多値論理関数の分解としきい値回路網への応用
藤 田 志 郎*
(昭和46年9月9日受理)
Decomposition of multi−valued logical functions and its application to threshold networks
Shiro FuJiTA
(Received September 9,1971)
In this paper, first, the theoretical aspects of the decomposition of an arbitrary rnulti−valued logical function in terms of several essentially simpler logical functions are described.
Secondly, on the basis of this theory, a methed for the realization of three−valued logical functions by net−
works of threshold gates is proposed.
Lastly, examples are worked out in detail to illustrate this method.
1.ま え が き
三値しきい値素子を用いて,任意の三値論理関数を回路 実現する手法についての報告はこれまでにいくつかみられ る。1)〜5)本論文の目的もまた,任意の三値論理関数を最小 のしきい値素子でもって実現する一つの手法を与えるもの である。
任意の関数がしきい値素子でもって回路実現されること は,しきい値素子を表わす関数を考えると,これらの関数 の合成関数として,任意の関数が表わされていることであ る。したがって,本論文の前半においては,一つの論理関 数をより簡単な関数の合成関数として表わすいわゆる関数 の分解についての理論を述べる。ここで述べられる定理は,
二値論理関数についてAshenhurst, Hu6)・7)・s)らによって 発展させられた関数の分解についての定理の多値論理関数 への一般化である。
後半においては,前半でえられた定理を用いて,最小の しきい値素子でもって与えられた三値論理関数を回路実現 する手法を述べる。
2.関数の分解
n変数のm値論理関数f(x・,x2,…, Xn)を考える。論
理変数Xi,およびその関ta fのとる真理値は整数値0,1,
2,…,m−1とする。また,π変数(x・,κ2,…, Xn)をx で表わし,この関数をノ(κ)と記す。
以下,ことわりなく関数といえば,〃植論理関数を表わ すものとする。
〔定義1〕関数!②がいくつかのより簡単な関数91,
g2,…,9kの合成関数として表わされるとき,これをf(x)
の分解といい,9i(1〈i≦k)を成分関数という。
ここで,各9iを表わす素子でもってf(X)を回路実現 したとき,feed−back loopはもたないものとする。
(例1)f(x・)x2)がつぎのように与えられているとす る。(Table 1)(m=3とする)
Table 1
>(X・,切口max(X・, X2)
ガ
f O12 〈(x、, x、)一min(x、, x、)
0 012 e(Xl・x2)=x・とん2のsum modulo 3x1 1 1 1 0
2 111 とすると,f(x・, x2)は
*非常勤講師(川崎医科大学)
f(Xユ,X2)一〈{〉(X・,切,(D[X・,〉(X・, X2)]}
なる分解をもつ。〉,㊦,〈が成分関数であり,これらを 素子とした!(x・,x2)の回路実現はFig.1に与えられて
いる。
x
v
X
x
e A f
Fig.1
〔定義2〕n個の変数の集合 Xt{Xl, x2,…, Xn}に対して,
Y={pm, y2, …, yp}(pti E−X, i一一1,2,・・一P)
Z=={Zl,22,…,εq}(Zi∈X, i=1,2…,の をXの分割といい,
YIZ=y、, Y2,_,ッpk、,22,…, aq と記す。
ここで,YUZ=・Xであり,Xi(1≦i≦n)が同時に:V,Z に含まれていてもよい。また,0≦P≦n,2≦e≦nとす
る。
Pを第一次数,qを第二次数という。明らかに, P+q
≧nであるが,
r=:(P+の一n (1)
