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日本学術振興会拠点大学交流事業
拠点大学:東京大学
沿岸海洋学
Coastal Marine Science
事後評価資料
2011
年8月
The JSPS Core University Program
The University of Tokyo
Research Center for Oceanograply, LIPI
Universiti Teknologi Malaysia
University of the Philippines
Chulalongkorn University
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評価資料の要約
平成 13〜22 年度の 10 年間、日本が中心となって、アジア5ヵ国(インドネシア、マレー シア、フィリピン、タイ、ベトナム)と沿岸海洋学(Coastal Oceanography)(平成 17 年度か ら Coastal Marine Science と改訳)に関する多国間共同研究を実施した。本事業では次の4課 題を実施した。(1)東アジア・東单アジア沿岸・縁辺海の物質輸送過程に関する研究、(2) 海産有害微細藻類の生物生態学、(3)東アジア・東单アジアの沿岸域における生物多様性 の研究、(4)有害化学物質による沿岸環境の汚染と生態影響に関する研究。とくに課題3 は、さらに4つのサブグループ(1、魚類;2、底生動物;3,海藻・海草類;4,プラク トン)から構成された。協力国の 24 研究機関(インドネシア、4;マレーシア、7;フィリ ピン、5;タイ、6;ベトナム、2)と日本の 23 研究機関から総数 326 人(国外、222;日 本、104)が参加した。期間中に合同セミナー5回、コーディネータ会議 11 回、ワークショ ップ 88 回を開催した。ワークショップでは、研究発表、最新の情報交換、研究計画立案を行 うとともに、若手研究者を対象に基礎的なトレーニングや分析方法の標準化も実施した。本 プログラムの活動を通じて、これらの国々から優秀な若手研究者が数多く育ってきた。本事 業を通じて約 1300 件の原著論文(査読付き 1070、プロシーディングス 228)、139 件の著書 (分担執筆を含む)および 30 件の報告書・記事等を公表した(表4)。特に、魚類のフィー ルドガイド、海草類のフィールドガイド、有害化学物質の化学分析法マニュアル(CD 付き) は、アジア諸国の研究者や関連機関から高い評価を受けている。本研究活動を通じて得られ た成果をもとに、これまで培ってきたネットワークを活かして、アジア諸国の研究者や研究 機関と連携して沿岸海洋学に関する重要な研究に取り組んでいくことが極めて重要である。 このシステムを活かして研究を展開することによって、アジア海域、ひいては世界の沿岸海 洋における環境保全にいっそう貢献する新しい展開が期待できる。
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評価資料の要約(英文)The JSPS Multilateral Core University Program “Coastal Oceanography” has been conducted
by five Southeast Asian countries (Indonesia, Malaysia, Philippine, Thailand and Vietnam)
and Japan for 10 years (2001/2001-2010/2011). This program covered the following four
research subjects: Project 1, Water circulation and the process of material transport in the
coastal areas and marginal seas of the East and Southeast Asia; Project 2, Ecology and
oceanography of harmful marine microalgae; Project 3, Biodiversity studies in the coastal
waters of the East and Southeast Asia; and Project 4, Pollution of hazardous chemicals in the
coastal marine environment and their ecological effect. In particular, Project 3 was composed
of the following four groups: 3-1, Fish Group; 3-2, Benthos Group; 3-3, Seagrass/seaweeds
Group; and 3-4, Plankton Group. The 222 foreign scientists from 24 institutes/universities
(Indonesia, 4; Malaysia, 7; Philippines, 5; Thailand, 6; Vietnam, 2) and 104 Japanese
scientists from 23 institutes/universities joined this program and worked together under the
common principles. Five joint seminars, 11 coordinator’s meetings, and 88 workshops were
organized with cooperation of five Southeast Asian countries and Japan. In the workshop, we
shared our time for presentation, exchange of up-to-date information, and establishment of
research plan. In order to encourage young scientists, we also held training courses using field
guides of fish, seagrasses, and benthos, textbooks and analytical manual of plankton and
hazardous chemicals, all of which has been compiled/published by the project members. The
activities of the five projects resulted in publication of approximately 1300 peer-reviewed
scientific papers (1070 articles in peer-reviewed journals, 228 in proceedings), 139 books or
book chapters and 30 articles in other forms. Especially, the field guides of fish and sea grass
and the analytical manual and CD of hazardous chemicals are highly favorably evaluated by
scientists and the institutes/universities of Asian countries. Based on the present scientific
evidences, it is very important to continue and enhance this system of multilateral
collaboration among these Asian countries, which is expected to contribute to environmental
conservation not only in Asian countries but also in the world.
