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E-journal GEO 14(1): 1-13 (2019)

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調査報告

東京大都市圏に居住する若者の観光・レジャーにおける SNS 利用

―「SNS 映え」を超克する若者たち―

Utilization of Social Networking Sites in Tourism and Leisure

by Young People Living in the Tokyo Metropolitan Area: Transcending “Instagenic”

福井 一喜

FUKUI Kazuki

(2018年8月31日受付 2018年11月3日受理)

東京大都市圏に居住する若者の観光・レジャーにおけるSNS利用を,目的地による情報環境の差異と,SNS上 での影響力の個人差に着目して分析した.観光・レジャーにおいてSNSを積極利用するのは,SNS上での影響力 が大きい者であり,彼ら彼女らは情報探索時に自治体や観光協会のSNSアカウントよりも,企業のほか友人や知

人などのSNSアカウントを参考にしている.それは彼ら彼女らが,SNS上で他者から凡庸と判断される情報の探

索や発信を慎重に忌避したり,自身の観光・レジャー体験をより上質なものにしたりするために,目的地の情報の 量や流通速度の差を認識しながら,SNSで拡充した個人的な社会関係を活用したためである.こうしたSNS利用 は,若者たちが置かれる他者評価を重視せざるを得ない相互監視的な情報環境の中で,戦略的にICTを活用し観 光・レジャーを効果的に実施しようとした結果だと解釈できる.

The author analyzed the utilization of social networking sites (SNS) in tourism and leisure activities by young people living in the Tokyo metropolitan area, focusing on the difference between the information environments in destinations and individual differences in influence on SNS. Young people rely particularly on SNS posts generated by “influencers” when searching for and transmitting their own information on tourism and leisure attractions. They refer to information from companies and their friends rather than on that provided by local governments and tourism associations on SNS. They recognize the difference in information volume and distribution speed on destinations and utilize the personal social relationships expanded by SNS to avoid acquiring and reposting information on places judged mediocre by others to improve the quality of their tourism and lei- sure experiences. These young people intentionally utilize ICT to enjoy tourism and leisure effectively in a mutual surveillance society.

キーワード: 観光・レジャー, SNS,若者,社会的監視,東京大都市圏

Key words: tourism and leisure, social networking site, young people, social surveillance, Tokyo metropolitan area

I はじめに

1. 研究の目的

観光・レジャーは事前体験ができない.いかなる観 光・レジャーを行うのかを決める際に,情報は重大な 影響力を持つ.情報流通の空間性は,観光・レジャー の空間性を左右する.

それゆえ観光・レジャー産業は,インターネットの 利用が最も早くから進展した分野の一つである(進藤 2009).観光・レジャー情報の流通は,ネット利用の 普及以前は旅行会社やマスメディアが中心的に握って きた.しかし観光学の分野では,近年個人間のネット

コミュニティで流通する情報が,個人の観光・レジャー 行動を決定づける最大の要因になっていると論じられ ている (石森・山村2009)1).実際,スマートフォンの 普及を背景に,旅行先でのブログやツイッターといっ たSNSへの書込みは,交通ルートや飲食店,宿泊施設 の探索に次ぐ利用方法となっている2).また2015年の 通信利用動向調査では,SNSの主な利用層は10代から

30代の若年世代であり,また企業のSNS利用率は,観

光・レジャー産業を含むサービス業が最も高かった3). このように,実社会でのインターネットやSNSの 利用拡大を背景に,若者を中心とした,観光・レジャー におけるSNSを介した情報の探索と発信が注目されて

(2)

いる.では,若者たちは観光・レジャーを行うとき,

どのようにSNSを使っているのだろうか.昨今のメ ディアでは「SNS映え」する観光・レジャースポット が取り沙汰されている4).しかしこうした「スポット」

は,流行によって移ろいやすいものでもある.学術的 には,「いま具体的にどの場所がSNSで人気なのか」

を明らかにするよりも,観光・レジャーにおけるSNS 利用をめぐる,人々の行動の根底的な思考枠組みを把 握することに意味があろう.

そうした問題意識のもと,筆者は本稿に先立って,

東京大都市圏に居住する若者を対象とした観光・レ ジャーにおけるSNS利用に関するアンケート調査を 行った(福井2018).結果として①観光・レジャーに おいてSNSは情報探索に広く用いられているが,情報 発信を積極的に行うものは少数であること,②情報探 索時には,友人や知人などとのSNS上での社会関係を 介して得られる観光・レジャー情報が重要視されてい たことが明らかとなった.つまり観光・レジャー情報 を積極的に発信し,社会関係を介して一定数の他者に 影響を与える少数のキーパーソンが存在する.多数の 人々に影響を与える少数のSNSユーザーは「インフ ルエンサー」と呼ばれ注目を集めている5).SNS上で の影響力の個人差はICTの利用スキルの個人差の一つ といえる.地理学ではその個人差が求職機会などの諸 機会への地域的格差を生みかねないと論じられている

(Muhammad 2006; Green et al. 2012).

また前稿では新たな課題として,観光・レジャーに

おけるSNS利用は,情報環境の地域的差異といかに関

係するのかということが浮かび上がった.情報地理学 では,Greenbrook-Held and Morrison(2011)やGraham

et al. (2013)が言うように,観光・レジャーに限らず

場所や地域の情報は,ネット上では農村や自然地など の非都市部の情報よりも市街地のような都市部の情報 が多く存在することが知られている.

そこで本稿の目的は,都市部と非都市部の情報環境 の差異と,SNS上での影響力の個人差に着目し,東京 大都市圏に居住する若者が観光・レジャーの情報の探 索と発信においていかにSNSを利用しているのかを 明らかにすることとする.とりわけ,SNS上での影響 力が強い少数の若者とは,どのような者たちで,彼ら 彼女らは都市部と非都市部それぞれの情報環境をいか

に解釈しながらSNSを用いているのかを注視する.

2. 分析の視点と方法

分析を進めるにあたり,若者の中でもSNS上で影響 力の強い者が情報環境を解釈する際の枠組みや価値観 を理解する視点が必要である.社会学ではSNS利用を めぐる情報環境に関する論考が蓄積されている.そこ では伊藤(2017)が言うように,SNS利用の拡大は,

人々が「見る/見られる」という関係の中に身を置く ことを常態化させる情報環境を生み出しつつあること が注目されている.