を分割の重複度という。r=0のとき,分割YIZ.は分離
(disjunctive)であるという。
〔定義3〕関数/(x)について,Xの一つの分割を YIZ=y・, Y2,…, yp12・,22,…, a・とする。
このとき,つぎの二つの関数
g5=cb(pti, )t2, …, yp, lbn), iP =aPe(ai, 22, …, Zq)
があり,
f(X)=to{Yi, Y2, …, Yp, th(2i, 22…, gq)}
となるとき,φとψは分割yIZに関してア(X)の単分解 を表わすといい,記号的に(φ,ψ)とかく。このとき,
ノ(x)自身も一つの単分解と考えておく。また,(1)で与 えられるrは単分解の重複度ともいい,r.=Oならば,単 分解は分離であるという。
二値論理関数の分解に関しては, Reduction Theorem として知られている定理があるが,9)この定理自身の内容 は,論理関数が二値であることが本質的に用いられていな いので,〃植論理関数についても成立すると考えうる。し たがって,つぎにこれを定理として述べておく。
⊂定理1〕9)任意の関数!(x)に対して,k+1個の成分関 数をもった分解が与えられているとする。それらを伽,
ψ2,…,ψk,φkとする。
このとき,この分解はk個の単分解の系列
({bi, thi) (i一一1, 2, ..・, le)
の合成として表わしうる。
この定理は,ノ④.に対するle+1個の成分関数をもっ た分解があり,これを表わすk+1個の成分関数をψ・,
ψ2,…,ψk,φkとすれば,単分解の系列(φユ,ψ・),(φ2,
ψ2),…,(φk,ψk)が存在して,この分解はこれらの合成
として表わすことができることを示している。
この単分解の合成を記号的に
(φk,.ψk)・(φ・一・,ψk一・)・・一一・(φ・,ψ・)・(φ・,ψ・)
と記す。幽
(例2)例1における関数の分解を考える。
まず,ψ・(x・,x2)=V(x・, x2) とする。
このとき,
f(X・,X2)==φ・{X・,ψ1(X・, X2)}
となり,これは単分解(φi,ψ・)を表わす。
つぎに,ψ2=(∋(Xl,ψ1), φ2=〈(ψi,ψ2)
とすると,φ・=φ2(ψ・,.ψ2) となる。
これは単分解(φ2,ψ2)を表わす。
ゆえに,分解は
(φ2,ψ2)・(φ1,ψ1) となる。
いま,関数φi一・の単分解(φi,ψi)の第一,二次数を Pi,4i(i=1,2,…, le)とする。ただし,φo=f(x)。
このとき,φiはPi+1個の変数の関数であり,ψiはei 個の変数の関数である。φL・の単分解(φi,ψi)の重複度 をriとすれば,φi一・の変数の個数はPi一・+1であるか
ら,
r・;(Pi−t−qi)一(P・一・+1) (i=1,2,…91e)
となる。ここで,P・==n−1とする。
このle個の重複度の和をrとすれば,
ヒ な
r・=Σ ri==Σ(Pi−Pi_1)+Σ(qi−1)
i_1 i=1 i==1
な =PヒーPO+Σ4i一々 isl な
となる。Po=n−1であり, R≡≡Z] qi+Pk+1とおけば,
iUt1
r==R−k−n (2)
をうるelo)
ここで,Rはf(X)の分解における成分関数ψ・,ψ2,…,
ψk,φkのおのおのの変数の個数の和である。(2)式で与 えられるrを分解の全重複度という。一般にf(X)の分解 を単分解の合成として表わす方法は一通りではないが,10)
上に定義したrは成分関数の変数の個数のみに依存してい るので,分解の表わし方には関係しない。
いま,e≧2をあるきまった正整数とする。そして,ノ(x)
の分解がq個の変数をもったk+1個の成分関数の合成によ って表わされているとする。このとき誘+1個の成分関数 の変数の個数の和はR=q(々+1)となる。
したがって,全重度rは
r==q(le+1)一le−n=(q−1)(k+1)一n+1 となる。これより成分関数の個tw k+1は
み十1= n−1
4=一IHI十一i=一il (3)
で与えられる。11)
3.単分解と:分割行列
〔定義4〕関tw f(x)のX・={x・, x2,…, Xn}.に関する 分離な分割 YIZ=Yl, Y2,…, yp匿, Z2,…,2q に対して,一つの行列をつぎのように対応させる。