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1.事業の目標 東アジア・東单アジアは 30 億以上の人口を抱え、その社会活動が沿岸域に大きな影響を与えて いる。また、沿岸域に生息する生物資源は多くの国々に食糧を提供しており、社会経済の面から も沿岸域の持続的包括管理・利用は、この地域で最も重要な課題である。このように重要な沿岸 域も工業化、都市の人口集中などの影響で、富栄養化による赤潮の発生、重金属類汚染、内分泌 攪乱物質汚染が深刻な環境問題となってきた。また、陸地を主とする土地利用の変化による土砂 の堆積、懸濁物の流入などによる藻場、海草群落、マングローブ域、サンゴ礁の破壊は、世界有 数の生物多様性を誇るこの海域でウミガメ、ジュゴン、サンゴなどの激減をもたらしている。縁 辺海を含む東アジア・東单アジアの沿岸域の持続的包括管理・利用の観点からも、沿岸海洋学に 関する物理・化学・生物にまたがる学際的総合研究は不可欠である。 本事業では、平成 13〜22 年度の 10 年間、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン,ベ トナムおよび日本の6カ国の研究者と連携して、各国の沿岸域を対象に、ユネスコの IOC(政府 間海洋委員会)/WESTPAC(IOC の西部太平洋委員会)においても重要とされている下記の4課 題について研究を実施した。 課題1.東アジア・東单アジア沿岸・縁辺海の物質輸送過程 課題2.海産有害微細藻類の生物生態学 課題3.東アジア・東单アジアの沿岸域における生物多様性 3−1:海藻・海草 3−2:プランクトン 3−3:魚類 3−4:ベントス 課題4.有害化学物質による沿岸環境の汚染と生態影響 本事業ではこれらの研究を実施することにより、沿岸海洋学の基礎研究を飛躍的に発展させる だけでなく、将来を担う若い優秀な研究者を育成することを目指した。また、これらの活動によ り、沿岸海洋についての多くの学際的な成果が期待出来るとともに、沿岸環境の保全と将来にお ける生物資源の持続的包括的管理・利用ちおう観点から社会経済的波及効果も期待出来る。この ように、本事業では、これまで培ってきた多国間の研究協力体制をさらに発展させて、東アジア・ 東单アジアにおける組織的・包括的な沿岸海洋学の基盤を確立することを目標とした。 2.事業の実施状況 2−1.事業の全体的な体制 図1に示すように、本事業では日本側コーディネーターが各課題リーダーおよび協力各国を代 表するナショナルコーディネーターと調整を行いながら、事業全体の推進を包括的に行ってきた。 ナショナルコーディネーターは本事業における交流および共同研究を円滑に進めるに当たり、自 国の研究者間の調整を行うとともに、国内学術機関とも連絡・調整をおこない、研究助成金の確 保や調査許可・試料持ち出し許可の取得等を援助した。一方、各課題リーダーは各研究課題間の 連携研究と交流を促進するため、年度ごとに目標を設定し、各参加者が共同研究を行えるよう調 整するとともに、年 1 回程度ワークショップを開催し、各研究者が得た成果・課題の情報を共有 した。5
図1. JSPS-CMS Program の全体的体制。 担当者間の横線は実施 期間中の担当者の交代 を示す。 本事業の実施組織を以下に示す(人員等の詳細は「参考資料1」参照)。 日本側実施組織 拠点大学:東京大学大気海洋研究所 実施組織代表者:東京大学大気海洋研究所・所長[小池勲夫(平成 13-16 年度)、寺崎 誠(平成 17-18 年度)、西田 睦(平成 19 年度-22 年度)] コーディネーター:東京大学大気海洋研究所・教授・西田 周平[塚本勝巳(平成 13-17 年度)、 宮崎信之(平成 17 -20 年度)、西田周平(平成 21-22 年度)] 協力大学・部局・研究組織:北海道大学大学院水産科学研究科、北里大学海洋生命科学部、東北 大学大学院理学研究科、東北大学大学院農学研究科、東京海洋大学海洋科学部、東京大学大学 院農学生命科学研究科、東京大学アジア生物資源環境研究センター、東海大学海洋学部、三重大学生 物資源学部、京都大学フィールド科学教育研究センター、広島大学生物生産学部、愛媛大学沿岸環境科 学研究センター、香川大学農学部、九州大学応用力学研究所、長崎大学水産学部、高知大学農学部、 鹿児島大学水産学部、鹿児島大学理学部、国立科学博物館動物研究部、琉球大学理学部、名古 屋大学地球水循環研究センター 相手国側実施組織 1)インドネシア拠点機関:Research Center for Oceanography, LIPI
コーディネーター:Ono Kurnaen Sumadhiharga (2001-2005), Suharsono (2006-2010), Director Research Center for Oceanography, LIPI
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協力機関:Sam Ratulangi University、Diponegoro University、Bogor Agricultural University
2)タイ
拠点機関:Chulalongkorn University
コーディネーター:Charoen Nitithamyong, Assistant Professor/Head of Department Department of Marine Science, Faculty of Science, Chulalongkorn University
協力機関:Kasetsart University、Burapha University、Department of Fisheries、Prince of Songkla University、Phuket Marine Biological Center
3)マレーシア
拠点機関:Universiti Teknologi Malaysia
コーディネーター:Mohd Ibrahim Seeni Mohd, Professor
Faculty of Geoinformation Science and Engineering, Universiti Teknologi Malaysia
協力機関:Universiti Sains Malaysia、Universiti Kebangsaan Malaysia、Universiti Malaya、 Universiti Putra Malaysia、Universiti Malaysia Sarawak、South Asian Fisheries Development Center (SEAFDEC)
4)フィリピン
拠点機関:University of the Philippines, Diliman コーディネーター:Miguel D. Fortes, Professor
Marine Science Institute, University of the Philippines, Diliman
協力機関:University of the Philippines Los Banos、De La Salle University、University of the Philippines Visayas、University of San Carlos
5)ベトナム
拠点機関:Institute of Marine Environment and Resources コーディネーター:Tran Duc Thanh, Director
Institute of Marine Environment and Resources・Director 協力機関:Vietnam National University
2−2.共同研究の体制 本事業では東单アジアにおける沿岸海洋学の主要な問題に取り組むため、以下の4つの課題(課 題3ではさらに4つのサブ課題)について研究グループ(以下「課題グループ」)を構成し、それ ぞれの課題にリーダ(括弧内)を配置した。 課題1.東アジア・東单アジア沿岸・縁辺海の物質輸送過程(九州大学・柳 哲雄) 課題2.海産有害微細藻類の生物生態学(東京大学アジア生物資源環境研究センター・福代康夫) 課題3.東アジア・東单アジアの沿岸域における生物多様性(国立科学博物館・松浦啓一) 3−1:海藻・海草(北里大学・小河久朗、同・林崎健一)
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3−2:プランクトン(東京大学大気海洋研究所・西田周平) 3−3:魚類(国立科学博物館・松浦啓一) 3−4:ベントス(京都大学・白山義久) 課題4.有害化学物質による沿岸環境の汚染と生態影響(東京大学海洋研究所・宮崎信之、同・ 井上広滋) 図2に示すように、各課題リーダーは課題グループのメンバーと協議を行い、実施計画を立案 し、共同調査やワークショップを実施した。いっぽう、各国のコーディネータは、それぞれの国 の研究者を統括し、共同研究を実施するうえで必要な研究体制を組織し、アジア諸国での現地調 査の許可書、調査機材の持ち込み許可書、採集標本の国外への持ち出し許可書などの取得に必要 な役割を果たした。また、各国の研究助成機関からの本事業に関連した研究費の確保等の研究活 動を支援する役割を担った。 各課題グループでは具体的に以下のような研究体制のもとに活動を実施した。 課題リーダーは課題グループの海外研究分担者とメールで頻繁に連絡をとり、相互訪問の日程 調整や現地観測の打合せを行った。国内の研究分担者もリーダーとメールや電話で連絡をとりあ って、研究の進行に関する調整を行った。各国代表者をきめ、各国の研究者との連絡網を整備し た。ワークショップやセミナーなどでは、各国の研究者が実施している研究成果の発表、最新情 報の交換、研究計画の立案などを行い、研究者相互で成果が上がるように調整しながら共同研究 を実施した。 図2.JSPS-CMS Program における国際的、国内的、課題間および課題内の連携体制. 2−3.セミナーの実施状況 各課題グループおよび課題グループ間協力による学際的研究の成果発表とメンバー相互の交流8