たとえばアメリカにおける若者のSNS利用の代表 的論者であるボイドは,SNSを積極活用する比較的少 数の若者は,SNS上での他者からの「見られ方」をコ ントロールする演出力に長けている,もしくは長けざ るを得ない状況に置かれていることを指摘している

(ボイド2014).その一因として,土井 (2015)やバウ

マン・ライアン(2013)は次のように述べる.今日で は既存の社会的秩序の溶解や価値観の多様化によって,

自身の行動や生活の戦略における選択の妥当性を測る 社会的コンセンサスが不在化している.そうした環境 下でSNS利用に長けた一部の人々の間には,自身の選 択の妥当性を測るためにSNSを他者評価を参照する ツールにせざるを得ない状況が構成されつつある.そ してこれらの結果として,他者の視線をかつて以上に 意識せざるを得ないという,個人間の社会的相互監視 が強まっている.

ただし,これらのことは一部の人々だけに該当する とは限らない.鈴木 (2013)は,こうしたSNS利用が 一般化した今日的な心理を「見て欲しいように見ても らっているかどうか不安」と端的に表現している.価 値観の多様化や情報利用の自由の拡大を背景として,

一般人でもSNSによって不特定多数の他者から「見 られる」がゆえに,自身の行動やその情報発信内容の

「見られ方」という他者評価を重要視せざるを得なく なっている.

これを地理学的に考えると,都市部の情報を発信す るのと非都市部の情報を発信するのとでは,他者から の「見られ方」が異なりうる.また情報の探索におい ても,都市部の情報を探索するのと非都市部の情報を 探索するのとで,探索の方法や意味は異なりうる.つ

(3)

まり情報が豊富に蓄積される都市部とそうでない非都 市部とで,観光・レジャーにおけるSNSの利用状況は 量的にも質的にも異なるという仮説が導出できる.

そこで本稿の分析では,若者は都市部と非都市部の 情報環境をいかに解釈し,「見られ方」をいかに予想 しながら観光・レジャー情報を探索し発信しているの かに焦点を当てる.

この分析のために,筆者はネットアンケート調査と インタビュー調査を行った.アンケートでは都市部と 非都市部での観光・レジャーにおけるSNS利用を量的 に把握し,インタビューでは,SNS上での影響力が強 い若者を対象に,都市部と非都市部それぞれの観光・

レジャーにおけるSNS利用の質的な側面の把握を試 みた.アンケート調査は福井(2018)と同一のもので ある.おなじデータセットを用いて前稿の結果と比較 することで,SNS上での影響力の強い若者たちの動向 をより明瞭に分析することができる.

ネットアンケート調査は2018年1月に行い,東京 都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県に居住する16 歳から34歳の1,115名から回答を得た6).アンケートで は観光・レジャーにおけるSNSの利用状況に加えて,

年齢や職業や年収などの基本属性も調査した.回答者 全体のうち,TwitterかInstagramのどちらか一つ以上 を利用登録している者を「SNS利用者」,すなわち調 査対象者とした.該当者は889名(79.7%)であった.

SNS利用者のTwitter登録率は84.9%,Instagramは50.7%

である.

インタビュー調査は2018年2月から4月にかけて,

東京大都市圏に居住する,Twitterのフォロワー数が

1,000人以上の者4人に対面形式で行った.対象者はい

ずれも実社会における有名人等ではなく,一般的な会 社員,自営業者,学生である.この調査では対象者を,

SNS上での影響力が強い少数の者,すなわちインフル エンサーに絞り込むことで,彼ら彼女らの思考や行動 の先鋭的なポイントを抽出することを目標とした.イ ンフルエンサーの存在は観光・レジャーに限らずマー ケティング分野で重要視されつつあるが,その期待に 対して実像は学術分野でほとんど理解されていない7). その一因は一般人である彼ら彼女らに接触するにも,

その言動の意図を解釈するにも,彼ら彼女らの価値観 を理解するだけの豊富なSNS利用経験が調査者に求

められるからである.

なお本研究において「若者」とは,広く実態を把握 する目的で,質的な定義づけにはあえて踏み込まず,

「16歳から34歳の男女」と定義する.

「SNS」は,本稿ではTwitterとInstagramを具体的な 対象として分析することとし,概念的議論には踏み込 まない8).都市部と非都市部の区別は便宜的に,非都 市部を「農村や自然地」を意味するとして質問時にア ンケートサイトに表記し,その判断は調査対象者の主 観に委ねている9).また文章が煩雑になることを避け るため,以下では適宜,都市部ないし非都市部で行わ れる観光・レジャーについて,それぞれ単に「都市 部」「非都市部」と略記する.

II 観光・レジャーにおける若者のSNS利用

1. 回答者の概要

ここではアンケートの回答者をSNS上での影響力 で類型化し分析していく.表1に示したTwitterのフォ ロワー数を影響力の指標とし,以下の手順で類型化し

10).表1の結果から,まずフォロワーの有無で回答

者を分類し,フォロワーがいない者を「フォロワー数 0人」の類型とした.残った者のうち,フォロワー数

1人から99人までの者は該当者が多く,またフォロ

ワーの絶対数にさほど差がないことから「フォロワー 数1–99人」の類型とした.一方フォロワー数1,000人 以上の者は,フォロワーの絶対数に大きな差があるが,

表1 アンケート回答者のTwitterフォロワー数

フォロワー数 該当率

0人 15.9% (141)

1–49人 30.6% (272)

50–99人 14.2% (126)

100–499人 26.9% (239)

500–999人 7.0% (62)

1,000–1,499人 3.3% (29)

1,500–1,999人 0.6% (5)

2,000–2,999人 0.4% (4)

3,000–4,999人 0.4% (4)

5,000–9,999人 0.2% (2)

10,000人以上 0.6% (5)

注1: 括弧内の数値は該当者数である.

注2:「0人」には,Twitterに登録していない者も含む.

注3: 四捨五入のため,該当率の合計は100.0%にならない.

(アンケート調査により作成)

(4)

各回答項目の該当者が少ない.それゆえ表1のように フォロワー数のばらつきがあることを前提として,「フォ

ロワー数1,000人以上」の類型とした.最後に表1の

フォロワー数「100–499人」と「500–999人」は,諸 データを分析すると類似した傾向が得られたため,一 括りに「フォロワー数100–999人」の類型とした11)

表2に類型化の結果とアンケート回答者の概要を示 した.ここではSNS上での影響力によるSNS利用の 差異を明瞭に観察するため,同じ「SNS利用者」を年 齢で類型化したデータと比較していく.

