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mance Bond(履行保証証券),Advance Payment Bond

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(1)

公共工事とボンド制度

草 苅 耕 造

■アブストラクト

この論文は,まず,信用リスクの意義,これを担保する保険制度を概述し,

その中で,保証証券業務について保険業法上の位置づけを明らかにした。次 に,公共工事の契約制度の現状と課題を指摘し,その解決の為, 市場によ る業者選択 が不可欠であることを論じた。この中で保証証券業務(ボンド 制度)の役割の重要性を公共工事契約制度の変遷と共に説明した。現在まで 完成保証人制度の廃止,新履行保証制度の導入,保証割合の拡大,入札ボン ド制度の導入等一般競争入札を拡大する為の改善策が順次実施されてきた。

しかし,入札ボンドの事前提出,前払金保証会社の実質的独占状態等依然未 解決の問題がある。さらに,透明性,公平性,競争性の高い入札制度実施の 為に必要な対策を指摘した。最後に,損害保険会社がボンド制度を通じ期待 される役割を果たす為,何が必要かを論じた。

■キーワード

保証証券業務,ボンド,公共工事

はじめに

1997年10月日本保険学会において, 信用リスクと損害保険 という報告 を行った 。この報告の趣旨は,第1に,信用リスクの意義と特徴,第2に,

*平成19年3月19日日本保険学会関東部会報告による。

/平成19年4月4日原稿受領。

1) 著者の報告内容は,保険学雑誌第560号(1998年3月発行)79‑104頁ご参照。

(2)

巨大な損害保険の対象となる信用リスクの存在,第3に,損害保険会社が担 保すべき信用リスクのごく一部しか商品が提供されていないこと,第4に,

この改善に何が必要かを論ずることにあった。

今回は,全般的な問題ではなく,信用リスクを担保する制度の中で,近年 特に注目されている一分野について論じたい。

1.信用リスク

信用リスクとは,契約上の債務者や法令上の義務者の債務不履行または不 法行為によって,債権者や権利者が損害を被る可能性をいう 。契約上の債 務には,金銭消費貸借契約上の借主の償還債務,売買契約上の買主の代金支 払債務,役務提供契約上の役務提供者の役務提供債務等がある。また,法令 上の義務には,免許可業者の許可条件の遵守義務,強制競売の買主の購入義 務,訴訟事件の原告の損害賠償義務等がある。10年前,損害保険の対象にな りうるものとして,我国において約2,093兆円に達する信用リスクが認識さ れている 。

2.信用リスクと保険制度

これら信用リスクを担保する制度として,クレジット・デリバティブのよ うな金融商品も考えられるが,保険制度としては,次の5種類の商品が挙げ られる。

第1に 信用保険 がある 。信用保険では,債権者や権利者が保険料を 支払い保険契約者となり,債務者の債務不履行または不法行為による被保険

2) 上掲誌80頁ご参照。

3) 上掲誌85頁ご参照。もちろん,現時点ではその規模は更に増加していると思 われる。

4) 信用保険には, 身元信用保険 , 住宅資金貸付保険 , 一般資金貸付保険 , 家賃信用保険 , 個人ローン信用保険 , 石油クレジットカード信用保険 , 取引信用保険 , 割賦販売代金保険 , 酒類取引保証人保険 ,

ATA

カル ネ信用保険 等がある。

(3)

者たる債権者や権利者の損害が塡補される。

信用保険では,債務者や義務者に知られることなく保険の付保が可能であ り,債権者や権利者にとって利用し易い保険制度であろう。

第2に, 保証保険 がある 。戦後,米国のボンド制度をそのままの形 で導入することが検討された。しかし,当時は法令上未解決の問題があり,

ボンド制度そのものではなく保証保険という日本特有の保険制度が導入され た。この保証保険の導入のため,1951年6月に保険業法第1条が改正された。

保証保険では,保険契約者は債務者等であり,この債務者の契約上の債務不 履行による被保険者たる債権者の損害が塡補される。保険会社は,保険金を 支払うと保険代位,債権譲渡あるいは求償権特約により,保険料を負担した 保険契約者である債務者に求償することになる。保証保険は,債権者のため に債務者が保険契約を締結する商法第647条に規定する典型的な他人のため の保険契約である。公共工事の発注者のように債権者の立場が相当程度強く 保証保険の付保を要求できる場合に成り立つ保険制度である。この保証保険 では,保険料を支払った上で求償される保険契約者に納得感が少なく,また 事前の担保取得等に相当の困難があり,比較的運営の難しい保険制度となっ ている。

第3に, 保証証券業務 がある。これは,損害保険会社が保険的手法で 行う保証であり,債務者や義務者等が保証委託者となり,債権者や権利者に 対し,債務者の債務や義務者の義務の履行の保証を行うものである。1995年 6月改正された保険業法第3条第6項では,この保証証券業務は,損害保険 として明確に規定された 。この保証証券業務は,諸外国で行われているシ

