人口変数と経済 : 人口波動による経済分析の試み
著者
山田 勝裕
雑誌名
経済学論究
巻
64
号
1
ページ
23-49
発行年
2010-06-25
URL
http://hdl.handle.net/10236/5606
人口変数と経済
∼人口波動による経済分析の試み
An Economic Analysis Using Spectrums
of Population Waves
山 田 勝 裕
In this paper, we hope to propose a new technique of economic analysis. It is based on the assumption that a group of variables with similar spectrum is regarded as the same as one which have a relation to one another. We have two conjectures. If the width of age for a population wave is taken wider, the more appearance of lower frequency prevails. The population waves in old age are inclined to have lower frequency. Using these, we are able to find some propositions. In Sweden, GDP is relative to the width of age for population waves, while the private consumption is relative to population growth rate. In Japan, macro economic variables are relative to the people aged fifty.Katsuhiro Yamada
JEL:C49, E37, J11
キーワード:人口波動、スペクトル分析、人口と経済の関係
Key words: population waves, spectral analysis, relationship between popu-lation and economy
はじめに
この研究1)はスウェーデンの人口ピラミッド2)を作成し,その形状をみた時 から始まった。60歳以上は三角形になり,それ以下の年齢では約20歳の周期で 1) 本稿は日本人口学会第 61 回大会(2009 年 6 月 12-14 日,関西大学)で報告されたものに加 筆したものである。また,本研究の一部は京都産業大学総合研究支援制度の支援による。 2) 右側に女子のゼロ歳から 100 歳以上までの人口,左側に男子のゼロ歳から 100 歳以上までの人 口を下から棒グラフで表示したもの。図 1 は筆者開発プログラム YSCP の「人口ピラミッド」 で作成した。循環が確認できそうである。実際,スウェーデンでも注目されていて,たとえば Andersson[2000]などは80年代,90年代には景気循環と同調(pro-cyclical) する出生行動があったと論じている。しかしながら筆者の関心はこの循環の解 明にあるのではなく,この循環(後に定義する人口波動)と同じ循環が経済変 数にも現れているかをみることにある。人口が経済に影響を及ぼしているのか あるいはその逆であるのかの議論はひとまず置いて,同じ動きをしているかど うかに注目したい。 図 1 スウェーデンの人口ピラミッド この分析をするために本稿では筆者[1998]の開発したプログラム3)を用い てスペクトルを検出する。スペクトル分析は人口学の分野では,Coale[1970] の理論的な応用を始め,産業化以前のデータからの長期の時系列が得られるこ とから,Lee[1975]を嚆矢としていくつか利用されている4)が,筆者の調べ た限りでは本稿のような利用はされていないようである。 以下では,スペクトル分析の説明から始め,人口波動の定義,スウェーデン 3) 筆者開発プログラム YSCP の「時系列分析」参照。 4) たとえば Levy[1986]はエジプト農村の季節循環に着目して,出生,結婚,死亡の季節変動を スペクトルで分析している。
の分析,日本の分析と進め,それぞれの分析結果をみよう5)。
1. スペクトル分析の例示
