• 検索結果がありません。

「人 間 の安 全保 障」 と 「武 力行使 」 の交錯(1)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「人 間 の安 全保 障」 と 「武 力行使 」 の交錯(1)"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「 人 間 の安 全保 障」 と 「 武 力行使 」 の交錯(1)

1

〈 論 説 〉

「 人 間 の 安 全 保 障 」 と 「 武 力 行 使 」 の 交 錯(1)

一 国連体 制 の 試練 の時 代 にお け る国際 平 和 法秩 序 の模‑

中 山 雅 司

目 次 は じめに

1.安 全保 障概念 の変遷 と国連体 制 (1)安 全保 障の概念

(2)法 に よる武力 の規制 と国際 安全保 障 (3)国 連体制 にお ける 「 消極 的平 和」と 「 積

極 的平和 」

2.「 人 間 の安 全保 障」論 と 「 武力行使 」 (1>「 人 間の安全保 障」 の登場 とその概念 (2)「 人間 の安全保障」 と 「 武力行使」 をめ

ぐる立場

a.「 欠乏か らの 自由」 に比重 をお く立場 b.「 恐 怖か らの 自由」 に比重 をお く立場 (以上 、本号)

3.冷 戦 後 の武力 行使 の諸 実 行 と 「 人 間の安 全保 障」(以 下 、次号)

(1)「 平和 に対す る脅威 」概 念 の拡大 と公権 的武力 行使 の増 加

(2)人 道 的介 入 と入 間 の安全保 障 (3)国 際 テ ロ と人 間 の安 全保 障 (4)平 和構築 と人間 の安全 保 障

4.「 人間 の安全保 障」 と 「 武力行使 」 の結節 点

(1)人 間 の安 全保 障 の評価 と課 題 (2)単 独 行動 主義 の時代 と法 の支配 (3)国 連 体制 の課 題

おわ りに

は じめ に

1}

昨今 、安 全保 障 の概 念 は拡 散 の様相 をみせ て い る。 なかで も、 冷戦後 、 人 間 に対 す る様 々 な脅威 の発 生 とい う事態 を背景 に登場 した いわ ゆ る 「 人間 の安全 保 障」 の概 念 は、従 来 の伝 統 的 な安全保 障概 念 としての 「 国家 の安 全保 障 」 に 対 し、人 間 の視 点か ら安全 保 障 を とらえ直 そ う とす る新 た な安 全保 障 の視 座 を 提示 した点 にお いて 注 目を集 めて きた 。 それ は研究 対象 として学 問 的関 心 を喚 起 す る一 方で、 現実 の国際社会 にお け る価 値基 準 や 国家 を は じめ とす る諸 ア ク

ターの政策 決定 や行動 に も大 きな影 響 を及 ぼ して きた とい って よい。 さ らに、

「 人 間の安全保 障」 は、単 な る安 全保 障概 念 の拡 散 とい う問題 を超 えて 、 これ ま

(2)

で数世 紀 にわた って 国際社会 の枠 組 み として機 能 して きた ウエス トフ ァ リア体 制 の基 本原 理 で あ る国家主権 と内政不 干渉 の原 則 につ いて、再検 討 を迫 るもの

2)

で も あ る。 「 人 間 の安 全 保 障 」 につ い て は、 「 パ ラ ダ イ ム ・シ フ ト」 へ の 期 待 の 一 方 で 、後 述 す る よ うに そ の概 念 を め ぐ り評 価 が 分 か れ て い る こ と も確 か で あ る。 しか し、 少 な く と も国 際 秩 序 の再 考 を促 す 「 挑 戦 的 な」 概 念 で あ る こ とは 間 違 い な い 。

一 方 、 「人 間 の 安 全 保 障 」 の 登場 ・普 及 と時 を 同 じ く して 人 間 を脅 か す 脅 威 の 除 去 、 す な わ ち 「 人 間 の安 全 保 障 」 の た め に、 国 際 社 会 に お い て 武 力 行 使 が 行 わ れ る場 面 が 増 加 して い る。 こ こ に 「 人 間 の安 全 保 障 」 と 「 武 力 行 使 」 の 交 錯 が み られ る。 冷 戦 終 結 を 受 け た 国 連 安 全 保 障 理 事 会(以 下 、 安 保 理)の 活 性化 を 背 景 に 、安 保 理 に よ る 「 平 和 に対 す る脅 威 」 の認 定 機 会 が 飛 躍 的 に増 大 した 。 そ れ と同 時 に 「 平 和 に 対 す る脅 威 」 概 念 の 拡 大 が 冷 戦 後 の 国連(安 保 理)活 動 の特 徴 と して 指 摘 で き るが 、 そ の 多 くは 人 権 や 人 道 上 の 問 題 を契 機 とす る もの で あ る。 そ して 、 これ らの 脅 威 に 対 して 、 安 保 理 決 議 に よ る多 国籍 軍 等 へ の 授 権 とい う形 で 武 力 行 使 が行 わ れ る とい うパ タ.̲̲̲ンが 一 般 化 した 。

この よ うな 「 人 間 の安 全 保 障 」 の た め の 「 武 力 行 使 」 の許 容 性 を め ぐ る議 論 の典 型 と して あ げ られ るの が 、 い わ ゆ る 「 人 道 的 介 入 」 の 問題 で あ る。 国 内紛 争 の 多 発 とそ の 過 程 に お け る重 大 な人 道 上 の危 機 の 発 生 を契 機 とす る人 道 的 介 入 が 注 目 を集 め る よ う に な っ て きた の も、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 論 議 の 高 ま り と軌 を一 に して い る よ うに思 わ れ る。1999年 の ユ ー ゴス ラ ビ ア連 邦 コ ソ ボ 自治 州 の アル バ ニ ア系 住 民 に対 す る重 大 な 人権 侵 害 を きっ か け としたNATOに よ る空 爆 は、 人 道 的 介 入 論 議 を一 気 に 本 格 化 させ る事 件 で あ っ た 。 こ の時 は、 武 力 行 使 に あ た っ て 国連 が 回 避 され 、 明 確 な安 保 理 決 議 を 欠 く武 力 行 使 につ い て の批 判 が あ っ た 一 方 で 、 人 権 、 人 道 の た め の介 入 に 対 す る肯 定 的見 解 も他 方 で み られ た 。 こ う した動 きを み る と き、 「 人 間 の安 全 保 障 」 概 念 の浸 透 が 国 際 社 会 に お け

る人 権 ・人 道 意 識 の 高 ま り と相 ま っ て 、 国 家 主 権 へ の介 入 に正 当 性 を付 与 す る 役 割 を演 じて い る とい う側 面 が あ る よ うに思 われ る 。

と ころ で 、 い わ ゆ る 「9.11」 同時 多 発 テ ロ事 件 以 降 、 ア メ リカ に よ る単 独 行 動 主 義 が 一 層 加 速 して い る。 対 ア フガ ン報 復 攻 撃 や イ ラ ク戦 争 に み られ る よ

うに 、 テ ロや 大 量 破 壊 兵 器 とい う脅 威 の 除 去 や 独 裁 体 制 の 打 倒 を大 義 名 分 と し

(3)

「 人 間の安全保 障 」 と 「 武力 行使」 の交錯(1)

3

て 、 個 別 国 家 に よ る他 国 へ の 介 入 が い と も簡 単 に行 わ れ る よ うに な っ て い る。

武 力 行 使 の 敷 居 が 低 くな っ た こ とに伴 い 、 武 力 行 使 禁 止 規 範 を柱 とす る国 連 体 制 は大 き くi揺らいで い る。 そ れ とは反 対 に、 重 大 な人 道 上 の 危 機 が 存 在 し、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 を確 保 す るた め に武 力 介 入 が 求 め られ て い る状 況 が あ る に もか か わ らず 、 これ を 見 過 ご し不 介 入 主 義 を と る とい う武 力 介 入 の選 択 的 適 用 は、

武 力 行 使 へ の信 頼 性 を損 ね る結 果 とな っ て い る。1994年 、 ル ワ ン ダで 起 きた 大 量 虐 殺 に対 す る 国 際 社 会 の対 応 の遅 れ が 招 い た 悲 劇 は そ の 典 型 で あ る。 い ず れ にせ よ、 武 力 介 入 、 も し くは武 力 不 介 入 の 結 果 と して 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が 脅 か され る事 態 が あ る とす れ ば、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 に適 う武 力 行 使 と は い か な る もの で あ るの か が あ らた め て 問 わ れ な けれ ば な らな い。

い う まで もな く、 「 人 間 の安 全 保 障 」 を確 保 す る手段 は、 軍 事 力 に 限 られ る も の で は な い。 そ の理 念 に お い て は 、 非 軍 事 的 手 段 に こ そむ しろ親 和 性 が あ る と い え よ う。 しか し、 国 際 社 会 の 現 実 に お い て は 、 人 間 の安 全 を保 障 す るた め の 手 段 と して の軍 事 力 の役 割 を完 全 に否 定 す る こ とが で き な い こ とも事 実 で あ る。