5) 保証保険には, 住宅ローン保証保険 , 入札・履行保証保険 , 特約店保証 保険 等がある。

6) 保険業法第3条第6項では, 保証証券業務(契約上の債務又は法令上の義 務の履行を保証することを約し,その対価を受ける業務のうち,保険数理に基 づき,当該対価を決定し,準備金を積み立て,再保険による危険の分散を行う ことその他保険に固有の方法を用いて行うものをいう。)による当該保証は,

前項第一号に掲げる保険の引受とみなし,当該保証に係る対価は,同号の保険

(4)

ュアティ・ボンド制度,略してボンド制度と同一の制度である 。また,こ の保証証券業務は国際的にも普及しており,1994年1月1日国際商業会議所

(ICC)が 定 め た 契 約 保 証 証 券 統 一 規 則 に 規 定 さ れ た 契 約 保 証 証 券

(Contract Bond)は,このボンド制度のうち,契約保証に係るものであ る 。国際連合国際商事法委員会(UNCITRAL)でも,第32回総会におい て国際的統一規則に基づく契約保証証券を各国で採用するように勧告した 。 もっとも,我国においては,この保証証券業務は,従来の保険業法上でも認 められており,1974年6月には,保証保険の第2部として商品認可が与えら れた 。しかし,保証証券業務で行われる保証は,商法上の連帯保証であり,

この点を明確にするという意味で,1995年の保険業法改正の際に第3条第6 項として特に規定された。この規定により,保証証券業務は保険業法上損害 保険の引受と明確に規定された。

第4に, 保証 がある。保険業法第98条第1項第二号により,保険会社

に係る保険料とみなす。 と規定されている。この結果,保証証券業務は,損 害保険とみなされる。

7) 諸外国では,Surety Bond(保証証券)は,Contract Bond(契 約 保 証 証 券),License & Permit Bond(免 許 可 保 証 証 券),Judicial Bond(裁 判 保 証証券)等数百種類の保証証券がある。Bid Bond(入札保証証券),Perfor-

mance Bond(履行保証証券),Advance Payment Bond

(前払金保証証券),

Maintenance Bond

(瑕 疵 担 保 保 証 証 券),Labor & M aterial Payment

Bond

(賃金下請代金支払保証証券)は,この

  Contract Bond

の一種である。

8)

ICC

(国際商業会議所)は,保険委員会の提案で契約保証に関する新国際 規則を作成した。この統一規則は,1994年1月1日,ICC契約保証証券統一規 則(ICC Uniform  Rules for Contract Bonds No.524)として採択された。

9) 2000年6月から7月にかけて開催された国際連合国 際 商 取 引 法 委 員 会

(UNCITRAL)は,第32回 総 会 で

INCOTERMS2000や ISP98と 共 に こ の 国

際的統一規則の創設を高く評価すると共に,この規則に基づく契約保証証券の 利用を各国に勧告した。

10) 1974年5月31日 保証保険 の 第2部保証 として,保証証券業務の営業 認可が与えられた。この保証は,契約上の債務を保証する 契約保証 と法令 上の義務を保証する 法令保証 に分類され, 契約保証 では,保証の対象 になる契約上の債務が列挙されている。

(5)

は,銀行等と同じく付随業務として, 債務の保証 を行うことができる。

この保証は,商法第511条第2項に規定された連帯保証に該当する。この保 証では,債務者が保証委託者となり,債権者に対して債務者の負担する債務 を保証する。保証証券業務と異なり,この連帯保証における保証料は自由で あり,保証事業だけで収支相償う必要はなく,極端な場合には無償で保証す ることも可能である。

第5に, 債務引受 がある。保険業法第98条第1項第二号で規定される 債務の保証 には,この 債務引受 も含まれていると解されている。

債務引受 では,債務者は保険会社に債権者に対する債務の肩代わりを依 頼し,保険会社は債権者から肩代わりを求められれば,債務の存在さえ確認 されれば,これを支払うものである。主たる債務者の債務不履行が発生して いなくても,支払を余儀なくされる 請求払い保証 あるいは オンディマ ンド保証 といわれるものの実体は,この 債務引受 と考えられる 。

3.公共工事の契約制度

最近,福島県,和歌山県,宮崎県で相次いで談合事件が報じられ,2007年 1月には,公共工事における談合の廃絶を訴えて新知事が登場して話題とな った。これらは,公共工事にかかる官製談合事件である 。

ここで,我国の公共工事の調達方法について一覧してみたい。

11) この 請求払い保証 或は オンディマンド保証 といわれる保証について は,国際商業会議所(ICC)の 請求払保証に関する国際的統一規則 (

ICC Uniform  Rules for Demand Guarantees No.458)に規定されている。  

12) 談合事件の多くは,建設業者が談合により請負業者を実質的に決め,請負契 約を締結するものが多い。官制談合事件では,発注者の関係者が実質的に請負 業者を決定し,当該請負業者と請負契約を締結するものである。発注者の関係 者は,金銭その他の利益を受けるものばかりでなく,政治的な意図に基づき公 正な調達方法を排除して行われるものも含まれる。