次の例を考えると分かりやすい。筆者が「元気に手を挙げるベッカムヘヤー の5人の学生」と呼んでいる100期の時系列データにより認識される波動で, 5つのcos波の合成からできている。実際,スペクトル分析にかけてみると, 図3のようなスパイクが析出できる。数値を読み取ると,周波数0.1,0.15, 0.2,0.25,0.3の波動で,100期のデータであるからそれぞれ100期の間に10 図 2 ベッカム波動 図 3 5 つのスパイク 5) スウェーデンを選んだのは人口波動が循環的になっているからであり,日本については団塊の世 代の動向に注意を向けたいからである。回,15回,20回,25回,30回繰り返す波動であることが分かる6)。cos波で あることを既知としているからcos波の10倍,15倍,20倍,25倍,30倍周 波の波動を合成すれば再現できることが分かる。このようにスペクトル分析を 使えば,きわめて明快に波動がどのような周波数の波動から合成されたものか が分かる。 次に,直線の例を挙げておこう。y = 5 + 1.5xを考える。 図 4 直線 y = 5 + 1.5x スペクトル分析で波動を析出すると,図5のような1倍周波から順に逓減 する形になるスパイクの列が現れる。これはフーリエ級数展開で直線が表現さ れたことを意味するもので,この例と同じことは増加であろうと,減少であろ 図 5 直線のスペクトル 6) ちなみに,100 期の間に n 回繰り返す波動とは 101 期目に初期値に戻る波動。
うと,単調関数について言える。これは時系列的にトレンドがあるケースのス ペクトル表現と言える。 最後に,経済学でもお馴染みの太陽黒点数のデータ7) をスペクトル分析し てみよう。2880ヶ月のデータで振幅に差はあるものの明白な周期性がみてと れる。 図 6 太陽黒点数 波動をスペクトル表示すると図7で示される。最大のスパイクは22倍周波 で,それに続くものは24倍周波,23倍周波,20倍周波,1倍周波,2倍周波 図 7 太陽黒点のスペクトル
7) データは NGDC(National Geophysical Data Center, Boulder, Colorado)から公表さ
れている。ここでは,1769 年 12 月から 2009 年 11 月までの月別平均データ(国際データ) を用いた。
であるが,支配的なものは22倍周波である。2880期のデータで22周するわ けだから周波数は22 / 2880で,周期は2880 / 22 = 130.909ヶ月,すなわ ち10.909年(約11年)であることが分かる。この結果は周知の結果と一致す る8)。
2. 人口波動の定義
人口はストック変数である9)。1国の人口データは年度中央か暦年末時点の 人口数である。 まず第1に,この総数を時系列的にみたものが何らかの波動をもつかが考 えられる。しかしながら,この波動は1国の人口が増加期にあるかあるいは減 少期にあるかの長期的トレンドの形で言及されるもので,図1のスウェーデン の人口ピラミッドにみられる波動とは無関係とは言えないまでも特徴づけるも のとは言えない。 そこで波動の定義として年齢層,具体的にはα歳からβ歳までの人口を考 え,その時系列の波動を考える。たとえば,α = β = 0であれば新生児の時系 列の波動になるし,α = 15,β = 64であれば生産年齢人口の時系列の波動と なる。 図8は3次元図で横軸に年齢,縦軸に人口数,手前に時間軸をとったもの で,t時点の年齢別人口分布関数をft(X)とした時,積分値は各々右肩に書か れたもの,すなわちt時点の総人口数nt,t時点の区間[α, β]の人口数n∗t と なる。 このような時系列の波動を定義するメリットは,特異なコンフォートが区 間[α, β]を通過した時にその波動を特徴づけることができることである。し たがって,区間[α, β]を個人のライフサイクル仮説10) と連繋させその波動の 8) 理科年表オフィシャルサイト http://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/tenmon/tenmon 030.html など参照。 9) 日本では年度の中央値である 10 月 1 日現在で公表されるが,前年度 10 月 1 日から当該年度 の 9 月 30 日までの増減を基礎にして推定される。したがって,0 歳児(新生児)の人口数はフ ロー変数である。 10) たとえば,若い頃は近視用メガネでも老いてくると老眼用メガネになる。Wallace[1999]な ど参照。図 8 連続量での波動のイメージ ੱญᢙf ᐕ㦂x ᤨ㑆 n0 n1 n2 n3 n4 ® ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ n*0 n*1 n*2 n*4 n*3 ∞ 0 ft(x)dx = nt Ǫ ǩ ft(x)dx = n ∗ t スペクトルと,関心のある経済変量の波動のスペクトルとを比較することで人 口と経済変数の関係性を検証できるかも知れない。スペクトルから景気変動論 のように何年周期の波動であるかを読み取るだけではなく,よく似たパターン をもつスペクトルで関係性を識別するのである。 本稿で計算した波動は次のとおりである(表1参照11))。 さらに,それぞれにつき,トレンドを除去しない場合,スウェーデンのデータ 期間(1860-2008)を日本のデータ期間(1920-2008)に短縮した場合,日本の データ欠落(1941-1943)を補完しない場合,第2次大戦後のデータ(1955-2008) に限定した場合も計算した。これらも考慮した上で以下に,スウェーデンおよ び日本の人口波動を分析しよう。 11) ただし,表 1 中の*はスウェーデン・日本共通のもの。
