• 検索結果がありません。

タマネギ外皮とそのモデル化合物による染色 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "タマネギ外皮とそのモデル化合物による染色 利用統計を見る"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

'\HLQJZLWKRQLRQVNLQDQGLWVPRGHOFRPSRXQGV

勢 田 二 郎   松 丸 理 恵

-LUR6(7$   5LH0$780$58

1.緒言  植物などの天然材料を使用した染色については、古来より多くの報告があり、その成果は染色文化 として伝えられている1)。最近、筆者はこの天然染色の検討を、先ず、山梨県の特産である葡萄につ いて行い、廃棄物として処理される葡萄葉が絹や羊毛を茶系統によく染色でき、堅牢度も優れている ことを報告した2)。一方、天然材料からの色材の抽出方法および染色工程は、古来からの煮沸手法で ある。この手法は高エネルギーと高コストを必要とし、環境への配慮はなされていない。そこで、従 来の煮沸抽出に限ることなく、カテキン類の化学的特性からアルカリ抽出方法を検討し、先ず、身近 に存在する桜や楓などの植物葉を対象として、これらを染色材料として使うための基礎的検討を行い、 煮沸抽出法を使用しなくても良好な結果が得られることを報告した3)。このような植物を用いた染色 の代表例として、たまねぎ外皮を用いた染色については、身近な材料であるが故に最近でも多くの報 告があるが、日本におけるたまねぎ外皮による染色の歴史は比較的新しく昭和以降とされている4) また、たまねぎ外皮はごみとして排出されるだけであり、その有効利用が検討される中で、抽出法も よく検討されている5)  たまねぎ外皮を植物染料として使う染色は綿布に対して極めて適切であるとされている67)が、著 者の経験では、タンニン下漬けやカチオン化などの下処理を施さない綿を用いた場合には良好な結果 は得られていない。そこで、本報告では、図1に示したように、たまねぎ外皮とその主成分とされる ケルセチンおよびケルセチン配糖体としてルチンを用いて、綿および羊毛布を対象として染色性の基 本的検討を行った。さらに、瀬部ら8)に従い、たまねぎ外皮抽出物の中で含量の多いプロトカテキュ 酸も加え、試薬から染色した結果がたまねぎ外皮染色物の色相を再現できるか否かについても検討し た。 2 実験  2.1 試料  用いた布は綿金巾およびウール綾薄 手112㎝幅(田中直染料店)を定法に より洗浄後使用した。  また、たまねぎ外皮とその主成分に ついては、以下のものを用いた。   1.たまねぎ外皮(平成22年市販 たまねぎの外皮) 愛知県立安城高校

HO

OH

COOH

OH

OH

OH

OH

OH

O

O

ケルセチン プロトカテキュ酸 図1 たまねぎ外皮含有の主なモデル物質の化学構造

(2)