とこ ろが 、 そ こに は武 力行 使 が誤 爆 や 新 た な難 民 の発 生 な ど 「 人 間 の 安 全 保 障 」 を脅 か す 事 態 を招 く とい う可 能 性 とジ レ ンマ が 常 に存 在 す る。 今 日の 国 際 社 会 に お い て 武 力 の 使 用 は、 人 間 を脅 威 か ら守 る た め の 手 段 と して の 地 位 を依 然 と

して 有 す る一 方 で 、 人 間 に対 す る脅 威 と も な り う る とい う点 で 両 刃 の 剣 な の で あ る。 しか し、 「 人 間 の安 全 保 障 」 と 「 武 力 行 使 」 の 交 錯 につ い て 、 これ ま で 十 分 な 問 題 の 整 理 が な され て い る とは言 い切 れ ず 、 そ の こ とが 武 力 行 使 の弛 緩 を 招 くひ とつ の要 因 に な っ て い る よ うに思 わ れ る。

本 稿 で は 、 この よ うな 問題 意識 に 立 ち 、 最 初 に安 全 保 障 の概i念 をふ ま え た 上

で 、 国 際 法 の観 点 か ら国 際社 会 に お け る戦 争 観 の 変 遷 と武 力 行 使 禁 止 規 範 を柱

とす る国連 に お け る安 全 保 障 シ ス テ ムの 確 立 につ い て概 観 す る。 っ ぎ に、 「 人 間

の 安 全 保 障 」 が登 場 した 背 景 と概 念 、 お よ び 「 人 問 の安 全 保 障 」 論 に お い て 武

力行 使 が どの よ うに位 置 づ け られ て い るの か につ い て検 討 す る。 そ の後 、 冷 戦

後 の 国連 お よ び 国 家 に よ る武 力 行 使 に関 す る諸 実 行 の な か で 、 そ れ らが 「 人 間

の安 全 保 障 」 の 問題 に どの よ う に対 処 し よ う とし、 また 武 力 行 使 禁 止 規 範 が ど

の よ うな挑 戦 を受 けて い るの か とい う問題 に つ い て検 討 す る。 最 後 に、 「 人 間 の

安 全 保 障 」 に適 う武 力 行 使 の 道 筋 を、 国 際 社 会 に お け る法 の 支 配 お よび 「 人 間

(4)

の安 全 保 障 」 の 担 い 手 と して の 国連 の課 題 とい う観 点 か ら探 る こ と にす る。

1.安 全 保 障 概 念 の 変 遷 と国 連 体 制

(1)安 全 保 障 の概 念

国 際 社 会 にお い て 安 全保 障(security)は いか な る意 味 に お い て理 解 され 、 ま た そ の 地 位 を与 え られ て きた の で あ ろ うか 。̲̲̲̲.般 に、 安 全 保 障 とは 、 国 家 の領 土保 全 と独 立 を外 国 の 武 力 に よっ て脅 か され な い よ う に保 障 す る こ と と定 義 さ

3}

れ る。 しか し、 従 来 は 「 国 防 」(nationaldefense)と い う用 語 が 一 般 的 に 用 い られ 、 安 全 保 障 とい う 言 葉 が 国 際 社 会 で 用 い ら れ る よ う に な っ た の は 比 較 的 新

4)

し く、第 一 次 世 界 大 戦 以 降 と され る。securityと い う言 葉 は ラ テ ン語 のsecuritas に 由 来 す る と さ れ る 。 も と も と 「 心 配 の な い 状 態 」 や 「そ の よ う な 状 態 を保 障 す る手 段 」 を指 し、 「 元 来 、 国 家 の 安 全 に と ど ま ら な い 、 とい う よ りそ れ と無 関

5}

係 な 、 広 が りの あ る言 葉 」 で あ る。 しか し、 「 安 全 保 障 」 が 国家 の 軍 事 的 防 衛 を 意 味 す る 「国 防 」 に代 わ っ て 用 い られ る よ うに な っ た 結 果 、 国家 が 外 国 に よ る 侵 略 か ら 自 国 を守 る こ と、 す な わ ち 国 家 の安 全 保 障 を指 す 言 葉 と して 一 般 に理 解 さ れ て きた の で あ る。

とこ ろで 、 「 安 全保 障 」 が 「 国 防 」 に代 わ って 使 わ れ る よ うに な っ た の は、 第 一 次 大 戦 後 の フ ラ ンス に よ る対 独 包 囲 網 と して の 多 国 間 同 盟 政 策 が 共 通 の 脅 威 に対 す る政 策 で あ っ た こ とか ら、 これ を 指 す に ふ さわ しい 言 葉 と して 「 国 防 」

6)

と区別 して 安 全 保 障 政 策 と呼 ん だ こ とに よ る とされ るが 、 た とえ複 数 国 間 に よ る安 全 保 障 政 策 で あ っ て も理 念 に お い て は 「国家 」 安 全 保 障 で あ っ た とい って よい 。 い ず れ にせ よ、 超 国 家 的 国 際 公 権 力 を 欠 い た ホ ッ ブズ 的 「自然(闘 争) 状 態 」 の も とに お か れ た 国 際 社 会 に あ っ て 、 安 全 保 障 問 題 は 国 家 に とっ て最 重

7)

要 の課 題 と して 位 置 づ け られ て きた 。 そ して 、 国 家 が 軍 事 力 を用 い て 自国 を守

g}

り、 戦 争 を行 う権 利 は、 国 家 主 権 の最 も基 本 的 な 属 性 の ひ とっ とされ た 。 国 際 社 会 が 主 権 国 家 体 制 を原 理 と して い る こ との 結 果 と して 、 国 際 政 治 は 「 安 全 保

 ラ

障 の政 治 学 」 で あ っ た し、 「(安全)欠 乏 の政 治 学)」 で あ った の で あ る。

この よ う な安 全 保 障 観 の も とに お い て 、 人 々 の 安 全 は 国 家 領 域 内 の 自 国 民 の

安 全 とい う形 で 各 国 家 の手 を通 じて保 障 され るべ き もの で あ る と考 え られ た 。

(5)

「 人 間 の 安 全 保 障 」 と 「武 力 行 使 」 の 交 錯(1)5

 の

す な わ ち 、 「 国 家 安 全 保 障 とは、 本 来 人 間 の 安 全 保 障 だ っ た 」 の で あ る。 ま た、

個 人 や 人 間 の権 利 とい って も国 家 の 生 存 や 権 利 を前 提 とす る もの で あ り、 その 点 に お い て 「 国 家 の 」 安 全 保 障 と 「 人 間 の 」 安 全 保 障 は相 対 立 す る概 念 で は な い 。 む しろ国 家 の安 全 保 障 が 「 入 間 の安 全 保 障 」 の た め の 必 要 条 件 と も な る。

しか し、 国 家 が 人 間 の 安 全 保 障 を実 現 しえ な い場 合 や 、 か え っ て 脅 か す 場 合 、 また 国 家 の 安 全 保 障 と 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が 一 致 しな い場 合 が 問 題 とな る。 こ こ に国 家 の 安 全 保 障 と区 別 して 「 人 間 の安 全 保 障 」 が 説 か れ る余 地 が 生 じ る こ とに な る。

(2)法 に よ る武 力 の規 制 と国 際 安 全 保 障

と こ ろで 、 国 際 社 会 は国 家 主 権 の 属 性 と して の 戦 争 や 武 力 行 使 、 お よ び 安 全 保 障 の 問 題 に つ い て どの よ うに対 処 し よ う と して きた の で あ ろ うか 。 主 権 国 家 間 の 関 係 を規 律 す る法 と して近 代 国 際 社 会 の成 立 と と も に誕 生 、 発 展 して きた 国 際 法 は、 武 力 の 行 使 に法 的 な 観 点 か ら ア プ ロ ー チ を試 み る と と も に、 国 際 機 構 の創 設 を通 じて 国 際 社 会 全 体 の安 全 保 障 体 制 の確 立 を はか ろ う と して き た 。

国 際 法 に よ る戦 争 へ の関 与 は、 戦 争 に訴 え る こ と 自体 の規 制(jusadbellum)

と戦 争 中 にお け る戦 争 行 為 な どの 具 体 的 行 為 の 規 制(jusinbelly)の 二 つ の側 面 か らな され て き た 。 この うち 、 前 者 に つ い て は、 戦 争 観 の 問題 と して 、 これ まで 大 き く三 つ の 段 階 を た ど って 変 遷 して きた 。 最 初 に登 場 した の は 、 戦 争 を 正 当 な 戦 争 と不 当 な戦 争 に 区別 し、 正 当 な 原 因 に基 づ く戦 争 だ け を合 法 と認 め る正 戦 論 で あ る。 この考 え方 は ス コ ラ的正 戦 論 を経 て 中世 の 神 学 者 に伝 え られ 、 その 後 グ ロテ ィ ウス を初 め とす る 自然 法 観 念 を軸 と した 近 世 の 国 際 法 学 者 た ち

