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JAIST Repository: 中小製造業の連携における知識創造 ―能美ものづくり改革塾でのアクションリサーチ―

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(1)JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/. Title. 中小製造業の連携における知識創造 ―能美ものづく り改革塾でのアクションリサーチ―. Author(s). 山本, 博康. Citation Issue Date. 2009-03. Type. Thesis or Dissertation. Text version. author. URL. http://hdl.handle.net/10119/8064. Rights Description. Supervisor:近藤修二教授, 知識科学研究科, 修士. Japan Advanced Institute of Science and Technology.

(2) 修. 士. 論 文. 中小製造業の連携における知識創造 ―能美ものづくり改革塾でのアクションリサーチ―. 指導教官. 近藤修司. 教授. 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科知識社会システム学専攻. 750052. 審査委員:. 山本. 近藤. 修司. 教授. 梅本. 勝博. 教授. 小坂. 満隆. 教授. 伊藤. 秦信. 准教授. 2009 年 2 月. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 博康. (主査).

(3) Knowledge Creation in cooperation of the small and medium-sized manufacture ―An Action Research of Nomi Monodukuri Kaikaku-Juku in Japan― Hiroyasu Yamamoto School of Knowledge Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology. March 2009 Keywords:YON-GAMEN, Innovation, knowledge mixture, the small and medium-sized manufactur, Ba We show knowledge creation in cooperation of the small and medium-sized manufacture. Revitalization of the small and medium-sized enterprise is important, because it is a source of an economic activity in Japan. I consider knowledge is created by cooperation in union through ‘ba’, and the knowledge acts on the organizational reformation. ‘ba’, the shared context for knowledge creation. My research method is an action research of Nomi Monodukuri Kaikaku Juku in Japan. I found that knowledge mixture by internal and external cooperation based on ba. The results indicate that ba and YONGAMEN thinking are effective for the knowledge mixture. I conclude that the knowledge mixture by internal and external cooperation based on ba can create the reform knowledge vision. We suggest that the knowledge mixture by ba is a success factor of the reformation, it will be usefull for the local revitalization in the future.. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto.

(4) 目. 次. 第1章. 序論. ‐中小企業におけるナレッジマネジメントの必要性‐. 1. 1.1. 研究の背景と問題認識. 1.2. 研究の目的と意義 . . . . . . . . . . . . 2. 1.3. 研究方法. 1.4. 研究構成 . . . . . . . . . . . . . . 4. 第2章. . . . . . . . . . . . 1. . . . . . . . . . . . . . . 4. 文献レビュー. ‐中小企業と知識創造-. 2.1. はじめに. 2.2. 中小企業のパラダイムシフトと連携. . . . . . . . . . . . . . .. 7. . . . . . . . . . . .. 7. . . . . . . . . . . .. 7. . . . . . . . . . . . .. 8. 2.2.2 中小企業の問題推移 2.2.3 今後の中小企業 2.3. 6. . . . . . . . .. 2.2.1 日本における中小企業. 2.2.4 まとめ. 6. . . . . . . . . . . . . . . 10. イノベーション . . . . . . . . . . . . 10. 2.3.1 イノベーションと組織規模 . . . . . . . . .. 10. 2.3.2 これからのイノベーション . . . . . . . . .. 12. 2.3.3 まとめ 2.4. . . . . . . . . . . . . . . 14. 知識創造理論 . . . . . . . . . . . .. 14. 2.4.1 ナレッジマネジメントとは?. .. .. .. .. .. .. .. .. . 1. 2.4.2 知識とは?. 4 .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . 1. 2.4.3 知識創造動態モデル. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . 1. 5 5. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. i.

(5) 2.4.4 場とは? . . . . . . . . . . . . . 2.4.5 まとめ 2.5. 17. . . . . . . . . . . . . . . 18. 四画面思考法 . . . . . . . . . . . .. 2.5.1 四画面思考法とは. 19. . . . . . . . . . . .. 19. 2.5.2 四画面思考法の特徴と問題 . . . . . . . . .. 21. 2.5.3 まとめ. . . . . . . . . . . . . . . 22. 2.6. 文献レビューまとめ. 2.7. 仮説. . . . . . . . . . . . 22. . . . . . . . . . . . . . .. 第3章 アクションリサーチ. -能美ものづくり改革塾を通して-. 24 26. 3.1. はじめに . . . . . . . . . . . . .. 3.2. 能美機器協同組合と能美ものづくり改革塾. 26. . . . . . . 27. 3.2.1 能美機器協同組合 . . . . . . . . . . .. 27. 3.2.2 能美ものづくり改革塾について . . . . . . . .. 28. 3.3. アクションリサーチ. 3.3.1 はじめに. .. .. . . . . . . . . . . . 28 .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. 2. 8 3.3.2 第1ターム. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . 3. 3.3.3 第2ターム. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . .. 3.3.4 第 3 ターム. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . 3. 3.3.5 アクションリサーチのまとめ. .. .. .. .. .. .. .. .. . 3. 0 3. 3 7 9 3.4 第4章. まとめ 結論. . . . . . . . . . . . . . . 40 -中小製造業での知識創造の提案-. 4.1. まとめと結論 . . . . . . . . . . . .. 4.2. リサーチ・クエスチョンに対する回答. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. ii. 41 41. . . . . . . . 42.

(6) 4.3. 理論的含意と実務的含意. 4.4. 将来研究への示唆. . . . . . . . . . . 44. . . . . . . . . . . .. 参考文献 付録 謝辞. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. iii. 45.

(7) 図. 目. 次. 図 1-1. 研究の構成. . . . . . . . . . . . . . .. 5. 図 2-1. 連携事業取組状況(中小企業庁,2004,新連携事業へのニーズについて). .. 9 図 2-2. 連携に関心がある理由・背景. . . . . . . . . . .10. 図 2-3. イノベーション・トライアングル. 図 2-4. 組織的知識創造の基本原理「SECI モデル」. 図 2-5. 知識創造動態モデル. . . . . . . . . . . .. 17. 図 2-6. 四画面思考法の概要. . . . . . . . . . . .. 19. 図 2-7. 四画面作成法の概要. . . . . . . . . . . .. 21. 図 2-8. 能美ものづくり改革塾における知識創造の仮説モデル. 図 3-1. 能美機器協同組合の SWOT 分析. . . . . . . . . .13. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . 16. . . . . 25 .. .. .. .28. 図 3-2 アクションリサーチの反復的サイクル . . . . . . .. 30. 図 3-3. . . . . . . . . .. 32. 図 3-4 塾の広報誌 . . . . . . . . . . . . .. 36. 能美ものづくり改革塾の記事. 図 3-5 インターネットを利用した情報配信 . . . . . . . . 36 図 3-6. 本螺子製作所の SWOT 分析. .. .. .. .. .. .. .. .. .. .37. 図 3-7 ISO 個人品質目標行動計画の四画面 . . . . . . . . 38 図 3-8. 改革提案書の変化. . . . . . . . . . . . . 41. 図 4-1 有機的組合内外連携モデル. . . . . . . . . . .48. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. iv.

(8) 表. 目. 次. 表 2-1. クローズド・イノベーションとオープン・イノベーションの比較. 表 3-1. アクションリサーチにおける研究者のポジションと特徴. . . . 29. . . 12. 表 3-2 第一期能美ものづくり改革塾講義内容 . . . . . . .. 31. 表 3-3 第一期生改革提案書の内容 . . . . . . . . . . 32 表 3-4. 第一期 FP 発表者に対してのアンケート.. .. 表 3-5. 第一期 FP 参加者に対してのアンケート. 表 3-6. 第 1 タームのまとめ. . . . . . . . . . . .. 34. 表 3-7. 第 2 タームのまとめ. . . . . . . . . . . .. 39. 表 3-8 第二期能美ものづくり改革塾講義内容 . . . . . . .. 41. 表 3-9. 42. .. . .. . .. . .. . .. . .. 33 . 34. 第二期生改革提案書の内容. . . . . . . . . .. 表 3-10 第二期 FP 発表者に対してのアンケート.. .. .. .. .. .. .. 43. 表 3-11 第二期 FP 参加者に対してのアンケート.. .. .. .. .. .. .. 43. 表 3-12 第 3 タームのまとめ. .. .. 表 3-13 アクションリサーチのまとめ. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. .. .. .. .. .. .. .. .. .. . . . . . . . . .. v. 44 45.