年齢別の類型では,10代後半は26.4%,20代前半が

27.9%,20代後半が23.8%,30代前半が21.8%で,お

おむね均等に類型化される.一方,フォロワー数類型 は均等に分かれていない.「フォロワー数0人」は

15.9%なのに対し,「フォロワー数1–99」と「フォロ

ワー数100–999人」はそれぞれ44.8%,33.9%と両者

で全体の8割弱を占めるが,「フォロワー数1,000人以

上」は5.5%(49人)である.フォロワー数は多けれ

ば多いほど,ネット上での影響力も強まる.ごく単純 化して言うと,フォロワー数10人と1,000人では影響 力に100倍の差がある.「フォロワー数1,000人以上」

の該当者は特に大きい影響力を持つ.

表2の職業と個人年収の項目を見ると,年齢別類型 では,年齢が上がるにつれて学生から有職者となり,

個人年収も上がっていく.一方フォロワー数別類型で は,単純にフォロワー数が増えれば有職者や特定の年

収層の該当率も高まるという傾向は見られない.つま りフォロワーの多い者は特定の年齢層や社会階層の単 純な反映ではない.

こうした年齢別とフォロワー数別の類型間の差異

は,表3の普段のSNS利用の目的にも表れている.

SNSを閲覧目的で利用する者は,年齢別類型ではいず

れも55%前後で,発信目的は32.3%から19.1%と若い

ほど選択率が高い.他方フォロワー別類型では,フォ ロワーが多いほど閲覧だけでなく発信も主目的とする 傾向が見られる.特に「フォロワー数1,000人以上」

は閲覧目的が28.6%に対して発信目的は49.0%と,唯 一発信目的の方が高い.また「コミュニケーション」

「友人知人を増やす」「その他」の各項目の選択率は,

おおむね年齢とともに漸減する一方,フォロワー数と ともに増加する傾向である.つまりフォロワーの多い 者はより多様で高い目的意識を持ってSNSを利用し ている.

目的別に見て選択率が高いのは「趣味や娯楽の情報 収集」である.ここには観光・レジャー関連の情報収 集も含まれると考えられるだろう.その選択率は年齢 別類型を含めて「フォロワー数0人」以外の各類型で 6〜8割程度である.友人知人との関わりに関する項目 を見ると,学校や職場ないしプライベートの友人知人 を増やしコミュニケーションを図る傾向が見られ,ネッ トの友人知人を増やしたり彼ら彼女らとのコミュニ ケーションにSNSを用いたりする傾向は比較的弱い.

表2 アンケート回答者の基本情報 該当者 平均年齢

職業 個人年収

学生

(高卒以上) 有職者 100万円

未満 100〜600万円

未満 600万円

以上 SNS利用者全体 889 79.7% 24.2 26.2%(233) 32.6%(290) 44.0%(391) 30.5%(271) 3.0%(27)

年齢別

15–19歳 235 26.4% 17.7 35.3% (83) 3.0% (7) 63.8% (150) 3.5% (8) 0.9% (2)

20–24歳 248 27.9% 21.8 56.0% (139) 24.2% (60) 51.6% (128) 22.5% (56) 1.2% (3)

25–29歳 212 23.8% 27.1 4.7% (10) 51.4%(109) 27.8% (59) 50.0% (106) 2.8% (6)

30–34歳 194 21.8% 32.0 0.5% (1) 58.8%(114) 27.8% (54) 52.1% (101) 8.2% (16)

フォロワー数別

0人 141 15.9% 27.3 13.5% (19) 41.1% (58) 36.9% (52) 31.2% (44) 5.0% (7)

1–99人 398 44.8% 24.8 20.6% (82) 36.2% (144) 45.0% (179) 35.2% (140) 1.8% (7)

100–999人 301 33.9% 22.2 39.2% (118) 24.3% (73) 46.8% (141) 24.3% (73) 2.7% (8)

1,000人以上 49 5.5% 22.4 28.6% (14) 30.6% (15) 38.8% (19) 28.6% (14) 10.2% (5)

注: 括弧内の数値は該当者数である.

(アンケート調査により作成)

(5)

ただし「フォロワー数100–999人」と「フォロワー数 1,000人以上」は,ネットの友人知人とのコミュニケー ションや友人を増やすことにもSNSを積極利用してい る.つまりフォロワーの多い者たちはSNSを用いて,

ネット上のものも含めた個人間の社会関係をより拡充 しようとしている.

2. 情報の探索と発信におけるSNS利用

続いて,観光・レジャー情報の探索時にどのような アカウントを参考にするのかを,都市部と非都市部で の観光・レジャーそれぞれについて表4から分析する.

まず全体として,「自治体」と「観光協会」は,都 市部でも非都市部でも,どの類型でも参考にされにく い.「マスコミや芸能人」はSNS利用者全体で2割強 にとどまるが,フォロワーが多いほど都市部で参考に されている.

一方,最も参考にされやすいのは「企業や店舗」で ある.選択率はSNS利用者全体で,都市部では41.7%,

非都市部では38.6%である.類型別では,年齢別では いずれも4割前後だが,フォロワー数別類型では,特 に都市部において,フォロワーが増えるほど参考にさ れる傾向が見られる12)

「現実の友人知人」は「企業や店舗」に次いで参考 にされているが,「フォロワー数1,000人以上」を除く とどの類型でも都市部での選択率が高く,またフォロ

ワーが多いほど割合が高い.「フォロワー数1,000人以 上」は都市部では36.7%,非都市部では40.8%と,非都 市部の方が高い.一方 「ネットの友人知人」 を見ると,

「フォロワー数100–999人」と「フォロワー数1,000人 以上」は,それぞれ都市部で38.9%,42.9%を示す.

フォロワーの多い者はネット上の社会関係をも重視し ている.

以上の傾向をまとめると,まず,特に都市部での観 光・レジャーにおいては,自治体や観光協会よりも,

企業もしくは友人知人のアカウントが参考にされやす い.そしてその傾向はフォロワーが多いほど強く,

フォロワーの多い者はネット上のものも含めた個人的 な社会関係において観光・レジャー情報をやりとりし ていると説明されよう.

