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東北大学遺伝生態研究センター通信 No. 18

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東北大学遺伝生態研究センター通信 No. 18

著者

東北大学遺伝生態研究センター

発行年

1992-09

(2)

遺伝生態研究センター通信 NA18

泉九九苧

磨,遺鵬砕畑

JGE

1992. 9. NA18

植物の性の営みを探ろう

筑波大学・農林学系 生 井 兵 治 カラシナやダイコンなど菜の花の開花から結 実までの様子を概観してみよう。 アプラナ科植物の花は1本の雌蕊と6本の雌 蕊をもつ両性花であり、花粉媒介昆虫の何度も の飛来や風によって自家花粉と他家花粉が混合 されて繰り返し受粉されている。また、品種に よっては、雌蕊に近い4本の薪が関前してから 雌蕊の柱頭に触れることによって、自動自家受 粉を行う。この自動自家受粉能力の大小は、自 家和合性の強弱との間に直接的因果関係をもた ない。しかし、カラシナ類には自動自家受粉能 力・自家和合性ともに高い品種があり、それら の花器特性は品種が育成されたり長いこと栽培 植物の性の営みを探ろう が続けられてきた地域における受粉環境と強く 関係していることがわかっている。一方、ダイ コンには、自動自家受粉能力がかなり高い品種 があるが、これらは総じて自家和合性が低く、 逆に自動自家受粉能力がかなり低い品種にはあ る程度の自家和合性を示すものがみられる。教 科書的にみれば、カラシナは部分他殖性を示す 自家和合性の自殖性植物であり、ダイコンは一 般には高い自家不和合性を示す他殖性植物であ るということになる。 実際には、個々の花には十数回もの訪花があ り、混合受粉と追加受粉が普通の姿として行わ れているのである。それでもカラシナなら自殖 次 筑波大学・農林学系 生井 兵治--一一一1 リンゴ斑点落葉病抵抗性の遺伝と育種について -・・----I--I-・・・-・・-.----一一---弘前大学・農学部 斉藤 健一・・・-15 平成4年度ワークショップについて ワークショップ「真核微生物の環境応答と遺伝子発現」 -・・・・・・--・-一・-・--・-・--・-・-・・・-・・・-広島大学・理学部 吉田 和夫-・-ll 7 ワークショップ「植物の形質発現と環境適応機構」 -.--一・・-・---I-一・・・-・・一・一---一京都大学・理学部 河野 昭一-I-・8

