生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究-『HOPE AT LAST for At-Risk Youth』の学校評価リストの成果を通じて-
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(2) . 6巻 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4. 平 成 8 年 2月. 第2号. f Hokka i do Un i i l lo i i ty of Educat on(Sect onIC) Vo Journa ver s .46 .2 , No. Februaけ,1996. 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究 - 『HOPE AT LAST for At‐Risk Youth』 の 学校 評価リ ス トの成 果を 通 じて -. 玉. 井. 康. 之. 北海道教育大学釧路校. THE. AM[E]則CAN. STUDY. OF. SCHOOL. SELF-EVALUATION. SCHOOL REFORM,INCLUDING STUDENT G切[DANCE ; The Study. FOR Seen. ” Through The Result of the SchooI Sel f‐Evaluat i i on Checkl st of the HOPE. AT LAST for At-Risk. Youth”. YASUYUm. TAM虹. Hokka i do Un i i i i ty of Educa t ve r s on (ush r o Ca r npus. l. は じめに アメリカの学校自己評価研究に比べると, 日本における学校の自己評価研究はほとんど行われていないの が 現状 である. この よ う な 中 で, アメ リ カ の 生活 指 導 に 関す る 自 己評 価 研 究 の 内 容 を 日 本 に 紹 介 す る こ と. は, 今後の日本の学校改善にとっても重要である‐ なぜなら, 児童・生徒の歪みが進行する中で, 日本にお いても学校全体としての対応が求められており, アメリカの学校改善の動向を教訓として, 現代日本の学校 の大きな改善の方向性を検討することができるからである‐ すなわちこれらの改革は単に個々の教師の力量 の 向上の 問題 に留 ま るも の で はない.ま た アメ リ カ と 日本 の 教 育 シス テ ム は異 なる所 も 多 い が,児 童・生 徒 の. 問題行動への対応や日常的な生活指導は,制度の違いを越えても共通の理念や方法を含んでいるものが多い‐ 本稿の課題は, 生活指導とそのための学校 改善に関するアメリカの最先端の学校改善自己評価研究内容を 紹介し, そこでの理念を明らかにすることである. そのために本稿では, 現在全米で最も注目されている生 活指導研究書の一つである 『HOPE AT LAST for At‐Ri sk Youth』 (注 1) を 取 り上 げ, そ の 巻末 に 集 約 さ れた学校自己評価チェックリストを紹介するとともに, そこでの学校改善評価の実践的な方向性と理念を明 らか に す る‐. 本書は全米で 「先例のない総合的なもの」 として各研究誌で紹介されたり, 実践的に応用が利くものとし て一部のテレビ・新聞などでも研究の成果が紹介された書である. 本書の最後に集約されたチェックリスト を と らえ る こ と で, アメ リ カ の 最 先 端の学 校 自 己評 価研 究 内容の 一 端を と らえる こと が で きる‐ 評価 の 項 目に よ っ て は, 日本 及 びアメ リ カ に おい て も, す でに前 提 とな っ て いた り実 施 さ れ て いる もの も ある が, その こと は これ ま での 実 践 の方 向性 の 良 さが, アメ リ カ の 最 先 端の 研 究 に おい て 確 認 され た と いう こと でも ある.. 本書 『HOPE AT LAST for At‐Risk Youth』. は, ウ ィ リ ア ム ・ パ レ ッ ト (WILLIAM H‐PA 旺 把 TT) 教. 授 と, ロ バ ー ト ・ バ ー (ROBERT D‐BA則R ) 教授 の 共 著 によ るも の である‐ 著者 の 一 人 である ウィ リ ア ム ・. パ レ ッ ト (WILLIAM H .PARRETT) 氏は, 若年期に中学校・高校で学校長を経験した後, 大学に戻ってい 79.
(3) . 玉 井. 康. 之. る.. 本 書 で 言 う 「At th ‐Ri sk Yo u 」 (危機に瀕した青少年) とは, 家庭に問題を抱える青少年, 学校の勉強につ. いていけない青少年, 学校で暴力的な青少年, 事実上学校から離れて行った青少年, 虞犯化した青少年, 非 00校の学校調査結果と膨大な量の先行研究を 行を起こした青少年, などを総合した概念である‐ 本書は約2 包括的に踏まえた上で, 幼児期から高校までの青少年の問題状況, それに対する生徒指導の在り方と教師の 接し方, 学校内外のカリキュラムの組み方, 学校と地域の連携の仕方, など生活指導に関して学校運営・学 校改善の在り方等を包括的にとらえている. また本書の学校自己評価チェックリストは, 膨大な諸種の調査 結果を踏まえたものであるだけでなく, 実際の学校現場で検証されたものである. 本書での学校運営に関する姿勢は, 問題の児童・生徒を現実に援助するためには, 単に伝統的な学校運営 のあり方を踏襲することではなく, 教職員と父母・地域の総意をもたらすような大胆な学校の改善を, 学校 が自主的・自立的に行わなければならないとするものである. この学校改善のためには, 学校の状況に合わ せ た独 自の 総意 づ く り が 必 要 である と して いる. 学 校 自 己評価 はそ の ため の 媒 介と な るも の であ る.. h 本書 『HOPE AT LAST for At‐Risk You t 』 の全体の翻訳は別の機会に試みており, 本稿においても本 書全体の内容が念頭にはあるが, ここでは総括的なチェックリストに限定して, 評価内容の紹介とその意味 を と らえて 行 き たい.. 虹. 児童・生徒の生活指導問題と学校自己評価の必要性 1. 生活指導に関する学校の状況と学校自己評価研究の必要性 青少年の問題行動とそれに対する学校全体としての対応の課題は, 単にアメリカだけの問題ではなく, 近 年においては日本においても同様の問題を強く示す傾向にある‐ 現代の児童・生徒の中に多く見られる問題 は, いじめを典型とした人間関係の問題, 生活の乱れや自律の乱れ, 様々な道徳的な規範の乱れや逸脱行為 の問題」 性的退廃の問題, 学力格差拡大の問題, クラス崩壊の問題, 所得格差の拡大に伴う現代的な貧困化 傾向と家庭崩壊の問題, 私立中学の増大と公教育の相対的低下の問題, 不登校の問題, 怠学や中退の問題, 等 で ある‐ 例 え ば, 財 団法 人 麻薬 ・覚 醒剤 ・ シ ンナ ーセ ンタ ー (東京) の1995年 の調 査 で は, 「シ ンナ ー遊 びに 誘 わ れ た こと が あ る」 中 学 生 は, 5.3% と な っ て い る. ま た 厚 生 省 の 研 究 班 の 東 京 都 の 調 査 で は, 中 学 男 子 の 7.3%, 中 学女 子の3‐0% が, 常 習 的 に酒 に酔 う こと でス ト レス を 発 散 させ て い ると いう 報告 も出て い る. 不. 登校の小中学生の数は一貫して増え続け, 8万人近くになっている. 家庭の教育費増の実態については, 国 99 4年の調査では, 高校以降から大学までの費用 だけでも1000万円かか っ ており 民金融公庫総合研究所の1 (注2), 文部省の 「保護者が支出した年間教育費調査」 でも小中高のいずれも教育費は前年度比で数%の伸 びを示し続けていることが報告されている. このような傾向は, 当然教育費にお金をかけられる家庭とかけ られない家庭の格差を生んで行く ことは不可避となり, 現実に家庭状況に対応して小学校から学習到達度の 格差が開いていることも報告されている (注3). これらの問題状況については, 単に学校・教員 が知らな か っ た と いう こと で済ま され る も の では なく, 事 態 は学 校 ・教員 に把 握 されな いよ う に, 潜在 的に進 行 して い る の で ある‐. しかもこれらの児童・生徒の教育問題は, 問題児童・生徒と一般生徒の境界線が不鮮明になりつつあるの が現代の特徴である. すなわちかつての問題児童・生徒はあらゆる面で問題を抱えてその姿が鮮明であった が, その特徴が消え, 元々の一般生徒の中からも多数の者が問題行動を起こすようになっているということ である. これは遊び型の非行化傾向であり, 日常の中での新しい刺激・スリル・新規の経験を追求する過程 80.
