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バイラルメディアによる情報拡散を行うユーザの分析

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Academic year: 2021

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(1)

バイラルメディアによる情報拡散を行うユーザの分

著者

土方 嘉徳

雑誌名

商学論究

65

3

ページ

1-20

発行年

2018-03-10

URL

http://hdl.handle.net/10236/00026884

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 はじめに

近年、 バイラルメディアという新しいタイプのメディアが注目を集めてい る。 バイラルメディアは Twitter や Facebook などのソーシャルメディアで 拡散されることを目的とした、 動画や画像を中心に構成されたメディアであ る。 インパクトのある動画や画像を集めて整理し、 目を惹くタイトルや簡単 な解説文を添え、 多くの人に興味を持ってもらえるような記事を配信してい 1

− 1 − 要 旨 近年、 ニュースなどの記事の拡散を目的としたバイラルメディアが注目 を集めている。 バイラルメディアは、 インパクトのある動画や画像を集め て、 目を惹くタイトルや簡単な解説を添えることで、 多くの人に興味を持っ てもらうことを狙っている。 本研究では、 ソーシャルメディア上でバイラ ルメディアの記事を共有するユーザと、 同じコンテンツであるが元のメディ アの記事を共有するユーザの比較を行う。 特にユーザの特徴として、 人気 度、 コミュニケーション指向、 情報拡散の積極さ、 情報への反応速度の4 点に注目する。 日本、 アメリカ、 インドの3ケ国で分析を行う。 分析の結 果、 バイラルメディアを利用するユーザは新しい情報発信への感度が高く、 積極的に情報を拡散する傾向があることが分かった。 キーワード:バイラルメディア (viral media)、 キュレーションサイト (curation service)、 ユーザ行動分析 (user behavior analysis)、 情 報 拡 散 (information diffusion) 、 異 文 化 間 分 析 (cross-cultural analysis)

バイラルメディアによる

情報拡散を行うユーザの分析

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る。 記事は、 オリジナルのコンテンツを配信することもあるが、 既存のニュー スメディアのニュース記事、 ブログサイトのブログ記事、 動画共有サイト上 の動画などを収集してまとめた (キュレーションした) ものが多い。 記事を 見たユーザにソーシャルメディア上で共有してもらうことで、 バイラルメディ アのコンテンツはインターネットで拡散される。 バイラルメディアの一般的な記事構成は分かりやすいキャッチコピーに大 きな目立つシェアボタン、 収集したコンテンツ、 そしてコンテンツの簡単な 説明となっている (第1図参照)。 多くのユーザの興味を惹くことと、 多く のユーザに気軽にシェアしてもらうことが、 暗黙のデザインポリシーとなっ ている。 バイラルメディアの記事を気に入ったユーザはシェアボタンを押し、 ソーシャルメディアにバイラルメディアの記事の URL を共有する。 ソーシャ ルメディア上に共有された記事を閲覧した別のユーザが再び共有を行い、 バ イラルメディアの記事は拡散されていく。 従来のメディアは Google や Yahoo などの検索サイトからユーザを集客し ているのに対し、 バイラルメディアはユーザの大部分をソーシャルメディア 第1図 バイラルメディアの記事の例 キャッチコピー 大きなシェアボタン コンテンツの簡単な説明 収集したコンテンツ

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から集めているという特徴がある。 例えば大規模ニュースメディアにおいて は、 検索エンジンのサイトからやってくるユーザは約50%であるのに対し1) バイラルメディアである grape はソーシャルメディアからアクセスするユー ザが全体の82%にも及ぶ2) バイラルメディアの記事は、 多くの場合、 既存コンテンツを収集してまと めたものであるため、 オリジナリティという点では既存コンテンツに及ばな い。 しかし、 分かりやすいキャッチコピーや話題になりやすいコメントをつ けることで、 ソーシャルメディアで共有したくなる記事になっているとも考 えられる。 また、 記事には大きなシェアボタンがついており、 ユーザが気軽 にシェアできるようにしているともいえる。 このような特徴から、 同じコン テンツであっても、 バイラルメディアの記事を拡散するユーザと、 そのコン テンツのオリジナルの記事や動画を拡散するユーザでは、 性質が異なる可能 性がある。 そこで本研究では、 記事の拡散を、 その記事の URL を含む投稿 (ソーシャ ルメディア上での投稿) とみなし、 バイラルメディアの記事の URL をソー シャルメディア上で共有するユーザと、 バイラルメディアの記事で紹介され ている情報元のコンテンツの URL をソーシャルメディア上で共有するユー ザを比較し、 分析を行う。 ここで、 ソーシャルメディア上でのユーザの行動は国 (文化) によって異 なると言われている (Trepte and Masur 2012, Park, Baek and Cha 2014)。 例 えばアメリカの学生はソーシャルメディアを通じて新しい友人を作ることに 積極的だが、 韓国の学生はソーシャルメディアを通じて有用な情報や社会的 支援を求める傾向がある (Kim, Sohn and Choi 2011)。 そのため、 文化によ る影響を考慮するために、 複数の国で調査を行うべきであると考える。 文化 間比較を行う際は、 異なる文化に属する国を選択することが適切である。 本

