鹿児島附近の魚類・プランクトン・海水について
著者
黒木 敏郎, 田ノ上 豊隆
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
4
ページ
143-150
別言語のタイトル
On the Radio-activity of Fishes, Planktons and
Sea-water in the Sea off Kagoshima
第Ⅲ報.鹿児島附近の魚類・プランクトン・
海水について
黒 木 敏 郎 ・ 田 ノ 上 豊 隆 IOntlleRadio-activityofFishes,P1anktonsand Sea-waterintheSeaoffKAGosHIMA. ToshiroKuRoKIandToyotakaTANouE 143 ま え が き 南西海域並に鹿児島南部沿岸に於て漁獲された魚のうち放射能で汚染されたものとして 廃棄された魚の比率は一昨年8月一応減少したかに見えたもの巽,再び増大して10月, 11月と高率を示すに至ったので,魚群回瀧状況を再検討せざるを得なくなり,又海水,プ ランクトン類をも汚染されているか否か検討せねばならなくなった.本報ではそれらに関 する一連の考察結果について述ぺる. A ・ 廃 棄 魚 漁 獲 地 点 と そ の 検 討 もそそも水産漁業に於ては,その採算を成立させるために時間的に空間的に撰択性を帯 びて来ざるを得ないものである.従って某月,某地点で某魚類の獲れた事は,漁獲作業の 行はれた事実を通してその魚類の存在する現象を示すにすぎない.作業の行はれなかった 時期,行はれなかった地点にも同じ種類の魚が存在しなし、とは云はれない訳であって,放 射能を帯びた魚が漁獲されたと云う事実を判定するのにはこのような広い視野を具えて後 でないと誤まった結論を把える虞れが生じよう. 所で,鹿児島の近海で行はれる漁業は,放射能に関係ある魚種バシヨウカジキ,キハダマ グロの2つについて云えば大体次の通りである.即ちバショウの主漁場は東支那海,大体 の漁期は∼7月∼1月∼(盛漁期:11,12月)であってキハダの主漁場は南西諸島南東海 域,大体の漁期は∼10月∼7月∼(盛漁期:1,2,3月)である.シイラ,サワラの如き はしばしば放射能をもつけれども主目標としての魚種ではなくて各種の純へ副次的に掛る にすぎないものである. 今鹿児島県(主として鹿児島港)に水揚げされた4魚種の魚獲尾数とそのうちの放射能 を帯びた魚の尾数とを月別に掲げれば第16表のようになる.(この他の魚種には今迄の 所放射能汚染による廃棄魚は生じていなし、.) 見る通りシイラの廃棄尾数の率は7月以降急に下り9月以後は全く見られないが,バシ * ヨウカジキにつし、ては7月検査緩恕後8月一旦下り再び9月に山を示して後12月迄低減 する.(実数では11月が最高を示す.) 放射能が検出された為に廃棄処分に遭った魚がどの地点で獲れたかは別報(第1報,第 1-'’2図)に掲げられているが,これによればその漁獲地点が南方から次第に北上して東支 *7月19日,公衆衛生局長通牒による。B
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一−−−_ 1 0 シ イ ラ C”yp"αe"α 〃”〃γ〃s 己①轡の⑯匡匡 20 C 20/5495 Fig.10.Catchsandwastingrateof Isがoオル0ノWSC〃g〃”〃s 15/244 18/200 11/165 4/98 16/350 31/963 36/1652 8/1046 71/1145 31/494 4/375 2/370 0/1211 0/423 0/144 0/736 4/1537 1/1266 2/441 0/724 0/776 0/191 0/29 1/1239 9/963 1/701 0/663 4/381 0/772 0/159 3/617 1954〔InKAGosHmAPrefecture,atmainlyKagoshimaPort) う.まとまった漁獲のあるような魚 群が動くにつれて漁場も動くのだと 考える時だけ,そのような魚群その ものの遷移と漁場の遷移とは一致す る筈だからである. そこで定置網の漁獲が問題にな る.これでは漁場が空間的に固定ざ れ魚の動きが時間経過的に眺められる場合と考えてよい.第17表(第
10図参照)によれば,実数の多いの は9,10,11月であるがその率から 見ると7,9,11月に山が出る.そ こで3∼4月の水爆影響を受けた魚 群が9月に鹿児島附近へ到来したと見てもよいのではなかろうか.別報
第1-''9図でも判るように6月初頃
