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『大鏡』における待遇表現の様相 : 使役性と待遇価値を問題として

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Academic year: 2021

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(1)『大鏡』における待遇表現の様相 一使役性と待遇価値を問題として一 教科・領域教育学専攻 言語系(国語)コース. M 10123C     朴木里美 第三節. 1 研究の目的  『大鏡』は、次のような言語特性を有する。. 『大鏡』における「しろしめす」の 様相. ①歴史物語という叙述内容(表現内容)による.  第四節. 言語表現の特性。道長を中心とする藤原氏の栄. 第二章. 華の讃美や、政権の争奪・謀略が語られ、〈歴.  第一節  「きこしめす」の語義と変遷. 史の語り手〉の鋭い批評意識が表出している。.  第二節. ②院政期成立という時代性による言語表現の特. 『大鏡』における「しらせ給ふ」 「きこしめす」考. 中古作品における「きこしめす」の 様相. 性。平安語彙・文法に乱れが生じ始めた時期で、. 第三節. 作品の中に近代語への過渡的言語事象が見受け. 『大鏡』における「きこしめす」の 様相. られる。.  第四節  〈語り〉のフレーズ. ③対話体という構造(表現形式)による言語表. 第三章. 現の特性。世次・重木から聴衆に向けた/歴史.  第一節  「しめ給ふ」の表現効果を巡って. 語り〉が、〈物語全体の語り手〉によって更に.  第二節. く読者)に向けて語られるという〈語りの入れ 子構造〉で、当時の口頭言語の実態が窺える。. 「しめ給ふ」考. 考察の手順.  第三節  「しめ給ふ」の用例検討  第四節  『大鏡』における「しめ給ふ」の表.  以上のような言語特性を踏まえ、院政期の口. 現価値. 頭言語における待遇表現の実態について調査・.  第五節  『大鏡』における「(さ)せ給ふ」. 分析を行い、待遇価値や表現性を研究する。. 終章. 2 論文の構成.  仲   俳.  売一郎. 本稿のまとめと課題.  第二節. 古典的表現の特性. 序章.  第一節 『大鏡』の言語特性. 3 研究の概要.  第二節 『大鏡』における待遇表現の概観.  本研究では、使役性を内包する最高敬語の用. 第一章  「しろしめす」考. 法に焦点化し、「しろしめす」「きこしめす」「し.  第一節  「しろしめす」の語義と変遷. め給ふ」の三つの語法を取り上げた。.  第二節 中古作品における「しろしめす」の.  「しろしめす」と「きこしめす」は語組成や.      様相. 語形の変化、及び敬語史における位置づけの点. ■238一.

(2) で類似している。ともに発生が古く、中古の終. を、個々の用例を具体的に検討して考察した。. わりまでは最高敬語として高い待遇価値を有す.  『大鏡』においてrしめ給ふ」は、最高敬語. る語であったが、中世に入ると勢力を失って衰. として動作主体への強い敬意を示す。同時に、. 退していった。待遇表現は歴史性・時代性及び. 助動詞「しむ」が持っ強い使役性のために、「さ. 作品性との関連で位置づけられる。そこで、『大. せ手」の意志と「させられ手」の意志との関わ. 鏡』を含めて『古事記』から『平家物語』まで. りによって、rさせ手」の権力・権威性やrさ. の十五作品について、「しろしめす」「きこし. せられ手」の不本意的・被害者的状況を必然的. めす」の使用実態を調査して用例を検討し、待. に感じさせるという、〈語.り手〉の批評意識が. 遇価値及び表現性の分析を行った。. 反映した評価的態度が認められる。これは歴史.  その結果『大鏡』において、社会的序列に対. 物語という叙述内容の特性によるものであり、. する顧慮を最優先する絶対敬語の用法から、/聞. /歴史の語り手〉の主観的心理的要因が待遇的. き手〉への顧慮が待遇的把握に影響を及ぼす相. 評価に影響を及ぼしているという点で、「しろ. 対敬語の用法へと移行する過渡的事象を確認で. しめす」「きこしめす」と同じく、相対敬語へ. きた。また、上代の助動詞「す」が担う使役性. の過渡的現象と考えられる。. によって、r知らせる」r聞かせる」側とr知.  使役表現と尊敬表現の二重構造性は上代には. らされる」r聞かされる」側の関係性が意識さ. 存したものの、中古に入って衰退していった表. れる表現効果が生起している。これは院政期成. 現と考えられている。上代に発生した古代敬語. 立という時代性と、〈歴史語り〉という作品の. 「しろしめす」「きこしめす」と、上代から中. 内容と構造によるものである。. 世に至るまで強い使役性を担う語法と意識され.  「しめ給ふ」は、平安末期以降の変体漢文や. てきたrしめ給ふ」は、rしらせ給ふ」rきか. 仮名文学作品で用いられる語法で、主に女流の. せ給ふ」などの「∼(さ)せ給ふ」語法が様式. 「(さ)せ給ふ」とは文体上の位相語にある。. 的な表現として定着して頻用されていく流れの. 中古の和文体作品では用例が僅少であるが、『大. 対極に位置することで、その使役性が保持され. 鏡』には比較的用例が多く、列伝によって集中. た。院政期に成立した、批評意識が叙述に反映. ・偏在する傾向も見られる。本研究はその偏在. する「歴史物語」である『大鏡』のく語り/の. 傾向と表現性について、助動詞「しむ」の使役. 場において、使役性を内在する「しろしめす」. 性と敬語史の変遷、そして化め給ふ」に上接. 「きこしめす」「しめ給ふ」は独自の表現性と. する動詞の意志性・無意志性という三点を手が. 待遇価値を表出することになった。それは〈歴. かりとして考察を進めた。rしめ給ふ」が集中. 史の語り手〉ひいては<書き手〉の歴史観・人. ・偏在するのは、【時平】伝における道真左遷 事件と、【藤氏物語】の藤原氏の系譜と栄華を. 物観の発露であり、対話体はその批判精神を支 えるものとして有効な形式であったと言える。. 讃美する場面である。そこで、「しめ給ふ」に ついては、外部からの支配・干渉の要素と助動 詞「しむ」の担う使役性が、動作主体の意図に. 主任指導教員 田中雅和. どう作用してどのような表現性を生み出すか. 指導教員 田中雅和. 一239一.

(3)

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