I1)

に受 け継 が れ た 。 しか し、 正 戦 論 は 、 正 当 な戦 争 か 不 当 な戦 争 か の判 断 を誰 が 行 うの か とい う問題 、 す な わ ち 客 観 的 な 判 定権 者 を 欠 く分 権 的 な 主 権 国 家 体 制

とい う国 際 社 会 の構 造 的 な壁 に突 き 当 た り、 や が て 影a力 を失 っ て い っ た 。 その 後 、18世 紀 後 半 か ら19世 紀 にか けて 国際 社 会 に お いて 支 配 的 とな った 戦

I2)

争 観 が い わ ゆ る無 差 別 戦 争 観 で あ る。 これ は、 戦 争 の 正 ・不 正 を 問 題 とせ ず 、 す べ て の 交 戦 国 は無 差 別 に対 等 の地 位 に立 つ もの と して戦 争 を と ら え よ う とす

る考 え方 で あ る。 無 差 別 戦 争 観 に よれ ば 、 戦 争 を始 め る こ との 可 否(jusad

bellum)は 国 際 法 の 対 象 外 とされ 、 国 際 法 は戦 争 開 始 の手 続 きや 戦 争 遂 行 の 手

(6)

段 ・方 法 の規 制Qusinbello)の み に 関 与 す る もの と され た。 そ して 、 この 無 差 別 戦 争 観 の も とに お い て 、 国 家 の 安 全 保 障 は戦 争 とい う手 段 に よっ て 担 保 さ れ 、 国 際 社 会 の 安 定 は 同 盟 国 間 の 勢 力 均 衡 の 上 に か ろ う じて 保 た れ る もの と さ

れ た 。

しか し、20世 紀 初 頭 に勃 発 した 第 一 次 世 界 大 戦 は戦 争 観 を大 き く転 換 させ る こ と とな り、 戦 後 創 設 され た 国 際連 盟 の も とで 戦 争 の 違 法 化 が 実 現 した 。 国 際 連 盟 の も とで の戦 争 の違 法 化 は、 た しか に不 十 分 な も ので あ っ た が 、 戦 争 と平 和 の 二 元 構 造 に よ っ て特 徴 づ け られ て い た近 代 国 際 法 か ら現 代 国 際 法 へ の構 造 転 換 を意 味 す る もの で あ り、 国 際 法 全 般 に 大 きな 影 響 を及 ぼ す もの で あ っ た 。

ユ3)

ま さ に、 「 現 在 に お け る国際 法 の構 造 転換 は、 戦 争 観 念 の転 換 を中軸 にす る もの 」 で あ っ た 。 そ して 、 戦 争 違 法 化 の も とで い わ ゆ る集 団 安 全 保 障 体 制 が 構 想 され

14)

た 。 国 際 連 盟 の設 立 を提 唱 した ウ ィル ソ ンの 自 由主 義 的 な 国 際 秩 序 構 想 で は 、 国 際 社 会 は 「旧大 陸 」 の 原 子 論 的 な勢 力 均 衡 に基 づ く政 治 か ら脱 却 し、 「ひ とつ の全 体 」 と して 安 全(safety)を 確 保 す る規 則 や制 度 が 設 け られ るべ き もの とさ れ た が 、 そ の 結 実 が 集 団 安 全 保 障 シ ス テ ム で あ った 。 これ は 「 国 際 」 安 全 保 障 の構 想 と して 、 そ の後 の 国連 に お い て よ り強 力 な 集 団 安 全 保 障体 制 と して 継 承

15)

され 、 発 展 を遂 げ る こ とに な る。

国 際 連 盟 の も とに お け る戦 争 の 違 法化 と集 団 安 全 保 障 体 制 が 第 二 次 世 界 大 戦 を阻 止 で き な か った こ とへ の 反 省 か ら、 戦 後 の 国 連 構 想 が よ り強 力 な 国 際 安 全 保 障 体 制 を 目指 した の は必 然 的 な流 れ で あ っ た 。 国 連 は、 禁 止 の 対 象 を 「 戦 争 」

に限 らず 、 「 武 力 の行 使 」、 さ ら に は 「 武 力 に よ る威 嚇 」 に まで 拡 大 して そ の違 法 化 を徹 底 す る と とも に(国 連 憲 章(以 下 、 憲 章)第2条4項)、 「 国 際 の 平 和 と安 全 の 維 持 」 に関 す る主 要 な 責 任 を安 保 理 に負 わせ(第24条 〉、 そ の 決 定 が 加 盟 国 に対 して法 的 拘 束 力 を もつ とす る こ とに よ って(第25条)安 保 理 に集 権 化 され た 集 団 安 全 保 障 体 制 を確 立 した 。 そ して 、 集 団 安 全 保 障 に基 づ く強 制 措

置 と して の 軍 事 力 行 使(第42条)と 自衛 権 に基 づ く場 合 を除 い て は(第51条)、

武 力 に よ る威 嚇 お よび 武 力 の行 使 は全 面 的 に禁 止 され た 。

(3)国 連 体 制 に お け る 「 消 極 的 平 和 」 と 「 積 極 的 平 和 」

と こ ろで 、 国 際連 盟 と国 際 連 合 とい う20世 紀 に誕 生 した 二 つ の普 遍 的 な 国 際

(7)

「 人 間の安全 保 障」 と 「 武力 行使 」 の交錯(1) 7

機 構 が戦 争 の 結 果 生 まれ た とい う事 実 は、 経 験 的 産 物 と して の 武 力 行 使 規 制 の もつ 歴 史 的重 み 、 お よ び 国 連 の 志 向 す る安 全 保 障 の 性 格 づ け とい う点 の 二 点 に お い て 重 要 で あ る と思 わ れ る。 これ らに 関 連 し、 国 連 体 制 に お い て 「 平 和 」 が どの よ うに構 想 され て い るの か に つ いて 考 え て み た い 。 国 際 連 盟 お よび 国 連 の 誕 生 は、 「 戦 争 が 国 際 機 構 を生 む」 とい う国 際 機 構 生 成 の 「 法 則 」 を ま さに体 現 す る も の で あ っ た が 、 具 体 的 な大 戦 の 終 結 を契 機 と して つ くられ た 両 機 構 は、

戦 争 の 抑 止 や 廃 絶 よ り も主 と して 戦 後 世 界 管 理 の 必 要 か ら生 ま れ た 「 大 構 想 」

I6)

(グ ラ ン ド ・デ ザ イ ン)型 の 機 構 で あ っ た とい え る。 な か で も国 連 は、 《戦 勝 国

7}

が 築 い た 秩 序 の戦 勝 国 自身 に よ る維 持 》 とい う性 格 を色 濃 く帯 び て い た 。 この 国 連 誕 生 に 由来 す る性 格 づ け は、 「 平 和 と安 全 の 維 持 」(憲 章 第1条1項)が 国 連 の第 一 の 目 的 と して 掲 げ られ て い る こ とに端 的 に表 現 され て い るが 、 重 要 な 点 は、 そ れ が 国連 体 制 に お け る 「 平 和 」 の 中 身 や 安 保 理 を通 じた そ の実 現 過 程

に大 き な影 響 力 を及 ぼ して い る とい う点 で あ る。

こ こで 「 平 和 」 の概 念 をガ ル トゥ ン グ の 定 義 に な ら って 「 暴 力 の 不 在 」 で あ る と定 義 し、 暴 力 を戦 争 な どの 「 直 接 的 暴 力 」 と、 飢 餓 や 貧 困 な ど社 会 の 構 造 に組 み込 まれ 人 問 の可 能 性 を損 な う 「 構 造 的 暴 力 」 に分 け 、 直 接 的暴 力 の 存 在 しな い状 態 を 「 消 極 的 平 和 」、 構 造 的 暴 力 が存 在 しな い状 態 を 「 積極 的平 和 」 と

1$)

す る 。 そ うす る と、 こ こで い う 「 積 極 的 平 和 」 は 、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 と き わ め

19)

て近 い概 念 とな る。 そ れ で は、 これ ら二 つ の 「 平 和 」 につ い て 国 連 は ど うい う 立 場 を とっ て い る の で あ ろ うか 。 憲 章 第1条1項 に 規 定 さ れ て い る 「 国 際 の 平 和 と安 全 の 維 持 」 に お け る 「 平 和 」 は、 「 国 際 的 」 平 和 で あ り、 少 な くと も国 連 発 足 当初 に お い て は ドイ ツや 日本 な どの 「 旧 敵 国 」 に よ る侵 略 の再 発 を い か に 阻止 す るか とい う 「 消 極 的 平 和 」 を意 味 す る もの で あ った とい う こ とが で き る。