  2.たまねぎ外皮粉末(有限会社オニオ製)   3.試薬 ケルセチン、プロトカテキュ酸およびルチン(東京化成 試薬1級 そのまま)  たまねぎ外皮の含有組成は、ケルセチン、プロトカテキュ酸、ケルセチン−4 −2−グルコシドお よびケルセチン2量体などであることが知られている89)。しかしながら、ケルセチンとプロトカテ キュ酸以外の成分は容易に入手できないので、ケルセチン配糖体として容易に入手できるルチン(ケ ルセチン3−2−ルチノシド)を用いた。また、市販たまねぎ外皮粉末を使用した理由は、品種や購入 時期および採取場所などの個体間の差を少なくするためである。  2.2 たまねぎからの抽出  たまねぎ外皮および市販たまねぎ外皮粉末を浴比1250の条件で、100℃および80℃において30分間、 恒温振とう機を用いて抽出した。特に、抽出に必要なエネルギーを少なくすることを目指し、80℃ 抽出においてはアルカリ条件下おこなった。たまねぎ外皮に含まれる主成分であるケルセチン量を、 商品に表示されているケルセチン量(900㎎100J)をそのまま基準とした。図1に示されるように、 ケルセチンには5個の2+基を含むので、ケルセチンのモル数に対して最大で1:5までのアルカリ (1D₂&2₃)存在下に実施した。後述のケルセチン水溶液の作成にもかかわるが、2+基を含む化合物 は一般にアルカリ条件下で溶解度が向上することによる。  尚、抽出溶液は直ちに冷凍保存し、以下の染色実験等に用いる場合には、室温解凍して用いた。  2.3 モデル化合物水溶液の調整  ケルセチン等の用いたモデル化合物は、水溶解度が低いので、そのままでは所定濃度の水溶液を作 成することが困難である。そこで、ケルセチンについては、モル数に対して5倍量のアルカリ(1D₂&2₃) を加えて、01JO溶液を調整した。また、ルチンおよびプロトカテキュ酸については等モル量アルカ リを加え、01JOとした。これらの条件でモデル化合物は溶解した。これらの溶液は、調整後ただち に使用することを心がけた。  2.4 染色  抽出液原液100POに1酢酸4POを加え、布04J(浴比1250)、80℃、30PLQの条件で染色した。この 条件により、たまねぎ外皮重量と布重量は1:1であり、また、アルカリ抽出液も中和され、酸性条 件で染色される。モデル化合物の場合には、上述のようにたまねぎ外皮ケルセチン量(900㎎100J) を基準とし、外皮染色と等条件とした。この場合にも、前述の酸の添加により酸性条件で染色される。 染色後布を取り出し水で洗浄後、酢酸銅を10%RZIとして浴比1:100の条件で、80℃、30PLQ媒染を 行った。終了後水道水で洗浄し、自然乾燥させた。  尚、抽出と染色は6+$.,1*%$7+(アズワン株、6:%25)を用い、振とう数130USPで行った。  2.5 測色  既報3)と同様に、島津自記分光光度計89−3100−3&を使用し、染色布の直接カラー測定を行った。 380−780QPの間の反射率測定から(.6)値へ変換し、4WRWDO値を用いて評価した。(.6)値では、分光 反射曲線の形が異なった場合(すなわち色調が異なった場合)には濃度比較はできないが、4WRWDO値は 可視波長全域の(.6)値に重味づけをし、積分して求めたものなので、色調が異なっても濃度を比較 することができる10)

(3)

 3.1 たまねぎ外皮の染色性  たまねぎ外皮および市販粉末を用い て、前述のように80℃でアルカリ量を変 化させて抽出し、酸性下に綿および毛を 染色した結果を図2に示した。図2は無 媒染の結果であり、先ず、たまねぎ外皮 抽出物は綿にはほとんど染色されていな いことがわかる。緒言でも述べたように、 たまねぎ外皮による未処理の綿の染色は 適切ではない。一方、毛については、外 皮抽出物が、市販粉末のそれよりも濃く 染色され、たまねぎ外皮は綿より毛の染 色に適していることがわかる。しかしな がら、抽出におけるアルカリ量の変化と 染色濃度との間には一定の関係や定性的な傾向も見られず、結果の再現性に疑問が残った。また、市 販粉末はたまねぎ外皮に比較して相当薄い染色濃度であったので、以降では、市販粉末は使用しなかっ た。  3.2 たまねぎ外皮抽出物の安定性  上述の結果の再現性を検 証するために、たまねぎ外 皮抽出物の安定性を検討す ることとした。一般に、植 物原料からの抽出物による 染色は、抽出作業の繰り返 しを行い、抽出濃度の向上 を図っていることが多い が、抽出物の安定性、すな わち、熱履歴を検討した報 告 は 見 い だ せ な い。 図 3 は、毛について、たまねぎ 外皮100℃抽出溶液および た ま ね ぎ 外 皮80℃ ア ル カ リ 抽 出 溶 液 を30℃ で 所 定 時間放置後、前述の酸性条 件下において染色し,銅媒 染したものを測色した結果 である。従来の煮沸抽出法 においては、抽出直後が最も濃色に染色され、放置時間とともに薄くなっていることがわかる。一方、 80℃アルカリ抽出物は、バラツキは存在するが、僅かに時間の経過とともに濃く染色される傾向が見 いだせる。いづれにおいても抽出成分が時間とともに変質していることが示される。 無媒染 アルカリ添加量(モル比) 0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 5.0 毛 外皮 外皮 粉末 粉末 毛 綿 10 8 6 4 2 0 Qtotal 20 15 10 5 0 0min 1h 2h 6h 24h 外皮100℃ 波長(nm) 380 480 580 680 780 K/S 20 15 10 5 0 0min 1h 2h 6h 24h 外皮80℃ 波長(nm) 380 480 580 680 780 K/S 10 8 6 4 2 0 0min 1h 2h 6h 24h ケルセチン30℃ 波長(nm) 380 480 580 680 780 K/S 10 8 6 4 2 0 0min 1h 2h 6h ケルセチン80℃ 波長(nm) 380 480 580 680 780 K/S )LJ2 たまねぎ外皮による染色性 )LJ3 たまねぎ外皮抽出物の熱履歴(30℃) )LJ4 ケルセチン水溶液の熱履歴と染色性

