検証的因子分析,LISRELそしてRAMの概要
その他のタイトル Hypothesis testing factor analysis, LISREL, and RAM
著者 清水 和秋
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 20
号 2
ページ 61‑86
発行年 1989‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10112/13348
検証的因子分析, LISREL そして RAM の概要
清 水
和 秋
Hypothesis testing factor analysis, LISREL, and RAM
Kazuaki SHIMIZU
Abstract
The purpose of this paper is to review the structural equation model using the terms of factor analysis, to discuss the distinction between the exploratory fac‑
tor analysis and the hypothesis testing factor analysis, to revjew the LISREL's basic formulations, and to demonstrate the potentiality of the RAM algebraic treatment for the s1;ructural equation modeling. The factor analysis using the maximum likelihood for the paramete̲r estimation is useful for the hypothe•sis testing sit!Jation, and is the̲ pa rt of the structural equation mode ls. The problem of factor inavriance is almost solved by this・hypothgsis testing meth‑
ods, especially using multi‑sample simultaneous analysis. Therefore, tradi‑
tfonal factor analysis and related methods using the least square method for the parameter estimation are recommended for the purpose to accumulate the knowledge in the specific research fields and to constract the hypothesis.
After representing the RAM logic, the simple algebraic treatment provided thi"s logic is applied to find out the parameter matrices of the LISREL model. The parameter matrices of the common factor model and the primary factor model with second order factors are also treated with the RAM logic,
Key words : structural equation model, hypothesis testing factor analysis, multi‑sample simultaneous analysis, factor invariance, LISREL, RAM.
抄 録
本稿では,構造方程式モデルを因子分析の観点からレビューし,探索的因子分析と仮説検証的因子 分析との差異を検討した。 さらに LISRELの基本式を整理し, そして構造方程式モデルに対する RAMの可能性を代数的に展開した。パラメータの最尤推定を採用している因子分析は,仮説検定を おこなう状況においては有用であり,この因子分析は構造方程式モデルの一つである。そして因子不 変性の問題は, この仮説検証の方法によって, 特に多群分析法を使用した場合, ほとんど解決され た。最小二乗法による伝統的因子分析や関連手法はそれぞれの研究分野における知識の蓄積と仮説の 構成には推奨される。 RAMの論理を紹介した後で, LISRELモデルのパラメータ行列を見出すた めに,この論理によって与えられる単純な代数展開が適用された。また,共通因子分析モデルや一次 因子と二次因子とから構成されるモデルのパラメータ行列も RAMで展開された。
キーワード:構造方程式モデル,仮説検証的因子分析,多群同時分析,因子不変性, LISREL,RAM
‑ 61 ‑
関西大学『社会学部紀要」第20巻第2号
は じ め に
多変量解析の一手法として位置づけられてきた因子分析は,共分散構造分析と呼ばれるより統 ー的な理論枠組みの中に吸収されることにより,大きな変革期を迎えている