を目的としておおむね2年に一回、各国の持ち回りで、計5回の合同セミナーを開催した(表1)。 表1.合同セミナーの概要 回数 期間 場所 参加者数 発表数 (開催国外/国内) (口頭/ポスター) 第1回 H.15.12.14-16 チェンマイ(タイ) 150 (87/63) 100 (70/30) 第2回 H.17.8.24-26 東京(日本) 140 (69/71) 113 (36/77) 第3回 H.19.8.3-5 ジョクジャカルタ 163 (76/87) 151 (115/36) (インドネシア) 第4回 H.21.10.26-28 ハイフォン(ベトナム) 94 (65/29) 77 (56/21) 第5回 H.22.10.26-29 柏(日本)* 86 (56/30) 68 (ポスターのみ) *IOC/WESTPAC と共催: Horiba International Conference "New Direction of Ocean Research in the Western Pacific–Past, Present and Future of UNESCO/IOC/WESTPAC Activity for 50 Years and the JSPS Project: Coastal Marine Science".これら本事業独自の合同セミナーのほかに、沿岸海洋学に関連する他の事業、機関、国際プロ ジェクト等との共催で7回の国際会議を開催した(表2)。 表2.本事業が共催した国際会議(開催年月、会議名、開催機関、開催地) 平成 13 年 10 月:第3回 JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー(国連大学、東京大学海洋研究所)、東 京 平成 14 年7月:国連大学国際会議「人間と海」(国連大学、岩手県、東京大学海洋研究所)、岩 手県 平成 16 年2月:第4回 JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー(国連大学、東京大学海洋研究所)、東 京 平成 16 年 11 月:第5回 JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー(国連大学、東京大学海洋研究所)、東 京 平成 17 年 10 月:第6回 JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー(国連大学、東京大学海洋研究所)、東 京 平成 18 年 10 月:NaGISA 世界会議 JSPS 特別セッション「東单アジア沿岸海域の生物多様性」 (NaGISA Project: Census of Marine Life)、バンコク(タイ)
平成 20 年 10 月:NaGISA 西部太平洋海域国際会議(NaGISA Project: Census of Marine Life)、ジ ャカルタ(インドネシア)
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平成 15 年度:第 1 回合同セミナー、JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー 前者では 4 課題の研究者が初めて一同に会し,これまでの3年間の研究成果の発表とともに、 各課題における研究の進捗状況を相互に理解し,今後の研究の方向,特に課題間の有機的な連携 方策について検討することを目的とした。また、拠点交流事業に参加する研究者に対して拠点事 業の意義について理解を深めてもらうため、日本学術振興会からの説明をいただいた。 後者では、アジア沿岸域が直面している環境問題に焦点をあわせて、生物多様性、有害微細藻 類、有害化学物質汚染の観点から研究報告が行われ、将来の沿岸環境保全に関する具体的な対応 策が議論された。 平成 17 年度:第 2 回合同セミナー、JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー 前者には、インドネシア 11 名、マレーシア 17 名、フィリピン 13 名、タイ 13 名、ベトナム 15 名、日本 71、計 140 名が参加した。沿岸海洋学に関するこれまで積み重ねてきた各研究課題の共 同研究の成果を発表するとともに、各課題別の共同研究やワークショップの成果を踏まえて、過 去 5 年間の研究活動を総括した。さらに、参加者による建設的な議論により、今後の 5 年間の新 しい研究の展開を視野に入れたより機能的で組織化された研究システムの構築を目指した。発表 された 113 件の研究のうち厳選された論文をもとにプロシーディングスが編集され、「Coastal Marine Science」の特別号として平成 18 年に出版された。 後者では、地球規模で引き起こされている沿岸域の海洋環境問題の解決を目指して、国際連合 大学と東京大学海洋研究所との共催で、この分野の第一線で活躍している研究者を招聘し、東ア ジア・東单アジアの沿岸域で問題になっている海洋環境について現状報告を行うとともに情報交 換を行い、今後の対策について議論を深めることを目的にした。 平成 18 年度:NaGISA 世界会議 JSPS 特別セッション 18 年 10 月 15〜18 日に神戸国際会議場で開催された。NaGISA とは、沿岸生物の多様性を地球 規模で地域間比較することを目的とする国際研究プロジェクトである。標記の国際会議は、この プロジェクトの中間段階として、世界中の参加者が一堂に会して成果を報告し、今後のプロジェ クトの方向性を、参加者間で討議することを目的とした。また分類学者との協力体制の確立と長 期間のモニタリングを実現するための方策の検討にも重点をおいた。 平成 19 年度:第3回合同セミナー 本研究事業で実施された研究の成果を総括するとともに、各メンバーが情報を共有することに よって、より合理的な管理システムを構築すると同時に、これらの交流活動内容を通じて、今後、 東单アジアおよび東アジアにおける合理的な沿岸海洋研究が実施できる国際共同研究体制を確立 することを目的した。 平成 21 年度:第 4 回合同セミナー、NaGISA 西部太平洋海域国際会議 前者には、4 つの研究課題の主要な研究者を招聘し、沿岸海洋研究に関する最新の情報交換、 研究成果の発表、および今後の研究計画について議論した。同時に、協力研究者以外のベトナム の若手研究者にも公開し、若手研究者の育成活動を積極的に推進した。本事業からの参加者は、 日本から 27 名、インドネシア 11 名、マレーシア 12 名、タイ 9 名、及びフィリピン 9 名であった。10
後者の NaGISA(Natural Geography In Shore Area)プロジェクトでは、西部太平洋海域国際会議 を平成 20 年 10 月 26 日~28 日(うち、JSPS 特別セッション:東单アジア沿岸海域の生物多様性 は、10 月 27 日~28 日)までジャカルタ(インドネシア)にて開催した。本事業からの参加者は、 マレーシア 2 名、タイ 1 名、フィリピン 1 名及びベトナム 1 名であった。またベントスグループ の各国代表者会議を開き、事業の現状及び今後の展望等について話し合った。 平成 22 年度:堀場国際コンファレンス「西部太平洋域における海洋科学研究の新しい展開」(第 5回合同セミナーを含む) 平成 22 年 10 月 26 日~29 日東京大学大気海洋研究所において「堀場国際コンファレンス『西 部太平洋域における海洋科学研究の新しい展開』− 政府間海洋学委員会西部太平洋域 50 年間の活 動と日本学術振興会拠点大学事業による『沿岸海洋科学』の過去、現在、そして未来」を開催し た。この会議では海洋科学研究を担う東アジア 5 カ国の若手精鋭研究者を招へいし、海洋科学に 関する国際的協力体制や国際連携を日本主導で行った。2010 年は、西部太平洋域の海洋研究で大 きな成果をあげてきた本事業の最終年度であり、これまでの成果報告と今後の研究展開を喫緊の 課題として議論した。また、UNESCO/IOC(政府間海洋学委員会)創立 50 周年を迎えることから、 これに協賛し、IOC/WESTPAC 関係者を招聘し、「沿岸海洋科学」の成果評価を通して、西部太 平洋域での海洋科学に関する活動の現状と将来の目標を定めることを目的とした。今後、参加者 と連携をとりつつ日本の科学者が海洋科学分野を通じて国際交流を主導することも本会議の目的 の 1 つであった。 2−4.研究者交流など、その他の交流の状況: 2−4−1.コーディネーター・リーダー会議 上記セミナーの他、事業の実施計画の詳細を策定し、あわせて主要課題グループと参加各国国 内の研究者グループの効果的連携を促進する目的で毎年、計 11 回のコーディネータ・リーダー会 議(以下「コーディネーター会議」)を開催した。とくに最後の2回の会議は JSPS からの別資金 の援助を得て、事業終了後の研究連携についても協議した(表3)。 表3.コーディネータ・リーダー会議一覧 会期 場所 担当機関 平成 13 年8月 23〜24 日 東京 東京大学海洋研究所 平成 14 年 10 月 21〜24 日 ランカウイ(マレーシア) マレーシアクバンサン大学 平成 15 年 12 月 14〜16 日 チェンマイ(タイ) チュラロンコーン大学 平成 16 年 12 月 2〜3 日 パラワン(フィリピン) フィリピン大学ビサヤ校 平成 17 年8月 24〜26 日 東京 東京大学海洋研究所 平成 18 年 11 月6〜8日 ハロン(ベトナム) 海洋環境資源研究所 平成 19 年8月4日 ジョクジャカルタ(インドネシア)海洋研究センター 平成 20 年5月 19〜20 日 マラッカ(マレーシア) マレーシア工科大学 平成 21 年2月 12〜14 日 東京* 東京大学海洋研究所
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平成 21 年 10 月 29 日 ハイフォン(ベトナム)** 海洋環境資源研究所 平成 22 年 10 月 29 日 柏 東京大学大気海洋研究所 * First Ocean Research Workshop として開催