つづいて発信の状況を表5から見ると,SNS利用者 全体のうち,都市部では45.1%が,非都市部では50.5%

が「発信しない」を選択した.つまり全体としてみる と5割前後の人々しか観光・レジャーにおけるSNS発 信をしていない.また「発信しない」に次いで多いの は「したい時だけ発信」であり,都市部と非都市部い ずれも3割強である.スマートフォンの携帯性を生か した「旅先や道中で発信」は,都市部でも非都市部で も1割弱にとどまる.年齢別に見ると年長者ほど発信 しにくく,「発信しない」の選択率は,都市部では

「15–19歳」は39.6%だが「30–34歳」は55.7%であり,

表3 日常的なSNS利用の目的 SNS利用者

(n=889)全体

年齢別 フォロワー数別

15–19歳

(n=235)20–24歳

(n=248)25–29歳

(n=212)30–34歳

(n=194) 0人

(n=141) 1–99人

(n=398)100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

全体として

閲覧が中心 54.8% 51.1% 54.4% 57.5% 56.7% 63.8% 64.1% 42.5% 28.6%

発信が中心 26.5% 32.3% 28.2% 25.0% 19.1% 10.6% 19.8% 39.2% 49.0%

コミュニケーション

学校や職場の友人知人と 51.6% 61.7% 52.8% 49.5% 40.2% 46.1% 47.7% 58.8% 55.1%

ネットの友人知人と 36.2% 41.7% 39.5% 36.8% 24.7% 16.3% 30.9% 47.5% 67.3%

友人知人を増やす

プライベートの友人知人を 25.2% 33.2% 27.0% 24.1% 14.4% 18.4% 20.1% 31.6% 46.9%

ネットの知人友人を 23.8% 33.2% 28.2% 17.5% 13.9% 10.6% 17.6% 33.6% 53.1%

その他

ライフログ 46.6% 43.8% 52.0% 50.0% 39.2% 19.9% 45.0% 57.5% 69.4%

趣味や娯楽の情報収集 75.5% 80.0% 83.5% 70.8% 64.9% 51.8% 79.6% 80.7% 77.6%

注:ここで示す数値は,アンケート調査において「非常に当てはまる」「どちらかというと当てはまる」「どちらとも言えない」

「どちらかというと当てはまらない」「全く当てはまらない」のうち,前者2項目を選択したものの割合である.そのため各 項目の合計は100.0%にならない.

(アンケート調査により作成)

(6)

非都市部でも,それぞれ同じく48.5%,56.2%である.

フォロワー数別に見ると,「発信しない」 の選択率は,

都市部と非都市部のいずれにおいても,「フォロワー 数0人」「フォロワー数1–99人」では各8割弱,5割強

である一方,「フォロワー数100–999人」「フォロワー 数1,000人以上」では3割前後にとどまっている.特 にフォロワー数の多い後者2類型では,都市部におけ る「発信しない」の選択率が非都市部に比しておよそ

表4 観光・レジャー情報の探索時に参考にするSNSアカウント

a 都市部での観光・レジャー SNS利用者

全体

(n=889)

年齢別 フォロワー数別

15–19歳

(n=235) 20–24歳

(n=248) 25–29歳

(n=212) 30–34歳

(n=194) 0人

(n=141) 1–99人

(n=398) 100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

自治体 25.9% 25.5% 21.4% 30.2% 35.1% 24.1% 24.9% 28.6% 22.4%

観光協会 23.6% 24.7% 21.4% 28.3% 33.5% 23.4% 22.9% 25.2% 20.4%

企業や店舗 41.7% 37.9% 37.5% 37.7% 41.8% 35.5% 40.7% 46.8% 36.7%

マスコミや芸能人 23.4% 24.3% 20.6% 18.4% 18.6% 14.9% 20.6% 29.6% 32.7%

現実の友人知人 39.1% 37.9% 36.3% 34.9% 28.4% 26.2% 35.9% 49.8% 36.7%

ネットの友人知人 28.6% 26.0% 21.0% 25.0% 18.6% 17.7% 22.9% 38.9% 42.9%

b 非都市部での観光・レジャー SNS利用者

(n=889)全体

年齢別 フォロワー数別

15–19歳

(n=235) 20–24歳

(n=248) 25–29歳

(n=212) 30–34歳

(n=194) 0人

(n=141) 1–99人

(n=398) 100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

自治体 27.6% 25.5% 21.4% 30.2% 35.1% 27.7% 27.6% 27.9% 24.5%

観光協会 26.5% 24.7% 21.4% 28.3% 33.5% 27.7% 26.6% 26.9% 20.4%

企業や店舗 38.6% 37.9% 37.5% 37.7% 41.8% 33.3% 36.4% 44.2% 36.7%

マスコミや芸能人 20.6% 24.3% 20.6% 18.4% 18.6% 13.5% 20.9% 23.9% 18.4%

現実の友人知人 34.6% 37.9% 36.3% 34.9% 28.4% 23.4% 31.2% 43.5% 40.8%

ネットの友人知人 22.7% 26.0% 21.0% 25.0% 18.6% 8.5% 18.8% 32.6% 34.7%

注:ここで示す数値は,アンケート調査において「よく参考にする」「たまに参考にする」「どちらともいえない」「あまり参考 にしない」「ほとんど参考にしない」のうち,前者2項目を選択したものの割合である.そのため各項目の合計は100.0%に ならない.