(9) 第. 1. 章. 序論. ―新たな中小企業連携の必要性―. 1.1 研究の背景と問題認識 日本では中小企業は重要な存在であると言える。農林水産業以外の民間企業で働く、 約 5500 万人の 4 人に 3 人が、中小企業に関連している(中小企業庁編,2005)。中小企 業は働く場として、労働を通して自己実現する場として、極めて重要な存在である。 また、1999 年に改正された中小企業基本法により、中小企業をこれまでの「弱者とし て一律的に保護する対象」から、 「わが国経済の活性力の源泉」と位置づけ、 「自主的 で多様な活力ある成長発展」を新たな政策の基本理念としている。 この背景には、近年の中小企業を取り巻く環境変化があり、バブル崩壊後の長期の 景気低迷、激しさを増す国内競争、国内のみならず世界的規模での競争、IT 技術を中 心とする急速な技術革新、またそれに伴う顧客・消費者の変化など、多くの環境変化 が加速化してきている(寺本・原田,2001)。 数年前、アメリカで生まれた科学的管理 法やコンピューター支援の経営管理が注目を浴びていたが、目まぐるしいスピードで 技術・サービス革新が起こっている現在、社会は新たな付加価値を創造し続ける知識 社会に変りつつあり、「ナレッジ・ワーカー1が最大の資産である」(野中・竹内,1996) と注目されている。また、 「企業においても規模の大小に関わらず、知創企業こそが、 今後に期待されるべき企業像である」(寺本・原田,2001)と言われている。 これらの加速する環境変化に対応するには、迅速な環境変化への対応、それに伴う 企画、実行する行動力、また、社内だけの資源に頼るのではなく、社外の資源も有効 に活用し、従来の中小企業の姿を改革する必要が考えられる。また、中小企業向け施 策の変遷を見てみると、中小企業合理化促進法(1952 年)、中小企業近代化促進法(1963 年)、中小企業融合化促進法(1988 年)、中小企業創造活動促進法(1995 年)、中小企業 経営革新新支援法(1999 年)、農商工新連携支援法(2005 年)、地域資源活用プログラ ム(2007 年)と、幾多の変遷を経ており、従来の中小企業の姿を改革する必要が施策か 1. ナレッジワーカーとは、ドラッカーが提唱した知識労働者のことであり、工業社会でのスキル ワーカーに代わり、知識により付加価値を生み出す、知識社会の担い手としてナレッジワーカー を位置づけた。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 1.

(10) らも読み取れる。 そして、新たな社会経済システム展望のもとで、イノベーションや雇用、そして地 域固有の価値実現の担い手としての中小零細企業の持つ可能性が国際的に重要視さ れ(茂野,2005)、とりわけ、ものづくり中小企業(以下、中小製造業)は、日本の競争 力の源泉である(日本経済団体連合会,2007)と述べられている。 そこで、改革の一端として、創業と新事業展開をになうべき「主体」としての、 「企 業家」人格の創成、それを支えるべき「起業文化」(enterprise culture)の環境醸成 も、あらためてその必要性が共通して認識され、地道な取り組みが図られている(三 井, 2005)。しかし、多くの事例、特に企業連携での中小企業の活性化においては、 プロセス・プロダクト面の効率化に注目が集まり、上記で述べた「主体」 「企業家」 「企 業文化」などのマインド面を改革(育成)するには、従来の方法では限界が来ているよ うに思われる。加えて、近年のサブプライム問題を発端とした金融の引き締めにより、 経済発展のために必要な中小企業対策や、自主的なイノベーションなどの活動は、依 然として有効な融資支援が受けられなくなっている(田中,2008)という現状がある。 そこで、それらの課題を克服するために、日本のモノづくりの基盤である鉄工関連 に注目し、歴史的に北前船を航路とし経済・産業の発展をみた地域連携の基礎がある 北陸地域にて、長年企業活動をおこなっている中小製造業の連携組織の能美機器協同 組合に「能美ものづくり改革塾」という知識創造の場を設営・運営することで、新た な中小製造業の連携について考察する。. 1.2 研究の目的と意義 本節では、本研究の目的と意義を確認すると共に、それを達成するためのリサー チ・クエスチョンを提示することを目的とする。 前節では、新たな社会経済システム展望のもとで、知識社会への移行、従来の中小 企業の姿を改革する必要性があることを認識した。一方でこれまでの企業連携ではこ れからの社会での問題に対応できにくいことを説明した。 更にこのような背景の中で、企業連携においてプロセス・プロダクト面での改革に 注目が集まっており、企業連携においてマインド面が重視されていない事を問題認識 した。 以上の問題点をふまえ、本研究の目的を、「中小製造業の連携における、知識創造 を促す仕組みの構築」とする。 また、本研究の意義は、中小製造業とその連携組織を対象として、知識創造の理論. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 2.

(11) を現場で活用し、フィードバックから新たな理論を示唆する。中小製造業についての 研究は多く存在するが、知識創造の視点で、中小製造業とその連携組織の研究をおこ なっている研究は少ない。知識創造の場を通して中小製造業同士が、改革のために知 識をいかに創造・共有・活用されるかを分析し、連携組織での知識創造プロセスを構築 するところに学術的意義がある。 また、今後の中小製造業と連携組織のアクションリサーチ2をおこない、中小製造業 での知識創造プロセスについての実務的提言は、今後より複雑になる社会において活 躍が期待される中小製造業の存在に新たな価値を創出し、様々な中小企業の改革ニー ズに貢献するものとして意義あるものである。 以上より、本研究の目的を達成する為のリサーチ・クエスチョンを次のように設定 する。 MRQ: 能美ものづくり改革塾ではどう知識創造を活用させるか? SRQs: 1.なぜ中小企業における改革はうまくいかないのか? 2.知識創造を活用した組織改革を推進していく上で何が必要なのか? 3.知識創造を活用した組織改革では何が改革されるのか?. 2. 中村(2008)によると、アクションリサーチの定義を、社会のあるシステムにおいて現実に起こ っていることに対して、目標とする状態の実現にむけて変革を志向した活動が行われるとともに、 それらの活動、現状の把握や活動の影響の調査、行動科学の知見の応用や生成、を相互に関連さ せていく実践課程を通しての研究である。その過程においては、参加による民主的な価値観がベ ースとなることが多く、変革に向けて、研究者と当事者や当事者同士による協働的な実践が、時 に、当事者自身が研究者になって実践が展開される、としている。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 3.