1) 「33の業界別平均検索流入 (SEO+PPC) 割合まとめ」、 http : // www.ginzametrics.jp / blog / referrer-pattern-average [Accessed 13 August 2017]

2) 「バイラルメディア 「grape」、 本サービス開始後、 1ヶ月で110万 PV を達成」、 http : // www.dreamnews.jp / press / 0000092799 / [Accessed 13 August 2017]

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研究では、 ユーザの比較を日本、 アメリカ、 インドで行う。 本論文は以下のように構成されている。 まず第2章で関連研究について述 べ、 本研究の立ち位置を明らかにする。 次に第3章で調査方法と調査を行う ために収集したデータセットについて述べる。 その後、 第4章で結果、 第5 章で考察を述べる。 最後に、 第6章で本研究のまとめを行う。

 関連研究

本研究の対象であるバイラルメディアは比較的新しいサービスであり、 バ イラルメディアに注目した研究はまだ行われていない。 そこで, ソーシャル メディアにおける情報共有と情報拡散に関する研究を関連研究として紹介す る。 2.1 ソーシャルメディアの利用に関する研究 ユーザは何のためにソーシャルメディアを使用するのか (Ellison, Steineld and Lampe 2006) やどのような投稿がされているかなど (Zhao and Rosson 2009)、 ソーシャルメディアの利用に関する研究は多数行われている (Kwak et, al. 2010)。 Java らは Twitter に投稿されたツイートを Daily Chatter (日々 の出来事に関する投稿)、 Conversations (ユーザ間で行われる会話)、 Sharing information / URLs (URL を含む投稿)、 Reporting news (RSS フィードを用 いた天気やニュースの情報を共有する投稿) の4つに分類した ( Java et al. 2007)。 Naaman らは Twitter のユーザには Meformers (自分についての投稿 が多いユーザ) と Informers (情報共有のための投稿が多いユーザ) の2タ イプが居ることを示した (Naaman, Boase and Lai 2010)。

2.2 情報拡散におけるオピニオン・リーダーに関する研究

マスメディアが発信する情報の拡散について、 それらの情報は直接拡散さ れるのではなくマスメディアが発信した情報を見たオピニオン・リーダーの 発言を通して拡散されるという two-step flow モデルの仮説が古くから提唱

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されている (Katz and Lazarsfeld 1966, Watts and Dodds 2007)。 近年では Twitter 上においてもこれらの理論の検証が行われている (Park 2013, Wu et al. 2011)。 Wu らは、 多くのユーザのフォローの対象は全体のわずか0.05% のオピニオン・リーダー層に集まっていることと、 オピニオン・リーダー層 を仲介することで情報が拡散されていることを発見した (Wu et al. 2011)。 Hu らによるとソーシャルメディアにおけるニュースの拡散には、 重要な役 割を果たす3種類のグループが存在しており、 それはマスメディア、 メディ ア関係者、 そして有名人であると主張している (Hu et al. 2012)。 Choi は、 ユーザがオピニオン・リーダーかどうかをロジスティック回帰により判定す る研究を行った (Choi 2015)。 その結果、 Twitter にツイートする回数が多 いユーザと自身のツイートがリツイート (自分か他ユーザの過去のツイート を再投稿すること) される回数が多いユーザは、 オピニオン・リーダーであ る可能性が高いことを発見した。 2.3 情報拡散の予測の研究 ソーシャルメディアにおいて、 情報がどれだけ拡散されるかについての研 究 も 活 発 に 行 わ れ て い る (Garg, Smith and Telang 2011, Macskassy and Michelson 2011)。 Yang と Counts は Twitter におけるリプライ (特定のユー ザ宛のメッセージ) に含まれるメッセージの拡散の速度、 規模、 深さの予測 を行った (Yang and Counts 2010)。 この研究では、 拡散を行っているユー ザの普段の投稿の数、 リプライの数、 そしてリプライの割合が、 そのユーザ が投稿した情報の拡散の予測に役立つことを発見している。 Romero らは Twitter におけるハッシュタグ (カテゴリをつけて検索しやすくするため投 稿に付加するタグ) の拡散について調査を行っている (Romero, Meeder, and Kleinberg 2011)。 ハッシュタグのジャンルによって拡散の様子は異なって おり、 例えばゲームに関するハッシュタグはユーザが見た回数に比例して拡 散が行われる確率が上昇するが、 政治に関するハッシュタグでは、 見た回数 が一定数を越えると拡散が行われる確率が一気に上昇することを示した。

