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数式の計算の順序に関する研究

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(1)平成15年度. 学位論文 数式の計算の順序に関する研究. 兵庫教育大学大学院. 学校教育研究科. 教科・領域教育専攻. 自然系コース. 梶  孝行.

(2) はじめに.  小学校算数の計算問題は得意であったのに,中学校に上がって正負の数や文字式の計算 の学習をしたとたんに難しくなったという生徒の声をよく耳にする。その理由の一つとし て,小学校算数から中学校数学への移行がうまく行われていないことが考えられる。つま り,中学校では,小学校の児童の実態を念頭に置いて指導しておらず,小学校では,中学 校数学を見据えた指導をしていなかったと思える。.  小学校の教師である筆者の経験においても,小学校で取り扱う数式と中学校で取り扱う. 式の理解との関わりを意識した指導にはあまり目を向けず,数式に関する学習内容の習熟 として,計算練習に時間をかけたり,学習した内容を復習したりする指導しか行っていな. かった。こうした経験から,筆者は,小学校で取り扱われる数式と中学校で取り扱われる 式の理解との関わりを明らかにする必要があると考えた。.  平成14年度より完全実施された第7次学習指導要領(平成10年12月告示)は,厳 選された基礎的・基本的な知識と技能を,すべての児童・生徒に確実に身に付けさせるよ うにと,従来にもまして学習内容の最低基準という位置付けを打ち出している。教育課程. 審議会の答申では,基礎・基本の確実な定着について,特に,小学校での教育が以降の学 習の基礎となるから,基礎的・基本的な知識と技能にっいては繰り返し学習し,確実に身 に付けられるようにする,と述べられている。.  基礎的な計算技能の習熟を高めるには,形式的に計算問題を処理できるようになるため の指導を重視するだけでは十分でないと思える。計算の手順を話題にしたり,誤った計算 手順や誤答を示してその誤りを指摘するような場面を設けて指導することが大切であると 考える。.  以上のことから,筆者は,小学校算数の数式に焦点をあて,児童が計算間違いをする原 因を探り,中学校数学の学習をにらんだ数式の適切な指導法を明らかにしたいと考え,本 研究に取り組んだ。. 2003年12月 梶 孝行.

(3) 目 次 はじめに.  第1節 計算の順序に関する指導の重要性とその現状….    1 計算の順序に関する指導の重要性…………    2 計算の順序の理解に関する児童及び指導の現状・.  第2節 本研究の目的と論文構成・………………・・.    1 本研究の目的………………. 1223民U︻U5. 第1章 計算指導の現状と本研究の目的・・…………….    2 本論文の構成………………・・9・……….  第1節 計算の順序の規約……・…………・・……  第2節 先行研究に見られる児童の実態……………    1 計算の順序の理解に関する児童の実態……….    2 計算の順序に及ぼす数値の影響………一…  第3節 計算の順序の理解に関する我が国の児童の実態・.    1 調査の概要曾……………………・…… (1) 調査の目的・……………・…・…・ (2) 調査の内容…・…・…………・…・. (3)調査の方法……・……・……・…・ 2.調査の結果と考察……・………・…… (1) 計算の順序の理解に関する結果と考察・. (2) 数値の影響に関する結果と考察……・ (3) インタビュー調査の結果と考察一…一. 3.過度の一般化……一…………・…D.   11111111111222. 第2章 計算の順序の理解に関する児童の実態……一…. 4.中学校数学への影響・・……………… 第3章 数式の計算に関する認知的障害…. ・28.  第1節 先行研究に見られる児童の実態・. ・29.    1,指示された演算からの項の分離・. ・29.    2.後続の演算を伴った飛び越し…. ・30.    3.部分和の不適切な処理…一. ・31.

(4)   4.相殺の認知の失敗………一…・……・・. ・32.   5.括弧の静的な見方……一. ・34. 第2節 認知的障害に関する調査の結果と考察……・. ・35.   1.調査の概要……             0一. ・35.   (1) 調査の目的・………一. ・35.   (2) 調査の内容…・………・……・一…. ・35.   (3) 調査の方法・…………・……・. ・38.   2.調査の結果と考察・・………………・. ・38.   (1) 部分和の計算に関する結果と考察……. ・38.   (2) 相殺の認知の失敗に関する結果と考察・一. ・39.   (3) 括弧の静的な見方に関するの結果と考察・. ・41. 第4章 数式の計算の順序に関する指導の実態と指導への示唆・. ・42.  第1節 計算の順序に関する教科書の取り扱い………・…. ・43.    1.1年生の3口の計算の取り扱い・・……. ・43.    2.結合法則に関する取り扱い……・……9………. ・44.    (1) 結合法則の記述…………・…・…・………. ・44.    (2) 結合法則に伴う括弧の使用…・……・………. ・45.    3.計算の順序の規約の取り扱い…・…………一…. ・46.    4.工夫した計算の取り扱い…・…・…………・・…. ・47.  第2節 指導への示唆・………・……・一・………一…. ・49.    1.教科書の記述の改善…………◎……    2.発展的な学習………………… ………・・…. ・49. 第5章 本研究のまとめと今後の課題…. ・52.  第1節 本研究のまとめ…一…. ・53.    1 各章のまとめ………. ・53.    2 全体的なまとめ…一…. ・55.  第2節 今後の課題…………・…・. ・56.    1 認知的障害に関して…. ・56.    2 中学校数学との連繋に関して・. ・56. FOrO. 引用・参考文献・. 700. おわりに・……  …. ・50.

(5) 第. 1. 出早. 計算指導の現状と本研究の目的.  本章では,まず計算の順序に関する指導の重要性とその現状を述べる。次に,それを踏 まえて,本研究の目的と本論文の構成を述べる。  本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 計算の順序に関する指導の重要性とその現状   1.. 計算の順序に関する指導の重要性.   2.. 計算の順序の理解に関する児童及び指導の現状. 第2節 本研究の目的と論文構成   1.. 本研究の目的.   2.. 本論文の構成. 1.

(6) 第1節 計算の順序に関する指導の重要性とその現状  本節では,計算の順序に関する指導の重要性を述べ,計算の順序を理解していない児童 の実態と,その実態に関わる指導の現状を述べる。. 1.計算の順序に関する指導の重要性  小学校の算数科において「数と計算」は,カリキュラムにおける指導内容量や指導時問. 数からみて主要な部分を占めている。教育課程審議会答申(1998)においても,「数と計 算」領域に関して,「『数と計算』の内容は,小学校算数の中心となるものであり,一層. 重点を置いて指導するようにする」と述べられている。また,「小学校学習指導要領解説 算数編」(文部省,1999)は,r数と計算」の領域の四則計算に関する指導について,以 下のように述べている。. r加法,減法,乗法,除法の四則計算については,第1に,それらの計算の意味につ. いて理解できるようにすること,第2に,それらの計算の仕方を考えること,第3 に,様々な場で適切に用いることができるようにすることが大切である」(p.31).  上記の「第2」は,計算の順序に関する指導と関わりがあると考える。なぜなら,数式 を計算する際,どのような手順で処理するのかという計算の仕方によって答えも異なるか らである。つまり,数式の計算の順序を正しく理解していないと正しい答えを導くことが. できないのである。また,計算の仕方と計算の順序に関して,飯田(2002)は,以下のよ うに述べている。. 「四則計算に関して成り立つきまりは,算数科の内容としては「数量関係」領域の中 に位置づけられているが,計算の仕方を考える上で大切な役割を果たすことから, 密接に関連づけて計算指導にも生かしていくべきであろう」(p。49).  ここでの四則計算に関して成り立つきまりには,計算の順序の規約も含まれていると考 えられる。したがって,計算の順序に関する指導をする際には,四則計算に関して成り立 っきまり(計算の順序の規約)と計算の仕方を密接に関連づけて指導する必要がある。. 2.

