人
間
の
習
得
性
に
つ
い
て
O
ー
文
化
化
と基
本
的
習
慣
の形
成
・主
に乳
幼
児
の生
活
課
題
1
人 間の 習得 性につ い て (藤 井竜 和)藤
井
立 屯口
矛
承
前 又 、
護
美 を 作 らず
、 捨 て ず 、 屑 籠 に 入 れ る 習 慣 を 形 成 し 、 部 屋 も 乱 雑 に 使 わ な い 整 理 整頓
、 後 片 附 け 、 お か た づ け 、埃
り っ ぽ い 所 の 打 ち 水 等 が 出 来 る 様 な 能 力 の 育成
も 必 要 で 、 掃 除 清 掃 作 業 が 可 能 な 子供
を 育 成 す べ き で あ る 。以 上 、 か く て 、
「 病 は 気 か ら 」 と い う が 、 か か る
簡
単 な 事 か ら 心 掛 け る こ と こ そ 、精
神
の浄
化 に も 必 要 な こ と で あ る 。 用 便時
の後
仕 末 が 出 来 る こ と も 、 勿 論 、 こ の 系 の 問 題 で あ る 。 快 適 な 生 活 (8
日 { o 「 富 げ 一 Φ年
ω ¢ 一 ) こ そ 、精
神 衛 生 に 良 い事
で あ る 。 〔W
〕 安 全 (篝
hoξ
) の 習 慣 以 上 が 今 迄 い わ れ て い た身
辺 自 立 ( Oo 。 一 { − 霞 ぜ ) の 為 の 五 つ の 基 本 的 生 活 習 慣 で あ り 、 人 間 化 へ の 道 程 は 、 こ の 形 成 に先
ず 以 てあ
る 。 又 、 子供
の 社 会 的 人 間 と し て の値
う ち も 、 こ れ に よ っ て 造 成 さ れ る 。 し か し 、 今 日 、 交 通 戦争
等
云 々 さ る る 時 、安
全 の習
慣
も 入 れ る べ き で あ ろ う 。交
通 ル ー ル を 遵 守 し 、 危 険 な 場所
で 遊 ば な い と い う こ と は 、現
代
児 の 心 掛 け で あ る 。 又 、 刃物
の 使 い 方 も 上 手 で な け れ ば な ら ぬ 。 火 器 の 取 扱 い は 、 特 に 慎 重 で な け れ ば な ら ぬ 。無
邪 気 な 幼 児 は 、 危 険 事 物 に誘
惑 さ れ 易 い の で 、 是 非 共 、 親 の 監視
が 必 要 で あ る 。 団 地 の テ ス リ 、落
し 穴 、 ア リ 地 一63
一智山学 報第二十八輯 獄 、 川 の 深 み 、 マ ッ チ 、 ラ イ タ ー 、 石 油 ス ト ー ブ ( 冬 場 ) 、 ガ ス コ ン ロ 、 電 気 器 具 、 ガ ラ ス や 割 れ 物 等 々 、 危 険 個 所 や
危
険
物
は 、 幼 児 の 周 囲 に 無 数 に あ る 。 人 間 の 本 能 は 退 化 し て い る の で 、 か か る も の を 選 眼 す る 心 の 眼 、 用 心 の 、 心得
は 、是
非 共 学 習 さ れ 、 獲 得 、 習 得 さ れ ね ば な ら な い 。 繰 り 返 し て 述 べ る な ら ぽ 、鋭
利 な 刃 物 ( 小 刀 、 彫 刻 刀 、 包 丁 ) は 、 六 才 で 一 人 持 た し て も 危 く な い 。 又 、 水 難 も コ コ コ コ コ 危 険 で 、 一 寸 泳 げ る 様 に な っ た時
が危
い 。身
の 程 を 知 ら し め し て 、 冒険
心 を 高 め ず に 、 少 し く 押 し 留 め る べ き で あ る 。 こ れ は 、 間 ( ℃ O け゜ 勺 O コ O ) の 心 理 学 と い う べ き で あ る 。 し り ぞ 又 、 種 々 な 器 物 で も 、 ど う し た ら 危 い か 、 認 識 さ る べ き で 、 下 手 を 退 け 、 上 手 を 喚 起 す べ き で あ る 。 器 具 、 什 器 の 取 扱 い は 大 切 で な け れ ば な ら ぬ 。 間 又 は 時熟
の 心 理 は 、 上 手 の 心 理 で あ る 。 又 、衝
動 余 っ て 、 群集
心 理 で 、 こ わ い物
知 らず
で は 危険
で あ る 。 ス ベ リ 台、 ジ ャ ソ グ ル ジ ム 、 ガ ラ ス 戸 、 自 転 車 も 、 一変
し て 、 凶 器 に変
身 す る 。多
勢
で 無茶
し な い 様 、幼
児 は 、 教育
さ る ぺ き で あ る 。 幼 保 一 元 化 は 、 こ ん な 所 に も 、 あ る の で は な い か 。 〔 皿 〕 よ く 遊 ぶ こ と の 習 慣 よ く 遊 ば な い 子 供 は発
達 し な い 。 手 や 足 を働
か せ 、 目 や 耳 を 使 っ て 、 全 身 で 活 躍 す る 子 供 は 、 頭 脳 も よ く な り 、走
っ て も こ ろ ば な い 。 遊 び ( ω 且 Φ 尸 巳 Q 鴇 ) は 、 遊 び と い う 行 為 を す る 事 に よ っ て 、 そ の 中 に楽
し み 、 喜 こ び 、 愉 快 さ を湧
