地理学研究報告 ( 埼玉大学教育学部)20 号 2 0 00
就職 .進学移動 と国内人口移動の変化に関する分析
谷 謙二 ( 埼玉大学 )
Ⅰ はじめに
1 .問題の所在
本研究の 目的は,就職 ・進学に伴 う大都市圏一 地方圏間移動1 ' の変動要因を分析す るとともに, そこか ら国内人 口移動全体‑の含意 を導き出す こ
とである。
就職 ・進学移動はこれまで多 くの分野で さまざ まな目的で取 り上げ られてきた。まず進学移動に 関 しては,牟 田( 1 988 ) , 川 田( 1 992) ,中川( 1 996) , 藤村 ( 1 9 99) らによって,主に教育機会の平等 と大 都市圏側に偏った大学の配置の問題,またその結 果引き起 こされ る大卒者の分布の偏 りなどが議論 されている。 さらに中卒者 ・高卒者の就職移動に ついては,並木 ( 1 957 ) による農村か らの新規学卒 労働力の流出に関す る研究,氏原 ・高梨 ( 1 971 ) に よる神奈川県を事例 とした包括的な研究がある。
また近年では高度経済成長期の学卒者の就職過程 が再び注 目されてお り,加瀬 ( 1 9 97 ) による中卒者 の集団就職 に焦点を当てた研究,苅谷ほか( 2000 ) による制度的側面を重視 した研究な どが行われて いる。 さらに,就職 ・進学移動をライフサイクル に伴 う人 口移動 として捉 えた伊藤 ほか ( 1 97 9) や大 薮 ・正岡( 1 988) では,それぞれの移動の空間的パ ターンを明 らかに している。
これ らの研究では,戦後の国内人 口移動の動向 とか らめた分析はな されていないが,渡辺 ( 1 994:
1 30 ‑ 1 48) によれば,都道府県間移動の1 5%前後が 中高卒者の就職 ・進学移動によって占められてい るとい うoまた山口ほか ( 2000) は,地方圏出身者 が出身地に残留す る傾 向が強まっていることを指 摘 しているが,このことは大都市圏一地方圏間の 人 口移動において,就職や進学による移動が減少
しつつあることを示唆す る。
また戦後の国内人 口移動,中でも大都市圏一地 方圏間の純移動の動向に関 してはこれまで多 くの
研究がなされてお り,出生率の変化 とい う人 口学 的要因および経済的要因の組み合わせによってお おむね理解 され うる ( 伊藤,1 984 ;石川,1 9 94;大 江,1 995) 。そ うした国内人 口移動研究の中で浮か び上がってきた焦点の一つに,地方圏か ら大都市 圏‑流入 した者 が出身地 に戻 る とい う環流移動 ( 以下 「 Uターン」 と呼ぶ)の存在がある。 この ことは,阿部 ( 1 9 94) に示 されるように,大都市圏 か ら地方圏‑の移動量は,それ以前の地方圏か ら 大都市圏‑の流入量 に影響 され ることを意味す る。
こ うした ことか ら国内人 口移動の分析 におい て,まず地方圏か ら大都市圏‑ と向か う主要な移 動理由と考えられ る,就職や進学による移動量を 把握 し,その変動要因を明 らかにす る必要がある。
それによって,全体の移動流を就職 ・進学移動 と それ以外の移動流に分離することができ,これま で推測に頼ってきた移動流の中身 とその変動要因 をより具体的に議論することが可能になる。
2.資料
本研究で主に用いる資料は,総務庁統計局 『住 民基本台帳人 口移動報告年報』 ( 以下 「 住民基本 台帳データ」 と呼ぶ) と文部省 『学校基本調査報 告書』 ( 以下 「 学校基本調査データ」 と呼ぶ)で ある。住民基本台帳データは転居の際に役所に提 出 された転入届 をもとに作成 され るものであ り, 1 95 4 年以降毎年集計 され,都道府県間の人 口移動 をほぼ正確 に示すデータとして利用 されている。
また学校基本調査データは学校 を経由した調査に
よるものであ り,中卒および高卒就職者それぞれ
の卒業地別の就職先, さらに大学および短大進学
者それぞれの大学所在地別の出身高校の所在地が
得 られ る。ただ し,大卒者の就職移動に関 しては
都道府県別 の移動デー タが表象 されていないの
で,今回の分析には含まれない。またこれ らのデ
三大都市圏合計
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. : 大都市圏への移動 l
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都市圏 寸 ⊂ 〉 l L ) ⊂ > L L } ⊂ : I J L ) く ⊃
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東京大都市圏
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) 0 ) 図 1 大都 市 圏 一地 方 圏 間 の全移 動
量 の 推移 資料 :住民基本台帳人 口移動報告年
報 一夕が得 られ る期間は,中卒就職者が 1 9 6 2
年 〜7 6 年にかけて,高卒就職者は 1 9 6 2 年以
降,大学およ び短大進学者 は 1 9 71 年以降であ
る。 したがって, 分析の対象期間もこれ らの範囲
に限定 される。
住民基本台帳データおよび学校
基本調査データ はそれそれは異なる方法で集計 さ
れ,また大都市 圏内部では住所の変更を伴わない他県‑の就
職や 進学 も多い とい うことか ら,単純な比較はで
きな い。 しか しなが ら,本研究で取 り上げる大都
市圏 一地方圏間の移動は長距離の移動 となるため
,大 部分は就職や進学に際 して居住地の移動 も伴
って いると考えられ る。 さらに,移動流の中身 を
時系 列的に就職 ・進学移動 とそれ以外の移動 とに
分離 して考察することが可能なデータは存在 しな
いの ̲2‑ で,データの相互比較 も便宜上許
され るだろ う。
本研究ではまず,住民基本台帳デ
ータによる全 体の移動および学校基本調査データ
による就職 ・
進学移動の推移 を概観す る ( Ⅱ章) 。
三大都市圏合計
0 0
0
00
丘
V
5
4 32
表 1 大 都 市 圏 ‑地 方 圏 間 の 総 移 動 量 に 占め る地 方 圏
へ の移 動 量 の 割 合 年次 学校基本調査データ 住民基本台帳
データ 中卒就職 1高卒就職 進学
1 96 2 年 0. 5 1 . 2 3 0.