(Bentler, 1986; Mulaik, 1986など参照)。伝統的に因子分析では, 変数と一次因子との階層的な関係を共通因 子分析モデルとして記述してきた。 この枠組みの中に収めることのできない複雑な関係性を,
Cattell (1966)
は変数と一次因子さらには二次因子との間における図式として提案していた。
伝統的な因子分析では解析することのできなかった彼の変数・一次因子・ニ次因子の複雑な関係 モデルは,共分散構造分析における構造方程式モデルにおいてはじめて,単なるアイデアから実際 に解析可能な重要な考え方であるとして,注目を浴びることになったのである
(McAdrle,1984)。 構造方程式の記述モデルとして最も一般性が高いと評価できる
Jack McArdleの
Reticula Action Model (RAM)は,この
Cattellの業績に因んで命名されたものである
(McArdle&McDonald, 1984; p. 249)
。なお, この
"reticula"とは, 「網状の」という意味であるが,変 数・一次因子・ニ次因子間のネットワークと解釈することができる
(McDonald,1985, p. 128)。 すなわち,伝統的な因子分析を利用して研究を進める中から出てきた仮説としての複雑なモデル が,従来の共通因子モデルの記述体系に収まらなくなったとしても,その新しいモデルを,ある がままの形で記述し,解析することが可能となったのである。このような方法論における新たな 展開を強調するために,ここでは変革期という言葉を使用した。
もう一つの理由は,因子分析を研究に利用する際には,構造方程式モデルの代表的プログラム である
LISRELを無視することができない状況に立ち到ったからである。
Psychometrika誌
や MultivariateBehavioral Research誌のような方法論の専門雑誌ばかりではなく,
Journal of Counseling Psychology, The Counseling Psychologist誌にカウンセリングに関わる研 究者のために方法論として構造方程式モデルの特集が掲載され,そして
ChildDevelopment誌 では特集が組まれるほどに,
LISRELの重要性が認識されてきている(例えば,
Connell& Ta‑naka, 1987 ; Fassinger, 1987 ; Kerwin, Howard, Maxwell
&
Borkowski, 1987 ; Tinsley &Tinsley, 1987
など)。このような特集において強調されることは,探索的因子分析
(exploratory factor analysis)と検証的因子分析
(confirmatoryfactor analysis)とを区分けする仮説検定
の意味であり, また多群標本の同時分析
(multi‑sampleanalysis)の有用性である。さらには
共分散構造分析が多特性一多方法
(multitrait‑multimethod)デークの解折に最も優れている
ことも強調されている(例えば,
Schmitt & Stults, 1986; Widaman, 1985)。 この
LISRELを.我が国においては,奥田・阿部
(1987)はマーケティング分野の研究における多面的・総合的
な道具として位置づけている。 また社会学分野でも, 宮野
(1987)や白倉 (1984, 1987, 1988)による
LISRELの詳細な紹介がある。その他にも青木
(1988),市川
(1986),土田
(1988)な
どによる紹介がある。
しかしながら,我が国の心理学の分野においては, この
LISRELが巻き起こした変革の重要 性が充分に認識されているとは言えない。そこで,本稿では,以上の問題に関してさらに詳細に 検討を加え, 応用研究をいくつか紹介したい。そしてコンビュータ・プログラムとしての
LIS‑ RELと記述モデルとしての
RAMの理論展開をおこない,これを因子分析モデルに当てはめて 説明をおこないたい。
1 . 潜 在 変 数 に よ る 構 造 方 程 式 モ デ ル に つ い て
ところで, この共分散構造分析
(covariancestructure analysis)には, 構造方程式モデル
(structure equation models)を構成することにより, デークとこのモデルとの適合度を検定 するところにその大きな特徴がある。ここでいうデークを相関行列とし,構造方程式を共通因子 分析モデルとして記述するならば,
Thurstone以来の伝統的な因子分析法となる。デークから
モデルを推定する方法として最小二乗法を採用した場合における問題点の一つは,統計的検定の 論理を導入することができなかったことである。 しかし, この共分散構造分析の中に包含され る最尤因子分析
(maximum likelihood factor analysis)による因子解の推定においては,
Wishart
分布の導入により, モデルのデータに対する適合度を検定することが可能となった。
この最尤推定法をアルゴリズムとして提案した
Joreskog(1967)以降の歴史に関しては,「因子 分析は燃えている」との書き出しで始まる丘本
(1987)の論文を参照されたい。彼は,因子分析 の歴史と推定方法のアルゴリズムの発展,さらには因子数の検定の問題を整理している。