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Xiong らは、 Twitter におけるリツイート機能を用いた情報の拡散の研究を 行っている (Xiong et al. 2012)。 彼らは、 ユーザのコンテンツに対する興味 は有限であり、 全てのコンテンツをリツイートするわけではないことを発見 した。 また、 ユーザはリツイートしたくなるような魅力的なコンテンツを2 つ同時に受け取った場合、 片方を選んでリツイートすると決めると、 他方は リツイートしないことを示した。 2.4 本研究の位置づけ これまでの研究ではネットワーク全体、 あるいはその部分での情報拡散に 着目してきたが、 個人が実際に情報を拡散するか否かはその人の特性によっ て異なる可能性がある。 より効率的に情報拡散させるには、 このような個人 の特性を理解し、 それに合わせて拡散したい情報を提示する必要があると考 える。 個人がどのような情報を拡散させるかには、 対象となる人と情報の両 方について様々な特性が影響していると考えられるが、 本研究では情報源の 違いに注目し、 それを拡散させるユーザの特性を分析する。

 調査方法

バイラルメディアの記事を共有するユーザと元コンテンツを共有するユー ザの比較を行うにあたって、 調査の方針について説明する。 また、 調査の対 象となるメディアの選択理由、 分析に用いるデータセットの作成方法、 そし て比較の際に考慮するユーザ特徴の指標について説明を行う。 3.1 調査の方針 ユーザの分析を行う際に、 以下の4つのユーザ特徴に注目する。 人気度 ソーシャルメディア上で人気の高いユーザは信頼性の高い情報を投稿して いることが報告されている (Liao, et l. 2012)。 また、 信頼性を上げるにはオ

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リジナルのコンテンツを投稿することが重要であると言われている (Liao, et l. 2012)。 そのため, ソーシャルメディア上で人気のあるユーザは、 バイ ラルメディアの記事ではなく、 その情報元のメディアのコンテンツを拡散し ていると考えられる。 コミュニケーション指向 バイラルメディアは、 ソーシャルメディア上で、 直観的で万人受けしやす くまとめた記事を配信している。 直観的で万人受けしやすい記事は多くのユー ザが興味を持つ内容であると考えられ、 日常の交流の中で話題にしやすいと 予想される。 よって、 バイラルメディアの記事はコミュニケーションを重視 するユーザに拡散されているのかもしれない。 情報拡散の積極さ 情報拡散を積極的に行うユーザは、 ソーシャルメディアでのシェアボタン が大きく表示されているバイラルメディアの記事を好んで拡散するかもしれ ない。 情報への反応速度 バイラルメディアの記事で紹介されるコンテンツは人の手で選別されてい るため、 質がある程度保証されていると考えられる。 そのため、 バイラルメ ディアを利用するユーザは記事が公開されると、 そのコンテンツが周囲で評 価されているか気にすることなく即座に拡散するのではないかと考えられる。 また、 調査を行う文化 (国) の選択についても述べる。 情報の共有行動に影 響を及ぼす可能性のある文化的特徴の一つとして、 集団主義あるいは個人主 義の区別がある。 これらの情報共有に及ぼす影響についての知見はまだない ものの、 これらが自己開示に及ぼす影響は広く研究されている (Chen 1995, Asai and Barnlund 1998, Ting-Toomey 1991, Barnlund 1989])。 また過去の研 究によれば、 集団主義は集団への帰属意識が強く同調性を重視する傾向であ