8 1 970 年 0. 8 1 .3 3
9. 8 1 980 年 2. 4 11 . 0 49
. 3 1 9 90 年 3. 0 1 9. 9 47. 0 1 9
99 年 3. 0 1 9. 2 45. 8 単位 :
資料 :学校基本調査報告書,住民基本台帳人口移動報告 %
年報 である。それ以外の時期の変化 は小 さい。一方
で 大都市圏か ら地方圏‑の移動は,1 970
年代か ら 80 年代半ばにかけての一貫 した減少 と 9
0 年代 は じめ までの増加,その後の減少 とい う傾
向を示す。
1 980 年代の大都市圏,中で も東京
大都市圏の流 入超過は人 口移動の 「 東京一極集 中
」 と呼ばれた が, これは地方圏か らの流入者の増
大によってで はな く,主 として大都市圏か らの流出者の
減少に よって引き起 こされた ものである。そ して
この傾 向は1 97 0 年代か ら継続 していた こと,
また80 年代 後半には既 に大都市圏‑の流入者数
が減少 し始め ていること,そ して程度の差 こそあれ三大都市圏 に共通 しているとい
う点は注 目すべ き点である。
I s hi ka wa and Fi e l di n g( 1 99 8) は1 980
年代後半の東 京圏‑の流入量の減少に関 して,地
価の上昇の影 響 を指摘 しているが, この時期 の人
口移動の動向 に関 してはまだ検討 の余地があろ う。 こうした問 題に関 しては,就職 ・進学移動の変動 を考察 した
後にⅣ章において分析す る。 2.就職 ・進 学移動の動向
図 2 は学校基本調査デー タか ら,
中卒者の就職 移動,高卒者の就職移動,大学 ・短
大‑の進学移 動それぞれについて,地方圏か ら
大都市圏‑の移 動量の推移 を示 した ものである。
ここでは逆方向 の大都 市圏か ら地方 図‑ の移
動 は示 してい ない が, これは大都市圏‑の流入量
に比べて,大都市 圏か らの流出量が極 めて小 さい
ためである。
表 1 はそれぞれの移動デー タに関
して,大都市 圏‑地方圏間相互の移動量の合計 に
占める,地方
圏‑の移動量の割合 を示 した ものである。 図 1 で も見た よ うに,住民基本台帳デー タ
では地方圏 と 大都 市圏 の間の移動量 はかな り均衡
して きてい るO しか し就職 ・進学移動では,地
方囲‑の移動 の 占める割合はかな り小 さい。特に
中卒 ・高卒就 職移動に関 しては,地方圏‑の移動は
大都市圏‑
の移動に比べてほ とん ど無視 しうるほ
どの量に過 ぎないO この ことは地方圏側の労働
市場が,大都 市圏側の中学 ・高校 の新規学卒者 を
引きつけた と い う事実は,戦後一貫 して存在 しなかっ
た とい う ことを意味 している。 したがって図 2 は
おおむね 大都 市 圏側 の流入超過数 に近 い もの と考 えて
よ い。 次に図 2 の三大都市圏全体の流入量を見る
と, 1 960 年代前半までは中卒就職流入者が高卒
就職流 入者 を上回っていた ものが,60 年代後半
以降急激 に減少 している。 かわ りに高卒就職流入者
が6 0 年 代後半に急増 し,最盛期 には毎年 1 8 万人
ほ どが大 都市圏‑流入す るよ うになった。 しか し7 0 年
代に はその高卒就職流入者 も一転 して急減す るO
そ し て80 年代 には変化がほ とん ど無かった も
のの,90 年代前半に再び急減 し,高卒就職流入者数
は最盛 期の 2 割程度 にまで減少 した。 このよ
うに大都市 圏に流入す る高卒就職者数 の変化には
,1 97 0 年代 と 9 0 年代前半の二度の急減期
が存在 した。
一方で進学流入者数 を見 ると,中卒 ・高 卒就職 流入者数に比べて変化が小 さく比較的安定 し
てい る。そ うした中で1 97 0 年代後半か ら 80 年
代前半に かけての大都市圏‑の流入量の減少,お
よび80 年 代後半以降の増加 とい う傾 向が注 目さ
れ る。また, 就職 ・進学で地方圏か ら大都市圏‑移動す る者の う
ち,就職 による移動の割合が大幅に低下 し,進 卜 、 r 1 . ‖ I H = H H 1 7 ・ 〟 .