台湾東方にあった漁獲地点重心が7 月には種子ケ島に達しているから, カジキ魚群の重心が東北上する速度 は1ケ月当り略交800kmとなる. ビキニから種子ケ島迄の曲り経路を 約5000kmとすれば此等の魚群が 約6∼7ケ月で到着すると考えるの董萱諒崖
那海へ入るような遷移を示している.又7.,8月には殆ど漁獲されないのに10,11月と
再び九州西南海域で獲れ始めている.これは漁場の遷移という事と魚群の移動という事と
の関係を充分に勘案しなければ資料として活用するのに誤を生ずる虞れのある現象である
144 Total 139/4718 108/4161 7/5700〔Neartheshore〕 Trap〔orgilDnetfishing 黒木敏郎,田之上豊隆一鹿児島附近の魚類,プランクトン,海水について145 〔Farofftheland〕 Longlinefishing Fig.11.Wastednumberoffourkindsoffish. も妥当を欠くものではない.沖合 延縄漁獲尾数に対する放射能廃棄 魚尾数の比率と鹿児島県南部沿岸 の定置網(又は刺網)で漁獲され たものの同率とをバシヨウカジキ に関してのみ図示したのが第10図 である.これを概観すれば,被災 魚の重心は南洋方面より約6ケ月 の遅れと士1ケ月の時間的拡がり とを生じつつ薩南海域に到着した のであろうと思われる.各月の旬 単位で廃棄魚を集計して4魚種に つきその変化を画いたのが第11図 で あ る . こ れ に よ れ ば 次 の よ う な 事が推定されて来る. 沖合延縄によるものが9月に皆無 で10月になって多くなり11,12 月と低くなっているのは被災魚が 鹿児島近海を通過して北上し再び 南下して来たものと見るべきでは あるまいか.10月以降のものが被 災第2群(8月以前の群を前半3 月の爆発によるもの,10月以降の Total catch
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11 CatchlWasted もの力:後半4∼5月の爆発によるものと2群に区別して考える場合の第2群)であると考 えるのには,内臓のカウント変化から見て無理があるようである.即ち,爆発時の違いによ る群の別を論ずるためには廃棄魚類内臓のもつ放射能の強さにも又2つの山を想定しなけ4637523649544494
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Wasting rate(%〕 6.1 9.2 6.5 4.3 0 3.1 1.6 0.76146 れぱ少くとも1日群南下 の量の1,5,7,倍に上る ものと計算され,その 実数は11月に於て最高 と推定されるものであ る. このようにして放射 能廃棄魚の漁獲された 地点やその尾数,日時 などを調査する事によ って,南洋方面から日 本近海へ至るバシヨウ カジキの回海や支那海 での資源量添加率を推 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 蛍 , 4 巻 PlateⅡ、Rearviewofdeformed HateⅡ、Rearviewofdeformedtailfin 定したり出来る点は,……一一一一……一一一一一 誠に数少し、水爆実験活 用のさ>やかな1例で でもあろうか. ■叩U叩00叩叩MWUEUIOUOUUO叩叩叩10”0K 被爆の影響であるか 否かは全く不明である がカジキ崎型尾の写真 を 掲 げ る . こ れ は 昭 和29年8月奄美大島 西方海域に於て敬天丸 が捕獲したもののうち Survey-meterで放射 能を検出された2尾の 健 「郡.了、肘..,.‘''.: E:SF?.・ず弓” 〔B). &d広
う I 黒 木 敏 郎 , 田 之 上 豊 隆 一 鹿 児 島 附 近 の 魚 類 , プ ラ ン ク ト ン , 海 水 に つ い て 1 4 7 ● そのうちでも前半(8,9,10月)にはC〃α9伽〃Ossp・が最も多く,ついで剛加soノg郷a バシヨウカジキの尾ビレである.共に体表count200∼400程度のものであるが,Aは 普通でありBはしま甚しく崎型である.正後面より写したBの形から判るように流体力学 的には上下の均斎が割合とれている.