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遺伝生態研究センター通信 No.18 り、混合受粉と追加受粉が普通の姿として行わ れているのである。それでもカラシナなら自殖 種子が多く実り、 -クサイならほとんど他殖種 子しか結実しない。いずれにしても、自殖性の 高いカラシナでもたくさんの他家受粉を受けて おり、他殖性の強いダイコンでもたくさんの自 家受粉を受けている。こうして、カラシナの畑 では1花の柱頭に8百一千粒の花粉が受粉され て、そのうちのわずか20粒あまりの花粉だけが 妊嚢と重複受精して、次代に遺伝質を伝えてい る.しかし、腫嚢と同数の20校の花粉を受粉し たのでは約5個の種子しか得られず、 100粒受 粉しても10個の種子、 500校受粉しても10数個 の種子しか結実しない。個々の花のなかでは、 このような花粉の協力と競争が常にさまざまな 形で生じており、受粉花粉粒数と結実率との間 には直線的な相関関係は認められない。こうし た状況からみれば、受粉花粉の圭と質が次代の 遺伝特性に密接に関与しているに違いない。 名著『種の起源』などで進化論の祖として有 名なダーウィンは、植物の進化にとって最も重 要な場面は生殖の過程すなわち性の営みである ということを19世紀中頃に気づいていた。この ことは、植物研究を飯の糧としている大方の人 達が先刻ご承知のことである。また、他殖性二 倍体植物集団における世代の進行と遺伝構造の 変化との関係については、これまた有名な-ー ディ・ワインベルグの法則がある。この法則の 前提条件の1つに無作為交配があり、集団内で は各個体間で他家受粉が万遍なく行われ各個体 間の遺伝子流動は完全に無作為であるという前 提である。個体数が無限に大きいとか、他の集 団から隔離され遺伝子の移入や漏出が起こらな いとか、その他いくつもの前提条件がついた架 空の理論的集団についてみれば、種子繁殖によ る世代がいくら進んでも、個々の対立遺伝子の 遺伝子頻度や遺伝子型頻度は平衡状態にあり、 集団の遺伝構造は変わらないというもので、こ れまた先刻ご承知のことである。 遺伝資源の探索・収集や保存系統の維持・増 殖においては、ハ-ディ・ワインベルグの法則 などが基礎となり、サンプル集EZ]の大きさが最 重要な要素として取り上げられている。遺伝資 源保存活動の実際では、可能な限り少数個体で 各保存系統の安全な維持ができることが望まし い。そこで、そのためのシミュレーションが行 われており、いくつかの設定条件のもとで自殖 性集団や他殖性集巨削こおける理論上の集団の大 きさの最小値が推計されている。この場合、通 常は花粉媒介昆虫などの受粉行動は要因として 取り上げられていない。 一方、アプラナ科植物におけるシマハナアブ の他家受粉効率に関する筆者らの調査結果によ れば、シマハナアブが1植物の花上で体の各部 に花粉を付著させて他の個体の花から花に移動 していくとき、数分の後には付着花粉のほとん どを受粉してしまう。すなわち、他個体上の花 への平均他家受粉効率は、約2分後までは1.3 粒/秒であるが、その後は急激に低下して6分 後には0.1粒/秒と、ほとんどゼロになってし まう。これを花単位でみれば、第1花∼第3花 では約1.3粒/秒であるが、その後急激に低下 して第7花では約0.1粒/秒となるということ である。したがって、集団内の個体数が同じで /も、個体あたりの開花数が異なれば、ある1個 体上の花粉が他個体に伝播される花粉流動の範 囲は大きく異なり、各個体が大きく花数が多い ほど花粉流動の範E軌ま狭くなる。逆にみれば、 ある他殖性集団の1個体上の花に結実するため に必要な花粉源の範既は、各個体が小さく花数