(12) 1.3 研究方法 本節では、本研究の方法を確認することを目的とする。特に、アクションリサーチ でおこなう手法について明確にする。 本研究の目的である「中小製造業の連携における、知識創造を促す仕組みの構築」を 達成するために、本研究では、文献レビューとアクションリサーチをおこなう。 文献レビューでは、中小企業のパラダイムシフト3と連携について整理する。次にも のづくりを考える上で欠かせない概念であるイノベーションと、イノベーションと知 識の関連、知識創造理論を述べ、今後の中小企業における役割を探ることをおこなう。 アクションリサーチでは、問題点の明確化、問題現状の明確化、変化のためのプラ ン、検証実践、成果の評価とプロセスの考察、理論の照合と一般化・普及を基本サイ クルとする4。また、方法論としては、「実践型研究」を用い、研究者のポジションと しては、相互的協力関係を視野に置きつつも、時間的制約のため、内部者と協同する 外部者として行動する(中村,2008)。 問題点の明確化は、文献レビューを行ない、参加者へのインタビューやアンケート、 活動から産まれた事象を基に、現状問題の明確化と変化のためのプラン立て、成果の 評価とプロセスの考察をおこなった。検証実践と理論の普及については、コンサルタ ントとしての経験を持つ近藤修司教授と協働でおこなった。以上のデータから、リサ ーチ・クエスチョンへの回答を導き出すと共に、「中小製造業の連携における、知識 創造を促す仕組み」としてのモデル構築をおこなう。. 1.4 研究構成 本節では、本研究の構築を確認することを目的とする。また、本研究の結論につい ても簡単にふれる。 本研究は、4つの章から構築されている。本章(第 1 章)を序論とし、第2章を文献 レビュー、第3章をアクションリサーチ、そして第4章を結論としている。 本章では、新たな中小企業の連携について、社会背景をふまえ、イノベーションと 知識創造の視点から、新たな連携方法による改革の必要性を述べ、この問題を解決す 3. パラダイムシフトとはその時代や分野において当然のことと考えられていた認識が革命的かつ 非連続的に変化すること 4 第 3 章でも述べるが、本稿でおこなうアクションリサーチは基本サイクルを基に、別途定義し ている. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 4.

(13) るための研究目的・意義、研究方法をこれまでに述べてきた。 第1章の序論をうけて、第2章の文献レビューでは、中小企業のパラダイムシフト と連携と、イノベーションと知識創造との関連を整理し、アクションリサーチで使用 する四画面思考法についても触れておく、第3章のアクションリサーチでは、能美機 器協同組合で設営、運営に携わった「能美ものづくり改革塾」を活動事例として取り 上げ、中小製造業の連携において、知識創造を促す仕組みのヒントを探る。 最後に、第4章の結論において、第2章の文献レビューと第3章のアクションリサ ーチにおいて検証した内容から、能美ものづくり改革塾ではどう知識創造が活用させ るのかとして「既存のネットワークを利用した場作りにより、場を基点とし、組合内 の企業間や、組合外の組織において、共通ツール(改革提案書)を利用することで、知 識混合が促進される。また、自社の技術を再認識すると共に、外部組織での知識を認 識することで、技術力向上のための新たなビジョンを描くことができ、相互的に認識、 支援しあう関係性が築かれることで新たな知識が創造され、企業の改革に活用され た。」を本研究の結論として述べる。. 図 1-1 研究の構成. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 5.

(14) 第. 2. 章. 文献レビュー. ―中小企業と知識創造―. 2.1 はじめに 本節では、第2章の文献レビューの目的と構成を確認することを目的とする。 第 1 章では、新たな社会経済システム展望のもとで、知識社会への移行、従来の中小 企業の姿を改革する必要性があることを認識した。一方でこれまでの企業連携ではこ れからの社会での問題に対応できにくいことを説明した。更にこのような背景の中で、 企業連携においてプロセス・プロダクト面での改革に注目が集まっており、企業連携 においてマインド面が重視されていない事を問題認識した。以上の問題点をふまえ、 中小企業の連携において、知識創造を促す仕組みの構築を本研究の問題認識とした上 で、本研究の目的・意義、方法、構成について述べた。 本章(第2章文献レビュー)では、「中小製造業の連携において、知識創造を促す仕 組みの構築」という本研究の目的を達成するために、中小企業のパラダイムシフトと 連携について整理する。次に、ものづくりには欠かせないキーワードであるイノベー ションの文献レビューをおこない、「知識社会5へ変わりつつある」への要請により知 識創造の必要から文献レビューをおこなうことで、両者の関係を明らかにする。また、 アクションリサーチで使用される四画面思考法についても文献レビューをおこなう。 文献レビューの構成は、日本における中小企業の重要性を述べ、歴史的変遷の振り 返りは中小企業が乗り越えてきた問題の推移を考察し、今後の中小企業像について整 理した。イノベーションについては、中小企業にこそイノベーションを起こす機会が あるという立場において、対象を検証するためにレビューする。また、知識創造理論 については、イノベーションと知識創造との関わりを知るためにレビューする。. 5. ドラッカーの『ポスト資本主義社会』によると、 「基本的な経済資源」は、もはや資本でも天然 資源でも労働力でもなく「知識」であり、 「知識労働者」が中心的な役割を果たすというのである。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 6.

(15) 2.2 中小企業のパラダイムシフトと連携 2.2.1 日本における中小企業 中小企業とは極めて多様であり、身近な中小小売店から対個人サービス業、コンピ ュータソフト開発企業など、数多く存在し人によりイメージも極めて多様である(渡 辺ら,2006)。ものづくり大国とも言われている日本では、ものづくり中小企業(以下、 中小製造業)の活性化がなくては、日本の競争力強化はありえないといわれている。 高度成長を支えてきた日本の産業、とりわけ製造業の強みは、大企業と中小企業との 密接な協力関係であり、中でも多様で競争力をもつ中小企業が数多くあったからこそ、 多様な製品やサービスを先進的なレベルで供給できる仕組みを、日本全体として構築 できたと言っても過言ではない。 統計数字からみても、2005年において、中小製造 業(従業員300人未満の企業)は、全製造業従事者の71.5%、全出荷額の49.4%、全付加 価値額の56.3%を占めており、中小製造業が日本の製造業を下支えしている。とりわ け雇用創出・維持に果たしてきた役割は大きい。中小製造業は1つの範疇に括れない 多様性をもつ。世界の市場でもトップシェアを占める、高い技術力を保有するいわゆ る「オンリーワン企業」も少なくない。また、エクセレント・カンパニーといわれる 大企業にとっても、中小製造業はなくてはならないパートナーとして存在している。 いわゆる「失われた10年」において日本の競争力強化についての論議が活発になる中、 改めて「町工場」という言葉に代表される日本の中小製造業の高い技術・技能に関心 が集まっている。政府も近年、中小製造業の強化を重要な政策として改めて強調しは じめ、鋳造・プレス・メッキなどの基盤技術を指定して、中小企業によるこれらの分 野の開発を支援する施策(「中小企業のモノ作り基盤技術高度化支援」等)を展開し ている(日本経済団体連合会,2007)。その一方で、主に産業構造の変化に対応した「フ ルセット型」(関,1993)「国内完結型」「国外移転型」(渡辺,1997)など、中小企業像 が模索され、現在でも多くの議論がなされてきている。 2.2.2 中小企業の問題推移 日本での中小企業の数は第二次世界大戦中の一時期を除いて 100 年以上の間ほぼ一 貫して増加してきた。とくに 1950 年代末以降の経済の高度成長期においては、中小 企業の数は急増した。しかし、1960 年代以降、中小企業を取り巻く経済環境の変化は きわめて激しく、つぎつぎに大きな変化が生じ、そのつど中小企業は危機に陥った(清. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 7.