参考迄にB魚の内臓の灰化したもの100mg毎の Countを掲げるならば,腎・牌・肝の各臓で夫を1273±12,698±5,443±5c/minであ った. B・鹿児島湾附近の海水・プランクトンについて 9月,10月,11月と鹿児島県南部沿岸及び鹿児島湾口の定置網で漁獲されたバシヨウカ ジキのうちより若干の放射能汚染魚が発見されるに至ったので,9月以降のプランクトン, 12月以降の海水・プランクトンについて放射能の有無を検討した. プランクトン・海水は湾内,湾口に於ける本学で数年前より実施している月初めの海洋 観測の30定点及び屋久島,種子島沿海の黒潮流域の地点で採集したものである.プラン クトンは各点毎に北原式定量用ネットを50m層から垂直曳きして得たもの,海水は第12 図a,bに示した各点に於て,表層及び50m層から約2どづ>採水したものである. 第19表及び第20表参照. Fig.12.StatiomlpointsontheKagoshimaBayandneartheYakuIsland、 a. b、 KA60sHIHA KA60sHIHABAY E13蝿0F
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﹃漢週︾” ムーメ 10. 10. 101 0 月 分 以 降 の プ ラ ン ク ト ン は,湾口部(1∼12,27−30 の各点)と湾奥部(13∼26の 各点)とに分けて灰化し,之 をCounterにかけた.測定 結果は第19表に掲げた. 表に見る如く,プランクト ンには測定期間を通して殆ん ど放射能を認め得なかった. 〔海水〕海水の放射能検索 148 要 約
廃棄魚(=綴譲)は一昨年9月一応減じていたのであるが,'0,,,月と再び箸
るしく増大した. そこで著者等は鹿児島沖合の海面でもプランクトン,海水が汚染されているのではない かと危倶するに至った. 1.Back-Scatteringswere36±1∼37±1は三宅氏等の行った方法と同 2.Part-mark:A=AllPoints〔1∼30〕様のものに基いて之を行う. S=SouthPoints(1∼12,27∼30) 即ち,海水1乏中へ鉄明諜 N=NorthPoints(13∼26) 並に塩化バリウムを夫々Fe 3.Respectivelycountedfor4min、 10mg,BalOmg生ずる如く 投入し,煮沸後冷却し,フエノルフタレソ指示で桃色を呈する程度にアンモニアを以て中 和して生じた赤褐色沈澱を漁別乾燥後Counterにかけるのである. 11月以前の採集分では海水量が少く計数結果が不確実と思はれたので,12月から第19 表に示すような11点で表層及び50m層より約〃宛採水測定した.第12図b参照. 湾内の分については更に1月,2月と之を行った.結果は第20表に示す.海水の場合も プランクトンと同様,鹿児島湾口,屋久島北方沖黒潮流域共に放射能を認められなかった. 尤も別報(第1報)で触れたように,混合塩類の有する放射性物質吸着能自体にも若干 の疑問が残っているので,海水のもつ放射能に関しては今後更に研究して行く予定であ る. 以上に得られた結果は,要するに「鹿児島湾及びその南方の屋久島北側黒潮系水域の海 水中には塩類にもプランクトンにも放射能が認められなかった」と云ふ事なのであるが, 現実にまだ流着しないのか,或は来ていても稀釈され過ぎて認められないのか,少くとも 我灸のやった方法では放射能は認められなかったという事をこ弾に報告する訳である. sp.,BaC〃γjas卿"z属が多かった.後半(11,12,1月)の植物性プランクトンとして はCh・属もRh、属も少くなり之等に代ってSオ”〃α"叩批jSsp.などが多くなっている. 9月分のプランクトンは採集 Table19.Countsofplanktons 量が少な過ぎるので,全部を 6∼8,Jan. 121 141 2∼4,Dec. 167 153 11淵鵬│…柚一枚の穂紙に集めて灰化し,
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31.−37.1'N 130つ−45.3′E 0±1 Dec、 Jan・ Feb. 25 −1±1 本報では著者等はバショウの魚群衆体変動と定置網漁獲に於ける廃棄率との関係につい てのべ,更にプランクトンにも,海水にも,何等放射能を認め得なかったと云う事実をの 1.Backscatteringwere32±1 2.Respectivelycountedfor4min.150 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 4 巻 灰化したもの100mgにつき毎分カウントは夫々肝臓で443±5,牌臓で698±5,腎臓 で1273±12であった. 採水,プランクトン採集等に当って尽力して頂いた本学玉利教官,隼人丸乗組員,漁業 科学生の各位に対して深甚の謝意を表してやまない R6sume