンジン,建設機械の研究・開発にこ. ACERTⓇ技術は,排出ガス低減という使命を果たしつつ,ユー. れからも取り組んで行く。. 資源と素材 Shigen-to-Sozai Vol.122(2006)No.12. 653〈 91 〉.
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