すなわち,工数をmP,回数をmqとし,おのおのの順序 は(Yl, Y2,…, yp),(21,22,…,2q)のm進数表示の 順とする。またmn個の劣=(X・, X2,…, X・)(Xiは0,1,
2,…,m−1のどれかをとる)に対して,おのおの(Yl,
y2,…, yp),(2・, Z2,…,2q)がきまり,行列の一つの要 素が対応するが,これはノ(X)の値とする。
このようにしてえられた行列はその要素が,0,1,2,
…,m−1のどれかであるが,これを分割行列といい, M
(ア:yiZ)と記す。
この行列で,異なった行ベクトルの数を行多重度,異な った列べクトルの数を列多重度という。
さて,与えられた関数f(X)について分割YIZに関す る単分解が存在するかどうかは,上に定義した分割行列の 列多重度と関係がある。これに関しては,二値論理関数に ついて,Ashenhurst, Hu6)・7)・12)らによって単分解が存在 するための条件が与えられている。ここで述べられる定理 はそれのm値論理関数への一般化である。
〔定理2〕関数!(x)についてのX白蔓,x2,…tXn}の 分離な分割Y「Zに関する分割行列M(f=yIZ)の列多 重度功勤≦mであるならば,Yizに関する単分解(φ,
ψ)が存在する。また,外野重度vがv>mならば単分解 は存在しない。
(証明) x={x・,x2,…, x・}の分離な分割を
YIZ=),i, ),2, Yp122, 2i, , 2q
とする。
いま,この分割行列の列多重度Vが,V−mであるとす る。そして,異なった列をVl, v2,…, Vmとする。
このとき,(Zl, Z2,…,2q)の関数ψ(2・,22,…,2q)
をつぎのごとく定義する。
すなわち,Vi(i=1,2,…, m)に対応する(z・,z2,…2q)
に対しては
aPe (2i, 22, …, 2q)=ai (i=1, 2…, m)
とする。ただし,ai(齢1,2,…, m)の値はすべて異な った0,1,2,…,m−1のうちのどれかとする。
さらに,P+1個の変数の関数φ(y・,ッ2,…, Ptp, yp+・)
をつぎのように定義する。
(y・,Y2,…yp)が第1番目の行に対応しているとする。
そしてtyp+・=・ai(i=1,2,…, m)ならば,
φ=ンiに相当する列べクトルのee 1 9素 (i=1,2,…,m)
とする。
ここで,yp+・=ψとすれば,
ノ②二φ{y・,夕・,…ツP,ψ(2・,22,…,X、)}
となり,これは明らかに,ノ(X)の分割yIZに関する単 分解である。
列多重度Vが,V<mの場合も同様な方法により単分解 が存在することを示しうる。
つぎに,列多重度Vが,V>mと仮定する。そのうちの 任意の異なったm+1個の列をv・,v2,…, Vm, Vm+・とす る。このとき,各列ベクトルに対応する(z・,z2,…,2q)
をそれぞれηi(i=1,2,…,m+1)とする。
いま,m+1個の列のうちの任意の二つVj, Vkを考える
(ゴ≒の。 この二つの列べクトルにおいて,第1要素が異 なっているような1が少くとも一つは存在するはずであ る。これをaj, akとする。
一方,1番目の行に対応する(y・,Y2,…, yp)をζしで 表わす。
単分解 φ{y・,Y2,…Yp,ψ(2・, a2,・・,
が存在すると仮定する。
このとき,ψ(η」)=ψ(ηk)とすると,
¢{k, i;e(nj)}一ip{gz, iP (qk)}
をうる。
ところが,
¢{gi, i;e(nj)}==aj=¥ak=¢{gz, ile(nk)}
である。ゆえに,
iPn(nj) >f iln(nk)
をうる。
Zg)}
Vi(i一一1, 2, …, m十1)のうちの他の任意の二つについ ても同様な結果をうる。
したがって,ψ(η1),ψ(η2),…,ψ(ηm),ψ(ηm+1)の 値はすべて異なった値となる。
ところが,ψは0,1,2,…,m−1のm個の値のどれ かをとるゆえに,これは矛盾である。
したがって,単分解は存在しない。 (証明終)
4. 1)o皿 t−Care をもつ関数の単分解 n変数関数f(x)が don t−care をもっている場合を 考える。
x・={x・,x2,…, x・}の分離な分割 YIZ==yi, y2, …, yp12i, z2, …, zg
についての分割行列M(f:ylZ)はつぎのように定義す
る。
すなわち,x=(x・,x2,…, Xa)がf(x)に対する don t−