(4) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. で起こっているものである. 当人たちは, 法規・校則との関連で善悪を考 えている訳ではないため, した がって単純に法規・校則を盾に取っ た一方的な規制や管理的指導は, 反発を招くだけで全く教育的な効果を 期待できない‐ これらの問題児童・生徒への対応のために, 近年では, 養護教諭の役割やカウンセラーの配置が課題とさ れている. 文部省も養護教諭による問題の兆候の発見の役割を重視し, またスクールカウンセラーの配置を 予定している‐ しかし, 養護教諭に頼ることが公然となる一方で, 教師による学級内の問題の兆候を発見す る責任や, 教師の学級づくりの責任を回避する傾向が見られたり, 家庭の責任に転嫁して放置する傾向も強 くみられている. 性格に特異性をもつ生徒や, 家庭に問題がある児童・生徒は, 潜在的に担任教師・学校関 係者によってあきらめられ, 同時に養護教諭の方に責任が任される傾向である‐ 特に攻撃性の強い児童・生 徒に対しては, 担任教師が中学生や高校生を怖がり, 注意や指導を行えず見て見ぬふりをしている場合や, ボス的な児童・生徒に依拠して学級運営を行おうとしている場合も多い‐ しかし, これら担任教師から養護教諭等に責任が任される傾向に関しては, カウンセラー制度が充実した アメ リ カ に おい て も, カ ウ ンセ ラ ー だ け では必ず しも 十 分 に 問題 行動 に対 応す る力 と はな り得 て いな い こ と は明らかであ る‐ この こと は, 本 書 『HOPE AT LAST fo・ At一Ri sk Youth』 に おいて も 強く 指摘 されて い る‐ むろん担任が気づかなし・ことを養護教諭が気づくことも多いのであるが, 問題児童や被害者の発見は, 第一義 的には, 担任教師の役割であって, 養護教諭の役割よりも教師の役割の再認識が求められなければな らない. その上で, 担任教師のみ責任とするのではなく, 教師集団及び学校全体の役割が求められ, このこ とを方向性や方法を含めて学校全体で確認して行くことが必要となる. そしてさらに, それを家庭を含めて 教育力を高める為に, 家庭との連携を高めて行く ことが求められる‐ これらのためには, 単に担任教師の責 任としないような学校全体としての運営や雰囲気の改善が求められているのである. 2. 学校改善の必要性と日本の学校評価への対応. 学校運営の改善のためには, 学校長と教職員全体を含めて, 統一的な指標による自己評価を行うことは重 要な手段となる. 教職員の議論と総意を重視しつつも, さらにその上で, 一部の特定の者による評価ではな く, 真に全体の総意を作るためには, 校長を含む各人の自己評価による反省と総意の方向性を全体として確 認する必要があるからである. また今後の全体での総意を作る上で, いったん統一的指標で評価項目を出せ れば, それを基礎的な資料として利用することができ, 改めて議論の方向性を先鋭に創り出すことができる か らで ある‐. 日本においても, 一部において学校評価研究が行われているが (注4), ただ全体として学校が独自に学校 評価を行い独自の方針を持つことは, 教育行政執行者から敬遠されているのが現状である‐ 教育委員会事務 局等の行政執行者の中には, 学校現場の実態や, 教育内容・教育指導の見識に乏しい人が配置されているこ とも珍しくなく, 強弱の別なく政策を伝える為に, 学校現場との顔酷を来している場合もしばしば見られて いる‐ 一方学校長の中にも, 自分自身の独自の改善計画や改善意欲を示さずに, 無意識のうちに教育委員会 の案件を伝えることのみが学校運営であるかのようにとらえている学校長も少なくない‐ 日本の教育制度が, 戦前の府県知事による学校長の任官制度以来, 縦型行政組織として展開していること は, その評価の是非は別にしても, だれもが認める所であろう. 日本の学校制度は, 学校長に独自の運営の 権 限 が 与 え られて い る アメ リ カ に 比 べ れ ば (注 5), 学 校 ・教室 か らの ボ トムア ッ プ方 式 で あ る と は 言 い 得. ない‐ 文部省の方針を教育委員会が学校に, また学校長が教員に降ろすというトッ プダウ ン方式になってお り, 学校独自の総括や方針を進めることになじみがうすい‐ また毎年度の各学校の学校経営計画書は, 校長 等が交替したにも拘わらず, 「前年度の踏襲」 という理由で, 毎年ほとんど変わっていないものも多い. 81.
(5) . 玉. 井 康. 之. さ らにアメ リ カ の 学校長 は 7~ 8年 同 じ学 校 で過 ごす の に 対 し, 日本 の 場 合, 学 校長 は, 通 例 2年も しく. は3年で転勤命令が出され, 頻繁な人事異動が学校に根を降ろして独自の改善を行うことを妨げる要因にも なっている. 学校の改善は, 教職員・父母の意識の改善を伴わなければならないために, 短期間にできるも のではなく, 長期の継続的な取り組みが必要となるからである. 199 5年に東京都教育庁が学校長に対する学校経営の評価を実施して, 学校長の勤勉手当制度を導入する方 針を打ち出した‐ これま でにも, 各都道府県の教育委員会等によって単発的に学校長の評定の観察項目が出 されてはいたが, 東京都教育庁の学校長に対する評価は, 組織的な学校経営評価の最初の実施施策である. ただ, これも上級部局による上意下達式の評価法という性格が強い‐ これまで評価という場合には, トッ プ ダウン方式が暗黙の前提となっていたために, おおむね行政管理者による勤務評定としての性格が濃厚であ り, 必ずしも学校独自の状況に合わせた, 学校長を含む総括と改善のための総意づくりとは言えない側面が 多かった. 学校の状況に合わせて総意を作り, 学校長の運営方針が教職員・父母からも支持されたものにな るかどうかが評価の重要な課題となる‐ 以上のことが日本の教育制度の暗黙の前提となっていたために, 日本の研究界においても, 実際の学校運 営全体の自己評価内容の具体化が, ほとんど研究課題としては取り上げられては来なかったのである‐ 現在 求められている課題は, 児童・生徒の問題が大きくなっている中で, 児童・生徒の健全な発達という共通目 標に向けての改善を, 学校現場 に根差しながら, 学校長と教職員 が一体となって取り組むことであろう‐ こ れらの観 点を踏 ま えた上 で, 『HOPE AT LAST for At‐Risk Youth』 の 評価 項 目をと らえて 行 きた い‐. ‐ LAST fo『 At-Risk Y 皿. 『HOPE A1 o嘘h』 の評価項目全体の構成と特徴. 本 書 『HOPE AT LAST for At-Ri th』 の全 体の 評価 項 目の 構成 は, ま ず 最 初 に 「基 本 方 針 ・ 所 sk You. 