表 1 波動の区間 [α, β] 㪇 㪈㪇 㪈㪌 㪈㪏 㪉㪇 㪊㪇 㪋㪇 㪇 㪁 㪈 㪁 㪉 㪁 㪊 㪁 㪌 㪁 㪈㪇 㪁 㪈㪈 㪁 㪈㪉 㪁 㪈㪊 㪁 㪈㪌 㪁 㪉㪇 㪁 㪉㪈 㪁 㪁 㪉㪉 㪁 㪉㪊 㪁 㪉㪌 㪁 㪊㪇 㪁 㪊㪈 㪁 㪊㪉 㪁 㪊㪊 㪁 㪊㪌 㪁 㪋㪇 㪁 㪋㪈 㪁 㪋㪉 㪁 㪋㪊 㪁 㪋㪌 㪁 㪌㪇 㪁 㪌㪌 㪍㪇 㪍㪋 㪁 㪍㪌 㪎㪇 㪈㪇㪇 㱍 㱎
3. スウェーデンの人口波動
まず,スウェーデンの総人口の時系列データ12)からみよう。図 9の破線が トレンドを除去する前の実際の人口数で,実線がトレンドを除去したもの13) 図 9 スウェーデン総人口の推移 12) データ出所は SCB データ・ベース http://www.ssd.scb.se/databaser/makro/start.asp?lang=2。 13) トレンドの勾配は 37225.06>0 で各々 1∼149 を乗じ引いたもの。である。 トレンド除去系列のスペクトルは図10で,主要な14) スパイクは 3つで表 のとおりである。50年周期,20年周期の波動が検出できることは興味深い。 図 10 スウェーデンの人口波動スペクトル15) 強度 倍周波 年周期 周波数 40.30% 1 149 0.00671 28.20% 3 49.7 0.02013 4.90% 7 21.3 0.04698 次に新生児の時系列データをみると,トレンドは-250.6で負である16)。主 要なスパイクは4つで75年周期,21年周期,16年周期,11年周期である(図 12)。1倍周波が主要でなくなり,総人口と同じ20年周期,50年周期が上位 を占めている。 より波動を検出しやすいのは成長率である。総人口の対前年成長率をみる と図13のようになる。目視によっても波形が読み取れそうである。トレンド は-2.06E-05で負である。主要なスパイクは4つで,50年周期,20年周期,11 年周期,6.2年周期である(図14)。 [α, β] = [15, 64]の生産年齢人口の波動をみる。経済学上興味深いデータ であるが総人口の大部分を占めるので総人口とよく似たパターンを示すと考え 14) 全体の強度のうち前後の周波数の強度を含めておおむね 5%以上を占めるもので,前後の周波数 に吸収されないものとした。なお,表の強度とはスペクトルの相対比のこと。 15) 図にある-T はトレンド除去を示す。 16) 総人口のトレンドは正ゆえ,これは寿命が延びていることを示す。
図 11 スウェーデンの新生児時系列(トレンドは負) 図 12 新生児のスペクトル 強度 倍周波 年周期 周波数 20.90% 2 74.5 0.01342 16.10% 3 49.7 0.02013 20.00% 7 21.3 0.04698 3.00% 9 16.6 0.0604 3.80% 13 11.5 0.08725 図 13 人口成長率の時系列
図 14 人口成長率のスペクトル 強度 倍周波 年周期 周波数 15.20% 3 49.7 0.02013 10.10% 7 21.3 0.04698 13.30% 13 11.5 0.08725 4.70% 24 6.2 0.16107 られる。しかしながら,スペクトル表現は図10とは異なり,図15のように 75年周期の波として現れる。 図 15 スウェーデンの生産年齢人口のスペクトル 強度 倍周波 年周期 周波数 28.5% 1 149.0 0.00671 47.7% 2 74.5 0.01342 13.2% 3 49.7 0.02013 また,この対前年度成長率のスペクトルは図16のようになり,主なスパイ クは5つで,75年周期,30年周期,21年周期,11年周期,6.2年周期がみて
