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三線の爪の金型の改良

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Academic year: 2021

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(1)

沖縄国際大学産業情報学部

2020 年 3 月

産業情報論集 第16巻 第1・2号合併号

三線の爪の金型の改良

Improvement of die for nail called Chimi of traditional music instrument San-Shin

又吉 光邦

Mitsukuni MATAYOSHI

産業情報論集 Vol.16(No.1・2)March 2020 pp.103-107

Journal of Industry and Information Science

(2)
(3)

はじめに

 沖縄県には古くから愛されてきた弦楽器 の三線があり、その三線を弾く際には爪と いう小さな道具を使うことが多い。報告者 は三線の爪を合成樹脂を用いて作成し、意 匠登録番号第

1518285

号(三線の爪)を取 得したが、その三線の爪をつくる金型には、

いくつかの問題点があった。本報告では、

問題点を改善し、かつ大中小の3つの爪を 同時に作れるようにした金型について報告 する。

1.三線

 沖縄における三線の起源を文献上でたど

三線の爪の金型の改良

Improvement of die for nail called Chimi of traditional music instrument San-Shin

又吉 光邦

Mitsukuni MATAYOSHI

【Abstract】

 People use small kind of nail called Chimi to play traditional stringed instrument

called San-Shin in Okinawa. In this paper, the examples of Chimi in China and Vietnam are shown and the history of San-Shin are introduced simply, and then given an simple explanation of new chimi which is obtained a copyright in registered design in Japan.

In the end of paper, an improvement of die to make chimi is shown. The early version die to make chimi has some problems, especially the leakage of synthetic resin until setting is a huge problem. The improved die removes these undesirable problems.

【要 旨】

 沖縄には、三線(San-Shin)と呼ばれる伝統的弦楽器があり、多くの人は弾く際に爪(chimi)

という道具を用いている。本報告では、はじめに沖縄の三線の歴史と三線を弾く際に使われ る爪の使用例について、ベトナムと中国の例を挙げ簡単な考察を与える。その後、意匠権を 取得した三線の爪について述べ、以前に作った合成樹脂を流し込む金型の問題点を排除した 新しい金型を製作したことを報告する。

【目 次】

はじめに 1.三線 2.三線の爪 3.意匠権

4.金型1号のデザイン

 4.1 金型1号の問題点 5.金型2号のデザイン 6.今後の課題

7.謝辞 参考文献

産業情報論集 Vol.16(No.1・2)March 2020 pp.103-107

Journal of Industry and Information Science

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(4)

ると、西暦1534年の『使琉球録』に「楽に 弦歌を用ふ。音頗る哀怨たり・・・」(楽 用 弦 歌。 音 頗 哀 怨 )( 文 献[ 1],p.221)

とあり、西暦1558年~1570年の永禄年間に 大坂の堺にもたらされ(文献[2],

p.373

)、

「三味線」となり日本の代表的な伝統的楽 器の1つになったという史実から、

1500

年 初頭には沖縄で広く普及していたと考えら れる。文献[3]で又吉は、“朝鮮王朝実録(李 朝実録)の西暦

1463

年(世祖八年二月癸巳)

のところで、朝鮮側が琉球王の使者に琉 球の「歌舞はどういうものか。」(問歌舞。) と問うと「答えて曰く。一人掌を撃ちて歌 えば、衆皆之に和し手を揺らして舞う。朝 廷には正楽1 無し。」(答曰。一人撃掌而歌。

衆皆和之。搖手而舞。無朝廷正楽。)(文献

[4],

p.37

)と答えていることから、使 者の中に楽器を扱える者がいなかった。ま たは西暦1463年頃の琉球(沖縄)には、楽 器はあまり普及していなかった。あるいは もう少し踏み込んで、民間レベルでの楽曲 はあったが、朝廷には正式な「楽」が無かっ たと考えてよいだろう”と推察している。

 これらの史実と推察を考慮すると、おお よそ西暦

1400

年の終わりごろから

1500

年初 頭までに、沖縄島に広く三線が普及し始め ていたと考えてよい。

2.三線の爪

 三線を弾くとき、特に古典楽曲を弾く際

には爪(

chimi

)と呼称される水牛の角を

加工したものが用いられる(図1参照)。

図1に示された爪は一般的に普及している 形状であるが、長さ7.5cm、幅3cm、重さ

28g

あって、見た目より重く感じる。後述 するベトナムの爪よりも5

cm

程度短くて、

約3割の10gほど重い。

1 正楽:古代、儀式のときに奏でられた音楽。

 爪は、中国で三弦と呼ばれる楽器を弾く 際には広く用いられているようで、中国の 大理にお祭りの際に集まってくる少数民族 の持つ蛇皮を張った八角形の胴の三線と良 く似た楽器を弾く少女達は、その弾く人差 し指に爪をつけていることがわかる(図 2)。図3は中国の古典音楽を蛇皮を張っ た丈の長い三弦で独奏する男性の人差し指 の拡大写真だが、同様に爪のあるのが分か る。図3に見える爪は、丸みを帯びている

図1 三線の爪

図2 爪(文献[5])

図3 爪(文献[6])

(5)

が、細長く、図4に示すベトナムの爪の形 に近い。

 材料が同じものかどうか判然としない が、著者はベトナムの楽器店で材料が牛の 角の弦楽器を弾くための道具を購入した

(図4)。先端が円錐形をしている点は、

図3の左側と同じであるが、指に被る部分 が大きく広がっているところが異なってい る。図3のそれは指の第2関節の中ほど で切り落として整形しているように見え る。図4の白色の爪は長さ12.5cm、幅3

cm

、重さ

16

g弱ほど、黒色の爪は、長さ

12.5cm、幅4cm、重さ18gほどである。

 上述してきたように、沖縄において爪と 呼ばれ、三線を引くための道具は、伝来先 の国(おそらく、中国)の爪の形状に近い と言えるものである。そしてそれは、日本 における三味線を弾くための道具であるバ チと大きくその形状が異なっていることは 明らかである。