信」 の自己評価項目において, 共通の目指すべき学校の理念や姿勢を 問うものを配置 しており, その上で 「幼稚園・小学校」 「中学校」 「高校」 の各学校と発達段階に合わせた特性をとらえている‐ ここで幼稚園 , , と小学校が一緒になっているのは, アメリカでは, 幼児期年長組の5才児は, 学校と併設された幼稚園に入 る制度になっていることによる‐ 幼児期と小学校との連続性を重視し, 小学校への移行をスムーズに行うた めである‐ さらに, これらの各自己評価を行う上での判断材料として, 学校状態の基礎評価データをとらえ る よ う に な っ て い る‐. 学校状態の基礎評価データには, アメリカの状況を反映して, 統一テストでの全国平均を越える生徒の割 合, 生活保護を受ける生徒の割合, 学習遅進児補習クラスを受ける生徒の割合,、学校全体の1週間の欠席 率, カウンセリングを必要としている生徒の割合, 他の福祉機関の協力を得ている生徒の割合, 暴力・器物 破 壊等 の件 数, ク ラス 崩 壊の件 数, な どが 基礎 評価 データ と して 把 握す る べ きこ とと してい る. これ らの 中. には単に割合が減ることが望ましいものだけでなく, 児童・生徒への援助のためには逆に増えた方が望まし い も の も含ま れて いる. と りわ け福祉 やカ ウ ンセ リ ン グな どの 分野 で は, 実 際 に は児 童・ 生徒 と そ の家 庭 が 必 要 と して いる が, そ の 援助 を 受 けて いな い と いう場 合も 多 いか らである. 本 稿 で は小・ 中 の義務 教育 段 階を 中心 に チ ェ ッ クリ ス ト の 全 体 像 を と ら え て み た い‐ 本 書 『HOPE AT LAST』 の 中 に は, 高 校 の チ ェ ッ クリ ス トも含 ま れ て いる が, 本 稿 に おいて は, 高 校の 教 育 は公 教 育 ・ 基 礎. 教育の充実の上で成り立つという理由から, 義務教育段階の中学段階までのチェックリストを取り上げてい る‐. 本書 『HOPE AT LAST for At‐Risk Youth』 の 「幼 稚 園 ・小 学 校」 の 自 己評 価項 目内の 大 分類 項 目は, ① 「共 有 され た展 望 ・ 目標 に 関 して」, ② 「父母 に 関 して」, ③ 「幼 年期 及 び幼 稚 園に 関 して」, ④ 「カ リ キ ュ 82.
(6) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. ラ ム と 教授 に 関 して」, ⑤ 「社 会福 祉 事業 に関 して」 の 5 項 目と な っ て いる‐ 一 方 「中学 校」 の 大 分 類 項 目 は, ① 「共有 さ れ た 展望 ・ 日標 に関 して」, ② 「カリ キ ュ ラ ムと 教 授 に関 して」, ③ 「父 母 に関 して」 の 3項 目にな っ て いる. 「幼 稚 園 ・小 学 校」 と 「中学 校」 の 評価 項 目に 共 通 して 言 える こ と は ま ず ① の 「共 有 さ れ た 展 望 ・ 目 , ・. 標」 を持つことを最も重視していることである‐ すなわち教育活動を集団活動の成果であるととらえてお り, そのことがあらゆる教育改善の大きな条件となるということである‐ 教育活動の共有の展望及び集団化 は, 教職員の一致した前向きな対応だけでなく, 父母や学校区住民との共有の展望も重視し, さらに行政担 当者との共有の展望も重視されている‐ 特に行政担当者を含む 「共有された展望・目標」 に関しては, 日本. の場合は教育委員会等行政担当者が父母や地区住民に対して直接教育政策に関して説明したり懇談を持った りすることはなく, すべて学校長に任されているが, アメリカにおいては教育政策を責任をもって打ち出す ために, 教育行政担当者が直接, 父母・学校区住民と懇談することはし ばしば見られる ことである‐ これ は, 教育行政担当者に学校現場の実態を理解してもらうという意味を含んでいる‐ 「幼 稚 園・小 学 校」 と 「中学 校」 を比 較 して 言 える こと は 「幼稚 園・ 小学 校」 の方 で は 「父母 に 関す る , ,. こと」 と 「幼児期・幼稚園」 に関することが②③で先にとらえられており, より家庭での教育と父母との連 携, 及び幼児期からの連続性を重視していることである‐ また 「幼稚園・小学校」 の方に は, 「社会福祉事 業」 に関する項目も含まれており, 基礎的な生活条件の支えが児童の学習の大きな条件となるととらえられ ている. このことが経済的な格差に拘らず, 前述のように最低限の公教育を別け隔てなく全児童に施すため の基礎的な条件となるのである‐ 経済的格差の問題は, 近年日本においても拡大しつつある中で, これらの 家庭的に不利な条件を持つ児童・生徒が学校から取りこぼされることのないよう, 留意しておかなければな らない 問題 で ある.. 以下,「基本指針・所信」 「幼稚園・小学校」「中学校」 の各自己評価項目ごとに内容を紹介し, 特徴をとら えて い き たい‐. W. 「基本方針・所信」 に関する学校自己評価項目の内容と特徴 この 「基本方針・所信」 に関する項目は, 学校長や教職員を初めとした関係者の基本的な姿勢と理念の- 致を目指すものである. 教師の方法・手段の具体的な展開以前に, 基本的な学校全体の方向性を確認してお く こ と が, 方 法 ・ 手 段 の方 向性 の 教 師 間の 顔酷 も 最 小 限 に留 め る こ と が で きる か ら である‐ 自 己評価 項 目の 番 号 に, ( ) をつ けて いる の は, 『HOPE AT LAST for At-Ri th』 の 著者 が 否 定 sk You 的側 面 と して と らえて いる も の で, 番 号だ けのも の は肯 定 的側 面 と して と らえ てい る も の である. 実 際の 評. 価項目一覧は, 「非常に賛成」 「賛成」 「反対」 「強く反対」 の4項目に分けて選択回答するようになっている が, ここでは質問の部分だけを取り出している‐ 現実の個々の生徒の事例は複雑でケースバイケースによる 所も多いが, 明らかに割り切り過ぎたように見える項目も, 諸種の調査結果を基に して出されたも のであ る‐ 以下, 「基本方針・所信」 に関する学校自己評価項目をまず紹介しておきたい。 《「基本方針・所信」 に関する学校自己評価項目》 1. 教師・行政関係者・父母は, 危機に瀕した生徒達の要望に対応するために, 共有の展望や目標を持たな ければならない‐ 2. 教師・父母 (そして中・高校の生徒達) は, 学校の計画や運営に参加するのを認められるべきである‐ 3‐ 教師・父母・行政関係者は, 重要な意味を持つ学校の改善あるいは再構成の取り組みに自発的に参加し 83.