** Second Ocean Research Workshop として開催
以下におもなコーディネーター会議の内容を示す。 平成 13 年度:第1回コーディネーター会議 インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムおよび日本を含めた6ヵ国の代表者 を招聘し、8月に東京大学海洋研究所で第1回のコーディネーター会議を開催し、本事業の趣旨 説明と具体的な共同研究計画の立案を行った。その後、この研究計画に基づいて、各研究課題別 にインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムでの共同調査が実施され、ワークシ ョップが開催された。 平成 14 年度:第2回コーディネーター会議 マレーシアのランカウイ島で開催された。過去2年間、インドネシア、マレーシア、フィリピ ン、タイ、ベトナムで実施した国際共同調査の研究成果の発表と、今後の研究方針について議論 した。会議終了後、課題3では同地でワークショップを開催し、「フィールド調査の標準化」に ついて意見を交換した。課題4では「有害化学物質による分析法の標準化」に関するワークショ ップをタイのチュラロンコン大学で開催し、その成果は CD-ROM にまとめられ、関係者に配付さ れた。 平成 16 年度:第4回コーディネーター会議 12 月にフィリピンのパラワン島で開催した。この会議では、各国のコーディネータからそれぞ れの国の研究者の活動内容、研究業績、今後の展望が報告された。この年度の出版物が各著者か ら紹介され、関係者に配付された。同時に、本事業の活動を促進するための新しい情報交換シス テムの提案がなされ、具体的な作業内容が議論された。これを受けて、システムの整備を積極的 に進めることが合意され、今後の活動内容が確認された。各グループリーダーからは以下のとお り 16 年度のワークショップの概要が説明された。 課題1:17 年2月にタイのチュラロンコン大学でワークショップを開催した。16 年5月にタイ 湾で実施した共同調査で得られた海洋物理情報の解析手法を検討する。 課題2:16 年8月に分析技術の標準化と研究計画策定の技術検討会を長崎大学で開催した。こ の成果をもとに、17 年2月にマレーシアのサバで改訂堆積物の分析を共同で実施する。 課題3:16 年 10 月にベトナムのニャチャン海洋研究所で魚類の共同調査と今後の共同研究の 打合せが行われた。海藻・海草と底生生物のグループは、16 年9月にベトナムの研究者と会議を 開き共同研究の打合せを行った。プランクトングループは 16 年 12 月にフィリピンのフィリピン 大学(ロスバニョス)で種同定のトレーニングコースを開催した。 課題4:フィリピンのマニラ湾で海底堆積物の共同調査をデ・ラサール大学とフィリピン海上 保安庁との協力のもと実施した。16 年 11 月に国際連合大学と海洋研究所の共催で、国際ワーク ショップ「Marine Environment」を開催し、各国の代表者がそれぞれの国の沿岸海域における海洋
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県境の現状と問題点について報告した。この内容は海洋研究所が毎年出版している学術雑誌 「Coastal Marine Science」に掲載された。
平成 18 年度:第6回コーディネーター会議 前者は 18 年 11 月6〜8日にベトナムのハロン市で開催し、これまでの研究活動の途中経過を 報告するとともに、今後の研究課題の具体的な計画案を議論した。本会議では、日本側コーディ ネーター(宮崎教授)が本研究課題でこれまで実施してきた活動の概要と今後の方針について説 明し、本プログラムの課題間の連携の必要性を報告した。また課題のメンバー相互で各研究課題 の活動内容について議論し、課題間の連携研究の必要性が認識され、19 年度の計画案に組み込む ことが合意された。それを受けて、19 年7月下旪にインドネシアのジャカルタ湾で課題4の共同 調査を実施することを決定し、その調査で実施する事項と他の課題の研究者と連携する事項につ いて検討した。インドネシアの関係機関である LIPI の代表者(スハルソノ所長)に本研究課題の 調査概要を説明し、調査に不可欠な許可書の申請内容、および調査スケジュールなどについて議 論した。この各国代表者会議の活動内容は、海洋研究所の JSPS プロジェクトのホームページに掲 載され、関係者に広く発信された。
平成 21 年度:第9回コーディネータ会議(First Ocean Research Workshop)
本会議は第1回「東单アジア域における海洋科学研究に関する将来構想ワークショップ」とし て海洋研究所で開催した。このワークショップでは、平成 22 年度に同事業が終了した後の海洋科 学研究プロジェクト立案について、日本学術振興会のアジア科学技術コミュニティ形成戦略:機 動的国際交流事業の支援により、拠点大学交流事業で国際共同研究プログラムを進めているアジ アの各国の研究者と行政官、また新たにカンボジアからも研究者等を招聘し、海洋研究所を含む 国内外の研究者等、40 名を越える参加者のもとで、発表、議論し、気候変化による海水準変動、 衛星による藻場などの沿岸環境変化、海洋環境汚染指標を多分野から統合的に取組む方向性が話 し合われた。さらに得られる試料やデータなどの管理についても提言があった。各国と日本の研 究者との個別の議論の時間も設けられ、具体的な研究プロジェクト内容についても進展が見られ た。また、第2回ワークショップを平成 21 年 10 月にベトナムで開催することが決まり、西部太 平洋域における海洋科学の諸問題に対応する国際的な枠組みに貢献する東单アジア研究者ネット ワークの構築が期待された。 2−4−2.トレーニングコース、ワークショップ、およびその他の交流 本事業では沿岸海洋の調査・研究はもとより、そのためのキャパシティービルディングを活動 の一つの要としてきた。このため、各課題リーダーが中心となり、研究者間の交流と若手研究者 の育成を促進するためのトレーニングコース、ワークショップを計 88 回開催した。なお、「トレ ーニングコース」と「ワークショップ」はやや意味の重なる部分があるが、前者は若手研究者育 成のための各課題グループによる講習・実習、後者は課題グループの調査・研究およびその他の 活動計画策定のための会合といった意味合いが強い。しかし本事業では多くの場合両者は同じ期 間に開催され、ある課題ではワークショップの名のもとに課題メンバー等への講習も行ってきた。 このような訳で、本報告書では「ワークショップ」は一部トレーニングコースを含むものとする。 以下に課題別の交流体制・交流状況を報告する。 課題1:インドネシアでは LIPI(インドネシア科学院)、BPPT(応用技術庁)、BIT(バンド
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ン工科大学)、マレーシアではマレーシア農科大学、マレーシア工科大学、タイではチュラロン コーン大学、カセサート大学、ブラパ大学、ベトナムでは海洋研究所、力学研究所、フィリピン ではフィリピン大学の研究者と緊密な共同研究体制を確立した。 課題2:平成 15 年、17 年に開催された合同セミナーの際に課題グループによるワーックショ ップを開催し、課題内の研究グループを組織すると共に、各グループの活動とその実施計画を策 定した。各グループのメンバーにより検討された交流計画は課題の全体会議で報告され、年度予 算に合わせてグループ間の調整が図られた。また、これら組織とは別に、各国の研究代表者を各 国研究者の合議によって決め、グループ会議の結果などを周知するようにした。 課題3:東单アジアの沿岸に日本側研究者が調査に出かけ、東单アジア各国の参画研究者と共 同調査を実施した。また、ワークショップを開催して研究の進捗状況を報告するとともにトレー ニングコースを開催して若手研究者の育成に努めた。ワークショップには協力6ヵ国すべての研 究者が参加し、各国の研究の成果や課題が報告され、相互の研究を発展させるために格好の場を 提供した。また、参加各国の大学、研究所および博物館などの全面的な協力を得て実施した。本 課題には各国の海洋生物多様性研究の中心となっている専門家が参加しているため、各国間の情 報交換が活発に行われた。Multilateral(多国間協力)というこの事業の特色が積極的な相互交流 を促し、研究を発展させるために極めて良好な環境を生み出した。 課題4:参加各国によって研究機関や研究者の対応は異なった。インドネシアではサムラトラ ンギ大学、マレーシアではマレーシア大学、プトラマレーシア大学、マレーシアクバンサアン大 学、タイではチュラロンコーン大学、カセサート大学、プーケット海洋生物センター、環境研究 普及センターとの交流実績があったため、大変機動的・効果的に共同研究を実施することができ た。いっぽう、従来の交流実績が乏しかったフィリピンとベトナムでは事業開始時には相互の機 関における情報交換を優先させ、相互の交流システムを構築することから始めた。幸いフィリピ ンではフィリピン大学、デラサール大学、サンカルロス大学、ベトナムではベトナム国立大学、 海洋環境資源研究所との間で相互交流が円滑に行えるようになり、共同研究の実施が可能となっ た。 2−5.事業に対する相手国拠点大学、対応機関との協力の状況 相手国拠点大学、対応機関との協力の状況は国により異なり、同じ研究機関でも年により協力 体制に差がみられた。しかし、総体的には相手国拠点大学、対応機関は本事業の必要性と重要性 を理解し、現地調査などの実施に多大な支援と便宜を供用してくれ、年を経るごとに協力体制が 充実した。以下に、各課題別に本事業に対する相手国拠点大学、対応機関との協力の状況を示す。 課題1,2:フィリピンでは沿岸域における調査許可の取得手続きに関して情報提供を得られ ただけでなく、試料の持ち出しについても全面的な協力関係が確立された。タイ、マレーシアで は調査許可に関する便宜供与だけでなく、各国研究者に対する研究資金の補助も円滑に確保され、 研究を活性化する大きな原動力となった。ベトナムでは各種政府機関や地方行政府の係官を含め て、研究成果を活用した有害藻類による影響を軽減するための監視体制確立が検討され、拠点大 学をはじめとする対応機関もこの動きを支援した。 課題3:参加各国の大学、研究所および博物館などの全面的な協力を得た。とくに多様な生態 系を対象とする生物多様性研究の現地調査では、調査海域の地形や生物相などに関する情報収集、 機材の調達と運搬、調査に必要な船舶と試料処理のための機材・装置・施設の確保などについて 対応機関の多大な援助を得ることができた。また、頻繁に開催された若手研究者育成のためのト14