(16) 成,1996)。 1940 年代後半~50 年代前半では政策による問題。重要産業復興策による資材難、 ドッジ・ライン(デフレ政策)による資金難。大企業の系列化による問題として、収奪 問題、経営資源問題、市場問題。時代背景による問題として、二重構造問題が上げら れる。1950 年代後半~60 年代では、 「戦後大企業体制」による問題により、諸問題の 継続、拡大。高度成長による問題では、労働力不足。1970 年代~1980 年代では、円 高により、高付加価値分野への移行による知識集約化。オイルショックによる減速経 済に伴い、収奪問題の悪化。産業構造の変化(大企業の多角化等)による経営資源問題 の悪化。1990 年代以降では、国内完結型分業体制の崩壊により、東アジアベース分業 体制への以降、収奪問題、経営資源問題、市場問題の悪化。このように、中小企業は 主に国際的情勢による大企業の変化により、何度も危機的状況にさらされてきた、そ して今後はより複雑な社会での競争に迫られている。しかし、違う視点では多くの課 題を解決してきた知識が、中小企業に蓄えられているともいえる。そして、近年では 100 年にわたって展開してきた大企業体制の限界が取り上げられている。ドラッカー (1991)によると、「過去 10 年から 20 年の間に中規模企業は競争力をつけ、大企業は 競争力を失った。中規模企業が負っていたハンデは、ほとんど消えた。しかし、中規 模企業が強い存在になってきたこと以上に重要な事実は、大規模であることの有利さ が減少してきたことである」と言われている。このように、中小企業への関心と役割 が高まってきているのである。 2.2.3 今後の中小企業 高度成長期では企業自身に対しての政策がおこなわれてきたが、近年では集積、ネ ットワーク、地域連携、産学官連携など、他企業との新連携を促す政策がおこなわれ、 連携による企業価値の向上が図られている。そして、中小企業庁(2004)『新連携事業 へのニーズについて』によると、半数以上の企業が新連携事業に興味があり、既に取 り組んでいる企業では「新商品開発・製品企画力・技術開発力の向上」や「販路の拡 大、市場開拓能力の拡大」、 「売上げ、付加価値の拡大」となっている(図 2-1,図 2-2)。 また参加したい新連携の相手としては大学や異業種が上げられ、従来とは異なる高付 加価値製品やサービスの開発(プロセス・プロダクト)に期待が寄せられている。また、 ただの連携で終わるだけでなく、国際連携を含む中小企業同士の戦略的結合「自立 的・自律的展開能力6」(茂野,2005)が必要とされている。 特に、金属・機械産業の中小企業が長期的に技術力を向上させていくためには、本. 6. 従来の大企業依存ではなく、外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って展 開していく能力. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 8.

(17) 来ならばビジョンや経営戦略を構築し、それを着実に実行するといった長期的視点が 必要である。しかしながら中小企業は経営資源が稀少である上、日常の業務が繁忙で ある場合が多いゆえに、そうした将来像をじっくりと描けない場合も多い。特に系列 化にある企業の場合には、顧客である親企業が望む技術を開発することを優先してき たため、自主的に技術力向上のためのビジョンを描く機会が狭められてきたともいえ る(弘中,2007)。 これからの中小企業の発展、特に製造業の発展を考える上では、横の繋がりを活か し、新たな市場の創造(価値の追求)を目指すべきであり、自主的に技術力向上のため のビジョンを描く必要性が求められていると考えられる。. 図 2-1. 連携事業取組状況(中小企業庁,2004,新連携事業へのニーズについて). Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 9.

(18) 図 2-2 連携に関心がある理由・背景 (中小企業庁,2004,新連携事業へのニーズについて) 2.2.4 まとめ 日本における中小企業、特に中小製造業は、対外交的経済的側面で重要な役割があ り、国内でも雇用の創出など、日本において重要な役割を担っている。また、経済の 環境変化にも柔軟に対応し、独自の技術力や地域性などを活用し、多様な体系をもっ ている。そして、近年では大企業とも渡り合える環境にあり、集積、ネットワーク、 地域連携、産学官連携など、今後の中小企業像についての議論が多くなされている。 これらに共通して言えることは、技術を活かした横の繋がりを生かした経営であるよ うに思われる。今日の中小製造業は、知識や情報の流動性の拡大に伴い、大企業とも 渡り合える環境になってきている。そして、これからの中小製造業は大企業に従属し た技術力強化でなく、長期的に独自技術力を向上させていくための、ビジョンや経営 戦略を実行する長期的視点が必要である。そのために重要な事柄は、自社の技術を再 認識し、自主的に技術力向上のためのビジョンを描くことであると考えられる。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 10.

(19) 2.3 イノベーション 2.3.1 イノベーションと組織規模 イノベーションとは単に「技術革新」と訳されることが多いが、技術革新に留まら ず、広く経済活動全般において、新しい方法を取り入れて革新していくことである。 Shumpeter(1934)の定義では、新結合を遂行する企業者の役割を重視(企業家、大企 業主義)とされ、(1)新材料/新要素 material/element innovation(2)新製法 process innovation(3)新製品 product innovation(4)新ビジネス business innovation(5)新システム systems innovation が知られている。Shumpeter から 始まったイノベーションの研究は理論的視点、実務的視点など様々な視点から研究さ れている。Shumpeter はその後、創造的破壊7による新陳代謝こそが資本主義社会の躍 動力の源泉であり、革新は大企業組織の中に制度化されると指摘している。 しかし、加護野(1998)によると彼の予想は当たらず、現在の大企業はその内部で製 品やサービス、さらには生産工程のイノベーションを継続する力を持っているが、現 代の流れを変えるような新しい戦略は依然として、辺境の企業によって供給されてい る主張している。大企業が新たなイノベーションを創出できない原因として、 Christensen(2001)はイノベーションを大きく「持続的イノベーション」と「破壊的 イノベーション」に分け、前者は既存の製品の向上するもので、後者は従来とは全く 異なった価値基準を市場にもたらすとしている。業界トップの優良企業の経営は、顧 客の意見に耳を傾け性能の向上を目指すことを慣行としている。そして既存の顧客は、 持続的イノベーションすなわち既存技術の性能向上を好むために、大企業では破壊的 イノベーションが生み出しにくくなる。この解決策として、小規模な市場でも利益を 得られるコスト構造を構築することを指摘している。このことは、中小企業のような 小規模な市場でも利益を得られるコスト構造を構築できる企業に破壊的イノベーシ ョンを遂行する機会があると解釈できる。また、中小製造業におけるイノベーション の源泉は、ものをつくり出す場所、すなわち「現場」そのものである。現場での日々 の努力が「現場力」を高め、その積み重ねがやがて大きなイノベーションを生み出し ていく(日本経済団体連合会,2007 )と言われている。. 7. 創造的破壊とは、非効率な古いものは効率的な新しいものによって駆逐されていくことで経済 発展するという考え方であり、その新陳代謝のプロセスをそう呼んだ。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 11.

(20) 2.3.2 これからのイノベーション 20 世紀は多くのイノベーションが起こり、21世紀では新たなイノベーションを 起こすためのイノベーションが必要とされている。すなわち、プロセスやプロダクト だけでなく、それらを活かすためのビジネスモデルにまでイノベーションの研究がお こなわれている。すなわち、イノベーションのイノベーションである。Chesbrough (2004)によると 20 世紀の終わりに従来の一社だけでイノベーションを起こすクロー ズド・イノベーションは崩壊の危機に直面している。その理由としては熟練労働者の 流動、大企業から中小企業までの知識レベルの向上、ベンチャー・キャピタルの存在 である。言い換えれば、個人知識レベルと流動性の向上である。そこで新しいアプロ ーチとしてオープン・イノベーションが出現した。オープン・イノベーションとは企 業内部と外部のアイデアを有機的に連結させ、価値を創造するという概念である。下 記に両者の違いを簡略的に示す(表 2-1)。 表 2-1. クローズド・イノベーションとオープン・イノベーションの比較 (Chesbrough,2004,p10). また、イノベーション研究の中心には「知識」という概念がある。物理的な財や製 品の配分や取引を中心に考えている限りは知識に注目する必要性は乏しい。しかし、 財や製品が生み出される過程を考えるとなると知識を扱わざるおえなくなる。そこで 起きていることは知識が生み出され、組み合わされ、蓄積され、伝播するといった活 動だからである(一橋大学イノベーション研究センター,2001)。このように、これか らのイノベーションは自社内だけの知識の連携でなく、自社内外との知識の連携をと. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 12.