(7) . 玉. 井 康. 之. なければならない. 4 ) ( . 危機に瀕した生徒達の要望に効果的に対応するために, 彼らは学習の遅い生徒用の能力別編成コースに 編入しなけれ ばならない. 5‐ 大部分の教師と父母が共有した信頼に同意しない教師は, マイナスの影響がないならば, 他の学校に転 出 する こと を 許 される べ き であ る. 6 ( ) ‐ 何 人かの 子 ども は (精神 的に 障 害の ある 子 ども 以 外), よ りうまく い っ て い るク ラスメイ トの 学 習 水準 に. は全く到達できない. ( ) 7 ‐ 危機に瀕した生徒達の要望に効果的に対応するために, 彼らはうまく学習が進められる準備ができるま で, 早い学年で留年されなければならない. 8‐ 大部分の教師は, あらゆる重要な意味を持つ学校の改善あるいは再構成の取り組みが効果的になるよう に援助しなければならない‐ ( 9 ) . 危機に瀕した生徒達は, 彼らが必要な個人的援助と配慮を受けることができるように, 特殊教育に入れ られなけれ ばならない. 10 . 精神障害者を除いては, すべての子ども達は, 家族の状況や社会経済的な地位にかかわらず, その学年 の レベ ル にま で理解 できる よ う に なる‐. 11 . 教師・行政関係者・父母は, すべての子ども達に関心を持ち, 労を惜しまず, そして高い期待を保持し なければならない‐ ◎. 貧困かつ機能不全の家庭の子ども達は, 学校において成功するはずがない. 13 ‐ 伝統的な学校の組織体制と, 教授・学習の伝統的な方法は, 危機に瀕した生徒達の要求に効果的に対応 するために, 有意義なものに改革されなけれ ばならない‐ 回‐ 危機に瀕した生徒達がしばしば授業を中断し, 他の生徒の秩序だった学習を妨害するので, 彼らは特別 の教室及び指導にあてがわれるべきである. Q分 学校で十分に勉強がはかどっていない生徒達は, 学年にかかわらず, 勉強がはかどるようになるまで留 年されなけれ ばならない. ◎. 多くの危機に瀕した生徒達は, 学校を中退して職を得るか, 軍隊に入る事によってより役立ち得るであ ろ う‐. 17 . 学校の教育的な指導計画を持続させるために, 父母の参加は重要な意味を持つものとして位置づけられ なければならない‐ Q ◎. 危機に瀕した生徒達は, 彼らの要望がよりうまく対応されるように, 正規のクラスから切り離し, 同質 の グル ー プ に配置 され る べ き である‐. 19 . 異なった生徒達は異なった方法で学び, 異なった教師達は異なった方法で教える‐ 20 . 危機に瀕した生徒達を教える最も効果的な方法は, 相互尊重を伴った共同扶助組織として機能する教師 と 生徒 の 小 グル ー プを 創 出す る こと で ある.. ◎. 危機に瀕した生徒達は, 読みの補修的な教育を受ける為に, あるいは (または) 特殊教育の援助を受け る た め に, 1 日の 授 業 の 中 で部 分 的に 正規 のク ラス か ら取 り外 され な けれ ばな らない‐. ◎. 危機に瀕した生徒達の要望は, 毎日1~2時間の特別の技能教育や個人教育に彼らを組み込むことに よ っ て 満 たす こと が できる‐ 23‐ す べ ての 児 童 は3年 生の 終 わ りま でに, 読 め るよ う に 教 え る こ とが できる し, ま た 教 え られ な けれ ばな らな い.. 仰. 高校生の危機に瀕した生徒達の要望は, できるだけ正規のクラスに戻れるように企画された短期集中的 84.
(8) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. な指導計画を予定に入れる事によって, 最も満たすことができる‐ 2 5 . 危機に瀕した生徒達の要望は, ただ学校によってのみ満たされるはずがない. うまくいくためには, 父 母や地域リーダーや社会的サービス活動が, 学校に協力的に参加されなければならない‐ 2 6 . 危機に瀕した生徒達は, 生まれつき才能がある有能な生徒達と同じように教えられなければならない. そうすれば彼らの学習は, 豊かになり加速されるに違いない‐ 27 ‐ すべての生徒の学習は, 注意深く継続的に行われ, しばしば到達度を確かめられなければならない‐ 28 ‐ 教育的な通級制の機能回復クラスは, 危機に瀕した生徒達の要望に焦点を合わせるために, 設置されな ければならない‐ ◎‐ 危機に瀕した生徒達は, 義務的な治療教育や個々の指導計画に割り当てられるべきである‐ 3 0 ‐ 危機に瀕した生徒達のための効果的な教育指導計画は, できるだけ早く始められなければならず, そし て生徒達が学校での成功の足どりを示すまで援助は継続されなければならない‐ 回‐ 学校の課業は非常に多いので, 地域や社会的サー ビス機関を教育指導計画の協力者にはもう含めること が で きな い‐. 32 . 父母は子 どもの最高の教師であり, 子 どもの学校の準備を援助する営みに参加しなけれ ばならない. 倦 め. 行儀よくふるまうことができない破壊的な生徒達は, 学校から排除されなければならない‐ 綿‐ 授業の有能な教師は, 危機に瀕した生徒達の要望を適切に対応することができる. 3 5 ‐ 幼年期, 保育所, 低学年での予防は, 中・高校レベルでの中退の予防指導計画や代替学校 (オールター ナ テ ィ ブ ス ク ー ル) よ りも, 最 も成 功 的 で, 時間 的労 力 的な 出費 も 少 なく て済 む‐. 3 6 ‐ 学校は, 不十分な子育てと機能不全の家庭の影響を克服することができる‐ 37 ‐ 校長はしばしば教室を訪問しなければならず, すべての子どもがうまくいくように教師を刺激しようと しな け れ ばな らな い‐ 38. 子 ども と青 年 が相 互 に 学 習を助 ける こと は, 効 果 的 で ある.. ◎‐ 学校の改善は, 州や地方の教育委員会に指示された時にのみ起こすことができる‐. 4 0 ‐ 学校は危機に瀕した生徒達への特別の教育機会を提供するために, 始業前か放課後に延長された指導体 制を持たなければならない‐ 41 . マンツーマンの指導は, 危機に瀕した生徒達への最も効果的な指導である. 回. コ ン ピュ ータ ー は, 教室 に おい て よ りも 工 業技 術実 験 室 に おい て利用 される べ きも の である.. ◎‐ 選択の自由ということを基盤にして, 生徒・父母・教師に入手できる多くの代替公立学校を提供するこ とは混乱を生み出し, 秩序だった教育の運営を悪化させることにつながる‐ 44 ‐ 公立学校は, 選択の自由を基礎にして, 父母やその子どもに利用されるべきである‐ 45 . すべての危機に瀕した生徒達は, 大人のよき指導者を持つ べきである. 6 4 ‐ すべての学年の生徒達は, 将来の可能性のある職業に関して, 知識を身につけておくべきである‐ @‐ 暴力を防ぐ最もよい方法は, より多くの警察や青少年問題の専門家の力を借りることである‐ 48 . 学校は, すべての発達段階の子ども達に, 心の葛藤を解決する技術を教えるべきである‐ ◎. たとえ改革を試みても, 学校は有効なものとして変化したり再構成されるはずがない‐ ◎. 学校は, 学齢期の青年の要望に対応するような意義深いものに変えられる必要はない‐ 「基本方針・所信」 の評価項目を大きく何項かに分類しながらその意味をとらえて行きたい ‐ 《共通目標と多数の参画に関する項目》 1番は, 既に述べたように, 学校内及び学校と地域の共有の展望 を 持 つ こと, ある い はそ れ を 築 き上 げて いく こと を重 視 したも の で ある‐ ま た その た め に, 2番 ・ 3番 は , 85.