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図 3 その全移 動 量 に 大都 市 圏へ の就職 .進学 移 動 量 と 占め る割 合 の推移 資料 :住民基本台帳人 口移動
報告年報, 学校基本調査報告書
学
による移動の割合が相対的に高まっているとい える
。
次にこうした動向を大都市圏ごとに見ると,東 京
・大阪 ・名古屋大都市圏それぞれの間にはかな り
の差異が見 られ るOまず東京大都市圏では,中 卒
就職流入者が少なく,進学流入者が多い。1 97 0 年代
は じめには既に高卒就職流入者数を進学流入 者数
が上回っていたO逆に名古屋大都市圏では, 1 96 0 年代には圧倒的に中卒就職流入者が多 く,7 0 年代は じめまでは高卒就職流入者数を上回ってい たOそ して進学流入者は少な く ,9 0 年代にな
って ようや く高卒就職流入者数を上回っている。
また 大阪大都市圏の動向は,東京大都市圏 と名古
屋大 都市圏の傾向の中間に位置 している。 このよ うな 差異は,大都市圏 ごとの大学の集積畳の差異,産 業ごとに異なる労働需要によって規定 されている
と見てよいだ
ろ う。そ して図 1 で示 された1 960 年 代の三大
都市圏の大幅な流入超過は,その中身を 検討する
と各大都市圏ごとに大きな違いが存在 し た といえ
る。
図 3 は中卒 ・高卒就職および進学による大 都市 圏‑の移動者数の合計,およびその移動者数が住 民
基本台帳データか ら得 られ る大都市圏‑の移動 者
数全体に占める割合 を示 した ものである。実数 を見ると,1 97 0 年代は じめには毎年30 万人以上の
学卒者が大都市圏‑流入 していた。図 2 において は中
卒就職者 ・高卒就職者それぞれが高度経済成 長期
に鋭いピークを形成 していたが,図 3 ではゆ るやかなど‑クとなってお り ,1 96 0 年代の新規学 卒就職者の大都市圏‑の移動がスムーズに継続 し てい たことが分かる。 しか し 70 年代を通 して就職 移動
者が大幅に減少 した結果,就職 ・進学による 大都市
圏‑の流入者数は80 年代には約20 万人 とな っ
た。 さらに90 年代には再び高卒就職流入者が大 幅に減少 したものの, 進学流入者は増加 したので, 全体 としての減少量はそれほど大きなものではな い。また1 9 80 年代後半に予想 され る,第二次ベ ビ ーブーム世代の影響はまった く見 られない。 次
に,割合を見るとおおむね25‑35%の間で推 移 し
てお り, 実数のよ うに一方的な減少ではないO これは
,住民基本台帳デー タによる大都市圏への 流入者数
自体が1 97 0 年代以降継続 して減少傾向に あることによるものである。 こ
のように1 970 年代 以降
の地方圏か ら大都市圏‑の流入の うち, 3 割 前後
が就職 ・進学移動で占め られていることが確 認
された2 〉 O
3.高校卒業者数の推移
ここで示 した ような就職 ・進学に伴 う移動者の 総数は,年 ごとの卒業者数によってその最大量が 規定 され るOそ こで詳細な考察に入る前に,高校 卒業者数の変化を検討 してお く必要があるO 図 4 は
大都市圏 と地方圏に分けて高校卒業者数 とその進
路の変化を示 したものであ り,ここでは まず卒業
者数全体に着 目したいOまず1 960 年代半 ば
に急激な増加が認 められるが, これは第一次ベ ビ
ーブーム世代が卒業する時期に相当した とい う コーホー ト規
模の要因 と,この時期に高校進学率 が急速に高まった とい う要因の双
方が作用 してい る.全国の高校進学率は,1 950 年の
42.5%か ら, 60 年には57.7%, 70
年には82.1 % と急速に高ま り, 80 年には94
. 2% と中学校卒業者の大部分が高校に 進学する
までに至ったO したがって図 2 で中卒者 の大都市
圏流入者が1 960 年代に大幅に減少 したの
は,高校進学率の上昇によるものである。なお,
大都市圏卒業者
0 0 0 0 10 9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 7 6 5 4 3 つL .‑‑ (Y * ) * % # *
地方圏卒業者 図 4 大都市圏 .地方圏別にみた高校
卒業者の進路 資料 :学校基本調査報告
書 さらに,大都市圏 と地方圏 との
差異 に着 目す る と ,1 9 6 0 年代後半の第一次ベ ビーブ
ーム世代の卒 業 ピーク時には地方圏側で 9 5 万人,大都市圏側で は65 万人 と, 地方圏側 の方が3 0 万人近 く多かった
。 一方 1 9 9 0 年前後に卒業 した第二次ベ ビーブ
ーム世 代では,大都市圏 と地方圏の間で卒業者数の差
は ほ とん ど見 られない。 これは親世代 に相 当す る 1 9 6 ら多数大都市圏に移動 したためであるOこのため, 0 年代に高校 を卒業 した コーホー トが,地方圏か 地方圏での 1 98 0 年代 における高卒者 の増加 はわず かであ り,一方大
都市蟹側 では 1 97 0 年代か ら 8 0 年 代にかけて着実に
高卒者数は増加 していったO こ のよ うに第二次
ベ ビーブームによる高校卒業者の 増加 は大都市圏側 に特
有の現象であって,図 3に も示 され るよ うに,地方圏か
ら大都市圏‑の移動 蚤の変化 に関 して,第二次ベ
ビーブームの影響は 無かった といえる。 Ⅲ 就職
,進学移動の変動要因 1 .進学移動 前章で
の高校卒業者数 の推移 を踏 まえつつ,普 ず進学に
よる大都市圏‑の移動 を考察す るO一般 に,高度経
済成長期以降高学歴化が進行 した と言 われ るが,図 4
の進学者割合 を見 ると ,1 97 0 年代 ̲6 ̲
(
% ) 砂
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後半か ら 圏側 8 0 年代 にかけては停滞 してお り,大都市
においてはむ しろ低下 している。その結果,
大都市圏 と地 方
図 5 地 方 圏高校 卒 業者 の進 学 先 の推 移
資料 :学校基本調査報告書 私学の定員超過率の改