care な点ならば,*それに対応する行列の要素は*とし
*Xi (i=1,2,…, n)は0,1,2,…m−1のm個の値を とるゆえに,x=(Xl, x2,…, x・)はn次元空間のMn 個の点(格子点)に対応する。
ておく。 don,t−care でない場合の定義は第3節の場合 と同じとする。
また,(21,統,…,2q)の関数ψ(21, a2,…, Zg)と(Y1,
Y2,…, yp,ψ)の関数φ(y・, y2,…yp,ψ)に対して,
ア(X・,X・t…tXn)=¢{y・, y・,…,y,,ψ(2・,2・,…,Zg)}
が, don t−care でない(Xl, x2,…, x・)において成立 しているとき,これをf(X)の単分解といい,(φ,ψ)と 記す。
いま,分割行列M(f:YIZ)の*に対して,適当な値
(O,1,2,…,m−1のうちのどれか)を代入することによ って,争心重度VをV≦mとすることができれば,(この ようにしてえられる分割行列をM と記す。)この分割行 列M に対応する関数g(x・,x2,…, x・)を考えることが できる。
定理2より明らかにこの9(x1, x2 t…t Xn)は単分解(φ,
ψ)をもつ。またこのg(x・,x2,…, Xn)は don t−care 以外の点では f(X・,X2,…, Xn)=9(X・. X2・…, X・)で あるから,(φ,ψ)はf(X)の単分解を与える。
これを定理としてつぎに述べておく。
〔定理3〕 don t−care をもつ関数ノωに対して,分割 行列M の列多重度VをV≦mとすることができれば,
f(X)は単分解をもつ。
5.分離でない分割による単分解
n変数関数f(x)のX={x・,x2,…, x・}に関する分割
YIZ==yi, y2, …yp12i, z2, ・一・, 2g
の重複度をrとすると,
r==(P+の一n である。
P十q個の変数(Yl, Y2,…,ypレZ1, g2,…,2g)はX=
(Xl, x2,…,κn)がきまると,これに対応して決定される。
ゆえに,関数λ(x)を
)L(X) ; X一(Yl, Y2, 一一・Yp, 21, 22, …, 2g)
で定義する。
ここで,V==(Yl,Y2,…,Yp,21,22,…,2q)の関数g(の を考える。
まず,9(のの don t−care な点を
(1)v=(Y1, Y2,…,yp,2・,22,…,2q)がλ(x)に含まれ ないとき,
(2)f(x)自身がすでに don t−care である点xに対 応ずるV(Y・,y2,…, yp,2・,22,…,2g)
として定義する。
そして,これら以外の点では 9(の量∫⑦
とする。
このとき,Yizなる分割はV ・={ン1, Y2,…, yp,21;
22,…Zg}に関する分離な分割である。
したがって,もし9(のについて分割Yizに関する単 分解が存在すれば,/(X)について分割YIZに関する単 分解が存在することになる。9(のについての単分解を見 出すことは前節の問題と同じである。
6.しきい値回路網への応用
前節までにえた関数の単分解についての結果を利用し て,三値しきい値素子の回路網によって任意の三値論理関 数を回路実現することを考える。
これは,与えられた関数に対してその成分関数がすべて しきい値関数であるような分解を与える事である。
ここで,三値しきい値関数の定義を与えておく。
〔定義5〕n変数の三値論理関数ノ(x) =f(Xl,x2,…)Xn)
において,
藤館liii iiili}(・)
となるような実定数ω・,ω2,…,ωn,:「2,To(T2>T・)が 存在するときf(x)を三値しきい値関数という。
ただし,ω(X)= wlxl Hrw2 x2+…+ω・・Xnであり, Wiを重 み,T2, Toをしきい値という。
以下,つぎのごとき問題を考える。
すなわち,q:≧2なる正整数qを与えて,すべての成分 関数の変数の数がqであり,かつすべての成分関数がしき い値関数であるような,与えられた関数!(X)の分解を求 める。しかも成分関数の個数が最小となるようにする。
これをア(x)のしきい値関数による最:小回路網実現とい うことにする。
f(X)を単分解の合成として表わしたとき,成分関数の 個数は(3)式で与えられる。したがって,全重複度rが最 小のとき,成分関数の個数も最小になる。