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-2-遺伝生態研究センター通信 No.18 が少ないほど広いということである。 さらに、 1つの集団内における個々の個体の 開花期が日長や気温などとの関連で微妙に異な る場合には、開花期の似通った個体同士がそれ ぞれに交雑する浸透性交雑が起こっている。例 えば、九州の秋型ソバ品種宮崎在来を筑波にお いて5月下旬から6月上旬にかけて播種して夏 栽培を行うと、開花期に関する潜在的遺伝変異 が顕在化し、播種後1か月で開花する個体から 2か月経っても開花できない個体までがみられ る。そこで、早咲き個体から放任採種によって 得た次代種子を同様にして再度夏栽培すると、 わずか1回の選抜であるにもかかわらず、開花 期の早い集団へと分化する。この結果から、わ が国ソバ品種の地理的分布に関する考察ができ る。大陸から渡ってきた種子が九州に上陸し、 低緯度地帯の宮崎あたりでは14時間30分以下の 短日にならないと開花できない秋型個体と日長 に鈍感で一定の温度さえあれば開花できる夏型 個体が混在したまま同類交配を繰り返すが、緯 度の高い東北・北海道へと北上する過程で上述 の経緯で集団の分化が起こり、日長に鈍感で一 定の温度さえあれば開花できる牡丹ソバなどの 夏型品種が成立したものと推察される。 ソバは長花柱花のみをっける長花柱花個体と 短花柱花ばかりをつける短花柱花個体からなる 典型的な異型花柱性の他殖性植物で、花粉媒介 昆虫の活動が不可欠である。また、カラシナ類 のように部分他殖性の自家和合性植物でも、花 粉媒介昆虫が不可欠な植物においては、花粉媒 介昆虫の飛来頻度が集団の適応と分化の過程に 大きく影響を及ぼすことがある。すなわち、花 粉媒介昆虫の飛来が無ければ、ある程度の自家 和合性と自動自家受粉能力をもった個体だけが 生殖過程を全うし自殖性種子によって継代でき るo個々の植物種について自家和合性や自動自 家受粉能力の種内変異を詳しく調べると、大き な種内変異がみられ、個々の集団についても結 構大きな遺伝変異がみられるのである。 受粉花粉数と結実との関係についてさらに深 く思いを致せば、配偶子の協力や競争の問題が ある。これは、自然界で日常茶飯事のこととし て起きている花粉の協力関係としての量的効果 であり、花粉の質的効果としての雄性配偶子選 抜の問題であり、雌性配偶子(膝嚢)が受精す る雄性配偶子(花粉)を品定めしているという 雌性配偶子の選別の問題である。このうち、受 粉花粉の量的効果については、既述のカラシナ の例を待つまでもなく、家畜や人間の棉液中の 精子濃度が受精・受胎率に大きく関与すること は常識となっているoまた、姓性配偶子選抜の 問題についても、今日では雌雄産み分けのため にⅩ染色体をもつ精子とY染色体をもつ精子を 物理化学的に選別して受精させるなどバイオテ クノロジーの邪道とも言うべき誤った活用が、 自然の営み-の冒預であるにもかかわらず日々 報道されるご時世であるから、それなりには理 解されやすいものと思われる。アプラナ科植物 の例を示せば、柱頭上から花粉管を早く伸ばし てきた花粉が子房上部(柱頭側)の腫嚢と受精 しやすく子房基部(花托側)の膝嚢はいっも最 後に受精する。しかし、受粉花粉数が少なく結 実種子数が少ない場合は、ダイコンでは完全な 種子に生長しやすいのは子房基部の受精膝だけ である。カラシナでは、約100粒の花粉を受粉 して結実率が50%前後の状態の英では、子房上 部と子房基部に結実しやすく子房中部の腫珠は 結実しにくい。また、キャベツの染色休を1本 添加された添加型ハクサイ(2n-21)の花粉 を多量受粉(約250粒)と少量受粉(約20粒)

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遺伝生態研究センター通信 No.18 で通常のハクサイ(腫珠数は約20個)に他家受 粉すると、少量受粉した場合は添加染色体をもっ た花粉の受精・結実率が高まり、多量受粉の25 %に対して55%であった。このことは、多量受 粉では添加染色休をもつ花粉は競争に負けやす いが、少量受粉では競争の程度が著しく弱めら れることを意味しており、ヒトの顕微鏡授精に 対する不安を抱かせる。雌性配偶子の選別に関 する研究は極めて少ないが、個々の旺嚢が雄性 配偶子を受け入れようとした場合にのみ珠孔か ら誘引物質を出して己の在り処を知らせること などの現象が徐々に分かりだしている。 従来、個々の腔珠の結実に関しては、結実率 という概念が古くからあり、雌性配偶子のうち のどれだけが次代に遺伝質を伝えるかが問題と されてきた。しかし、雄性配偶子である花粉に ついては花粉はたっぷり受粉されるのが当たり 前になっているためか、従来ほとんど無視され てきた。そこで、筆者らはせめて柱頭上の受粉 花粉については、そのうちの何割が受精・結実 して次代に遺伝質を伝達しているかを考えるべ きであるとの観点に立ち、受粉花粉の生殖成功

率(reproductive success rate of pollen

deposited on stigma :略してRSR-P)という 新しい概念を接起した。同様の観点から従来の 結実率をみれば、被受粉雌蕊の庭球(腫嚢)の 生殖成功率(RSR一〇:RSR of ovule in pistil pollinatedの略)ということになる。 実際に、この受粉花粉の生殖成功率(RSR-P)と庭球の生殖成功率(RSR-0)という概 念に基づき、受粉花粉の圭や質が植物の適応や 分化に及ぼす影響を実験的に解析してみた。そ の結果、多旺珠植物のアプラナ類でも単旺珠植 物のソパやイネでも、 RSR-Pの最大値は1花 当たりの腫球数とはぼ同数の花粉を少量受粉し たときであり、実際の数値はカラシナ類では約 25%、ソバでは約20%∼40%、イネでは約60% であり、受粉花粉数の増加に伴ってRSR-P は以後は急激に低下する。それに対して、 RSR一 〇は受粉花粉数の増加にともなって急激に向上 し、以後徐々に向上する。こうして、少量受粉 は潜在する遺伝的変異を顕在化して増幅させ、 多量受粉は受精競争によって遺伝的等質性を高 めることが、理論的にも説明できるようになっ てきた。 近年発展の著しいバイオテクノロジーや分子 生物学にしても、高等植物では植物の性の営み を深く探ることによって、一層の発展とその農 業的利用が可能になるものと思う今日この頃で ある。