善による教育研究条件の改 善,大都市における新
増設の抑制による地域配置 の適正化などを 目指 した政策が と
られた。また, 1 97 5 年の私立学校法の改正で
,1 981 年までは原則 として私立大学の設置
,学部 ・学科の設置および 定員の増加の認可は行わない ことと
した。 さらに 牟 田( 1 988) によれば,1 9
75 年 に成立 した私学振興 助成法は,学則 に定め
られた収容定員を越 える数 の学生を在学 させている場合
には補助金を減額で きるとい う規定が含まれて
お り,先に荒井 ( 1 9 95 ) があげた私立大学の学校納付金 の増
大 に関 して も,金子 ・小林 ( 1 996: 1 33‑
1 34) は大学抑制政策‑
の転換が私立大学にと
ってカルテル として機能 し た結果であると指摘 してい
る。 これ らの政策は, 1 960 年代まで 自由に大
学の設置がなされ,その結 果大都市圏‑大学が集
中 した こと,また私立大学 における大幅な定員超
過 を伴 うマスプロ教育が問 題 となったことな ど‑
の対応 としてなされたもの である。 これを高等教
育政策‑の国家の関与の増 大 とい う点か
ら見れば,福祉国家化の一環 として 捉 えられ る ( 金子 ・
小林,1 996) 。 こうした政策の結果,1 9
70 年代後半以降,地方 圏か ら大都市圏‑の進学移
動者の減少 ( 図 2) と, 大都市圏か ら地方図‑の
進学移動の増加 ( 表 1) が引き起 こされ,進学
率の地域間格差は大幅に是
正 された. さらに図 5 に示す ように,地方圏側で は大都市圏の大学 ・短大‑の進学
者割合 も着実に 低下 し ,1 9 80 年代は じめには 40
%を下まわってい る。 しか し大都市圏側の高校卒
業者数は1 97 0 年代 後半か ら 80 年代前半にかけ
ても着実に増加 を続 け ていたことを考えると,大都市圏側での大学抑制 政策は大都市圏側の高校生に とってはかな り不利 に働いた
といえよう。
1 980 年代後半以降の政策につ
いては,1 9 84 年に 大学設置審議会大学設置計画
分科会によって出さ れた 「 昭和61 年度以降の高等教育の
計画的整備に ついて」の報告で,1 986 年か
ら 9 2 年にかけては大 学 ・短大等で 8 万 6 千人の
定員増を行 うとい う方 針が出された。 これは第二
次ベ ビーブームの ピー クをにらんだものである。 し
か し 80 年代後半には 大学志願者数が急増 し,合格率
の低下が一層進ん だことか
ら ,89 年の大学審議会において さらに定 員増
加の方針が出された。
この時期の政策 も引き続き地
方に重点を置いた ものだったが,80 年代後半
以降の入学定員の増加 は,地方圏側だけでなく大都市
圏側の大学でも行 われた。その結果85 年か ら 93
年の間でみると,大 都市圏側に立地す る大学 ・短大
‑の入学者は約1 3 万人の増加 とな り,図 2 で示
された80 年代後半以 降の地方圏か ら大都市圏へ
の進学移動者の増加に 結びついた。 しか し地方圏側の入
学定員 も大幅に 増加 され,85 年か ら 93 年に
かけて地方圏側に立地 す る大学 ・短大‑の入学者
も約 9 万人の増加 を示 したことか ら, この間図 5
で示 され るように大都 市圏‑の進学者割合はほと
ん ど変化 しなかった。
そ して図 4 によれば,第二次
ベ ビーブーム世代 の高校卒業のピークである1 99
2 年を過 ぎても進学 者数 自体は変化 していない。
このように1 8 歳人 口 自体が減少す る中で進学者数
が変化 しないのは, 80 年代後半の入学定員増加
の影響であ り,その結 果進学者割合は急上昇 した
。 このことは,ベ ビー ブーム後のコーホー トが大学進学
に とって有利な 位置にあることを示 してお り ,1 97 0 年代前半の進 学率の急上昇 もまた,1 8 歳人 口の減少期に発生 し た
ものであった。
以上をま とめると,1 970
年代以降の大学進学者 の地方圏か ら大都市圏‑の
移動量の変化は,主に
高等教育政策 とコーホー ト規模の変化に求めるこ
動量の減少期,後者は80 年代後半以降の移動量の 増加期に影響 した。
2.高卒就職移動
( 1 )高卒就職移動者数の変化
図 2 においては中卒就職者お よび高卒就職者に 関 して示 したが,この うち中卒就職者については 1 960 年代半ばには急激に減少 し,またその理由も 高校進学率の上昇によるものであることは明 らか なので,ここでは高卒就職者の移動について考察 する。
ただ し高卒就職者の動向に関 しても,中卒就職 者数 と高卒進学率の関係 と同様な関係が,大学進 学率 との間で見 られ る。すなわち,図 4 で示 され るように,大学 ・短大‑の進学者割合が高まると 高卒就職者割合は低下 している。 したがって,80 年代後半のバブル期のように高卒者の求人倍率が 上昇 した時期です ら,高卒者の就職は増加 してい ない。 これは,1 960 年代において中卒者に対する 求人倍率が急激に上昇す る一方で,中卒就職者数 は減少 し続 けた とい う現象 と同 じである。 こうし たことは高卒就職者の変化に対 して,大学 ・短大 の入学定員の抑制および増加 とい う政策が間接的 に反映 されていることを意味 している。
そ こで図 4 の地方圏側での高卒就職者数 を見る と ,1 97 0 年には約53 万人が就職 していたものが, 1 97 5 年には40 万人を切ってお り ,1 0 万人以上の減 少 となっている。一方で大学 ・短大‑の進学者は この間約 5 万人の増加 を示 してお り,大学進学者 の増加が就職者の減少の要因 となっていることは 明 らかである。また同時期に,高校卒業者数 自体 が6万人の減少 となっている。 したがって,1 97 0 年代前半の高卒就職者数の減少は,高校卒業者数
自体の減少すなわちコーホー ト規模の縮小 と,大 学進学者の増加 によるものである。
そ して次の1 97 0 年代後半か ら 80 年代にかけては 大学進学が制限 され,就職者数 ・就職率 ともに変 化が小 さい。 しか しなが らこ うした就職者数の変 化の小 さい時期においても,図 2 で示 され るよ う に,大都市圏‑向か う高卒就職移動は70 年代後半 にも減少傾向にあった。