(アンケート調査により作成)

表5 SNSでの観光・レジャー活動の発信状況 a 都市部での観光・レジャー

SNS利用者 全体

(n=889)

年齢別 フォロワー数別

15–19歳

(n=235) 20–24歳

(n=248) 25–29歳

(n=212) 30–34歳

(n=194) 0人

(n=141) 1–99人

(n=398) 100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

発信しない 45.1% 39.6% 44.0% 42.9% 55.7% 75.9% 50.3% 26.6% 28.6%

したい時だけ発信 33.2% 42.1% 34.3% 38.7% 31.4% 17.7% 37.4% 44.5% 38.8%

帰宅後に発信 15.7% 18.7% 18.1% 13.2% 11.9% 5.7% 10.8% 25.6% 24.5%

旅先や道中で発信 9.8% 9.4% 10.5% 10.8% 8.2% 2.8% 6.3% 15.9% 20.4%

b 非都市部での観光・レジャー SNS利用者

全体

(n=889)

年齢別 フォロワー数別

15–19歳

(n=235) 20–24歳

(n=248) 25–29歳

(n=212) 30–34歳

(n=194) 0人

(n=141) 1–99人

(n=398) 100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

発信しない 50.5% 48.5% 51.2% 46.7% 56.2% 78.7% 53.8% 35.5% 34.7%

したい時だけ発信 33.2% 37.9% 30.2% 35.4% 28.9% 17.0% 34.2% 38.9% 36.7%

帰宅後に発信 12.1% 11.1% 14.5% 10.8% 11.9% 3.5% 8.8% 19.9% 16.3%

旅先や道中で発信 8.7% 6.8% 9.3% 10.4% 8.2% 2.8% 5.8% 13.6% 18.4%

注: 複数選択可であるため,各項目の合計は100.0%にならない.

(アンケート調査により作成)

(7)

9〜6%低い.また特に都市部における「旅先や道中で 発信」「帰宅後に発信」の選択率が15.9%から25.6%

と,SNS利用者全体と比較して高い.

すなわち,SNSを用いた観光・レジャー情報の発信 は,SNS利用者全体で見ると,都市部と非都市部い ずれにおいても活発に行われているとは言えないが,

フォロワー数別に見ると,フォロワーが多いほど,特 に都市部での観光・レジャー活動を活発に発信してい る.

最後に,都市部と非都市部を問わず,観光・レジャー におけるSNSでの発信時に重視する事柄を表6から見 る.これまでの分析と同様に,SNS利用者全体ではま とまった傾向は読み取りにくいが,フォロワー数別に みると,いずれの項目もフォロワーが多いほど数値が 高い.つまりフォロワーの多い者は観光・レジャーに おいて,より多様で強い目的意識を持って情報発信を 行っている.

項目ごとに見ると,「場所の魅力を伝える」「その時 の気持ちを伝える」が 「フォロワー数1–99人」以上の

類型では38.9%から55.1%で,「その場所への来訪者が

増える」も「フォロワー数1,000人以上」では36.7%

と,フォロワーの多い者を中心に,観光資源の魅力の 共有というかたちで,ほかの観光者に影響しうる情報 発信が認められる.

ただし留意すべき点として,「『炎上』してもいいか ら過激な内容を発信」の選択率は全体としては低いも

のの,「フォロワー数1,000人以上」のみ20.4%と突出 して高く,フォロワーが多いゆえに悪い意味でも自身 の閲覧者を過度に意識した情報発信を行いやすい側面 も一部で認められる.

また「誰もが注目しているものを発信する」と「自 分だけが注目しているものを発信する」を比べると,

「フォロワー数0人」から「フォロワー数100–999人」

は後者の数値の方がやや高く,これは新しい観光資源 を発掘し発信しようとする意識とも解釈できる.しか しながら「フォロワー数1,000人以上」だけは前者の ほうが高く,より一般に受け入れられやすい事柄も戦 略的に発信しようとしている可能性もある.

これらの一方で,「フォロワー数0人」 を除く各類型 では「ライフログにする」や,「自分の行動のアピー ル」の数値も高い.つまり総合的に見ると,フォロ ワーという「他者」の視線を多分に意識しつつ,多様 な目的を並行して達成しようとする,若者の複雑な SNS利用が伺われる.

III インフルエンサーの 観光・レジャーSNS利用と情報環境

1. 前章の結果と本章の論点

IIの結果は次のようにまとめられる.観光・レジャー におけるSNS利用は特にSNS上での影響力の強い者を 中心に実施されやすい.彼ら彼女らは観光・レジャー 表6 SNSで観光・レジャー情報を発信する際に重視する事柄

SNS利用者

(n=889)全体

フォロワー数別 0人

(n=141) 1–99人

(n=398) 100–999人

(n=301) 1,000人以上

(n=49)

場所の魅力を伝える 38.6% 23.4% 38.9% 44.2% 44.9%

その時の気持ちを伝える 44.3% 24.8% 46.0% 49.5% 55.1%

その場所への来訪者が増える 21.0% 12.1% 17.3% 27.6% 36.7%

自分の行動のアピール 35.3% 17.7% 33.4% 44.5% 44.9%

ライフログにする 49.6% 25.5% 53.0% 55.5% 55.1%

「like」やフォロワー数が増える 21.8% 12.1% 15.3% 32.2% 38.8%

「炎上」してもいいから過激な内容を発信する 6.7% 5.0% 4.5% 8.3% 20.4%

自分のアカウントの個性に合わせる 25.1% 9.9% 20.9% 35.5% 38.8%

誰もが注目しているものを発信する 20.8% 10.6% 16.6% 27.6% 42.9%

自分だけが注目しているものを発信する 21.4% 12.1% 18.3% 28.2% 30.6%

注:ここで示す数値は,アンケート調査において「非常に重視する」「どちらかといえば重視する」「どちらともいえない」「ど ちらかといえば重視しない」「全く重視しない」のうち,前者2項目を選択したものの割合である.そのため各項目の合計は 100.0%にならない.

(アンケート調査により作成)

(8)

情報をネット上のものも含む個人的な社会関係の中で,

自身のSNSアカウントの閲覧者の視線を意識しながら やりとりしている.では,若者の中でもSNS上で影響 力の強い者たちは都市部と非都市部の情報環境がいか に異なると考えながらSNSを利用しているのだろうか.

ここでは若者の中でも,SNS上での影響力が強く,

インフルエンサーとみなされる者へのインタビュー調 査に基づき,都市部と非都市部で彼ら彼女らの情報の 探索や発信を促進ないし阻害する要素を分析し,観光・

レジャーにおけるSNS利用の質的な側面を検討する.

ここでの論点を整理しておく.第一には,都市部と 非都市部での観光資源と観光情報の量的な差を,若者 はいかに認識し対処するのかという点である.第二に は,彼ら彼女らは他者からの「見られ方」をいかに予 想しながらSNSを利用し,それが都市部と非都市部で いかに異なりうるのかという点を検討する.

2. 情報の選別と発掘

第一の論点は,都市部と非都市部での,観光資源と 観光情報の量的な差への認識と対処である.

この点について,たとえばA氏 (30代男性)は,発 信時に情報量に留意する見解を示している.