(7)  今までの小学校算数の計算指導は,2口の計算を主に扱い,発展的な学習として桁数の 大きい数を取り扱っている。しかし,中学校へ上がると,桁数の大きい数や2口の計算よ りもむしろ,桁数は小さく多口の計算を多く取り扱っている。2口の計算では計算の順序. を考える必要はないが,3口以上の計算ではそれが大きく関わってくる。したがって,小. 学校算数と中学校数学との繋がりを考えると,小学校算数で3口以上の計算を取り扱って いくことは,中学校数学を見据えた学習には有効であるため,計算の順序を理解させる指 導は重要であろう。.  さらに,飯田(2003)は,中学校数学で学習する文字式の計算ができないのは,一つ目. に,中1での正負の数の計算をじっくり練習する時間的余裕がないこと,二つ目に,小学 校での算数学習が定着していないことを理由としている。特に,二っ目の理由を強調して. おり,算数学習に関する児童の理解不足を指摘している。つまり,小学校の算数学習で計 算の順序を確実に理解させることが,中学校数学の学習における計算の理解へと繋がって いくと考える。したがって,数式の計算の順序を正しく理解させる指導は,算数の内容自. 体の理解を深めるだけでなく,今後の中学校の学習の理解を深める上でも大切であると考 えられる。.  このように,数式の計算の順序の指導は,現行の学習指導要領で重視されている内容の 一つであり,中学校数学との繋がりという視点からも重要であるといえる。. 2.計算の順序の理解に関する児童及び指導の現状  「はじめに」でも述べたが,筆者の経験においても,小学校で取り扱う数式と,中学校 で取り扱う式の理解との関わりを意識した指導にはあまり目を向けず,数式に関する学習. 内容の習熟として,計算練習に時間をかけたり学習した内容を復習したりする指導しか行 っていなかった。.  そこで,国立教育政策研究所(2003a)の「小中学校教育課程実施状況調査報告書」に よる小学校5年生を対象に行った調査問題で,計算の順序に関する児童の実態をみていく こととする。以下は,そこに見られる調査問題とその結果である。. (1) 7−0. 14÷0. 7 (2) 8十〇. 5×2. 3.

(8)  これらの問題は,小数の乗除と加減の混じった計算ができるかどうかをみるものである。. その結果をみると,(1)の通過率は31.8%(設定通過率55%),(2)の通過率は,. 49.0%(設定通過率60%)である。  (1)の問題では,9.8と解答した児童が17.0%いる。これらの児童は,最初に. 7−0.14=6.86と計算し,次に6.86÷0.7ニ9.8と計算しているものと 考えられる。つまり,これらの児童は,左から順に計算し誤答したと考えられる。また,. 980や0.98と解答している児童もいる。これは,7−0.14を先に計算し,次に 0.7でわる計算したが,そのときに計算間違いをしたものと考えられる。.  (2)の問題では,計算の順序を誤ったと考えられる解答が23.8%である。これら の児童は,左から順に計算し誤答したと考えられる。つまり,乗除先行のきまりを理解し. ていないことによる誤答である。さらに,国立教育政策研究所の調査(2003b)では,次. のように,上述の(1)(2)とよく似た問題が中学校1年生でも出題されている。. 9十 (十4) × (一5).  この問題は,正の数と負の数の加法と乗法の混じった計算ができるかどうかをみるもの. である。この問題の通過率は,64.9%(設定通過率70%)である。この問題で,6 5という解答をした生徒は16.6%であるが,これらの生徒は上述の児童と同様に,左 から順に計算し誤答したと考えられる。つまり,乗除先行のきまりを理解していないこと による誤答である。.  上記の結果から,乗除先行の計算のきまりについて,児童・生徒は十分な理解をしてい. ないことが分かる。したがって,計算の順序を正しく理解できていないのではないかと考 えられる。. 4.

(9) 第2節 本研究の目的と論文構成 本節では,本研究の目的及び本論文の構成を述べる。. 1.本研究の目的  前節では,調査結果から,児童・生徒の多くは,計算の順序を正しく理解していないこ とを述べた。また,小学校算数の計算問題は得意であったのに,中学校に上がって,正負. の数や文字式の計算の学習をしたとたんに難しくなったという生徒が多い。その理由とし て,小学校算数から中学校数学への移行がうまく行われていないことが考えられる。この ことに関し,「小学校算数と中学校数学の乖離をいわば暗黙に容認し,それぞれの指導が 展開されてきた」(藤井,2002,p.163)という指摘が見られる。先行研究を概観してみる. と,中学校数学の素地的な学習を積極的に小学校算数から取り入れようとする研究や,中 学校数学の学習をにらんだ算数学習に関する研究は少ないと思われる。.  以上のことを踏まえ,以下の3点を本研究の目的とする。. ① 小学校算数の数式に焦点をあて,調査をもとに計算の順序の理解に関する児童の  実態を探り考察する。. ② 計算の順序の理解を阻害する要因を調べ,調査をもとにそれらに関する児童の実  態を探り考察する。. ③ 教科書に見られる計算の順序に関する教材から,児童が計算の順序を間違える原  因を挙げ,中学校数学の学習をにらんだ数式の指導の在り方を考察する。. 2.本論文の構成 本論文は5章から構成されており,概要は次の通りである。.  本章では,計算の順序の理解に関する指導の重要性とその現状と本研究の目的を述べた。. まず,計算の順序の理解に関する指導の重要性について,計算の順序を正しく理解してい ないと正しい答えを導くことができないことや,中学校数学への連繋という視点から,そ. の重要性を指摘した。次に,計算の順序に関する児童の現状として,計算の順序を理解し ていない児童が多いという実態を指摘した。そして,小学校の教師である筆者の今までの. 5.

(10) 経験から,中学校数学の学習をにらんだ算数指導をしていないという指導の現状にっいて 述べ,これらを踏まえて,本研究の目的と本論文の構成を述べた。.  第2章では,数式の計算の順序の理解に関する先行研究をもとに,我が国の児童の実態 を探る。そして,計算の順序を間違える原因と中学校数学へ及ぼす影響を考察する。第1. 節では,我が国の小学校算数の教科書に記述された計算の順序の規約を整理し,それに関 する指導内容を明確にする。第2節では,先行研究を概観し,計算の順序の理解と計算の 順序に及ぼす数値の影響に関する外国の児童の実態について述べる。第3節では,計算の. 順序の理解に関する我が国の児童の実態を探り,計算の順序を間違える原因や中学校数学 への影響を考察する。.  第3章では,計算の順序の理解を阻害する要因はどこにあるのか調べることとする。第 1節では,先行研究から,「指示された演算からの項の分離」「後続の演算を伴った飛び 越し」「部分和の不適切な処理」「相殺の認知の失敗」「括弧の静的な見方」という五っの. 認知的障害を挙げ,外国の児童の実態にっいて述べる。第2節では,これらの認知的障害 に関する我が国の児童の実態を探り考察する。.  第4章では,計算の順序に関する学校現場の指導の実態を探るために,教科書分析を行 い,指導への示唆を述べる。第1節では,小学校算数の教科書における計算の順序に関す る教材から,児童が計算の順序を間違える原因を探る。第2節では,前章までの調査結果 や教科書分析の結果を踏まえて,教科書の記述の改善と発展的な学習の提案をする。.  第5章では,研究のまとめと今後の課題を述べる。第1節では,前章までの考察を振り 返り,本研究をまとめる。第2節では,前節のまとめを踏まえて,「認知的障害」「中学 校数学との連繋」という二つの視点から今後の課題を述べる。. 6.

