著者
河合 渓
雑誌名
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers
巻
42
ページ
9-14
別言語のタイトル
Beach Litter in Amami Islands Japan
与 論 島 を 中 心 と し た 奄 美 諸 島 に お け る 海 岸 ゴ ミ の 実 態 調 査 河 合 渓 鹿 児 島 大 学 多 島 圏 研 究 セ ン タ ー 要 旨 与 論 島 を 中 心 と し た奄美 諸 島 に お い て 海 岸 ゴ ミ の 実 態 調 査 を 行 っ た 。 ゴ ミ打 ち 上 げ 量 の 多 い 砂 浜 は 島 北 部 、 少 な い 砂 浜 は 島 南 部 に 多 く 見 られ た 。 砂 浜 上 部 、 中 部 、 下 部 で は 異 な っ た 打 ち 上 げ 物 が 観 察 さ れ た 。 下 部 は ガ ラ ス 片 、 中 部 は プ ラ ス チ ッ ク 類 、 上 部 は 発 砲 ス チ ロ ー ル や ペ ッ トボ トル な どが 多 く観 察 され た 。 打 ち 上 げ物 の 由 来 は 日本 由 来 が2-3割 、 外 国 由 来 が7-8割 と 外 国 由 来 が 多 く見 られ た 。 そ の 中 で 中 国 語 と韓 国 語 が 記 述 され た も の が 上 位 を 占 め た 。 小島嶼 の 海 岸 ゴ ミ の 出 現 状 態 を 小島嶼 ゴ ミモ デ ル と し て 、 ま た 奄 美 諸 島 の 小島嶼 に お け る ゴ ミ の 発 生 由 来 は 、 奄 美 諸 島 モ デ ル と し て 示 す 試 み を 行 っ た 。 キ ー ワ ー ド:奄 美 諸 島 、 海 岸 ゴ ミ 、 黒 潮 、 小島嶼
Beach Litter in Amami Islands Japan
KAWAI Kei
Research Center for the Pacific Islands Kagoshima University
Abstract
This study examines the type of beach litter in Amami Islands, Japan. Results from the study revealed that beach litter in northern parts of islands were greater in number than in southern parts. Different types of litter were observed among upper, middle and lower parts of the beach. Pieces of broken glass dominated the lower part of the beach while plastic materials were mostly found in the middle part. The upper part of the beach was mostly littered with expanded polystyrene and plastic bottle. About seventy percent of beach litters in these places have originated from other countries. The origin of the litter was identified by the label of the litter, which were mostly Chinese and Korean language. These trends of observed beach litter were discussed as a Small Island Model and Amami
Keywords: Amami Islands, Beach Litter, Kuroshio, Small islands
緒 言
与 論 島 を 中 心 と した 奄 美 諸 島で はマ リン レジ ャ ー を 中心 と した 観 光 産業は最も 重 要 な 産 業 の一 つ とい え る。 そ の よ うな 中 で海 岸 の美 し さは 産 業 発 展 の た め に大 変大 きな 要 因 と な っ て い る とい え る。 ま た 、 これ らの ゴ ミは野 生 生物 に も大 き な影 響 を 与 え る事 が 指摘 され て い る(The ocean conservation, 2002)。 多 くの 固 有種 が生息 す る奄 美 諸 島 に お い て は こ の よ うな海 岸 ゴ ミ問 題 は 海 岸 域 に生 息 す る 生物 だ けで な く、 奄 美 群 島島嶼 生 態 系 全 体 へ の 影 響 も危惧 され る。 そ して 、 ゴ ミ問題 は地 球 環 境 問 題 の 中で も大 き な 問題 とな っ て お り、 世 界 的 な 問 題 に な っ て い る。 