このことは,7 0 年代後半の大都市圏‑向か う高 卒就職移動者の減少に関 して,就職者の中での大
都市圏‑の移動者割合が低下 していることを示唆 す る。そこで地方圏の高卒就職者の就職先別割合 を示 したのが図 6 である。 これによると 1 973 年に は3 4%であった大都市圏‑の就職者割合は,1 98 0 年には23%‑ と1 2 ポイン トも低下 した。その結果, 1 97 0 年代後半も大都市圏‑の就職移動者数が減少
し続 けることになったのである。また図6 による と1 990 年代前半にも大都市圏‑の移動者割合の低 下が認 められ,90 年か ら 96 年にかけて 8 ポイン ト 低下 した。 これ ら2 度の県外就職率が低下 した時 期が,石油危機後およびバブル崩壊後の不況 と一 致 しているのは偶然 とは考えられず,景気後退の 影響が現れたもの と見なす ことができる。
ただ し 90 年代前半には,不況だけでなくコーホ ー ト規模の縮小による高校卒業者の減少があ り, また同時に進学者割合 も急激に高まった。それに より ,90 年代には地方圏における高卒就職者数 自 体が半減 した ( 図 4) 。 したがって,図 2 で示 さ れ る 90 年代前半の高卒就職者の大都市圏‑の移動 量の減少は,コーホー ト規模の縮小 と進学率の上 昇による就職者 自体の減少に,不況が加わったも のであ り,景気変動の影響は相対的には小 さなも のである。
以上の高卒就職者の大都市圏‑の移動量の変化 の要因についてま とめると ,1 97 0 年代前半の減少 はコーホー ト規模の縮小 と大学進学率の上昇,7 0 年代後半の減少は就職者の うち大都市圏に就職す る割合の低下, さらに90 年代前半の減少はそれ ら の複合 したもの といえる。
図 6 地 方 圏
( 2) 高卒就職者 と製造業
このよ うな高卒就職者の変化は,就職先の産業 構成 とどのよ うに連動 しているのだろ うか。そこ で ,OD デー タが得 られ る最初の年である 1 962 年 か ら ,1 970 年 ,80 年 ,90 年 ,95 年の各年次を取 り 上げ,就職先の産業構成の変化,中でも高卒就職 者の中で最 も主要な就職先である製造業の変化に 関 して見てい く。なお これ らの年次は,図 2 にお いて大都市圏‑の高卒就職者数が変化す る年次に 相当す る。
表 2 は各年次における高卒就職者の産業構成の うち,製造業就業者数 とその全就業者数に占める 割合を 3 つのカテゴリーに分 けて示 したものであ る。すなわち①地方圏の高校卒業を卒業 した者の うち県外就職者,②同県内就職者,③大都市圏の 高校卒業者である. この うち( Dの県外就職者 につ いては,必ず しも大都市圏‑の就職者 とは限 らな いが,図 6 によれば地方圏内の他県に就職す る割 合はかな り低いので,おおむね大都市圏‑の就職 者 と見なす ことができる。また③の大都市圏の高 校卒業者が全て大都市圏内で就職す るとは限 らな いが,表 1 で見たよ うに地方圏に移動 して就職す る者は極めて少ないので,ほぼ大都市圏内で就職 した者 と見なす ことができる3 ) 。
まず①の県外就職者について見ると,高度経済 成長期には約半数が製造業に就職 してお り,また 1 97 0 年では大都市圏側の製造業に就職 した新規高 卒者の半数が地方圏出身者であった。 しか し ,1 9 7 0‑80 年にかけて,製造業‑の就職者は 1 0 万4 千 人か ら 3 万 9 千人‑ と激減 し,割合で見ても 49.1
%か ら 37. 4% ‑ と低下 した。 さらに 90 年か ら 95 年 にかけても,実数では3 万 8 千人か ら1 万 7 千人
‑,割合では 3 8.7% か ら 32% ‑ と低下 した。 こう
した県外就職者 の中での製造業の地位低 下の結 果 ,1 970 年の時点では地方圏高卒就職者の うち県 外就職者 と県内就職者の間では就職先の産業構成 において大きな差が見 られたものが ,1 995 年の時 点では両者 の差異 はほ とん どな くなって しまっ た。
こうした動向は大都市圏側の製造業での労働力 需要の減少を反映 していると考 えられ るが,山崎 ( 1 994) によれば ,1 960 年代後半 〜7 0 年代前半およ び 80 年代後半に工場の地方分散が起 こった とされ る。 これ と対応 させて②の地方圏の県内就職者の 製造業就業者数お よび割合の推移 を見ると,時期 ごとの変動が大 き く一貫 した傾 向は認 め られ な い。 これに関 して ,1 960‑70 年代に地方に進出 し た工場は農村地域の主婦労働力を利用 しようとし たもの ( 富 田 ,1 991: 94) であったため ,1 970 年代 前半の工場の地方分散が新規高卒者 に与えた影響 は小 さかった可能性がある。一方で 1 980 年代には, 地方圏の県内就職者の中での製造業‑の就職者数 お よび割合の双方が大幅に高まっている。 この変 化は,地方圏に立地する工場の労働力需要が,中 高年主婦層か ら新規高卒者に転換 したことを示唆 す るものである。
また先に見た高等教育政策 と同様,工場の地方 分散にも政策が関与 していた。工場の立地に関係 す る法律は,既成市街地内での工場立地を規制す るものと, 地方立地の促進 をはかるもの とがある。
しか し工場立地は利潤可能性の空間的限界内にな されるので,これ らの法律が工場の地方立地の前 提条件であった とは言えない ( 富田 ,1 991: 1
10‑ ll 3) 。 したがって高等教育政策の場合に比べ,就職 移動に対する政策の影響力は弱いものであった と いえる。
表 2 高 卒 就 職 者 の製 造 業へ の就 職 状 況 の 変化
1 962 年 1 97 0 年 1 980 年 1 990 年 1 995
年 製造業就職者数 ( 千人)地方圏卒業 県外就職 7 2 1 0 4 39 . ‑
38 1 7 県内就職 7 0 96
7 0 1 00 64 大都市圏卒業 1 1 4
1 07 69 97 55 製造業就職率 ( %) 地方圏卒業 県外就職 52.2 49.