(21) り、知識を創造、共有、活用していく必要性があるのである。このように、イノベー ションと知識との関わりは多くの研究者によっておこなわれてきており、現在もなお 研究は続けられ深みを増している。しかし、理論と実践では大きな違いがあることは 周知の事実である。一方で、研究機関である大学の研究は昔に比べると産業界の求め るテーマを採用するようになってきている(Thursby・Kemp,2002)。このような背景よ り、本稿ではイノベーションの実務家(コンサルタント)の意見を参考する。実務家で ある富永(2007)によると「イノベーションを推進するのは結局人材でありそれを培う 組織風土であるという古くて新しい課題に正面から向き合い、各社が具体的な手を打 ち始めたのだと思う。職場風土、人材育成、コミュニケーション、バリューマネジメ ント、組織開発、創造性開発などコンサルティングの内容は多岐にわたっている。お そらく、これからの企業の革新競争を左右するのは、マインド・イノベーションの実 行能力であろうとコンサルティングの現場で実感している」と言われている。このマ インド・イノベーションとは、人の心や行動の革新を指す。その他に、従来からある イノベーションの王道である仕事や経営のやり方をプロセス・イノベーション、製品 や事業の革新をプロダクトイ・ノベーションと定義している(図 2-3)。その背景には 従来のシーズ主導のイノベーションから、シーズとニーズ8のイノベーションへの変化 が見られることも考慮しておかなければならない。. 図 2-3 イノベーション・トライアングル(富永,2004,一部修正) すなわち、これからのイノベーションを考える上では、中小企業のような小規模な 市場でも利益を得られるコスト構造を構築すること、従来の有形資産に注目するので はなく、無形資産である知識を有機的に連結させ、価値を創造することが重要である ことがわかる。また、これらのことを実践的観察するには、従来のイノベーションと いう視点でなく、プロセス・プロダクト・マインドという視点で観察すること、特に 8. シーズ(seeds)とニーズ(needs)とは、企業の提供要求と顧客の獲得要求である。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 13.

(22) マインドの革新に重点をあてる必要があると考えられる。 2.3.3 まとめ イノベーションとは Shumpeter の技術的革新の提言から始まり、時代や業種により 数多くの研究がなされ、現在では環境変化を発端とし深みを増してきている。本稿で は Christensen の「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を取り上げ、 時代の移り変わりにより、中小企業をはじめとした小規模な市場でも利益を得られる コスト構造を構築できる組織にこそイノベーションを起こさせる機会があることを 指摘した。また、近年ではイノベーションに必要な知識や情報を社内外から取り入れ る Chesbrough の「オープン・イノベーション」という概念の必要に迫られていること、 イノベーションという新たな価値を創出するためには、特に知識に注目する必要があ り、その中でも改革の知識、すなわちマインド・イノベーションが必要であることが 分かった。マインド・イノベーションとは人の心や行動の革新することで、シーズ主 導のイノベーションからシーズとニーズの両方を考えなければならないという背景 も忘れてはいけない。. 2.4 知識創造理論 2.4.1 ナレッジマネジメントとは? 近年、組織の持つ知識資産の大切さが認識され、知識を経営に活かす方向性、すな わち、IT 技術の活用や、組織論においての展開が見られている。ナレッジマネジメン トは野中の著作を端緒とし、ダベンポートの組織論研究をベースとし、実践的 IT が 根付いている欧米を中心に進展してきた(石林,2006)。また、日本においては大企業 中心に社内でのイントラネットの活用等のナレッジマネジメントの展開が見受けら れる。 ナレッジマネジメントの本質は知識を創造・共有・活用であるが、これまでのナレ ッジマネジメントでは、知識の共有・活用に留まり、ナレッジマネジメンの初期段階 であると考えられる。すなわち、知識管理であり、既存のデータ、情報、知識、知恵 の共有、活用である。 本研究でのナレッジマネジメントは、知識創造理論を基にした経営であり、新しい 知、データ、情報、知識、知恵を創造・共有・活用し続ける経営とする。 また、Earl(2001)は、ナレッジマネジメントの研究において、理論と実務の連動性. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 14.

(23) が低いことを指摘している。本研究では実践的なアクションリサーチを実行し、この 問題点の解決の手がかりを示唆できると考える。 2.4.2 知識とは? 知識は、西欧の伝統的な認識論では、正当化された信なる信念(justified true belief)であると定義されており、野中(2000)らの提唱する知識創造論では、知識は、 個人の信念を真実に向かって正当化するダイナミックで人間的/社会的なプロセス(a dynamic human/social process of justifying personal belief towards the truth) であると定義されている。つまり、信念(思い)を真実に向かって正当化していく人間 的ダイナミックなプロセスそのものが知識であると定義できる(野中・遠山,2006)。ま た、知識の特性として、全人性9、文脈依存性10、多視点性11、可謬性12があるとも述べ ている。この特性により、知識は人の立場により、大きくその存在価値を変えると考 えられる。人により価値が異なるということは、同一の知が、立場や関係性によりデ ータ、情報、知識、知恵となるのである。 また、知識には暗黙知と形式知という二重性を持っており、暗黙知は言語・数式・ 図表で表現されていない主観的な・身体的・経験的な知であり、形式知は言語・数式・ 図表で表現された客観的・理性的・合理的な知である。そして、これらは、相互補完 的で相互に作用し合いながら互いを生み出す性質を持っている。最後に知識の存在論 について触れておく、知識は低い個人のレベルからより高いレベルへダイナミックに らせん状に上昇していくと提唱させている。それゆえ、知識創造を考える上で、個人 個人の知識を軽視してはいけないのである。 2.4.3 知識創造動態モデル 知識創造モデルとして定着しているのが、野中の提唱している「SECI モデル」であ る。SECI モデルは以下の四つのフェイズから成っている(図 2-4)。共通体験を通じて 思いや技能などの暗黙知を共感・獲得する共同化(Socialization)、その暗黙知から 9. 知識とは、論理のみならず信念(価値)や身体化されたスキルを包含した全人的なものである。ま た、知識は主体である人間の能動的な行為を通じて多面的な情報が自分のものになっている。す なわち、一つの情報から得る知識は必ずしも、同一の知識になるとは限らず、個人が情報を自分 のものにする事で知識となる。 10 文脈依存性とは、文脈に依存し、時間・場所・人との動的な関係性といったダイナミックな文 脈の中で、存在する性質を持つ。それゆえに、状況が変化すれば、同じ人が同じ表現を使ったと しても、知識は異なった意味を創発する。 11 多視点性とは、 知識は、相互作用から生み出されるプロセスであるのから、常に視点が変動し、 現象の異なる側面や背景を捉えることが可能になる。 12 可謬性とは、探求には常に誤りがあるという可謬主義があり、 「真理など存在しない」という 真理の相対主義に陥ることなく、それでも絶対の真理ないし理想を求め続けるという立場のこと。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 15.

(24) 明示的な言葉や図表で表現されたコンセプトなどの形式知を創造する表出化 (Externalization)、その新しい形式知と既存の形式知を組み合わせて体系的な形式 知を創造する連結化(Combination)、その体系的な形式知を実際に体験する過程でそ れを使いこなすノウハウや問題に対する違和感などの新たな暗黙知を獲得する内面 化(Internalization)である(梅本,2006)。. 図 2-4. 組織的知識創造の基本原理「SECI モデル」(野中,遠山,2006). この「SECI モデル」を核にさまざまな要因がどのように知識創造を促進するかを示 した動態モデルが知識創造動態モデルである。構想概念は、SECI に方向性を与え SECI を回す力の源泉となる「知識ビジョン」と「駆動目標」、 「対話」と「実践」で表わさ れる SECI プロセス、現実に SECI プロセスの活動がおこなわれる実存空間としての 「場」、SECI プロセスのインプットでありアウトプットである「知識資産」、そして場 の重層的な集積であり知の生態系(エコシステム)としての「環境」の 7 つである(野 中・遠山,2006)。以下に、それぞれの簡略説明を示す(図 2-5)。 ①知識ビジョン:簡単に達成できない理想像であり、過去と現在に意味を与える未来 の理想像。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 16.