定理1により,もしf(x)の分解がえられると,これと 同じ成分関数を用いた単分解の合成によりこの分解を表わ
しうる。したがって,変数のtw eを与えて,しきい値関数 となるq変数の成分関数によるア(X)の単分解を作成する 過程を続け,全重複度rを最小にする分解をうると,これ がf(X)のしきい値関数による最小回路網実現となる。
以下に実現の手順を述べる。
三値n変数論理関数f(X)と成分関数の変数の数qが与 えられているとする。
(1)P=n−q =Oならば,与えられたf(x)自身がしき い値関数であるかどうかを判定する。*
*判定の手法については文献13)を参照。
(2)n>qならば,まずX=伽,κ2,…,Xn}に対して 分離な分割ylz「=y・, y2,…, ypi9・,22,…, Zgを考え
る。
このような分割(第二次数がeである)をすべて考え,
Y1】Z1, y2iZ2,…, YilZtとする。
最初の分割から単分解が存在するかどうかを調べる。
YiIZiの分割行列を作り,列多重度vがv≦3かどうかを 調べる。v≦3ならば,定理2より単分解が存在する。もし,
v>3ならば,単分解は存在しないのでつぎの分割ア2iz2 にうつる。このようにして,いまゴ番目の分割YiIZ,を調 べているとする。分割行列の列多重度μがv≦3であると する。すべての可能な単分解を作り
(O, a;e)ii, ((P, aPn)i2, …, (ip, th)irn
とする。
(3)(2)でえた単分解について最初のものから,ψがしき い値関数かどうかを調べる。もし,しきい値関数でなけれ ばつぎの単分解(φ,ψ)・2にうつる。すべての単分解につ いてψがしきい値関数でなければ(2)におけるつぎの分 割yi+・IZi+1にうつる。
いま,(φ,ψ)ijについて調べているとする。そして,こ のψがしきい値関数であるとする。
このとき,φはP+1個(P=n−4;第一次数)の変数の 関数であるが,つぎの二つの場合を考えうる。
(i) P十1:E{q (ii) P÷1〈q (i)の場合
φもまたしきい値関数であるかどうかを調べる。もしそ うでなければ,つぎの単分解(φ,ψ)i,j+・にうつる。
いま,φがしきい値関数であるとする。P+1;qのとき は、この単分解(φ,ψ)iiが!(X)の回路実現を与える。
また,P+1〈qの場合には,すべての成分関数の変数 の数をqにするために,Pt・, Y2,…, yp, yp+エの後に,
yp+2, yp+3,…,Yqまでの変数を考え,かつすべてyp+・に 等しくしたφ(Y・,Y2,…, yp, yp+1,…, Yq)を考えてお くと,単分解(φ,ψ)ijがf(X)の回路実現を与える。*
(ii)の場合
φはP+1個の変数の関数であるから(2)以下の手順で nをP+1におきかえ,同じ操作を行う。
(4)全重複度7が最小のとき最小回路実現を与えるか ら,成分関数がしきい値関数である単分解のうち,rが最 小となるようなものを求めて,それらの合成でf(X)を表 わすとよい。したがって,(3)までの手順で,すべて分離 な分割ばかりで単分解が求まるとそれが最小回路実現を与 える。
いまもし,分離な分割のすべてについてしきい値関数に よる単分解が存在しなければ,重複度が1である分割にっ
いて考える。この分割行列については,4, 5節で述べた ごとく*の所に0,1または2を代入することによって,
列多重度vをv≦3とすることができると単分解が存在す るので,それらを求めて(2),(3)の手順と同様な操作を 行う。
なお,定理2の証明から明らかであるが,v≦;3の場合 に単分解を求めるとき,その成分関数の決め方は必ずしも 一意的でない。ゆえに,一つの分割に対して単分解が二つ 以上存在するかも知れない。したがって,成分関数がしき い値関数となる場合が二通り以上存在するかも知れない。
このときは,それらをすべて求めて,全重複度rが最小と なる分解を求めることが必要である。
(5)重複度が1である単分解の合成で最小回路実現がえ られないときは,これを2,3,…として,これまでと同 様な操作をくりかえす。
しきい値関数系は完全系であるから,14)必ず有限回でこ の手順は完了し,最小回路実現がえられる。
7.例 題
しきい値回路網実現の手順をくわしく説明するために,
いくつかの例題を考える。.
