政策Open Lab/Food Tech( 3Dフードプリンタ)チーム
3Dフードプリンタの影響と可能性について
19年7月24日 FCP若手フォーラム 政策Open Lab Food Tech チーム
澤田 翼(農林水産省政策統括官付参事官付)
連絡先:tsubasa_sawada770@maff.go.jp
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政策Open Lab/Food Techチームの紹介
◯ 18年4月、業務時間を1~2割程度を活用し、現行の部局
や政策の枠を超えて政策提言を行う政策Open Labが発足。
◯ Open Labのスキーム下で、 3Dフードプリンターやロボ
ティクスが農林水産業・食産業に与える可能性の調査・政策提 言を行う「Food Techチーム」を立ち上げ、活動開始。
【Food Techチームメンバー(第2期)】
渡辺(政策課)
髙野(政策課)
福島(大臣官房)
淺野(技術会議事務局)
西元(技術会議事務局)
澤田(政策統括官)
鈴木(政策統括官)
冨士田(消費・安全局)計8名 顧問:天羽政策統括官
【その他のテーマ】
・GIS/リモートセンシング技術の活用
・農業者のBCP策定に向けた研究
・棚田女子プロジェクト
・日本農業のモデルルームの国際展開(インド)
など
昨年度のFood Techチーム活動概要
1 現状の整理
•
関連プレイヤーの動向• 3Dフードプリンタの社会
実装に向けた研究開発課題 の整理 等2 可能性についての整理
• Food Techがもたらす影響
•
社会・経済的効果の検討•
シナリオの検討 等〇 成果物
〇 活動内容(実績)
第
1
回研究会• 月1~2回程度の 個別意見交換
• 外部の研究会・会議等 での意見交換(計5 回)
• 関係法令等の調査
• 約100名 が参加
第1回参加者を中心 に約40名でテーマ ごとにグループディ スカッション
7月
3月最終報告
第2回研究会の様子
2
第
2
第回研究会2
回研究会Food Techの影響( 食のデジタル化 )
「食×デジタル」によって、これまで難しかった1人1人の消費者へのパーソナラ イズ化がやりやすくなることで、食産業のあり方を変えていく可能性がある。
これまで拾えなかった生活者のきめ細かな欲求に、事業で応えやすい時代に変 わっていく。「パーソナライズ化」が進む
•
サプライチェーンのデジタル化•
生活、あらゆる行動のデータ化•
嗜好や味覚の可視化=データ化•
少量多品種・カスタムメイドの食の 低コスト化•
データに基づいて個人の健康や嗜好 への最適化(パーソナライズ化)これからの市場
(ロングテール型市場)
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食市場の変化
需要の規模
商品・サービスの種類
キーデバイス 3Dプリンタ
3Dプリンタの技術は、1980年代から研究開発されており、
2012年頃から汎用化され、メディアでも注目されつつある 第4次産業革命と言われる技術の一つ。
造型方式として、シート積層、液槽光重合、
材料押出、結合剤噴射などの方式があり、
異なる特性がある
代表的な材料(インク)は、樹脂、金属、
セラミックなど。
食品分野については、ゲル状又は粉末状の 食品素材が材料(インク)になる。
簡易にモデル造型ができ、試作品等を短期 間で作ることができ、
世界中で「ものづくり」の在り方を
変えつつある(短期化、低コスト化、柔軟 化)。
価格は数万円~
ISOでも3Dプリンタに関する専門委員会
(TC261)が2011年に設立。
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3Dプリンタがもたらす影響
3Dプリンタは、これまでの「マスプロダクション」のビジネスモデルの必要性を変える可 能性がある。大規模な設備が不要になり、産業構造そのものを変化・適応させていく必要が 生じる。• 製造コストがフラット化
• 中央集中型インフラが不要
• 分散型の経済・産業モデルへ
図 ストラタシス 三森氏資料より抜粋
「同一規格化・大量生産による低コスト化」からの脱却であり、
大規模な設備投資を伴った製造業のあり方が変わる可能性
•
3Dプリンタの特徴①数量効果に囚われない経済性
②複雑な製品形状でも変わらない生産性
③デジタル在庫という強靭性
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国内での3Dフードプリンタに関する動向
未利用食材の活用などによるフードロス解決、個人のデータに基づいた食事提供などによるwell-beingの向上、宇宙などの特殊な環境での食料供給といった多方面において、3Dフー
ドプリンタの事業化に向けた動きがある。図1 図2
図1 水産大学校 提供写真 図2 OPENMEALS 提供画像 図3 リアルテックファンド・JAXA 提供資料より改変
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米ゲルを活用した実験 水産大学校事例1
水産大学校等による取組
• 復興に役立てるため未利用食材(アカモク や未利用魚等)を活用したユニークな形を した「魚のすり身」を3Dフードプリンタ で押し出して造形