レーニングコースでも、宿舎、会場、船舶、顕微鏡その他の分析装置などの確保に対応機関の多 大な協力を得て、十分な講習を行うことができた。調査許可および試料の持ち出しの手続きにつ いても各国拠点大学、コーディネータ、対応研究者の協力により、おおむね円滑に進めることが 出来たが、インドネシアにおいては、平成 19 年度以降許可の所轄が LIPI から別組織に移行した ため、入国から調査許可取得に多大な日数(1,2週間)が必要となり、一部調査に支障が生じ た。今後の国際共同研究において改善すべき点と考える。 課題4:インドネシア、マレーシア、タイでは対応研究機関が積極的に支援し、研究者が共同 研究を実施するのに相応しい体制が確立した。フィリピンやベトナムでは、研究機関の対応が十 分に統率されていないとの印象を受けたが、研究者の積極的な協力のもとに現場での作業を問題 なく実施することができた。 3.事業を通じての成果 3−1.交流による学術的な影響 本事業を通じて若手研究者の育成を積極的に進めてきたので、優れた博士号、修士号取得者を 多数輩出した。また、博士号や修士号取得者が本事業に積極的に参加し、研究活動に取り組んで きた。とくに、しっかりした研究計画を立案し、フィールド作業を効率的に進めることができる 若手研究者が育ってきたことは、今後東单アジアにおける沿岸海洋学の新しい展開に大きな地下 となることが期待される。以下の各課題別に交流による学術的な影響を示す。 課題1:インドネシアではこの交流をもとに1名の理学修士が誕生して、BIT(バンドン工科大 学)のスタッフとして、学生の指導にあたっている。マレーシアではこの交流をもとにマレーシ ア沿岸域で初めて現地沿岸海域に適用可能な海色衛星画像の解析手法が確立した。ベトナムでは この交流をもとに、トンキン湾の流出油漂流予測モデルが確立し、実際の環境行政に役立ってい る。フィリピンではこの交流をもとに、マニラ湾の流動モデル、底泥輸送モデル、低次生態系モ デルが初めて開発された。また、タイの現地共同観測には課題1の研究者と課題2の研究者が合 同で参加し、物質輸送過程と有害植物プランクトン発生との関連を明らかにした。さらに、マニ ラ湾の研究においては課題1で開発したモデルを用いて、課題2の有害植物プランクトンの発生 機構と課題4の汚染物質輸送過程を明らかにした。 課題2:本事業の成果により熱帯域の有害微細藻類の原因種やその発生機構、広域化機構が温 帯域のそれらとは異なることが明らかになり、従来の研究が集中していた我が国や欧米の研究者 に新鮮な驚きと学術的影響を与えた。その主なものを以下に示す。 1)Pyrodinium bahamense は従来温帯域では発見されておらず、熱帯域でしか見られなかった が、東单アジアでも同様であった。しかし、東单アジアでもタイ湾およびベトナム沿岸には発生 しておらず、フィリピン、インドネシア、東マレーシア(ボルネオ島)など島嶼沿岸域のみに認 められることが明らかになった。また、温帯域に見られる赤色ヤコウチュウが熱帯域では共生藻 のため緑色になって赤潮を形成するという、特異かつ興味深い現象も、本研究によって広く世界 に知られることとなった。 2)東单アジアでは有毒種として知られている Pyrodinium bahamensei の出現は 1970 年代以降 と考えられていたが、シスト(休眠胞子)に関する本研究により 1800 年代から分布していたこと が判明し、有害藻類の監視におけるシスト調査の重要性を学会に認識させた。 3)沿岸域の水質を検討する際、温帯域では窒素やリンなどの栄養塩量により富栄養化の度合15
いを測ることが多いが、熱帯域では栄養塩が藻類に利用される速度が速いため、微細藻類などの 生物が多く見られ、富栄養化していると思われる条件下でも栄養塩が枯渇していることがあり、 栄養塩量では水質を的確に評価できないことが示唆された。この研究を契機として、水質の富栄 養化の監視には熱帯域で独自の基準を設ける必要性、ひいては水質と赤潮の発生機構やプランク トン増殖機構との関係も、熱帯域の環境を考慮した新たな理論付けの必要性が認識されるに至っ た。 4)有害微細藻類が広く分布し、その毒を食物連鎖の中で蓄積したと思われる有害生物も熱帯 域に多く存在することが明らかとなった。社会的にはこれらの有害生物の発声が監視されておら ず、市場での販売なども規制されていないため、死者や中毒患者が毎年多数出ていることもはっ きりした。これに対し、迅速に毒量を測定できる ELISA キットが本研究よって開発され、東单ア ジアでは監視体制を作って有効に利用できることがほぼ明らかになった。この情報は他の地域の 発展途上国にも学会等で知らされており、世界規模で関心が高まっている。 課題3:東单アジア各国では、基礎的な学問よりも、応用側面の強い研究分野が重視されてい るのが現状である。しかし、各国の研究者は海洋生物多様性研究の重要性を深く認識している。 本事業によって卖独の国の研究者のみでは不可能な研究交流や情報交換、共同研究が行われるよ うになった。その結果、多くの国の研究者が活発に研究業績を出している。また、参加国の海洋 生物の多様性を明らかにし、研究を発展させるためにフィールドガイドを出版した。これまでに インドネシアのスラウェシ島、タイのリボン島、タイのアンダマン海の魚類、東单アジアの海草、 マレーシアの棘皮動物、インドネシアのヤドカリに関するフィールドガイドが出版され、インタ ーネット上で利用できる WEB 版フィールドガイドも作成された。このようなインターネットの 活用は文献入手の困難さを抱えている東单アジアの研究者に大いに評価されている。魚類につい てはさらにマレーシア(トレンガヌ周辺)のフィールドガイドが今年度中に出版される予定であ る。また、若手研究者育成のために4つのグループが毎年国を換えて実施したトレーニングコー スでは、実施項目が東单アジア各国の研究環境を配慮し、使用テキストの内容が豊富で実用的で あること等により、沿岸海洋生物の分類と生態に熱心に取り組む大学院生が年々増加してきてい る。さらに、日本人研究者の派遣、東单アジアの研究者の受入を通して、人的交流だけでなく情 報が広く深く伝わるようになり、複数国が協力して行う共同研究も立ち上げられるようになった。 課題4:本研究活動に関連した参加者のうち、ベトナムの若手研究者1名が博士の学位を取得 した。日本の研究者では3名が博士、3名が修士の学位を取得した。インドネシアでは本研究を もとにマナドにおける金鉱山の廃液による水銀汚染とその生態影響に関して多くの学術論文が発 表され、国際的に大きな反響を呼ぶとともに、その活動内容が高く評価された。また、マレーシ ア、タイ、ベトナムでもマラッカ海峡、メコン河沖、ハイフォン近辺等の主要海域で海洋汚染の 研究を実施し、多くの成果を得た。フィリピンではフィリピン政府の海上保安庁の協力を得てマ ニラ湾の環境汚染に関する国際共同調査を実施した。これらの活動を通じて、若手研究者の関心 が高まり、フィールド調査に積極的に参加するようになった。 3−2.共同研究を通じての研究業績・研究者としての発展 10 年間にわたる本事業の結果、東单アジアの沿岸生態系に関する知見と、研究のための国際連 携の体制は飛躍的に拡充した。また本事業を通じて約 1300 件の原著論文(査読付き 1070、プロ シーディングス 228)、139 件の著書(分担執筆を含む)および 30 件の報告書・記事他を公表し た(表4)。特に、魚類・海草類のフィールドガイド(表5)、有害化学物質の化学分析法マニ16
ュアル(CD 付き)などは、アジア諸国の研究者や関連機関から高い評価を受けている。 表4. JSPS-CMS Program の業績一覧。成果物の種別:1,査読付き国際誌;2,その他の査読 付き雑誌;3,プロシーディングス(学術雑誌の特別号として出版されたものを含む);4, 著書(分担執筆を含む);5,その他の刊行物。 成果物の種別 課題名 1 2 3 4 5 合計 課題1 28 9 19 0 0 56 課題2 117 41 46 9 1 214 課題3 3−1海藻・海草 108 21 49 29 4 211 3−2プランクトン 117 12 53 9 3 194 3−3魚類 180 47 27 33 9 296 3−4ベントス 28 26 19 12 2 87 課題4 323 13 15 47 11 409 合計 901 169 228 139 30 1467 表5.課題3で出版したフィールドガイド一覧。Zulfigar Y, Sim YK, Aileen Tan SH, Shirayama Y (2008) Field Guide to the Echinoderms
(Sea Cucumber and Sea Stars) of Malaysia. Kyoto University Press, Kyoto, 103 pp.