(1)f(κ1,x2)==x1Vκ2=max(κ1, x2) を考える。
(Table 2)
Table 2 q=2とする。
XiVX2 o xl 1
X2 0 1 2 0 1 2 1 1 2
2i222
f(X・,X2)自身は明らかにしき い値関数でない。
したがって,まず重複度r;1 の分割Xtlx1,κ2を考える。分 割行列はつぎの通りである。
(Table 3)
Table 3
X XIX2途\\
012
oo
0**
O1
61**
02
2**
10
*−占*
11
*ーム*
12
*2*
20
**2
21
**2
22
**2
いま,この行列の*に対してっぎのように値を代入す
るQ(T3ble 4)
Table 4
\\ュ X2
Xi ×
*付録1参照
012
oo
0ーワU
O1
122
02
222
10
012
11
AUーウ一
12
122
20
012
21
012
22
012
すると,列多重度vはv ・3となる。そして,ψ=ψ(x!,
x2)なる成分関数として第1行によって定義されるものを えらぶ。(Fig.2)
Xユ2
tO 2)
(ol)
coo)
v,
ψ薯1
l12)
P
{2a
(Il, 21,
(T O)
Fig.2
sl,
o
o
o
C20) Xt
2 2 2
1 2
o 1
22
X Xa
Fig.3 X
このψは明らかにしきい 値関数である。
たとえeg,Wi =一1,w2 =1,
T2・・2, T・=Oとすればよ
い。
これで単分ee f・ (φ,ψ)
=φ{X1,ψ(κ1,X2)}をうる が,φはFig.3のごとくな り,たとえば,κ1の重み Wl=1,ψの重みw2=:1,
しきい値T2=2, To=0と して,しきい値関数であ
る。
したがって,/(Xl, x2)
の回路実現はFig.4とな
る。
これが最小回路実現であ ることは明らかである。
この例は三値論理和とい XJ l
一1 f
窟 多6.
置 % Ψ
Fig. 4
われるものの実現であるが,すでに相原らによって具体的 なしきい値素子実現が与えられている。15)いまえられたも のは素子の数はこれと同じであるが,入力の接続数が一つ 少なくてすむ。
(2)f(xユ, x2)として三値NAM)16)といわれるつぎのも Table 5 のを考える。(Table 5)
いま,
甲羅i侶i
の二つの値の与え方を考えると,このψ(X・,X2)はしきい 値関数としうる。たとえば,Fig.5のごとくするとしきい 値関数である。
Xl 2
Ψ・2
2 2
2 1
Fig.5 2
1
O殉
ところが,分割行列の第 3行の要素が1,2,0の順 になっているので,φ(x1,
ψ)を作ると,φはunate でない。ゆえにしきい値関 数でない。13)
したがってrr=1の分解 はありえない。つぎにr =2 を考える。
X2
0 1 2
分害[」 x・,x21x・, x2の分割行列は対角要素のみが (1, 1, 1, 1, 2, 2, 1, 2, O)
で,他はすべて*である。
いま,*に対してTable 7のごとく値を代入すると,
v=2ケ年り,たとえば行列の第1行でもってψ・=ψ・(x・,x2)
を定義する。このとき,ψiはつぎのごとき重み,しきい 値でもってしきい値関数となる。
wi=:一1. w2=一1. T2==1. To=:一4 一 vv一 N−t
,
これで単分解(φ・,ψ・)=φ・{X・,X2,ψ・(X・, X2)}をう る。
NAND
012
ユ 1201221占11占
Table 7
XtX2 XIX2
q=2とする。f(x・,x2)は明 らかにしきい値関数でない。
r=1の分割Xilx・,x2を考える。
分割行列はつぎの通り。
(Table 6)
Table 6
012012012000111222
oo
11112212*
O1
11112212*
02
11112212*
X1
10
11112212*
11
11112212*
12
11112212*
2e
11112212*
21
11112212*
22
0*******0
XIX2
012
oo
−**
O1
14**
02
−占**
10
*−凸*
11
*2*
12
*2*
20
**−凸
21
**2
22
**0
つぎに(x・,x2, Vi)に関する分割x・1x2,ψ・を考え る。(重複度=0)
分割行列はつぎの通り。(Table 8)