(25) ②駆動目標:ビジョンと実践を連動させる具体的な概念、数値目標、行動規範、近未 来の姿 ③対話と④実践:SECI モデルの知識変換、すなわち、「共同化」「表出化」「連結化」 「内面化」を実現する手段。また、東洋的な弁証法。 ⑤場:知識が生み出される基盤 ⑥知識資産:場における知識創造プロセスから生み出させた知識の集約 ⑦環境:相互に有機的な関係を構築している外部の存在. 環境. ビジョン. (生態系). 暗黙知(主観) 知識資産. 対話 駆動目標 実践. 場. (HOW). 図 2-5. (WHY). 形式知(客観). 知識創造動態モデル(野中・遠山,2006). 2.4.4 場とは? 場とは知識を生み出す基盤であると考えられる。SECI の知識スパイラル13を創り出 すためには、異なった特性をもつ知識創造の場が必要であり、組織的な知識創造をお こなうためには、多様な場が有機的に配置されていることが理想とされている。場は 意図的に設定される場合もあれば、自然発生する場合もある。意図的に設定される場 は会議やイントラネット等で、自然発生する場合の場は喫煙空間やインフォーマルな 集いなどである。つまり、場は個人-集団、間接-直接のに軸によって概念的に分類 されることになる(Nonaka・Toyama・Konno,2000)。また、場での相互作用こそ創造され SECI モデルで示される知識創造プロセスは、スパイラルの形を取り、単なるサイクルではな く、相互作用によりスパイラルが回り続ける. 13. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 17.

(26) る知識の質を決定するのである。個別具体的な場は多様併存し重層的に現れるが、一 つひとつの場は単一の意味で完結することなく、個人の移動や場と場との相互作用の なかでそれぞれの場で生成された意味が相互浸透しつつ多様な意味を生成し、一貫し た知識体制を形成していく(野中・遠山,2006)。また、武田(2008)によると、従来から あるような固着した場でなく、新たに創設される流動的な場で、複数の特異性のある 異質な知が混ざり合って、相互に影響を及ぼし、成果が創出されることを知識混合と 定義している。知識混合とは、流動的な場において、異質な知が有機的に、相互に影 響を及ぼしあい、混ざり合って、最終的にある成果が創出されることである。成果に は多くの副産物も生み出される。成果を生み出すには強い意志が必要であるが、副産 物は意識的に生み出されるものではない。また、成果や副産物には有形のものから無 形のものまである。混合の対立概念は、統合である。統合とは、無機的に複数のもの を合体させるのみで、創発性はない。ビジョンや戦略、システムがあることが特徴的 で計画性を持ち、意図的である。また混合に似た概念として融合がある。混合と融合 は似ているが異なる。融合では複数のもの、特に二つのものがとけあい、一つのもの を生み出すのに対して、混合では、あらゆるものが相互作用を繰り返し、一つではな く複数の成果や副産物を創出することで特徴づけられる。このように、知識創造をお こなうには、場が重要な要因であることが分かる。しかし、松行(1999)によると組織 間での知識創造を狙い実践的な相互作用を狙う場合には、それらを促す道具が必須で あると言われている。 2.4.5 まとめ 近年、組織の持つ知識資産の大切さが認識され、知識を経営に活かす方向性、すな わち、IT 技術の活用や、組織論においての展開が見られている。知識とは個人の信念 を真実に向かって正当化するダイナミックで人間的/社会的なプロセス(a dynamic human/social process of justifying personal belief towards the truth)である と定義されている。つまり、信念(思い)を真実に向かって正当化していく人間的ダイ ナミックなプロセスそのものが知識であると定義される。また、近年では知識管理か ら知識創造をおこなう経営の必要性が指摘された。 知識は形式知と暗黙知とに分けられ、相互補完的で相互に作用し合いながら互いを 生み出す性質を持っている。存在論的には個人から創出するため、個人個人の知識の 重要性を認識する必要がある。 知識創造モデルとして知られているモデルに「SECI モデル」があり、知識創造を動 態的に捕らえ、促進要素を示したものが知識創造動態モデルであり、要素として、 「知 識ビジョン」 「駆動目標」 「対話」 「実践」 「場」 「知識資産」 「環境」の7つがある。そ の中でも「場」が知識の質を決定するものであり、有機的に配置される必要性がある。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 18.

(27) そして、場での相互作用を狙い知識混合をおこなうには、知識創造を促す道具が必須 であると言われており、今後の課題となると考えられる。. 2.5. 四画面思考法. 2.5.1 四画面思考法とは 四画面思考法とは、北陸先端科学技術大学院大学近藤研究室で開発・普及されてき たモノで、人が自律的に動くための思考法である。各自のテーマから、現状の姿(現 状の分析)、ありたい姿(長期的な未来像/世のため、人のため)、なりたい姿(近未来 の未来像/自分のため)、実践する姿(未来像実現のための行動/個性的実践リズムの見 える化で潜在能力を引き出し、習慣化する)を描き出し、人が自律的に動くことを助 ける思考法である。 村田(2007)によると、四画面思考法は経済主義と人間主義目標を同時に表現するこ とができる枠組みであり、情緒が異なる人の集まりであっても、「輪」をつくること に貢献している(図 2-6)と述べられている。. 図 2-6. 四画面思考法の概要(近藤,2005). また、四画面思考法を実践的に利用し、中小企業主導の地域ネットワークコーディネ. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 19.

(28) ートの研究をおこなっている砂崎(2007)によると、地域企業ネットワークにおいて、 地域企業ネットワークの組織的知識創造プロセスは、改革の共通基盤で可能となるコ ンセプト交換によって機能すると言われている。すなわち、四画面思考法によるコン セプト交換が組織的知識創造を促進させる。また、四画面思考法を実践的に使用する には四画面と呼ばれるツールを用い、四画面思考法の内容を見える化させることが必 要である。このように四画面として、四画面思考法を見える化することで、個人の思 いを表現し、改革の共通基盤として、多くの企業や組織で実践されている。 近藤(2008)によると、「現在の経済危機のような時代は、次の未来のことを考えて ないと戸惑いが出る。次の未来のことが長期にしろ、近未来にしろ、常に次を考えて おくが大切である。未来を考えておくと戸惑いが出ない。次の未来を考えて、組織力 としてどう対応し、個人としてどうか考える。未来を考えて、今なすべきことは何か 考えて、実践する。この実践アクションが取られるようになるとすばらしい。組織は こう動き、自分はそのためにこう動く。それを自分で自律的に考えることで、自分の ハラに落ちる。それで人と組織の活性化ができて主体的に動ける。4画面思考は自律 的に動くための思考法である」と言われている。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 20.

(29) また、実際に四画面を製作する手順としては、はじめに組織、氏名、テーマを書く。 次に現状の姿を SWOT 分析で考察し、できれば一言で表す。次にありたい姿と、なり たい姿、実践する姿と順に描いてゆく。この場合もそれぞれの姿を一言で表せると良 い。そして全て終わるともう一度全体を眺め、文脈の流れに合っていないところを修 正するというのが四画面の基本的な制作方法である(図 2-7)。. 図 2-7. 四画面作成法の概要(近藤資料より一部修正). 2.5.2 四画面思考法の特徴と問題 先にも述べたが、四画面思考法の特徴として村田(2007)によると、人間主義と経済 主義の対照となる2つの目標の同時表現により、改革の目標(価値)での揺れる思いを 見つめることができる。そして、各自の改革に対する2つの目標(価値)の見える化を おこなうことで、仲間と共有し、周囲が各自の思いに気づくことが出来る雰囲気を普 及する特徴がある。 しかし、異分野間では四画面だけを用いた交流では、四画面思考法の特徴を活かし きれないと考える。理由としては、異分野間であれば相手の改革意識に対するバック グラウンドが大きく異なるからである。それらの解決策として、相互理解を深める新 たなツールの必要性が考えられる。そこで、小林(2008)が提唱する改革提案書を使用 する。小林(2008)によると、四画面を使用した改革提案書は①表紙②目次③学んだこ. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 21.