(6)

⑴ 公共工事の契約制度

①一般競争入札制度

会計法第29条の3第1項によれば,政府が契約する場合には,一般競争入 札で行う必要がある。これは,より低廉な価格で調達するためである。最終 的な税負担は国民であり,より効率的な予算の執行が求められていることか ら当然ともいえる。

しかし,会計法では,特別な場合には,一般競争入札以外の調達方法も認 められている。

②指名競争入札制度

まず,同法第29条の3第3項では,契約の性質や目的から入札参加者が少 数で競争に付す必要がない場合や競争に付すと発注者に不利になる場合は,

政令の定めにより,指名競争入札に付すものとされている。

2004年度の国土交通省直轄工事では,件数ベースで実に85%,請負契約金 額ベースで56%が指名競争入札によって発注されていた 。

③随意契約

次に,同条第4項では,契約の性質や目的から競争を許さない場合や緊急 の場合には,政令の定めにより,随意契約も可能としている。

さらに,予定価格が小額の場合その他政令で定める場合には,指名競争入 札または随意契約によることもできる。この金額は,指名競争の場合には 500万円以下,随意契約の場合には250万円とされている。おなじく,国土交 通省の調査では,件数ベースで12%,請負契約金額ベースで3%が随意契約 によると報告されている 。少なくとも件数ベースでは,随意契約が指名競

13) 国土交通省直轄工事等契約関係資料 2005年度版の2004年度契約方式別・

部局別契約状況(工事)によると,契約件数18,196件中15,489件(85.1%),

当初契約金額2,515,309,364円中1,404,985,531円(55.9%)が指名競争入札に よるものとされている。

14) 上掲資料の2004年度契約方式別・部局別契約状況(工事)によると,契約件 数18,196件中2,174件(11.9%),当初契約金額2,515,309,364円中75,222,154 円(3.0%)が随意契約によるものとされている。

(7)

争入札についで多い。

最近,全国知事会で1,000万円以上の公共工事は,一般競争入札にすると 決め,既に31道府県で実施されたと報じられているが,厳しく言えば,それ でも予算及び決算令の基準金額を上回っている。

地方自治法第234条第1項では,一般競争入札,指名競争入札,随意契約 を契約方法として認めているが,第2項で指名競争入札,随意契約は,政令 で定めるときに限り利用できるとしている。地方自治法施行令第167条で指 名競争入札を利用できる場合,第167条の2で随意契約を利用できる場合を 規定しているが,その内容は極めて限定的である。この様に,本来であれば,

一般競争入札以外は,相当限定的にしか利用できないはずである。

⑵ 公共工事契約制度の問題点

この公共工事契約制度下では,入札者が相互に談合して契約価格を吊り上 げる業者談合や発注者が落札業者あるいは請負業者を指定し,調整した入札 価格を入れる官製談合が容易に行えるため大きな社会問題となっている。

①指名入札制度による談合の可能性

指名競争入札制度では,発注者の指名により入札に参加する建設業者が限 られている。建設業者は,万一落札せず,落札しても落札価格が希望の水準 を大幅に下回る結果となることを回避しようとする。そこで,あらかじめ,

入札予定業者同士で話し合い,予定価格に近い金額で落札できるようにする。

指名業者同士で落札者を回り持ちで決められれば良いが,これが困難な場合 には,期待利益に近い額を下請工事等の他の工事で保証することになる。こ の結果,公共工事の契約金額は,過去の長い談合の歴史を反映した予定価格 とも相まって,必要以上に高額となっている。この談合による価格の上昇が,

納税者の立場から見れば,問題であることはいうまでもない。

②随意契約による官業の癒着

災害工事等で発生する緊急性から真に止むを得ない場合は,随意契約で締 結されるのも理由がある。しかし,このような場合ばかりでなく,250万円 以下の公共工事請負契約の多くは,随意契約で発注されている。先述したが,

(8)

国土交通省の統計では,件数ベースで12%もの公共工事が随意契約で発注さ れている。地方公共団体になると随意契約の割合はもっと高くなると思われ る。その理由として,地場の建設業者を支援して地域の経済を活性化させる という大義名分が良く持ち出される。随意契約の場合には,発注者が受注者 を決定できるので,官業の癒着が日常化する実態にある。

③世界貿易機構(WTO)政府調達協定

1996年1月我国が世界貿易機構に加盟した際に,同時に政府調達協定も締 結した 。この協定は,政府調達において外国業者を公平に取扱い競争入札 に参加させることを約束するものである 。

各国の現状に鑑みこの協定では若干の緩和規定がある。たとえば,一般競 争入札は,発注者により契約金額が国発注の場合7.5億円以上,地方公共団 体発注の場合22.5億以上の契約について求められている。しかし,いつまで もこの緩和規定に安住するわけにはいかない。透明性を確保しつつ,公平か つ競争的な発注方法を導入する必要があろう。