このような,データとモデルとの適合性を求める問題はデータ解析において広くおこなわれて きたことである。しかしながら,異なる研究分野間では取り扱う変数に差異があり,また同一研 究分野においても解析の目的が異なれば,そこで採用されるモデルが異なることになる。特に研 究分野が異なれば,それぞれの分野における手法発展の歴史的経緯から,使用される用語にも差 異が生じ,そのこととあいまって同じような試みを独立して展開することにもなる。互いに影響 はあっても独立して発展してきた,心理測定学
(psychometrics)における因子分析,計量経済 学
(econometrics)における同時方程式モデル
(simultaneousequation models),そして生 物測定学
(biometrics)におけるパス解析
(pathanalysis)を,共分散構造分析の下に統一化 することが可能となった契機は,潜在変数
(latentvariables)の概念である
(Bentler,1980, 1986)。心理測定における信頼性理論を背景とする因子分析では, 潜在変数における真の分散と 誤差分散とを厳格に区別するモデルを展開してきた。これは,心理学的な構成概念
(constructs)を,収集された標本と測定において採用された変数から直接的に操作するのではなく,測定誤差
を排除した間接的に得られる潜在的な,そして信頼性の高い変数として操作することが,心理学
関西大学『社会学部紀要』第20巻第2号
では求められてきたからである。
この因子分析において潜在変数としての共通因子モデルを構成する方法は,いくつかの変数か ら構成される潜在変数をそのモデルの中に導入した潜在変数パス解析や計量経済学の同時方程式 モデルと, 数式表現における基本においては同じものといえる ( ( 1 ) , ( 2 ) , ( 3 ) 式参照)。社会学の 分野においては多重指標線型モデル
(multipleindicator linear structure models)もこれに 相当する(白倉,
1984など)。 これらをまとめて一般的には,潜在変数をもつ構造方程式モデル と呼ばれる。なお,構造方程式モデルヘの統一化の経緯を詳しく整理している
Bentler(1980, 1986, 1988)は , このモデルを, この分野における代表的な研究者の名前を連ねて
Joreskog‑ Keesling‑Wileyモデルと命名している。
ところで,この構造方程式モデルが,非常に一般性が高いのは,そのモデルの中に,構造モデ ルと測定モデルとを巧みに組み合わせているからである。測定モデルでは,測定変数を内生変数
(endogenous variables)と外生変数
(exogenousvariables)とに区分けをおこない,このそ れぞれの変数に対して共通因子モデルを立てている。構造モデルとは,内生変数と外生変数から それぞれの因子得点として得られる潜在変数における線型式のことである。すなわち,内生測定 変数から得られる内生潜在変数と外生測定変数から得られる外生潜在変数とを定義することによ って,複雑な関係性の記述を可能としたわけである。このモデルにおいて従来からの共通因子分 析モデルを記述しようとするならば,外生変数を除外して内生変数のみからなるモデルとして,
構造方程式モデルを組み換えることで対応することができる。この構造方程式モデルに関して は,「
LISRELのモデル式とパラメーク」の説明
(3.1節)を参照されたい。
実際に,デーク行列から得られた共分散行列に対して,潜在変数をもつ構造方程式モデルを適
合させる際には,その解を推定する方法として最尤法が使用される。現在の共分散構造分析の繁
栄は,
Joreskog(1967)の最尤法による因子分析プログラムの開発が一つの契機となったことは
先 に 述 べ た 。 彼 が 泌
rbomと共に開発した
LISREL(Analysis of Linear Structure Rela‑ tionships by the Method of Maximum Likelihoodー現在のバージョンは
VIである。)は,欧
米を中心に,因子分析の目的でまたパス解析のために幅広く使用されている。その他に共分散構
造分析の包括的なコンビューク・プログラムとしては,
Bentler(1985)の
EQSゃ
McDonald (1978, 1980)の
COSANが有名である。包括的であるがために,方程式のパラメークとプログ
ラムのパラメーク変数との関係を特定化することは,一般の利用者にとっては,困難な作業とな
る 。
LISRELのマニュアル
(Joreskog& Sorbom, 1986)に掲載されている例題を頼りに,パ
ラメークを設定するための訓練が要求されることになる。そこで,
Cuttance& Ecob (1987)は ,
LISRELの学習のためにプログラムと例題とを編集している。このように, 研究者が自らの問
題を
LISREL,EQSあるいは
COSANの各プログラムのパラメーク変数と対応させて展開す
ることが,複雑な問題を取り扱う場合にはさらに困難となろう。しかし,代数展開として一般的
なモデル記述の方法を提供した
ReticulaAction Model (RAM; Horn & McArdle, 1980 ;McArdle & McDonald, 1984)
は,共分散構造分析問題にさらなる可能性を与えたと言える
(Mulaik, 1986 ; McDonald, 1986)。この
RAMを紹介することも本稿の目的の一つである。
2.