とれ,図14と若干の違いを見せている17)。 図 16 スウェーデンの生産年齢人口成長率のスペクトル 強度 倍周波 年 周波数 8.0% 1 149.0 0.00671 14.1% 2 74.5 0.01342 9.4% 3 49.7 0.02013 7.1% 5 29.8 0.03356 12.7% 7 21.3 0.04698 6.0% 14 10.6 0.09396 3.0% 24 6.2 0.16107 区間シミュレーションの結果をいくつか示しておく。α = 0, 10, 20, 30, 40 に対して,各々(β− α) = 1, 2, 3, 5, 10, 15, 20, 25, 30をみた18)。 一般に次のことが言えそうである。 推測1:年齢区間幅(β− α + 1)が大きくなるに・つ・れ・て,低周波の出現頻度 が高くなる。 区間幅2∼31の両端をみたものが図17で,区間幅が大きくなると高周波は 消滅し,低周波の出現頻度が高くなっている。1955-2008のデータでもほぼ同 じことが言える。同じ年周波の5つのデータは各々0歳,10歳,20歳,30歳, 40歳からの同じ大きさの区間幅をみたものである。 17) ちなみに,相関分析では,総人口と生産年齢人口の相関係数は 0.9919 で,両者からトレンドを 除去すると相関係数は 0.2492 まで下がる。各々の成長率の相関係数は 0.5402 でトレンドを 除去した相関係数は 0.5007 である。スペクトル分析は相関関係による分析では捉えられない 分析結果をもたらせている。 18) 比較のためスペクトルは相対比で表示した。すなわち,ある波動のあらゆる周波のスペクトル値 の合計で当該周波のスペクトル値を除した。
図 17 (β ` α) = 1, 30 の比較 推測2:年齢αが高くなると,低周波の出現頻度が高くなる。 年齢区間幅の推測1ほどクリアーではないが,年齢が高くなると低周波に 偏る傾向がみてとれる。ただし,1955-2008のデータでは[80, 85]で高周波が 出現した。図18の同じ年周波の9つのデータは同じ年齢区間幅6の0歳から 80歳までのスペクトルをみたものである。年齢が高くなるにつれて単調に低 周波の出現頻度が高くなっていないことに注意されたい。 推測1が成立する根拠は,程度の差はあれ,年齢区間幅を大きくすることは スウェーデンの総人口の波動のスペクトル(図9)に近づけていると言えるか らであろう。また,推測2が成立する根拠は高齢になると死亡数が増え波動が みえなくなり単調になるからであろう。 ちなみに,人口学的にみて興味深いのは[α, β] = [0, 9]の波動である(図
図 18 β ` α = 5 の 0 歳∼80 歳までの年齢変化
図 19 トレンドゼロの区間選択
19参照)。この波動はトレンドがない19)。これにはさまざまな理由が考えられ
19) トレンドを除去する前の時系列と除去した時系列のプロットが重なっている。実際にはトレン
るが,一般には,スウェーデンの場合,総人口の時系列は正のトレンドをもつ が,新生児のトレンドは負であることによると考えられる。すなわち,ストッ クは増加してもフローが減少していることによる。区間の選択の仕方でこのよ うな属性をもった系列を引き出せることは興味深い。 ところで因果は逆になるけれども,このようにさまざまなスペクトルをもつ 波動が作成できるということは,経済変量の波動スペクトルと同じものを探し 出せる可能性を示している。同じ波動スペクトルをもつ時系列は偶然の産物で あろうか。
4. スウェーデン・マクロ経済データ
20)の波動
2000年を参照年とした実質GDPと実質民間消費のデータを取り上げてみる。 トレンドを除去する前後の各々の時系列は図20のとおりである。 トレンドを除去した系列のスペクトルは図21である。実質GDPについて は,18年,27年,54年周期の順で強度が高く,実質民間消費については,18 年,27年,13.5年周期の順で強度が高い。 では,このようなスペクトルをもつ人口波動があるのだろうか。1860-2008 のスウェーデンの人口波動でも,13年∼27年周期の波動は確認でき,次のよ うなことが言えそうである。 1.総人口の波動にも21.3年周期がみられる。 2.新生児の波動(図12)など,顕著に21.3・16.6・11.5年周期がみられる。 3.年齢が高くなる(αが大きくなる)ほど,また年齢区間幅(β− α + 1) が大きくなるほど13年∼27年周期はみられなくなる。 では同じサイズの人口データ1955-2008にした場合はどうであろうか。図 21の実質GDPの波動と図22などがよく似ていないだろうか。 上述した3を利用すれば,図23も納得できそうである。もちろん,区間 [α, β]のシミュレーションをより広範囲に実行すればより近い形が出てく 20) スウェーデンの国民所得統計は SCB のデータ・ベースから 1950 年から得られる。ここでは 日本と合わせるために 1955 年から 2008 年までとした。