出 す る も の で あ る 。 幼 児 は 、 活 動 す る こ と が 快 で あ り 、 学 習 な の で あ る 。 故 に 、 遊 べ な い 幼 児 は 、 幼 児 ら し く な い 。 一 人 遊 び で も い い 、 幼 児 の 生 命 は 、 内 部 か ら 必 然 的 に 湧 出滲
出 す る 自 然 の 活 動 要 求 に支
え ら れ て い る 。 然 し 、 遊 び は 、 種 々 の 遊 具 、 玩 具 、 素 材 を 使 っ て 為 さ れ る で あ ろ う か ら 、 又 、 そ の 事 を 以 て 、 カ タ ル シ ス さ れ る 一64
一人 間の習得性に つ いて (藤 井竜和) の で あ る か ら 、 そ の
後
始 末 ( お か た づ け ) も 、 そ の範
疇 に 入 る も の と し て 学 習 さ れ な け れ ぽ な ら ぬ し 、躾
ら る べ き い の ち で あ る 。 さ も な け れ ば 、 投 げ や り な 、 仕 末 に 負 え ぬ 子 供 を作
る 。 物 に は 、 生 命 が あ り 、 終 り が あ る 事 、節
度
を 教 え な け れ ば な ら な い 。大
事 に 物 を扱
え ぽ 、 い つ ま で も 新 品 同 様 使 用 可 で あ る 。 フ ラ ソ ク リ ン は 、 そ の 自 叙伝
に 於 て 、 「 物 は 、 あ っ た 所 へ置
け 。 あ る べき
様
、 望 ま し き 様 し つ ら え ら れ た 元 通 り の 処 へ 置 け 」 と物
の 整 理 学 (自
戒 ) を 唱 道 し た 。 何 が ど こ に あ る か と い う こ と を 明 確 に し て 置 く 事 は 、 日常
の ノ ル マ (各
個 人 に 割 り 当 て ら れ た 労 価 の 生産
的 責 任 的 基 準 量 ) に 格 好 で あ る 。物
を 失 わ な い 様 に 、 ち ゃ ん と 取 扱 い 、 遊 戯 後 は 数 を 数 え て 仕 舞 っ て お く事
は 、 資 源 ( 物 ω87
Φ ) を 大 切 に す る 習 慣 を つ け る 。 物資
不 足 程 、 貧 に し て 不 自 由 な る は な い の で あ っ て 、 使 い 捨 て は 良 い 習 慣 で は な い 。無
駄
の 効 用 、廃
材 の 利 用 で も 、 結構
、遊
び の 道 具 と 成 る 。 そ し て 、 そ れ は 消 費 的 で は な く 、 生産
的 な 事 柄 な の で あ る 。 部 屋 の使
い 方 が 粗 雑 で 、 乱 雑 に 護 美 を 留 め て お く の は 、 品 行 上 よ く な く 、 是 非 共 、 整 理 整頓
、 美 化 に 心 掛 く べ き で あ る 。物
を 大 事 に す る習
慣
は 、 更 に 、木
や 草 花 に も 美 を 見 出 す 、 よ き観
念 を 形 成 す る 。 木 の 芽 を摘
ん だ り 、 動物
を 殺 す と い う 無 慈悲
な 行為
は 発 達 さ す べ き で は な い 。 殺 生 す れ ば 、 必 ず 供 養 す べ き であ
る 。 動 植物
を 大 切 に し 、 殺 せ ぽ、 墓 を 作 る と い う 行為
は 、 又 、自
分
自
身 を も 大 切 に す る 観 念 に 連 結 す る 。 そ し て更
に 、 私 物 と 共 に 公 共 物 を 大 切 に す る 行 為 は 、 良 き 市民
を 育 成 す る 。 か か る 生 命 の 尊 重 、 美 化 の 心 得 は 、 安 全 教 育 、 美 化 運 動 ( 例 え ば 、 教 室 に 花 を 生 け る な ど ) に 込 め ら れ て い る 。 本 当 の 郷 土 愛 、 母校
愛 は 、 こ ん な と こ ろ に も あ る も の と 思 わ れ る 。 ア ル バ イ ト 〔 皿 〕製
作 ・ 労作
、 学 習 の 習慣
( 十 七 ) ( 十 八 ) 大 西 は 、 仕 事 の 習 慣 を 言 っ て お り 、 匂゜ 霞 餌 ≦簪
自
。・ け は 発達
課 題 の事
を 言 っ て い る が 、 精 神的
労作
を い う 学 習 の 問 題 で も あ ろ う 。 こ れ は い ず れ も 、 身 体 的 ・ 一 65 一智山学報第二 十 八輯 人 間 は 、 先 ず 、 手 足 を 働 か せ て 頭 脳 明 晰 に な る も の で あ り 、
製
作 と い わ れ る 手 細 工 ・ 紙細
工 ・ 切 紙 細 工 ・ 折 紙 細 工 ・ 粘 土細
工 ・ 手 工 や 工 作 、 絵 画 ・習
字 等 芸 術 、創
作 が 先 ず 以 て 我 々 の 観 念 に 浮 上 す る 。 又 、 言語
を 学 習 す る と い う事
は 、 人 間 並 に な る こ と で あ り 、美
し い 言 葉 を使
っ て交
通 す る (8
ヨ ヨ ‘ 巳 o 讐 す る ) と い う 事 は 、 動 物 か ら 隔 然 す る 人 間 的 特 徴 で あ る 。 又 、 感 情 を 統 制 し 、 精 神 的 支 柱 ( げ ⇔ O 断 げ O 昌 Φ ) を作