因 子 分 析 と 構 造 方 程 式 モ デ ル に つ い て
このように共分散構造分析の発展は,因子分析の世界において,分布理論を基礎とする最尤推 定による仮説検定の統計的論理と,そしてある程度自由なモデル記述とを可能にしたということ ができよう。ここではこの新しい因子分析の可能性について検討を加えてみたい。
2. 1
検証的因子分析について
まずここでは,
"confirmatory factor analysis"を先ほどは'「検証的因子分析」と訳したこ とから検討をはじめてみたい。従来この
"confirmatory"は「確認的」と訳してきた(例えば,
清水・辻岡,
1981;辻岡•清水・柴田,
1979など)。この形容詞は探索的
(exploratory)因子分 析と方法論上で区別をおこなうために
Tucker(1955)が初めて使ったものである
(Bentler, 1986)。
Tuckerは ,
Thurstone(1947)の因子負荷行列における単純構造の客観的な定義を提案 することを目的としてこのような用語の使い分けをおこなったのである。彼の方法は,
Mosier (1939)以来の
procrustes法とも呼ばれる複数標本間における仮説的な因子負荷行列と当該因子 負荷量との変換問題であった。そして因子得点の適合性を問題とはしていても清水・辻岡
(1981)や清水・辻岡・柴田
(1979)の研究はこの流れにあったといえる。これに対して,モデルとデー タとの適合度の検定を方法論の根幹とする共分散構造分析をア)レゴリズムとして確立した
Jores‑ kog (1969, 1971)も ,
Mosier以来の因子回転として仮説に迫る方法とは統計理論が異なるに
もかかわらず,彼の提案した方法論に
"confirmatory"という言葉を与えた。このため,同一の 形容詞を持つ二つの方法論の流れが存在することになった。
Horn (1961)
や
Humphreys,llgen, McGrath & Montanelli (1969)は ,
procrustes法は 研究者を誤った方向へ導く場合のあることを報告している。しかし,この二つの方法をシミュレ ーション・データを使用して比較研究をおこなった
Acito,Anderson & Engledow (1980)は , 次のような結論を下している。すなわち,仮説的な因子行列を構成するための情報が充分には蓄 積されていない段階では,
target分析(彼らは
procrustes法をこのように表現している)を 推奨し, データ構造についての詳細な理解がある場合には
Joreskogの方法を推奨している。
また,
Bieber& Meredith (1986)は ,
LISRELによる分析の前段階として知識を獲得するた めの方法として,因子回転による方法の存在意義を主張し,複数の縦断的なデータに対する彼ら の因子回転方法を探索的なものと位置づけている。
ところでこのように,確認的と呼ばれる方法論が発展してきた背景には,当該研究分野におい
‑ 6
関西大学『社会学部紀要」第20巻第2号
て共有される知識が因子分析的研究から蓄積されてきたことが想像できよう。例えば,
Cattell, Eysenck, Guilfordや
Thurstoneらの研究者達は, 能力やパーソナリティあるいは職業興味 などの各種の研究領域における基本的な枠組みを追求する手段として,因子分析の理論開発をお こなうと同時に,それぞれの分野において因子分析によって得られた結果から,その研究の成果 としての心理諸テストを公表している。彼らが,それぞれの領域において基本的な枠組みを追求 した手続は,探索的な段階の方法であった。これに対して,次の研究段階においては,このよう な先達による各研究領域での枠組みの探究とその成果としての心理テストが入手可能なわけであ り,充分な研究累積の上に立って,この成果をある種の仮説として,新たなデータの上で,仮説 を検証することが次の問題となってくるわけである。なお,未だ充分な研究成果の蓄積のない研 究途上の分野では,探索的な方法論が要請されることは当然である。
しかしここで注意しなければならないことは,因子分析と主成分分析とを厳格に峻別すること である。
