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都市環境負荷予測シミュレーター開発基礎研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)都市環境負荷予測シミュレーター開発基礎研究. 高井. 智広. 1. 序論 人間の生活基盤を支える都市・建築においては、資. 本研究では、都市・建築の持続化に向けた施策立案. 源やエネルギーが不可避的に消費されている。今後、. を支援する方法論の構築を目指し、複雑な社会動態が. 持続的な都市・建築を構築していくためには、どのよ. 包含された非線形性の強い都市システムを対象とした. うな環境負荷削減技術が有効であるのか、それらを如. 環境負荷を中長期的に予測できる都市環境負荷予測シ. 何に普及させるのか、普及させるためにはどういった. ミュレーターを開発することを目的としている。本論. 社会制度や経済支援が必要であるのか、といったボト. では、システムダイナミクス手法を用いた都市環境負. ムアップ的な方法論が重要になる。このような方法論. 荷予測シミュレーターの開発方法を示し、シミュレー. を推し進めるために、都市・建築の持続化の観点から. ション結果の検討により、今後のモデル開発における. 環境負荷(エネルギー消費量、CO2 排出量)を長期に. 方向性を明らかにする。. 予測し、有効な環境負荷削減施策や技術、経済支援な どを検討していく必要がある。しかしながら、都市・. 2. シミュレーターの開発方法. 建築全体の環境負荷を長期に予測するためのツールや. 2. 1モデル化手法の検討 都市の諸活動間には錯綜した相互関連性が存在す. 方法論は存在していない。. 図 1 都市環境負荷予測シミュレーターの要素と構成 42- 1.

(2) るため都市施策には様々な波及効果がともなう。その 1. 4. ため、本研究では、都市システム全体で環境負荷削減. xが0. 5以下の場合:y=1. 2 1. 2. 施策の導入効果を把握できる手法として、システムの. 1. 動的変化や因果関係を容易に記述できるシステムダイ 1). 。なお、システムダイナミ. 乗数値[-]. ナミックス手法を用いる. クスとはシステムの動特性を連立常微分方程式による モデルによって求解していく手法である。. 基準年度を1とする. 0. 8 0. 6 0. 4 xが3以上の場合:y=0. 6. 2. 2シミュレーターの開発手順. 0. 2. はじめに、シミュレーターの対象領域を設定し、都. 0. 市システムに介在する要素間の依存・因果関係に関し. 0. 5 0. 8 1. 0 1. 3 1. 5 1. 8 2. 0 2. 3 2. 5 2. 8 3. 0 住宅密度/基準年の住宅密度. て検討を行う。同時に、統計資料等から過去の実績値. 図 2 住宅密度による共同住宅着工率への魅力乗数. を収集・算出してモデルの基準年度の値とパラメータ ーの構造方程式を推定し、個別セクターごとにモデル. 表 1 総従業者数と第 3次産業従業者数の 重回帰式に用いた説明変数と決定係数. を作成する。その後、過去の実績値との比較精度検証 によりモデルの妥当性を確認し、都市環境負荷予測シ. 目的変数. ミュレーターとして個別セクターを統合する。最後に、. 総従業者数. 都市環境負荷予測シミュレーターを用いた未来シナリ. 第3次産業従業者数. 説明変数 生産人口 民生業務延床面積 生産人口 民生業務延床面積. 人 ㎡ 人 ㎡. 決定係数. 調整済決定係数. 0. 9853. 0. 9837. 0. 9775. 0. 9749. オ別環境負荷削減可能量の 2050 年までの長期予測に より都市システムの持続性を評価する。. 表 2 セクターの構成要素と影響因子 セクター分類. 3. シミュレーターの開発 3. 1個別セクターのモデル化 シミュレーターの要素と構成を図 1 に示す。