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-4-遺伝生感研究センター通信 No.18

リンゴ斑点落葉病抵抗性の遺伝と育種について

ノー\ 青森県でのリンゴ栽培は約120年前、アメリカ からの導入品種(■国光'、 `紅玉'を含む)によっ て始められ、 lやませ■などによる冷害で生産不 安定な稲作を補完する重要な作目として認識さ れてから次第に普及し、現在では我が国におけ る生産量の約50%を占めるまでに発展した。こ の発展の歴史は病害虫及び台風等の気象災害な どによる多くの苦難との載いの歴史でもあった。 青森県の王位品種は`国光'から`デリシャス' 系品種(1970年代中頃)に代わり、約10年前か らは`ふじ'(果樹試験場盛岡支場が育成)へと 変遷した。品種変遷に関わる要因は多様である が`デリシャス'系品種が近年著しく減少した一 因として、リンゴ斑点落葉病に対する擢病性が 考えられる。 リンゴ斑点落葉病の発生は、 1956年に岩手県 で初めて確認されてから次第に拡大し、黒星病 や腐欄病と共にリンゴの主要病害となった。こ

の病原菌はAllemaria mall ROBERTSと同定

された。本病は葉身、葉柄のみならず枝梢、果 実にも病斑を形成し、夏季の異常落葉、樹勢の 低下、果実の成育不良、花芽形成の低下などを 誘起し、果実の生産量ならびに商品価値を低下 させる。この病害防除のために、青森県では年 間10回程度の薬剤散布が必要とされているため、 7月になると農薬(ボルドー液など)でリンゴ 園は白色に変貌する。また、早朝から稼働する スピードスプレーヤーの高周波騒音が周辺住民 に与える影響も大きいことから、耐病性品種育 成は生産コストのみならず多様な公害を低減で 弘前大学・農学部 斎 藤 健 一 きると共に、近年著しく需要が高まっているク リーン・アップルの生産にも必須である。 本病は日本、朝鮮半島や中国大陸での重要病 害であるが、他地域での発生は少なく、アフリ カ南部のジンバブエやアメリカのノースカロラ イナ州では最近確認されたのみであり、本病に 対する抵抗性の遺伝に関する研究報告は極めて 少ない現状にあるので、当研究室で行った抵抗 性の遺伝分析の概要を紹介し、責を果たしたい。 抵抗性の遺伝分析に先立って、抵抗性の検定 方法を確立するため、 ①接種源(胞子懸濁液、 毒素溶液)、 ②検定対象(切離葉、切枝、幼苗)、 ③接種方法(噴霧による無傷接種、針による有 傷接種)、 ④抵抗性の評価方法(病斑指数の階 級)などについて検討した。その結果から、噴 霧接種による幼苗検定は遺伝・育種学的研究に 有効であるが、免疫的抵抗性を示す遺伝資源の 検索には有傷接種による切離葉検定が効果的で あること。また、遺伝分析に際しては非進展型 病斑(指数0、 1)のものを抵抗性、進展型病 班(2-4)のものを雁病性と群別することが 適当であると考えた。 リンゴは一般に自家不和合性が強く、荊培養 による半数体育成技術が未だ確立していない現 状では、純系利用による遺伝解析は不可能であ る。さらに効率の高い世代促進法が開発されて いないことなどにより、世代を重ねての正確な 遺伝分析は容易でない。 土屋ら(1967)は品種・系統間交雑106組合 せ、約3,000個体を供試した切枝検定結果に基