この意味からも,一般競争入札による政府調達の拡大が求められている。

4.公共工事の課題

次に我国における公共工事の課題を考えたい。

⑴ 契約価格の縮減

公共工事の第一の課題は,公共工事の調達価格を可能な限り縮減しなけれ ばならないということである。

①累積債務問題

2006年9月末の我国の累積債務額は,828兆円,政府保証債は51兆円であ

15)

WTO(World Trade Organization)の政府調達協定は,加盟各国の政府

調達に係る法令,手続きおよび慣行を透明で,かつ国際的に差別のないものに すべく締結され,現在37カ国が加盟,9カ国が加盟交渉中である。

16) 上記協定の前文(P2,外務省経済局編1997年1月)ご参照。

(9)

った 。これに地方債現在高61兆円を加えると公的累積債務高は実に940兆 円に達している 。これは2005年度の国民総生産503兆円に対して1.87倍で ある 。又,2006年3月末の世帯数51百万世帯で割ると1世帯当たり実に 1843万円となる 。これ以上,この累積債務額を増加させることは許されな い。公共工事の中でも必要性が真に高い工事に限ることはもちろん,その工 事をできるだけ低廉な価格で調達することが求められる。

②建設業者の問題

公共工事予算は,1997年度の33兆円から2006年度は18兆円まで45%減少し ている 。また,民間工事の動向にもよるが,全体の建設工事売上高でみて も,2006年は53兆円と予想され,1997年の75兆円の71%まで減少している 。 これに対し建設業者数は,同時期56万社から54万社へ4%減少しているに過 ぎない 。特に公共工事に係る建設業者の困難は顕著であり,従来のように 談合により建設業者に工事量を適切に配分するという状況にはない。より合 理的な方法で請負業者の選択を行う必要がある。この方法が一般競争入札を 前提とした市場競争原理の適用による請負業者の選択である。

17) 2006年12月25日総務省発表の 国債及び借入金並びに政府保証債務現在高

(2006年9月末現在)による。

18) 地方債については,地方債協会発表の地方債月報表18公社債現在高の地方債 残高(2006年9月)による。

19)

World Economic Outlook Database, April

2006(Website of Interna-

tional Monetary Fund)による。

20) 2006年度住民基本台帳人口及び世帯数(対前年比較)によると,2006年3月 末の世帯数は,51,102,005世帯であった。

21) 国土交通省2006年6月2日発表の建設投資見通しによると,政府建設投資額

(名目)は,1997年度33兆円に対し,2006年度は18.2兆円であった。

22) 上記見通しでは,建設投資額全体では,2006年度52.9兆円と1992年度のピー ク時の65

%,1997年度の75.2兆円と比較しても71 %に減少している。

23) 許可業者数・新規及び廃業等業者数の推移の統計によると,建設業者数は,

2006年3月末は,542,264業者なのに対し,1997年3月末は,564,849業者で業 者数は,4%減少している。

(10)

⑵ 工事品質の維持

しかしながら,一般競争入札で請負業者の選択をした場合,工事能力の無 い建設業者の受注や安値受注の結果手抜き工事を行うなどにより,工事品質 の維持に不安もある。

①工事管理問題

発注者の工事管理体制が必ずしも万全でない現状は改善しなければならな い。施工管理のできる職員を配置することや施工管理会社に施工管理を依頼 するのも方法である。指名競争入札は,発注者の審査により信頼の置ける建 設業者のみを参加させることにより工事品質の確保を図ろうとするものであ ったが,これでは直接工事品質の確保を図れないことは,過去の事故例が示 している。

②瑕疵担保問題

2004年から2005年にかけて国土交通省では,公共工事の瑕疵担保問題につ いて,研究会を開催し,将来予想される瑕疵問題に備えた 。しかし,瑕疵 担保期間を現行から大幅に延長することは建設業者の負担が大きく困難であ ることが判明した。現実的な方策としては,瑕疵を担保する履行保証制度の 確保,完了検査の強化,履行保証の保証金額を10%から30%程度への引上げ,

瑕疵担保期間の若干の延長と瑕疵担保期間中の保証金額の10%程度への引下 げ等が論じられた 。

⑶ 業者選択方法

工事品質の確保のための方策の一つとして,公共工事の請負契約を締結す る請負業者を的確に選択することが考えられる。

①発注者による選択

指名競争入札や随意契約において,入札者を発注者自身が厳しく審査する 24) 国土交通省は,2004年6月から2005年6月にかけて, 瑕疵保証のあり方に 関する研究会 を開催し,瑕疵担保責任,瑕疵保証等について研究している。

25) 国土交通省が,2005年8月に作成した報告書によると 瑕疵担保特約付の履 行保証を求める発注方式を今まで以上に採用するなど具体的な取り組みを検討,

推進していくべきである。 としている。

(11)