(11) 第. 2 章. 計算の順序の理解に関する児童の実態.  本章では,まず計算の順序の規約を整理し,数式の計算の順序の理解に関する先行研究 をもとに,我が国の児童の実態を探る。そして,計算の順序を間違える原因と中学校数学 へ及ぼす影響を考察する。.  本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 第2節. 計算の順序の規約.   1.. 計算の順序の理解に関する児童の実態.   2.. 計算の順序に及ぼす数値の影響. 第3節. 計算の順序の理解に関する我が国の児童の実態.   1.. 調査の概要. 先行研究に見られる児童の実態. (1)  調査の目的. (2)  調査の内容 (3)  調査の方法 2.. 調査の結果と考察. (1)  計算の順序の理解に関する結果と考察 (2)  数値の影響に関する結果と考察 (3)  インタビュー調査の結果と考察 3.. 過度の一般化. 4.. 中学校数学への影響. 7.

(12) 第1節 計算の順序の規約  本節では,まず,我が国の小学校算数の教科書に記述された計算の順序の規約を整理 し,それに関する指導内容を明確にする。前章で述べたように,数式を正しく計算するた. めには,計算の順序の規約に従って計算しなければならない。小学校算数4年の教科書で は,計算の順序として,以下の3つの規約を挙げている。. 表2−1 教科書による計算の順序の規約 ①ふっう,左から順にします。. ②()があるときは,()の中を先にします。 ③ +,一と,×,÷とでは,×,÷を先にします。 (啓林館4年上,p。75).  ①を自明のこととして記載していない教科書もある。しかし,前章で述べた児童の実態. から分かるように,3口の計算で,児童は①の規約を正しく理解していないように思われ. る。すべての種類の3口の計算を一般式で表すと,表2−2のように16通り考えられる。 ただし,括弧を使った3口の計算は除く。. 表2−2 3口の計算の一般式. a×b十c,a×b−c,a÷b十c,a÷b−c a十b×c,a十b÷c,a−b×c,a−b÷c ロ                                                                           ロ. :a十b−c,a×b÷c,a十b十c,a×b×c:. 1                                                                           匹. a−b十c,a÷b×c,a−b−c,a÷b÷c.  実線で囲んだ8つの式が乗除と加減とが混じった式で,乗除は加減より先に計算しなけ. ればならない。それ以外の8つの式のうち,点線で囲んだ4っの式がどこから計算しても よい式であり,波線で囲んだ4つの式が左から順に計算しなければならない式である。.  例えば,a+b+cとa×b×cはどこから計算してもよい式であり,a+b−cとa. 8.

(13) ×b÷cもどこから計算してもよい式である。これに対し,a+b−cやa×b÷cと似 た式であるa−b+cやa÷b×cは,左から順に計算しなければならないが,児童がそ の違いを理解することは難しいと思われる。.  したがって小学校の段階では,これら4つの式(a+b−c,a−b+c,a×b÷c,a ÷b×c)は,すべて左から順に計算するといった指導が無難である。っまり,乗除と加 減の混じった式以外の3口の計算において,たし算だけ,あるいはかけ算だけの式は,必 ずしも左から順に計算する必要はないが,それら以外のすべては左から順に計算しなけれ ばならないという指導である。. 9.

(14) 第2節 先行研究に見られる児童の実態  前節では,計算の順序の規約を整理しまとめた。本節では,先行研究を概観し,計算の 順序の理解と計算の順序に及ぼす数値の影響に関する外国の児童の実態にっいて述べる。. 1.計算の順序の理解に関する児童の実態  Herscovicsら(1994),Linchevskiら(1994,1999)は,小学校6年生の児童を対象とし た調査を通して,児童が数式の計算の順序を十分理解していないとの報告をしている。以 下は,Linchevskiら(1999)の調査問題とその結果(正答率)である。. 表2−3 計算の順序に関する調査結果 (1) 5十6×10  . (38%). (2) 17−3×5  (53%). (3)8×(5十7) . (100%). (4) 27−5十3  (70%). (5) 24÷3×2  (62%) (P.178). 上記の問題の内容は,以下のようになっている。. (1),(2)は,かけ算を先行する問題 (3)は,括弧を先行する問題. (4),(5)は,左から順に計算する問題.  これらの計算で,すべての問題で正答した児童が26%,(3)を除くすべての問題を 左から順に計算した児童が24%という結果であった。  これらの結果から,括弧のある式を除いた3口の計算では,多くの児童が誤答をしてい ることが分かる。つまり,計算の順序を十分理解していない児童が多いということである。. 10.

(15) 2、計算の順序に及ぼす数値の影響  Linchevskiら(2002)は,数の組み合わせを変えて,児童が計算の順序を理解している かどうか,イスラエルとカナダの小学校6年生59人を対象として調査している。彼らは,. 同じ構造をもつa−b×cの式において,数の組み合わせを以下のように考えている。. 表2−4 式の構造に対する数の組み合わせ ア 数の組み合わせがr構造とつり合っている」. 121−5×2. イ 数の組み合わせがr構造に逆らっている」. 127−27×15. ウ 数の組み合わせはr中間的である」. 217−29×4 (P.25). ア 数の組み合わせがr構造とつり合っている」.  構造とつり合っている式とは,5×2という誘発する数の組み合わせを先に計算して  も,計算の順序に合っている式のことである。. イ 数の組み合わせがr構造に逆らっている」.  構造に逆らっている式とは,127−27という誘発する数の組み合わせを先に計算  すると,計算の順序が違っている式のことである。. ウ 数の組み合わせは「中間的である」.  中間的である式とは,誘発する数の組み合わせがない式である。.  次頁の表2−5は,Linchevskiら(2002)の調査問題とその結果(正答率)である。式 の構造は5種類,問題の内容は,(1)はかけ算を先行する問題であり,(2)から(5) の4問は,左から計算する問題である。. 11.

(16) 表2−5 Linchevskiら(2002)の調査結果 式の構造. ア 構造とつり合って いる. いる.    (%).   (%). (1)a−b×c.   (%). 47−7×5. 47−3×5. 61%). 33%). 52%). 27−7十5. 27−7十3. 28−5十3. 87%). 69%). 78%). 24÷3×5. 240÷15×2. 24÷3×2. 91%). (62%). 67%). 75÷25÷3. 75÷9÷3. 64÷8÷4. (83%). 62%). 71%). 8725−725−386. 9420−575−575. 676−547−286. (3)a÷b×c. (5)a−b−c. ウ 中間的である. 43−5×2. (2)a−b+c. (4)a÷b÷c. イ 構造に逆らって.  (66%).  (91%).  (87%) (P。28).  これらの結果から,いずれの問題も,数の組み合わせが構造に逆らっている式において. 正答率が低く,構造とつり合っている式において正答率が高くなっている。これは,数の 組み合わせによって児童が計算の順序を変えたことを示している。  Linchevskiら(2002)は,数値が計算の順序に及ぼす原因を,「偏見効果」という概念で,. 以下のように説明している。. r言語が“言語的”文脈をつくり出すのと同様に,数は“数的”文脈をっくり出す。. したがって,数は,代数的構造についての生徒の知覚に,言語が文章の知覚に関し. てもっている偏見効果に匹敵するような,かなりの偏見効果をもっていると我々は 仮定する」(p.25).  つまり,言語と同様,数は文脈をつくり出すので,特殊な数の組み合わせが偏見効果を もたらし,「計算は楽なところからする」という文脈をつくり出すのである。例えば,上. 記の調査問題である47−7×5において,47−7という特殊な数の組み合わせと演算 が偏見効果をもたらし,47−7を先に計算してしまうのである。. 12.