(9) . 玉 井. 康. 之. 教師・父母が学校の経営や再構成の計画にも参加することを重視したものである. また8番は, 一部の担当 教師に任せ切りにするのではなく, 大部分の教師が学校改善計画及び実践へ参加する ことの重要性を強調し て い る.. 《能力別編成の是非に関する項目》 4番の学習の遅い生徒用の能力別編成コースや7番の留年制度や9番 の特殊教育は, アメリカでは一般的に行われている能力別のクラス編成である. しかし, そのことが結局遅 れがちな生徒を学校・教室から切り離して到達度の格差を一層促進し, 義務教育・基礎教育において全児童 . 生徒 を伸 ば す としぐう教 師の 責任 を 回避 す る こと にも な っ て いる ことを 本 書 は警 告 して いる. 6番も 同 様,. 学習水準到達度の低い児童・生徒へのあきらめの感を戒めている‐ 1番・12番は, 教師が貧困な家庭や家庭に問題のある生徒に対して, 《家庭の問題に関する項目》10番・1 あきらめの感を抱き, 引き上げる配慮をしなくなる傾向があることに対 して, 警鐘を鳴らしている. 36番 は, 家庭に問題があってもそれを学校独自の対応によって克服することができることを述べている‐ むろん 家庭に問題を抱える児童・生徒は, それだけ不利な条件を背負っており, 問題のない児童・生徒と同じよう にはならないが, それだけに28番のように, 特別な補足的な対応をすることの重要性も述べている. 6番・18番は, いずれも勉強のできない生徒 5番・1 《特殊教育・特別指導のあり方に関する項目》14番・1 を特別教室に分離したり留年させることを否定的にとらえている. クラス全員の学習への意気や, クラス全 体の楽しい雰囲気を考えると, 分離させることは必ずしも根本的な解決にならないのである. 単なる序列に よる区別ではなく, むしろ問題のある児童・生徒を巻き込むような学級集団作り・学級運営や生徒の相互援 助活動が重要となってくるのである‐21番・22番も同様に, 読みの重点的指導のために, 部分的に授業中に 正規のクラスから外して指導することがあるが, たとえそれが良心的な意味であっても, 遅れた生徒へのク ラス内の差別的視線な ど, 精神的悲観を生み出すマイナス面を含んでおり, 部分的にでも切り離すことの問 題 性を 述 べ て い る‐ この 点 か ら, 26番 ・27番 は, で きる 子 と できない子 の格 差 なく す べ ての 児 童 ・ 生徒を 対. 9番は, そのために教師が個々の児童・生徒や, 遅れがちな生徒の学 等に扱うことの重要性を述べている‐ 1 習興味にあった多様な内容・方法を検討することの重要性を述べている‐ さらに,28番は危機に瀕した生徒 達のための補習授業の必要性も述べている. 0番は, 日本では伝統的な班学習な どを取り入れ, 集団的な調査学習や相互学 《集団学習に関する項目》2 習を行う場合も多いが, そのことの重要性を強調している‐ 5番は, 問題行動が起きてから対応したり, 学年が進行してから対 《異学年の連携に関する項目》30番・3 応するよりも早い段階で対応することが効果的であることを指摘している. 当然そのためには, 学年を越え た教師間の連携と低学年の教師に特別な対応・配慮が求められてくるのである‐ 《学習指導における父母の参加に関する項目》17番は, 学校内外での学習指導においても, 父母の参加が 重要であることを述べている‐ それは単に児童・生徒の物理的な援助の点だけでなく, 学習意欲の創出の点 でも重要である. また31番は, 学校が忙 しいから地域の協力を得る手立てを取るのが難しいという意見があ るが, 長期的にはそのことが教育格差を拡大し, 一層教師の対応を繁雑にするものであり, そのような意見 を戒めている‐ これらは, 学習指導における学校開放の問題である. 《学校長の姿勢と雰囲気に関する項目》 37番 は, 学 校長 の 姿勢 と して校長 室に 留ま っ て いる の で はなく, 教室を巡回しながら教師を刺激することの重要性を指摘している. また39番は, 学校の改善は教育委員会の 指示を待って行うものではないことを戒めている. 学校長の改善への姿勢が放つ雰囲気が, 学校全体の改善 の雰囲気を醸し出し, 実際的な学校改善を容易にするのである‐ 《補習指導に関する項目》40番・41番は, 始業前か放課後に特別の指導体制を持つことの重要性と, 場合 に よ っ て はマ ンツ ーマ ンの 指 導 が求 め られ る ことを 指摘 して い る. これ は既 に述 べ た よ う に, 問題の ある 、生 86.
(10) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. 徒の指導を, 正規の授業中に切り離して行うものではなく, それ以外の時間を設けて指導を行うものであ る. また34番は, 単に授業が有能であるというだけでは, 危機に瀕した児童・生徒の潜在的な要望をくみ取 る こと が で きな い こと を強 調 して い る‐. 《身近な指導者に関する項目》38番は, 教師ではない児童・生徒と青年の異年齢の相互学習は, 児童・生 徒の親近感を持たせたり, 身近な目標をもたせることにもつながり, 教育効果が大きいことを示している. 同様に4 5番は, 危機に瀕した生徒達にとっては, 教師の立場ではない大人の良き指導者が, 社会の経験や生 き方 を 踏ま えて 語 れ る こと が, 彼 らの 心 を動 か す もの と して 重要 で ある こと を 指 摘 して いる. 他方47番 は,. 警察等の外部の者に依頼し力づくで押さえ込む方法は, 一時は静めることができても, 理由も取り上げてく れない教師に対して潜在的な反発を招くのみで, 教育的な解決にはならないことを示している. 《代替学校に関する項目》42番・43番は, いったんは, 問題を抱える児童・生徒に対して代替学校も含め た多様性を認める中で, 学校の強制的な雰囲気も改善していくことの重要性をとらえている‐ アメリカの場 合は, 特に代替学校が系統的な教育内容を持って整備されているという背景もある. しかしそれは, 問題を 抱 える 児 童 ・ 生徒 へ の切 り捨 て であ っ て はな らな い こと は言 うま でも な い.. 《職業観の導入に関する項目》46番は, 将来のための職業知識を持つことをすすめているが, それによっ て, 自 分の 将 来 の 目標 を 考 え た り, 現在 の勉 強 と 職業 が 関連 して い る ことを 認 識す る の である. そ の こと を. 通 じて学校に通うことの将来的長期的な意味を理解することになる‐ 日本においても学校の中に, 職場体験 学習や多様な職種の生き方指導を取り入れる学校が増えつつある‐ これらの職業観を養う指導は, 日常的に 全生徒に行うことによって効果を有するものであって, 問題を起こした生徒に対して行っても, 学習をしな いで就職をせよという意味に受け取られかねず, 必ずしも教育的な効果を持つとは限らない. 《葛藤・自制方法の指導に関する項目》48番は, 気分転換や欲望の処理の仕方や, 誘惑に対しての断り方 など, 問題の方向に進まないような自分自身の自制の仕方を児童・生徒に伝えることも重要になることを指 摘している. すなわち児童・生徒が他人に迷惑をか けないで自分自身の要求を満たしていく方法に気づかな い場合も多く, 気分転換を含めて自分の悩みやジレンマなどを解決していく方法を学ぶことは, 自律精神を 培って行く上で方法的に重要なのである‐ しかし, そのことが学校では意外と学校教育の範噂に入っていな いのが現実である‐ 《学校改善の可能性と意欲に関する項目》49番・50番は, 以上を含めてこれまでの伝統的な慣習に固執す ることなく, 青年期の要望に対応するように学校を再構成することの必要性とその可能性の存在を強調して いる. 学校改善は長期間を要するが, 決して改善されないものではなく, 学校改善へのあきらめの感を抱く こと を 戒 めて い る‐. 以上, 各項目の理念・方向性の意味をとらえて 来たように, これらは大前提の学校・教師の姿勢を示すも のである‐ とりわけ児童・生徒は, 言葉に出されていなくとも, 学校全体の雰囲気を敏感に 感 じと っ てお り, 無意識のうちの雰囲気に反発して学校から離れていく場合も多い‐ 危機に瀕した問題を抱える児童・生徒の対応は, 複雑で長期間を要する. それは集団的・組織的な対応を 必要とするものであり, そのためにはどうしても個々の教師の指導に依拠するのではなく 学校全体の指導 , 計画を新たに持つ必要があるのである‐ またそのためにはどう しても現在の個々の教師や学校運営全体を総 括評価することが重要になってくる. その場合, 学校長の姿勢が教員集団の雰囲気に与える影響も大きく , 学校改善にとって学校長自身の自己評価も不可欠となる‐. 87.
