相関法による音の回折の測定
著者
柚木 謙一, 神崎 重光, 五十嵐 寿一
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
18
ページ
69-73
別言語のタイトル
MEASUREMENT OF SOUND DIFFRACTION BY
CORRELATION METHOD
相関法による音の回折の測定
著者
柚木 謙一, 神崎 重光, 五十嵐 寿一
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
18
ページ
69-73
別言語のタイトル
MEASUREMENT OF SOUND DIFFRACTION BY
CORRELATION METHOD
相関法によ る音の回折の測定
柚木謙一・神崎重光*・五十嵐寿-**
(受理 昭和51年5月31日)
MEAStJRE班ENT OF SOtJND DIFFRACTION
BY CORRELATION METHOD Kenichi YuNOKI, Shigemitsu KANZAKI
and Juichi IGARASHI
Correlation method is applied to measure sound diHraction at circular apertures. At first, the
principle of the method is explained in detail for the setup・ In theory, two quantities defined by values of the co汀elation function are presented to indicate characteristics of directivity, transmission-Power leveland attenuation from the apertures. These characteristics arc calculated with normal pro-cedure by the quantities obtained by experimental datas.
G)mparing the characteristics obtained by the theory of circular piston vibration with these charac-teristics, the former coincides with the latter almost. In this connection, we discuss on the results and operational methods.
1.まえがき 相関法は,雑音に強いために,工学の諸分野の測定 に応用されている方法である.ここでは騒音公幸問題 に対する基礎的な研究として,相関法を円形開口によ る音の回折の測定に適用し,測定法の吟味と実測した 開口の特性を音響工学的に検討した.この中で相互相 関関数,自己相関関数のピーク値より算出した二種の 畳で,音圧,エネルギー,寄与率を示した.測定では バソドノイズを音源として,相関プログラムで電算機 をオンライソで動作させ,相関器の代用とした. 円形開口による指向特性,パワーレベル,距離減衰 特性の実測値にピストソ振動の理論を適用し,実測特 性を把握した. 更に,本研究における相関法の測定限界,測定上の 問題点を見出した.
2.相関法による測定原理
一般的な測定原理は, Goffの論文にある1)が,ここ * 株・ノード ** 東京大学宇宙航空研究所 図1測 定 系 では測定系に合わせて述べる.測定系を図1に示す. 図は円形開口による回折の測定の説明図である.音の 伝搬径路も示してある.音源Ⅳは,測定に不必要な雑 音と考えてよく,測定用音源SPとは無相関と仮定す る.相互相関をとるため,点1を基準点,点2を測定点 とし,これらの点の音圧をPl, PZとする.点1はSP の近傍であり, SPからの伝搬音のみを受音し,点2 ではSPとNの音源からの多数の径路を経た伝搬音を 受音する.従って(1), (2)式となる. Pl(i) - aP(t-Tl) P2(i) - ∑ β,nP(i-T2m) †l一+Z rnpN(i-T'N)
n (1) (2) m, nは伝搬径路の数, a, β, γは減衰率, Tは伝搬時 間を表わす. Pl(i), 22(i)を各々Kl, K2倍に増幅した・
十
.
畢
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70 鹿児島大学工学部研究報告 第18号(1976) el(i), e2(i)を相関器の入力とするので,相互相関関数 Q12(I)は(3)式となる.
412(T) -.Ti_-i /.T el(i)e2(i.I) dt
= KIK21im r-●00/.T
αク(t - Tl) ・ (S p-?(i-T2-・T)・写γnpN (i-Tγn・T))dt (3) PとPNは無相関であるから,上式の( )の第2項は, 債分の際消える. (3)式から各伝搬径路に相当するピ ーク値が多数存在することが分かる. 今,開口のみの伝搬径路に注目し, ∑βn-β, T2,A hl -→丁2 とすると(4)式となる. 412(I) - KIK2aβ禁妄J:Tp(i-Tl) ・ I,(i-T2+I)dt - KIK2αβR(I-Tn) (4) R(I)はP(i)の自己相関関数で, Tn -T2-Tlである. qh2(I)はT-Tnでどこク値をもつ. ここで, el(i), e2(i)の自己相関関数をそれぞれ411 (丁), 422(I)とし, ¢12(TTれ)/Qll(0)( - Xとする), 412(I,a)/ (Qll(0)・少22(0))1/2( - Yとする)なる二種の量に着目し ょう. Qll(0) - α2K12P2,.m.S ¢22(0) - K22P茎,.,a.S ¢12(77托) - KIK2αβP2,.仇.S) (5)
但し, P,.,a.Sなる記述は音EE実効値である.従って X-慧 (6) となる・ Xは, Kl,K2, αが一定ならβに比例し,刺 定点2の音圧に比例する量である.又,基準点,測定 点の音圧の比であり,基準点,測定点間の減衰を示し, 音源の音圧変動を考慮した測定点の音正をも表わす. エネルギーは,音圧の2乗であるから 喜-冨X2 (7) 基準点,測定点のエネルギーIl, I2の比は, X2で示さ れる.一方yは(8)式となる. Y-監 (8) yは,れ♪2の平均値が零の時の相関係数の定義式で あるが, (8)式より測定点における全音EEに対する一 つの径路を経た(ここでは開口)音圧の寄与率を示す. β-∑β,nと考えれば測定用音源SPの寄与率とな Jn る. ¢12(I)の波形については, R(I)即ち音源の自己相関 関数の波形となる. Wiener-Khintchineの公式より, パワスペクトルG(I)の自己相関関数R(I)は R(I) - J:印G(f)cos 2wfTdT (9) G(f)-A,バンド幅B,中心周波数foのバンドノイズ では(10)式となる.R(I) - ABSinc汀BT COS 2nJoT (10)
これはJoの信号がSinc関数で振幅変調された波形で あり,エンベロープが零になるのはn/B(n-1,2, 3-・) でBに反比例する.エンベロープの山は2/3汀,2/5汀, 2/7万と変化する.