ことにより,請負業者の選択ができるという考えがある。しかし,発注者の 審査は請負業者の過去の工事経歴と請負業者から提供された財務諸表を中心 とする情報であり,請負業者の履行能力を的確に判断できるものとはいえな い。

実際問題としても発注者が請負業者を選択し,履行能力の無い業者を入札 者から除外することは困難が予想される。悪くすると請負業者による談合を 追認して選択するあるいは履行能力以外の観点から請負業者を選択するいわ ゆる官制談合の原因になりかねない。

②市場による選択

そこで考えられるのは,市場原理による選択である。工事履行能力のない 請負業者のために保証機関が誤って履行ボンド等を発行して,その請負業者 が債務不履行を起こせば,保証債務の履行が求められた保証機関に高額の損 害が発生することになる。従って,保証機関による請負業者の履行能力の審 査は,真剣なものとならざるを得ない。この審査のために保証機関はその審 査能力の全てを動員している。必要な場合には,外部の調査機関まで動員し てその履行能力の審査をすることになる。審査スタッフによる現地調査をし ばしば行われる。

この保証を市場の全ての保証機関から得られない建設業者は,公共工事の 契約締結ができず,公共工事の舞台から退場せざるを得なくなる。工事履行 が困難と予想される程低価格で応札した場合にも,その価格設定に充分な理 由が無ければ,建設業者の財務内容によっては,保証機関が履行保証の引受 を謝絶することが予想される。一般競争入札では,入札価格が重要な決定要 因であり,請負業者にはこの価格競争に勝ち抜く為にも常に革新が求められ ることになる。

(12)

5.保証制度利用による公共工事契約制度

⑴ 第1期改正(1996年)

①工事完成保証人の廃止

従来,指名競争入札が主流を占めてきた。さらに,指名業者の審査の瑕疵 による債務不履行の発生を補うため,工事完成保証人が要求されていた。こ の工事完成保証人は,競争入札で厳しい競争をする建設業者同士が保証し合 うというものである。この完成保証人制度が,建設業者同士の相互依存体制 を強化し,業者談合の温床になったことは容易に予想される。現実に発生し た何度かの事件発覚や外国からの問題指摘を契機に公共工事契約制度の見直 しが行われた。この結果,1996年4月からはこの完成保証人制度が全面的に 廃止されることになった 。この工事完成保証人制度の廃止は,著者が行っ た全国調査でも比較的円滑に行われたことが判明している 。

②新履行保証制度の導入(履行ボンド制度の導入)

この完成保証人制度の廃止に伴い,請負業者の適正な契約履行を確保する ための代替制度が必要になった。この代替制度として,1995年10月から試行 され,1996年4月から全面的に採用された制度が新履行保証制度である 。 会計法に基づく契約保証金及びこの代替制度として認められた有価証券,

26) 1995年6月16日自治省行政局長から各都道府県知事に対し,工事完成保証人 制度を1996年度から廃止し,1995年度中にやむなく工事完成保証人を付す場合 も当該工事にかかる相指名業者以外から選定することを条件とするように契約 保証金にかかる規則の準則を変更した旨通知された。

27) 幣著 公共工事契約と新履行保証制度(考え方と実際) (2001年)86頁ご参 照。なお,国土交通省の調査(2006年3月公表)では,2005年10月1日付で廃 止済みは,国は100

%,特殊法人は97.7 %,地方公共団体は,91.7 %,廃止未

定が特殊法人で3団体(2.3%),地方公共団体で191団体(8.4

%)と報告され

ている。

28) 国土交通省では,1993年7月設立した 公共工事に関する特別委員会 の報 告を受けて,1993年12月中央建設審議会は, 公共工事に関する入札・契約制度 の改革について とういう建議を行った。1995年6月の自治省行政局長の通達 では, 保険会社と工事履行保証契約を締結したとき には,契約保証金を免 除する旨を連絡している。

(13)

金融機関の保証,履行保証保険に加えて,新履行保証制度として,次の代替 制度が新たに導入された。まず,建設業保証会社の行う前払金保証に付帯さ れた契約保証特約がある。これらは,全て金銭的履行保証となり,万一,請 負業者の債務不履行により発注者が損害を被った場合には,その損害を金銭 的に担保しようとするものである 。

これに加えて,役務的履行保証として,損害保険会社により発行される公 共工事用履行保証証券いわゆる履行ボンドが認められた。万一,債務不履行 が発生すると,損害保険会社は最も適切と判断される代替業者を選択し,発 注者がこれを承認した場合には,その代替業者によって当該請負契約が代替 履行されることになる。この履行ボンドでは,代替履行業者のみならず債務 不履行を起した請負業者の行った工事についてもその瑕疵が担保される。し かし,履行ボンドは金銭的保証としての機能もっている。保証金額が会計法 上の最低基準である請負契約代金の10%程度であれば,代替履行より保証金 額を全額支払ったほうが,損害保険会社としての支払が少なくなると判断す る場合もある。この場合には,損害保険会社は,代替履行ではなく金銭の支 払を選択することができる。従って,履行ボンドは,金銭的保証という機能 も持っているわけである 。この履行ボンドは,公共工事請負契約に最も適 合した履行保証制度と言えるかもしれない。