そ こ で今 回 の 調 査 で は 奄 美 諸 島 の与 論 島 、喜 界 島 、 沖 永 良 部 島 にお け る海 岸 ゴ ミの 現 状 を把 握 し、他 地 域 とそ の 現 状 を比 較 す る事 で奄 美 諸 島 で の 海岸 ゴ ミの特 性を解 明 す る事 を 目的 に して い る。 方 法 海 岸 ゴ ミの 実 態 調 査 は 奄 美 諸 島 の与 論 島 、沖永 良 部 島 と喜 界 島 にお い て行 っ た。2003年 3月11日-12日 に 与 論 島 、2003年5月31日-6月1日 に 沖 永 良 部 島 、2003年6月10日 -11日 に 喜 界 島 にお い て調 査 を行 っ た。各 島 の潮 流 が 島 に直 接 あ た る南 側 の海 岸 と潮 流 が 直 接 あ た らな い 北側 の 海 岸 にそ れ ぞれ2箇 所 の計4箇 所 の 調 査 域 を設 置 した。 これ らの 調 査 域 は す べ て 開放 系 の砂 浜 海 岸 を調 査 域 と して選 定 した 。 与 論 島 と沖永 良 部 島 には 各 調 査 海 岸 に10mx10mの 方 形 区 を海 岸 上 部 、 中部 、 下部 に そ れ ぞれ 設 置 し、 方 形 区内 に見 られ る ゴ ミをす べ て 回 収 した 。 回 収 した ゴ ミは プ ラス チ ッ ク 類 、 ガ ラス 片 、 ペ ッ トボ トル 類 、 ビン類 、 缶類 、発 泡 ス チ ロー ル 類 、 そ の他 に分 類 した 。 発 泡 ス チ ロー ル は 簡 単 に割 れ て しま い小型 化 して しま うの で3cmx3cmx3cm以 上 の もの を 回収 対 象 と し記 録 した 。 また 、 ゴ ミの発 生地 域 を 調 べ るた め ゴ ミ類 の表 面 に記 載 して あ る文 字 か らそ の 国名 を推 定 し、そ の 国名 を記 載 した。喜 界 島 にお い て は海 岸 上部 に30mx 30mの 方 形 区 を 設 置 し、 方 形 区 内 に 見 られ る ゴ ミを す べ て 回 収 した。 ま た 、他 の2地 域 同 様 ゴ ミの 中 で 由来 の 分 か る物 は 表 面 に記 載 して あ る文 字 か らそ の 国 名 を記 載 した 結 果 種 類 別 打 ち 上 げ状 態 ゴ ミ打 ち 上 げ量 の 多 い砂 浜 は 島 北 部 、少 ない砂 浜 は島南部 に多 く見 られ た。
プ ラス チック類 プラスチ ック類の海岸 ゴ ミの打 ち上 げ量を島 ごとの海岸種類別 に比較す る と、与論 島 と 沖永 良部島共に南部海岸の ほ うが北部海岸 に比 べ多 く見 られ る。 また、一つ の海岸 内で は 海岸 中部か ら上部にか けて多 く見 られ た。 プ ラスチ ック類で最 も多 かったのが漁 業 に用い られ る浮 きであった。また、 レジンペ レッ トとな る小型のプ ラスチ ック類 はあま り多 く観 察 され なかっ た。 ガ ラス片 ガラス片は与論 島 と沖永 良部 島共 に北部海岸 と南部海岸 に見 られ る量に大 きな差はない。 しか し、両地域においてガ ラス片 は海岸 下部に多 く見 られた。 これ らのガ ラス片は流れ着 いた ビンが海岸 にお いて割れ るこ とで発 生 したので はない か と考 え られ る。 ペットボトル類・ビン類・缶類 ペ ッ トボ トルは与論島 と沖永 良部 島共 に南部海岸 に比べ北部海岸 にお いて非 常 に多 く見 られた。 また多 くが海岸 上部 に見 られ た。 ビン類 の打ち上げ量は あま り多 くない。また、観察 され た多 くの ビン類は50mlの 小 さな ビンで割 れるに くい タイプで あった。従 って、多 くの ビン類 は打 ち上 げ後 に割れ 、ガ ラス 片 になった と考 えられ る。南部海岸 と北部海岸 に打 ち上 げ量 に差 は見 られ ないが多 くが海 岸 上部 に見 られ た。 缶類 の打ち上げ量が少 ない。与論 島 と沖永 良部 島共 に北部海 岸 においてのみ観察 され た。 発泡スチロール 類 発泡 スチ ロールはペ ッ トボ トル類 と同様 に与論 島 と沖永 良部 島共 に南部海岸 に比べ北部 海岸 にお いて非 常 に多 く、また多 くが海岸 上部 に見 られ た。 その他 その他 に見 られ た ゴ ミ類 は電 球 、蛍光灯 、等 であ った。 海 岸 ゴ ミの発生地 海岸 ゴミに記載 されてい る文字 か らその ゴミの起源 を推定 し地域 別に全体 に 占める割合 か ら見る と、各島で若干の傾 向は異 なるが海 外か ら7-8割 の ゴ ミがきている ことが分か る (図1)。最 も多い ゴ ミは中国語 でその次は韓国語で記載 され た漁業用 の浮 きであ った。東 南 アジア諸 国はマ レー シア、イ ン ドネ シア、フ ィ リッピン、 タイ か らのペ ッ トボ トル、プ ラスチ ック容器 であった。その他 の地域 はアメ リカ合衆国でプ ラスチ ック容器 とタバ コの 箱 で あった。