元来、 都市システムには膨大な要素が介在するが、環境負荷 に動的な変化をもたらす主な要素群を規定できれば必 ずしも全ての要素を組み込む必要はないと考え、福岡 市を対象として、人口、住宅、民生業務、交通、環境 セクターのモデルを作成した。 市町村レベルで統計資料のそろう 1975 年を基準年 として、セクターごとに魅力乗数と重回帰式の 2 つの 方法を用いて構造方程式を推計した。図 2 に住宅密度 による共同住宅着工率への魅力乗数を示す。魅力乗数 とは、例えば人口移動にともなう都市の住環境や職の 魅力を数値化した指標であり、過去の実績値の動態挙 動と適合するように収束関数やロジスティック関数と いったグラフ関数にあてはめて定義する。また、総従 業者や第 3 次産業従業者数は要素間に線形性がみられ たため重回帰式を用いて構造方程式を推定した(表 1)。 但し、その魅力乗数の設定には恣意的なものが含まれ ることもあり、その場合は信頼性を損なうことにつな がる。しかし、予測の信頼性を過度に重視して重回帰 から得られた式を多用すれば、モデルの動態挙動が固 定される。よって、魅力乗数による方法と重回帰式に. 構成要素. 影響因子 一人あたり市内GDP 第3次産業従業者率 人口移動 住宅着工数 住宅用地地価 人口セクター 単身者世帯数 出生 一人あたり市内GDP 第3次産業従業者率 死亡 一人あたり市内GDP 20-39歳人口 世帯類型比率 業務建築延床面積 世帯構造セクター 高齢者率 住宅居住率 着工 住宅密度 住宅セクター 住宅用地地価 解体 世帯変化数と着工数比率 商業施設密度伸率 着工 人口密度伸率 事務所 商業用地地価 解体 商業施設密度 着工 卸小売業販売額 卸小売業 解体 卸小売業の販売額と着工数比 民 着工 飲食業販売額 生 飲食業 解体 飲食業の販売額と着工数比 業 商業用地地価 務 着工 宿泊業 宿泊客あたり宿泊業延床面積 セ 解体 宿泊客変化数と着工数比率 ク 商業用地地価 タ 着工 患者あたり医療業延床面積 ー 医療業 病床数の制約 解体 患者変化数と着工数比率 着工 学生数あたり教育施設延床面積 教育施設 解体 学生数と着工数比率 着工 商業用地地価 その他 解体 市内GDP伸率 業務建築延床面積密度 道路面積 着工 乗用車保有率 道路密度 総トリップ数 高齢者率 通勤 総従業者数 鉄道 人口密度 乗用車 乗用車保有率 交 バス 通 通学 教育施設密度 目 交 鉄道 人口密度 交 的 通 乗用車 乗用車保有率 通 ・ 手 バス セ 手 段 業務 ク 段 目 私用 高齢者率 タ 別 的 鉄道 商業施設密度 ー ト 別 人口密度 リ 人 乗用車 商業施設密度 ッ キ 乗用車保有率 ロ プ バス 分 帰宅 配 鉄道 商業施設密度 率 人口密度 乗用車 商業施設密度 乗用車保有率 バス -. 百万円/人 戸 円/㎡ 世帯 百万円/人 百万円/人 人 ㎡ 世帯/戸 戸/km 2 円/㎡ 世帯/戸 円/㎡ 万円 万円/㎡ 万円 万円/㎡ 円/㎡ ㎡/人 人/㎡ 円/㎡ ㎡/人 人/㎡ ㎡/人 人/㎡ 円/㎡ ㎡/k㎡ 台/世帯 k㎡/k㎡ 人 人/k㎡ 台/世帯. 相関 [+] [+] [+] [-] [-] [+] [-] [-] [+] [+] [+] [-] [-] [-] [-] [+] [+] [+] [+] [+] [-] [+] [-] [+] [+] [-] [+] [+] [-] [-] [-] [-] [+] [+] [+] [+] [-] [-] [+] [+] [+]. ㎡/k㎡ 人/k㎡ 台/世帯. [+] [+] [+]. ㎡/k㎡ 人/k㎡ ㎡/k㎡ 台/世帯. [+] [+] [+] [+]. ㎡/k㎡ 人/k㎡ ㎡/k㎡ 台/世帯. [+] [+] [+] [+]. 相関が[ +] の場合:影響因子が増加すれば構成要素も増加する正の相関を表す。. よる方法を適切に使い分ける必要がある。各セクター. 相関が[ -] の場合:影響因子が増加すれば構成要素は減少する負の相関を表す。. 42- 2.