る と い う 精神
的 労作
の概
念 がO
窪
創 蒔 に あ る が 、 こ れ は 囚 。 閉 ゲ 虫 p ω → ご 臼 が い う 身 体 的 労作
と 共 に 男 「 臣 窪 ⇔ 一 一 〇 ⇒ → o ぽ お 昌8
の 形 成 に 必須
の 事 柄 で あ る Q 従 っ て 、後
程 、 モ ラ ル の 形 成 で 述 べ る 様 に 、 粗 忽 に 、 怒 り 、嫉
妬 を 表 出 す べ き で は な い 。 又 、 こ こ で い う学
習 は 、 言 語 の 学 習 と 共 に 、 他 の 人 々 と も 仲 良 く 暮 ら し て 行 け る 社 会 性 を も 学 習 し な け れ ば な ら な い の で あ る 。 人 間 は偕
存 在 で あ る か ら 、 か か る 人 間 関 係 に つ い て の 認 識 は 、換
言 す れ ば 、 和 親 ・ 和睦
の精
神
は 、 是 非 共養
成 さ れ な け れ ば な ら な い 。 一 方 的 に支
配 的 ・ 搾 取 的 で 自 分 勝 手 流 で は自
己 中 心 的 で 余 り に も 狭 量 で あ る 。 如 何 に も 脱 自 己 中 心 的 、 社 会 的 であ
る べ き であ
る 。 社 交 性 ( ω 。9
接
簑 亳 ) と い う の は 、 う ま く 世 渡 り を す る と い う社
会 的 狡 猾 性 を い う の で は な く 、 他 と 偕 に居
る こ ヘ ヘ へ と が 出 来 る 社 会 的 成熟
性 を 学 習 し て 身 に つ け て お け る 社交
的 可 能 性 ( 間 柄 保 持性
) を い う の で あ る 。 そ れ は社
会 的 、 ポ ソ サ ァ ス 集 団 中 心 的 で あ る 。 良識
( 良 い感
覚
、 セ ン ス の 良 さ ) も 、 か か る 次 元 の 常 識 又 は 常 道 を い う の で あ る 。 弱 い者
い じ め 、 非協
調 性 、 非 協 力性
は 真 の 社会
性 で は な い 。 正 に 非 同 和 的 で あ る 。 「 天 は 人 の 上 に 人 を 作 ら ず 、 人 の 下 に 人 を 作 ら ず 」 で あ る ( 福 沢 ) 。 正 に 「 こ と ば 」 の使
い方
も 人 道 主 義的
で あ る べ き で あ る 。 〔 医 〕 エ テ イ ヶ ツ ト コ モ ラ ル 礼 節 ・ 礼 儀 の 習 慣 か く て 、 基 本 的 な 社 会 的 性 格 に働
く 要 因 と し て 、 子 供 を 受 け 入 れ る 社 会 の 健 全 な 文 化 へ の適
応 と し て 九 の 基 本 的 一66
一人間の 習得 性に つ い て (藤井 竜和 ) 習 慣 の 形 成 が 必 須 な の で あ る が 、 人 間 的 に 幼 児 が 育 つ に は 、 愛 と 教 育 が な け れ ば な ら な い 。
先
ず 、 母−
子 の 肌 と 肌 と が触
れ 合 う ス キ ソ シ ッ プ 的 な 関 係 ( ω 匹 昌8
ω 田 昌 同 一 尠 侍 凶 o 旨 ) が 触 れ る 教 育 ( 正 木 ) と し て 必 要 で あ り 、 次 い で 微 笑 を交
わ す 面 つ き 合 わ す 関係
( 哨 ⇔88
閏 98 同 巴 魯 凶 o 口 ) が 、 基 本 的 に情
育 (情
緒 安定
化 教育
) を達
成 す る 。 こ れ を ペ ス タ ロ ッ チ は 、 愛 す る こ と と 信ず
る こ と (一 δ冨
ロ ロ巳
σq 『 昌 げ9
) と い っ た 。 フ ロ イ ド は 、愛
す る こ と と働
く こ と が 必要
( 一 δ げ 昌 ロ コ 亀 碧 げ 色8
昌 ) と い う 成 人 教 育 を い っ た 。 そ の 後 続 は 、 父 親 の (意
) 欲 を喚
起 す る 教 育 の参
与 が 必 要 で あ る ( 岡 ) 。 子 供 の 「 や る 気 」 「 野 心 ( ゆ o 甥 げ ¢ 節 日・ 荘 菖 O昜
) 」 「 冒 険 心 」 「 探 究 心 」 「情
熱 (饗
゜・ 巴 O 昌 ) 」 が 、 生 活 を革
命 化 す る 。 ( 十 九 )私
が 教 え て い る 学 生 の 研 究 に よ る と 、 数 学 者 岡潔
は 、 次 の 様 な事
を 言 っ て い る と い う 。 ニ ニ ろ コ 、 二 、 三 才 は 、 大 自 然 が も っ ぱ ら 情 緒 を 育 て る 季 節 で 、 四 才 で は 時 空 を 教 え 、 五才
で 自 他 ( 社会
) を教
え 、 六 才 で 集 っ て 遊 ぶ こ と や 面白
さ ( 労作
又 は 仕 事 ) を 教 え る 。 Lコ
、 二 、 三才
迄 は 童 心 の時
期 で ( 柔 軟 心 で )自
分 で 自 分 を 意 識 し て い る こ と は み ら れず
( 天 真 爛 漫 、 無 邪 気 そ の も の で あ る 。 ) 自分
と い う 意 識 は 、 ( 母 や 養 育 者 な ど 他 の 人 々 の 自 分 に 対 す る 評価