Sushi Singularity事例2 OPENMEALS Project
• 食のデジタル化の特徴(①自在に味も形も デザイン、②データに基づく健康状態等へ の最適化)を概念実証するレストランの 2020年開業を目指すプロジェクト
JAXAと民間企業等による取組
宇宙生活の課題を 解決する食ビジネス SDGsの解決策
となる食ビジネス
図3
• 宇宙と地球上の食の課題解決に向け、
JAXA、TECHファンド、TECHコンサルが 中心となり、宇宙食料マーケット創出のた めのイニシアチブを2019年3月に創設
• 農研機構が開発し、ヤンマーが 商用化した米ゲル(高アミロー ス米を炊飯後、攪拌したもの。
水分量によって弾性の調整が可 能)を用いて、3Dフードプリン タにて造形。
図1 図2
3Dフードプリンタの特徴とその可能性
柔軟性
カスタマイズ
オンデマンド 再現性
3Dフードプリンタ の特徴
• 形状(デザイン)、食感、素材について 従来の制約に縛られない
• データに基づいて、機械が作業するため データ化した内容を正確に再現
• 個々人のデータに合わせて、最適な栄養、
食感、香り、色に調整
• 必要なものを必要なときに必要な場所で
• サプライチェーンに縛られない
(食感、食材)柔軟性
×
健康再現性
×
働き手カスタム
×
健康オンデマンド
×
防災「介護食」市場
「和洋菓子」市場
「個食化」市場
「災害食」市場
可能性のある市場の例
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3Dフードプリンタがもたらす新しい価値
「食のデジタル化」のキーデバイスとなる3Dフードプリンタは、従来とは異なる「調理」の方法によって、環境問題や人手不足などの社会課題解決や、これまで 両立が難しかった「便利」かつ「楽しい」の実現といった価値の提供を実現する 可能性がある。
「おいしい」「便利」「楽しい」の両立
• 3Dフードプリンタは、「おいしい」は当然の こととして、この上に「便利」と「楽しい」を 両立させることができる
便利
楽しい
独立関係
便利
楽しい
両立関係
現在の世界 未来の世界
• 手間がかからず「便利」か、
手間暇かけて「楽しい」か
• 3Dフードプリンタによって サプライズを手軽に実現でき る
例えば、このようなことも簡単に実現できるように
• 流動食ではない、食感のある介護食
• ムスリムが食べられる「とんかつ」
• 調理の難しい場所(宇宙、船上、戦場等)でもプロやおふ くろの味 など
食が関わる社会課題の解決
食ロス、環境問題への貢献
• 3Dフードプリンタを活用することで、これ までとは異なるアプローチで社会課題の解決 を図ることができる
働き手不足の解消 食品衛生の向上
医食同源、健康寿命の延伸 文化保存、伝統食の継承 コミュニケーションの変化
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テクノロジーのもたらす未来の食卓
TNOは、科学技術分野における応用科学研究を行うことを目的として、オランダ議会によって1932年に設立された欧州で最大規 模を誇る中立の総合研究機関。
出典:TNO
ドローンによる配送
自宅植物工場
3Dプリンターで出力
遠隔地のおばあちゃん と一緒に同じ食事を
3Dプリンターで、見 た目は同じだが、栄養 強化、嚥下障害用等の パーソナライズが可能
自宅の植物工場、3Dフードプリンターの発達で、食料生産や食品加 工が個々人の健康、嗜好にあわせてパーソナライズされていく。
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Food Tech研究会から得た課題
ベンチャー・スタートアップ、研究者や新規事業開発に関わる担当レベルではFood Techのビジネスとしての可能性を強く認識しているが、「日本の強い分
野」として産業育成していく上で欠かせない既存の大企業や行政の認識・対応が 出遅れ気味。•
今の日本の食産業のあり方への脅威•
海外が先行しており、出遅れのリスク•
日本の強み「コンテンツとしての食」 日本の持つ食に関する歴史・文化
国民への食の関心の高さ
食品企業の持つ高い食品開発技術等
•
人口減少、単身世帯の増加既存産業にとっての脅威 新たな産業を興すチャンス
〇意見交換等で認識された「今後の変化」
〇脅威に備え、チャンスを勝ち取る上での障害
•
保守的な意思決定構造•
ベンチャー・スタートアップと大企業の 溝消極的な意識・態度、アンテナの低さ
•
市場の規模感、市場のルール、共創領域 の範囲などの不透明さ市場の不透明さ
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今年度の取組
3Dフードプリンタが最初に活用される有望な分野、素材として まず、「介護食」×「米ゲル」に注目。11
具体的な論点整理、深堀りを足掛かりに、企業・行政が3Dフードプリンタ(新し い産業)を共同で育成できる環境整備に向け、農水省がとるべき対応方策を官民共 同で議論し、提言する。
介護食
・山形大学にて、介護食用3D フードプリンタ開発中
・海外製3Dフードプリンタも 嚥下困難者用にPR
・世界トップレベルの高齢社会 において、高齢者の食の自由 度向上は喫緊の課題
米ゲル
・自由な物性制御
・あらゆる素材のベースに
・良好な実験結果
・コメの新たな需要開拓