す な わ ち、 「 当 時 、 前 提 とされ て い た の は、 国 際 社 会 へ の主 要 な脅 威 は 国 家 間 の

武 力 衝 突 に あ る とす る見 方 」 で あ っ た 。 そ の も とで 、 憲 章 は 国 際 紛 争 の 平 和 的 解 決 を義 務 づ け(第2条3項)、 第6章 で 詳 細 な紛 争 解 決 手 続 を用 意 す る と と も に、 武 力 行 使 違 法 化 の も とで 「 平 和 に対 す る脅 威 」、 「 平 和 の破 壊 」、 「 侵 略 行 為 」 に対 して は安 保 理 の 決 定 を通 じた集 団 的 措 置 を予 定 した(第7章)。

他 方、 国連 は、 「 積 極 的平 和 」 を射 程 にお い て い な か った わ けで は決 して な い 。

国 連 の 目的 と して 「自決 の 原 則 」 を掲 げ、 植 民 地 独 立 を積 極 的 に促 す と と も に

(8)

(第1条2項)、 経 済 的 、 社 会 的 、 文 化 的 、 人 道 的 国 際 問 題 の解 決 と人 権 の 尊 重 の た め の 国 際協 力 を うた い(第1条3項)、 そ の た め の様 々 な活 動 を行 って きて い る。 これ ら 「 積 極 的 平 和 」 は、 お もに 安 保 理 以 外 の諸 機 関 に よ っ て担 わ れ て きた 。 た だ し、 「 消 極 的 平 和 」 が 守 ろ う と して い た秩 序 の 内実 、 す な わ ち社 会 正 義 や 平 等 の実 現 とい っ た 「 積 極 的 平 和 」 は 、1960年 代 を 中心 とす る植 民 地 の独 立 とそ れ に伴 う途 上 国 の 国 連 へ の加 盟 を背 景 とす る総 会 の 台 頭 に よっ て 初 め て

zz)

再 検 討 され る こ とに な った 点 に は留 意 す べ きで あ る。 そ して 、 「 武 力 行 使 」 の 問 題 との 関連 で よ り重 要 な点 は 、 「 積 極 的 平 和 」 実 現 の た め の武 力行 使 は 国家 主 権 お よび 国 内 管 轄 事 項 不 干 渉 原 則 との 関 係 で 制 限 され て きた こ とで あ る。 憲 章 は 国 連 に よ る他 国 へ の干 渉 を禁 止 し、 「 消 極 的平 和 」 の た め の 武力 行 使 、 す な わ ち 第7章 に基 づ く強 制 措 置 の み を 不 干 渉 原 則 の例 外 と して い るか らで あ る(第2 条7項)。 しか し、 この こ とは第7章 に基 づ く強 制措 置 として とられ る限 りは 「 積 極 的平 和 」 の た め の武 力 行 使 も可 能 で あ る こ とを も意 味 す る。 す な わ ち、 冷 戦 後 増 加 した 「 平 和 に対 す る脅 威 」 概 念 の 拡 大 を 通 じた 国家 主 権 へ の介 入 の 問 題 で あ る。 これ に つ い て は、 後 に述 べ る。

2.「 人 間 の 安 全 保 障 」 論 と 「 武 力行 使 」

(1)「 人 間 の 安全 保 障 」 の 登 場 とそ の概 念

っ ぎ に、 「 人 間 の安 全 保 障 」 論 に お い て 「 武 力 」 を め ぐる問題 が どの よ う に認

識 され 、 位 置 づ け られ て い るの か につ い て=検討 す る。 その 前 提 と して 、 まず 国

家 の 安 全 保 障 との対 比 に お い て 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が 登 場 した 背 景 とそ の概 念

につ い て 概 観 して お きた い。 伝 統 的 な安 全 保 障 概 念 が 国 家 の 安 全 保 障 と して形

成 され 、 発 展 して きた こ とに つ い て は先 に述 べ た通 りで あ るが 、 「 人 間 の安 全 保

障 」 を生 み 出 す 契 機 とな っ た の は冷 戦 の 終 結 で あ っ た 。 具 体 的 に は、 国 連 開 発

計 画(UNDP)が1994年 の 『 人 間 開発 報 告 書 』 に お いて 「 人 間 の安 全 保 障 」 の

概 念 を打 ち 出 して 以 来 、 世 界 的 に普 及 す る と こ ろ とな っ た 。 同報 告 書 は 、安 全

保 障 の 概 念 が長 い 間 、 外 部 の 侵 略 か ら領 土 を守 る こ とや 、 外 交 政 策 を通 じて 国

家 利 益 を守 る こ と、 核 の ホ ロ コー ス トか ら地 球 を救 う安 全 保 障 とい った 形 で 狭

義 に とらえ られ て きた と した うえで、 国家 の安 全 保 障 とい う狭 義 の概 念 か ら 「 人

(9)

「 人 間 の 安 全 保 障 」 と 「 武 力 行 使 」 の 交 錯(1)9

22}

間 の 安 全 保 障 」 とい う包 括 的 な概 念 へ の 移 行 を訴 え る。

この よ うな 認 識 の 変 化 を もた ら した背 景 と して 、 冷 戦 期 に お け る国 際 環 境 の 変 動 を指 摘 す る こ とが で き る。 ひ とつ は 、 第 二 次 大 戦 後 の 人 権 規 範 の 成 熟 で あ

り、 も うひ とつ は、 植 民 地 の独 立 で あ る。 と くに後 者 に つ い て は 、 植 民 地 地 域 が戦 後 の 急 速 な独 立 の過 程 に お い て 、 自立 能 力 が 高 ま らな い ま ま に法 的形 式 と

して の主 権 を獲 得 した結 果 、 主 権 国 家 シ ス テ ム の 普 遍 化 の 一 方 で 開 発 援 助 の 恒

24)

常 化 を も た ら した こ とが 指 摘 さ れ て い る。 同 時 に、 米 ソ両 陣 営 に よ る冷 戦 体 制 の も とで 、 米 ソ は南 の諸 国 を 自陣 営 に取 り込 む た め に戦 略 的援 助 を行 っ た 結 果 、 膨 大 な通 常 兵 器 が 移 転 ・拡 散 し、 軍 事 力 に よ っ て 政 権 が 維 持 され る一 方 で 、 人

25)

間 の基 本 的 ニ ー ズや 安 全 を保 障 す るた め の 社 会 的 な 支 えが 不 十 分 で あ り続 け た 。 冷 戦 の終 結 に よ って 南 の 国 々 に対 す る関 心 を失 った 米 ソ両 国 は、 援 助 を 中止 し て これ らの 国 々 か ら手 を 引 き、 破 綻 国家 とな っ た り統 治 能 力 を十 分 に もた な い 途 上 国 の 国 内 で 、 残 され た大 量 の 武 器 を 手 に国 内 紛 争 が 頻 発 す る とい う状 況 が 現 出 した の で あ る。

UNDPに よ る 「 人 間 の 安 全 保 障 」 の提 唱 は、 この よ う な 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が脅 か され て い る現 状 を前 に、 南 の 国 々 の社 会 発 展 や 開 発 の重 要 性 を 説 い た も の で あ っ た 。 人 間 の 安 全 保 障 の 考 え方 は 、 そ の 後 、 国 家(政 府)や 国 連 、 研 究 者 、 市 民 ・NGOな ど様 々 な レベ ル にお け る議 論 や 実 践 を通 じて 発 展 を遂 げ た 。 2000年9月 に 開催 され た 国連 ミレニ ァ ム ・サ ミ ッ トで は、 ア ナ ン国 連 事 務 総 長 が 人 間 中 心 の取 り組 み の 必 要 性 に つ いて 報 告 、 そ れ を 受 け た 日本 の 呼 び か け に よっ て2001年1月 、 緒 方 貞子 氏(前 国連 難i民高 等 弁 務 官)と ア マ ル テ イ ア ・セ ン氏(ケ ン ブ リ ッジ 大 学 トリニ テ ィー カ レ ッジ 学 長)を 共 同 議 長 とす る 「 人 間 の安 全 保 障 委 員 会 」 の創 設 が 合 意 さ れ た 。 そ して 、2003年5月 、 委 員 会 は 「 人

間 の安 全保 障委 員会 」報 告書 をアナ ン国連 事務 総長 に提 出 した。

同委 員会 は、 「 人 問の安全保 障」 を 「 人 聞 の生 に とってか けが えのな い中枢部

27)

分 を守 り、 す べ て の 人 の 自 由 と可 能 性 を実 現 す る こ と」 と定 義 す る。 そ して 、 伝 統 的 な 国 家 の安 全 保 障 が 「 軍 事 力 に よ り軍 事 力 か ら国 境 を守 る こ と」 で あ る の に対 し、 「 人 間 の安 全 保 障 」 は、 外 敵 か らの 攻 撃 よ りもむ しろ、 多 様 な脅 威 か

28)

