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序論

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Academic year: 2021

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(1)

クロロフルオロシラン, SiClmF4‑m(m=0〜4)

の基準振動の計算

第I報 テトラフルオロシラン, SiF4の基準振動

浜田圭之助

長崎大学教育学部化学教室 (昭和47年10月51日受理)

The Normal Vibration of Chlorofluorosilanes, SiClmF4‑m(m=0〜4) as Calculated by

Urey‑Bradley Field

I. The Normal Vibration of SiF4(m=0)

Keinosuke HAMADA

Chemical Laboratory, Faculty of Education, Nagasakj University, Nagasaki

(Received Oct. 31. 1972)

Abstract

Assuming the Urey‑Bradley field, the normal frequencies of many poly‑

atomic molecules have been calculated, which were in good accordance with the observed values. However, in the v4 normal frequency of SiF4, the frequ‑

ency observed by the present author using laser Raman spectrometer is very different from the value reported in the literature.

The present author calculates the normal frequencies of SiF4 on the basis of the frequencies measured by himself, in order to research the reason of the difference.

序論

クロロフルオロシランSiCl桝F*̲,のRaman, IR, NQR,およびNMRについては,す

(2)

24

浜  田  圭之助

でに発表されている!一3、。これ等の分子について,レーザ・ラマン分光々度計にて測定された ラマン・スペクトルは,著者の知る限りでは上記報告がはじめてである。しかしSiF・のよう に,すでに水銀アーク・ラマン分光々度計により,測定されているものもある4)。

 著者の測定によるSiF。の振動数と文献値のそれとは,表4に示すように若干の相違がある。

勿論,レーザー・ラマン・スペクトルの優秀性は,他に比ぶべくもないが,一応,基準振動の 計算をして,両者の実測された振動数の値と比較してみる。

 基準振動の計算にあたっては,分子を構成している原子間に,一定の力を仮定して,分子内 ポテンシャルとして,原子価力の場と同時に,原子間斤力の場を考えた「Urey Bradleyの力 場」を仮定した。

 このようにして,分子内ポテンシャルの様子を知ることは,分子構造の研究と間接的な繋り を持つものであることは,明らかである。

基準振動の計算

 分子の基準振動の計算を行なうには,分子の運動および位置エネルギーを同一の座標で表わ し,分子全体の移動,回転の運動量が0となることを条件として,振動の自由度に相当する次 数を持った永年方程式を作ることが必要である。

Wilson5)の方法によると,分子内座標によって表わされる運動エネルギー行列G,位置エ ネルギー行列Fとによって,基準振動の永年方程式は(1)式で表わされる。

      lGF−Eλ1二〇      (1)

これについて,固有値を求めればよい。

 シラン誘導体分子(第1図)について,G行列とF行列を作る。分子に対称性がある時に は,行列の元素の中に同一のものが規則的にあらわれてきて,簡約することができる6)。従っ て,永年方程式も簡約されたG,F行列を用いて表わすことができる。Six。についての結果 を表1に示す。

X重

71

S董

24

XLi ア2

α3..

X揮

X口

第1図SiXIXIX皿Xlv分子

 行列中で,同じ文字で記した元素は同じ値を示す。行列の左側に記したのは,簡約の前後に おける座標,また小カッコ内に記したのは振動型の記号である。 (PlaCzekによる)

      む

 さて,GF一〔ΣG フF∫のである。すなわち積GFの(i,k)元素は,行列Gの第i行の元       ブユエ

素G召一,G 2,……,G%と行列Fの第k列の元素F ,F2詮,……,F脱とを,それぞれ番号順

に掛け合わせたものの和,G ,F橘+G62F2汁………+G5zF猛である。G行列とF行列の積を

表2に示す。 (各元素のnotationについては,文献4)を参照)

(3)