か ら 形 成 さ れ る の で ) 生 後 六 十 日 ( ニ ケ 月 ) の 子 の 目 の 中 に 既 に 動 い て い る 事 が わ か る ( が 、 そ の瞳
は 澄 み 切 っ て い て 曇 り が な い 。 ) 」 ( か く 観 察 す る 時 、 子 供 が 真 正 面 か ら美
し い瞳
を 輝 か せ て 、 信頼
の エ ン ゼ ル 眼 差 し で 、 親 に 物 を 尋 ね た り 、質
問 で 迫 っ て 来 る の は 全 く自
分
の 児 で な い 、神
の 御 子 ( 天 使穹
σq Φ 一 ) の 様 で あ る 。 ) 「 こ の 期 の幼
児 は 、 物 心 両 面 に わ た っ て 、森
羅 万象
を 、 『 見 る 目 』 ( 先 入 観 、 人 間 知 ) で な く 、 『 見 え る 目 』 ( 映す
鏡 と し て ) で 、 曇 り な い瞳
で み る 。 」 「 ( 兎角
知 恵 が 附 き 出 す と 、 こ ち ら か ら 決 め て か か っ て 、 偏 見 で物
事 を 正 し く 映 し 出 さ な い の で あ る が ) 万 象 の 方 か ら 幼 な 児 の真
情
に 飛 び 込 ん で 来 る の で あ る 。 」 (括
弧
筆
者
註 ) こ の 嬰童
無
畏 心 ( 弘法
) を裏
切 ら な い 様 に 、 母 が 愛 情 で 包 み 、 父 が慈
愛 で接
し 、情
育 に 努 め る な ら ば 、 子 は信
頼感
で 答 え る で あ ろ う 。 こ の 血 縁 ・ 絆 こ そ 、 親 子 の愛
で あ り 、 情緒
的 安定
の 礎 ( 間柄
性 ) で あ る 。 岡 潔 も 、 こ の期
に 一67
一智 山学報 第二 十八輯 子 供 の 信 頼 を
裏
切 ら な い 様 に 「 愛 と 信 を 教 え 」 る べ き だ と 、 ペ ス タ ロ ッ チ と 同 じ 、冨
び穹
1
ぴq げ ロ げ 。 ロ 切 陪 。 『暮
σq穹
(愛
i
信 関 係 ) を述
べ て い る 。 「 あ ん よ は 上 手 、転
ぶ は お 下 手 」 と 親 が 子 を育
成 す る 間 に 、 子 供 は 自尊
心 を 保 持 し 、活
動 性 を 発 揮 し て 、 一 ダ ー ス 位 の 快 か ら 不 快 に わ た る情
緒 を 、 二 才 の 終 り ま で に 発 達 さ す (甲
亂 閃 窃 ) 。 正 に 「 三 つ児
の 魂 百 迄 」 「 す ず め 百 迄 踊 り を 忘 れず
」 と い う 幼 い時
に 定着
し た 心 理 は 、後
々 ま で 持 続 す る 。 岡 潔 は、 四 才 に つ い て は 、 「 理 性 の 原 型 と 時 空 の ( 観 念 ) が 出来
( 生 活 空 間 を 形 成 し ) 、 同 時 に 運 動 の 主 体 と し て の自
分
( 自 己 ) を 意 識 す る 様 に な る が 、 ( 困 る と泣
く の が 精 一 杯 で ) 自 他 の 区 別 は未
だ意
識 で き な い (未
だ自
己 中 心 的 で あ る ) 。 」 五 才 は 「 感情
、 意 欲 の 主 体 と し て の 自 分 ( の パ ー ソ ナ リ テ ィ ) を 意 識 す る 様 に な る 。 す る と も う 自 他 の ( 区 ) 別 も 明 瞭 化 し ( 脱 自 己 中 心 化 が 起 る ) 。 ( 自 己 中 心 性 が 開 化 し 、社
会 性 を獲
得 す る と ) 自 分 と い う意
識 の 根幹
が ( 初 め て礎
定 さ れ る の で あ る 。 ) 」 「 六 才 で 集 団 遊 び を し 、 ( 自 己 を は っ き り 社 会 の 成 員 の 一 人 と し て 定 位 づ け る ) 。 」従
っ て 、 四 才 以 後 の 教 育 ( 反 抗 期 以後
の そ れ ) は 、 父 が 「 信 と 欲 」 ( 友 に 信 、 自 己 に 欲 ⇔ ヨ げ 三 〇 ロ ) を 教 え て 、 道 義 の 根 本 を躾
る べ き で あ る 。 父 親 は 「 言 行 一 致 に よ っ て ( 躾 の 一 貫 性 保 持 に よ っ て ) 、 幼 児 の 信 ( 頼 ) を 培 い 、 こ れ を 裏 切 っ て は な ら な い 。 」 そ し て 、 勿 論 、 「 父 の教
え る べ き 欲 ( 野 心 ) が 、勿
論 私 を 去 っ た 向 上 欲 、 ( 自 己 ) 救 済 欲 で な け れ ば な ら な い 。 」 ( 括 弧 筆 者 註 )幼
児 は 四 才 以後
、 良 否 、善
悪 、 強 弱 ( ど っ ち が強
い 、 ど っ ち が 悪 い 、 と い っ た 質 問 ) な ど、 真 ・善
・ 美 ・ 聖 。 力 ・ 利 ・健
・ 財 と い っ た 価 値 に つ い て の 質 問 を す る で あ ろ う ( 質 問 期 ) 。こ れ に 対 し 父 は 、 勝 義 の 価 値 を 教 え 、 探 究 欲 や 好 奇 心 に 訴 え て 、 自 己 の 拡 大 を 図 っ て 見 聞 を 広 め 覚 知 に 至 り 、 上 品 的 価 値 に 向 っ て 上