図 20 実質 GDP と実質民間消費の推移 倍周波 年周期 周波数 GDP強度 民間消費強度 1 54.0 0.01852 19.8% 8.1% 2 27.0 0.03704 27.7% 27.2% 3 18.0 0.05556 28.7% 27.5% 4 13.5 0.07407 5.5% 20.1% るかも知れない。 次に実質消費については1倍周波の強度が小さくなっていることに着目し てみれば,次のものが似ているようにみえる。同様に総人口の成長率も全体に 散らばるが,1倍周波の強度は小さくなっている。 経済理論的に考えれば,スペクトル表現でみたデータの近似性から仮説を導 出したくなるのも無理はない。GDP,すなわち生産には人口の年齢区間幅が 意味をもち,消費については人口の成長率が意味をもつ。同じことは国を違え ても言えるのだろうか。日本の場合をみる。
図 21 実質 GDP と実質民間消費のスペクトル
図 23 実質 GDP とよく似た人口波動 2 図 24 実質消費とよく似た人口波動
5. 日本の人口波動
日本の総人口の時系列データ21) を図示したものが図 25である。トレンド の回帰係数は930588.25で,トレンドを除くと人口が減少しているのがよく分 かり興味深い。スペクトルは5倍周波と6倍周波のスペクトルの強度が逆転 しているだけで単調な右下がりである。 新生児の時系列データをみると,図26になる。トレンドは-10938.45で負 であることは少子化ゆえ言うまでもない。トレンドを除去した系列のスペクト ルは図27である。1倍周波が優勢であるものの,29.7年,22.3年周期の波動 や,17.8年や11.1年周期の波動も観察できる。 21) 1920-2008 までを総務省データから作成。日本のデータは 1941-1943 の欠落があるのでニュー トンの補間公式(YSCP を使用)で修復した。図 25 日本総人口の推移 強度 倍周波 年周期 周波数 46.3% 1 89.0 0.01124 20.4% 2 44.5 0.02247 14.7% 3 29.7 0.03371 3.7% 4 22.3 0.04494 1.5% 5 17.8 0.05618 2.7% 6 14.8 0.06742 図 26 日本の新生児時系列 図 27 新生児のスペクトル
強度 倍周波 年周期 周波数 26.0% 1 89.0 0.01124 19.4% 3 29.7 0.03371 9.7% 4 22.3 0.04494 9.0% 2 44.5 0.02247 5.1% 5 17.8 0.05618 4.1% 8 11.1 0.08989 また,総人口の成長率をみておくと,図28であり,トレンドは-0.000161で 負である。スペクトルは図29で,成長率ゆえに多彩であるが,22.3年周期, 5.2年周期が目立っている。 図 28 日本の総人口成長率の推移 図 29 総人口成長率のスペクトル 強度 倍周波 年周期 周波数 8.3% 4 22.3 0.04494 6.0% 17 5.2 0.19101 5.9% 1 89.0 0.01124 5.2% 16 5.6 0.17978 5.2% 18 4.9 0.20225 4.3% 5 17.8 0.05618
スウェーデンと同様に区間シミュレーションをみておこう。 推測1’:年齢区間幅(β− α + 1)が大きくなるにつれて, 低周波の出現頻 度が高くなる。 推測2’ :年齢αが高くなると, 低周波の出現頻度が高くなる。 日本の場合,いわゆる団塊世代と団塊ジュニア世代が存在する理由で総数を みると,団塊の世代が区間[50, 55]を抜けて区間[60, 65]に入り,団塊ジュニ アが区間[40, 45]に入ってきているので,時系列的にみて,区間[40, 45]は 増加・減少・増加中,[50, 55]は増加・減少中,[60, 65]は増加中のパターン を示す。図31の周波数の強度が年齢に対応して劇的に変化しているのはそれ を反映しているものと考えられる。1955-2008のデータではそれがより鮮明に スペクトル表現されているようにみえる。 図 30 (β ` α) = 1, 30 の比較
図 31 β ` α = 5 の 0 歳∼80 歳までの年齢変化
6. 日本・マクロ経済データ
22)の波動
1990暦年基準の実質GDPと実質民間最終消費支出を取り上げる(図32)。 いずれも主要なスペクトルは3つで実質GDPの方は18年,54年,27年 周期の順で強度が高く,実質民間消費の方は54年,18年,27年周期の順で強 度が高い。スウェーデンと比較すると,実質GDPについては主要な3つのス ペクトルは等しく18年周期が最大である点も一致しているが,実質消費につ いてはスウェーデンの主要3スペクトルは一目盛りだけ高周波の方へ平行移行 している。しかしながらいずれにしても18年周期が重要であることが分かる。 このようなスペクトルをもつ人口波動を探してみると,1920-2008データ 22) 総務省の長期統計系列から 1995-1997 まで 68SNA,1998-2008 まで 93SNA を使用した。図 32 実質 GDP と実質消費の推移