表1

∠r1

∠r2

∠r3

∠r4

∠α!2

∠α一3 差α14

∠α34

∠α42

∠α23

 SiX4型分子の行列の簡約

ACCCKKKLLL

CACC:KLLLKK

CCACLK:LK:LK

CCCALLKKKL

KKILLBEEDEE

KLKLEBEEDE KLLKEEBEED LLKKDEEBEE LKLKEDEEBE LKKLEEDEEB

(A・)1臨調認急+鰯/畜〔ひ瓢、)癖躍〕

(E)

(E)

(F2)

(F2)

(F2)

∠(α一3一α、4+α42一α23)/2

イ(2α一2一α、3一α一4+2α34・一α42一α23/〆豆

イ(5r、一r2−r3−r4)〆1至

∠(α!2+α13+α14一α34一α42一α23)/ゾτ

∠(2r2−r3−r4)/〆τ

∠(2α一2一α一3一α一4−2α34+α42+α23)/γ/豆

∠(r3−r4)/γ1万

イ(α饗rα一4一α42+α23)/2

(B十D−2E)

(B十D−2E)

〔含謡L)欝幽L)〕

表2 G G−2G−3{)一4G−5G−6G−7G−8G!gG−o

G2−G22G23G24G25G26G27G28G2gG20 G3−G32G33G34G35G36G37G38G3gG30 G4−G42G43G44G45G46G47G48G4gG40 G5−G52G53G54G55G56G57G58G5gG50 G6雪G62G63G64G65G66G67G68G6gG60 G7!G72G73G74G75G76G77G78G7gG7

      ロ G8−G82G83G84G85G86G87G88G8gG80 Gg!Gg2Gg3Gg4Gg5Go6Gg7Gg8GggGgo G◎一Go2Go3Go4Go5Go6Go7Go8GogGoo

GF行列

F質F−2F−3F−4F−5Fl6F−7F−eF−gFlo F2−F22F23F24F25F26F27F28F2gF20 F3!F32F33F34F35F36F37F38F3gF30 F41F42F43F44F45F46F47F48F4gF40 F5−F52F53F54F55F56F57F58F5gFso F6−F62F63F64F65F66F67F68F6gF60 F7−F72F73F74F75F76F77F78F7gF70 F8−F82F83F84F85F86F87F88F8gF8。

Fg−Fg2Fg3Fg4Fg5Fg6Fg7Fg8FggFgo Fo−Fo2Fo3Fo4Fo5Fo6Fo7F◎8FogFoo

ACCCKKKLLL CACCKLLLKK CCACLKLKLK CCCALLKKKL KKLLBEEDEE KLKLEBEEDE KLLKEEBEED LLKKDEEBEE LKLKEDEEBE LKKLEEDEEB

表中,行列元素のサブスクリプトの0は10を意味する。

1) G行列元素の計算

(4)

26

浜  田  圭之助

G①=Gr =μ8 十μF=0.08824

G②=Gr 巧=cosα×μs6一一〇。01187 G③一Gr αり一一sinα・τFμs6ニー0.02165

G④=G殉二τ}μs6+τ}μF+(2場一2cosα・τ})μs =0.08554

G⑤ニG偽ゴα 産={τ}(1−cosα)2cosα(1−cosα)μs∫十τ}με乞(sin2α)2十cosα(1−cosα)

  τ}μ, }/sin2α=一〇.01095

G⑥ニGrμ,κ=一{2τFcosα(1−cosα)}μs乞/sinα=0.02165 G⑦=G殉伽={τ}(1−cosα)2cosα}×4×μ86/sin2α=一〇.05951  但しμF,μ,乞は,FおよびSi原子量の逆数

 rF(Si−F 原子間距離)=1.55A  τF(γFの逆数)=0.64516である。

 α(原子価角)は正四面体のそれを使用した。 (10go28 )  sin109◎28ノ=0.9428,cos109。28』一〇.5555

 G①,G②,……,G⑦は,計算上の便宜のため,G行列の元素Grf,Gr rゴ,……,Gα フα規 を符号化したものである。SiF4の場合,G行列元素は,G①,…一,G⑦の7種類しかない。