3.意匠権

 本報告書では、沖縄の三線の爪を合成樹 脂を用いて作るための金型の改良版につい て報告するが、その前に、意匠登録番号第

1518285

号(三線の爪)について説明する。

 意匠権に係る物品は、透明な樹脂と模様

(文字を含む)のあるシート状の部材によ り作られる三線を弾くための爪である。そ れは、透明な樹脂とシート状の部材からな り、シート状の部材には模様が装飾され、

模様の着色部分は透光性を有する。本意匠

登録の物品は、透明な樹脂を用いることに より模様を視覚できるので、個人の嗜好に あった爪を選ぶことができ、楽しく三線の 演奏ができるものである。透明体に透明性 を有する模様色彩のある物体を入れて作成 したサンプルを図5に示す。

 サンプルでは、シート状のものに沖縄の 伝統的染織物である形付(紅型)や絣を入 れたもので、「沖縄の伝統工芸品の実用的 な融合」(

2018

年度その他特別研究)に適っ ているといえよう。提案する爪の安定した 生産ができれば、伝統音楽を弾く道具とと もに、染織産業にも若干ではあるが貢献で きるものと考えている。

4.金型1号のデザイン

 三線の爪を合成樹脂とシートを用いて作 るために金型の製作をした。図6に金型1 号の設計図を示し、図7に金型の実物を示 す。

図5 サンプル

図6 金型1号 設計 図4 ベトナムで購入の爪

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(6)

4.1 金型1号の問題点

 金型1号では、実際に爪を作ることがで きるのだが、いくつかの問題点がでた。一 つ目は、図7の金型1号を用いて爪を作る と、上部の指を入れる空間を作るための棒 状の金具の付け根部分が、型の上部で固着 してしまうこと。二つ目は、あふれた樹脂 が溝にたまり、それが金型本体と固着して しまうなどの問題点が出てしまうことで、

図8に示すのは、それら二つの問題点を捉 えた写真である。

 合成樹脂を用いて爪を作るたびに、必ず この二つの問題点が出るので、改良を加え ることにした。はじめに取り組んだのは、

一つ目の問題の解決で、図9に示すのは指 を入れる空間を作る棒状の金具を伸ばし、

それにあわせて、それを留める金型の足の 長さを伸ばしたものである。これにより、

ずいぶんと樹脂で爪を作りやすくなった。

 図9に示す改良された金型で、爪を作り やすくなったものの、溝に溢れ出た無駄な 樹脂を後に除去しなければならないこと や、そもそも溢れ出た樹脂の量が多く、爪 の22gの15%程度(3.2~3.5g程)もあるの で無駄なコストの発生という問題が残っ た。そこで、この問題を含めて、いくつか の課題を解決するために、新しい金型をデ ザインした。次の第5節で、その金型につ いて述べる。

5.金型2号のデザイン

 金型1号には、溢れる樹脂の量やその樹 脂を取り除くための作業が必要であった。

これらは不必要なコストとして換算でき る。そこで、これら問題を取り除くための 金型が必要であった。

 また、実際に作成した爪を使用しても らった所、樹脂の中に模様のあるシートを 入れてかわいいデザインの爪(図5参照)

図7 金型1号 実物 図8 樹脂の漏れと金型との固着

図10 金型2号 設計 図9 金型上部の改良

(7)

ができるので、子供用の小さな爪がほしい との要望も聞えて来た。そこで、次の図

11

に示す金型2号を製作した。

6.今後の課題

 現在、金型2号ができたので、今後、爪 を多く製作していきたい。その過程で問題 が出れば、解決のための金型の試作をして いきたい。また、製作した爪は約20.75~

21.25g

ほどで、伝統的な爪に比べてやや軽

い。現在、重量感を増すための実験を行っ ており、早期にその特許の申請を行いたい と考えている。

7.謝辞

 本研究調査は、本学のその他特別研究費 により行われた。金型を製作するにあたり、

一般社団法人 ものづくりネットワーク沖 縄・エンジニアリング部・設計開発グルー プの伊佐和彦氏には、非常にお世話になっ た、この場をお借りして御礼申し上げたい。

投稿受付日:2019年11月7日 投稿採録日:

2019

11

29

参考文献

[1]原田禹雄,訳注『陳侃 使琉球録』, 榕樹社,1995.6.

[2]『平成四年度 沖縄県文化財調査報 告書 歴史資料調査報告書Ⅶ 沖縄の

三線』,沖縄県教育委員会,1993.3.

[3]又吉光邦

,

“『沖縄の三線』に記録さ れた沖縄三線の統計的特長”,産業情 報論集第6巻第1号

, pp.33-45, 2009.9.

[4]池谷望子・内田晶子・高瀬恭子,『朝 鮮王朝実録 琉球史料集成 訳注篇/

原文篇』,榕樹書林

,2005.5.

[5]中国大紀行製作委員会(JALUX,他)

『中国大紀行

DVD

第6巻少数民族の 小宇宙』、

2005.

[6]

https://www.bilibili.com/video/av4091344/

(赵牧阳行走重庆 三弦弹唱宁夏川,

秦腔血泪仇,豫剧花木兰,信天游等),

2016.3.

図11 金型2号

-107-

参照

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