(11) . 玉. 井. 康 之. V. 「幼稚園・小学校」 に関する学校自己評価項目の内容と特徴 「幼稚園・小学校」 の項目は 幼少期の発達段階に対応したもので 初等教育段階の生活指導・学校運営 , , の課題を取り上げている. 前項の 「基本方針・所信」 と関係するものも多いため, かなりの重なる部分は, 特性を解説することを省略している‐「幼稚園・小学校」 に関する学校自己評価項目に関しては, 以下の通り である。. 《「幼稚園・小学校」 に関する学校自己評価項目》 [共有された展望・目標に関して] 1‐ 学校は, 共有の展望や学校全体で合意された目標を持っていますか. 2. 学校は, 大多数の教師や父母に支持された学校全体の改善計画や, 教育指導計画の再構築の計画を持っ ていますか. 例えば, すべての児童の成功, 児童の学力向上の促進, のための教育指導計画とか, あるいは 学校の独自の課題のための計画などである. 3‐ 教師・父母と校長は, 学校の計画立案・管理・運営の責任を分かちあっていますか. 4. 学校行政関係者は, その区域独自の管理や, その現場を基本にした運営方針を持つことを奨励していま すか. 5‐ 学校は, 父母・教師・行政関係者からなる計画や運営の協議会を持っていますか. 6‐ 学校は, 父母やその他の大人をクラスのボランティ アとして定期的に役立たせていますか. 7. 学校行政区は, 異なる教授・学習法に焦点を合わせた代替学校 (オールターナティ ブ学校) を提供して いま す か‐ (例 え ば, モ ンテ ッ ソ ーリ 学 校, 無 学 年制 学 校, オ ー プ ンス ク ー ル, 継 続 教育学 校, な ど) 8‐ 学 校 規 模 は500人 以下 にな っ て います か‐. 9‐ 父母と教師と行政関係者は, すべての児童に高い期待を持っていますか‐ [父母に関して] 10 ‐ あなたの学校は子育ての仕方に関する指導計画を持っていますか‐ 1 1 . あなたの学校は, 父母が子どもの学校の準備を助けられるような契機を, 父母に向けて提供 しています か‐. 12 ‐ 父母が学校内の教育指導計画を援助するのを奨励していますか‐ 13 . もし父母が学校の教育指導計画を援助できない場合や, 自発的でない場合には, これらの子ども達に向 けた補足的な計画が用意されていますか‐ 14 ‐ 父母 は学 校 の ボ ラ ンティ ア に なる ことを 奨励 され て いま す か.. 1 5 ‐ 父母は, 学校の計画立案や運営に参加する機会を与えられていますか. [幼年期及び幼稚園に関して] 16 . 学校は保育の指導計画を持っていますか. 17 ‐ 学校は就学前教育の指導計画を持っていますか. 8 1 . 学校は幼稚園の指導計画を持っていますか‐ 19 ‐ 学校は日中を通した幼稚園を持っていますか. 2 0 . 学校は, 「早期教育」 や類似の就学前教育の計画を持っていますか.. 88.
(12) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. [カ リ キ ュ ラ ム と 教授 に 関 して]. 21 ‐ 学校は, 学習遅進児補習クラス (チャ プター1) に適切な位置づけを与えていますか. 22 ‐ 学校は, 学校全体の学習遅進児補習クラス (チャ プター1) に適切な位置づけを与えていますか‐ 2 3 . 学校は, 「読書能力回復」 の指導計画に参加していますか‐ 24 . 学 校 は, マ ンツ ーマ ンの個 人 指導 計 画を利用 して い ます か‐. 例えば, ・ 「読書能力回復」 の指導の活用 ・訓練され認定された教師の活用 ・ 訓練 さ れた ボ ラ ンテ ィ ア の活用 ・ 同世 代 の チ ュ ータ ーの活用 25. 学校 のカ リ キ ュ ラ ム は, 読み ・書 き ・所説 陳述 ・ 意 志 疎通 の 能力 を 重 視 して いま す か‐. 26 . 学校は小学校の低学年において, 異年齢集団・異学年集団を活用 していますか. 2 7 . 学校は共同学習を奨励していますか. 28. 学 校 は, そ れ ぞれ の 教 室の コ ン ピュ ータ ー に触れ る よ う に させ て いま す か.. 29 ‐ 学校は幼稚園から小学校3年生までは, 豊富な学習回復指導を行っていますか. ・学校は 読み・書き・算術に関して 常に継続的・計画的に行われる児童の評価法を持っていますか 30 ‐ ‐ , , 31 ‐ 学校のすべての小学3年生は, 読んだりそれ以上の力を発揮できますか‐ 32 ‐ 幼稚園から小学3年生までは, 学校は児童が留年するのを避けていますか. 33 ‐ 学校はすべての子ども達に対して, 彼らがまるで生まれつき才能がある児童であるかのように教えてい ま す か.. 34 ‐ 学校は, 読み書き算術のような基礎となる教科を確実にすることを, 重要なこととして位置づけていま すか. 35 . 児童どうしはお互いに個別指導を行っていますか‐ [社会福祉事業に関して] 36 ‐ 学校は, 有資格者の児童に無料の朝食の補助を行っていますか‐ 37 ‐ 学校は, 有資格者の児童に無料の昼食の補助を行っていますか. 3 8 . 学校は, 学校と社会福祉機関を含めたいくつかのタイ プの青少年福祉の協議会や委員会を持っています か‐ その協議会・委員会とは, 個別指導方法を用いて危機に瀕した児童とその父母の要望に対応するもので す.. 39 . 学校は夏休みの期間に, 無料の食事の援助を行っていますか‐ 40 ‐ 学校は社会福祉機関の資源やサービスを統合していますか‐ 41 ‐ 学校は地域の協力事業に参加していますか‐ 42 ‐ 学校は, 鍵っ子や危機に瀕した児童やその他の児童達の為に, 午前・午後の延長教育の指導計画を持っ て い ま す か‐. 43 . 学校は, 児童やその家族を援助するために, カウンセラーや民生委員を用意していますか. 既 に見 た よ う に, 1 番 ・ 2番 ・ 3番 ・4 番 ・5 番 は, 現場 を 基本 に した 共 通 目標 を持つ こと の重 要性 を 指. 摘したもので, このため教師・校長・父母が運営の責任を分かち合い, そのための協議会を持つことの重要 性を指摘している‐ また6番は, 学校及びクラスを活性化させる上でボランティ アの活用の重要性を指摘し て い る. 学 校 ボ ラ ンティ ア の制度 は, アメ リ カ で は非 常 に発達 して いる 制度 である が, この こ と は 日本 でも 89.
