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HIV Gag蛋⽩質との相互作⽤と創薬展開

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Academic year: 2021

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(1)

イノシトールリン脂質およびその構造類縁体に関する研究:

HIV Gag蛋⽩質との相互作⽤と創薬展開

創薬・⽣命薬科学専攻 メディシナルケミストリーコース

⽣体機能分⼦合成学分野 ⽴⽯ ⼤

⽣体内では様々なイノシトールリン脂質やその類縁体が存在し、細胞膜の構成やシ グナル伝達、蛋⽩質の膜局在など多岐にわたる役割を担っていることが知られている。

近年、HIV-1感染細胞からのウイルス粒⼦放出に、ホスファチジルイノシトール(4, 5)

2リン酸(PIP2)が関与していることが報告された。Gag蛋⽩質はHIV-1の構造蛋⽩質で

あり、

Highly basic regionと疎⽔性ポケットをもつMAドメインがN末端に存在する。そ

の領域に細胞膜中のPIP2が結合することにより膜移⾏がおこる。その後、Gag蛋⽩質 が多量体を形成し、ウイルス粒⼦が出芽・放出へと導かれる。当研究室では、MAと 強く結合し、Gag蛋⽩質の細胞膜結合を阻害するイノシトールリン脂質誘導体の研究 を進めてきた。その過程でMA領域との結合にはイノシトールリン脂質の酸性部位と 脂溶性部位の両⽅が結合に重要であるということ、さらにはイノシトール上にリン酸 基の数が多いほど結合が強まるといった知⾒を得た。本研究では、この知⾒を基にし た創薬展開やイノシトールリン脂質構造類縁体とMAとの相互作⽤などについて検討 した。

(1)

HIV

活性をもつ⾮天然型イノシトールリン脂質

L -HIPPO

の開発

阻害剤として、イノシトールの全てのヒドロキシル基にリン酸基をもつ

IP6

に脂溶 性部位を導⼊した

IP6

誘導体

6

種類を合成した。これら誘導体の合成は、イノシトー ル部位と脂溶性部位のアミダイト試薬を⽤いたカップリングにより⾏なった。

合成した誘導体と

MA

蛋⽩質との結合解離定数を

Surface Plasmon Resonance ( SPR)

にて測定したところ、

L -HIPPO

が最も強く

MA

蛋⽩質に結合した(K

D = 180 nM)。 L -

HIPPO

L

型のイノシトール⾻格もち、かつイノシトールに

6

個のリン酸と脂質を

もつという

2

つの意味で⾮天然型である。次に

DL -HIPPO

を細胞内導⼊キャリアであ るα-CDEと混合し

HIV-1

蛋⽩質発現細胞に加えたところ、Gag 蛋⽩質の膜局在を顕 著に抑えていた。ウイルス放出抑制効果を確認したところ、

L -HIPPO

を加えることに よりウイルス粒⼦の放出が

75%減少していた。さらにインキュベーション時間を⻑く

すると感染細胞にアポトーシスを誘導することを⾒出した。これは細胞内に蓄積した

OR OH RO

OR

RO OR

+

P OR

+

N

N HO O

O R1

R2

Phosphoroamidite Glycerol moiety Inositol moiety

OR OR O

OR

RO OR

OP O

O

OH O

O O

L-HIPPO

R = -PO(OH)

2

(2)

ウイルス蛋⽩質によると考えられ、この現象を“Lock-in and apoptosis”と命名した。本 知⾒は、HIV潜伏感染細胞の除去につながり得る。

(2)

カルジオリピン誘導体の合成および評価

PIP2

以外のリン脂質類も

MA

ドメインと結合すると考え、様々な⽣体内リン脂質 を検討した。その結果、ミトコンドリアの内膜に存在するカルジオリピン(CL)が

PIP2

よりも強く結合することを⾒出した。この知⾒から、

CL

誘導体と

CL

にイノシトール

⾻格を導⼊したハイブリッド化合物の合成を⾏なった。合成化合物と

MA

蛋⽩質

Highly basic region

との結合解離定数を

SPR

にて測定したが、MA 蛋⽩質のこの領域 との強固な結合は⾒られなかった。

(3) IP6

MA

との相互作⽤およびそのウイルス学的意義の解明

IP6

は⽣体内に豊富に存在しており、

MA

に対して側鎖が短い

PIP2

と同程度の結合

⼒であることを⾒出していた。これらの知⾒から、

IP6

HIV

感染細胞内で

Gag

蛋⽩

質に影響を与えていることが考えられた。そこで、IP6と精製

MA

蛋⽩質の共結晶を 作成し、X線結晶構造解析により結合様式の解明を⾏なった。その結果、IP6

PIP2

と同じ

Highly basic region

に結合することが明らかになった。次に、溶液中での

IP6

MA

またはその変異体との相互作⽤を

Differential Scanning Fluorimetry (DSF)で確認し

た。溶液中でも

IP6

Highly basic region

の塩基性アミノ酸と相互作⽤していること が確認され、これらの結果から

IP6

MA

の結合には

MA

K17, K26, K31

が重要で あることが判明した。さらに、MA蛋⽩質は

PIP2

と結合すると熱安定性が

16℃減少

するに対して、IP6と結合すると熱安定性が

10 ℃

上昇することがわかった。⼆つの分

⼦は同じ部位に結合するが、

MA

に対して異なる影響を与えていることが推測された。

ウイルス学的意義など詳細については現在検討中である。

以上のように本研究では、

Gag

蛋⽩質膜移⾏阻害剤

L -HIPPO

の開発に成功し、“lock-

in and apoptosis”を提唱した。今⽇の HIV

治療の⽬標は体内から潜伏感染細胞を除去 することであり、“Lock-in and apoptosis”法は今後の治療につながることが期待される。

また

Gag

蛋⽩質の膜移⾏はウイルス増殖において必ず必要な段階であるため、IP6

Gag

の関係性を調べることはウイルス学的に重要なことである。さらに、CL など他 のリン脂質類と

Gag

蛋⽩質との関係性を明らかにすることにより、

Highly basic region

ではない新たな標的部位の発⾒や画期的な薬の開発が可能となり

HIV

根絶にもつな がることが期待される。

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