1 37. 4 38.7 3 2.0 県内就職 28,2 2
9.0 25, 4 37. 2 31 .2
大都市圏卒業 43.
0 36. 9 31 ̲ 6 : 3 7.9 36.7 製造業就職率とは,就職者にしめる製造業に就職 した
者の割合。
資料 :学校基本調査報告書
( 3) 高卒者 の就職 と制度
ところで表 2 の大都市圏卒業者 を見ると ,1 98 0 年 か ら 90 年 にかけて製造業就業者 が急増 してい
る。 もちろん地方圏においてもこうした傾 向は見 られたのだが,地方圏卒業者の うち県外就職者 を 見ると,製造業就業者は増加 していない。その結 果,高度経済成長期には地方圏卒業者で県外‑就 職 した者は,大都市圏卒業者 に比べて製造業‑就 職す る割合が1 0 ポイン トほども高かったが,9 5 年
には逆転 して しまっている。
鹿児島県姶良地域の地域労働市場 を分析 した加 茂 ( 1 9 99) によると,県外か らの新規高卒者の求人 は1 980 年代後半に大幅に増加 しているにもかかわ らず,当該地域の新規高卒者の県外就職率は低下 している。地方圏 と大都市圏の間では依然 として 初任給の格差は存在す るので ( 山口ほか,20 00 ), 経済的観点か ら見れば,地方圏か ら大都市圏‑の 製造業就職者が増加 してもおか しくない。
このよ うな経済動向 と必ず しも一致 しない高卒 就職者の傾向は,高校の就職制度に求められるか もしれない。苅谷 ( 1 99 1 )によれば,高卒者の就職 には 「 実績関係」 と呼ばれ る企業 と高校 とが取 り 結ぶ社会的ネ ッ トワークが介在 している。従来高 卒就職者のほ とん どは,卒業するまでに就職先が 決定 していたが, これは卒業予定者が個人的に就 職活動を行 っていては不可能であ り,ここに 日本 特有の就職制度が見 られ る。この制度 においては, 高校は企業 ごとに求人枠 を持 ち,その継続的な「 つ きあい」が高卒者の安定的な就職 に寄与 し,企業 にとっては 「 つきあい」のある高校か らは毎年ほ ぼ同程度の質の労働者 を安定的に採用できる。菅 山 ( 200 ̲ 0 ) によれば,1 960 年代 において大企業は大 量に高卒就職者 を集 めるため,主に学校 を対象 と して全国 くまなくリクルー ト活動を行っていた と い う。そ して7 0 年代後半の人手が必要でなくなっ た時期においても , 1 名程度 を採用 して関係 を継 続 させた とい う。
こうした実績関係 に基づ く企業 と高校の結びつ きは,逆に言えば,いったん結びつきが切れれば, その後の再構築は難 しい とい うことを示唆する。
このような点を考慮 して再び表 2 を見ると,1 97 0 年代に大都市圏の製造業 と地方圏の高校 との実績 関係はいったん切れ,その後再構築 されなかった
ために,80 年代後半においても地方圏か ら大都市 圏の製造業に就職す る者が増加 しなかった とい う 解釈が可能である.そ して,大都市圏 ・地方圏双 方の高校は,それぞれ地元の製造業 との間で新た な実績関係 を構築 した と推測 され る。
こうした就職制度はまた,表 1 で示 された大都 市圏か ら地方圏‑の高卒就職移動者が極 めて少な い とい う結果を解釈す るのに役立つ。すなわち, 地方圏に立地 した工場は,進出先の労働力を目的 として進出 したがゆえに,大都市圏側の高校‑求 人を出す ことはないのである。そ して 「 学校にゆ だね られた ( 苅谷,1 99 1 ) 」就職制度の元では,企 業か らの求人が出されていない地域に就職するこ とはほとん どあ りえないのである。 これまで人 口 移動研究においては地域のプッシュ要因 ・プル要 因が検討 されてきたが,少なくとも高卒就職者に 関 しては,地域がプル要因を持つのではなく,企 業が直接高校生を引き寄せているのである。 これ は大学進学 との大きな違いであ り,進学に際 して は序列化 されオープンにされた大学の レベル と自 分の学力 とを高校生 自身が検討す ることができ る。そのため表 1 や図 5 で示 され るよ うに進学に 伴 う移動は,大都市圏‑向か う移動だけでなく, その逆方向の移動や地方圏内部での移動 も一定程 度存在する。一方で高卒就職者 は,学校を経由し た求人に頼 るため,移動は企業の求人活動の影響 を大きく受け,その結果図 6 で見るように県内で 就職す るか,大都市圏に移動 して就職す るかの選 択肢 しか持ち合わせていないのである。
このよ うな制度 との関係 は,高卒就職者だけで なく,中卒就職者においても重要であった。 この 場合企業 と学校 とではなく,職安 と学校 とがつな がっていた。大都市で新規就業者を獲得できなく なった中小企業は職安 を通 じて 「 集団求人」を行 い ( 加瀬,1 997) ,繊維産業では戦前の募集人制度 か ら職安を経由 した募集 に変化 させ中卒女子労働 力 を大量に集 めた ( 吉 田,1 994;石 田 ・村尾,2 00 0) 。 これが中卒者の 「 集団就職」を発生 させ,逮 隔地か ら大都市圏‑の大量の移動を可能にした。