(13) . 玉. 井 康. 之. 重要になると言えよう. 8番は, 学校規模の縮小化の問題である. 文部省の1 9 89年の調査でも (注5), 学校規模が大きくなるほ ど, 対教師暴力・生徒間暴力が急増することが指摘されている. 学級数が2 5~3 0学級の大規模学校では, 学 0倍になっている‐ このこと 級数が6学級の小規模学校に比べて, 対教師暴力が約17倍で, 生徒間暴力は約3 からすれば, 学校長は学校規模が大きい中で問題が多発しているならば, 学校規模の縮小化を教育行政に要 請することも重要な学校経営の要素となる. 1 0番からは, 父母に関することである‐ 家庭が十分に教育機能を果たすためには, 父母の学校教育への参 画を求めるだけでなく, 家庭教育・児童指導のあり方に関する啓蒙も重要であることを指摘している‐ 16番からの幼児期に関しては, 幼稚園内の教育だけでなく, 学校教育にスムースに慣れ親しむためには, 特別 の 就 学 前 指導 も重 要 にな っ てし・る こ とを指 摘 して いる‐. 21番からのカリキュラムに関しては, 読み・書き・算術をすべての認識能力・生活指導の基礎として重視 している‐ すなわちこの基礎学力の問題は, 単に学力の問題だけではなく, 学校と勉強を楽 しし・ものと感 じ, あらゆる問題行動を事前に自制することにつながるものである. 基礎学力 が生活指導の面からも重視さ れる所以である‐ しかしこのことは, 近年日本においても忘れがちで, 学校全体として生活指導の課題と低 学年における基礎学力の形成の関連の再認識が求められている‐ また27番の共同学習や,3 5番の相互の個別指導を重視している. 近年日本でも学習面で共同しあうという 教授方法が忘れられつつあるが, この点は再度確認しなければならない問題である‐ 36番からは, 社会福祉に関する項目であるが, 経済的な最低限の援助は教育活動の基礎的条件をなしてい る‐ この社会福祉の課題は, 学校教育関係者から日常的に認識されていないが, 児童・生徒の精神的な状態 ・経済的な状態によっては, 児童相談所・ケースワーカー等の専門的なア ドバイスを受けたり, 生活援助制 度の行政的な手立てを取ることは重要である. 以上 「幼稚園・小学校」 の評価項目の特性をとらえて来たが, 初等教育期の特徴は, 生活指導・高度な学 のすべての土台としての基礎学力を重視しているということである. 長期的に問題行動を起こしたり, 学 力, 校を敬遠するようになる児童・生徒の出発点は, 基礎学力の形成に失敗していることによる部分が大きいの で ある.. W. 「中学校」 に関する学校自己評価項目の内容と特徴 「中学校」 に関する項目も発達段階に対応したものである‐ 特に中学生の時期は, 第二次成長期・思春期 に位置し, 大人と対等になろうとし, また自立を目指そうとする最初の時期である. このような成長期にお ・目は以下の通りである。 ける配慮が必要となってくる‐ 「中学校」 に関する学校自己評価項 《「中学校」 に関する学校自己評価項目》 [共有された展望・目標に関して] 1‐ 教師・行政関係者・父母の総意によって, 共有の展望や学校全体の目標を完結させる手順を創出するよ う に していま したか‐ 2. 学 校 の 組織 機 構 は, 高 校 よ りも 小学 校 の方 を よ り良 いモ デル と して いま す か‐. 3. 生徒達は, いくつかのタイ プの生徒協議会や生徒会を通して, 学校の計画立案・運営に含まれています . 4‐ 学校は, 教師・行政関係者・父母と生徒を含めた, 計画立案・運営のための委員会や協議会を持ってい 90.
(14) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. ま す か.. [カ リ キ ュ ラ ム と 教授 に 関 して] 5. 学校は, 生徒と教師の集団が1日の大部分を一緒に勉強できるような多くの小学習集団を組織 していま す か‐. 6. 学校のカリキュラムは, 青少年の発育上の要求に焦点を合わせたものを含んでいますか (例え ば, 健康 な生活様式, 性的・社会的成長’ 交際, 批判的な思考, 娯楽, など)‐ 7‐ 学校教育課程は, 学際的なものを含んでいますか‐ 8‐ 学校は, 中心的な教科や学際的な勉強により多くの時間を避けるような柔軟な時間割を用いています . 9‐ 学校は, 職業教育, 調査研究, レクレーショ ン, 興味範磨, に焦点を合わせた多くの選択コースを提供 して いま す か‐. 1 0 ‐ 学校は教室での相互協力的な学習を奨励していますか‐ 1 1 ‐ 生徒達は異なったタイ プの生徒からなる教室に分けられていますか」 12 ‐ 学校は危機に瀕した生徒達のための良き相談相手を持っていますか‐ 13 . 学校はカウンセラーや, 生徒とその家族を援助する民生委員を保有していますか‐ 14. 学 校 はコ ン ピュ ータ ー 技術 実 験 室 を 持 っ て いま す か‐ 15. 学 校 はそ れ ぞれ の 教 室 に何 台か の コ ン ピュ ータ ー を 持 っ て いま す か. 16‐ 教 師 は, 学校 に いる 間 は, 教 室 のカ ウ ンセ ラ ーや 助 言者 と して 対 応 して いま す か‐. 17 ‐ 学校は学校外の活動に生徒を巻き込んでいますか‐ 例えば, 巡見・職業巡見・福祉活動・異年齢の家庭 教 師 ・校 内のス ポー ツや レク レー シ ョ ン・ その 他, な ど‐. 18 . 学校は, 薬物やアルコールの指導を, それらを欲する生徒達に施していますか‐ 1 9 . 学校は, 大部分の教師達に支持された学校全体の再構成や改善の努力を行っていますか. 20 . 学校の中で生徒達は, 選択式の教育課程に参加する機会を持っていますか‐ 21 ‐ 学習に対する生徒への高い期待がありますか‐ 22 ‐ すべての生徒達への高い期待を持ち続けていますか‐ 23 ‐ 学校は生徒達がクラ ブ活動や課外活動に参加できる機会を持っていますか. 24 ‐ 学校は, 小学生が中学校にうまく入学するのを助けるような移行指導計画を持っていますか‐ 2 5 . 学校は生徒達が高校に入学するのを助けるような移行指導計画を持っていますか‐ 2 6 . 生徒達は放課後地域の青少年クラブに参加する機会を持っていますか. 27 ‐ 葛藤を解決する技能を学ぶ機会が提供されていますか‐ [父母に関して] 28 ‐ 学校と地域のルールや規則を制定することに, 父母は含まれていますか‐ 29 ‐ 父母は学校教育の一員として含まれていますか. 30. 父母 は, 学 校 に ボ ラ ンティ ア と して 参 加 して いま す か‐. 31 . 父母が生徒達の宿題の援助をすることを奨励していますか. 「中学 校」 の 評価 項 目の場 合 も 同様 に 1~ 4番では 最初に 教師・行政関係者・父母の 「共有された , , , ,. 展望・目標」 と計画立案への参加を重視している‐ そのための委員会や協議会を持つことを重視している‐ 91.