(17) 第3節 計算の順序の理解に関する我が国の児童の実態  本節では,計算の順序の理解に関する我が国の児童の実態を探るための調査とその結果 について述べ,計算の順序を間違える原因と中学校数学へ及ぼす影響を考察する。. 1.調査の概要 (1) 調査の目的  前節では,先行研究における計算の順序の理解に関する児童の実態についてまとめた。. これらの結果から,括弧のある式を除いた3口の計算では,外国の児童の多くが誤答をし. ていることが分かった。つまり,計算の順序を十分理解していない外国の児童が多いとい うことである。そこで,我が国の児童においても,計算の順序を正しく理解しているかど. うか調べることとする。調査の目的は,以下の3つとした。. ①計算の順序の理解に関する児童の実態を探ること。 ② 計算の順序に及ぼす数値の影響を調べること。. ③インタビューを通して,1つの式に異なる2つの答えがあってもよいと考える児  童がいるかどうか,また,計算の順序をどのように認識しているかを調べること。. (2) 調査の内容. ①調査1の内容  調査1の目的は,前述した①の内容である。調査問題は,次頁の表2−6で挙げている が,本章,第1節で述べた16種類の3口の計算のうち,「どこから計算してもよい式」. である4種類を除く,12種類の3口の計算である。  また,調査問題は,Linchevskiら(1999)の問題を参考としたが,本研究での調査は,あ. えて児童の間違いを誘発するような数値を使用した。その理由は,計算の順序を正しく. 理解しておれば,たとえ間違いを誘発するような数値であっても,正しく計算すること ができると考えたからである。. 13.

(18) 表2−6 調査1で用いた問題 次の計算をしましょう。. (1)4十6×24. (2). (4) 115−15÷5. (5). (7) 8×16−6. (8). (10) 224÷8÷4. (11). 228−28×4 120−3十17. 135÷3十2 120÷8−2. (3). 8十112÷4. (6). 191−25−5. (9). 54÷3×2 5×13十7. (12).  ②調査皿の内容  調査Hの目的は,前述した②の内容である。調査問題は表2−7で挙げているが,調査 IIでは,調査IIAと調査II B(以下H A,II Bとする)の2種類があり,HAは,構造に 逆らった数の組み合わせの問題からなっており,H Bは,中間的な数の組み合わせの問題. からなっている。それぞれ問題は6問ずっ,全部で12問で,括弧のない整数の3口の四 則計算である。Linchevskiら(2002)は,つり合った数の組み合わせからなる式でも調査を. しているが,本研究での調査はそれを除外した。その理由は,つり合った数の組み合わせ. からなる式でたとえ正答したとしても,児童が計算の順序を正しく理解しているかどうか は判断できないと考えたからである。. 表2−7 調査Hで用いた問題 【IIA】. 次の計算をしましょう。. (1) 110−7十3. (2) 191−25−15. (3)4十6×24. (4)240÷5×2. (5) 390−90÷6. (6) 224÷8÷4. 【IIB】. 次の計算をしましょう。. (1) 173−58十49 (4) 225÷15×3. (2) 134−48−29. (3) 29十67×4. (5)240−84÷6. (6)450÷75÷3. ③調査皿の内容  調査皿の目的は,前述した③の内容である。調査皿は,インタビュー調査であり,その. 内容の一例を次頁の表2−8に挙げている。  インタビューは,左から順に計算しなければならない,【HA】の(1),(2),(4),. (6)では誤答し,【H B】の(1),(2),(4),(6)では正答した児童を対象に行っ. 14.

(19) た。また,インタビューの形式はすべて同じとした。.           表2−8 調査皿のインタビュー内容 【調査皿】. 【a−b+cの場合】 HA:110−7+3 11B:173−58+49 Q1: あなたは,173−58+49では左から順に計算し,110−7+3では    7+3を先に計算しました。110−7+3も同じように左から順に計算して   下さい。. Q2:110−7+3の計算を173−58+49の計算と同じ順序ですると,答えが   106となり,あなたの答えの100とは違います。それでもいいと思いますか。.             はい  ・  いいえ (“はい”と答えた児童)インタビュー終了. (“いいえ”と答えた児童). Q3:なぜ,いけないと思ったのですか。. Q41では,どちらの答えの方が正しいと思いますか。. Q5:なぜ,そちらの方が正しいのですか。. (3) 調査の方法. ①対象児童  O 調査1    福岡県公立小学校第6学年     101人(3学級)  O 調査II,皿  調査1で行った同小学校第6学年   96人(3学級)   (調査Hは,H Aを先に実施し,その後H Bを行った。). ②実施時期.  O 調査1    2002年9月上旬.  O調査H,皿  2003年5月下旬  O  制匡艮日寺間はなし.   (概ね,調査115分,H A10分,n B15分,調査皿1人5分で終了).                  15.

(20) 2.調査の結果と考察 (1) 計算の順序の理解に関する結果と考察.  調査1の結果は,表2−9に示した通りであり,それぞれの表の下段の網掛け部分が誤 答である。ただし,この結果は答えの正誤でなく,計算の順序だけに着目した集計結果で. ある。例えば,(1)4+6×24で説明をすると,かけ算(6×24)を先に計算した. 児童が45.5%で,たし算(4+6)を先に計算した児童が54.5%ということであ る。.  全体を解答パターンで分類すると,次頁の表2−10のようになった。この表から分か るように,計算の順序を確実に理解している児童は20%に満たず,我が国の児童におい ても,計算の順序を十分に理解していない児童が多いことが分かる。また,誤答をした児 童は,少しでも計算が楽になるように勝手な順序で計算をしたと考えられる。. 表2−9 調査1の結果. (1)4十6×24. (2) 228−28×4. (3) 8十112÷4. 最初の演算. 人. %. 最初の演算. 人. %. 最初の演算. 人. %. かけ算. 46. 45.5. かけ算. 55. 54.5. わり算. 46. 45.5. たし算. 5遍. 騰翁. ひき算. 4も. 46』5. たし算. 55、. :54.5. (4) 115−15÷5  (5) 120−3十17 人. %. 最初の演算. 人. わり算. 47. 46.5. ひき算. 46. びき算. 54. 53.5. 瀧営算. 最初の演算. 人. %. かけ算. 76. 75.2. 職母. (10) 224÷8÷4 人. 前のわり算. 70 31. 後のわ塑 算. 最初の演算. 人. %. 60.4. 前のひき算. 58. 57.4. 饗のひき算. 蕃鵠. 42.6. 謬胴 胴 辞甲. (9) 54÷3×2. 最初の演算 人. 最初の演算. 人. %. わり算  74 73.3. わり算. 70. 69.3. 藩礁  「2曝2鱗家. 鱒麟算. 饗玉. %. (11) 120÷8−2. 呂0.7. (12) 5×13十7. %. 最初の演算. 人. %. 最初の演算. 人. %. 69.3. わり算. 78. 77.2. かけ算. 77. 76.2. 才3. 躍.愈. たし算. 24. 23.8. $0な、7. ひき算 幡. 最初の演算. %. (8) 135÷3十2. (7) 8×16−6. ひぎ騨. 5.母. 最初の演算. (6)191−25−5. 16.