戦前においては地方か ら都市‑就職のために移動 す る際に,同郷団体 とい うインフォーマルな制度 が仲介 していたが ( 山本,1 99 4) ,戦後高度経済成 長期には学校や企業,職安などよりフォーマルな
̲1 0 ̲
制度が仲介 し,より効率的に労働力を大都市圏に 供給するよ うになったのである。
したがって,図 2 で示 され る高度経済成長期の 中卒就職者,高卒就職者 による大量の大都市圏‑
の人 口移動は,個人の合理的選択 とい う視点か ら ではなく,学卒就職者 を取 り巻 く制度の視点か ら 今後再検討 される必要があるだろ う。
Ⅳ 1 9 7 0 年 代 以 降 の 国 内 人 口移 動
1 .就職 ・進学 を除いた国内人口移動
図 3 によると,地方圏か ら大都市圏‑の移動に ついて,中卒 ・高卒者の就職および進学移動の, 住民基本台帳データか ら得 られ る移動量全体に占 める割合は 2 5 ‑3 5 % である。 したがって地方圏か ら大都市圏‑の移動流は,就職 ・進学以外の理由 によるものが約 7 割 を占めていることになる。そ こでデー タの揃 う 1 971 年以降について4 ) ,住民移 動台帳データか ら得 られる移動量か ら,学校基本 調査データにより得 られた移動量の差をとったも のが図 7 であ り,この図は全ての移動量か ら中 ・ 高卒者の就職および大学 ・短大‑の進学による移 動を除いた移動量の推移 を示 している。
ここで図 7 の考察に入 る前に , 「 就職 ・進学を 除いた移動」 とは何を指すのかを特定 してお く必 要があろ う。全国スケールで移動パターン別 に移 動理由が判明 し,かつ母集団が国内移動者全体 と い うデータは極めて少ないが,国土庁が 1 9 8 0 年 7 月か ら 81 年 9 月にかけての市区町村間移動者個人 を母集団 として ,1 9 81 年に行った調査は貴重なデ ータである ( 国土庁計画 ・調整局編 ,1 9 8 2 ,以下
「 国土庁デー タ」 と呼ぶ)。表 3 は国土庁デー タ をもとに,三大都市圏 と地方圏
5)の間の移動パ タ ーン別の移動理由を示 したものである。 これによ ると,まず三大都市圏‑の移動の うち 「 就学」お よび 「 新規就職 ・開業」の占める割合は 3 割程度 で本研究の値 とおおむね一致 している6 ) 。そ して それ以外の理 由としては , 「 転勤 ・出向」が約 3 割 と最 も多 くなってお り,それ以下の 「 結婚」や
「 転職」を大きく引き離 している。 したがって大 都市圏‑向か う「 就職 ・進学を除いた移動」とは, おおむね転勤によるもの と見なす ことができる。
1000
800
600
400
200
0
図 7 就 職 ・進学 移 動 を除 いた大都市 圏 一地 方 圏 間 の移 動 量 の推移 資料 :住民基本台帳人 口移動報
告年報, 学校基本調査報告書
一方
で地方圏‑の移動を見ると , 「 新規就職 ・ 開業」の占める割合が比較的高いが ,4 9 人中 41
人 は出身県‑の U ターンであるので,前章までの分 析で扱ってこなかった,大都市圏‑の大学進学者 が就職 時に U ター ン した ものであることがわか る。 しか し就職 による移動は全体の中では 7 . 2%
とそれほど大きな位置を占めてお らず,ここでも
「 転勤 ・出向」による移動が3 割を占めて最 も重 要な
移動理由となっている。それに次 ぐものが「 家 族 と同
居」であるが, これは転勤移動 とは違 って 地方圏‑の
移動 に特有でのものであ り ,1 2 8 人の うち U タ
ーンが 9 9 人を占めているO このように, 地方圏‑の移動は U ター ンに特徴づけ られ ,6 8 2 人の地方圏‑の移動者 の うち半数 を超 える 3
87 人 がリターンである。 したがって,地方圏‑
向か う
「 就職 ・進学を除いた移動」 とは,おおむ ね転勤 と U ターンによる移動 とい うことになる。
そ して,大都市圏側が大幅な流入超過 を示すの は
就学や新規就職な どの理由に限 られ,それ以外 移
動理由ではおおむね大都市圏側が流出超過であ
る7 ' Oまた転勤による移動が,大都市圏一地方圏
間の移動において極めて重要な位置を
表 3 移動パター ン別にみた移動理由
移動理由 細 大都市圏
移 動 数地方圏か ら三大都市圏‑ 三大都市圏か ら地方圏‑ うち
U ターン 人 実数 ( 人) 割合 ( %) 実数 ( 人) 割合 ( %) 実
数 ( 人) 割合 ( %)
就学 51 70 1 4
.0 1 9 2. 8 6 1 .6
新規就職 .開業 40 89 1 7.8 49 7.2 41 1 0
求職 23 28 5.6 5 0.7 3 .6
0. 8
結婚 1 0 49 9.8 39 1 5.7 1 6 1 4.1
通勤 .通学事情が悪い
5 6 1. 2 0.1 0. 3
買物などが不便 0 0 0. 0 0 0,0 0 0
. 0
家族と別居す るため 0 3 0. 6 3 0. 4
1 0.3
引退 ‑2 4 0.8 6 0.
