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科学技術の進歩と防災問題

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Academic year: 2021

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- 4 - 20 世紀もあと 1 年を残すのみとなり,20 世紀を回顧する論文や 21 世紀を展望した論 説等が多く見られるようになった。

20 世紀文明を特徴づけるものは,何とい っても科学技術の飛躍的な進歩発展であり, 人類はそれによって生活水準を大幅に引き 上げることができた。

しかし,科学技術の発達による近代兵器 の破壊力の向上は,戦争による被害の増大 を齎らし,人類は 20 世紀前半において,2 度 にわたる世界大戦等により,非戦闘員人を 含め 8,000 万人を超える戦争犠牲者を出し てしまった。

このように,科学技術の発達は,常に光と 陰の両面を持っている。

例えば,石油化学工業の発達によって良 質のプラスチック類が安価で生産され,わ れわれはテレビ,電気掃除機電気洗濯機電 気冷蔵庫,ルームエアコン等の家電製品や 自動車等の文明の利器を手に入れることが できた。これらの機器のない生活は,今日で は考えられない程である。

しかし,これらの文明の利器は一定年数 が過ぎれば廃棄物となり,その処理・処分の 過程で猛毒のダイオキシンが発生する。

ダイオキシンを完全に除去するためには, 新しい技術と莫大な経費がかかる。

また,より高品位の石油化学製品をより 低コストで製造するためには,大規模な石 油化学コンビナートが必要であるが,これ が一度災害に逢えば甚大な被害が発生する ので,日頃から万全の防災対策を講じてお く必要がある。

今日の文明社会は,大量のエネルギーの 消費によって支えられているといっても過 言ではない。

そして,エネルギー源の大半は石油,石炭, 天然ガス等の化石燃料によって占められて おり,化石燃料の消費は必然的に大量の炭 酸ガスを発生させる。

近年,地球上の炭酸ガス濃度の上昇に伴 って大気の温度が年々上昇し,これが気象 異変を惹き起こし,人類にとって今後大き な脅威となる可能性が指摘されている。

一昨年 12 月,京都で開催された第 3 回気 象変動枠組条約締約国会議(いわゆる COP

Ⅲ)において,今後人類の生存を可能ならし めるための各国別の炭酸ガス等の削減目標 等が合意されたが,その実現には各国とも 大変な努力が必要となる。

ウラン等の重い物質は,核分裂によって 大量のエネルギーを発生することが知られ ていた。

米国は,先の大戦末期,多くの原子物理学

●巻頭随想

科学技術の進歩と防災問題

(財)地方自治研究機構

石 原 信 雄

理事長

(2)

- 5 - 者の反対を抑えてこれを核爆弾として使用 し,多くの日本の市民を殺傷した。

これは人類にとって,最も悲しむべき出 来ごとであった。

今日,核分裂によって発生するエネルギ ーを発電に利用する原子力発電は,化石燃 料の大量消費による炭酸ガスの発生を抑制 する最も有力な代替手段と考えられている。

しかし,原子力発電については,人体にと って極めて有害な放射能を如何にして完全 に防ぐか,特に,地震その他の災害に見舞わ れた場合,周辺住民の安全を如何にして守 るかが大きな課題となっている。

コンピューターの発明は,今世紀の数々 の発明の中でも,人類の将来にとって最も 影響の大きい発明といえよう。

技術の進歩,発達によってコンピュータ ーは益々小型化し,しかも,情報処理能力は 益々向上している。

今日,通信,物の製造,流通,販売,電気,ガ ス,水道の管理,列車の制御,航空管制,会計 処理,預貯金の管理等われわれの生活のあ らゆる分野においてコンピューターが使用 されており,人件費の節約,サービスの向上 等に大きく貢献している。

しかし,一度コンピューターシステムに 故障が発生すると市民生活のあらゆる分野 にわたって深刻な影響が発生することが, 最近の事例によっても明らかとなって来た。

ところで,コンピューターのソフトを組 む際,従来は,コンピューターの情報処理能 力に制約があったこともあって,西暦年の 表示は下 2 桁となっているものが多かった。

その点が,最近,いわゆる 2000 年問題とし て,危機管理上大きな問題として急浮上し

ている。

すなわち,今年の年末(1999 年 12 月 31 日) から 2000 年の 1 月 1 日に日付が変ると,下 2 桁の暦年表示のコンピューターは,新年は 00 となり,それが 1900 年なのか 2000 年な のか判断できず,誤作動を起こす可能性が 高いのである。

現在,米国をはじめとして,各国はコンピ ューターソフトの点検,組替えを急いでお り,そのために莫大な経費と人員を投入し ている。

しかし,古い時代のコンピューターや各 種の装置に埋め込まれているマイクロチッ プについては,その数が余りに多く,その全 てを取り替えることは不可能といわれてい る。

そのため,今年の年末から来年の年始に かけてどのような事故が発生するか予測で きず,米国の政府や地方自治体では不慮の 災害に備えて厳戒態勢を取る準備を進めて いる。

わが国でも,官民を通じて,2000 年問題へ の対応が大急ぎで進められている。

以上見てきたように,新しい科学技術の 開発・応用は,常にメリットとデメリットを 伴うものであるということを肝に銘ずる必 要がある。

新技術の導入,新製品の開発,販売に当た っては,その市民生活の安全に対する影響 を十分検証し,万全の対策を講じたうえで, 実施に移す位の慎重な姿勢が望まれる。

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