(21) 表2−10 調査1の結果の解答パターン (人). 全問正答した児童. すべて左から順に計算した児童 全問誤答した児童 その他. 18 22 10 51. (%). 17.8. 21.7 10.0. 50.5. (2) 数値の影響に関する結果と考察.  調査∬の結果は,表2−11に示した通りであり,それぞれの表の上段が正答,下段の 網掛けが誤答である。ただし,この結果も調査1と同様に,答えの正誤ではなく計算の順 序だけに着目した集計結果である。. 表2−11 調査Hの結果 式の構造 最初の演算選択. (1)a−b+c ひき算. (2)a−b−c 前のひき算. 後のひき算. (3)a+b×c かけ算. HA:構造に逆らっている 人(%). 110−7十3 53(55、2). 1 9 1−25−1 5 62(64.6) .34・(35i4).. 4十6×24 37(38.5). た舷算. (4)a÷b×c わり算. HB:中間的である 人(%). 173−58十49 65(67,7). 134−48−29 67(70.0) 29〈3奮◎). 29十67×4 58(60.4) ㊧  Ψ      斡 哩. 240÷5×2 50(52。1). 崩け算. 225÷15×3 63(65.6). $,3璽鐵,紛 P     ;. (5)a−b÷c. 390−90÷6. 240−84÷6. わり算. 44(45.8). 65(67.7). ひき算. 52纈」2). 31(32.3). (6)a÷b÷c. 224÷8÷4. 450÷75÷3. 前のわり算. 52(54.2). 70(72,9). 後の糎璽算. 44韓5,8謎・. 26(27.1). 17.

(22)  各々の問題のH Aとn Bを比較すると,どの問題においてもH AよりもH Bの問題の方 が正答率が高くなった。このことは,II Aの問題の場合,間違った計算の順序の方が正し. い計算の順序よりも楽に計算できるとし,勝手な順序で計算したと考えられる。それに対 し,n Bの問題の場合,左から計算しても後の計算からしても難しさは大して変わらない ので左から順に計算したと思われる。.  正答率の伸びを比較すると,(3)と(5)の問題の伸びが大きい(どちらも約22ポ イント増)。これは,乗除と加減の混じった式では,中間的な数の組み合わせによって, 計算の順序の規約を思い出したが,それ以外の式では思い出せなかったためと考えられる。. つまり,「乗除と加減の混じった式では,乗除を先に計算する」という規約は思い出した が,rふっう,左から順に計算する」という規約は思い出せなかったということである。.  その理由として,「乗除と加減とが混じった式では,乗除を先に計算する」といった規 約は,文章で明記され規則として意識されるので,中間的な数の組み合わせの問題になる と思い出すことができるが,「ふつう,左から順に計算する」という規約の「ふっう」の. 意味は,明記されていないため思い出せなかったということである。また,たとえ思い出 したとしても,あまり意識されずその規約を適用できないと考えられる.. 表2−12 HAと∬Bの解答パターン(1) 式の構造. HAもH Bも HAは正答, 両方正答 人(%).  Bは誤答. IIAは誤答,.  Bは正答. 人(%). (%). HAもH Bも. 合計. 両方誤答 人(%). (%). (1)a−b+c. 41(42.7). 12(12.5). 24(25.0). 19(19.8). 96(100.O). (2)a−b−c. 52(54.2). 10(10.4). 15(15.6). 19(19.8). 96(100.0). (3)a+b×c. 33(34.4). 4 (4.2). 25(26.0). 34(35.4). 96(100.0). (4)a÷b×c. 47(48.9). 3 (3.1). 16(16.7). 30(3L3). 96(100.0). (5)a−b÷c. 43(44.8). 1 (1.0). 22(22.9). 30(3L3). 96(100.0). (6)a÷b÷c. 47(48.9). 5 (5。2). 23(24.0). 21(21.9). 96(100.0).  表2−12は,∬AとH Bの各問題に対し,解答状況を集計した結果である。H AもH Bもどちらの計算も正答した児童だけが計算の順序を正しく理解していると考えられる。. しかし,どの問題に関しても半数以上の児童が少なくとも一方の問題に誤答しており,計. 算の順序を十分に理解していないと解釈できる。問題(3),(4),(5)は,HAもH Bも両方誤答した割合が高い。このことは,これら3っのII Bの問題が,どちらかといえ. ば,構造に逆らった組み合わせの問題に近かったからであろう。っまり,中間的な問題を. 18.

(23) 意図したにもかかわらず,数の組み合わせが構造に逆らっていたということである。その ため,間違った計算の順序の方が楽に計算できると判断し,誤答したと考えられる。.  表2−13は,IIA,II Bのそれぞれの問題を正答数によって分類したものである。表 からも分かるように,H Aで全問正答した児童は13人(13.5%),II Bで全問正答 した児童は29人(30.2%)にすぎない。さらに,H Aもn Bも全問正答した児童は. 11人(11.5%)であり,計算の順序を確実に理解している児童はわずか1割程度で あったといえる。. 表2−13 HAとIIBの解答パターン(2) 正答数.  HB.  HA (%). 全問正答. (%). 13(13.5). 29(30.2). 5問正答. 9 (9.4). 6 (6.3). 4問正答. 22(22.9). 29(30.2). 3問正答. 14(14.6). 13(13.5). 2問正答. 14(14.6). 12(12.5). 1問正答. 16(16.7). 4 (4.2). 全問誤答. 8 (8。3). 3 (3.1). 合 計. 96(100.O). 96(100.0).  次頁の表2−14は,表2−13の結果から,H Bの全問正答者29人以外の67人の 児童を対象にし,誤答パターンを集計した結果である。っまり,6問中少なくとも1問は 誤答した児童が,どのように誤答したのかを分類したものである。.  表からも分かるように,特に多いのは,(3)と(5)の両問のみで誤答した児童18 人である。(3)と(5)の両問とも乗除と加減の混じった式であるが,左から順に計算 して誤答したのである。したがって,これらの児童は,計算の順序を「すべて左から計算. する」と認識し,乗除と加減とが混じった式で,乗除を先に計算することを理解していな いといえる。また,(3)と(5)の両問以外の4問で誤答した児童,つまり,(1),(2),. (4),(6)を誤答した8人は,乗除と加減の混じっている式以外は,「どこから計算し てもよい」と認識し,楽にできる計算から先にしたと考えられる。.  さらに,(1)と(4)の両問のみで誤答した児童4人は,加減が混じっている式では, 「たし算はひき算より先に計算する」と認識し,同様に乗除の混じった式でも,「かけ算. はわり算より先に計算する」と認識している。っまり,加減の混じった式や乗除の混じっ. 19.