⑵ 第2期改正(2005年)

新履行保証制度は比較的順調に普及してきたが,保証金額は,従来から請 負契約金額の10%程度に留まり,履行保証としての機能が充分に果たせない ことは認識されていた。また,指名競争入札を背景にした談合事件の発生は

29) 1996年1月26日に自治省行政局行政課長から各都道府県総務部長宛に出され た通達によると, 前払保証事業会社の保証 を 契約保証金(現金の納付)

に代わる担保措置として位置づけられるもの として認めている。

30) 上記通達によると, 役務的保証を求める場合は,付保割合(保証金額の契 約金額に対する割合)の高い公共工事履行保証証券を求める としており,金 銭的保証としても,役務的保証としても 公共工事履行保証証券(いわゆる履 行ボンド) を認めている。

(14)

継続していた。

①保証金額の引上げ

そこで,2005年12月から国発注の一般競争入札対象工事については,工事 請負契約書の読み替え規定により契約保証金額を請負契約金額の10%から30

%に引き上げることになった 。

②共同企業体に対する保証金免除の廃止

更に,会計法で規定された契約保証金の提出を免除してきた,共同企業体 についても履行保証の提出を求めることになった。

この両者によって,国発注の一般競争入札対象工事については,履行保証 制度が一応の水準に達したものと考えられる。

なお,一般競争入札対象工事は,2005年10月の国土交通省の通達で,国発 注の場合,2005年度中は予定価格が3億円以上,2006年度中は2億円以上と されていた。今後の問題としては,更に一般競争入札による調達を拡大する ことにある。

⑶ 第3期改正(2007年)

しかし,指名競争入札が太宗を占めるという状況には余り変化はなかった。

依然として,談合事件の摘発は継続し,業者談合のみならず官制談合まで発 覚した。この状況に鑑み,2006年5月23日の閣議において 公共工事の入札 及び契約の適正化を図るための措置に関する指針 が決定され,入札ボンド 制度を活用して一般競争入札の拡大を図ることとなった 。

31) 2005年10月7日,国土交通省は通達改正により,2005年12月から一般競争入 札対象工事に係る工事請負契約及び設計業務等委託契約における契約保証金を 従来の 請負代金額の10分の1以上 から 請負代金額の10分の3以上 に引 き上げた。

32) 2006年5月23日 公共工事の入札・契約に関する適正化指針 を閣議決定し たが,その中で, 各省庁の長等においては,一般競争入札の導入に伴う上記 の問題に対応するため,資格審査及び監督・検査の適正化並びにこれらに係る 体制の充実,事務量の軽減,入札ボンドの活用等の条件整備を図りながら,一 般競争入札が原則とされていることを踏まえ,対象工事の見直し等によりでき る限り速やかに一般競争入札の拡大を図るものとする。 と決定されている。

(15)

2006年9月には,国土交通省は,同年10月から試行的に直轄工事について 入札ボンドの導入を決定し,2007年4月から他省庁や地方公共団体の発注工 事についても入札ボンドを採用することになった 。

6.保証制度の課題

⑴ 市場原理の確保

①前払金保証制度の建設業保証会社による独占

この入札ボンドを発行する保証機関として,理論的には損害保険会社22社 を含む金融機関,建設業保証会社4社合計約1800社が参加することになって いる 。これらの保証機関は,その審査方法が異なり,保証料も一定でない から市場の競争原理が働くことが期待される。しかし,公共工事のほとんど の契約で導入されている前払金保証を行う建設業保証会社がその中で特徴的 な立場を占めている。建設業保証会社は,実質的に3社による地域的独占状 態にある。この建設業保証会社がその独占的な地位を入札ボンドでも発揮す ると市場原理の確保は困難になる。これを防止するためには, 公共工事の 前払金保証事業に関する法律 で登録される前払金保証会社として,原則入 札ボンドや履行ボンドを発行することが認められた全ての金融機関が自動的 に認められるべきであろう 。

②損害保険会社の保証能力の拡大

履行ボンドを通じて,保証機関の中で大きな役割を果たす可能性がある業 界が損害保険会社である。その理由およびその課題を検討してみよう。

他の金融機関等の保証機関と比べて損害保険会社に特徴的なことは,再保

33) 2006年9月8日国土交通省総合政策局長の各省庁官房長宛の通達で 2006年 10月下旬以降公告工事から7.2億以上の一般土木工事等に入札ボンドの導入を 図ること,2007年度からこの対象工事を拡大すること を通知した。