倍周波 年周期 周波数 GDP 強度 民間消費強度 1 54.0 0.01852 20.4% 32.3% 2 27.0 0.03704 15.5% 17.5% 3 18.0 0.05556 34.1% 27.4% 4 13.5 0.07407 4.0% 2.8% 5 10.8 0.09259 4.6% 2.9% 6 9.0 0.11111 2.7% 1.0% 7 7.7 0.12963 1.0% 2.7% 8 6.8 0.14815 2.8% 1.9% でも,図27の新生児スペクトルに29.7年,22.3年,17.8年周波がみられる し,-T40-45M-W1920-08-jpnや-T40-50M-W1920-08-jpnに同じ年周波がみ える。 同じサイズの1955-2008のデータでは区間シミュレーションの限りでみる と,図34の人口波動が実質GDP,実質民間消費に似ているように思われる。 図 34 実質 GDP,実質民間消費に似た人口波動
以上のスペクトルから考えられる経済理論の仮説の一つは,日本のマクロ経 済的な変動は50歳代の人口波動と関係がありそうだということであろうか。 管理職の年代,資金的に余裕のできる年代などのライフサイクル仮説と考え合 わせればあながち荒唐無稽とも言えないかも知れない。
7. むすびにかえて
一般に経済主体はそのライフサイクルを通してその経済変量を変化させる ので,年齢別の人口分布が一様でない(すなわち,人口波動が存在する)とす ると当該経済変数の時間的変動を人口波動で説明できることになる。実際,こ のもっとも簡単な経済学での定式化はライフサイクルの間に若者と老人を経験 する重複世代(OLG)モデルであろう。もっとも,OLGモデルは人口波動を 扱うにはあまりにも単純すぎる均衡動学モデルではある。 本稿では人口波動をどう定義するかの考察から始め,スペクトル分析を用い て,人口波動とマクロ経済変動の間に何らかの関係があるかを調べた。もっと も,実際に社会科学で用いるデータでは析出される結果は曖昧である。また, 図2のベッカム波動のようにcos波のみであることなど既知ではないし,析出 する係数は振幅を2乗して足して2で割ったもの23)なので,波動の再現など も少なくともこのプログラムでは不可能である。率直に言って,この分析手法 はまだ海のものとも山のものとも分からないものと言える。 しかしながら,伝統的な分析手法では捉えられないものを捉えているように もみえる。 第1は状態の捉え方が,量の一致や比例的関係ではない,すなわち均衡理論 的に捉えるのではなく,いくつかのスペクトルから構成される波動として捉え ている点である。同じ,あるいはよく似たスペクトルをもつものは同じ族に属 するものでお互いに関係をもつと仮定する。これはある種の不均衡動学的アプ ローチと言えないだろうか。 第2は量的に線形として捉えた相関関係だけでは捉えられない,周期の考え 23) 詳しくは山田[1998]p.3 参照。方が導入されている。たとえば,周波数の同じsinカーブとcosカーブはそれ ぞれ任意の初期値から出発したものを比較しても必ず同じスペクトルをもつ。 しかしその振る舞いにおいては相関関係がない(相関係数ゼロ)のものを作り 出すことができる。実際,cosカーブのコレログラムをみるとゼロを通る曲線 になる。 第3は経済モデルの時間構造に関するものである。経済モデルでは通例,短 期,長期,超長期としてモデル化され,それぞれの定常性を仮定して何らかの 命題を演繹する。しかしながら,時系列的に考えれば経済は非定常過程で経済 理論の法則定立を妨げている。太陽黒点の例はどの期間を選択しても周期がほ ぼ11年と出てくるけれども,人口や経済変量は期間の取り方によって周期の 現れ方が異なる。スペクトル分析は定常,非定常を見極める分析手法になり得 るかも知れない。 以上,この分析を波動分析と名付けてもよいかも知れない。しかし経済分析 の一つになるには,残された問題は多い。 まず,よく似ているかどうかを目視で判断するのでは客観性に問題がある。 それなりの検定基準を導入する必要がある。 次に,時系列のデータサイズに応じて波動がどのように変化するかを詳細に 調べる必要がある。定常・非定常を見極める基準を作成する必要がある。 第3に,年齢別だけではなく,男女別の波動,地域別の波動を考える必要が ある。 最後に,シミュレーションの範囲を拡大する必要がある。 (2010.3.10) 参考文献
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