(G①……G⑦のG行列中での位置,notationについては,文献4)参照)。

2) F行列元素の計算

F①一Fr 一fr +Σ{(r,/qεフsinα)2hq6ノ+(「6一「 cosα)2fq }一fr +1.89996fq5ゴ

      ブキ1       q フ

F②一Fα ゴー(fα¢フー釦謂sα)2×hqり+轟・s五n2α・f恥 )r虚rプ+滝κ

==2.4025fα乞フ十〇.96100fq¢ノ十1.06066κ

F③=Fr虚rフ={一(互sinα)2hqη+(塾幽「乞cosα)2fq乞,}

       q       q乞フ   =0.57501 (一〇.88887hqり十1.77769fq6,)

F④=Fr 殉=(互)2{sinα(1−cosα)(hq乞フ+fqの}r∫=0.65760fq幻

      q

F⑤一Fα¢ α 4κ一・・7・711κ

 F①,……,F⑤については,G①,……,G⑦の場合と同じである。ただ,今の場合,

fr6,fα ,fq勿,hqη(それぞれ力の定数),κ(分子内応力)を変数として残しているが,振 動計算を,Trumpyの方法に従ってやったためである。(notationについては文献4)を参照)

 計算に必要な数値としては,G行列元素の場合に同じであるが,qりは図1のr乞,rフ,q乞,が 三角形であることから,次のようにして求めることができる。

q㍉=r52+r,2−2r乞rプc・sα二6。40651 q =2.55111

 3) GF行列元素の計算

 表2に示されるところのGF行列元素中,同じ文字で表わされるものは同じであるので,行 列要素A;B;C;D;E;KおよびLは,おのおのの代表元素として,A,,・B。。・C、,・

D。,・E。。・L。,・K。2の値を表5に示すようにして求めた。

(5)

       表3    GF行列要素の計算

     り

A富A11=ΣG1ゴF戸G①F①+5G②F③+5G③F④+5G⑥×0=0.08824fr乞+0.10000fq乱     需1

B=B・。=ΣG。ゴF =2G⑥×0+2G③G④+4G⑤F⑤+G④F②+G⑦×0     フ昌1

       ==0.20022fα乞ゴ十〇.05162fq乞ゴ十〇。05745κ

    でむ

C=C21=ΣG2/Fゴ1冨G②F①+G①F③+G③F④+2G⑥F④+2G②F③+G⑥×0+2G③×0     ゴ置1

       =一〇.01187fr 十〇.05684fq¢ゴ

      

D=Do7冨Σ】GD,F,7=2G⑥F④+2G③×0+4G⑤F⑤+G⑦F②+G④×0      昌1

       =一〇.09492fα 一〇.00950fq毎一〇.07288κ

    ヨか

E=Eg・鵠ΣGgゴFゴ。=G⑥×0+G③F④+G⑥F④+G③×0+G⑤F②+2G⑤F⑤     ノ目1

        +G⑦F⑤+G⑤×0+G④F⑤

       =一〇.02651fαザ0.01052fq ノ     ユ 

L冨L・、=ΣG。乞F =G⑥F①+2G③F③+G⑥F③+2G⑤F④+G⑦F④     ゴ目1

        +2G⑤X O+G④×0

       =0.02165fr 一〇.01440fq毎     ヲ 

K=K・2=ΣG。ゴFゴ2=2G⑥F③+G③F①+G③F③+G⑤F④+2G⑤×0+

    ゴ=1

        G⑦×0+G⑤F④+G④F④

       =一〇.02165fr +0.01440fq

 4) SiF。の基準振動の計算

先の表1から,塩,ン刃,およびレTを次のように表わすことができる。

 ン4;A十5C=0,05265fr乞十〇.21052fqリ

 ツE;B十D−2E=0.15792fα ゴ十〇。06516fq幻一〇.02525κ yT; 温一L,灘uL)〕

   =〔傷:讐蹴温。㎞磁繍翻鼎飛。,,、、〕

 著者は,SiF4の実測値として,場二800cm一{,ソEニ268cm 一,ンT=1025cm一!と586 cm弓を得た。

 すなわち,上記y∠,肋,肋を表わす式に,実測値を等しいとおくことによって,計算振 動数すべてが,それぞれの実測振動数に,最もよく一致するよう力の定数を定めるわけである が,著者はTmmpy6)の方法により計算した。