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る一方、 個人主義は独自性や自立性を重視し、 識別性のあるコミュニケーショ ンを好む傾向がある (Hall and Hall 1989)。 そこで本研究では、 集団主義の 国の一つとして日本、 個人主義の国の一つとしてアメリカを選択した。 また、 この2つの国は、 人種や民族という観点において異なる国であり、 文化間比 較を行う価値があると考えている。 一方、 上記の2つの国は先進国であるという共通点を持つ。 そこで、 これ らとは異なる経済新興国の代表としてインドを選択する。 過去の研究による と、 数ある人工統計学的特徴のうち HDI (人間開発指数) は、 自己開示を 行うユーザの予測に強い説明変数になることを発見している (Reed et al. 2016)。 HDI は、 保健、 教育、 所得の3つの観点における達成度を数値化し たもので、 その国の発展の度合いと相関が高い。 2015年における日本とアメ リカにおける HDI は、 それぞれ0.90と0.92と世界の国々の中でも上位に位置 づけられるが、 インドは0.62でありまだ高くない3)。 また、 Hofstede によれ ば、 インドは集団主義に分類されるという点で日本と共通点を持つが、 民族 の多様性という観点で日本とは大きく異なる (Hofstede 2017)。 上記に示した文化的な違いから、 日本とアメリカ、 インドの3か国を選択 する。 3.2 対象メディア 対象とするバイラルメディアとして、 日本では grape4)を、 アメリカでは BuzzFeed5)を、 インドでは ScoopWhoop6)を選択した。 現在バイラルメディ アは大小様々なものが存在する。 本研究では、 多くの情報伝搬の事例を獲得 できると思われる各国で最も人気のあるものを選んだ。 本研究で対象とするソーシャルメディアは Twitter とする。 バイラルメディ ア の 記 事 の 共 有 は 主 に Twitter と Facebook で 活 発 に 行 わ れ て い る が 、

3) http : // www.globalnote.jp / post-802.html [Accessed 13 August 2017] 4) http : // grapee.jp /

5) http : // www.buzzfeed.com / 6) https : // www.scoopwhoop.com /

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Facebook では API の仕様により承諾を得たユーザからしか共有情報を得る ことができない。 一方 Twitter は、 ユーザが非公開の設定にしていない限り、 ユーザのプロフィール情報やそのツイートを獲得することができる。 多数の ユーザを調査対象とするため、 対象のソーシャルメディアを Twitter とする。 バイラルメディアの比較対象とする情報元のメディアは、 YouTube を選択 する。 バイラルメディアで紹介されるコンテンツの中でも、 動画コンテンツ は数が多い。 その動画コンテンツの多くは YouTube にアップロードされて いる。 本研究の調査では、 バイラルメディアの記事を Twitter で共有したユーザ と、 その記事で紹介されている YouTube の動画を Twitter で共有したユー ザを比較する。 3.3 データセット 本調査では、 YouTube の動画の URL を含むツイートを行ったユーザ (以 降、 YouTube ユーザ) と、 その動画を題材にしたバイラルメディアの記事 の URL を含むツイートを行ったユーザ (以降、 バイラルメディアユーザ) を比較する。 Twitter の検索 API を用いて、 バイラルメディアの記事の URL か YouTube の動画の URL を含むツイートを取得する。 また、 それらのツイー トを行ったユーザのフォロー数、 フォロワー数、 累計ツイート数、 Twitter を開始してからの日数、 直近3,200件のツイートを取得した。 直近3,200件と したのは、 Twitter の API の制限によるものである。 ただし、 これらの情報 はユーザ全員に対して公開されているもののみを取得対象とした。 Twitter の検索 API では直近1週間のツイートしか取得できないため、 1 週間以内に投稿された動画を紹介した記事のみを収集の対象とした。 2016年 3月8日から2016年9月8日の6ヶ月間の記事を収集した。 バイラルメディ アで収集した記事の数と、 その記事の URL を含むツイートを行ったユーザ 数、 その記事で紹介されている YouTube の動画の URL を含むツイートを行っ たユーザ数は、 grape で76記事、 4,832人、 5,829人、 BuzzFeed で108記事、