(3) の構成要素と構成要素への影響因子を表 2 に示す。. この影響に引っ張られて移動数が増加している。また、. 人口セクターでは、自然増減(出生と死亡)と社会. 2035 年前後に第 3 次産業従業者率が低下するため、出. 増減(転入と転出)による人口変化をモデル化した。. 生率が上昇し出生数が増加している。このように、魅. 移動数(転出入数)には、第 3 次産業の発展により転. 力乗数の大きさの設定に偏りがあるため、影響の強い. 入の魅力が高まるとして第 3 次産業従業者率による魅. 因子にシステムの挙動が引っ張られ、その他の因子に. 力乗数を組み込んでいる。出生数にも第 3 次産業の発. よる影響が現れにくくなっている。. 展にともなう女性の就業率の増加により、晩婚化が進. 図 5 に交通手段別人キロの比較を示す。特に乗用車. み出生率が低下するとして第 3 次産業従業者率による. 人キロにおいて 2000 年あたりからの減少傾向が捉え. 魅力乗数を組み込んでいる。. られていないのは、交通手段別分配率は現在対象とし. 住宅セクターと民生業務セクターでは、着工と解体. ているセクターの要素だけではモデル化が困難であっ. による建物ストックの変化をモデル化した。住宅の着. たためである。交通の選択行動は行財政セクターにお. 工には、住宅が増えれば着工が抑制されるとした住宅. ける政策方針や公共交通サービスの発達、土地利用セ. 密度による魅力乗数と、世帯数に対して住戸数が多け. クターにおける人口分布などから強い影響を受けると. れば空き家が増え、着工が抑制されるとした居住率に. 考えられ、今後はこれらセクターのモデル化をすすめ. よる魅力乗数を取り組んでいる。また、民生業務部門 総人口(統計値) 老年人口(統計値). の事務所セクターでは、人口集中と商業集積の伸び率. 年少人口(統計値) 総人口(計算値). 生産年齢人口(統計値) 年少人口(計算値). 200 国勢調査による人口. が事務所の着工を促進させるとして人口伸び率と商業. 人口問題研究所による予測人口. 180 160. 施設伸び率による魅力乗数を取り組んだ。この他にも、. 140. 人口 [万人]. 卸小売業、飲食業、医療業、教育施設の着工率への影 響として販売額、患者数、学生数などの需給関係によ る魅力乗数を組み込んでいる。. 120 100 80 60. 交通セクターでは、総トリップ数に交通の目的別分. 40. 配率と手段別分配率を乗じて交通の目的・手段別トリ. 20 0 1975年. ップ数を推計している。例えば、通勤分配率は総従業. 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 3 人口の比較(福岡市). 者数の増加によりその比率も高まり、さらに人口密度 や乗用車保有率の影響を組み込むことで通勤の手段別. 出生(統計値) 出生(計算値). 2. 5. 死亡(統計値) 死亡(計算値). 移動(統計値) 移動(計算値). 分配率を推計している。 2. 出生数、死亡数、移動数 [万人]. 環境セクターでは、部門別活動量(住宅戸数や延床 面積など)に CO2 排出原単位を乗じて CO2 排出量を推 計している。 3. 2シミュレーション結果の検討 個別セクターモデルを統合して行った 1975 年∼. 1. 5. 1. 0. 5. 2050 年までの計算結果と 1975 年∼2005 年までの実績. 0 1975年. 値との比較により現状モデルの問題点に関して検討す る。但し、現在対象としているセクターの要素だけで 価には 1975 年∼2005 年は実績値を、2005 年以降は. 600. 交通手段別人キロ [千万人キロ]. はモデル化が困難であった住宅用地地価、商業用地地. 700. 2005 年値を固定値として与えた。 図 3 に人口の比較を、図 4 に出生数、死亡数、移動 数の比較を示す。なお、図 3 における 2005 年∼2035 年の統計人口値は人口問題研究所による福岡市の人口 予測値である. 2). 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 4 出生数、死亡数、移動数の比較( 福岡市). 。人口は、移動数の推計値が多いため. 鉄道(実績値) 鉄道(計算値). 乗用車(実績 値) 乗用車(計算 値). バス(実績値) バス(計算値). 500. 400. 300. 200. 100. 約 2035 年まで増加し続ける。移動数では、第 3 次産業. 0 1975年. 従業者率の影響が他の影響因子と比較して大きいため、 42- 3. 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 5 交通手段別人キロの比較(福岡市).

