Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№20:早期舌扁平上皮癌の後発リンパ節転移に対する
上皮間葉移行とOvol2の発現
Author(s)
菊地, 崇剛; 栗原, 絹枝; 大金, 覚; 河地, 誉; 橋本,
和彦; 野村, 武史; 立川, 哲彦
Journal
歯科学報, 119(5): 457-457
URL
http://hdl.handle.net/10130/5004
Right
Description
目的:口唇閉鎖力(Lip Seal Strength)は,摂食嚥 下機能や構音機能に関与し,加齢や全身疾患で低下 する場合がある。口唇閉鎖力の低下は,食べこぼし やムセなどの機能障害の一因となることから,口唇 閉鎖力を維持・改善させることは重要である。高齢 者において,毎日訓練を実施することで口唇閉鎖力 が向上することは明らかだが,それより少ない頻度 での効果は明らかになっていない。本研究では,高 齢者を対象に,1日おきの頻度で口唇閉鎖訓練の効 果を検証することとした。 方法:対象者は,東京歯科大学水道橋病院補綴科外 来患者で,65歳以上の女性14名(平均年齢75±6 歳)とした。対象者を訓練群7名およびコントロー ル群7名の2群に分けた。被験者の選別はランダム に割り付けた。訓練群は口唇閉鎖力訓練装置(りっ ぷるとれーなー,松風)による1回3分間の口唇閉 鎖訓練を,1日1回,1日おきに4週間実施した。 コントロール群は口唇閉鎖力の計測のみ行った。計 測には口唇閉鎖力計測装置(りっぷるくん,松風) を用いた。計測は3回行い,最大値を計測値とし た。計測時期は,訓練0週,2週,および4週とし た。訓練0週,2週,および4週の口唇閉鎖力を, 群毎に一元配置分散分析後 Tukey 検定を用いて比 較した(α=0.05)。(東京歯科大学倫理審査委員会 承認番号725) 結果:0週の口唇閉鎖力は,2群間で有意差を認め なかった。訓練群の口唇閉鎖力(平均値±SD)は, 訓 練0週(14.5±4.4N)と4週(16.3±3.8N)お よ び訓練2週(15.0±4.3N)と4週で有意差を認め た。コントロール群の口唇閉鎖力(平均値±SD) は,訓練0週(11.3±3.7N),2週(11.4±3.4N)お よび4週(10.5±3.9N)間で有意差を認めなかった。 考察:訓練開始早期の筋力向上は,筋肥大を伴わ ず,神経系要因の改善によるものとされている。本 研究結果から,高齢者の口唇閉鎖力は訓練によって 神経系要因の改善により向上するが,そのためには 4週間程度必要であることが示唆された。若年者で は,4週間の訓練終了後1週間で口唇閉鎖力が低下 し始める。また,筋肥大効果を得るには4週間以上 の訓練継続が必要なため,口唇閉鎖訓練は長期的に 継続して行う必要があると考えられる。 本研究より,高齢者の口唇閉鎖力は,専用の器具 による1回3分間の訓練を1日おきに4週間行うこ とで向上することが明らかとなった。 目的:上 皮 間 葉 移 行(epithelial to mesenchymal transition:EMT)とは,上皮細胞が間葉系の性質 を持つ現象のことである。EMT は腫瘍の発生,浸 潤,転移などと関連しており,当科でも舌扁平上皮 癌において EMT が生じていることを報告してき た。
近 年,EMT は EMT が 完 了 す る full EMT に 至 るまでに hybrid EMT といういくつかの段階に分 かれ,それぞれ異なる機能的特徴があることが報告 された。
一 方,Ovol2(Ovolike2)は zinc finger 転 写 因子である Ovol family に属し,EMT を抑制する 数少ない転写因子として近年発見された。これま で,乳癌,肺癌,前立腺癌,肝細胞癌,上咽頭癌な どで Ovol2による EMT の抑制が報告されてきて いるが,口腔癌における役割は未だ不明である。 本研究で我々は,早期舌扁平上皮癌の EMT にお ける Ovol2の関与および後発リンパ節転移への影 響について検討した。 方法:2009年4月から2017年3月までの8年間に, 東京歯科大学口腔がんセンターを受診された stage Ⅰ,Ⅱの舌扁平上皮癌患者のうち,術前化学療法を 行わず,初期治療として手術を行った63例を対象と した。切除された舌扁平上皮癌組織のパラフィン切 片 を 上 皮 系 マ ー カ ー で あ る Ecadherin,間 葉 系 マーカーである vimentin および新規転写因子 Ovol 2を用いて免疫組織化学的染色を行い,半定量的分 析を行った。HE 染色標本から腫瘍深達度(depth of invasion:DOI),簇出(tumor budding:TB), 浸潤様式(YK 分類)を評価し,EMT および後発 頸部リンパ節転移との関連を検討した。 結果および考察:Ovol2は正常上皮細胞から Hy-brid EMT へ移行する時点で有意に発現が減少して おり(p<0.01),TB の個数が多いほど(p=0.03), YK 分類が高いほど減少していた(p=0.023)。一 方,後発頸部リンパ節転移との関連が考えられたの は,vimentin の発現(p=0.033)と TB の個数(p =0.026)のみで,YK 分類や DOI,Ecadherin や Ovol2の発現,EMT では有意差を認めなかった。 TB の個数はこれまでも後発頸部リンパ節転移のリ スク因子として多くの報告がある。Hybrid EMT と full EMT で比較したところ,DOI が大きくなる ほど full EMT が多くみられ,vimentin が観察され た。 本研究により,Ovol2が EMT の初段階である Hybrid EMT に関与することが示唆された。また, 早期舌癌の後発リンパ節転移には TB だけでなく, vimentin の発現がリスク因子として考えられた。