(24) た式では,左から順に計算しなければならないことを十分理解していない。このことは,. 「ふつう,左から順に計算する」の規約の「ふつう」の意味を正しく理解していないとい える。. 表2−14 H Bの誤答パターン 誤答問題 (1)(2)(3)(4)(5)(6). (1)(2)(3)(4)(5) (1)(2)(3)(4)(6) (1)(3)(4)(5)(6) (2)(3)(4)(5)(6). (1)(2)(3)(4). (1)(3)(5). (1)(4)(6). (1)(2)(6). (1)(2)(4). (3)(4)(5). (1)(4). (2)(3). 18. (3)(5). (4)(6) (1)(6) (1)(2). (2)(6). ︵4︶. (2)(3)(4)(6). 1 8 1 1 1 1. (2)(4)(6). (2)(5). ︵1︶. (1)(4)(5)(6). 1 1. 1 2 3 1 1 1 2 4 2. (2)(3)(5). 誤答問題. 人. ︵5︶. (1)(2)(3)(5). 3 1. 誤答問題. ︵3︶. (1)(2)(4)(6). 人. 合計. 人. 1 2 1 2 1. 3 1 1 1. 67. (3) インタビュー調査の結果と考察.  調査皿の結果は,次頁以降の表2−15から表2−18で示している。インタビューで 用いた式は,調査Hで用いた式で,左から順に計算しなければならない,以下の4つの構 造をもつ式である。. (1)【a−b+c】. (2) 【a−b−c】. (4) 【a÷b×c】. (6)【a÷b÷c】.  インタビューは,調査HのIIA(1),(2),(4),(6)では誤答し,H B(1),(2),. (4),(6)では正答した児童(表2−12参照)のうち,42人の児童を対象とした。. 42人の内訳は,(1)の24人中10人,(2)の15人中10人,(4)の16人中1 1人,(6)の23人中11人である。ただし,これらの42人は重複していない。42. 人の児童に対してQ1とQ2を問い,Q3からQ5は,Q2で‘いいえ’と答えた児童に 対して問うた。. 20.

(25) 表2−15 調査皿(1)の結果 (1)【a−b+c】 対象児童:10人. lIIB 173−58+49 ②11A 110−7+3 Q1:「あなたは,①では左から順に計算し,②では7+3を先に計算しました。   ②も同じように左から順に計算して下さい。」. Q2:「②の計算を①の計算と同じ順序ですると,答えが106となり,あなたの答え   の100とは違います。それでもいいと思いますか。」.            はい(1人)  いいえ(9人) (“はい”と答えた児童)1人は,インタビュー終了. (“いいえ”と答えた9人の児童に対して). Q3:「なぜ,いけないと思ったのですか。」  「答えは一つに絞らなければならないから。」「答えは2つあってはいけないから。」. Q4:「では,どちらの答えの方が正しいと思いますか。」.  (1)106の方が正しい。(6人/9人中)  (2)100の方が正しい。(3人/9人中) Q5:「なぜ,そちらの方が正しいのですか。」.  (1)106の方が正しい。(6人/9人中) 児童1⇒「たし算とひき算が混じった式は,左から順に計算するけど,ひき算だけの式,.    わり算だけの式,かけ算とわり算の混じった式は,どこからしてもよい。」 児童2⇒「括弧がないから,左から順に計算する。」.   Q:「4+6×24ではどうですか。」. 児童2⇒r4+6×24も括弧がないから,左から順に計算する。」 児童3,4⇒「括弧がないから,左から順に計算する。かけ算とわり算とたし算とひき算      の混じった式では,かけ算,わり算は,たし算,ひき算より先に計算する。」. 児童5⇒「たし算とひき算が混じった式は,左から順に計算する。」 児童6⇒理由が答えられない。.  (2)100の方が正しい。(3人/9人中) 児童7⇒「たし算とひき算の混じった式では,たし算を先に計算する。」 児童8,9⇒r計算のしやすいところから計算する。」. 21.

(26) 表2−16 調査皿(2)の結果 (2)【a−b−c】 対象児童:10人. 1nB 134−48−29 ②HA 191−25−15 Q1:「あなたは,①では左から順に計算し,②では25−15を先に計算しました。   ②の計算を①のように左から順に計算して下さい。」. Q2:「②の計算を①の計算と同じ順序ですると,答えが151となり,あなたの答え    の181とは違います。それでもいいと思いますか。」.            はい(2人)  いいえ(8人) (“はい”と答えた児童)2人は,インタビュー終了. (“いいえ”と答えた8人の児童に対して). Q3:「なぜ,いけないと思ったのですか。」   ・全員答えられない。. Q4:「では,どちらの答えの方が正しいと思いますか。」.  (1)151の方が正しい。(4人/8人中)  (2)181の方が正しい。(4人/8人中) Q5:「なぜ,そちらの方が正しいのですか。」.  (1)151の方が正しい。(4人/8人中) 児童10,11⇒「ふつうは左から順に計算する。ただし,かけ算とわり算とたし算とひき     算の混じった式では,かけ算とわり算はたし算とひき算より先に計算する。」 児童12⇒「ひき算だけの計算は左から順にする。」.   Q:「その他の計算はどうですか。」 児童12⇒「たし算とひき算の混じった式では,たし算を先に計算する。」.     rかけ算とわり算の混じった式では,かけ算を先に計算する。」 児童13⇒理由が答えられない。.  (2)181の方が正しい。(4人/8人中) 児童14,15⇒「計算のしやすいところから計算する。」. 児童16,17→「左から計算すると計算が大変になりそうだから。」,「計算のしやすいと       ころからした方がよい。」,「桁数の小さい方から計算する。」. 22.

(27) 表2−17 調査皿(4)の結果 (4)【a÷b×c】 対象児童:11人. lHB 225÷15×3 ②HA 240÷5×2 Q1:「あなたは,①では左から順に計算し,②では5×2を先に計算しました。  ②の計算を①のように左から順に計算して下さい。」. Q2:「②の計算を①の計算と同じ順序ですると,答えが96となり,あなたの答えの    24とは違います。それでもいいと思いますか」.           はい(0人)  いいえ(11人) (“いいえ”と答えた11人の児童に対して). Q3:「なぜ,いけないと思ったのですか。」   「答えが2つあるのはおかしい。」. Q4:「では,どちらの答えの方が正しいと思いますか。」.  (1)96の方が正しい。(10人/11人中).  (2)24の方が正しい。( 1人/11人中) Q5:「なぜ,そちらの方が正しいのですか。」.  (1)96の方が正しい。(10人/11人中) 児童18,19⇒rかけ算とわり算の混じった式では,左から順に計算する。j   Q:rそのほかの計算の順序はどうですか。」 児童18⇒「たし算とひき算の混じった式は,左から順に計算する。」. 児童20,21,22,23,24⇒rふっうは左から順にする。ただし,かけ算とわり算とたし算と  ひき算の混じった式では,かけ算,わり算は,たし算,ひき算よりも先に計算する。」. 児童25⇒「かけ算とわり算の混じった式では,わり算を先に計算する。」.    Q:「そのほかの計算の順序はどうですか。」 児童25⇒「たし算とひき算の混じった式では,ひき算を先に計算する。」. 児童26,27⇒「常に計算は左から順にする。ただし,括弧がある場合は括弧の中から先       に計算する。」.  (2)24の方が正しい。(1人/11人中) 児童28⇒「簡単に計算ができるところからする。」. 23.

(28) 表2−18 調査皿(6)の結果 (6)【a÷b÷c】 対象児童:11人. lHB 450÷75÷3 ②HA 224÷8÷4 Q1:「あなたは,①では左から順に計算し,②では8÷4を先に計算しました。   ②の計算を①のように左から順に計算して下さい。」. Q2:「②の計算を①の計算と同じ順序ですると,答えが7となり,あなたの答えの1    12とは違います。それでもいいと思いますか。」.            はい(2人)  いいえ(9人) (“はい”と答えた児童)2人は,インタビュー終了. (“いいえ”と答えた9人の児童に対して). Q3:rなぜ,いけないと思ったのですか。」   ・全員答えられない。. Q4:「では,どちらの答えの方が正しいと思いますか。」.  (1)7の方が正しい。  (5人/9人中).  (2)112の方が正しい。(4人/9人中) Q5:「なぜ,そちらの方が正しいのですか。」.  (1)7の方が正しい。(5人/9人中) 児童29,30,31⇒.    「ふつうは,左から順に計算する。ただし,かけ算とわり算とたし算とひき算の    混じった式では,かけ算,わり算は,たし算,ひき算よりも先に計算する。」. 児童32⇒rすべての計算は左から順にする。」 児童33⇒rわり算だけの式では,桁数の大きい数から計算する。」.   Q:rそのほかの計算の順序はどうですか。」 児童33⇒「ひき算だけの式でも,桁数の大きい数からひいていく。」.     「たし算とひき算の混じった式では,たし算を先に計算し,かけ算とわり算の     混じった式では,かけ算を先に計算する。」.  (2)112の方が正しい。(4人/9人中) 児童34,35,36,37⇒「簡単に計算ができるところから計算する。」.         「計算のしやすいところからした方がよい。」. 24.