 すなわち α=fq君ゴ/fr¢  fqのニα・fr

     β==κ/fr乞     κ==β・fr6

      γ=fα悟,/frε fαザγ・fr6

のように,力の定数の比を定め,先の振動数を表わす式を,缶とα,β,γで表わす。これ等 の式を実測値に等しくおき*1),縦軸のン。/残に対して横軸にα(ニfq扉f切をプロットす

*1)GF行列より求められる固有伽ま,振動の波数γcm一一とγ一嘉(c:光速)で結びつけられ  る。したがって実測の振動波数ンcm司を振動数パラメーター(λ)に換算して代入しなければならぬ。

 (丸善:実験化学講座,続10;p.5ワ9)

 (レ、)レ∠=800(λ譜0.5ワワ05),(ン2)吻=268(λ課0.04251)

 (レ3)レF1025(λ露0.6189ワ),(レ4)レF589(λ富0.08915)

(6)

28

浜 田 圭之助

る。この際,横軸のα値として0.08《・0.22の間をカバーした。それぞれのα値に対して求めら れたツπの値を用い,ン,/ン,(=1),ン2/レ1,ン3/ン,,ン4/残を計算し,ンη/残の値を αに対してプロットする。 そしてこれ等,計算された(塩/ン、)。αz,.が,実測値から求めた

(場/ン¶)。δ3.の値に最も近いαの値を,グラフから求めた。

 このようにして求めたαとfr¢(=5.4×10甲5dyne/cm)4)と,実測値を前式に代入すると,

β,〆値および力の定数fα ,,分子内応力κを求めることができる。

今度は,これ等の力の定数および分子内応力κを用いて,SiF。分子の基準振動を計算した。

以上のようにして求めた,力の定数,振動の計算値および実測値を,文献値と対比して記載し た。(表4)

表4 SiF4の力の定数および基準振動 カの定数および分子内応力

  (×1G−5) dyne/cm

文 献4)

frε

fα勿 fq勿

hqり

κ

5.4

0.02 0.45

一〇.51

0.7

陪者

5.4

0.068

0,45 一〇.04

0.25

cm噸一

計 算 値

文 献4)

ン1

ン2

ン3

ン4

798 267 1025 462

陪者

、 800 268

1105 589

実 測 値 文献

8一 10)

ワ98

268 1022 465

著者

800

268

1024 589

考 察

著者の場合,文献値に比してツ。の計算値と実測値の一致がよくない。しかし両者において 実測値ン・が,大きく相違しているが,著者のレーザ・ラマン分光々度計による観測値の方が 正しいと考えてよいと思う。

 このようなことから,理論計算に対する限界も伺われる。すなわち,計算値は実験値に合う ようパラメーターを選ぶのであるからである。計算値は,あくまで実測値の参考程度に止むべ きものではなかろうか。

文 献

1)K Hamada,G.A.Ozin and EA・Robinson,C4艦∫Ch8卿.,49,477(1971)

2)       ibid      , βμ〃。Ch8舩5 oo.ルρ4η,44, 2555 (19ワ1)

5)K Hamada and E.A.Robinson, 童bid         ,45,2219(1972)

4)T.Shimanouchi,∫Chθ吻.P勿3,,17,848(1949)

5)E.B.Wilson,∫Ch伽.Ph蝿,7,1047(1959);9,%(1941)

6)島内,理研彙報,21,825(1957)

ワ)B.Trumpy,Z。Phys玩,66,ワ90(195G)

8)Yost,Lassetre and Gross,∫Ch8吻。Phy乱,4,525(1956)

g)Baily,Hale and Thompson,Pグoo。RoダSo6(Z,oπ40π),A167,555(1958)

10)D.M.Yost,Pグoσ.1銘4.∠4σα4。S ゴ,,8A,555(1958)

参照

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