「(自分がSNSで発信するときは,発信内容に)

興味ある人に届いてほしい,都市部は情報が飽和 してる.(自分が発信した情報が閲覧者に選ばれ るために)情報に指針がないとだから,リアル性 が重要.(ネット上は)情報がとっちらかってい る.地方だとそれが反転する.地方はおもしろい ものがあるのに,すくい上げられていない.こう いうおもしろいのあるよ,みたいな使い方(を自 分はしている)」(丸括弧内は筆者による補足.以 下同様)

非都市部ではなく「地方」と表現されているが13), 都市部か否かでネット上の情報量に差があることを前 提としている.そして自身のアカウントの「見られ 方」を意識しながら,都市部では観光情報の選別,非 都市部では発掘というかたちで,情報発信を意識的に 使い分けている.

さらに,選別と発掘の空間的な使い分けは,情報探

索時にも重要視される.

「こっち(東京・都市部)は情報量が多い割に,

流れるのがはやい.自分の興味あるものを追うの で精一杯.地方に行くときは,東京だと追わない もの(情報)でも,自分の足で追うな」(A氏)

つまり都市部と非都市部では,情報の量だけでなく 更新速度の差があるとし,それに対応するかたちで,

都市部では選別,非都市部では発掘という態度差が見 られる.

ネット上に無数にある観光・レジャー情報の中か ら,自身や閲覧者にとって価値あるものをいかに選別 するかは,特にSNS上での影響力が強く,ネット上 の情報流通の特性や情報の価値に自覚的な彼ら彼女ら にとって優先的な課題である.

「(観光・レジャー情報を探索する際には)自分 にしっくりくるものを知るために,信頼できる人 の情報にあたる.マス(マスコミの情報)じゃダ メ.本は (記載されている情報が) 古いしダサい.

ブログみたいなやつも書いてる人が検索のことし か考えてないから定番しか情報がなくてダサい14)

(B氏・20代女性)

「知らない駅でごはん屋さん探すなら“○○○”

さん(影響力のあるネットの友人)みたいな,

キーパーソンみたいな人を見てる.幅広くは見て ない.人柄を知ってるかが大切」(A氏)

ここで選別の有力軸として採用されているのが,

「信頼できる人」「人柄を知っている人」を生み出す,

SNS上での社会関係である.SNSが持つ,社会関係を

拡充し活用させるという特性を効果的に活用している 一例である.

彼ら彼女らの社会関係はSNS上だけで完結しない.

以下の証言のように「人柄を知っている人」「信頼で きる人」を抽出する上で,対面接触が方法の一つとし て位置づけられている.

「家でイベントとかしたときに,違うコミュニ

(9)

ティの人がつながるのがおもしろい.地方は

facebook文化というか,実名文化.(非実名文化の

自分たちとは)ちょっと違う」(C氏・20代男性)

SNSで拡充した非実名での社会関係を,対面接触に よってさらに拡充し有効活用しようとしている.自分 たちの間では,実名に基づく社会関係すなわち「実名 文化」にとらわれず,より開放的な社会関係を構築し やすいということである.若者の中でもSNS上での 影響力の強い者が,SNS上の社会関係を,都市部にお ける豊富な対面接触機会で拡充し,それを都市部にお ける飽和した観光・レジャー情報の選別に有効活用し ている一例といえよう.

3. 「見られ方」の意識

第二の論点は,都市部と非都市部における他者から の「見られ方」の意識差である.

「地方 (非都市部への観光) は行(い)ったという ことが大切.せっかく行ったことを『承認欲求』

に変えたい.銭湯も温泉もやることは同じだけど,

温泉に行くなら湯けむりとか入れて『湯けむり行 きました』をツイートするだけでそれができる.

『コスパ』としては地方の方が(SNSの存在は)

うれしい」(D氏・20代女性)

こう述べたD氏にとって,空間的にアクセス性の低 い非都市部での観光・レジャーでは,その時間的・金 銭的コストに見合った対価をより多く得たいという

「コスパ」すなわちコストパフォーマンスの意識があ るということである.そしてその対価の獲得方法とし て,自身の観光・レジャー活動をSNSで発信し,そ れを他者に「見られる」ことによって「承認欲求」を 満たす,つまり満足感を高めることで,「コスパ」が 良くなるというのである.

「地方は限られた人としか行かない.本当はみ んなと(現地での体験や気持ちを)分かち合いた かった」(D氏)

都市部での観光・レジャーは多様な同行者が確保し

やすいが,コストのかかる非都市部では同行者が限定 的になりやすい.それゆえ,より多様な人々,すなわ ち自身のSNSアカウントの閲覧者と,体験や気持ち を共有したいという意識が認められる.つまりここで はD氏にとって,非都市部は自身が「見られる」こと をより積極的に望む空間として捉えられている.

他方で,都市部は異なる空間として位置づけられて いる.

「たとえば渋谷はみんな分かち合えるから手軽.

でも渋谷とかは人間の未踏の地が,『SNS未踏の 地』がない.『インスタ映えじゃんw』みたいに,

自分で自分を嘲笑する(からあまり発信しない)」

(D氏)

SNS上での影響力が強いD氏やその閲覧者にとって

「インスタ映え」するような安易な観光情報発信は魅 力的ではないという矛盾である.Greenbrook-Held and Morrison(2011)やGraham et al. (2013)が指摘したよ うに,場所や地域に関するネット上の情報量は,非都 市部のものよりも都市部のものの方が一般に多い.し かしD氏のような若者たちは,渋谷のような都市部の 消費地では場所の情報も消費されやすく活発に発信さ れていると考える.そしてそのことが,逆に自身の観 光情報発信を阻害する要素として作用しているのであ

る.先のB氏が「マスな情報」を「ダサい」とみた評

価が,空間性を持った例といえるだろう.

つまり他者の視線を意識すると,場所や地域の情報 が多いことは必ずしも発信者にとってポジティブに評 価できるとは限らないのである.これはバウマン・ラ イアン(2013)や鈴木(2013)が言う個人間の社会的 相互監視が,都市部の情報環境を背後に表出した一例 ともいえよう.すなわちここで都市部は,「見られた いように見られているかどうか不安」という状況が,

より端的に現れる空間として位置づけられている.