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遺伝生潜研究センター通信 NA18 づき、抵抗性は3対の等価同義遺伝子によって 支配され、優性遺伝子が3個以上関与している 場合に強い抵抗性を示すという遺伝仮説を発表 した。筆者らはその仮説は不適当と判断し、抵 抗性を異にする栽培品種間交雑95組合せ、 13,458個体の幼苗を供試し、噴霧接種後、前述 の基準によって抵抗性個体(R)と擢病性個体 (S)の分離割合を調査した。 羅病性品種間、抵抗性と確病性品種間及び抵 抗性品種間の3交雑組合せ群におけるRの割合 はそれぞれ、 25.4%、 51.8%及び98.7%であっ た。この結果から、抵抗性が一対の主働遺伝子 に支配され、羅病性及び抵抗性品種の遺伝子型

はそれぞれAlt ale (またはAltAlt)及びalt

altであると推定した(斉藤・武田、 1984)o

このような遺伝仮説はニホンナシの黒斑病抵抗

也(小崎、 1973)などの仮説とも一致する。 MalzLS属には多くの種があり、果実がサク

ランボの果実または種子のように小さい〟.

asialica、 M.baccata 、 MJObustaなどは斑点

落葉病に対する侵入、発病抵抗性は共に著しく 強く、抵抗性の遺伝資源として有用である。こ れら3種と羅病性品種`印度■との種聞交雑組合 せ計508個体についてR及びSの分離割合を調 査したところ、それぞれ73.4%及び26.6%で、 3 : 1の分離比に良く適合した。この結果から、 M.asiaticaなどの示す高度な抵抗性にaltとは 異なる優性遺伝子が関与していることが示唆さ れた。この優性遺伝子はAltに対し優性上位で あり、 M.asiaticaなどは異型接合(Rd rdk.) であり`印度'は劣性ホモ型、 altはrdに対して 劣性上位と仮定すると、種間交雑における前述 の分離が良く説明できる。この仮説に基づくと M.asiatica, `印度'及び抵抗性品種`紅玉'の遺

伝子型はそれぞれ、 all all Rdkr44、 All all

rdrdD及びalt all r4kr44であると推定した (斉藤・新関、 1988年).したがって、高度な抵 抗性品種の育成に際しては種間交雑育種は必須 である。 このような課題に応えた成果の一つとして、 アメリカでのリンゴ黒星病抵抗性品種`Prima' などの育成が挙げられる。この品種は我が国か ら導入された黒星病抵抗性のM.floribundb 821と`Rome Beauty 'との交雑組合せの中から、 1943年に見出された黒星病抵抗性個体を第一次 交雑母本として育成され、約30年後の1970年に 発表された。この育種計画は3大学の共同研究 により実施され、約3,000組合せの幼苗35万個 体を接種対象とする大規模なものであった(吉 田、 1986)。このような長期にわたる育種の効 率を高めるたわにも、組み換えDNAなどの新 育種技術の早期確立は急務である。 病原菌の病原性変異についての詳細は割愛す るが、その変異は大きく、薬剤耐性菌の出現も 極めて早く、耐病性品種育成は永遠の課題であ ることを痛感させられた。なお、アポミクシス を示すM.hzpehensisなどを交雑母本として、 耐病虫性、自家結実性や種子繁殖性を兼ね備え た優良品種の誕生が一日も早いことを期待して 止まない。 引用文献 小崎 格1973.園試報A 12:17-27. 斉藤健一・武田和義1984.育雑 34 : 197∼209. 斉藤健一・新関 稔1988.弘大農報 50 : 27-34. 土屋七郎・吉田義雄・羽隼田忠敬1967.園 試報C 5:9-19. 吉田義雄1986.農及園 61(6):98-102.

