『大鏡』における待遇表現の様相 : 使役性と待遇価値を問題として
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(2) で類似している。ともに発生が古く、中古の終. を、個々の用例を具体的に検討して考察した。. わりまでは最高敬語として高い待遇価値を有す. 『大鏡』においてrしめ給ふ」は、最高敬語. る語であったが、中世に入ると勢力を失って衰. として動作主体への強い敬意を示す。同時に、. 退していった。待遇表現は歴史性・時代性及び. 助動詞「しむ」が持っ強い使役性のために、「さ. 作品性との関連で位置づけられる。そこで、『大. せ手」の意志と「させられ手」の意志との関わ. 鏡』を含めて『古事記』から『平家物語』まで. りによって、rさせ手」の権力・権威性やrさ. の十五作品について、「しろしめす」「きこし. せられ手」の不本意的・被害者的状況を必然的. めす」の使用実態を調査して用例を検討し、待. に感じさせるという、〈語.り手〉の批評意識が. 遇価値及び表現性の分析を行った。. 反映した評価的態度が認められる。これは歴史. その結果『大鏡』において、社会的序列に対. 物語という叙述内容の特性によるものであり、. する顧慮を最優先する絶対敬語の用法から、/聞. /歴史の語り手〉の主観的心理的要因が待遇的. き手〉への顧慮が待遇的把握に影響を及ぼす相. 評価に影響を及ぼしているという点で、「しろ. 対敬語の用法へと移行する過渡的事象を確認で. しめす」「きこしめす」と同じく、相対敬語へ. きた。また、上代の助動詞「す」が担う使役性. の過渡的現象と考えられる。. によって、r知らせる」r聞かせる」側とr知. 使役表現と尊敬表現の二重構造性は上代には. らされる」r聞かされる」側の関係性が意識さ. 存したものの、中古に入って衰退していった表. れる表現効果が生起している。これは院政期成. 現と考えられている。上代に発生した古代敬語. 立という時代性と、〈歴史語り〉という作品の. 「しろしめす」「きこしめす」と、上代から中. 内容と構造によるものである。. 世に至るまで強い使役性を担う語法と意識され. 「しめ給ふ」は、平安末期以降の変体漢文や. てきたrしめ給ふ」は、rしらせ給ふ」rきか. 仮名文学作品で用いられる語法で、主に女流の. せ給ふ」などの「∼(さ)せ給ふ」語法が様式. 「(さ)せ給ふ」とは文体上の位相語にある。. 的な表現として定着して頻用されていく流れの. 中古の和文体作品では用例が僅少であるが、『大. 対極に位置することで、その使役性が保持され. 鏡』には比較的用例が多く、列伝によって集中. た。院政期に成立した、批評意識が叙述に反映. ・偏在する傾向も見られる。本研究はその偏在. する「歴史物語」である『大鏡』のく語り/の. 傾向と表現性について、助動詞「しむ」の使役. 場において、使役性を内在する「しろしめす」. 性と敬語史の変遷、そして化め給ふ」に上接. 「きこしめす」「しめ給ふ」は独自の表現性と. する動詞の意志性・無意志性という三点を手が. 待遇価値を表出することになった。それは〈歴. かりとして考察を進めた。rしめ給ふ」が集中. 史の語り手〉ひいては<書き手〉の歴史観・人. ・偏在するのは、【時平】伝における道真左遷 事件と、【藤氏物語】の藤原氏の系譜と栄華を. 物観の発露であり、対話体はその批判精神を支 えるものとして有効な形式であったと言える。. 讃美する場面である。そこで、「しめ給ふ」に ついては、外部からの支配・干渉の要素と助動 詞「しむ」の担う使役性が、動作主体の意図に. 主任指導教員 田中雅和. どう作用してどのような表現性を生み出すか. 指導教員 田中雅和. 一239一.
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