34) 2007年2月末の金融機関数は,都市銀行6行,地方銀行64行,信用金庫287 行,損害保険22社等合計1,795行であった。

35) 公共工事の前払金保証制度に関する法律 第3条,第4条第3項,第6条 ご参照。

(16)

険である。損害保険会社は,履行審査の結果,保証保険や保証証券を発行す ると,その引受けたリスクの一部を種々の形態で他の損害保険会社(特に再 保険専門会社)に再保険に付すことになる。この再保険は,我国ばかりでな く世界中の著名な損害保険会社が参加するので,その消化能力は莫大なもの になる。我国の損害保険会社が,その審査能力を強化し,世界中の損害保険 会社の支持を得て,公共工事の需要に応えてくれることを期待したいもので ある。

損害保険会社が信用審査能力を強化する為には,建設業者に関する情報の 蓄積,情報調査機関との提携等も必要だが,大切なのは審査要員の育成であ る。格付け機関の格付け,蓄積された審査データの結果のみで履行能力を審 査する訳ではなく,これらの情報を的確に分析し履行能力を判断できる審査 要員の役割が重要である。この審査要員を育てるためには,5年程度の期間 が必要であるとされている。また,審査要員として能力の有無の評価のため には,審査結果を事後的に検証する必要がある。保証機関の審査能力は,こ の審査要員の質と量に従って実質的に決まってくる。この審査能力はボンド 制度のみならず全ての信用リスクに対応する保険制度のために不可欠であり,

この審査能力整備を行いつつ業容の拡大を図っていく必要がある。

⑵ 談合補助システムの撤廃

競争入札制度の拡大及び徹底が必要な時代的背景については既にお話した が,安易な経営に傾斜する経営陣にとっては,談合は必要悪である。どのよ うな制度になってもその中で談合システムを構築しようとすると思われる。

従って,談合を結果的に惹起する危険性のある談合補助システムは可能な限 り排除する必要がある。

①入札保証の事前提出

この観点から見た場合,今回の入札ボンド制度にもやや疑問なシステムが ある。それは,入札ボンドを資格確認資料と共に入札日以前に発注者に提出 させることである 。入札ボンドが提出されている場合,万一,落札者が発 36) 国土交通省の2006年9月8日の 入札ボンド制度の導入について という文

(17)

注者と契約しなければ入札ボンドの事故として保証機関にその損害を請求す ればよく,予め入札ボンドの提出が可能かどうかを確認する必要は無い。ま た,発注者としても審査するのだという原則論はあるが,発注者による資格 審査も果たして必要かどうか疑問もある。少なくとも,今回のように入札ボ ンドが折角導入されたのであれば,発注者による事前の審査は屋上屋の感が ある。

②保証提出の免除制度の廃止

入札ボンドや履行保証の制度があるにも拘らず,入札者や請負業者によっ ては,入札保証金や入札ボンド,契約保証金や履行ボンド等の契約保証の提 出を免除する現状は問題がある。万一,事故が発生した場合には,どうする つもりなのだろうか。2005年12月以降国土交通省直轄発注契約については既 に変更されたが,他の公共工事においては,従来,共同企業体に対して保証 提出を免除していた。これでは,事故が発生した場合に問題が発生する。ま た,発注者ごとに免除の可否判断の為,請負業者の審査体制を維持するには 膨大な経費がかかり,予算削減を求められる政府の立場に反する。

7.公共工事契約制度の課題

信用リスクかかる保険制度という意味からはやや離れるが,折角の機会な ので公共工事契約制度の課題について簡単に触れる。

⑴ 発注者による工事監理体制の整備

保証制度を導入しても工事品質を確保するためには,工事中や工事完成時 点での検査が重要である。手抜き工事で事故が発生してからでは遅い。もち ろん,瑕疵担保期間中に瑕疵が発生すれば履行ボンドや瑕疵担保保証で担保 される。しかし,発注者としては,工事監理体制を充実させ,未然に事故を 防ぐことが大切ではないだろうか。

書の中で,発注者への入札ボンドの提出時期を 入札参加者による競争参加資 格確認資料等の提出と同時 とされている。

(18)

⑵ 発注者による業者選択の撤廃

瑕疵の発生を防止するために発注者が資格審査等で建設業者の選択する従 来の方法には疑問がある。審査情報の選択を的確に行い,履行能力の審査判 断ができたとしても,請負業者の経営状態が急激に変化した場合には,事故 の発生を防止できるものではない。また,履行能力の審査を的確に行うこと ができる審査要員を各発注者が維持することは相当に困難であるばかりでな く,発注者に相当の費用が掛かり,結局大きな無駄になる。更に,発注者に よる請負業者の選択は,ともすると官制談合の疑いの対象にもなる。入札ボ ンドが導入された現在,この様な制度はできるだけ早く撤廃することが必要 ではないだろうか。