(29)  表2−19は,Q2に対して,‘はい’と答えた児童の数を示している。表からも分か. るように,(1)では10人中1人,(2)では10人中2人,(6)では11人中2人, 計42人中5人が,‘はい)と答えている。つまり,少数ではあるが,1っの式に異なる 2つの答えがあってもよいと考えている児童がいたという実態である。. 表2−19 ‘はい’と答えた児童 式の構造. 人. (1)a−b+c. 1 2 0 2 5. (2)a−b−c (4)a÷b×c (6)a÷b÷c 合  計.  Q2で‘はい’と答えた児童5人を除く37人の児童を対象に,続けてQ3を問うた。 Q3に対して,「答えは1つに絞らなければならないから」「答えは2つあったらおかし いから」という理由を答えた児童もいたが,ほとんどの児童は理由を述べることはできな かった。.  さらに,Q4に対して,「左から順に計算した結果の方が正しい」と答えた児童は37 人中25人,「後ろから計算した結果の方が正しい」と答えた児童は37人中12人いた。 つまり,答えが異なることは分かるが,どちらの答えが正しいのか理解していない児童が いるということが分かる。.  Q5でその理由を尋ねると,「左から順に計算した結果の方が正しい」と答えた25人 のうち,児童12は,(2)【a−b−c】で,「ひき算だけの計算は左から順にする」と答 えた。続けて,「その他の計算はどうですか」という質問をすると,児童12は,「たし 算とひき算の混じった式では,たし算を先に計算する」また,「かけ算とわり算の混じっ た式では,かけ算を先に計算する」と答えた。.  児童12の規約を適用すると,ひき算だけの式では正しい答えを導くことができるが, 加減の混じった式や乗除の混じった式では,正しい答えを導くことができない。例えば,. 加減の混じった式173+58−49で,児童12の規約を適用すると正しい答えを導く ことができるが,173−58+49では間違った答えとなるということである。実際, 児童12は,(1)【a−b+c】や(4)【a÷b×c】において,加減の混じった式では たし算を先に計算し,乗除の混じった式ではかけ算を先に計算し,誤答していた。.  また,児童26と27は,(4)【a÷b×c】でr常に計算は左から順にする。ただし,. 25.

(30) 括弧がある場合は括弧の中から先に計算する」と答えた。確かにひき算だけの式やわり算. だけの式では,児童26と27の規約を適用すると正しい答えを導くことができる。しか. し,例えば,29+67×4のような乗除と加減の混じった式では,児童26と27の規 約を適用すると間違った答えを導いてしまう。実際,児童26と27は,(3),(5)の. 乗除と加減の混じった式で左から計算し誤答していた。児童2,18,19,32も同様 に,彼らの規約を適用すると正しい答えを導くこともあるが,間違った答えを導いてしま うことがある。これらの結果から,多くの児童は,計算の順序の規約を誤って適用してい ることが分かる。.  また,計算の順序を正しく理解していると思える理由を述べた児童は,37人中13人. いる。具体的には,児童3,4,5,10,11,20,21,22,23,24,29, 30,31である。ただし,児童5のように,「たし算とひき算が混じった式は,左から. 順に計算する」と答えたにもかかわらず,実際は,173−58+49のような加減の混 じった式では後ろから計算し誤答した。このように,計算の順序を正しく理解しているよ うに見えても,必ずしもそうとはいえない児童もいる。.  次に,「後ろから計算した結果の方が正しい」と答えた児童の多くは,その理由を,「計. 算のしやすいところからするから」r簡単にできる計算からするからj r桁数の小さいも. のから計算するから」と答えた。これらの児童は,明らかに計算の順序を理解していない ので,正当な理由を述べることはできなかった。. 3.過度の一般化  Linchevskiら(1999)は,児童が計算の順序を間違える原因として,算数指導における「エ. レガントな手順」の奨励があることを指摘している。つまり,rエレガントな手順」の奨 励が「どこから計算してもよい」という過度の一般化を促進するという指摘である。. 「小学校では,数式を計算するとき,子どもたちは,特殊な数の組み合わせを使って. 標準的な手順をよりエレガントな手順で置き換えるようにしばしば奨励されてい る。(中略)この段階では,子どもたちは通常相いれない例,つまり,式の構造が. ある種の“そそのかす”グルーピングを禁止している例に出くわさないので,認め られた柔軟性を過度に一般化するかもしれない」(p.191). 「エレガントな手順」とは,例えば,145+92+8という式において,左から順に. 26.

(31) 計算するよりまず,より計算が簡単にできる92と8をグルーピングさせ,92+8を先 に計算することである。また,「そそのかすグルーピングを禁止している例」というのは,. 上式の例で述べると,145−92+8のように,結合法則が成り立たない式のことであ る。この「エレガントな手順」の奨励によって,児童は,たし算だけの式とかけ算だけの 式において成り立つ結合法則を,それら以外の式にも適用し,「どこから計算してもよい」. と過度に一般化するのである。目本においても,「工夫して計算しましょう」という問い かけをした計算問題がある。この計算問題は,Linchevskiら(1999)らの言う“そそのかす ”グルーヒ。ングを禁止している例に出くわさないため,過度に一般化をすると考えられる。. このように,前述した調査問題で誤答した児童は,結合法則を過度に一般化し,楽にでき る計算から先にしたといえる。. 4.中学校数学への影響  数式において,本節で述べたような間違いをした児童は,中学校数学の学習をするとき. にも,同様の間違いをする可能性がある。例えば,中学校のr正の数・負の数」の単元に. おいて,調査問題54÷3×2で最初に3×2を計算した児童は,(一12)÷3×4の ような式では,3×4を先に計算し,一1と誤答とする可能性がある。.  また,「文字と式jの単元においても,調査問題120−3+17で,3+17を先に. 計算した児童は,5a−3a+2aの式でも,3a+2aを先に計算し,0と誤答する恐 れがある。.  さらに,式の値に関しても,調査問題4+6×24で4+6を先に計算した児童は,x =一. のとき,5+2xの値を求めるとき,x=一3を代入し,5+2×(一3)とし,5. +2を先に計算して一21と誤答する可能性がある。  このように,小学校の数式の計算の順序の理解が不十分であると,中学校に上がって正 負の数や文字式の計算の学習へ影響を及ぼすと考えられる。. 27.

(32) 第 3 章 数式の計算に関する認知的障害.  本章では,先行研究から,「指示された演算からの項の分離」「後続の演算を伴った飛 び越し」「部分和の不適切な処理」「相殺の認知の失敗」「括弧の静的な見方」という五つ. の認知的障害を挙げ,外国の児童の実態について述べる。次に,これらの認知的障害に関 する我が国の児童の実態を探り考察する。  本章の構成は,以下の通りである。. 第1節 先行研究に見られる児童の実態.   1.指示された演算からの項の分離.   2.後続の演算を伴った飛び越し   3.部分和の不適切な処理   4.相殺の認知の失敗.   5.括弧の静的な見方. 第2節 認知的障害に関する調査の結果と考察.   1.調査の概要   (1)調査の目的.   (2)調査の内容.   (3) 調査の方法   2.調査の結果と考察.   (1)部分和の計算に関する結果と考察   (2) 相殺の認知の失敗に関する結果と考察.   (3) 括弧の静的な見方に関する結果と考察. 28.