IV 東京大都市圏の若者の 観光・レジャーにおけるSNS利用

ここまでの検討を踏まえると,東京大都市圏の若者 が,都市部と非都市部での観光・レジャーにおける情

(10)

報の探索と発信においてSNSをいかに利用している のかは,特にSNS上で影響力の強い者たちの思考に 着目すると,つぎのように説明できる.

非都市部では,観光・レジャー資源の相対的な少な さや空間的アクセス性の低さから観光情報の蓄積量や 流通量が比較的少ないと認識されている.それゆえ非 都市部での観光・レジャーにおいてSNSは,流通量 の少ない非都市部特有の観光・レジャー情報を発掘し 発信する手段として利用されやすい.

観光庁の調査によれば,若者は観光・レジャーにか ける経済的余裕のなさを感じている(観光庁観光地域 振興部観光資源課2014).東京大都市圏の若者にとっ ては,例外はあろうが,観光・レジャーの実施に交通 費が多額になりやすい非都市部では,都市部ほど手軽 には観光・レジャーを実施しにくい.それゆえ観光・

レジャー情報を発信し他者に「見られる」という体験 を加えることで,自身の観光・レジャー体験をより上 質化する手段としても利用されているといえよう.い わば「コスパ」を高めるツールとしてSNSが位置づ けられている.

一方で都市部は観光・レジャー資源が多く存在し,

またそれらへの空間的アクセス性にも比較的恵まれ る.観光・レジャー情報はより手軽に発信され,結果 としてネット上に多く蓄積される.しかしそれゆえ,

特にSNS上で影響力が強い者は,安易な情報発信は

自身や他者にとって魅力的に映りにくいと考えること もある.それを避け,より魅力的な観光・レジャー情 報を発掘する選別のフィルターとして,SNS上に構築 した社会関係が有効に使われる.

これらを踏まえると,若者の中でもSNS上で影響力 を持つ者にとって,観光・レジャーにおけるSNS利用 は,非都市部では自身が他者に「見られる」ことによ る,体験の「共有」の手段としての側面がある.そし て都市部での観光・レジャーにおけるSNS利用は,自 身が他者から「見られたいように見られているかどう か」という他者からの社会的評価へ一層に配慮せざる を得ない局面でもある.このようにして,観光・レ ジャーにおいて若者たちはSNSを,都市部と非都市 部の観光資源分布や情報流通の量的ないし質的な差を 勘案し,自身への他者評価を各々のSNS上での影響力 に基づいて予測することで,都市部と非都市部とで量

的にも質的にも複雑に使い分けていると結論づけられ る.

以上の成果を先行研究の知見と比較し本研究の意義 を定置したい.観光学においては,個人間のネットコ ミュニティ内の情報が個人の観光・レジャー行動を決 定づけると論じられてきた(石森・山村2009).確か に本稿でも観光・レジャーの情報流通における,SNS というネットコミュニティ内の情報の重要性が示され た.しかしながら本研究では,観光・レジャー情報の 流通におけるSNSの利用は,その目的も方法も意味 も,都市部と非都市部とで異なることが示された.

また情報地理学では,ICTを用いて蓄積される情報 の空間的偏在が認められ,特に都市部の情報が集中的 に蓄積されるため,ICTは機会獲得の空間的不平等を 深刻化すると考えられてきた(Greenbrook-Held and Morrison 2011; Graham et al. 2013).本研究で見たSNS を介した観光・レジャーの情報流通からも,都市部と 非都市部の情報の量的格差の存在を支持できる.しか しながら他者評価という質的視点を導入した本研究で は,観光・レジャーにおいて,都市部の情報蓄積の豊 富さや流通スピードの速さは若者にとって必ずしも良 好な情報環境として評価されるとはいえず,他方で非 都市部の情報の少なさも劣悪なものと一概に評価され ているわけではなかった.本稿の分析は,若者が認識 する観光・レジャーの情報環境や情報流通の空間性の 質的な複雑さを示した.

約言すると,都市部と非都市部の情報環境の差異と 個人の他者評価という2つの視点を導入したことで,

観光・レジャーにおけるSNS利用状況の量的,質的,

空間的な複雑性を把握することに成功した点に,本研 究の意義がある.

V おわりに

本稿では東京大都市圏に居住する若者を対象に,都 市部と非都市部の情報環境の差とネット上での影響力 の個人差に着目し,観光・レジャーにおけるSNSを介 した情報探索・発信がどのように行われているのかを 検討してきた.とりわけ若者の中でもSNS上での影 響力が強い者の思考と行動の空間性を強調し,彼ら彼 女らがどのような若者で,どのような空間を,どのよ

(11)

うな情報環境にあると認識してSNSを利用しているの かという問題に,一つの解を示すことができた.若者

のうちSNS上での影響力が強い者は,SNSで個人的な

社会関係を拡充し活用して,都市部と非都市部それぞ れの情報環境を勘案しながら観光・レジャーの情報を 発掘し,その情報を,ときに自身の観光・レジャー体 験に対する他者評価への期待を織り交ぜながら発信し ていた.

このことは,観光対象としての潜在的な価値を保有 しつつも情報発信力に乏しかった観光地や観光資源 や,あるいは観光資源と見做されなかった諸資源の価 値が,SNSを介して若者たちに発見され増大される蓋 然性が高まっていることを示唆している.地域の伝統 的な内部構造や諸文脈に基づく価値が,一部の若者の 新しい視線によって社会的に再発見されている.

とはいえ,そうした若者たちの視線を観光地の諸主 体が表面的な観光情報流通によってコントロールする ことは容易ではないだろう.影響力を持つ若者たちは 安易な「SNS映え」の凡庸さを鋭く見抜き忌避する厳 しい批評眼も持っている.むしろ,これまで観光地理 学者たちが述べてきたような,個々の地域の文脈を尊 重した観光発展の在り方が,彼ら彼女らから正しく評 価されうるといえる.