⑶ 透明性の確保された調達制度の確保

我国は,1996年WTO(世界貿易機構)の政府調達協定を締結している。

この協定では,透明性,公平性,競争性の高い政府調達制度が求められてい る。公共工事についても,透明性,公平性,競争性の高い一般競争入札制度 が求められている。この様な政府調達制度を実現するためには,公共工事に おいても,いくつかの対応をする必要がある。

第一に,工事予定の早期公表がある。発注者は,工事予定を可能な限り早 期に公表することが望ましい。入札予定者は,それだけ早期に入札準備にか かることができ発注者としても価格面で有利な結果が期待できよう。

次に,予定価格の公表がある。予定価格は,従来の工事における単位価格 の積算であるが,場合によっては,予定価格の既知かどうかが入札における 有利不利の原因になる。一方,どの様に秘密扱いをしても,秘守は困難であ り,贈収賄や談合の原因にもなる。入札日より前のできるだけ早い時期に予 定価格を公表しておくことが望まれる。談合が排除できれば,予定価格の発 表による不利益は大いに回避できる 。

37) 平成16年8月の中央建設業審議会資料7 地方公共団体における入札制度の 現状 によると,平成14年度に予定価格の公表を行う地方公共団体は,1310団体,

40.1

%とされ,平成13年度の814団体,24.8 %に比べ公表団体が増加している。

(19)

第3に,入札結果は,単に落札者の名前や落札価格だけではなく,全ての 入札者及びその入札価格を公表することが望ましい。可能であれば,完成引 渡しまでの最終的な請負契約金額も公表することが望まれる。この情報は,

保証機関が請負建設業者の性格を判断するための一助にもなる。

第4に,発注者は,入札結果を公表するだけではなく落札率も併せて公表 することが望まれる。発注者ごとに全契約について横断的に落札率を比較す ることによって,問題があれば,これを早期に確認することができる。落札 率の推移は,入札制度の適正な運用の有無を推定する一助になる。

第5に,発注者が完成工事についてその完成工事評価を公表することが望 まれる。保証機関は,建設業者の工事歴を履行能力審査の一部として確認す る。これは,建設業者の体質や技術を判定する良い情報になるからである。

もちろん,工事成績の評価基準等の評価要領の公表も必要である 。 第6に,債務不履行を起した建設業者については,これを公表してはどう かと考える。請負業者は,自己の履行について責任があり,万一,債務不履 行が発生した場合には,その債務不履行の原因,保証事故の有無,保証事故 の原因等が公表されることを覚悟すべきである。保証機関としても,これら を知っておくことは履行能力審査で重要である。もちろん,請負業者として の反論或は事情説明にも,保証機関は関心を持っており,確認作業は行われ るであろう。

おわりに

公共工事の円滑な調達にとって,ボンド制度の役割およびその重要性につ いて,理解されたとは思うが,次の点を再度指摘しておきたい。

⑴ 公共工事における損害保険会社の役割

第1に,従来,公共工事は発注者による履行能力審査を基礎として適格な

38) 上記資料によると,平成14年度に工事成績評定要領の公表を行う地方公共団 体は,595団体,18.3

%とされ,平成13年度の541団体,16.5 %に比べ僅かであ

るが増加している。

(20)

請負業者を選択してきた。しかし,今後は,市場により即ち保証市場により 選択されることになる。従って,ボンド制度における保証機関である損害保 険会社のボンド制度の運営の適否が公共工事の調達や履行に多大な影響を与 えることになる。その結果は,当然国民経済にも大きな影響を与えることに なる。損害保険会社としてはその期待に応えていく必要がある。是非,公共 工事の適正な運営において,その役割を円滑に果たしていくことを期待する。

⑵ 信用リスクにおける保険会社の役割

第2に,信用リスクにおける保険会社の役割について述べたい。今回は,

信用リスクについて全体的な話はできなかった。損害保険会社によっては,

継続的取引にかかる信用リスクに対して,取引信用保険などでそれなりに対 応している会社もある。しかし,業界全体としてみると全体の信用リスクの ごく一部にしか損害保険会社の機能を提供していない。それは,信用リスク を担保することは,損害保険会社の重要な役割であるという認識が希薄だと いうことである。時間が必要だとは思うが,先ず,その役割についてしっか り認識していくことを期待したい。

⑶ 人材育成の重要性

なぜこのような状況にあるか,その原因は損害保険会社の認識不足が原因 だと思うが,その理由の一つに審査要員の不足がある。多くの金融機関で共 通の認識であるが,この人材育成は容易なことではできない。損害保険会社 での審査能力には限度があるとして,信用リスクの担保というその役割を十 分に果たしていない現状にある。これを改善するためには,信用リスクの危 険度を的確に判断できる人材を育成する必要がある。この人材育成がある程 度できれば,損害保険会社は信用リスクを担保する保険商品を一層提供でき るようになる。

今後の保険業界の関係者の一層のご努力を期待して筆を置きたい。

(筆者は関東学園大学法学部教授)

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