Rahayu DL, Wahyudi AJ, Susetiono, Shirayama Y (eds.) (2008) Common Littoral Hermit
Crabs of Indonesia. Kyoto University Press, Kyoto, 93 pp.
Kimura S, Matsuura K, eds. (2003) Fishes of Bitung, Northern Tip of Sulawesi, Indonesia.
Ocean Res. Inst. Univ. Tokyo, Tokyo,vi+244 pp.
Kimura S, Satapoomin U, Matsuura K, eds. (2009) Fishes of Andaman Sea, West Coast of
Southern Thailand. Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo, vi+346 pp.
Matsuura K, Kimura S, eds. (2005) Fishes of Libong Island, West Coast of Southern Thailand.
Ocean Res. Inst. Univ. Tokyo, Tokyo,vii+78 pp.
Fortes MD, Ogawa H (2006) Field guide to the identification of East Asian seagrasses.
以下に各課題における主な成果を要約する。なお、成果と公表論文の詳細については別添「業 績一覧」および「参考資料1」を参照されたい。
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課題1 沿岸域における諸現象の理解には海水流動とこれに伴う物質輸送に関する精確な情報が必須で あるが、東单アジア沿岸域においてこれらの知見は極めて限られていた。課題1ではこれらの問 題に取り組み、参加各国の主要な湾や陸棚域における海水循環と物質輸送に関わる物理過程の詳 細について多くの知見を得た。以下に各国における主な成果を示す。 インドネシアでは、衛星画像の解析から海表面の水温とクロロフィル分布の詳細を明らかにし、 ジャワ島沿岸の湧昇域が单東モンスーンに伴い西向きに伝播すること、またこの湧昇にともない クロロフィルが増加することを初めて見いだした。また、富栄養化したジャカルタ湾と、より有 機物負荷の尐ないバンテン湾を数理生態モデルを適用して比較した結果、ジャカルタ湾の高い一 次生産には河川からの栄養塩の流入と溶存態無機窒素(DIN)の再生がおおきく関わっていこと が判明した。一方、貧酸素による養殖魚の大量斃死が問題となっているフルン湾では、乾期→雨 期および雨期→乾期の移行期における低塩分水の停滞が DIN と有機物の増加とこれによる植物プ ランクトンのブルームをもたらし、その後これらが分解して溶存酸素の欠乏をもたらすことが明 らかになった。この結果から乾期・雨期の移行期には極力養殖活動を控えることにより、大量斃 死の被害を軽減できるとの見解を示した。マカッサル海峡に近いバランロンポ島では衛星画像の 適用によりアマモとサンゴ群落の詳細な分布状況をマッピングすることに成功した。マレーシアでは World Ocean Database のデータを利用し、マラッカ海峡における水温、塩分、 溶存酸素の季節変動を解析した結果、单西モンスーン季にはアンダマン海から低温高塩分の深層 水が流入し、北東モンスーン季には逆に单から低塩分水が流入することが示され、後者の要因と して、河川水の増加と单シナ海からの低塩分水の流入が重要と考えられた。これらの知見はマラ ッカ海峡を介してのアンダマン海と单シナ海間の物質輸送の理解に大きく貢献した。 タイでは、課題グループ間の学際的協力により、北部タイランド湾について海色画像を解析す るためのアルゴリズムを開発するとともに、3次元水理モデルを組み込んだ生態系モデルを開発 した。これにより海色画像から求めたクロロフィル分布を良好に再現することができた。 ベトナムでは、单シナ海における風吹流、密度流、潮汐流の季節変動を解明するための3次元 数理モデルを構築した。この結果单シナ海の表層では風吹流が、より深層では密度流が海盆スケ ールの循環に主要な役割を果たすことが示された。また、本事業実施中の6月に、ベトナム沿岸 からメコン川河口北東 200 km の沖合域にかけて発達した、極めて特異なジェット型の大規模な植 物プランクトンブルームを始めて観察した。このブルームは7月から9月にかけて渦型(直径約 400 km、クロロフィル-a 濃度 0.5〜2.0 mg m-3)に発達したが 10 月には減衰し、11 月に消滅した。 水温、風、および海面高度アノマリーのデータを解析した結果、この海域の海岸線に沿って強い 单西風が吹く時季に沖合湧昇が発達すること、またこの湧昇と植物プランクトン増殖の時季、位 置、および範囲が一致することが明らかになった。 フィリピンでは、マニラ湾の潮汐、潮汐流および残差流に関する数理モデルを開発し、海底堆 積物の輸送を推定した結果、観測値と良く一致した。 これらの成果をもとに構築した数理モデルは、生物生産と物質輸送の時空間変動の予測とその メカニズムの理解に大きく貢献しており、東单アジアの生態系研究において重要な物理場に関す る確固な基盤を提供した。また、本課題では海洋物理、衛星画像解析、および生態学の専門家の 課題間連携による研究を効果的に実施し、衛星画像解析と現場での音響計測・生態調査を統合し たマッピング手法を確立した。これにより、サンゴ礁・アマモ場の状況を詳細に記述することが 可能となり、今後沿岸域の主要な構成要素である潮間帯群集の現状把握と変動現象の解明に大き
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く貢献するものと期待される。 課題2(有害藻類) 共同観測の実施により極めて多方面の学術的成果が得られ、大部分をすでに共著論文として学 会誌などで発表した。以下に主要な成果を示す。 有毒赤潮原因種:有毒赤潮原因種のシストはその発生域の海底に多量には堆積しておらず、赤 潮の再発は近隣海域からの原因種の流入が大きな作用をしていることが明らかになった。 麻痺性貝毒:麻痺性貝毒の検出には従来よりマウスを用いた生物試験が使われていたが、ELISA による微量検査法が本課題グループにより開発され、東单アジア 5 ヶ国の共同研究者により実用 試験が開始された。これは本研究による学術成果の実用化という点で大きな意義がある。有害微 細藻類に関する研究は基礎的学術研究のみならず、その成果を基に微細藻類により引き起こされ る中毒事件を防除することも大事な目的である。その意味で、近い将来本研究で開発された ELISA キットが各国で実用化されて、中毒事件発生防止に貢献するようになる方向性が見えたことは大 きな学術的成果である。麻痺性毒に関しては、原因種の Pyrodinium bahamense のシストの分布と 海底への堆積様態を調べ、過去の発生との比較を行った。特に、同種の発生が知られているフィ リピンでは、数年発生がなくても、環境が増殖に適すようになれば再発生し、貝類の毒化と食中 毒事件を引き起こす可能性がシスト堆積量との関係で容易に推測され、実際にソルソゴン湾では この現象が起きていたことが確認された。 記憶喪失性貝毒:記憶喪失性貝毒には従来知られていたドウモイ酸だけでなく、有毒な種によ ってはイソドウモイ酸が多量に含まれることを発見した。また、記憶喪失性毒を多量に蓄積して いる二枚貝 Spondylus sp.を東单アジア各国の沿岸域で発見し、ベトナムにおいては、その蓄積し ている毒を生産した珪藻が Pseudo-nitzschia caciantha であることを示した。また、カブトガニ、オ オマルモンダコ、ツムギハゼなど数種の有毒生物の毒成分がテトロドトキシンであることを示し、 これらがフィリピン、ベトナム、タイなどに広く分布し、実際に食中毒事件が多く発生している ことを明らかにした。記憶喪失性貝毒を生産する珪藻の Nitzschia navis-varingica と Pseudo-nitzschiaspp.については分布や毒生産株の生理特性について多くの知見を得た。