昇
す る 向 上 欲 ・発
展 欲 を 教 え る べ き だ 、 と 岡 は い う 。 そ こ に は 、親
が 返 答 に 困 窮 す る 「 出 生 の 秘 密 」 や 「 性 の 問 題 」 「 存 在 の 問 題 」 等 含 一68
一人間の 習得性につ い て (藤井竜和) ま れ て い る が 、 そ の 親 を
乗
り 越 え 、 発 展 的 解 消 的 な 「 欲 の あ る 教 育 」 を 岡 は 述 べ て い る の で あ る 。 か く て 児 の 生 き 方 の中
に 、協
同 、奉
仕 、 献 身 、 自 己 主 張 や自
己 表 現 、 自 己 統 制 や 自 律 等 の 自 己 更 新 的 精神
( °・舞
・ 器 旨 。 ≦ ぎ σq °・ 甘葺
) が 養 成 さ れ る の で あ る 。 か く て 、自
分 の 欲 望 の あ る ぺ き 処 置 の 仕方
を 獲 得 し 、 欲 求 不 満 耐 性 を身
に つ け 、 自分
に与
え ら れ た 発達
課 題 を 全 う し、 自 律 的 ・自
覚 的 人 間 を 実 現 す る の で あ る 。 か か る自
己 実 現 へ の 道 は 、遺
伝 と 環境
の 制 約 を 超越
す る 人 間 丈 に 附 与 さ れ た 道 で あ っ て 、 こ の 個 性 に 沿 っ た 道 ( 凶 ロ 集 三 匙奏
→ δ 昌 ) は、 仏 道 に沿
っ た 道 で も あ る 。 更 に 、 他 人 と 共 々 に 生 き て い る尊
さ を感
じ ( わ れ わ れ 意 識 、 仲 間 意 識 ) 、他 と 共 に 生 き る 喜 び を 満
喫
( あ ら ゆ る た ず さ欲
望 を 満 足 さ せ る こ と 、存
分
に 楽 し み を味
う こ と ) し 、 共 々 に 手 を携
え て 、 美 し い 平和
な ( 暴 力 や 争 の な い ) 明 る く 楽 し い 世 の 中 に す る 事 に 人 間 の連
帯 感 を 見 出 し 、 菩 薩 行 ( 他 と 共 に 向 上 を 図 る 行 い ) に 精 進す
る 事 こ そ 、仏
道 ( 無 上菩
提 へ の 道 ) に 叶 っ て い る 。 十善
行 を行
う 事 、 即 ち 、 諸 悪 莫 作 、 衆善
奉 行 た る は 、 こ の完
全 円 満 な る満
月 的 人 間 へ の 登竜
門 乃 至 は 階梯
で あ る 。 か く て 、 人 間 は 、 第 二自
然 的 人 間 性 を獲
得 す る こ と に よ っ て真
人 間 に な り 、 こ れ が 自 分 で あ る と い う真
実
の 自 己 、 他 に よ っ て は 変 え ら れ な い 自 己 の あ り 方 や 立 場 を見
出 す で あ ろ う 。 従 っ て 、 善 男善
女 は 、 先 ず 、 十善
戒
の 実行
か ら 出 発 す べき
で あ る 。的
真
人間
へ の 道ー
第 二 自 然 の 獲 得 じ ゆ ん し ゆ 真 人 間 ( 本 当 の 人間
ら し い 人 間 ) へ の 道 は 、 先 ず 十善
戒 を 遵 守 す る こ と で あ る 。 ω 不殺
生 (ぎ
峠匡
=
冨
ま 。=
三
ロ σq島
ロ αq °・ ) … … 生 命 の 尊 さ を 教 え よ 。 生 き た る 物 、 事 物 や資
源 と 云 え ど も 有 限 で あ る 事 を 知 れ 。時
不 待 人 、 正 に 迅 速 、 出 会 い ( 人 や 場 面 、 状 況 と の ) は 一 回 切 り の 一 期 一会
の価
値 な り 。 人 ・ 物 を 大 切 に し 、 争 や殺
生 で な く 、和
や 育 成 に よ っ て 、 生 殺与
奪 で は な く 、 否 定 (無
我 ) を 通 し て 、肯
定 的境
地 に 住 一69
一智山学報第二十八輯 す べ き で あ る 。
ω
不 偸 盗 ( 昌9
°。 → o 巴 ) … … 人 の 物 は 人 の 物 で 、 自 分 の も の は 自 分 の も の 、 他 人 の 物 も 自 分 の物
で は な く 、物
に は 誰 か の 所有
権
が あ る 。 欲 す れ ば 、 穏 や か に 交 渉 し て 代 価 を支
払 っ て 獲 得 し な け れ ば な ら な い の が 人 間 社 会 の ル ー ル で あ る 。 さ も な け れ ぽ 、 入 会 地 を 設 定 す べ き で あ る 。交
渉 が 出 来 ず、 一方
的 に 「 欲 し い 、 頂戴
」 と い っ て 母 に 泣 き つ い た り 、黙
っ て 盗 む と い う の は 、 社 会 的 に未
熟
な せ い であ
る 。 社 会 性 の 欠 如 で あ る 。 世 間 中 で は 、 自分
の欲
望 の み 満 足 さ す様
に は 出 来 て い な い 。 如 何 に も 入手
難 け れ ば 、 口 を ひ ね っ て辛
抱
す る 位 の 忍 ぶ 心 、耐