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ー6-遺伝生態研究センター通信 No.18

平成4年度ワークショップについて

平成4年度のワークショップは「真核微生物の環境応答と遺伝子発現」と「植物の形質発現と環 境適応機構」の2課題が開催されます。それぞれの課題について、企画担当者から紹介していただ きました。関心を持たれた方は、当センター異国利用掛までお問い合わせ下さいo

「真核微生物の環境応答と遺伝子発現」

広島大学・理学部 吉 田 和 夫 ワークショップのねらい 菌類や藻類に代表される真核微生物は、遺伝学的および生態学的にも最も重要な微生物である。 その中には酵母のように産業上有用なものも含まれている。多細胞体制による器官分化の発達した 高等生物に比べ、単細胞性生活環を主体とする真核微生物は、生態的にも環境変化に直接敏感に反 応し行動せざるを得ない。それ故に長い進化の過程において巧妙な環境応答機構を発展させ、独自 の生態系を形成している。すなわち、その生活環自身、直接環境シグナルを取り入れた機構となっ ている場合が多い.以上のような視点から本ワークショップに於いては、酵母や粘菌を含む菌類そ して下等藻類の環境応答の機構を分子レベルでの遺伝子発現を通して探り、さらに、今後の研究の 発展に資するために、これまでの研究の歴史と今後の研究のあり方を検討する。そしてこれら真核 微生物に独自な、あるいは共通する機構を見出し、参加者以外の研究者を含めた共同研究の可能性 を探る。 プ ロ グ ラ ム 日時: 1992年10月2日睡) 13:00-17:00 10月3日仕) 9:00-12:00 場所:仙台市片平市民センター(TEL:022-227-5333) 10月2日(金) 13:00-13:05 開会の挨拶:       広島大学・理・教授 吉田 和夫 13 : 05-13 :45 酵母菌の重金属耐性とそれに関与するメタロチオネイン遺伝子の発現制御: 愛媛大学・理・教授 村山 徹郎 13 : 45-14 : 25 生物環境応答としてのTrans-Kingdom-Mating 一真核生物酵母と原核生物大腸菌との接合の分子機構を中心として- : 広島大学・理・教授 吉田 和夫 14 : 40-15 : 20 真核微生物DictyosteliLLTn discoideumの生活環制御機構: 筑波大学・生物科学系・教授 柳津嘉一郎 15‥20-16:00 Chlamydomonasの性的活性化と光‥ 香川医科大学・助教授 佐藤 忠文 16‥00-16:40 真核微生物特に極小真核植物研究の意義‥ 東京大学・理・教授 黒岩 常祥

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遺伝生態研究センター通信 仙18 16 : 40-17 : 00  総合討論 10月3日(土) 9 : 00-9 ・・ 40  ヒゲカビPhycoTnyCeSの接合と核の行動 東北大学・遺生研・教授 大瀧 保 9 :40-10 : 20 菌類の2次代謝産物生産と生活環制御: 一植物病原菌を例として-10:30-ll : 10 多核細胞性藻類の胞子形成 一環境を利用した生活環の制御- : ll : 10-ll :50 環境応答研究材料としての単細胞槌色藻類 山形大学・農・助教授 貫名 学 東京学芸大学・教授 石川依久子 ー特にプロトテカ属の生活環制御機構について- : 東京理科大学・理工・教授 木村 孝一 ll : 50-12 : 00  総合討論 12:00    閉会の挨拶      東北大学・遺生研・教授 大瀧 保 世話人:吉田 和夫(広島大・理) TELO824-22-7111 (内線2836) 大瀧 保(東北大・遺生研) TEL 022-227-6200 (内線2646)