ベトナム ニャフー湾の二 枚貝に蓄積する記憶喪貝毒原因珪藻については発生に季節性が大きいことが分かったが、原因種 を突き止めるまでには至らなかった。 ヤコウチュウ:東单アジアで最多赤潮原因種のミドリヤコウチュウ(Noctiluca scintillans)はそ の共生藻により貧栄養環境でも生存できる特性を備えるが、生物学的には温帯域のヤコウチュウ と同種の卖細胞藻類であることが本研究で判明した。すなわち、東单アジアに発生する緑色の系 群と、日本近海などその他の海域に発生する赤色の系群が遺伝子的には同一種であることを明ら かにした。本種が沿岸域で発生したのち、エビ養殖池に流れ込んで増殖した場合、エビの成長が 悪くなる増殖阻害作用があり、それを Noctiluca 殺滅細菌により防除できる可能性も見いだした。 遺伝子解析による分類の再検討:東单アジアで発生している有毒有害種について、形態情報に くわえ遺伝子情報をもとに分類を行い、いくつかの新知見を得た。有害種の Cochlodinium では従 来より知られている種以外に1新種が発見され、このほか、珪藻 Pseudo-nitzschia にも有毒種が2 種新たに確認された。これらの成果をもとに今後その生態、毒生産生理、毒化機構など新たな取 り組みを開始している。 富栄養化と赤潮:沿岸域富栄養化と赤潮の関係については、タイ湾を中心に富栄養化の兆候が 見られたが、赤潮の発生件数が大きく増えている状況はなく、それよりも発生種が変わってきて
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いるという結果を得た。 課題3 生物多様性の4つの課題グループ(海草・海藻、プランクトン、魚類、ベントス)は活発に各 国生物相の野外調査を実施し、多様な生物種の分布情報を拡充するとともに、計約 80 回のトレー ニングコース、ワークショップを開催し、延べ約 840 名の東单アジアの若手研究者、環境技術者、 学生に分類、同定、生態学手法など生物多様性研究に必須な知識と技術を教育した。これと並行 して、主な生物群についてのトレーニングマニュアル、フィールドガイド、および研究指針を編 集・出版した。これらは今後のキャパシティビルディングにも大きく貢献するものと期待される。 また、各国における現地調査の結果、100 種を超える魚類および甲殻類が発見され、これらは 新種として学術雑誌に公表された。このことは、東单アジアの潜在的生物多様性の高さと未知の 部分の巨大さのみならず、生物多様性研究の基盤としての分類学の重要性も浮き彫りにした。 この他特筆すべき成果として、現地調査および各国の協力によるデータマイニングにより生物 の分布情報が拡充され、これらの情報が本事業(CMarZ-Asia Database:プランクトン)および協 力プロジェクトのデータベース(Ocean Biogeographic Information System [OBIS]:プランクトン、 ベントス;Global Biodiversity Information Facility [GBIF]:魚類)に登録、公表され、世界に発信さ れている。 課題4 本課題グループは、沿岸生態系に最も深刻な影響を及ぼしている物質のひとつである人為的有 害化学物質の東单アジア海域における濃度と分布に関する知見を飛躍的に拡充した。 この目的のため、まず、数次のワークショップを開催し、主要な化学物質の高精度分析のため の標準手法を確立した。その後、生物多様性グループとの協力のもとに参加各国での現地調査を 実施し、海水、堆積物、プランクトン、魚類、ベントスなど多様な生態系の構成要素について有 害化学物質に関する膨大な濃度・分布データを取得した。多環性芳香炭化水素(PAH)、有機塩 素・有機臭素・有機スズ化合物、重金属、放射性核種等の化学物質を対象とし、各国メンバーの 共同により、マニラ湾、タイランド湾、ジャカルタ湾、マラッカ海峡、ジョホール水道、ハロン 湾をはじめとする広範な海域で調査を行った。これらの分析・解析結果は 300 編を超える学術論 文として公表された。 これらの化学分析に基づく研究と並行して、指標としての生物に着目した研究も行った。この 結果、潮間帯に豊富に生息する微小甲殻類のワレカラ類が、潮間帯におけるブチルスズ類のモニ タリングに極めて有効であることを見いだした。また遺伝子導入したメダカ(トランスジェニッ ク・メダカ)を用い、迅速で安価に汚染物質を検出するバイオアッセイ手法を現地調査で適用し、 その有用性が示された。現在実用化に向けた試験を継続中である。 3−3.セミナーの成果 本事業をつうじて開催した5回の合同セミナーの成果は表6に示す5件のプロシーデングスに 計 200 編の論文として公表された(1件は今年度発刊予定)。 表6.合同セミナーのプロシーディングス一覧。かぎ括弧内は論文件数を示す。20
Proceedings of the First Joint Seminar on Coastal Oceanography, 14-16 Dec. 2003, Chiang Mai, Thailand (ed. Nitithamyong C). Dept Mar. Sci., Fac. Sci., Chulalongkorn Univ., 303 pp., 2004. [35]
Proceedings of the Second Seminar of JSPS Multilateral Core University Program on “Coastal
Oceanography”, 24-26 Aug 2005, Tokyo, Japan (eds Miyazaki N, Tsuskamoto K). Coast. Mar. Sci. 30 (Special Issue), 406 pp., 2006. [62]
Proceedings of the Third Joint Seminar on Coastal Marine Science, 3-5 Aug. 2007, Yogyakarta, Indonesia (eds Matsuura K, Kodama M, Miyazaki N, Nishida S, Suharsono, Yanagi T, Fukuyo Y, Shirayama Y). Mar. Res. Indonesia 32 (2), 33 (1, 2); 218, 107, 234 pp., 2007, 2008. [52]
Proceedings of the Fourth Joint Seminar on Coastal Marine Science, 26-28 Oct. 2009, Hai Phong, Vietnam (eds Miyazaki N, Arai T, Inoue K, Fukuyo Y, Kawaguchi S, Matsuura K, Nishida S, Shirayama Y, Yanagi T). Coast. Mar. Sci. 34 (Special Section): 59-235, 2010. [25]
Proceedings of the Horiba International Conference, 26-29 Oct. 2010, Kashiwa, Japan (eds Nishida S, Inoue K, Fukuyo Y, Kawaguchi S, Matsuura K, Shirayama Y, Yanagi T). Coast. Mar. Sci. 35 (Special Section), 印刷中, [26] 以下に主なセミナーの成果概要を示す。 平成 15 年度:第 1 回合同セミナー 1日目はトンキン湾のクロロフィル画像,東アジアの海面高度計デ-タセットなどリモートセ ンシングに関する研究,基礎生産のモニタリング法,タイ湾の循環流の季節変動,GPS 漂流ブイ など現場観測に基づく研究,赤潮生態系モデルなど数値モデルに関する研究、および化学物質汚 染に関連した各海域の現状に関する研究の成果が発表された。2 日目には大気から海への汚染物 質降下,東单アジアの有機スズ汚染,東单アジアの海藻・海草分類、各海域の動植物プランクト ン、北部フィリピン・マニラ湾のバクテリアと HAB、などに関する発表が行われた。3 日目には マレ-シア・インドネシア・ベトナムの魚種分布、貝毒,毒物分析などに関する発表が行われた。 全体会議では,今後各課題にまたがる研究テ-マと研究海域を設定して共同研究を進めていく ことが確認された。これら研究発表のほか,会期中に各研究課題卖位の意見交換や打ち合わせも 盛んに行われた。とくに物質輸送に関する研究計画検討会では,当面の重点課題の一つとして, 北部タイ湾の循環像の解明を取り上げ,タイ側の研究者と日本側の研究者の密接な協力のもとで, GPS搭載漂流ブイを用いた流況観測,流動モデルの構築,クロロフィル及び一次生産に関する 観測等を実施することになった。 平成 17 年度:第 2 回合同セミナー 沿岸海洋学に関するこれまでの共同研究の成果を発表するとともに、成果をもとにした今後の 具体的な研究計画や展望に関して率直な議論がなされた。発表された 113 研究課題(口頭発表 36 件、ポスター発表 77 件)のうち、厳選された論文をもとにプロシーディングの出版(Coastal Marine Science 特別号)が準備された。また各国のナショナルコーディネーターが、これまでの研究活動 の概要を紹介し、その成果がそれぞれの国でどのように活用されてきたかについて報告した。同 時に、各プロジェクトリーダーが、それぞれのグループのワークショップの内容、共同調査の概