え る 力 、 忍 耐 力 を培
う こ と こ そ 、 人 間 ら し い 生 き 方 、 あ り 方 であ
る 。 全 て 人 間 は 、 裸 一 貫 か ら 、 習 得 を 通 じ て 一 人 前 ( 成 人 ) に な る と い う 人 の道
を 知 っ て い な け れ ぽ な ら な い 。従
っ て 、 生 涯努
力 が 必要
な の で あ る 。 堕落
し て も 、 人 生 の 深 み に沈
ん だ と し て も 、 そ こ か ら 立 ち 上 る 力 を も っ て い る 人 間 こ そ 偉 人 で あ る 。 捲 土 重 来 こ そ 、 人 間 に 課 せ ら れ た 試錬
( 信 た仰
・ 決 心 な ど の 強 さ 、 き び し さ を き つ く 試 め す こ と 、 又 そ の時
受 け る 苦 難 に い か に も 耐 え る 耐 久 力 の 保 持 ) であ
る 。不 邪 婬 ( 昌 o 酔 ヨ 登。 一・ 冒
8
苫 o ロ 磊 ) … ・ : 性 は 、清
潔
の 壗 で 、純
粋
な 心 の 保持
の あ る と こ ろ 、 美 であ
り 、快
適 で あ り 、 楽 で あ り、 清麗
で あ る 。 し か し 、 取 り 扱 い を 間 違 え 耽 溺 す る な ら ば 、醜
と な り 邪 悪 と な る 。 エ ロ ス に お ぼ れず
、 適 度 に 節 度 を 以 て 正 し く使
用 す る な ら ば 、 永 遠 の 美 を存
在 せ し め る 。 十 善 戒 の初
め の 三 つ は 、 制 度 的 で あ り、 犯 せ ば 法 律 違 反 ( 犯 罪 ) と な る 。 殺 生 ( 人 を 殺害
す る ) 、 偸 盗 は 正 に 犯 罪 で あ り 、 性 も 制度
的枠
組 ( 一 矢 一 婦制
、禁
二 重 婚 ) が あ る 。 草木
に し て も 誰 か の 所有
権 が あ り 犯す
事
が 出 来 な い 。 公害
も 、 社 会 監 査 が あ っ て し か る べ き で あ る 。 人 間 は 社 会 的 な 存 在 だ と い わ れ る が 、 正 に 制 度 的 人 間 、 遵 奉 的 人 間 ( 国 o ヨ o ω 090 一 〇 σQ 言 昜 ) こ そ 、 人 間 を 人 間 た ら し め て い る 一 つ の 柱 で あ る 。 ω 不妄
語 (邑
=
ゲ # 三 貫邑
=
『 。 霊9
) … … ど こ の 国 で も 共 通 語 が あ る 。 こ れ で 以 て 互 い の意
志 疎 通 を 容 易 な ら し め て い る 。 社会
内 言語
と し て は 、 更 に 、 正 し い事
実 に 基 づ い た 言 葉 で 語 り 、空
論
に 走 っ て は な ら な い 。 正 し い 一70
一人間の 習得性につ い て (藤井竜和 ) お こ な い カ ル マ 身 ・ 口 ・
意
、 正 し い意
識 と行
動
こ そ 、 正常
な る 人 間 の 行 花 ( 業 ) で あ る 。 幼 児 の 赤 ち ゃ ん 言葉
は 成 人 し た暁
に は解
消 さ れ な け れ ば な ら な い し 、 隠 語、 ス ラ ン グ ( 俗 語 、 方 言 ) は 、 慎 し ま な け れ ぽ な ら な い 。 乱 雑 な 、 乱 れ た 言葉
の ( 二 + )使
い 方 は 、 人 間 の 品 位 を格
下 げ す る も の で あ る 。 か か る 邪 な る 言 語 の 使 用 は 、 頽 落 ( 的 ) 存 在 ( < ω 議 国 =8
α2Q
。 。 冨 ) の何
物 で も な い 。 的 を得
た 言 語 の 使 用 の 為 に 、話
し 方 教 室 で 、 話 語 の 練 習 が な さ れ ね ぽ な ら な い 。 差 別 的 言 語 、 社 会 遊 泳 的 な 浅 薄 な 言 語 、 「 口 は わ ざ わ い の も と 」 と い わ れ る様
な 不 誠 実 な 、 不謹
慎 な 言 葉 は 慎 し む べ き で あ る 。 物 に は 全 て 名 前 が つ い て い る 。 そ の名
前 を 呼 ぶ べ き で あ る Q 不 綺 語 ( 一 一 一ξ
子 αq穹
二 < o 言 o ) … … 言 葉 は 、 真実
、 心 の 誠 を 伝 達 す る 通 路 的道
具 で あ る 。 人 が 感 動 す る の は 、 か く て自
ら が 体 験 し た 自 分 の 言葉
を 語 る こ と に よ っ て で あ り 、 吾 が 身 に つ い た 言 葉 を 語 る こ と に よ っ て で あ る 。 い い 可減
お 上 手 で 、 人 を た ぶ ら か し て 、 不 信 や 疑 惑 を 招 く 言 葉 は、 人 の 道 の 風 上 に も 置 け な い 。 ど う し て も 、 真 実 の 、 心 の こ も っ た 、温
い 言葉
、 冷 え た 心 を も 和 ら げ る優
し い 、 洗 錬 さ れ た 上 品 な 言 葉 こ そ、 第 二 自 然 の 言葉
で あ る 。不
悪
口 (8
→ 辞 =8