行列の*に対してつぎのごとく値を代入する。(Table 9)
Table 8
渋012 oo0** Ol−ゐ11凸 02*** 10*** 11122 12*** 20**0 21﹂12* 22
与える。
(3)3変数関数∫(x・,x2, x3)としてつぎのものを考え る。(Tabie 10)
***
Xl X2 X3
Table 9
Xl X2 1
01凸9耐
oo
000
Ol
噌■−占−
02
122
10
000
11
122
12
122
20
000
21
129個
22
ーム22
明らかに列多重度v ・3である。第3行でもって,
ψ2(X2,ψ1)を定義するとψ2はつぎのごとくなる。
(Fig. 6)
012012012000111222000000000
Table 10
ア
Xl X2 X3
叱2
011112222 012012012000111222111111111 f Xt X2 X3111112222 012012012000111222222222222 ノ122222222
匙 Ψ曙2
1 2
0 o
Fig. 6 も 1 2
2
2
OZIJX
これは,たとえば,
ω1=1(κ2の重み)
w2=4(ψ1の重み)
T2=5, To =2として,し きい値関数となる。また,
単分解φ2α・,ψ2)はつぎ のごとくなる。(Fjg. 7)
したがって,φ2は ω1=1(κ1の重み)
ω2=4(ψ2の重み)
T2=9, T。=・2としてしき い値関数となる。
ゆえに,
f(Xi, X2)
== ¢2[Xl} th2 {XZ,
aPnl(Xl, X2, }]
なる分解をうる。回路実現 はつぎの通り。(Fig.8)
q =2とする。重複度0の分割は
xllx2, x3, X2iXl, X3, X31xl, X2,
の三つ存在するが,まずX・lX2, X3 を考える。
分割行列はつぎの通り。(Table 11)
Table 11
Xl X2×3
01幽9伊
oo
011
O1
11凸2
02
112
10
112
11
ーヨー2
12
222
20
222
21
222
22
222
trin2
1
o
i
o Fig. 7
Xt 凹1
齢Ix匙
Xa 10ゥ
舷鴇
監一 4
X
おY2
一一 4
f
Fig. 8
しきい値素子の個数は(S)
s=r十1
であるが,r>1であるから, s=3が最:小回路実現であ る。したがって,いまえられた回路実現は最小回路実現を
列多重度v;3である。いまψ(x2, x3)として,第1行 kfi
X31 2 2
2
2 ×2 Fig. 9
v.g.2 一..2・
i 1
O 8
﹁
1
o 8
Fig. 10
x 2
をえらぶ。ψ(x2, xのはた とえば,
Wl =・2(x2の重み)
w2 =1(x3の重み)
T2=4, Te==Oとしてしき い値関数である。(Fig.9)
このとき単分解(φ,ψ)
はφ{x・,ψ(κ2,x3)}となる
が,. eig.10で与えられる。
これは,
w、・=1(Xlの重み)
w2=2(ψの重み)
T2=4, To=0としてしき い値関数である。回路実現 はつぎの通り。(Fig.11)
X2 2
X3
A奄T>iJ xt
2
Fig. 11
f
素子の個ta Sは
r n−1
S=ffS:.:irl+一4:一:11
において,n=3, e=2であるから
s= r+2:}12
ゆえに,2個の素子による実現は,明らかに最小回路実 現である。
8.結 論
本報告の前半において,多値論理関数をより簡単な関数 の合成によって表わす,いわゆる関数の分解についての理 論を展開した。これは,二値論理関数について,Ashenhurst,
Huらによってえられたものの多値論理への一般化であ
る。
後半においては,前半でえられた定理を用い,三値しき い値素子でもって,任意の関数を実現する手法を与えた。
変数の数が多くなると,単分解が存在するかどうかを調 べる手順の回数が多くなるが,(特に重複度が0でないと き)最後に与えた例題でもわかるように,この手法は,三 値論理関数の最小しきい値回路網実現において,十分有力 なるものといいうる。
なお,本論文の内容は,京都大学数理解析研究所におけ る研究集会「多値論理およびその応用層」(1971・7)にお いて発表したものであるが,その講演予稿を提出した後 に,本論文のr定理2〕と同様なものが文献17)において も発表されている事を見出した。しかし,本論文の〔定理 2〕はそれとは全く独立にえられたものである。
