胸部照射による放射線性肺障害のCT所見の検討 山梨医科大学放射線科 南部敦史 市川智章 尾形均 大友邦 小泉潔 内山暁 1、はじめに 胸部照射において、放射線性肺障害は最も頻度の高い副作用の一っである。 今回我々は放射線性肺障害のCT所見にっき若干の文献的考察を加えて報告 する。 2、対象と方法
1992年3月より1993年9月までに当科で胸部照射をおこなった症
例で当院のCTで経過観察されている症例のみを対象とした。そのうち放射 線性肺障害によると思われるCT上の変化を生じた15例にっき検討した。 男12例、女3例である。病名は肺癌9例、食道癌4例、悪性リンパ腫1例、 胸骨への転移1例である。延べCT件数は25件である。そして、15症例、延べ25のCT件数の放射線性肺障害のCT像のpattern,病変の出
現時期、病変の分布につき検討を加えた。 3、結果病変のpatternはground−−glass appearanc
e(Fig1), patchy consolidation(Fig2)
, consolidation with air bronchogr
am(Fig3), honeycomb appearance(Fig
4)の4型に分ける事ができた(Table1)。
病変の出現時期についてはFig5に示した。patchy conso
lidationとair bronchogramを伴うconsoli
dationにっいては全例4週から16週の間に出現しており、またho
neycomb patternは全例16週以後発生していた。grou
nd−glass appearanceについては65%が4週以前に発
生していた。また、ground−glass appearanceにつ
いては照射中に発生した症例が1例あった。 病変の分布にっいては、15例中12例(80%)が照射野内の病変であ り、残り3例(20%)が照射野外にも病変を生じていた(Fig6)。 4、考察 放射線性肺障害は胸部放射線治療において最も頻度の高い副作用であり時に重篤な呼吸障害を生じる。1922年Grooverら[1]により始め
て報告されて以来、その臨床、病理、画像所見について多くの報告がなされ ている。 臨床的には、放射線性肺障害は急性期の放射線性肺炎と晩期の放射線性肺 線維症に分けることができる。 病理学的には、放射線性肺炎は次のように説明される[2]。まず放射線 による細胞膜、DNAへの障害により肺胞上皮細胞、血管内皮細胞が脱落し 血漿成分が間質に滲出してくる。間質の滲出性の変化は肺胞腔へも至り、滲 出物と脱落した肺胞L皮により硝子膜が形成され肺胞腔を裏打ちするように なる。また、滲出物の器質化も生じる。さらに、皿型の肺胞上皮の障害によ る表面活性作用の低下、末梢気管支レベルでの閉塞性無気肺により肺胞腔の 虚脱も生じる。肺炎の重症度は滲出性変化の程度及びそれらがどの程度再吸 収されるかに依存し、放射線によるリンパ流の障害が強い場合には再吸収が 著しく遅延し重症になりやすいと言われている。滲出性の変化が完全に吸収 されれば肺の変化は消失し、不完全であれば間質の膠原線維の増生に対応す る放射線性肺線維症に移行すると言われている。放射線性肺線維症では間質の収縮による肺のvolume lossが強く見られる。
画像所見については、初期の報告では胸部単純X線撮影の報告が中心であ ったが、最近ではCT所見のまとまった報告もいくっか見られる[3]。 今回我々の15例のCT所見の検討では、放射線性肺障害は4型に分ける事ができた。すなわち、ground−glass appearance,
patchy consolidation, consolidati
on with airbronchogram, honeycomb
patternである。これらの所見は放射線性肺障害に特異的なものでは なく、組織学的にはそれぞれ、間質を中心とした炎症、末梢の気管支の炎症 による肺胞腔への滲出性変化、肺胞腔の広い範囲の炎症や滲出物の器質化、線維化に対応すると言われている。しかし、consolidation
with airbronchogramにっいては今回の場合肺野のvo
lume lossも伴なっており前述したような機序による肺胞腔の虚脱
も病変形成に大きく関与していると思われる。各CT像の出現時期にっいては、honeycomb patternは
全例が16週以後に見られており慢性期の変化と思われ、consolid
ation with airbronchogram, patchy
consolidationは全例4週から16週の間に見られており亜急
性期の変化と考えた。ground−glass appearanceは
64%が4週以前にみられ急性期の変化と考えた。すなわち、急性期に間質の炎症に対応するground−glass appearanceがみら
れ、亜急性期には肺胞腔への滲出性変化、また滲出物の器質化、肺胞腔の虚脱に対応するpatchy consolidation, consol
idation with airbronchogramが生じ、慢性期
には線維化に対応するhoneycomb patternが見られると考
えた。しかし、今回の検討では各症例のCTによるfollow upが不
十分であり、実際にはground−glass appeararceか
らhoneycomb patternまでの変化を観察できていず、また、
各病変の出現時期としたのは、実際にはCTの撮像日であり正確な病変の出 現時期を反映しているとは言えない。各CT像の出現時期にっいては、比較 的短い間隔での定期的なCTによる経過観察に基ずくさらなる検討が必要で あると考えている。 従来放射線性肺障害は照射野に一致した解剖学的構造とは無関係な病変分 布が特徴的とされてきたが、今回の検討では15例中3例(20%)に照射野外にも広がる病変を認めた。Ikezoeらの報告でも17例中4例(2
3%)に照射野外病変を認めたとしており、胸部照射後の肺野病変において 照射野外にも病変を生じていても放射線性肺障害を否定できないと思われる。 照射野外にも病変を生じる機序としては散乱線の影響、感染症の合併、リ ンパ流の障害、過敏性肺臓炎の合併、ARDSの合併等が考えられている。 5、まとめ