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要、メンバーの研究活動などを報告し、各グループが制作してきたマニュアル、図鑑、フィール ドガイドブック、CD-ROM などを紹介するとともに、主な参加者が平成 13 年度から実施してき た研究成果を口頭とポスターで発表し、課題間の意見交換を行った。 平成 17 年度:JSPS 国際沿岸海洋環境セミナー 参加者の内訳は、国際連合大学関係者 13 名、岩手県関係者 5 名、海洋研究所関係者 23 名の総 勢 41 名で、海洋環境に関する 32 研究課題の口頭発表があった。この会議に招聘した研究者は、 最新の研究成果をもとに研究内容を公表すると共に、その情報をもとに参加者と議論を深め、沿 岸環境保全に関する有効な具体的対策を検討した。発表された研究成果は、Coastal Marine Science 誌に掲載された。同時に、中学生や高校生との交流会や一般市民向けの講演会を開催することに よって、青尐年や一般市民の環境への関心を高める活動を行い、社会貢献を積極的に進めた。JSPS の活動内容を広く世界に発信すると同時に、その成果をもとに様々な階層の人々とともに現実的 な解決策を模索したことで、大変有意義なモデルケースになった。 平成 18 年度:NaGISA 世界会議 JSPS 特別セッション NaGISA と JSPS マルチラテラルプロジェクトは従来から連携しており、本会議でその成果を発 表する意義は大きかった。会議は 31 カ国から 124 名の参加があり、成功裏に終わった。講演は口 頭発表が 44 題、特に会議中に、JSPS の拠点大学交流事業にもとづいて、JSPS の特別セッション がおこなわれ、従来からの拠点大学交流事業の国際共同研究において得られた研究成果が、本事 業に参加している東单アジアの5カ国から発表された。 平成 19 年度:第3回合同セミナー 本セミナーの研究発表は 152 題(口頭発表:116 課題、ポスター発表:36 課題)で、現在、ア ジア5ヶ国(インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナム)および日本が携わって いる沿岸海洋学の研究の発展に大きく寄与するとともに、それぞれの国が直面している課題が鮮 明になり、今後の研究方向を模索するのに必要な情報を収集することが出来た。またセミナーの 期間中に、各国の参加者との間で情報交換が積極的に行われるとともに、若手研究者も組み込ん だ今後の具体的な研究計画を議論することが出来た。本セミナーの主要な成果はインドネシアの 学術雑誌 Marine Research in Indonesia の特別号に掲載された。平成 21 年度:第4回合同セミナー 本セミナーでは、77 件(口頭 56 件、ポスター21 件)の研究成果が紹介され、プロジェクト間 の研究課題の連携を目的とした情報交換もなされた。また、平成 22 年度が本事業の最終年度にあ たることから、本事業の最終報告書の作成に関する作業予定と具体的な活動計画の立案、若手研 究者の交流プログラムに関する具体的な方策の立案、ならびにこれまでの実績を生かした今後の 共同研究の方策に関する建設的な議論がなされた。特に、地球温暖化に対応する研究課題として、 サンゴ礁や海草群落の保全ならびに生物多様性の保護に関する基礎的なデータを組織的に収集し、 環境情報と関連付けたモデル化を試行し、総合的に対応することができるシステムの確立の重要 性が指摘され、研究プランが議論された。本セミナーで発表された優れた成果は Coastal Marine Science に掲載された。 本セミナーでは共同主催国であるベトナム政府関係者から多大な支援を得て、大きな成果をえ
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ることができた。また、ベトナム関係者から、今回のセミナーを通じて得られた情報をもとに、 JSPS と VAST の連携を強化し、沿岸海洋科学を一層推進するための協力体制を整備するとともに、 さらなる展開を目指した具体的な計画案が提示された。セミナーの主催国からのこのような働き かけははじめてであり、本プログラムの活動内容が関係国から高く評価されているだけでなく、 本プログラムのさらなる展開が大いに期待されていることを実感した。 平成 22 年度:堀場国際コンファレンス「西部太平洋域における海洋科学研究の新しい展開」(JSPS 拠点大学交流事業) この会議では、2010 年にユネスコ/政府間海洋学委員会が創立 50 周年を迎えたことから、S.-K. BYUN 副議長や、同西太平洋域委員会 W. ZHU 事務局長など多くの関係者も招聘し、10 年間にわ たって東单アジア 5 カ国(インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム)の研究者、 およびわが国の研究者と実施してきた本事業の研究成果報告と今後の研究展開について議論した。 会議には文部科学省、日本学術振興会、日本海洋学会、東大海洋アライアンス、海洋研究開発機 構から後援を頂き、会議の最後に「沿岸海洋科学」に繋がるわが国からの新たな国際共同研究の 提案があり、その実現に向け関係各国が一致して取組む事が支持され閉会した。また会議中に開 催されたポスターセッションでは本事業メンバーによる 68 件の研究成果が発表された。これらの 成果の一部は Coastal Marine Science の特集号(2011、印刷中)に掲載の予定である。3−4.若手研究者の交流に関する成果 本事業では以下のような多様な取り組みを通じて若手研究者の交流・育成を目指した。 ・各課題グループ毎にワークショップ、トレーニングコースを開催し、沿岸海洋学の基礎知識と 試料採集、野外調査、試料分析等の実技を講習した。 ・ワークショップの期間中に、若手研究者によるポスター発表を積極的に行った。 ・共同調査の際に若手研究者に参加する機会を与えて、一連の作業の内容が理解されるように訓 練を行った。 ・フィールドガイド、分析・調査マニュアル、書籍等を出版・作成し専門家は勿論のこと、関心 のある若手研究者や大学院生にも提供し、有効な情報を広く社会に還元することに努めた。 ・若手研究者に対して論文作成を指導した。 ・現地共同調査を通じて知り合った優秀な学生を、国費留学生としてわが国の大学院に積極的に 受け入れ、指導をした。 ・このような留学生以外にも、共同研究において現地の大学院生などを雇用して、調査研究技術 を習得させるように努めた。 ・優れた研究成果をあげた若手研究者をワークショップに招聘した。 本事業を通じて計 28 名が学位を取得した。各課題別の若手研究者の交流に関する成果とを以下 に示す。 課題1:この交流を通じて1名が理学修士の学位を取得した。また、国内の日本人学生3名が この研究に参加し、修士の学位を取得した。 課題2:プロジェクト開始当初から我が国の大学の博士課程に在籍する大学院生を積極的に研 究に参加させており、5名がプロジェクトの成果を論文内容に含む学位論文を作成し博士の学位