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5,633人、 15,836人、 ScoopWhoop で42記事、 658人、 2,412人であった。 日本、 アメリカ、 インドのユーザかどうかの判定については、 日本のユー ザは言語設定が日本語、 アメリカのユーザは言語設定が英語でタイムゾーン がアメリカ、 インドのユーザは言語設定が英語でタイムゾーンがインドとい う基準で選定した。 3.4 ユーザ特徴の指標 4つのユーザの特徴に対する具体的な指標を説明する。 人気度 人気度には、 フォローフォロワー比と、 一日あたりのリストに登録される 数を用いる (Bakshy, et al. 2011)。 リストとは、 Twitter が提供する機能の 一つである。 リストを用いると、 ユーザは特定のユーザを選び、 そのユーザ だけで構成されるタイムラインを作成することができる。 フォローフォロワー 比 FF は、 フォロー数 follows とフォロワー数 followers から下記の式で算出さ れる。 FF=followers / follows この値が高いユーザは、 他のユーザを積極的にフォローしなくても、 多く のフォロワーを獲得できる傾向にあると言える (Ghosh, et al. 2012)。 つま り、 フォロワーにとって有益な情報を発信し、 フォロワーの関心を集めるユー ザであると言える (Hofman, Mason and Watts 2011)。 ユーザがリストに入 れられている数を Lists、 利用日数を Span とし、 一日あたりのリスト登録さ

れる数 Listsdayを計算する。

Listsday=Lists / Span

コミュニケーション指向

コミュニケーション指向には、 ツイート中のリプライの割合を用いる (Kwak, et al. 2010)。 リプライとは、 指定したユーザに宛てて送られるツイー

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トである。 取得したユーザのツイートの数 Tweets に対するリプライ数

Replies の割合 Rreplyを以下の計算式により算出した。

Rreply=Replies / Tweets

情報拡散の積極さ

情報拡散の積極さには、 ツイートにハッシュタグが含まれる割合、 ツイー トに URL が含まれる割合、 ツイート中のリツイートの割合、 そしてツイー ト中の引用の割合から判定する (Cha et al. 2010)。 Twitter では、 ハッシュ タグを利用すると、 特定の話題に関するツイートをフォロワー以外のユーザ にも検索してもらいやすくできる。 また、 情報の詳細は別の Web ページな どで提供されることが多く、 ツイートにはその URL のみ含むことも多い。 リツイート (RT) とは、 ツイートを再投稿することであり、 自分が投稿し たツイートだけでなく他のユーザのツイートもリツイート可能である。 引用 とは、 他のユーザのツイートに自身のコメントを付与して投稿することであ る。 取得したユーザのツイートの数 Tweets に対する、 ハッシュタグが含ま れるツイートの数 Hashtags、 URL が含まれるツイートの数 URLs、 リツイー

ト数 Retweets、 引用の数 Quotes のそれぞれの割合 Rtags、 Rurl、 Rrt、 Rqtを以下

の計算式により算出した。

Rtags=Hashtags / Tweets

Rurl=URLs / Tweets

Rrt=Retweets / Tweets

Rqt=Quotes / Tweets

情報への反応速度

情報への反応速度には、 元コンテンツあるいはバイラルメディアの記事の

投稿時刻 timecontentとそれを共有するツイートが投稿された時刻 timetweetとの

差t [hour] を利用する (Tan, Friggeri and Adamic 2016)。

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 調査結果

ユーザの特徴に関する指標について、 各国ごとにバイラルメディアユーザ と YouTube ユーザの比較を行った。 各指標のデータの分布を確認したとこ ろ、 これらは正規分布であるとは言えないことが分かった (第2図(a) と 第2図(b) に例を示す)。 そこで以降の分析では中央値を用いる。 有意差の 確認にはマン・ホイットニーの U 検定を用いる。 第1表に4つのユーザの特徴に関するそれぞれの指標について、 日本、 ア メリカ、 インドのバイラルメディアユーザの中央値と、 YouTube ユーザの 中央値を記す。 太文字で表記されている部分は、 それぞれの国で各ユーザ群 のデータの分布について、 有意差があることを示すものである ( p<.05)。 人気度 第1表より、 人気度に関するそれぞれの指標 (FF, Listsday) について、 日 本、 アメリカ、 インドそれぞれの国において、 バイラルメディアユーザと YouTube ユーザにおいて、 有意差があることが分かる ( p<.05)。 インドに おいては、 バイラルメディアユーザの方が YouTube ユーザと比較して人気 度が高く、 日本とアメリカでは、 YouTube ユーザの方がバイラルメディア 第2図 データの分布の例 (a) FF (日本のバイラルメディアユーザ) (b)t (日本のバイラルメディアユーザ) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 0 20 40 60 80 100 0 .00 .20 .40 .60 .81 .0 密度 0 .00 0 .01 0 .02 0 .03 0 .04 0 .05 密度 時間