3.測定方法
測定ブロックダイヤグラムを図2に示す.雑音発生 器で白色雑音(ガウス性)を発生し,増幅してスピー カーより障壁の開口に垂直入射した.スピーカー,開 口,マイクロホソ1の中心を合わせ,スピーカーと開 口,マイクロホン1の距離を50C仇, 20cntとし,開口 での放射音を測定するマイクロホン2を,指向特性の 測定では開口より60C7nの位置に,距離減衰特性の測 定では開口の中心軸上3mまで変化した.受音した 音を両系統ともマイクアソプ,フィルタ, AD変換器 を経て電算機に入力し, ¢12(Tn), Qll(0), ¢22(0)の値を 出力し,相関波形をプロッターで描かせた.フィルタ の切換によって測定周波数0.56-1. 12, 1. 12-2.24, 2.24-4.5, 4.5-9RT2=のオクターブバンドを用い た. AD変換器りサソプ1)ソグ時間を50FLS,サンプリ ング数を200点とし, 10KHjE, 10msまで測定範囲を 広げた.開口の直径は20, 10, 5, 2.5C椛の4種とし, 障壁は矩形の合板で,約1cnt厚,広さ2.7mX1.35m で,開口の中心位置を下辺より60C椛,両側辺より1.35 図2 測定ブロックダイヤグラム柚木・神崎・五十嵐:相関法による音の回折の測定 71 l】 劔剪剪 爪2 劔.6ms,1. 冀) 剪 ー I I 剿ツBツツ 剪 I I 一 白ツ 剪 (0.9,0.3) A/Ta.A 剪 ー I ∫ ∫ A 啖(8テ2R 禎F2 昭4,0.35) 劔 /Te 稗r v ^! 價ィ爾 b 「 r r 、 l \′、、 ハ 刄n∧一八 _∧∠ 艇
vvu ∫ 臥′ ∫ ∫ 哘eeb UUu " 】UU 著 (
Ⅴ I l ∫ vV 劔 I I I l 白爾爾爾剪 I T.I 凵 ∫ tlt巾 剪 I ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 遅 延 時 間 r (ms) 図3 相関波形の実測例(D-5.0cm,I-2.24-4.5K放, 0-00) mにした. 指向特性測定時の相関波形の一例を図3に示す.相 関波形にいくつかのピークを生じており, Tb時間のピ ークは開口を経た音波によるもので波形のTb-2.6 msは実際の伝搬時間に相当する. Ta時間のピ-クは 障壁で反射した音がマイクpホン1に入ったために生 じたものである.よって開口によるピークに影響を与 えないためには,障壁面に吸音材をはった方がよい. 障壁のエッジによる回折音のピークは,各エッジの最 短距離に相当するTc, Td, Teに生ずるものと思われる が,直線エッジであるため伝搬時間はTc∼Tf, Td∼ Tq, Te∼T/. Tgとなり,お互いに重なり合っているの で分からない.バソドの中心周波数3.37肌に相当 して,実測波形の周期Toは0.3msと一致する.相関 波形のエソベロ-プについては,実測と破線で示した 理論とが大体一致する.