、 °・ ≦舞
唱 o ぎ ρ げ £ 叶亀
o 口 Φ、 °・ αqoo 窪 唱 o ぼ 什 ) … … 「 な く て 七 癖 」 「 人 間 に 誤 ち は あ るも
の 」 カ バ で あ る 。 互 い に 人格
を 認 め て 、 弱点
は 保 護 し 合 い 、 長 所 を ほ め 合 い 、 相 互 に 尊 敬 し 合 わ な け れ ば な ら な い 。自
分 に な い 長 所 を 、 他 の人
は 持 っ て い る も の で あ る 。 悪 口 雑 言 は 、 自 己 の 品 位 を 落 と す も の で あ り慎
し ま ね ば な ら ぬ 。 互 に プ ラ イ バ シ ー の権
利 を 守 り 合 い 、 互 い の 領分
を 犯 し て は な ら な い 。 礼 儀 あ る 言 葉 こ そ 、 人 間関
係 的 伝達
通 路 で あ り 、 よ き潤
活 油 で あ る 。 信 あ る 所 、友
情 は 断 た れ ず 、裏
切
り は 許 し 合 わ な け れ ば な ら な い 。 子供
で も 悪 く 批 評 す る モ ラ ル と 怒 る で あ ろ う 。 「 駄 目 な 人 間 だ 」 と い つ も 言 っ て い る と 、 本 当 に 駄 目 な 人 間 に な っ て 了 い 、 意 欲 が 低 下 し 、 成 績 が 下落
す る 。 正 に 、 ど こ ま で も 賞 め る 教育
、 長 所 を採
り 上 げ る 教 育 で な け れ ば 幼児
は 人 間 的 な 発 達 を せ ず 、悪
感
情 を植
え つ け て 了 う 。 欠 点 は ひ そ や か に カ ウ ン セ リ ン グ し 、常
に 良 き 美点
を讃
え 合 っ て 、 相 互 に 微笑
を 断 や さ な い な ら ば 、 真 人 間 へ の 道 は 開 か れ て い る 。 人 間 ら し い 人 間 へ の関
係 の 通 路 は 開 か れ て い る 。 一71
一智 山学報 第二 十八輯 ω 不 両 舌 (
8
沖 仲 Φ = ◎ 一 凶 ) … … 二 枚舌
は 信 念 の な い 人 間 の 嘘 話 で あ る 。 嘘 を つ い て 迄 、 人 を 楽 し ま せ な く て も よ い 。 言 う こ と が な け れ ぽ 、 間 を 置 く べ ぎ で あ る 。 「 え も 言 わ れ え ぬ 間 」 の 中 に 、 本 当 の 人 生 の 味 と 、 人間
対 人 間 の真
実 が 横 た わ っ て い る 。 こ の 中 か ら 、 本 当 の 人 間 哲 学 に 基 づ い た 信 念 ・ 信仰
が 湧 出 す る 。 信念
あ る 人 間 こ そ 、 何 処 へ 行 っ て も 「独
坐 大 雄峯
」 で あ り 、 自 ら 主体
と な れ る 。 主 体 的 人 間 こ そ 、 近 代 人 の 象 徴 で あ る 。 つ つ け ん ど ん不 慳
貪
( げ o 鴨 ロ 臼 o 葛 ) … …0
極 め て ケ チ な 事 、 慾 が深
い こ と 、物
惜
し み す る こ と 。⇔
邪 慳 、 無 愛 想 、 突慳
貪
、 無 慈悲
、 な ど が慳
貪
の 意 味 で あ る が 、 欲 望 は 慎 し み 、 人 に は 愛 や 思 い や り 、 感 情 移 入 ( 巳窟
什ξ
) を 持 つ事
こ そ 、 社 会 的 人 間 に 求 め ら れ た も う 一 つ の 側 面 で あ ろ う 。単
な る 物 欲 、 所 有 欲 は 人 間 を か た く な に 依 怙 地 に す る 。 仏 道 に さ い え る完
全 円 満 な 人格
と は 、 物 に 貧 し て も 、 少 し の物
で 事 足 る を知
る寂
び の 心 と 、 人 情 に 際 し 、 間 や 区 切 り 、 別 れ わ の つ ら さ を 知 っ て い る 佗 び を 知 っ て い る こ と で あ ろ う 。 従 っ て 人 に 接 す る に 春 風 を 以 て し 、 別 れ る 時 は 、 秋 風 を 以 て 匱 し ま な け れ ぽ な ら な い 。 お ご り 、 高 ぶ り こ そ 、 厳 に 自 戒 し な け れ ば な ら な い 。 か く て 、 四 苦 八 苦 の 超 越 が存
す る 。 ふ し ん に不 瞋 恚 ( 口 o 辞 げ Φ
磐
αq 門 ざ 。。 → o 冒8
鴨 件 鋤 ロ 伊q 亳 ) … … 近 代 に 於 て 人 間 関 係 ( 『 ロ ヨ穹
冨 一 鬯 宜 o 塁 三 層 ) 程 難 し い も の は な い な い と 言 わ れ る が 、 こ れ は 、 人 間 が 個 人 主 張 主 義 に陥
入 り 、 自 分 の ( 吾 が 身 の ) 欲 望 充 足 の 為 に 、 生存
競 争 に 、 し の ぎ を け つ っ て い る 事 に よ る 。 従 っ て 、 利害
や 権 力 の 衝突
は 社 会 的抗
争 ( 。・ o 。 一 鑑8
口 凄2
) を惹
起
し 、危
機
的 状 な ま 況 を 醸 成L
て い る 。従