9 4 1. 0
公害 .災害の危険 ‑2 0
5 0,0 2 0.3 1 5 0.3
親戚 .知人が住む ‑8 1. 0 1 3 1 . . 9 1 .3
療養 ‑l l 4 0. 8 1 5 2.2 1 5 3.
9
人間関係 ‑ll 2 0. 4 1 3 1. 9 ll
転職 .転業 ‑1 3 45 9.0 58 2,8
8.5 41 1 0. 6 住宅事情が悪い ‑1 5 2 9 0. 4 1 7 2.5 6 1 .6 家族の近 くに住む ‑2 6
1 . 8 35 5 .1 2 9 7. 5 家業を継 ぐため ‑32 0 0. 0 32 4. 7
2 7 7. 0 転勤 ー出向 ‑59 1 47 29.5 206
30.2 56 1 4.5 家族 と同居 ‑11 2 1 6 3.2 1 28
1 8. 8 99 25.6 その他
‑1 8 17 3.4 35 5.1 23 5. 9
特になし ‑3 3 0. 6 6
0.9 2 0.5
計 ‑1 83 499 1 00.0 682
1 00.0 387 1 00.0 資料 :国土庁計画 ・調整局編 (
1 982,p.23 1 )の 「 移動 した一番重要な理由」か ら集計 表 4 移動パター
ン別にみた移動者の年齢構成
年齢階級 大都市圏 純移動数 地方圏か ら三大都市圏‑ 三大都市圏か ら地方圏‑ うちUターン 人 実数 ( 人) 割合 ( %) 実数 ( 人) 割合 ( %)
実数 ( 人) 割合 ( %) 1 5 ‑1 9 歳 92 1 22 2
4. 4 30 4.4 1 6 4.1
20‑24 歳 ‑94 1 00 20.0 1 94 28,4 1 56
40.3 25‑29 歳 ‑58 78 1 5.6 1 36 1 9
.9 77 1 9. 9 30‑34 歳 ‑7 0 8 0
1 6 . 0 1 50 22. 0 6 6 1 7 .1 35‑39 歳 ‑34 42 8. 4
76 l l . 1 33 8. 5
40‑49 歳 ‑1 3 39 7. 8 52
7.6 1 3 3. 4
50‑59 歳 ‑6 25 5. 0 31 4.5 1 6 ,
4.1 60‑75 計 歳 ‑1 83 0 1 3 2. 6 1 3 1 .9 1 0 2,6
499 1 00.0 682 1 00.0 387 1 00̲0 資料 :国土庁計画 .調整局編( 1 982
,p. 271 ) か ら集計
さらに こ うした移 動理 由は年齢 と強 い関係 を持
かわ りに20‑3 4 歳の年齢階級では全体の51 . 6%を 占めている。地方圏‑の移動に至っては ,7 割以 上が2 0‑3 4 歳の年齢層で占め られている。
したがって,先ほどの 「 就職 ・進学を除いた移 動」に関す る記述に付け加 えるならば,大都市圏 へ向か う当該の移動流は 「 20‑3 4 歳の人々による 転勤を主体 とした移動」であ り,一方地方圏‑向 か うものは 「 2 0‑3 4 歳の人々による転勤 とU ター
ンを主体 とした移動」 と見なす ことができる。
このように 「 就職 ・進学を除いた移動」の指す 内容が判明 した ところで,再び図 7 に戻 り,図 1 および図 3 と比較 した図 7 の特徴を四点ほど述べ ると,第‑に大都市圏か ら地方圏‑の移動量につ いては図 1 の場合 とほ とん ど変わ らない。 これは 就職 ・進学移動で当該方向の移動が極 めて少ない ためである。第二に,図 7 では1 9 71 年以降常に大 都市圏側が流出超過であるとい う点であ り,これ は表 3 の結果 と一致す る。第三に,1 970 年代前半 の大都市圏‑の移動量の減少がより鋭 くな り ,7 0 年代後半の変化が無 くなっている。 したがって, 図 1 で示 され る 7 0 年代後半の緩やかな大都市圏‑
の流入量の減少は,高卒者の就職 ・進学移動の減 少によるものであることがわかる。第四に,80 年 代後半か ら 90 年代は じめにかけての大都市圏‑の 移動量の減少が顕著に現れてお り ,1 986 年か ら 94 年にかけて約1 4 万人減少 している。図 1 では緩や かな減少であったものが,図 7 において顕著な減 少 となった理由は,当該時期に就職 ・進学移動に よる大都市圏‑の移動量がほぼ一定であったこと によるものである。 したがってこの時期の住民基 本台帳データにおいて示 され る大都市圏‑の移動 量の減少要因は,就職 ・進学移動以外に求める必 要がある。
2. 大都市圏への流入
先ほどの国土庁データの考察で,大都市圏‑の 移動者数は20‑3 4 歳人 口による,転勤を主体 とし た移動であることがわかった。 これ らの年齢階級 は従来 U ター ン者の多い年齢階級 として,大都市 圏か ら地方圏‑の移動が卓越す る年齢階級 として 捉えられてきた。それは確かに事実であ り,表 4 においても 20 歳以上では大都市圏側が流出超過 を 示 している。 しか し同時に,大都市圏側‑の移動
16
15
1
4
・く JJe13 仲
1
2
11
10
1970 1975 1980 1985 199
0 1995*