付 録
1・一般につぎのことが成立する。すなわち,P+1個 の変数の関数がしきい値関数であるとする。このとき,変 数y・,Y2,…, yp, yp+1に対して, q個の変数ン1, V2,…,
Np, yp+・,み+2,…,西を考え,かつみ+1・=Yp+2=…鵠鈎と しておくと,q個の変数の関数φ(y・,ン2,…, yp+1,…,
Yg)もまたしきい値関数となる。理由はつぎのごとく考え るとよい。
P+1個の変数の関数をφ (y・,Y2,…, yp+・)とする。
そして,yt, Y2,…, yp+1の重みをW・, W2,…,Wp, tVp+1 とする。
これに対して,ω1=ω 1,zv2・=ω,z,…,ωP=w p
Wp+1=W p+1+wtp+2+...+wtg
となるようなωt・,ω 2s…ω p, W p+・,…,ω gを考える。
このとき,
な サ
Σω iyi・・ΣW iyi+ω P+・ツP+・+ω P+2ツ叶2+…+ω q夕q
i置1
i=1
り=Σωiyi+(ω ,+・+〃,+2+…+W q)ツP+・
i冒1
P P十1 冨Σωiyi+Wp+1ンP+1講Σωiyi
i属1 i=1
をうるので,4変数関数φ(),・,Y2,…Yp+・,…, Yg)は,
φ (ン1,y2,…]p, Yp+1)と同様にしきい値関数となる。
文 献
1) W.H.Hanson: Ternary threshold logic. IEEE Trans. EC−12 (1963) p.191
2) R.Merrill: Some properties of ternary threshold logic. IEEE Trans. EC−13 (1964) p.632
3) J. Santos, H. Arango and F. Lorenzo: Threshold synthesis of ternary digital systems. IEEE Trans.
EC−15 (1966) p.105
4) R. D. Merrill : Symmetric ternary switching func−
tions IEEE Trans EC−16 (1967) p.624
5)相原,高松; 三値論理関数のしきい素子による二段 実現 昭和45年度電子通信学会全国大会予稿集
(1970) p.45
6) R. L. Ashenhurst: The decomposition of switching functions. Annals Harvard Computational Labora−
tory, 29 (1959) p.74
7 ) S. T. Hu: On the decomposition of switching func−
tions. Lockheed Missiles and Space Division, Tech.
Rep. 6−90−61−15 (June, 1961)
8) S. T. Hu : Threshold logic, (1965) p.256 University of California Press.
9) ibid, p.274 10) ibid, p.277 11) ibid, p.278 12) ibid, p.283
13)三根久,藤田志郎: 三値しきい値関数の判定と実現 について, 電子通信学会論文誌(C),53−C,7,(昭 45−07) p.439
14)藤田米春,他= 多値しきい値論理関数系の完全性 電子通信学会論文誌(C),53・C,5(昭45−05)P.341 15)相原恒博,片岡正次郎: しきい素子による三値論理 和(積)ゲートの実現法, 電子通信学会論文誌(C).
52−C,2(昭44−02)P.122
ユ6)田中末雄,田原道夫: 三値論理関数の完全性とPoly−
Pheck, 電子通信学会論文誌(C),53−C,2(昭45−2)p.111 17) K. M. Waliuzzaman and Z. G. Vranesic: On deco一 ・mposition of multi−valued switching functions Computer Journa1, 13,4(November 1970) p.359