4.円形開口の回折の測定結果
4.1指向特性 実測により計算したX( - 412(Tn)/Qll(0))の任意の 方向の値をβ-Ooの値で正規化して,実測の指向特 性を得た.図4,図6にこの特性を示す.この図は各 々バソドの中心周波数(波長}o)と直径Dとの関係が D/l0-0.991, 1.982である.開口に音波を入射した 時の特性は,開口部に振動源があると仮定すると考え やすい.そこで理論値は,無限大剛壁で円形振動板が 同速度,同位相で振動して発せられる音の指向性で ある.この場合の指向係数Rは次式で示される2). R 2Jl(7r(D/)) ・ Sin e) 7r(D/A) Sin e (ll) 但LDは直径, Jlはベッセル関数である. この理論値を,バンドの中心,上限,下限周波数に 対し破線で示した.バンドノイズによる実測指向特性 は,中心周波数の理論指向柳生に大体一致し,図4と 0 .05 .1 .5 指 向 係 数 図4 指向特性(D/10-0.991) 9 . 寸 . + N . U a (i)Et令72 鹿児島大学工学部研究報告 第18号一(1976) -くト D-20cm, 2.24-4.5KH. + D-10 , 4.5-9 - 75o 0 .1 .5 相 関 係 数 図5 相関係数(D/ん-0.991) 1. 0 .05 .1 .5 指 向 係 数 図6 指向特性(D/10-1.982) 1. 図6の比較からD/}が大きいほど指向特性が鋭くな る.図6では理論特性と同じように指向性が鋭く,サ イドローブが現われているのが確認される. 実測した相関係数を図5,図7に示す.それぞれ, 図4,図6の実測指向特性に対応する.理想的な値は 1.0であるが,実測値は1.0以下を得た. 1.0から離 0 .1 .5 相 関 係 数 図7 相関係数(D/10-1.982) 1. れるに従い,他音源,他径路の信号の混入の度合が大 きいと考えられる.直径の小さく,測定周波数の低い 場合は,相関係数が0.55-0.18と低く,相関波形の ピーク値の読み取りは困難であった. 4.2 透過パワーレベル ここでは,円形開口から放射されるエネルギーが, 直径,測定周波数バソドの変化によりどうなるかを実 測し,理論と比較する.透過パワーレベルは,開口を 中心とする同一球面内の任意の数点の音匠の2乗平均 で求められる.よってXをXKl/K2なる受音音圧に相 当する値に換算し, 150毎の指向特性の値を更に50 毎に内挿した値を用いた. ♂-00, 50, ---900の音圧 をPo, PS,-・・・P90とし,透過パワーレベルの相対レベ ルをR・Lと記述し(12)式で計算した. R・L. - 10loglO(Po乞+P52・・・-+P902) (12) 理論的には,直径Dl, D2の開口のエネルギー密度 を各々El, E2とすると,エネルギーZl, 72の比は ・ologlO喜-10loglO芸・ (Bi2)2(dB) (13) となる.仮にD2-nDl, E2-El・27nのとき(13)式は 10loglO(27n・n2)(dB)となる.エネルギーは, 1オク-ブ上の周波数バンドに上ると3dB増加し,直径が2 倍になると6dB増加することになる.図8では実測 値が理論値にほぼ一致している.
柚木・神崎・五十嵐:相関法による音の回折の測定 73 図8 透過パ ワ ー レベル 4.3 距離減衰特性 測定点の音圧をdB値で表わすために, (9)式より 得られる次式(14)を用いる. 10logI210logI1 -20logK1-2010gK2+20logX (14) (14)は,基準点に対する測定点のエネルギーレベルを 示すので,開口からの距離減衰特性をとるには基準点 を開口の中心に配置すべきであった.実測値を相対レ ベルとして図9に示した.この特性で, d/Dがはぽ1 以下の時は実測値の変化はゆるやかで,開口の放射特 性に指向性のあることを示し8), d/Dが1以上になる と点音源の放射特性を示し,距離が2倍になると破線 で示した理論的な6dB減衰特性に一致する. 5.結 論 本研究により以下の結論を得た. 0・5 1 2 ・ 5 10 15 d/D 図9 距 離 減 衰 特 性 1) ¢12(Tn)/Qll(0)は,ある条件のもとで測定点の音 圧に比例した量で,音源の音圧変動を考慮した値であ る.又,基準点と測定点間の減衰を表わす. 2) ¢12(Tm)/tell(0)¢22(0))1/2ほ統計学的には,相関係 数であり,音響工学では音源の寄与率を表わす. 3)バンド幅が狭くなったり,相関係数の小さいと きには,他の伝搬路の音が測定値に誤差を与える. 4)バンドノイズを入射したときの開口の回折の実 測特性は,ピストン振動理論どおりの結果となった. 今後解決すべき問題点は 1)相関波形で波形のピークが近接して生ずる場合 に,ある伝搬路のピーク値に他の伝搬路の波形の裾が どれだけ定量的に影響するか. 2)直線エッジの障壁で,直線エッジによる回折の 相関波形はどうなるか. 等である. 文 献
1) 冗. W. Go ff : The Application of Correlation Techniques to Some Acoustic Measurements, ∫.
A. S. A. (1954).
2)実書:電気音響工学. p.34コロナ社.
3)日本音響材料協会:騒音対策-ソドブック. p.