ら人 々 を保 護 す る こ とに焦 点 を 当 て る もの で あ る とす る。 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が

想 定 す る脅 威 と して は、 環 境 汚 染、 国 際 テ ロ、 大 規 模 な人 口の移 動 、HIV/エ イ

(10)

ズ を は じめ とす る感 染 症 、 長 期 に わ た る抑 圧 や 困窮 まで を視 野 に入 れ て い る。

さ らに、担 い手 と して 、国家 の み な らず 国 際機 関 、地 域 機 関、非 政 府 機 関(NGO)、

30)

市 民 社 会 な ど様 々 な 主 体 の役 割 が 期 待 され て い る。 しか し、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 と国 家 の安 全 保 障 は、 相 互 に補 い あ い依 存 して い る の で あ っ て、 「 人 間 の安 全 保 障 」 な しに 国 家 の 安 全 保 障 を実 現 す る こ とはで き な い し、 そ の 逆 も同 様 で あ る

31)

こ とに留 意 す る必 要 が あ る とす る。

「 人 間 の安 全 保 障 」 に は 二 っ の主 要 な要 素 が あ る。 す な わ ち、 「恐 怖 か らの 自 由」 と 「 欠 乏 か らの 自 由」 で あ る。 「 人 間 の 安 全 保 障 」 が 対 象 とす る脅 威 は、 ひ とつ に は 戦 争 や 内戦 な どの 紛 争 、 犯 罪 、 テ ロ、 国 内 支 配 集 団 に よ る大 規 模 人 権 侵 害 で あ り、 これ ら暴 力 か らの解 放 が 「 恐 怖 か らの 自 由 」 で あ る。 ま た 、 飢 餓 や 貧 困 、 疾 病 、 環 境 破 壊 な ど構 造 的 な 社 会 的 経 済 的 問 題 か らの 解 放 が 「 欠 乏 か らの 自由 」 に位 置 づ け られ る。 こ の 「 恐 怖 か らの 自 由 」 と 「 欠 乏 か らの 自 由」

32)

に よ る類 型 化 は、1994年 のUNDPの 報 告 書 の 中で す で に示 され て い るが 、 その 後 一 般 化 し、 先 に述 べ た2000年9月 、 アナ ン国連 事務 総 長 に よっ て 国連 ミ レニ

33}34)

ア ム ・サ ミ ッ トに 出 され た報 告 書 や 「 人 間 の 安 全 保 障 委 員 会 」報 告 書 を は じ め と して 、 各 国 の外 交 政 策 の な か で も用 い られ て い る。 い わ ば 「 恐 怖 か らの 自 由」

は安 全 保 障 デ ィ ス コ ー ス に お け る課 題 で あ り、 「 欠 乏 か らの 自 由」 は 開 発 デ ィス

35)

コ ー ス に お け る 課 題 で あ る と い っ て よ い 。

(2)「 人 間 の 安 全 保 障 」 と 「 武 力 行 使 」 を め ぐ る立 場

と ころ で 、 「 人 間 の安 全 保 障」 に お け る 「 恐 怖 か らの 自由 」 と 「 欠 乏 か らの 自 由」 は 、 そ れ ぞ れ が 別 個 に独 立 した もの で は な く、 両 者 は相 互 に 関 連 し合 う も の で あ る。 ア ナ ン国 連 事 務 総 長 も ミ レニ ア ム ・サ ミ ッ トに提 出 した報 告 書 の な か で 、 「 欠 乏 か らの 自由 、 恐 怖 か らの 自由 と、 将 来 の世 代 が健 全 な 自然 環 境 を受 け継 ぐ自 由 、 これ らの 基 本 的 な 要 素 が 相 互 に 関 連 しあ い 、 人 間 の安 全 、 ひ いて

36?

は 国 家 の 安 全 を構 成 す るの で あ る」 と述 べ る。 ま た 、 「 人 間 の安 全 保 障 委 員 会 」 報 告書 も、 「 人 間 の安 全 に対 す る幅 広 い脅 威 に効 果 的 に対 処 す るた め に は、 一 つ

ひ とつ の 現 象 に個 別 に取 り組 み こ とに加 えて 種 々 の 問 題 を統 合 して 捉 え る考 え

37)

方 が 必 要 とな っ て くる」 と述 べ 、 平 和 と開 発 の相 互 連 関性 を 強調 す る。 しか し、

これ まで の 「 人 間 の 安 全 保 障 」 論 や 具体 的 な取 り組 み を み る と、 「 恐 怖 か ら の 自

(11)

「 人間 の安全 保 障」 と 「 武力 行使 」 の交 錯(1) 11

由 」 と 「 欠 乏 か らの 自 由」 の い ず れ に比 重 を お くの か とい うス タ ン ス に お い て 二 つ の系 譜 に分 か れ る こ とが わ か る。 両 者 の違 い は 、 「 人 間 の安 全 保 障 」 の 実 現 の た め の 武 力 行 使 を ど う位 置 づ け るの か とい う問 題 と結 び っ い て くる。 以 下 で は便 宜 上 、 「 欠 乏 か らの 自 由」 に比 重 を お く立 場 、 「 恐 怖 か らの 自由 」 に比 重 を お く立 場 の順 に み て い く。

a.「 欠 乏 か らの 自由 」 に 比 重 を お く立 場

「 欠 乏 か らの 自 由」 に 比重 を お く立 場 は 、 「 開発 」 の 文 脈 で 「 人 間 の安 全 保 障 」

38}

を捉 え る視 点 で あ り、 そ の 背 景 の 根 本 に あ る 「 貧 困 」 の 問 題 を重 視 す る。 す な わ ち 、 経 済 ・社 会 的 側 面 に 注 目 し、 飢 餓 や 深 刻 な貧 困 か らの 脱 却 が 政 策 目標 と

ss)

な る 。 そ こ で は エ ンパ ワ ー メ ン ト、 す な わ ち 、 「 厳 し い 環 境 に あ っ て も人 間 が そ ゆ

の 活 力 を発 揮 で き る よ うに す る 「 能 力 強 化 」」 に よ る 中 ・長 期 的 な ア プ ロー チ が 重 視 され る。UNDPの 「 人 間 開発 報 告 書 」 に お け る 「 人 間 の安 全 保 障 」 論 は 、

この系 譜 に属 す る もの とみ る こ とが で き る。UNDPは 、 「 人 間 の 安 全保 障 」を 「 人 間 開 発 」 の観 点 か ら と らえ て お り、 「 人 聞 開 発 」 を 「 人 々 の 選 択 の 幅 を拡 大 す る 過 程 」 と定 義 し、 「 人 間 の安 全 保 障 」 とは これ らの選 択 権 を妨 害 され ず に 自 由 に

41}

行 使 で き、 将 来 も失 わ れ な い とい う 自信 を もたせ る こ とで あ る とす る。 そ して 、

42)

人 間 の安 全 に 対 す る脅 威 を7種 類 に分 類 し、 貧 困 、 飢 餓 、 疾 病 、 戦 争 、 暴 力 、 人 権 侵 害 等 の脅 威 か ら人 々 を守 る こ とを説 い て い る。

UNDPの 「 人 間 の安 全 保 障 」 論 の 特 徴 と して あ げ られ るの は、 安 全 保 障 の 対 象 を 国 家 で はな く人 間 に求 め た とい う点 と とも に、 人 権 の保 障 や 貧 困 の緩 和 が 、

ひ い て は 紛 争 の 予 防 に つ な が る とい う予 防 開 発 論 の考 え 方 を含 ん で い る点 で あ

43}

る。 そ の 意 味 で は事 後 的 な軍 事 的介 入 よ りも事 前 段 階 で の 非 軍 事 的 予 防 に 力 点 が お か れ て い る とい っ て よい 。 しか し、 同報 告 書 を め ぐって は 、 軍 事 介 入 で は な く開 発 ・発 展 こそ が 紛 争 に 対 処 し うる とい う観 点 か ら安 全 保 障 を再 定 義 した 点 を 評 価 す る一 方 で 、 軍 事 支 出 の 削 減 や 軍 縮 を訴 え て は い るが 、 軍 事 力 そ の も の の 位 置 づ け につ い て は 曖 昧 な ま まで あ る こ とや 、 実 現 主 体 が 国家 で あ る と考

44}

え られ て い る点 な どを弱 点 と して 指 摘 す る見 解 も あ る。

と ころで 、 「 人 間 の安 全 保 障 」 は 国 家 の 外 交政 策 の指 標 と して も取 り入 れ られ

具体 化 され て い る。 わが 国 は、1998年12月 に小 渕 首 相(当 時)が ハ ノイ で 行 っ

(12)