Mulaik(1986, 1988)が強調するように, 主成分分析から得られた負荷行列は観測変数群の特殊な線型結合であって,真の成分からなる潜在変数としての因子を取り扱うのではない ということである。因子の不確定性
(indeterminacy)に関する議論の中で,
Steiger& Schone‑ mann (1978)や Schonemann& Steiger (1976)は共通因子分析よりはモデル展開の容易な 主成分分析を推奨している。そして,
tenBerge (1986" ; 1986りのように,
Mosierの方法を 拡張することを試みる研究者の中には,現在も主成分分析によるモデルから仮説検証の方法を探 究する者もいる。しかし,仮説を検証する際には,この仮説と関係することが予想される変数を 付加して検討することも必要になろう。分析で使用された変数群の線型結合に,その変数群の特 殊性成分が混入することになる主成分分析モデルが,このような問題には不適切であることは,
Thurstone (1937)
も指摘していたことである。さらに,交差妥当化の手続きでも,因子分析の 方が主成分分析よりもよい結果が得られる(例えば,
Kenny (1979)参照)。このように,仮説を探索する際にも, モデルとして共通因子分析モデルを採用する必要があることが明らかであ
る 。
このように検討してみると,われわれが因子分析的手法を使用する際には,探索的な目的をも って各種の手法を利用する場合と,仮説検証的な目的で各種の手法を使用する場合の二つがある といえよう。
Mulaik(1988)が強調するように, 研究者はこれらの目的と分析方法とを使い分 ける必要がある。そこで,
Nesselroade & Baltes (1984)が提案するように,研究目的を探索的なものと仮説検証的なものとに分けると同時に,分析方法も探索的な方法と統計理論を背景と する仮説検証的な方法とに区分けすることが,現状の混乱を解決することになるであろう。その 意味で本稿では,確認的という
"confirmatory"の訳語を使用しなかったわけである。
この方法論上の区分をさらに明確にすることを目的として,
Hattie & Fraser (1988)や
Hertzog (in press)は,仮説検証形の
Joreskogのモデルを,解の推定において因子パターン,
因子の分散・共分散そして独自性分散に制約されたパラメータを設定することから,制約のある
方法
(restrictedanalysis)と呼んでいる。 この制約の内容は次の章を参照してもらうこととし てここでは,従来の伝統的な因子分析,そして最小二乗法を基礎とする
procrustes法では,少 なくとも仮説パクーンにおけるゼロ要素と完全に対応する推定解を得るための制約を設定するこ とができなかったことを指摘しておく(例えば,
Joreskog(1966)参照)。
2.2
因子パクーン,因子の分散・共分散そして独自性に対する制約としての仮説
次に検討したいことがらは,因子分析における仮説の内容である。因子分析から得られた情報 には,因子の数,因子負荷の値,因子間の分散・共分散(標準化した場合には因子間相関)そし て共通性(逆に考えれば独自性)がある。この中でも最も重要なものは因子数である。因子の数 が異なればモデルそのものを同定することはまったくできないことになる。この因子数を検定す る方法は,最尤推定を前提とすれば,が検定や赤池の情報基準量
(AIC;Akaike, 1987など参 照)などがある。統計パッケージの
SAS(1985)では
4種類の方法が提供されており,
AICの 評価は高い(丘本,
1987;Tanaka, 1987など)。しかしながら,いまだ完全な方法はない。
因子数を同ーとするならば,次に検討しなければならないことは因子負荷行列(因子パターン)
である。
Thurstone(1947)は単純構造
(simplestructure)という形で仮説的因子パターンを 表現したにもかかわらず,彼の時代ではこれを検証する方法がなかった
(Hertzog,in press)。 この単純構造は,探索段階の因子の解釈においても採用される原理である。高い負荷を示す変数 に注目し,低い負荷を示す変数は近似的に零負荷として,因子の解釈をおこなうことになる(例 えば,
McDonald(1985)参照
p.83)。この解釈の結果の不変性を確証するためには,この単純 構造を仮説パクーンとして,新たな標本から得られるデークの上で検証することが必要となる。