「植物の形質発現と環境適応機構」

京都大学・理学部 東北大学・遺伝生態研究センター 河 野 昭 一 ワークショップのねらい 植物は固着性であるがゆえに、同一遺伝子型であっても、環境要因の変化に遭遇すると、調節遺 伝子の働きや、成長物質の働きなどが連動して、栄養器官や繁殖器官の形質に極めて幅広い発現を 示すという特質がある。これは一般に表現型可塑性(Bradshaw、 1965)とよばれているが、その 機構の本質はまだよくわかっていないoこの中には、いわゆる量的形質や、 heteroblasticな形質 発現と呼ばれるものまで、さまざまな蔑横が含まれているが、このような植物に特有な形質発現桟 橋の解明は、重要な研究課題の一つである.一方、 Arabidopsisなどを用いた、近年における分子 遺伝学の急速な進歩によって、植物の生殖器官、とくに花の形質発現の遺伝子による制御機溝など は、着々と解明されつつある。 本公開シンポジウムでは、植物の形質発現を制御する遺伝子の働きと環境の制約(constraints ) の相互作用系に関して、分子レベル、個体レベル、集団レベルからの最新の解析結果を基礎に、植 物における環境適応棲横の本質を探ると同時に、進化生物学的視点からもその意味を検討する。話 題提供者には、それぞれの分野における第一線の研究者を配し、このトピックスをめぐる研究の現

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-8-遺伝生態研究センター通信 帆18 状と、将来の発展をも併せて展望することを目指している。 プ ロ グ ラ ム 日時: 1992年11月19日休日3 : 00-17 : 30 11月20日睡) 9 :00-16:00 場所:東北大学医学部艮陵会館(でEL : 022-227-2721) 11月19日(木) 13:00-13: 30 13:30-14: 10 14: 10-14:50 14 : 50115 : 20 15:20-16:00 開会の挨拶・植物における形質発現と表現型可塑性 河野 昭一(京都大学理学部・東北大学遺生研) 光環境の空間的不均一性と植物の可塑的形質発現 鴬谷いずみ(筑波大学生物系) 異なる光条件下における開放花・閉鎖花の使い分け 森田 竜義(新潟大学教育学部) 休憩 植物の表現型可塑性と集EZ]分化 工藤洋・芝地博幸・石粟義雄・河野昭一 (京都大学理学部・東北大連生研) 16 :00-16 : 40  植物のモジュール構造と生長コスト 杉山 修一 (北海道大学農学部) 16 : 40-17 : 30  自由討論 11月20日(金) 9 : 00-9 : 40  イネにおける節間伸長と花芽形成の可塑性 森島 啓子 (国立遺伝学研究所) 9 : 40-10 : 10  イネの根の形質発現と生態型分化 佐藤 雅志 (東北大学逮生研) 10 : 10-10 : 40  休憩 10 : 40-ll : 20 浮稲の水浸溝条件への節間伸長による適応と植物ホルモンの役割 菅  洋 (東北大学遺生研) ll : 20-12 : 00 Arabidopsisの花の形態形成にかかわる遺伝子と突然変異体について 小牧 正子 (金沢大学教育学部) 13:30-14: 10 乾燥ストレス応答性遺伝子の発現調節とシグナル伝達 篠崎 一雄 (理化学研究所) 14 : 10-14 : 50 Superoxide Dismutase(SOD)遺伝子の構造と発現 坂本 敦・田中国介 (京都府立大学農学部) 14 : 50-15 : 10  休憩 15 : 10-16 : 00  総合討論 世話人:河野昭一(京都大学・理学部) TEL 075-753-4131

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遺伝生態研究センター通信 仙18 これら2課題の詳細な内容等については,それぞれの企画担当者・世話人にお問い合わせくださ い。 当センターならびに会場については,下図をご覧ください。 編 集 後 記 本年度開催されるワークショップ2課題につ いて、それぞれの企画担当者から紹介していた だきました。関心のおありの方は、共同利用掛 まで、ご連絡いただけると幸いです。 本センター通信は、センターの活動状況の他 に遺伝生態という新しい学問分野をめぐる国内 外の研究上のトピックス、意見、書評など多様 な内容で構成しております. 皆様のご投稿を編集部までお寄せください。 東北大学遺伝生態研究センター通信No.18 平成4年(1992年) 9月 編集・発行 東北大学遺伝生態研究センター 〒980 仙台市青葉区片平二丁目1 - 1 電話 022-227-6200 (代表) 共同利用掛(内) 3130 FAX 022-263-9845 0研究センター通信の題字は、元東北大学学長 石田名香雄先生の自筆です。

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は、東北大学遺伝生態研究センターのシンボルマ⊥クです。

O IGEは、 Institute of Genetic Ecologyの略称

です。

参照

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