た政策 演説 におい て 「 人間 の安全保 障」 の重視 を訴 えて以来 、 「 人 間の安全保 障

45}

基 金 」 の 設 置 や 人 間 の安 全 保 障 委 員 会 の 創 設 な ど に積 極 的 に取 り組 ん で きた 。 日本 のi推進 す る 「 人 間 の安 全 保 障 」 は、 理 念 上 は 「 欠 乏 か らの 自 由」 と 「 恐 怖 か らの 自 由 」 の 双 方 を考 慮 した包 括 的 な概 念 と して 提 示 され て い るが 、 具 体 的 実 行 面 に お い て はUNDPに 近 い形 で 「 欠 乏 か らの 自由 」 を重 視 して い る よ う に 思 わ れ る。 これ に つ い て は、 「 人 問 の 安 全 保 障 」 が 両 者 を あ わせ もつ 包 括 的 な概 念 と して と ら え られ な が ら 「 欠 乏 か らの 自由 」 に重 点 を お くこ とは政 策 の 論 理 的 一 貫 性 に 欠 け る との批 判 もあ るが 、 そ こ に は軍 事 力 につ いて の 憲 法 的 制 約 と

 の

い うわ が 国 独 自 の要 因 が 横 た わ っ て い る もの と考 え られ る。

b.「 恐 怖 か らの 自由 」 に 比 重 を お く立 場

と こ ろ で 、 国 家=軍 事 力 の 保 持 ・行 使 、 個 人8軍 事 力 の不 保 持 ・不 行 使(非 暴 力)と い う関 係 か ら、 人 間個 人 の視 点 に立 っ 「 人 間 の安 全 保 障 」 に お い て は、

47}

必 然 的 に非 軍 事 性 を前提 として 把 握 され や す い 。 しか し、 非軍 事 性 を メ ル クマ ー ル とす る上 述 の よ う な立 場 とは反 対 に 、 「 人 聞 の安 全 保 障 」 の実 現 の た め に軍 事 力 を積 極 的 に位 置 づ け よ う とす る立 場 が他 方 で み られ る。 「 恐 怖 か らの 自由 」 に 比 重 を お く立 場 は、 「 人 道 」 の視 点 か ら 「 人 間 の 安 全 保 障 」 を捉 え よ う とす る も ので あ り、 そ の原 因 で あ る 「 紛 争 」 に焦 点 が 向 く。 そ こで は、 内 戦 下 の 民 間 人 保 護 や 国 内支 配 集 団 に よ る大 規 模 人 権 侵 害 か らの解 放 が 政 策 目標 とな り、 「 保 護 」

48)

とい う観 点 か らの 緊 急 的 、 短 期 的 な ア プ ロー チ が 重 視 さ れ る。 先 の 「 欠 乏 か ら の 自 由」 に 比 重 をお く立 場 と、 この 「 恐 怖 か らの 自由 」 に比 重 を お く立 場 の違 いが 最 も顕 著 な形 で あ らわ れ るの が い わ ゆ る人 道 的 介 入 を め ぐ る問題 で あ る。

.̲̲..国 内 に お い て 重 大 か つ 大 規 模 な人 権 侵 害 が 発 生 して い る時 に 、 武 力 に よ って 介 入 す べ きか 否 か は 国 際 世 論 を二 分 す る.,で あ るが 、 「 保 護 」 を重 視 す る立 場

49)

か ら は 、 積 極 的 に解 され る こ とに な る。

「 恐 怖 か らの 自 由」 を 中 心 に 「 人 間 の安 全 保 障 」 概 念 を再 構 築 し、 自国 の積 極 的 な外 交 政 策 と して 推 進 して い る国 として カ ナ ダが あ げ られ る。 カ ナ ダ は、1990 年 代 半 ぼ 、 それ まで の 対 米 協 調 を軸 とす る進 歩 保 守 党 に代 わ って 政 権 に就 い た

ク レ テ ィエ ン(JeanChretienL)自 由党 政 府 の も とで 外 交 政 策 の 転 換 を はか ろ

う とす るが 、 そ の よ うな な か 、96年 に外 相 に就 任 した ア ク ス ワ ー ジ ー(Lloyd

(13)

「 人 間 の安全 保 障」 と 「 武 力行使 」 の交錯(1)

13

Axworthy)に よ りカ ナ ダ外 交 の柱 と して推 進 され た の が 「 人 間 の安 全 保 障 」 で

5D)

あ っ た 。 カ ナ ダ外 務 省 が 進 め る 「 入 間 の安 全 保 障 」 は、 次 の5つ の 政 策 課 題 を あ げ て い る。 第1に 文 民 の保 護(戦 争 被 害 を受 け る子 供 た ち 、 国 内避 難 民 、 女 性 、 平 和 、 安 全 保 障 、 地 雷 、 人 権 活 動 、 法 的 ・物 理 的 保 護)、 第2に 平 和 支 援 活 動(平 和 支 援 能 力 、 専 門家 の 派 遣 、 文 民 警 察 支 援)、 第3に 紛 争 予 防(ダ イ ア モ ン ド と武 力 紛 争 、 小 型 武 器 、 協 力 的 紛争 予 防 、 紛 争 後 の 平 和 構 築 〉、 第4に 統 治 と責 任(国 際 刑 事 裁 判 所 、企 業 の社 会 的 責 任 、 安 全 保 障 部 門 の 改 革 、 腐 敗 と透 明 性 、 表 現 の 自由、 民 主 的 統 治)、 第5に 公 共 の安 全(国 際 組 織犯 罪 、 麻 薬 、 テ

5])

ロ)で あ る。

特 徴 と して は 、 「 欠 乏 か らの 自 由」 と 「 恐 怖 か らの 自 由」 双 方 の 重 要 性 は認 め つ つ も、 「 恐 怖 か らの 自由 」 に比 重 を お き、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 の た め に は武 力 に よ る人 道 的介 入 も示 唆 して い る点 で あ る。2000年9月 に は、 そ の検 討 の た め の 「 干 渉 と国 家 主 権 に 関 す る国 際 委 員 会 」(ICISS)の 設 立 を 国連 総 会 で 宣 言 、

52}

2001年 に は、委 員 会 が 『 保 護 す る責 任 』 と題 す る報 告書 を発 表 した。 また、1999 年 、 カ ナ ダ 、 ノル ウ ェー等 が 主 導 して 「 人 間 の 安 全 保 障 ネ ッ トワ ー ク」 を設 立 、

53)

中堅 国やNGOと の連携 の枠 組 み形 成 に積極 的 に取 り組 ん で い る。

1)た と え ば 、 納 家 政 嗣 「 人 聞 ・国 家 ・国 際 社 会 と安 全 保 障 概 念 」 国 際 安 全 保 障 学 会 『国 際 安 全 保 障 』 第30巻1‑2合 併 号 、37‑40頁 。 同 論 文 は 、 安 全 保 障 概 念 の 拡 散 と混 乱 は 、 と く に 冷 戦 終 結 後 の1990年 代 に お い て 顕 著 で あ り、 「 人 間 の 安 全 保 障 」 も そ の 一 つ で あ る と す

る。 そ の 上 で 、 相 互 依 存 の 増 大 に 伴 っ て 広 が り を み せ て い る、 経 済 、 食 料 、 エ ネ ル ギ ー 、 環 境 な どイ シ ュ ー 別 の 安 全 保 障 論 に つ い て 、 こ れ ら は 日 本 語 で は 同 じ 「 安 全 」 で は あ る が

「 セ イ フ テ ィ」 の 問 題 で あ っ て 安 全 保 障 問 題(security)と は 区 別 す る の が 望 ま し い か も しれ な い と述 べ る。 な ぜ な ら 、 安 全 保 障 問 題 に お け る脅 威 は 、 外 在 的 で 、 意 図 的 で あ る 点 に 特 徴 が あ る の に 対 し て 、 セ イ フ テ ィ を脅 か す の は 、 非 意 図 的 な リス ク 、 危 険(danger)、

不 確 実 性 な どで あ り、 ま た 、 安 全 保 障 は 、 最 低 限 の そ れ が な け れ ば 、 そ の 他 の 価 値 の 追 求 が 難 し く な る と い う意 味 で 他 の 価 値 と並 列 的 に は 考 え ら れ な い か ら で あ る と い う 。 2)栗 栖 薫 子 「 序 論:安 全 保 障 研 究 と 「 人 間 の 安 全 保 障 」」 国 際 安 全 保 障 学 会 『国 際 安 全 保

障 』 第30巻3号 、7頁 。

3)国 際 法 学 会 編 『国 際 関 係 法 辞 典 』(三 省 堂 、1995年)18頁 。

4)佐 藤 誠 三 郎 「「 国 防 」 が な ぜ 「 安 全 保 障 」 に な っ た の か 一 日本 の 安 全 保 障 の 基 本 問 題 との 関 連 で 」 『外 交 フ ォ ー ラ ム1999年 特 別 篇21世 紀 の 安 全 保 障 一 岐 路 に 立 つ 日本 外 交 』(都 市 出 版 株 式 会 社 、1999年)5頁 。

(14)

5)佐 藤 「同 論 文 」、5頁 。 6)佐 藤 「同 論 文 」、5‑6頁 。

7)KennethWaltz,Theory(り 『1漉7鰯 伽 θJPo1耽5(RandomHouse,NewYork,1979), P.126.