この因子分析から得られる因子パターン,因子の分散・共分散そして独自性分散の各行列を利 用して, 標本間の緻密な比較のための卓越したアイデアを提供したのは
Joreskog(1971)であ り , また
Sorbom(1974)である。 この
Joreskog‑Sorbomの多群同時分析
(multi‑sample analysis)では,複数の標本から得られたデータを同時に共通因子分析のモデルの上で比較しか つ検定することができる。
Alwin& Jackson (1981), Cunningham (1982),あるいは
LISRELのマニュアルなどにおいて整理されていることを利用してこの方法を説明すると,まず最初のス テップは, 「標本間の共分散行列が等しい」という帰無仮説を, 全標本から得られるが値によ って棄却することである。この検定は,研究対象となった標本間において不変な因子構造と,測 定の等価性
(equality)の性質とを明らかにするための出発点である。
この因子の不変性と測定の等価性とを整理した
Labouvie(1980), Meredith (1964), Rock, Werts&
Flaugher (1978)や
Schaie& Hertzog (1985)あるいは
Schulenberg,Shimizu, Vondracek & Hostetler (1988)に従ってこの問題をさらに検討していく。仮説因子パクーン が存在し,これを研究対象である複数標本に同時に適用することによって,その仮説パターンと 全体としての標本との適合度を検討する際には,次の
4種類のモデルを想定することができる。
‑ 67 ‑
関西大学『社会学部紀要』第20巻第2号
最初のモデルは,ゼロ負荷はすべての標本において同一の値として拘束
(constrain)し,顕著な
(salient)負荷に関してはそれぞれの標本において自由にそれぞれの値を推定させるものである。
このモデルは,
Horn,McArdle & Mason (1983)の布置的不変性
(configuralinvariance)とも呼ばれる。すなわち,仮説において布置として顕著な負荷を示した変数が,各標本において ゼロではない値として推定されるわけである。そしてその推定値は,それぞれの標本において異 なることになる。このため,このモデルからは,因子不変性の最低条件が得られ,その意味では
Thurstone (1947)の負荷パターン不変性の弱い場合に相当する。
次のモデルは,
Thurstone(1947)の強い条件での因子不変性に相当するものであり,仮説に おけるゼロ負荷と顕著な負荷の各変数を,各標本において同一の値として推定するための拘束を おこなう。これはより厳格な測定不変性
(metricinvariance)を検証するモデルといえる。ま た各変数が標本間において同一の尺度単位であるかどうかを決定するものでもある
(Rocket al., 1978)。 しかし潜在変数としての真の得点の標本間での比較に関しては, この方法からは結 論を引き出すことはできない
(Labouvie(1980), Schaie & Hertzog (1985)参照)。
これに対して,真の得点を代表する因子得点の分散の等価性を検討するには,因子バターンと 因子の分散・共分散を,各標本において等しい値として推定するモデルが必要となる。なお,こ のモデルでは因子間の関係性も等価となることを付言しておく。さらにモデルとして厳格なもの は,因子バターン,因子の分散・共分散と独自性分散のすべてを,各標本において等しい値とし て推定するモデルである。このモデルからは,信頼性が等価であるかどうかの結論を得ることが できる。これらの組み合わせを応用して,
Sorbom(1974, 1982)は,標本間の因子得点の差異 を評価するための方法として次のようなモデルを検討している。すなわち,因子パターンと独自 性分散とを,標本間で同一の値として拘束することによって,因子の分散・共分散を各標本にお いて自由に推定させるモデルである。
このように因子分析における仮説は,因子バクーン,因子の分散・共分散,独自性分散におけ る制約されたバラメータ記述において実現されている。このような方法論の発展を踏まえて,
Mulaik (1986)