(30) と④会社概要⑤事業部概要⑥提案目的⑦現状の姿⑧ありたい姿⑨なりたい姿⑩実践 する姿⑪まとめ(四画面)⑫これまでの成果、からなっており事業軸と人間軸の 2 軸思 考での提案書である。また、事業成果が出る前に人間成果がでてくることが認識され、 改革活動を後押し継続することが可能になる提案書であると述べられている。 2.5.3 まとめ 四画面思考法とは人が自律的に動くための思考法である。四画面とは四画面思考法 を見える化し、組織間での知識創造をおこなう際に有効的な働きをするツールである ことがわかった。また、現在の社会では人間主義と経済主義の対照となる2つの目標 を同時表現することにより、改革の目標(価値)で揺れる思いを見つめ合わせることが 重要で、それらを組織間で共有することが組織間知識創造に有効であることがわかっ た。しかし、異分野間では、四画面よりも製作者のバックグラウンドが相互的に理解 できるツールが必要であり、本研究では改革提案書を使用する。. 2.6. 文献レビューまとめ. 本節では、本章(第2章)のこれまでの内容をふまえて、文献レビューのまとめと、 本章の目的である中小製造業の連携において、知識創造を促す仕組みについて考察す ることを目的とする。 本章(第2章)では、まず中小企業の歴史的変化を振り返り、現代の中小企業におい ての政策的視点や、環境変化の視点で、今後の中小企業像を考察した。その中でもこ れからの中小企業の発展、特に製造業の発展を考える上では、横の繋がりを活かし、 新たな市場の創造(価値の追求)を目指すべきであり、自主的に技術力向上のためのビ ジョンを描く必要性が求められていると考えられる。そのために重要な事柄は、自社 の技術を再認識し、自主的に技術力向上のためのビジョンを描くことであることが分 かった。 次に、ものづくりには欠かせないイノベーションについて考察をおこなった。資本 主義社会では創造的破壊による新陳代謝こそが躍動力の源泉であるが、その創造的破 壊を起こすには一般的な大企業でなく、中小企業をはじめとした小規模な市場でも利 益を得られるコスト構造を構築できる組織にこそ創造的破壊、すなわち、破壊的イノ ベーションを起こさせる機会があることが分かった。また、近年ではイノベーション に必要な知識や情報を社内外から取り入れる「オープン・イノベーション」という概 念の必要に迫られていること、イノベーションという新たな価値を創出するためには、. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 22.

(31) 特に知識に注目する必要があり、その中でもマインド・イノベーションに注目する必 要があることが分かった。 そこで近年、組織の持つ知識資産の大切さが認識されている背景の中で、知識を経 営に活かす方向性、すなわち、IT 技術の活用や、組織論においての展開が見られてい る、ナレッジマネジメントを考察した。ナレッジマネジメントは野中の著作を端緒と し、ダベンポートの組織論研究をベースとし、実践的 IT が根付いている欧米を中心 に進展してきたことが分かった。しかし、実践的な活用では知識創造よりも知識管理 に留まっている事例が多く確認された。知識は形式知と暗黙知とに分けられ、相互補 完的で相互に作用し合いながら互いを生み出す性質を持っている。存在論的には個人 から創出するため、個人個人の知識の重要性を認識する必要がある。知識創造モデル として知られているモデルに「SECI モデル」があり、知識創造を動態的に捕らえ、促 進要素を示したものが知識創造動態モデルであり、要素として、 「知識ビジョン」 「駆 動目標」「対話」「実践」「場」「知識資産」「環境」の7つがある。その中でも「場」 が知識の質を決定するものであり、有機的に配置される必要性がある。そして、場で の相互作用おこない知識混合を狙うには、知識創造を促す道具が必須であることが分 かった。 最後に、知識創造を促すツール、すなわち、四画面について考察した。四画面とは 四画面思考法を見える化し、組織間での知識創造をおこなう際に有効的な働きをする ツールである。また、四画面思考法とは人が自律的に動くための思考法であることが 分かった。また、現在の社会では人間主義と経済主義の対照となる2つの目標を同時 表現することにより、改革の目標(価値)で揺れる思いを見つめ合わせることが重要で、 それらを組織間で共有することが組織間知識創造に有効であることがわかった。しか し、異分野間では、四画面よりも製作者のバックグラウンドが相互的に理解できる改 革提案書を利用できると考えた。 中小製造業の今後の活躍のためには、自社の技術を再認識し、自主的に技術力向上 のためのビジョンを描くことである。また、それらをより高めるためには企業間での 知識を連携させ、知識混合をおこなうための場の設置が必要であると考えられた。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 23.

(32) 2.7. 仮説. 本節では、文献レビューに基づき、リサーチ・クエスチョンに答える形で仮説を提 示する。そしてメジャー・リサーチ・クエスチョンに答える形で、中小製造業の連携に おける知識創造を促す仕組み(能美ものづくり改革塾を通して)を仮説モデルとして 示す。 SRQ1.なぜ中小企業における改革はうまくいかないのか? 仮説1:新たな社会システムの変化(環境変化)への遅れ、すなわち、単一企業内での 改革は、知識不足が原因でうまくいかない。また、企業連携における改革でも、プロ セスやプロダクトへの注目は集まっているが、個人個人のマインドを変化させる改革 を行っていないので、現在の中小企業における改革はうまくいかない。. SRQ2.知識創造を活用した組織改革を推進していく上で何が必要なのか? 仮説 2:横の繋がりを意識した、企業内部と企業外部との連携がおこなえる場。また、 知識創造を促進するツール、すなわち、四画面思考法が必要である。しかし、より促 進するには関連者のバックグラウンドを知ることが出来る改革提案書が必要である。. SRQ3.知識創造を活用した組織改革では何が改革されるのか? 仮説 3:自社の技術を再認識し、自主的に技術力向上のためのビジョンを描き、場で 相互的に認識しあうことで新たなビジョンが創造され、イノベーションの要素である、 プロセス、プロダクト、マインドが改革される。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 24.

(33) MRQ:能美ものづくり改革塾ではどう知識創造が活用させるか? 仮説:仮説モデル(図 2-8):既存のネットワークを利用し組合内で横の連携をおこな い、知識創造促進ツールである改革提案書を用いることで、参加者同士の知識が相互 的に作用しあい、技術を軸とした組織改革のための知識を用いて創られるビジョン、 すなわち、改革知識ビジョンが創造される。改革知識ビジョンとは改革のための知識 を用い創造されたビジョンである。. 図 2-8. 能美ものづくり改革塾における知識創造の仮説モデル. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 25.