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ユーザよりも人気度が高い。 コミュニケーション指向 同じく第1表より、 コミュニケーション指向に関する指標 (Rreply) につい て、 日本、 アメリカ、 インドそれぞれの国において、 バイラルメディアユー ザと YouTube ユーザの間で有意差があった ( p<.05)。 日本においては、 バ イラルメディアユーザの方が YouTube ユーザと比較してコミュニケーショ ンを好む傾向が高く、 アメリカとインドでは、 YouTube ユーザの方がバイ ラルメディアユーザよりもコミュニケーションを好む傾向が高い結果となっ た。 情報拡散の積極さ 第1表より、 情報拡散の積極さに関するそれぞれの指標 (Rtags、 Rurl、 Rrt、 Rqt) について、 日本におけるツイート中の RT の割合 (Rrt) を除いた全ての 指標で、 バイラルメディアユーザと YouTube ユーザとの間で有意差があっ た ( p<.05)。 日本、 アメリカ、 インドの3ヶ国の全ての国においてバイラ ルメディアユーザの方が YouTube ユーザよりも情報拡散に積極的であるこ とが分かる。 情報への反応速度 第1表より、 情報への反応速度に関する指標 (t) について、 日本、 アメ リカ、 インドそれぞれの国で、 バイラルメディアユーザと YouTube ユーザ の間で有意差があることが分かった ( p<.05)。 全ての国において、 バイラ ルメディアユーザの方が YouTube ユーザと比較して情報への反応速度が早 い結果となった。

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 考察

情報拡散の積極さと情報への反応速度 日本、 アメリカ、 インドの3ヶ国に共通して情報への反応速度は、 バイラ ルメディアユーザが YouTube ユーザよりも早いという結果であった。 中で もインドは他の国に比べて、 反応速度が突出して高かった。 情報拡散の積極 さに関しても3ヶ国共に、 バイラルメディアユーザが YouTube ユーザより も高かった。 よって、 バイラルメディアユーザは新しい情報発信に対する感 度が高く、 積極的に情報を拡散する傾向があると言える。 この行動の違いに は、 以下のような理由が考えられる。 一つ目は、 バイラルメディアには、 ソー シャルメディアへのシェアボタンが大きくレイアウトされており、 情報共有 行動を起こすリマインダーのような役割を果たすことである。 二つ目は、 バ イラルメディアでは何らかの元コンテンツから記事が作成されており、 バイ ラルメディアで取り上げられるということは、 コンテンツに一定の質や価値 が保証されていることである。 このため、 バイラルメディアユーザは躊躇す ることなく情報拡散した可能性がある。 第1表 バイラルメディアユーザと YouTube ユーザの比較 日本 アメリカ インド

バイラル YouTube バイラル YouTube バイラル YouTube FF 0.84 0.94 0.90 0.97 1.32 0.93 Listsday 0.0034 0.0045 0.0060 0.0064 0.0160 0.0056 Rreply 0.046 0.026 0.073 0.089 0.050 0.082 Rtags 0.008 0.003 0.036 0.027 0.006 0.004 Rurl 0.035 0.008 0.050 0.035 0.051 0.041 Rrt 0.040 0.039 0.092 0.085 0.102 0.069 Rqt 0.0004 0.0003 0.0034 0.0030 0.0062 0.0020 t 18.0 39.8 16.2 31.6 12.3 39.5