(4) 確認できた。. ていく必要がある。 図 6 に建て方別住宅戸数の比較を、図 7 に用途別民. 2) 魅力乗数の大きさは、複数のパラメーターのバラ ンスを考慮して設定する必要がある。. 生業務延床面積の比較を示す。共同住宅に居住する世 帯の増加に対して共同住宅のストック戸数の増加が大. 3) 魅力乗数の将来の傾向と影響の大きさは実績値と. きいため居住率は低下し、共同住宅の着工率も低下す. の比較検証だけでは規定できず、アンケート調査. る。しかし、住宅密度が基準年の 3 倍以上になると住. や専門家の知見等を収集、組織化して設定する必. 宅密度による魅力乗数は一定の値となるよう設定して. 要がある。. いるため(図 2)、2010 年以降は住宅密度による魅力乗. 4) 要素間の依存・因果関係を再度検討し、現在取り. 数の値は低下しない。このため、共同住宅着工率の減. 組まれていない影響要因や将来的に大きな影響要. 少傾向が鈍化し共同住宅ストック戸数は増加し続ける。. 因となりうる要素に関して検討する必要がある。. 同様に、民生業務部門の延床面積においても、事務所、. 【参考文献】. 卸小売業、飲食業では、着工率の減少傾向が小さく. 1) isee systems, inc.: STELLA Software.1985-2004.. 2050 年まで延床面積は増加し続ける。人口伸び率と商. 2) 国立社会保障・人口問題研究所:日本の市区町村別 将来推計人口、2000∼2035、(財)厚生統計協会. 業施設密度伸び率の低下により事務所の着工率は減少 傾向で推移するが、延床面積の増加を抑制するほど着 工床面積の低下はみられなかった。各魅力乗数は実績. 戸建住宅(計算値). 共同住宅(計算値). 戸建住宅(実績値). 共同住宅(実績値). 140. 値の傾向と適合するようにそのグラフ関数の形と影響. 120. の大きさを決定する。しかし、実績値からでは推定で 100. 戸建・共同ストック戸数 [ 万戸]. きない将来の傾向と影響の大きさに関して検討が不十 分であったため、低下するであろうと予想される着工 率の動態挙動が再現できていない。但し、着工率を低. 80. 60. 40. 下させる要因として現在取り組んでいる要因以外に別. 20. の影響因子が存在することや、実績値の段階では影響. 0 1975年. を及ぼさないが、将来的に大きな影響因子となる要素. 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 6 建て方別住宅戸数の比較(福岡市). の存在も考えられる。. 50. 最後に、図 8 に部門別 CO2 排出量の比較を示す。CO2. 45. 排出量は住宅戸数と民生業務セクターの延床面積の増 民生業務部門途別延床面積 [ 百万㎡]. 40. 加にともない増加している。今後、環境負荷の増大は 出生率の低下や資源価格の増大により社会の成長を抑 制させる大きな要因になると考えられるが、そういっ た影響を推計することは難しく、現在のモデルには環. 事務所(計算値). 卸小売業(計算値). 飲食業(計算値). 宿泊業(計算値). 医療業(計算値). 教育施設(計算値). その他(計算値). 事務所(実績値). 卸小売業(実績値). 飲食業(実績値). 宿泊業(実績値). 医療業(実績値). 教育施設(実績値). その他(実績値). 35 30 25 20 15 10. 境セクターから他のセクターへのフィードバック構造. 5. が組み込まれていない。. 0 1975年. 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 7 用途別民生業務延床面積の比較( 福岡市) 4. 総括. 民生家庭部門(計算値) 民生家庭部門(実績値). 16. 本論では、都市を対象に環境負荷を中長期的に予測. 民生業務部門(計算値) 民生業務(実績値). 運輸部門(計算値) 運輸(実績値). 14. できる都市環境負荷予測シミュレーター開発の基礎的 12. 部門別CO2排出量[百万t-CO2]. 研究として、システムダイナミクス手法を用いた都市 環境負荷予測シミュレーターの開発方法を示し、計算 結果と実績値の比較精度検証により、今後のモデル開 発における方向性を明らかにした。得られた知見を以. 10. 8. 6. 4. 下に示す。. 2. 1) システムダイナミクス手法を用いた都市のモデル. 0 1975年. 化により、都市の動態な挙動を再現できることが. 1990年. 2005年. 2020年. 2035年. 2050年. 図 8 部門別 CO2排出量の比較(福岡市) 42- 4.

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