(34) 第. 3. 章. アクションリサーチ. ―能美ものづくり改革塾を通して―. 3.1. はじめに. 本節では、本章(第 3 章)のアクションリサーチの目的と構成を確認することを目的 とする。 第1章の序論では、近年の企業を取り巻く環境変化があり、新たな社会経済システ ム展望のもとで、新たな中小企業連携の必要性があること、知識社会への移行を認識 した。一方でこれまでの企業連携では形式知(プロセス、プロダクト)の連携がなされ ているが、改革に必要なマインドといった暗黙知の連携がなされていないことを本研 究の問題認識とした。 この問題認識を解決するために、第 2 章では文献レビューとして、中小企業の歴史 的変遷を振り返り、現代の中小企業においての政策的視点や、環境変化の視点で、今 後の中小企業像を考察した。そして、ものづくりには欠かせないイノベーションにつ いて文献レビューをおこない、中小企業をはじめとした小規模な市場でも利益を得ら れるコスト構造を構築できる組織にこそイノベーションの機会があること、イノベー ションを起こすには外部との関係を充実させることなどが分かった。そして、イノベ ーションと関わりが深い知識についてレビューをおこない、実践的な知識創造には四 画面思考法が有効であることを示した。これらのことから、中小製造業の今後の活躍 のためには、自社の技術を再認識し、自主的に技術力向上のためのビジョンを描くこ と。また、それらをより高めるためには企業間での知識を連携させ、知識混合がおこ る場の設置が必要であると考えた。 本章の構成は、次節(3.2 節)で、能美機器協同組合と能美ものづくり改革塾の成り 立ちを述べた後、本章の目的を達成するための示唆を含むと考えられる、アクション リサーチ(3.3 節)について述べる。アクションリサーチの方法は、問題点の明確化、 問題現状の明確化、変化のためのプラン、検証実践、成果の評価とプロセスの考察、 理論の照合と一般化・普及を基本サイクルとする。また、方法論としては、 「実践型研 究」を用い、研究者のポジションとしては、相互的協力関係を視野に置きつつも、時 間的制約のため、内部者と協同する外部者として行動する(中村,2008)。そして、その 過程において、塾参加者、参加企業のトップ、関連組織へのインタビューをおこなっ. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 26.

(35) た。また、能美ものづくり改革塾で使用した資料や、参加者が作成した資料、関連組 織の運営活動なども資料として収集し、定性的調査・分析14をおこなった。. 3.2. 能美機器協同組合と能美ものづくり改革塾. 3.2.1 能美機器協同組合 本研究では、日本のものづくりの基盤である鉄工関連に注目し、歴史的に北前船を 航路とし経済・産業の発展をみた地域連携の基礎がある北陸地域にて、長年企業活動 をおこなっている中小製造業の連携組織(組合)を対象として、知識創造の理論を現場 で活用し、フィードバックから中小製造業の連携において、知識創造を促す仕組みの 構築、実践上の問題解決についての実務的提言を行う。 そこで、まず、能美機器協同組合についての説明をおこなう。能美機器協同組合は 昭和 27 年に設立され、石川県の手取側流域一市1町および周辺に位置する事業所で構 成されている。組織構成としては、機械加工、樹脂成形、表面処理・熱処理、治具金型 木型、鍛造、鋳造、板金プレス、溶接・溶断であり、石川県内の鉄工グループでも3番 目の歴史をもつ組合である。業種の幅が広く、伝統があり、鉄工分野でありながらラ イバル関係になく共存している。しかし、SWOT 分析(図 3-1)、インタビュー、組合資 料(通常総会資料等)により、多くの地方中小企業組合に見られるように、資金繰りに 苦しく、企業間連携ではトップ同士での交流や研修などのイベントはあるが、企業間 での知識の交流はなされていない現状が確認された。. 14. 対象の質的な側面に注目した分析であり、その対をなす概念として量的な側面に注目する定量 的分析がある。. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 27.

(36) 図 3-1 能美機器協同組合の SWOT 分析15 3.2.2 能美ものづくり改革塾について 上記の事柄より、組合組織の既存ネットワークと施設を利用し、知識創造を促す場 を作り出すことで、参加企業の改革実践支援をおこなうことを目的とした「能美もの づくり改革塾」を開講した。能美ものづくり改革塾開講のきっかけは、能美機器協同 組合が開催しているイベントに北陸先端科学技術大学院大学の近藤教授が、基調講演 として招かれ、そこでの出会いが今回の塾設立のきっかけである。また、塾の体制は、 第一期理事長 南雅雄氏(㈱根上工作所 代表取締役社長)、講師 近藤氏(北陸先端科 学技術大学院大学 教授)、アシスタント山本博康。第二期理事長 本裕一氏(㈱本螺 子製作所 代表取締役社長)、講師 近藤氏(北陸先端科学技術大学院大学 教授)、ア シスタント山本博康、塾運営管理 奥村幸男氏(能美機器協同組合 事務局長)である。 研究者(山本博康)の立ち位置としては、上記ではアシスタントだが、タームにより若 干ことなるため、各ターム別で随時述べる。 能美ものづくり改革塾での参加企業や講義内容についての詳細は、アクションリサ ーチ(3.3 節)について述べる。. SWOT 分析のテーマは「地域と会員の発展のために」であり、分析者は能美機器協同組合の理 事長。 15. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 28.

(37) 3.3. アクションリサーチ. 3.3.1 はじめに アクションリサーチの方法は、問題点の明確化、問題現状の明確化、変化のための プラン、検証実践、成果の評価とプロセスの考察、理論の照合と一般化・普及を基本 サイクルとする。また、方法論としては、 「実践型研究」を用い、研究者のポジション としては、相互的協力関係を視野に置きつつも、時間的制約のため、内部者と協同す る外部者として行動する(表 3-1)。 表 3-1. アクションリサーチにおける研究者のポジションと特徴 (中村,2008)より、一部抜粋. Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 29.

(38) 今回のアクションリサーチでは、期間を第1ターム、第2ターム、第 3 タームの三段 階に分け、問題点→やったこと→成果→分かったこと→問題点→・・・→理論との照 合、といったサイクルを使用する(図 3-2)。. 図 3-2 アクションリサーチの反復的サイクル (Coghan&Brannick,2005;渡辺,2000,Freedman,2006 を参考に筆者が作成). Copyright Ⓒ 2009 by Hiroyasu Yamamoto. 30.

図  目  次 図 1-1  研究の構成  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .   5  図 2-1  連携事業取組状況(中小企業庁,2004,新連携事業へのニーズについて)   .  9  図 2-2  連携に関心がある理由・背景  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .10  図 2-3  イノベーション・トライアングル  .  .  .  .  .  .  .  .  .13  図 2-4  組織的知識創造の基本原理「SECI モデル」
表  目  次 表 2-1  クローズド・イノベーションとオープン・イノベーションの比較  .  . 12  表 3-1  アクションリサーチにおける研究者のポジションと特徴.  .  .  . 29  表 3-2  第一期能美ものづくり改革塾講義内容  .  .  .  .  .  .  .   31  表 3-3  第一期生改革提案書の内容  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 32  表 3-4  第一期 FP 発表者に対してのアンケート.  .  .  .  .  .  .
図 2-2  連携に関心がある理由・背景  (中小企業庁,2004,新連携事業へのニーズについて)  2.2.4 まとめ    日本における中小企業、特に中小製造業は、対外交的経済的側面で重要な役割があ り、国内でも雇用の創出など、日本において重要な役割を担っている。また、経済の 環境変化にも柔軟に対応し、独自の技術力や地域性などを活用し、多様な体系をもっ ている。そして、近年では大企業とも渡り合える環境にあり、集積、ネットワーク、 地域連携、産学官連携など、今後の中小企業像についての議論が多くなされている
図 3-1 能美機器協同組合の SWOT 分析 15 3.2.2  能美ものづくり改革塾について  上記の事柄より、組合組織の既存ネットワークと施設を利用し、知識創造を促す場 を作り出すことで、参加企業の改革実践支援をおこなうことを目的とした「能美もの づくり改革塾」を開講した。能美ものづくり改革塾開講のきっかけは、能美機器協同 組合が開催しているイベントに北陸先端科学技術大学院大学の近藤教授が、基調講演 として招かれ、そこでの出会いが今回の塾設立のきっかけである。また、塾の体制は、 第一期理事長  南雅雄
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