その他 東南アジア 中国 韓国 日本 沖永良部 与論 島 喜界 図1ゴ ミの発生地域 考 察 小島嶼 モデル 種類 別打ち上げ ゴ ミの結果 をも とに小島嶼 にお ける海岸 ゴ ミの打 ち上げ状態 を図2の 様 にま とめる事 がで きる。打 ち上 げゴ ミは北部海岸 よ りも南部 毎岸 のほ うが打 ち上 げゴミ量 は少 ない。 ガ ラス片が海岸下部 に多 く上部 に行 くほ ど少な くなる傾 向は両海岸 で共通 して いる。 南部海岸 はプ ラスチ ック類 が多 く見 られ、特 に海岸 中部 に多い。北部海岸 は浮遊 性 のペ ッ トボ トル 、発泡 スチ ロール 、軽 めのプ ラスチ ック類 が海岸上部 に多 く見 られ る。 これ らの傾 向は潮 の流れ と風 向きが重要 な決 定要因 にな ってい る と考 え られ る。 これ ら の要 因は季節 変化 が ある と考 え られ る。従 って今後季節的変化 な ども考慮 して調 査 を行 う 必 要が ある と考 え られ る。 海岸下部海岸中部海岸上部海岸上部海岸中部海岸下部ペットボトルガラス片発泡スチロールプラスチックビン 北部海 岸 南部海岸 図2小 島喚の海 岸 ゴ ミモデル
海 岸 ゴ ミの発生地 打 ち上げ物 の由来で外国 由来が7-8割 と大変多 く見 られた理 由 と して以下の2点 が考 え られ る。 黒潮の流れ によ り東南 アジア地域 の ゴミが流 されて来た事 と奄美諸 島が 日本の南 端 に位置 し、近 くの大 きな 日本 の都 市は名瀬 と那覇 しかない事が あげ られ る。 一方、ア メ リカ合衆 国の ゴミも観察 されてい る。 これ は北赤道 海流 によ り太平洋島嶼 国か らの ゴミが 運 ばれ その後親 潮に よ り若干の ゴ ミが運 ばれた、あ るいは東南 アジアで消費 され たア メ リ カ製 品が流 れ着 いた結果だ と推定 できる。 また、 日本海域の海岸 では外 国か らの海岸 ゴ ミ が多 く流 れ着 くことが示 させてお り(建設 省,2000)、 日本海や東 シ ナ海 は外 国産 の ゴミが 多 く留 まってい ると考 え られ る。藤枝(1999)は 中国 ・台湾か ら派生 した多 くの ごみが鹿 児 島の海岸 多 くに打 ち上 げ られ てい る事 を報 告 してお り、本報告 と同 じ傾 向を示 している。 しか し、 日本 の他 の地域 と比較 して も外 国由来 の量は著 しく多 く、この ことは奄 美諸島の 打 ち上 げ ゴ ミの特徴 と推 定 され る。 奄 美諸 島モデル 海岸 ゴミの発 生地の結果 をも とに奄美諸 島の海岸 ゴ ミの打 ち上 げ状態 をモデ ル図3の よ うにま とめる事がで きる。 日本 か らの ゴミは全 体に 占める量 は少 ない。 日本 か らの ゴミは 南 か らの親潮 に よ り運ばれて くるゴ ミと島内か ら供給 された ゴ ミと考 え られ る。親 潮が あ るために奄美 諸島 よ り北部か らのゴ ミの供 給はあま りない と考 え られ る。東 シナ海 が 中国 語 と韓 国語 で記述 された ゴ ミの溜 ま り場 になっていて ここか らゴ ミの多 くが供給 してい る と考 え られる。太平洋島嶼域で派生 した ゴミは北赤道海流 によ りゴミが運 ばれ 、その後親 潮 に よ り奄美諸 島へ とゴ ミが運 ばれ る。 同様 に東南 アジア地域か らもゴ ミが供給 され る。 南九州トカラ諸島東シナ海船 奄美諸島 琉球諸島, 「島内 東南アジア地域 船 北赤道海流太平洋島嶼域 図3 奄美 諸島の海岸 ゴ ミ流 通モ デル
与 論 島 の 打 ち 上 げ ゴ ミ量 はそ れ ほ ど多 くな い が 外 国 産 の 打 ち上 げ ゴ ミが 多 い事 か ら、 ゴ ミ量減 少 へ の 対策 は 取 りづ らい と考 え られ る。 そ の た め、 海岸 の 美 し さは 島 の財 産 で あ り 産 業 発 展 の た め に 大 変 重 要 で あ る とい う概 念 を 島 民 全 員 が 持 ち、 ゴ ミ減 少 へ の地 道 な努 力 を行 うこ とが 景観 維 持 に大 切 と考 え られ る。 例 え ば 小 規 模 で よい の で一年 を通 して の頻 繁 な海 岸 清 掃 な どが 重 要 と考 え られ る 。 引 用 文 献 藤 枝 繁(1999)1998年8月 鹿 児 島 県薩 摩 半 島 沿 岸 に漂 流 した大 量 ごみ の 実 態.63,69-76, 水 産 海 洋 研 究. 建 設 省 河 川 局 海 岸 室(2000) 平 成12年 度 海 岸 ゴ ミ調 査 結 果.建 設 省 河 川 局 海 岸 室. The Ocean conservation(2002) 2001 international coastal cleanup. 1-24, The Ocean