(15) . 玉. 井 康. 之. また19番では大部分の教師によって, 継続的に学校を改善し続けて行く ことの重要性を述べている. そ の 次 に授 業カリ キ ュ ラ ム を 重視 して い る‐ これ は中学 段 階 にな ると, 学 習到 達 度 の格差 も 大 きく 開いて. 来ており, 生徒の問題行動や学校を嫌う傾向は, 学習の理解状況とも大きく関係しているからである. その 解決方法の一つには, 小集団学習による共同作業を取り入れる ことである. 5番は, 小集団学習の重要性に ついて, 8番は相互協力的な学習集団の重要性について述べている‐ 学 習意 欲 を 高 める カリ キ ュ ラ ム上 の も う一 つ の方 法 は, カリ キ ュ ラ ムの 内容 に青 少 年 の興 味 を引 く よ うな. ものや学際的なものを取り入れることである‐ それらによって自ら主体的に学ぶ方法と習慣を身につけて行 くことができる. 6番は, カリキュラムの中に, 青年の生活様式や社会的成長に関する内容など青少年の発 達の関心にあった内容を取り入れたり, 7番・8番の学際的総合的な内容や, 9番の調査研究や,20番の選 択式の教育課程な どを取り入れることの重要性を指摘している‐ また17番の職業巡見や福祉活動など, 社会 と密接な実践的な活動も重要になることを指摘している‐ 2 また思春期と言われるこの時期は, 個人的な悩みも大きくそれに対する援助も重要な指導内容となる. 1 番は, 危機に瀕した生徒達の相談相手の必要性を強調 し,13番は, カウンセラーや民生委員の必要性を述べ て い る. ま た カ ウ ンセ ラ ー を 保 有す る こ との み な らず, 16番 は, 教 師 がカ ウ ンセ ラ ーの役 割 を持 つ こ との 重. 要性を強調している‐ また27番のように, 自分自身で葛藤を解決する技能を学んでおく ことも重要となると と らえて い る.. 18番のシンナーや飲酒等の問題への直接的な啓蒙が必要になるが, その時期は早いほど良く, 事前の対応 が重要となる‐ そういった問題傾向を持つ生徒に対しては,21番や22番のように学習や人格に対して高い期 待を持ち続けることが立ち直りの重要な要因となる‐ また同調行動や仲間意識の強い思春期には, 日常的に, 学校外の活動や地域での活動に参加し, そこで多 様な人間関係を作ることも重要となる.23番の課外活動や26番の青少年クラ ブも重要となる‐ 生活指導・学習援助には, 、小学校と同じように中学校期にも父母が関わることが重要であるが, 社会生活 のル ール な どを 徹 底さ せる ため に は, 父母 にも ル ール 内容を 合 意 して も らう 必要 が ある‐ 28番 は, ル ール や. 規則の制定に父母も含まれることの重要性が述 べられている. 以上,「中学校」 の項目を見て分かるように, 小学校期の読み・書き・算術の基礎学力の重視から, 中学校 においては, カリキュラム内容の多様性と, 課外活動・地域活動を含めて思春期層に興味が深いカリキュラ ム内容を取り入れることを重視している. このことは, 学校の基本的な活動である学習活動を楽しく感 じら れ る よ う にす る た めの 対 応 である‐. さらに思春期特有の悩みや人間関係に配慮した対応を取れるように配慮しており, カウンセリングマイ ン ドをも った教師の在り方も重視されている.. 孤. おわりに 以上, アメリカの生活指導に関する最先端の研究書の自己評価項目を取り上げ, 「基本方針・所説」 「幼稚 園・小学校」 「中学校」 の3つのそれぞれの自己評価項目の内容の紹介とそれぞれの項目の意味をとらえて きた. 各項目の具体的な内容に関しては, これまで見て来たとおりである. このアメリカの最先端の学校自 己評価研究を通じて, 日本の生活指導の大きな改善の方向性を検討することができる‐ すでにとらえてきたように, 問題を抱えた生徒達への対応や, 将来ともにおけるその予防に関しては, 個々の教師の教室での姑息的・技術的な対応では済まされない部分が多いために, 学校全体としての対応は 不可欠となる. 単に 「前年度の踏襲」 を目指すのではなく, 学校としての新たな対応・改善を創出するため 92.
(16) . 生活指導に関するアメリカの学校改善自己評価研究. には, 学校長を初めとする全教職員の改革への姿勢がまず最初に求められる‐ そしてそのためには, 学校の 児童・生徒の状況に根差した学校独自の総意作りが不可欠となってくるのである. そしてそのことを出発点 として, 父母・地域も学校を良くするための良き援助者として教育力を高めて行くことができる‐ 自己評価項目は, 実態とその対応を一つ一つ鮮明にし, 総意を作っていくための指標である‐ ただ漠然と 議論したり, 大きな問題が起きた時にだけケースバイケースとして対応するだけでは, 児童・生徒にとって 現在よりもより楽しい学校作りを行うことはできない‐ また年度末の報告書や学校経営計画書の作成のため だけの評価であってもならない‐ 既に述べたように, 年度末だけに総括を行ってもその年度の児童・生徒の 対応にはならないだけでなく, 報告書づくりのための総括に終わる傾向があるからである‐ またほとんど毎 年変化のない学校経営計画書においても, 教育委員会への報告のための作成となり, 実践的な新たな改善の 展望づくりには何も役立たないからである‐ 改めてその学校の実態に即して, 一つ一つの項目を検討しながら, 全教職員の総意づくりによってより良 い 改善 の 方 向性 をと らえる こと が 重要 に な っ てく るの である. そ の こと を, 本 書の 自 己評価項 目 で は, 最も. 重要視しているのである‐ 本 稿 で は, アメ リ カ の 最先 端 の 自 己評価項 目を と らえ た が, す でに述 べ た よう に 日本 及 びアメ リ カ で は既. に実施されている項目もある. ここでの項 目内容の方向性は, あくまで一般的な傾向を踏まえたうえでの方 向性 であ っ て, 国 に よ っ て 制 度 が 異 な っ た り, 地域 に よ っ て 事情 が 異 な っ て く れをま, 当然個々 の 項 目に 関 し. ては生活指導対応の内容も若干異なってくる. そのことは, 本書で何度も強調 しているように, そもそも チェックリストは特定の者による評定ではなく, 全教職員と父母・地域の総意を作り上げるためのステッフ である とい う こと である‐ した が っ て 全 教 職員 と 父母 ・ 地 域 議 論の 進 展 に よ っ て は, さ らに多く の チ ェ ッ ク. 項目が出てくるであろうし, また項目の方向性も変化してくるであろう‐ そのことは, 本書の趣旨からすれ ば, 大 い に 歓迎 され る べ きこ と な の である.. 注記. ZETT, ROBERT D 注 1‐ WILLIAM H. PARI sk Youth』 1994年, ALLYN AND ‐ BAf沢 著 『HOPE AT LAST for At‐Ri BACON 社. 注2‐ 国民金融公庫総合研究所 「家系における教育費負担の実態調査結果について」 1994年 注3. 朝岡幸彦 「学校教育 ドロッ プアウトと子どもの進路」, 神田・岩橋・玉井・朝岡著 『教育と福祉』1994年, 高文堂出版社, 所収 注4‐ 日本の学校経営診断研究では, 牧昌見編著 『学校経営診断マニュアル』19 86年 (教育開発研究所), があり, 川崎市の実践事例 を基に, 人間関係や運営の雰囲気な どの項目を事例にして, 学校運営の一般的な条件を検討している‐ また高野桂一編著 『実践学校経 営診断一学校改革・改善と経営診断-』 1988年 (ぎょうせい) は, 評価論の観 点と一部アメリカの学校評価内容を紹介している‐ 実践 的な観点からは, 村上義夫著 『学校における評価のすべて』1989年 (北海道教育社) があり, 具体的な評価内容を事例にあげ 教職員 , の参画及び父母の評価への参加を強調 している. 日本において生活指導の在り方を含めた統一的な項 目を実施できる学校経営評価の内容については, いまだに十分に展開されている とは言い難いが, 今後自己評価研究が発展していくことが予想される‐ 注5‐ ちなみにアメリカの学校長は, 大学院修士課程以上を終了していることが, 学校長になる資格の最低条件となっており 独自 , の創造的な経営力量が求められる‐ 注6‐ 文部省 「児童生徒の問題行動等の実態調査」 1989年. 93.
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