8)松 井 芳 郎 「 国 民 国 家 と 国 際 社 会 の な りた ち 」 『岩 波 講 座 現 代 の 法2国 際 社 会 と 法 』 (岩 ・ 波 書 店 、1997年)14頁 。

9)納 家 「 前 掲 論 文 」39頁 。 10)納 家 「同 論 文 」43頁 。

11)柳 原 正 治 「 戦 争 の 違 法 化 と 日本 」 国 際 法 学 会 編 『日本 と国 際 法 の100年 』 第10巻 安 全 保 障(三 省 堂 、2001年)、263‑268頁 。

12)国 際 法 の 歴 史 に お け る戦 争 の 位 置 づ け の 変 遷 は 、 わ が 国 に お い て は 「 正 戦 論 か ら 「 無 差 別 戦 争 観 」 へ と転 換 し 、 さ ら に 戦 争 の 違 法 化 へ と再 度 転 換 し た と い う 図 式 で 説 明 さ れ て き た が 、 正 戦 論 の 後 、 そ れ に 代 わ る統 一 的 な 戦 争 観 が 成 立 し、 そ れ が18世 紀 後 半 か ら19 世 紀 に か け て 支 配 し て い た と言 え る か ど うか に つ い て 疑 問 を 呈 す る最 近 の 見 解 が 注 目 さ れ

る 。 そ の 見 解 に よれ ば 、19世 紀 に 「 無 差 別 戦 争 観 」 が 妥 当 して い た と い う説 明 は 、 わ が 国 に の み 見 られ る 特 殊 な 現 象 で あ り、 「 無 差 別 戦 争 観 」 と い う用 語 は 、 現 在 の 欧 米 の 教 科 書 等 で は 用 い ら れ て い な い とい う。 そ こ で は 、 戦 争 は 国 際 法 の 規 律 対 象 外 の エ ク ス ト ラ リ ー ガ ル(extralegal)な も の と み な す べ き と さ れ て い た 、 あ る い は 、 戦 争 に 訴 え る無 制 限 の 権 利 が 認 め ら れ て い た とい う よ う に1つ の 戦 争 観 が 支 配 して い た と と ら え る 見 方 が あ る 一 方 で 、 単 一 の 戦 争 観 が19世 紀 全 体 を 支 配 して い た わ け で は な い と い う 見 解 も さ ま ざ ま な か た ち で 唱 え ら れ て い る こ と を 指 摘 す る 。 わ が 国 で 言 わ れ る 「 無 差 別 戦 争 観 」 は 、1950年 代 以 降 、 わ が 国 の 国 際 法 学 者 が 、 第 二 次 大 戦 前 に ドイ ッ の カ ー ルrシ ュ ミ ッ トが 唱 え た 理 論 を そ れ ぞ れ の 問 題 意 識 に 基 づ き 受 容 し た も の で あ る が 、 意 図 的 に シ ュ ミ ッ ト と は 異 な る か た ち で の 「 無 差 別 戦 争 観 」 を 提 示 し た だ け で な く、 そ れ ぞ れ の 解 釈 に も 違 い が あ る に も か か わ ら ず そ の 違 い が 明 確 に 意 識 さ れ な い ま ま 、 通 説 と し て 流 布 して き た と述 べ る 。 詳 細

は 、 柳 原 正 治 「イ ラ ク 問 題 と 国 際 法 一 武 力 行 使 に 関 す る 国 際 法 の 有 効 性 一 」 『法 学 教 室 』2004.2(No.281)、7頁 。 ま た 、 柳 原 「 前 掲 論 文 」(注12)268‑287頁 。

13)石 本 泰 雄 『国 際 法 の 構 造 転 換 』(有 信 堂 高 文 社 、1998年)16頁 。

14)松 井 芳 郎 教i授は 、 国 際 社 会 の 一 般 的 利 益 の 考 え 方 が 最 初 に 登 場 した の は 、 平 和 維 持 の 分 野 に お い て で あ り、 そ れ が 国 際 連 盟 に お け る 集 団 安 全 保 障 で あ っ た とす る 。 す な わ ち 、 国 際 連 盟 規 約 第11条 は 「 戦 争 又 ハ 戦 争 の 脅 威 ハ 、 連 盟 国 ノ何 レ カ ニ 直 接 ノ影 響 ア ル ト否 ト ヲ 問 ハ ス 、 総 テ 連 盟 全 体 ノ利 害 関 係 事 項 タ ル コ トヲ薙 二 声 明 ス 」 と規 定 す る 。 こ の こ とは 、 国 際 連 盟 に お け る集 団 安 全 保 障 の 考 え が 、 平 和 の 維 持 は 国 際 社 会 の 一 般 的 利 益 で あ る と い

う理 解 を 前 提 と す る も の で あ り、 「 平 和 は 不 可 分 で あ る 」 と い う認 識 を 基 礎 と して い る こ と を 示 して い る と述 べ る。 す な わ ち 、 戦 争 と平 和 の 問 題 が も っ ぱ ら個 々 の 国 の 個 別 的 利 益 の 問 題 と考 え ら れ て い た 勢 力 均 衡 と対 比 す る と、 国 際 連 盟 に お い て は 、 安 全 保 障 が 国 際 社 会 全 体 の 利 益 に か か わ る問 題 と して と ら え られ て い る こ とが わ か る(松 井 芳 郎 『国 際 法 か ら世 界 を 見 る 一 市 民 の た め の 国 際 法 入 門(第2版)』(東 信 堂 、2004年)41頁 、198頁 。 15)納 家 「 前 掲 論 文 」41頁 。

16)最 上 敏 樹 『国 際 機 構 論 』(東 京 大 学 出 版 会 、1996年)15頁 。

(15)

「 人 間の安全 保 障」 と 「 武 力行使 」 の交錯(1)

15

17)最 上 『同 書 』16頁 。

18)ヨ ハ ン ・ガ ル ト ゥ ン グ(高 柳 先 男 ほ か 訳)「 暴 力 、 平 和 、 平 和 研 究 」 『 構 造 的 暴 力 と平 和 』 (中 央 大 学 出 版 部 、1991年)1‑66頁 。

19)松 尾 雅 嗣 「 序 章 国 家 の 平 和 を 越 え て 一 新 し い ア ク タ ー の 平 和 」 『ア ク タ ー 発 の 平 和 学 』 (法 律 文 化 社 、2004年)lI頁 。

20)MichaelJ.Glennon,"TheNewInterventionism‑TheSearchforaJust InternationalLaw,"ForeignAffairs,vo1.78,no.3,May/June1999,p.167.

21)最 上 『前 掲 書 』132頁 。

22}UNDP,DumanDevelopmentReportX994,0xfordUniversityPress,1994,p.22.

23)納 家 「 前 掲 論 文 」43頁 。

24)君 島 東 彦 「 主 権 国 家 シ ス テ ム と安 全 保 障 論 の 現 段 階 一 「 人 間 の 安 全 保 障 」 を め ぐ っ て 一 」

『公 法 研 究 』 第64号 、127頁 。 25)君 島 「同 論 文 」127頁 。

26)CommissiononHumanSecurity,HuynanSecurityl1Tow,NewYork,2003.邦 訳 は 、 人 間 の 安 全 保 障 委 員 会 『 安 全 保 障 の 今 日 的 課 題 一 人 間 の 安 全 保 障 委 員 会 報 告 書 』(朝 日 新 聞 社 、2003年)。 同 報 告 書 は 、 次 の よ う に 述 べ る 。 「 従 来 の 考 え 方 で は 、 国 民 を 守 る た め の 権 限 と 手 段 は 国 家 が 独 占 し 、 秩 序 と 平 和 は 、 国 家 権 力 と 国 家 の 安 全 保 障 を 確 保 し 拡 大 す る こ と に よ っ て 維 持 で き る と さ れ て き た 。 し か し 、21世 紀 に お い て は 、 安 全 保 障 が 抱 え る 課 題 も 、 安 全 を 確 保 す る 側 の 事 情 も こ れ ま で よ り は る か に 複 雑 に な っ て い る 。 国 家 は い ま で も 人 々 に 安 全 を 提 供 す る 主 要 な 立 場 に あ る 。 し か し 、 今 日 、 国 家 は 往 々 に し て そ の 責 任 を 果 た せ な い ば か り か 、 自 国 民 の 安 全 を 脅 か す 根 源 と な っ て い る 場 合 さ え あ る 。 だ か ら こ そ 国 家 の 安 全 か ら 人 々 の 安 全 、 す な わ ち 「 人 間 の 安 全 保 障 」 に 視 点 を 移 す 必 要 が あ る 。 「 人 間 の 安 全 保 障 」 は 、 国 家 の 安 全 保 障 の 考 え 方 を 補 い 、 人 権 の 幅 を 広 げ る と と も に 人 間 開 発 を 促 進 す る も の で あ る 」(原 文P.2、 邦 訳10頁)。

27}Ibid.,p.4.