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コミュニケーション指向 コミュニケーション指向に関しては国によって結果が異なっていた。 日本 では、 バイラルメディアユーザのコミュニケーションを好む傾向は YouTube ユーザよりも高いが、 アメリカとインドでは、 YouTube ユーザの方がバイ ラルメディアユーザよりもコミュニケーションを好む傾向が高かった。 日本 のバイラルメディアユーザのツイートをいくつか確認したところ、 積極的に 情報の拡散を行うだけではなく、 情報拡散には関係のない個人間での会話も 行っていた。 このことを定量的に確かめるために、 3か国において、 リプラ イのうち、 フォロー関係にあるユーザとのリプライが占める割合と、 フォロー 関係にないユーザとのリプライが占める割合を調査した (第2表参照)。 こ の表より、 日本のバイラルメディアユーザはフォロー関係にあるユーザとの リプライの占める割合が高いのに対して、 アメリカとインドのバイラルメディ アユーザはフォロー関係にないユーザとのリプライの占める割合が高いこと が分かる。 このことからも、 日本のバイラルメディアユーザは、 フォロワー との個人的な会話を行っていることが分かる。 一方、 アメリカとインドでは、 個人的な会話よりも、 情報拡散をストイックに行っていることが伺える。 バ イラルメディアには万人受けする記事が多いが、 記事の内容と情報拡散を行っ たユーザのコミュニケーション指向との間に関係があるかどうかは分からな い結果となった。 人気度 人気度に関しても国によって結果が異なっていた。 インドでは、 バイラル メディアユーザの方が YouTube ユーザよりも人気度が高いが、 日本とアメ リカでは、 YouTube ユーザの方がバイラルメディアユーザよりも人気度が 高かった。 インドでは、 調査のために収集できたデータは、 インドは他の2 か国に比べて小さいものであった (3.2 節参照)。 インドの人口が日本やア メリカの人口よりも多いことを考えると、 インドではバイラルメディアがま だあまり普及していない状況にあると思われる。 このことから、 主としてイ

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ンドでは新しいものを好むイノベータやアーリー・アダプタと呼ばれる層 (Rogers 1962) がバイラルメディアを使用している段階だと予想される。 Rogers によると、 イノベータやアーリー・アダプタは、 流行に敏感で、 情 報収集を自ら行い判断するユーザを指す (Rogers 1962)。 これらのユーザは、 他のユーザよりも素早く情報源を見つけることができ、 また他のユーザから フォローされる数が多いという特徴がある (Imamori and Tajima 2016)。 イ ンドのバイラルメディアユーザは情報への反応速度が極めて早く、 人気度も 高いという今回の結果はイノベータやアーリー・アダプタの特徴と一致して いる。 過去の知見で、 人気の高いユーザは信頼性の高い情報を投稿すること が報告されているが (Liao, et al. 2012)、 日本とアメリカでは元コンテンツ を情報拡散する YouTube ユーザの方が人気があり、 信頼性が高いとみなさ れている可能性がある。 一方、 インドではバイラルメディアユーザが、 イノ ベータやアーリー・アダプタとみなされ、 人気が高くなっているものと思わ れる。

 結論

本研究では、 バイラルメディアの記事を拡散するユーザと、 その情報元の メディアのコンテンツを拡散するユーザの比較を行った。 比較においては、 人気度、 コミュニケーション指向、 情報拡散の積極さ、 情報への反応速度の 4点に注目した。 また日本、 アメリカ、 インドの3ケ国で分析を行った。 情 第2表 リプライのうちフォロー関係にあるユーザとのやり取りの割合と、 フォロー関係にないユーザとのやり取りの割合 日本 アメリカ インド

バイラル YouTube バイラル YouTube バイラル YouTube フォロー関係

あり 0.901 0.872 0.746 0.767 0.634 0.675 フォロー関係

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報拡散の積極さと情報への反応速度については、 バイラルメディアを利用す るユーザは新しい情報発信への感度が高く、 積極的に情報を拡散する傾向が あることが分かった。 人気度とコミュニケーション指向については、 国ごと に異なる結果となった。 日本のバイラルメディアユーザは特定の個人との会 話も楽しむ傾向が強く、 アメリカのバイラルメディアユーザは個人との会話 は控える傾向にあることが分かった。 インドではまだあまりバイラルメディ アが普及しておらず、 新しいものを好むイノベータやアーリー・アダプタと 呼ばれる層が使用している段階だと予想される。 本研究では Twitter を調査の対象としたが、 情報拡散や情報共有は他のソー シャルメディアでも行われており、 中でも実名制のソーシャルメディアであ る Facebook は無視できるものではない。 Twitter では情報の収集や共有を目 的とした使用が多いのに対して (Zhao and Rosson 2009)、 Facebook では友 人との交流を目的とした使用が多い ( Joinson 2008)。 このことから、 これ らのソーシャルメディアにおいては、 バイラルメディアの記事の共有の形態 も異なるかもしれない。 今後は Facebook 上でのバイラルメディアの拡散に ついても調査したいと考えている。 (筆者は関西学院大学商学部准教授) 引用文献

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