(4)

 3.3 モデル化合物による染色  たまねぎ外皮の主たるモデル物質であるケルセチンのアルカリ 水溶液を前述のアルカリ添加する方法で調整し、30℃および80℃ において所定の時間放置後、同様に染色した結果を図4に示した。 30℃に保持した場合には、時間とともに明確に濃染された。図に は表示していないが、72時間保持した結果は、24時間の結果とほ ぼ同程度であり、ケルセチンアルカリ水溶液からの染色は、約1 日放置することにより濃く染色されることがわかった。しかしな がら、染色布の色相は、第4図に明らかなように、535QP付近の 吸収が大きく変化し、黄味の茶色から赤味茶色に変化している。 一方、80℃で保持した場合には、大きな変化は少ないようであ る。これらの反応系は均一系ではなく厳密な取り扱いは困難であ るが、通常よく使用される一次反応と仮定すれば、染色に有効な 成分生成の速度定数をN、時間0およびW時間後の染色濃度を40 および4Wとすると、1Q(404W) NWとして表すことが知られてい る。このプロットを表したものが図5である。図中の直線は、実 測点を直線により近似したものである。プロットはバラツキが大 きく直線から外れ一次反応とは言えないが、抽出物の放置は、従 来の煮沸抽出においてマイナスの効果を表している。一方、ケル セチンを30℃で保持した場合における化学変化については分析していないが、カテキン類が放置によ り赤味に変化し、テアフラビンなどに酸化され、ポリフェノ−ル重合体が生成すること11)から類推 し、染色に寄与する重合体が生成していくものと考える。外皮100℃抽出では、放置時間が長くなれば、 この重合体の生成が相当促進され、繊維内部に浸透できないレベルまで進行すると推測した。この推 測は、後述の染色堅牢度の結果からも支持される。  図6は、たまねぎ外皮に含まれるケルセチン配糖体モデル物質として検討したルチンおよびプロト カテキュ酸について、溶液をアルカリ下に調整直後および24時間後に染色した結果である。ブランク は銅媒染だけのものである。先ず、プロトカテキュ酸は放置後もほとんど変化せず、ごく僅かに染色 されているだけである。しかしながら、ルチンは放置により僅かに変化し、プロトカテキュ酸より濃 く染色されるが、ケルセチンの染色性と比較すると大きな影響が見られず、染色中にルチンから配糖 体が加水分解しケルセチンの生成による影響はほとんどないことがわかる。  これらの染色結果の一覧を付図1に示した。これは、スキャナー((36216FDQ(6−2000)を用い て染色布を300GSLにて取り込んだものである。付図1の上段は銅媒染前の結果であり、下段は銅媒染 後の結果である。図から、染色にはルチンは僅かに影響するが、プロトカテキュ酸がほとんど関与し ないことが明らかである。  3.4 染色堅牢度  表1は、たまねぎ外皮について従来の煮沸抽出と80℃アルカリ抽出およびケルセチン水溶液につい て、調整直後と30℃−24時間放置後の媒染染色したものについて、洗濯堅牢度と摩擦堅牢度を測定し た結果である。洗濯堅牢度は全体的に良好であるが、摩擦堅牢度についてはたまねぎ外皮抽出物とケ ルセチンとの間に差が見られる。特に湿摩擦においてたまねぎ外皮染色は不良であった。一般に、染 色に寄与する成分が低分子であれば、繊維内部まで浸透し染色されるので摩擦堅牢度は良好となるこ 1.2 0.8 0.4 0 −0.4 −0.8 −1.2 ケルセチン−80℃ ケルセチン 外皮100℃ 外皮80℃ time(h) 0 10 20 30 1n (Q 0 / Q t ) 10 8 6 4 2 0 blank ルチン 0min ルチン 24h プロト.0min プロト.24h 波長(nm) 380 480 580 680 780 K/S )LJ5 反応速度プロット )LJ6 ルチン等の染色性