っ て 、 怒 り ・ 憤 怒 ・ 嫉 妬 ・ 甘 言 巧 色 と い っ た 原 始 的 感 情 が 生 起 し 勝 ち で あ る が 、 か か る 生 の儘
の 感 情 を 、 む き 出 し に す ぺ き で な い 。 か か る 生 の 感 情 の 爆発
は 、 や は り 不 快 な も の で 人 間 的 で な い 。厳
に 自 重 し て 自 制 す べ き で あ る 。 近代
人 は 、 や や も す る と 、 か か る 原 始 的 感 情 に 弱 い が 、 知 性 あ る 手 段 に よ っ た 問 題解
決 さ る べ き で あ る 。暴
力 は 、 ニ ワ ト リ よ り も 劣 る 。 人 間 は 、 「 こ と ば 」 を 所有
す る 丈 で は 本 物 で な く 、 是 非 是 非 「 話 し 合 い 、 交 渉 ( 昌 Φ σqo 訂 国 口 o ロ ) 」 に よ っ て 、 発 展 的 解消
さ る べ き で あ る 。 性 急 は事
を し 損 じ る 。 ゆ っ く り着
実 に ( 匹 o註
図 一72
一人 間の習得性に つ い て (藤井竜和 )
鎚
ユ ゜・ 岔巴
団 ) 、 余裕
あ る 構 え が あ る べき
で あ る 。 か か る 意 味 の 時熟
( N 三 αq ロ 旨 σq ) に 至 れ ば 、 明 る い 海 路 の 日 和 も あ り う る の で あ る 。不 邪 見 ( 。・ oo
ξ
聾 。 巴 ヨ Φ閤
。。 ) : ・ … 物事
を 正 当 に 見 、 判 断 す る事
程 難 し い も の は な い 。 大 抵 は 、 先 入観
を 以 て 本 物 を取
り 逃 が し て し ま う 。 又 、 偏 見 固着
観 念 に と ら わ れ て柔
軟 性 を 欠 い た り す る 。曇
り な き 心 眼 で 物 事 他 人 を 受 け 入 れ 、 知 性 を働
か せ て 洞察
し 、 判 断 す る 事 こ そ 本 当 に 頭 が 良 い の で あ り 、 こ れ が 良知
(鼠
゜・ 騒 o ヨ ) な の で あ る 。 自分
に は未
知 な 事 は如
何 に も 多 い 事 を 知 ら な け れ ば な ら な い 。 か か る 「 自 己 の無
知 ・無
学 を 知 っ て 」 、 う ぬ ぼ れ ず 行 動 し 、 情 報 を 取捨
選 択 し て傍
受
す る こ と こ そ 肝 要 で あ る 。 正 に 、 「古
人 の 求 め た る 処 を 求 め 」 、 大 同 小異
は あ っ て も 、 技 葉 末 節 に こ だ わ らず
、精
神 修 養 に 努 む べ き で あ る 。 又 、 理 想 と 現 実 を弁
え る べ き で あ る 。 以 上 、 十 善 戒 の 前 三 者 は 、 身 ( 上 ) (行
為 生 活 ) に 関す
る 教 え で あ り 、 中 四 者 は 口 ( 言 語 生 活 ) に関
す る 教 示 で ニ こ ろ こ ニ ろ あ り 、 後 三 者 は 意 (精
神 生 活 ) に 対 す る慎
し み を 教 え て い る 。 仏 道 は 、 身 を 慎 し み 、 口 を 正 し く 使 い 、意
を練
磨 す き よ る ( ね る ) 事 が 良 な る を 教 え て い る 。身
・ 口 ・意
の節
度
を保
っ て 良 く 働 か す な ら ば 、 聖 い 生 活 が 待 っ て い る事
を 教 え て い る の であ
る 。 聖 い身
・ 口 ・ 意 の保
持 と 、 正 し い 方 向 へ の導
き
あ る と こ ろ ( 教 育 あ る と こ ろ ) に 、 調 和 あ る 全 人 ( ( 甲 節 昌 NO のζ
簿 昌 口 ) の 出 現 も 可能
で あ る 。 そ し て 、 身−
ロ ー 意 ( 健 康 教 育 ・ 言 語 訓 練 又 は 指 導 ・精
神 陶 治 ) あ る教
化 は 、 人 間 行 動 ( げ 且 ヨ穹
げ 。訂
≦ o 円 ) を 頂 上 経 験 ( 娼 $ 犀 o × 覃2
冨磊
、 マ ス ロ ー 。 醍 醐 味 を 味 わ せ る ) た ら し め 、寛
容 と 忍 耐 で も っ て 「 和 顔愛
語 」 あ る 幼 児 教 育 は 、 必 ず や 、 目 が美
し く 輝 き 、 撥 刺 と し た美
し い プ ロ ポ ー シ ョ ン を 持 つ 、 明 る い 立 派 な 、 午 前 十 時 頃 の 太 陽 の 様 な青
年 を 育 成 す る 土 台 石 と 成 る こ と で あ ろ う 。 註 ( 十 七 ) ( 十 八 ) 大 西 憲 明 監 修 、 大 谷 派 保 育 協 会 編 集 、 「 仏 教 保 育 入 門 」 一 〇 〇1
一 〇 一 頁 。 法 蔵 館 、 昭 四 九 ( 一 九 七 四 ) 。 ハ ヴ イ ガ ー ス ト 荘 司 雅 子 訳 「 人 間 の 発 達 課 題 と 教 育 ・ 幼 年 期 よ り 老 年 期 ま で 」 牧 書 店 、 昭 三 三 ( 一 九 五 八 ) ( 勾 o げ2
冖 } 噸 一 73 一智 山学報第二 十八輯 = 9 〈 凶 σq