28)Ibid.,p.6.

29}Ibid.,p.6.

30)Ibid.,p.fi.

31)Ibid.,P.6.

32)off.6菰,、 〜%窺 α"・Devel(蓼)%26%'、Report、1994,P.24.

33)KofiA.Annan,晩 漉6Pω 卿s'丁 肋1〜oJ6げ 伽 砺 飽4ハ 励o%ε づ π 漉62ヱs≠ α 窺 御聯 http:〃www.un.org/millennium/sg!report/ful1.htm

34)報 告 書 で は 、 次 の よ う に 述 べ る 。 「 暴 力 を 伴 う 紛 争 は 「 人 間 の 安 全 保 障 」 の 課 題 の 一 つ で あ る 。 テ ロ 、 犯 罪 、 戦 争 な ど ど の よ う な 形 で あ れ 、 暴 力 は 人 々 の 安 全 を 脅 か す 。(中 略) 困 窮 も ま た 「 人 間 の 安 全 保 障 」 の 課 題 で あ る 。 こ の 世 界 に は 極 度 に 貧 し い 人 、 環 境 汚 染 に さ ら さ れ て い る 人 、 病 気 の 人 、 読 み 書 き が で き な い 人 な ど が あ ふ れ て い る 」op.o舐,Human Security・Mフ 徽 ゑ61

35)土 佐 弘 之 「「 人 間 の 安 全 保 障 」 と い う 逆 説 一 〈 恐 怖 か ら の 自 由 〉 と 〈 他 者 へ の 恐 怖 〉」

『 現 代 思 想 』29巻7号 、170頁 。

36)op.CZt,Wethepeoples:ThedoleoftheUnited!lrationsinthe21stCentury.

(16)

37}op.eit.,HumanSecurityNow,p.G,

38)饗 場 和 彦 「 人 間 の 安 全 保 障 論 と人 道 的 介 入 一 ル ワ ン ダ の ジ ェ ノ サ イ ドを 事 例 に 方 法 論 的 な 観 点 か ら 一 」 国 際 安 全 保 障 学 会 『国 際 安 全 保 障 』 第30巻3号 、43頁 。

39)栗 栖 「 前 掲 論 文 」(注2)2頁 。 40)op.o鉱,1勉 辮 αηSecuYity!>ow,P.10.

41)op.cit.,HuynanDevelopmentReportI994,p.23.

42).lbid.,pp.24‑25.

43)栗 栖 薫 子 「 人 間 の 安 全 保 障 」 日 本 国 際 政 治 学 会 『国 際 政 治 』 第117号 「 安 全 保 障 の 理 論 と政 策 」(1998年3月)90頁 。

44)君 島 「 前 掲 論 文 」130‑131頁 で 取 り上 げ ら れ て い る 武 藤 一 羊 氏 、 武 者 小 路 公 秀 氏 の 見 解 な ど。

45)日 本 の 取 り組 み に つ い て 書 か れ た も の と して 、 た と え ば 、 星 野 俊 也 「 人 間 の 安 全 保 障 と 日 本 の 国 際 政 策 」 国 際 安 全 保 障 学 会 『国 際 安 全 保 障 』 第30巻3号 、 中 村 亮 「「 人 間 の 安 全 保 障 」 と新 し い 国 際 協 力 の 理 念 一 入 間 の 安 全 保 障 基 金 に 見 る 新 し い 人 づ く り の 取 組 み 」

『ジ ュ リ ス ト』(No .1254)2003.10.15、 上 田 秀 明 「 今 、 な ぜ 「 人 間 の 安 全 保 障 」 な の か 」

『外 交 フ ォ ー ラ ム 』(2002 .2)、 佐 藤 行 雄 「日本 の 国 連 外 交 と人 間 の 安 全 保 障 一 国 連 ミ レ ニ ア ム サ ミ ッ トへ の 軌 跡 」 『国 際 問 題 』2004.5(No.530)、 南 博 「 人 間 の 安 全 保 障 と 日本 外 交 」 『国 際 問 題 』2004.5(No.530)な ど 。

46)栗 栖 「 前 掲 論 文 」(注2)3頁 。 君 島 「 前 掲 論 文 」129‑130頁 。 しか し、 栗 栖 は 、 わ が 国 の こ れ ま で の 実 行 を み る と、PKO協 力 法 の 施 行 に よ っ て 防 衛 庁(自 衛 隊)や 文 民 警 察 が

「 恐 怖 か らの 自 由 」 に 部 分 的 に 貢 献 し て き た と い え な い だ ろ う か と も述 べ る 。 また 、 「欠 乏 か ら の 自 由 」 を 達 成 す る た め の 措 置 と 「 恐 怖 か ら の 自 由 」 を 達 成 す る措 置 と に 同 等 の 重 要 性 を 認 め る と し な が ら 、 前 者 に 比 重 が 置 か れ が ち で あ っ た 日 本 と し て 後 者 の 問 題 に ど の よ

う な 対 応 を と る べ き か との 問 い に 対 し て 、 「 集 団 的 人 間 安 全 保 障 」 の 概 念 を 提 唱 す る 星 野 は ー 人 道 危 機 の 犠 牲 者 や 犠 牲 者 個 々 人 の 安 全 と救 済 に 重 き を お く紛 争 管 理 メ カ ニ ズ ム の 実 体 化 へ の 尽 力 を 訴 え 、 人 道 危 機 の 予 防 や 停 止 、 再 発 防 止 な ど に 対 す る わ が 国 の 取 り組 み を 提 示 す る(星 野 「 同 論 文 」(注45)19‑20頁)。

47)i饗 場 「 前 掲 論 文 」43頁 。

48)栗 栖 「 前 掲 論 文 」(注2)2頁 、 饗 場 「 同 論 文 」44頁 。

49)饗 場 「 前 掲 論 文 」 は 、 人 間 の 安 全 保 障 と人 道 的 介 入 の 聞 題 に つ い て 、 ル ワ ン ダ の ジ ェ ノ サ イ ド を 例 に と り、 人 間 の 安 全 保 障 の 方 法 論 と し て の 人 道 的 介 入 の 不 可 欠 性 を 論 証 す る 。 大 泉 敬 子 「ソ マ リ ア に お け る 国 連 活 動 の 「 人 道 的 干 渉 性 」 と 国 家 主 権 との か か わ り 一 「 人 間 の 安 全 保 障 型 平 和 活 動 」 へ の 道 一 」 国 際 法 学 会 『 国 際 法 外 交 雑 誌 』 第99巻5号 は 、 同 様 の 立 場 か ら ソ マ リ ア へ の 国 連 の 介 入 に つ い て 検 討 す る 。 こ れ に 対 して 、 人 権 及 び 人 道 が 、 一 つ の 国 際 的 価 値 と な りつ つ あ る こ と は 否 定 で き な い と しっ つ も 、 武 力 行 使 ほ ど多 大 な 人 権 侵 害 を 引 き起 こ す も の は な い の で あ っ て 、 国 際 社 会 の 最 大 の 価 値 は 、 平 和 、 消 極 的 平 和 の 維 持 で あ る との 立 場 か ら人 道 的 介 入 に 慎 重 な い し否 定 的 な 態 度 を と る見 解 も あ る(山 形 英 郎 「九 ・一 一 以 降 の 国 際 法 の 世 界 一 単 独 主 義(unilateralism)国 際 法 理 論 の 台 頭 」

『 法 の 科 学 』32号(2003年)124頁 、 納 家 「 前 掲 論 文 」(注1)44‑45頁 な ど)。

50)加 藤 普 章 「 カ ナ ダ 外 交 と人 間 の 安 全 保 障 論 一 そ の 意 義 と取 り組 み 」 勝 俣 誠 編 著 『グ ロ ー

(17)

「 人 間の安全保 障」 と 「 武 力行使 」 の交 錯(1)

バ ル 化 と 人 間 の 安 全 保 障 一 行 動 す る 市 民 社 会 』(日 本 経 済 評 論 社 、 51)http:〃www.humansecurity.gc.ca/civilians『en.asp

52)http:〃www.dfait‑maeci。gc.ca/iciss℃iise/menuen.asp 53)http:〃www,humansecurityne七work.orglmembers‑e.php

17

2001年)331‑341頁 。

(未 完 〉

参照

関連したドキュメント

現行アクションプラン 2014 年度評価と課題 対策 1-1.

その限りで同時に︑安全配慮義務の履行としては単に使

原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、貴社から、平成24年2

原子力安全・保安院(以下「当院」という。)は、貴社から、平成24年2

記録 記録すべき場合 ※1 保存期間 19.安全確保設備等の事故後の処置 同上 ※5