(33) 第1節先行研究に見られる児童の実態  前章では,数式の計算の順序の理解に関する先行研究をもとに,我が国の児童の実態を 探った。その結果,計算の順序を正しく理解していない児童が,我が国においても多いと いうことが分かった。Linchevskiら(1999)は,児童が計算の順序を間違える原因として,. 算数指導における「エレガントな手順」の奨励があることを指摘した。っまり,「エレガ ントな手順」の奨励が「どこから計算してもよい」という過度の一般化を促進するという 指摘である。.  そこで本章では,計算の順序の理解を阻害する要因はどこにあるのか調べることとする。. Linchevskiら(1994,1999)は,その要因をr認知的障害」という概念で説明している。本 節では,先行研究に見られる認知的障害に関する外国の児童の実態を述べる。彼らは,「指 示された演算からの項の分離」「後続の演算を伴った飛び越し」「相殺の認知の失敗」「括 弧の静的な見方」という認知的障害を挙げている。また,Linchevskiら(1999)は,これら. の他に「部分和の不適切な処理」を挙げている。以下は,これらの認知的障害の例と Linchevskiら(1999)によるイスラエルとカナダの6年生の児童を対象とした調査問題とそ の結果である。. 1.指示された演算からの項の分離  r指示された演算からの項の分離」とは,120−3+17で,項3に指示された演算 (ひき算)から項3を分離し,3+17と計算してしまう障害のことである。Linchevski ら(1999)は,「指示された演算からの項の分離」に関する調査を以下のように行っている。. r指示された演算からの項の分離』に関する問題. 次の問題を計算をしましょう。. (1) 91−15−5    (2) 104÷8÷4 (P.182).  (1)は,ひき算だけの式,(2)は,わり算だけの式であり,ともに左から順に計算 しなければならない式である。次頁の表3−1は,演算から項を分離した児童の割合を示. 29.

(34) している。っまり,(1)では,項15に指示されたひき算から項15を分離し,先に1 5−5を計算し,誤答した児童が36%いる。また,(2)では,項8に指示されたわり 算から項8を分離し,先に8÷4を計算し誤答した児童が58%いる。. 表3−1 指示された演算からの項の分離に関する結果 問 題. %. 36 58. (1) 9 1−1 5−5. (2) 104÷8÷4. (P.182). 2.後続の演算を伴った飛び越し  「後続の演算を伴った飛び越し」とは,195+67−117+39という式において, 3桁の数,2桁の数を別々に計算するように指示すると,3桁の数の計算では195の後. 続の演算であるたし算を伴って195+117と計算し,2桁の数の計算では67の後続 のひき算を伴って67−39と計算してしまう障害のことである。  Linchevskiら(1999)は,「後続の演算を伴った飛び越し」に関する調査を以下のように. 行っている。演算の種類と個数に着目すると,(1)では,たし算が2つ,ひき算が1つ に対し,(2)では,たし算が1つ,ひき算が2つである。. r後続の演算を伴った飛び越し」に関する問題 次の問題は,電卓を使ってもかまいません。しかし,与えられた手順で計算して下. さい。まず最初に3桁の数を計算,次に2桁の数を計算して下さい。. (2)217十39−162−17. (1)195十67−117十39. (P.187).  次頁の表3−2より,(1),(2)の両問とも,ほぽ半数の児童が,「後続の演算を伴 った飛び越し」をし誤答している。また,3桁の数と2桁の数をそれぞれ別に計算せよと いう指示にもかかわらず,7%の児童が,(1),(2)の両問で,左から順に計算してい る。. 30.

(35) 表3−2 後続の演算を伴った飛び越しに関する結果. (2) 217十39−162−17. (1)195十67−117十39 計算の処理. %. 計算の処理. 195十117. 43 39. 217十162 左から順に計算. 左から順に計算. 7. わからない. わからない. 14. 67−39. %. 46 7 18. (P、188). 3.部分和の不適切な処理  「部分和の不適切な処理」とは,前頁の数式で3桁の数,2桁の数の部分和を正しく計 算することができるが,これらの部分和をひいてしまう障害のことである。  Linchevskiら(1999)は,「部分和の不適切な処理」に関する調査とその結果を,以下の. ように示している。前頁の問題で正しく部分和を計算した児童が,それらをどのように処. 理したかを示したのが表3−3である。それぞれの表の上段が正答,下段の網掛けが誤答 である。表より,(1)より(2)の方が部分和の処理を問違っている児童の割合が多い ことが分かる。. 表3−3 部分和の処理に関する結果. (1)195十67−117十39 . (2)217十39−162−17. 計算の処理. %. 計算の処理. %. 部分和をたした. 64. 部分和をたした. 29. ξ.1. 分和捻ひいた. 分和番ぴいた. 4 (P、187). 31.

(36) 4、相殺の認知の失敗  「相殺の認知の失敗」とは,2117+175−217+175+67の式において,2 17が相殺されることを認知できない障害のことである。Linchevskiら(1999)は,「相殺. の認知の失敗」に関する調査を,以下の問題A,問題Bで行っている。. 「相殺の認知の失敗』に関する問題A すぐに計算をしないで,お互い消し合える項を見っけて計算しなさい。. (1)217十175−217十175十67 (2) 217−175十217−175十98 (P.186). 「相殺の認知の失敗』に関する問題B すぐに計算をしないで,お互い消し合える項を見つけて計算しなさい。.  (1)237十89−89十267−92十92  (2) 217−59十59十62−28−28 (P。184).  問題Aと問題Bの違いは,問題Aは,小学生でも容易に相殺できると思える問題に対し,. 問題Bは,それに加えて,小学生には多少難しいと思える相殺を含んでいる。具体的に述. べると,問題Aは,+217−217の相殺の問題,問題Bは,+89−89の他に,一 92+92や一59+59の相殺を含む問題である。  これらの結果を,次頁の表3−4,表3−5に示してある。表3−4から分かるように,. (1)で217を正しく相殺できた児童は45%であり,残りの児童は間違って相殺して いる。(2)は,相殺できる項がないにもかかわらず,多くの児童が間違って相殺してい る。. 32.

(37) 表3−4 相殺の認知の失敗に関する結果A. (1)217十175−217十175十67 217と175の計算 217を相殺 間違って175を相殺 (217+175)をペアにして相殺. (2) 217−175十217−175十98 217と175の計算. %. 45 28 24. %. 問違って175を相殺. 42 32. (217−175)をペアにして相殺. 16. 間違って217を相殺. (P.186).  表3−5から分かるように,(1)で89と92の両方とも正しく相殺した児童は46 %,(2)で59を正しく相殺した児童は52%である。つまり,両調査の結果に大差は なく,正しく相殺できた児童は半数程度である。(2)の一28−28の計算は相殺でき ないにもかかわらず,23%の児童が間違って相殺している。. 表3−5 相殺の認知の失敗に関する結果B. (1)237十89−89十267−92十92  (2)217−59十59十62−28−28. 89と92の計算. %. 59と28の計算. %. 89も92も相殺した. 46. 59を相殺した. 89だけ相殺した. 6 21 21. 59十59とした. 52 18 23 20. 92十92とした 左から順に計算した. 28を相殺した 左から順に計算した. (P.184). 33.

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