(5)

る。一方、ケルセチンによ る染色は比較的良い摩擦堅 牢度が得られている。表に 明らかなように、洗濯堅牢 度および摩擦堅牢度の結果 は実用性があると考えられ る。  以上のように、当初、たまねぎ外皮染色物をケルセチンとその配糖体およびプロトカテキュ酸を 用いて染色物の色の再現を目指した。しかしながら、図2に示したように、たまねぎ外皮染色物は 480QP付近に最大.6値を示すピークが存在するが、図3のケルセチン染色物の最大.6値を示すピー クは550QP付近であり、両者を比較するとたまねぎ外皮染色物の480QP付近に大きな差を持つことが 明らかとなった。また、たまねぎ外皮の抽出後の放置時間により染色挙動が異なることも明らかとし た。 4.文献  1)例えば、*:7D\ORU; 5HYLHZRI3URJUHVVLQ&RORUDWLRQDQG5HODWHG7RSLFV 1653−61(1986)  2)勢田二郎;山梨大学教育人間科学部紀要、第10巻SS57−62(2009)  3)勢田二郎;山梨大学教育人間科学部紀要、第10巻SS63−68(2009)  4)上村六郎;「日本の草木染」、京都書院(1966)  5)沖 智之ら;1LSSRQ6KRNXKLQ.DJDNX.RJDNX.DLVKL9RO529SS424−428(2005)  6)山崎青樹;「草木染染料植物図鑑」、「続草木染染料植物図鑑」、美術出版社(1987)  7)鈴木恒夫ら;長野県短期大学紀要、第57号、SS63−69(2002)  8)瀬部和美ら;西九州大学健康福祉学部紀要、38、SS17−21(2008)  9))XUXVDZD0HWDO;+HWHURF\FOHV57(11)SS2175−2177(2002)  10)勢田二郎;山梨大学教育学部研究報告、第48号SS88−93(1997)  11)林 孝三;「増訂 植物色素」、養賢堂(1991) 洗濯(-,6/084440℃) 摩擦(-,6/0849) 変退色 汚染 綿 汚染 絹 乾 湿 外皮100℃ 直後 4−5 4−5 4 3 2 24K後 4−5 4 4 3−4 2−3 外皮80℃ 直後 4−5 4 4−5 3 2 24K後 4−5 4−5 4 4 2 ケルセチン 直後 4 4−5 4−5 4−5 3 24K後 4−5 4 4−5 4−5 3−4 表1 染色堅牢度

(6)

30℃ 保持時間( min ) 抽出・調整条件 前 後 前 後 前 後 前 後 前 後 外皮 100℃    30 min 外皮 80℃  アルカリ30 min ケルセチン  アルカリ 30℃ ルチン  アルカリ 30℃ プロトカテキュ酸  アルカリ 30℃ 0 30 60 120 360 1440 付図1.染色溶液の熱履歴と毛の染色性

参照

関連したドキュメント

toursofthesehandsinFig6,Fig.7(a)andFig.7(b).A changeoftangentialdirection,Tbover90゜meansaconvex

We measured the variation of brain blood quantity (Oxy-Hb, Deoxy-Hb and Total-Hb) in the temporal lobes using the NIRS when the tasks of the memories were presented to the sub-

とができ,経済的競争力を持つことができることとなる。輸出品に対して十

これに対し,わが国における会社法規部の歴史は,社内弁護士抜きの歴史

第2期および第3期の法規部時代lこ至って日米問の時間的・空間的な隔りIま

の急激な変化は,従来のような政府の規制から自由でなくなり,従来のレツ

歯國撫旧馬僑i蒻扉 アシスタント カウンセル ゼネラル。 アシスタント カウンセル ゼネラル。 アシスタント カウンセル ゼネラル. アシスタント カウンセル

ところで,基金の総額が増減した場合における措置については,つぎのご