若干ながら今後の課題について述べる.本稿は社会 学で盛んに論じられている,SNSの利用拡大をめぐる ある種の監視社会化が,都市部の観光・レジャーの局 面において明瞭に表出することを示している.ネット 利用のさらなる拡大を背景に,個人が既存のマスメディ アにとらわれず,より「自由」に観光・レジャー情報 を探索し発信できるようになった今日の情報環境は,

ある空間においては逆説的に,他者に「見られる」視 線による他者評価というかたちをとった「監視」とし て個人の「自由」な観光・レジャー行動を制御してい る面がある.本稿で見た若者たちによる,個々の空間 の情報環境や観光・レジャー資源の社会的価値を鋭敏 に批評し,SNSを複雑に使い分ける先鋭的な行為は,

筆者には,若者たちが単純な「SNS映え」を超克し,

個人間の相互監視社会で観光・レジャーを楽しむため のしたたかな「戦略」にも見える.こうした「自由」

と「監視」を鍵概念とした観光・レジャーの空間理解 や,反対に観光・レジャーの空間から現代社会の「自

由」とそこに潜む「監視」を析出することは,観光地 理学の新たな視点になりうる.

謝 辞

インタビュー調査に応じて頂いた皆様に末筆なが ら,お礼を申し上げます.本稿の骨子は2018年日本 地理学会春季学術大会シンポジウム(2018年3月,東 京学芸大学)にて発表した.

1)地理学でも,観光行動や観光資源の評価指標とし

て個人のSNS利用データを活用した分析が報告

されており,田中ほか(2015,2016)などが例示 できる.

2)日本交通公社が2010年12月に実施した「オピニオ ンリーダーに聞く旅行者モニター調査」による.

3) SNSの年齢別利用率は,6歳から12歳が18.4%,

13歳から19歳が64.6%,20歳から29歳が72.1%,

30歳から39歳が65.0%,40歳から49歳が55.0%,

50歳 か ら59歳 が40.6%,60歳 以 上 が20.9%で あ る.産業別に見た企業のSNS利用率は,建設業が 21.1%,製造業が13.2%,運輸業が14.1%,卸売・

小売業が25.7%,保険・金融業が30.8%,サービ ス業・その他が32.8%である.

4)「SNS映え」は,ヴェブレン(1998)の言う「顕 示的消費」であるという見解 (南後2018)も見ら れ,学術的に位置づけようとする動きも一部で認 められる.

5)電通(2016)では,写真や動画による体験の共有 が,「ユーザー同士互いに『自分もこうありたい』

『こんなことがしたい』という憧れ,消費意欲を 喚起させ合っており,購買や行動のトリガーとし て機能している」と指摘している.2018年6月5 日の朝日新聞では,PRの一環としてインフルエ ンサー向け内覧会が開催されていることが報告さ れている.

6)回答者への報酬支払型のネットアンケートサイト である「スマートアンサー」を利用した.

7)たとえば天野 (2017)もSNSを介した情報流通に おけるインフルエンサーの役割を強調しているが,

インフルエンサー自身が現実にいかなる思考のも

(12)

とで情報を利用しているのかには踏み込んで分析 していない.

8)たとえばボイド (2014)もSNSを概念的には定義 していない.

9)言うまでもなく,本来は厳密な定義の上で分析さ れることが望ましい.しかし本調査では一定規模 のアンケート調査により一般的な傾向を読み取る ことを第一の目標とした.こうした調査は「都市 部」 と 「非都市部」,あるいは「都心」「郊外」「農 村」といった諸概念を厳密に定義して実施するこ とは難しい.「都市部」と「非都市部」の厳密な 定義に基づく分析は,今後より具体的なケースス タディで行われる必要があると考える.

10)ほかの指標として考えられるTwitterの登録年やフォ ロー数,あるいは利用しているSNSの数などには,

SNSの利用強度が表出する.しかし,フォロワー 数は本人の利用強度に加えてSNS上での発信内容 への他者評価も高くなければ増加しないため,影 響力が端的に現れる.ただしSNS上での影響力 は,単にフォロワー数が多ければ大きくなるとは 断言できず,たとえばフォロワーの趣味趣向や,

フォロワーのフォロワー数といった要素も影響し うる.しかしフォロワー数が最も端的かつ包括的 にSNS上の影響力を把握しうる指標であること は変わりなく,上記のような限界があることを理 解した上で,この指標を用いることにした.

11)フォロワー数「100–499人」と「500–999人」の データを分析すると,両者には同質的な面が見ら れた.たとえば 「学生 (高卒以上)」 の該当率はそ

れぞれ38.5%,41.9%と比較的近く,かつ 「フォロ

ワー数1–99人」と「フォロワー数1,000人以上」

の20.6%,28.6%と は 乖 離 し,「100–499人」 と

「500–999人」は中間的な位置にある.後述する

表4,5にあたる観光・レジャーにおけるSNS利用

についてもおおむね同傾向であった.たとえば表 5にあたる都市部での観光・レジャーの情報発信 での「発信しない」の回答率は,「フォロワー数 1–99人」が50.3%,「フォロワー数1,000人以上」が 28.6%なのに対して,「100–499」は27.2%,「500–

999」は24.2%である.そこで特にインフルエン

サーに着目する本分析において「100–499人」と

「500–999人」 は,「フォロワー数1–99人」 と 「フォ

ロワー数1,000人以上」との中間的な傾向を示す

類型として一括することで,フォロワーが特に多 い層とそうでない層との違いを明瞭化することと した.

12)ただし 「フォロワー数1,000人以上」 の値は36.7%

で,「フォロワー数100–999人」 の46.8%より低い.

13)インタビュー時には本稿における「非都市部」の 意味で発言された.これはD氏も同様である.

14)この発言の意味は,ネット上のブログメディアに は,記事を通して得られるアフィリエイト広告収 入を増やすために,検索サイトで上位に掲載され やすい「定番」の情報ばかりが掲載されているの で凡庸だということである.

文 献

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〈著者略歴〉

福井 一喜(ふくい かずき)

1987年埼玉県生まれ.流通経済大学社会学部助教.博士(理学).観光地理学と情報地理学を専門とする.主な 論文に「温泉観光地における需給接合と情報流通の再編―群馬県草津温泉における宿泊業のインターネット利用 の分析から―」(2017年,地学雑誌126: 595–615),「東京のベンチャーIT企業をめぐる情報技術者コミュニティ の役割―東京の大規模会合の分析を通して―」(2016年,経済地理学年報62: 87–101),「群馬県草津温泉におけ る宿泊業のインターネット利用の動態―宿泊施設の経営戦略に着目して―」(2015年,地理学評論88A: 607–

622),「新聞広告を介した情報流通の地域的差異性―新聞間の比較分析から―」(2013年,地理空間6: 141–150)

公式サイトhttp://fki.me

参照

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