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平成 2 7 年 1 1 月

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(1)

民間共助型支援と疫病リスク評価を組み合わ せた水災害対策に関する情報基盤の構築と その活用

民間共助型支援と疫病リスク評価を組み合わ せた水災害対策に関する情報基盤の構築と その活用

大分工業高等専門学校 情報工学科

准教授  平岡 透

第 2 0 1 3 - 0 9 号

平成 2 7 年 1 1 月

研究助成表紙.indd 6 2015/10/28 9:22:07

(2)

(一財)日本建設情報総合センター研究助成事業

民間共助型支援と疫病リスク評価を組み合わせた 水災害対策に関する情報基盤の構築とその活用

報告書

平成

27

8

(3)

1 助成研究者紹介

平岡ひらおかとおる

現職:大分工業高等専門学校情報工学科准教授(博士(工学))

主な著書:

・Toru Hiraoka and Kiichi Urahama : Generating Striped Color Images by Inverse Line Convergence Index Filter, IIEEJ Transactions on Image Electronics and Visual Computing, Vol.2, No.2, pp.190-194, 2014.

・平岡透,熊野稔,浦浜喜一:モルフォロジカルフィルタを用いたラビリンス風画像 の生成,映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.11,pp.J492-J494,2014.

・平岡透,陸旻皎,今山清:バイラテラル最小値フィルタとバイラテラル最大値フィ ルタを用いた航空機搭載レーザスキャナデータからの地面抽出,写真測量とリモー トセンシング,Vol.53,No.3,pp.106-110,2014.

・平岡透,浦浜喜一:逆線集中度フィルタによる縞模様画像の生成,映像情報メディ ア学会誌,Vol.68,No.6,pp.J261-J264,2014.

・平岡透,浦浜喜一:係数シフトカラーバイラテラルフィルタによるイスラム模様風 画像の生成,映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.6,pp.J256-J260,2014.

・佐藤龍治,平岡透:津波侵入方向を考慮した避難場所選定のための一手法,写真測 量とリモートセンシング,Vol.53,No.2,pp.83-86,2014.

・佐藤龍治,平岡透,野中尋史,高見徹:反復バイラテラルフィルタを用いたDEM 補間”,写真測量とリモートセンシング,Vol.53,No.2,pp. 75-79,2014.

・平岡透,浦浜喜一:逆バイラテラルフィルタを用いた墨絵風画像の生成”,映像情報 メディア学会誌,Vol.68,No.2,pp.J87-J91,2014.

・平岡透,野中尋史:大腸菌群数とレーザプロファイラデータのエントロピーの相関 分析”,写真測量とリモートセンシング,Vol.52,No.6,pp.316-320,2014.

共同研究者紹介:

かめ 辰三た つ み

現職:大分工業高等専門学校都市・環境工学科教授(博士(工学))

高見た か みとおる

現職:大分工業高等専門学校都市・環境工学科准教授(博士(工学))

野中の な か 尋史ひろふみ

現職:長岡技術科学大学技学研究院情報・経営システム工学専攻ソーシャル情報シス テム学講座講師(博士(工学))

古川ふるかわ 隼士た か し

現職:大分工業高等専門学校都市・環境工学科助教(博士(工学))

(4)

2 目次

1. 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.1 研究の背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.2 本研究の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

2. アンケート調査による民間企業の共助の可能性 ・・・・・・・・・・・・・・ 5 2.1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2.2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2.3 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

3. アンケート調査と地理情報システムを用いた民間企業の共助の評価 ・・・・・ 17 3.1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 3.2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 3.3 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 3.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

4. ふん便性細菌の調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 4.1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 4.2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 4.3 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 4.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

5. ふん便性細菌と土地利用の相関分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.1 まえがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.2 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.3 結果と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38 5.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 6. 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43

(5)

3 1. 序論

1.1 本研究の背景と目的

東日本大震災を契機として災害時の避難などの安全対策を支援する情報技術が求められ ている.特に大分県を対象にして考えると,津波を伴うような大地震が生じる確率につい ては,震度分布や地滑りの危険箇所など各種情報を表示できる防災科学技術研究所「J-SHIS 地震ハザードステーション」において試算結果がまとめられているが,これによれば「30 年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」は大分市の県庁付近が50%程度となるな ど大分県の場合,人口集中地域である大分市や別府市,佐伯市付近に高い確率の箇所が集 中している.また,地震以外の災害についても,20127月に日田市等を中心とする集中 豪雨(九州北部豪雨)が発生するなど様々な災害リスクにさらされている.

これらの理由から災害時の避難・復旧に寄与する地域防災のための情報システムの開発 は,自然災害が多発する大分県地域にとって大きな意味を持つものとなる.その機能とし て特に必要となるのは,まず民間組織が提供できる避難物資と避難場所の提供を統合的に 管理するデータベースである.公的機関が提供できる避難物資・場所に関する情報は現行 でも充実しているが,公的機関よりはるかに多くの避難物資・場所を提供できる民間組織 の情報についてデータベース化されたものは現行では見られない.一方,災害後の二次的 被害として危惧されるのは,疫病リスクである.いかに疫病リスクを避け避難場所を選定 するか,また復興を行うのかが課題となっている.しかしながら,この課題を解決する既 存のシステムは存在していない.

このような中で本研究では,民間企業に対してアンケート調査を実施することによって 既存システムで実現できていない民間企業による共助を促進するためのデータベース,河 川中の潜在病原性微生物濃度に基づき被災地の疫病リスクを見積もるデータベース,さら にはこれらのデータベースと経路情報より最適な避難先を選定したデータベースを統合的 に提供することを目的とする.データベースの利用者は,国土交通省などの国の機関や地 方自治体,民間企業,一般人を想定している.このとき,個人情報保護法を順守し,安心 安全な情報を提供するという観点から,情報の開示基準を明確にする必要がある.本デー タベースは,地方自治体においては,避難場所の選定や避難経路の選定,災害備蓄の設置 計画などの地域防災計画に利用することを考えている.また,今後の防災都市計画への活 用も視野に入れている.民間企業や一般人には,避難場所や避難経路,防災備蓄などをわ かりやすく表現したハザードマップとして提供する.さらに,河川における潜在的病原細 菌濃度を流域に沿って網羅的に予測し,データベースに格納する.これに加えて,浸水時 の水はけが悪い場所を選定し,流出した細菌が高い濃度でとどまりやすい危険地域をハザ ードマップに追加し,避難場所の選定などに用いる.本研究においては,深刻な津波被害 が予測されている大分市(大分川流域)を対象に実験を行う.将来的には,汎用性を確か

(6)

4 めた上で,全国各地域で利用できることを目指す.

1.2 本研究の構成

本研究では,1.1節で述べた種々の要求に対処するために,民間共助型支援と疫病リスク 評価を組み合わせた水災害対策に関する研究をまとめたものであり,6章から構成されてい る.

1章は,序論であり,本研究の社会的背景と目的,構成について述べる.

2章では,大分市の臨海部に広く立地する民間企業に対して,アンケート調査を実施する.

アンケート調査の項目として,地域防災活動実施の有無,地域防災への意識,社員数,建 物種別,事業所入居階数,勤務日時,避難者受入可能人数,災害時に提供可能な物資など を取り上げる.アンケート調査の結果に基づき,多変量解析(因子分析)を用いて民間企 業の類型化を試みる.

3章では,津波発生時の複数の民間企業の共助による効果を視覚的かつ定量的に評価する 試みを行う.このとき,民間企業の共助として避難者の受け入れ場所の提供に注目し,複 数の民間企業に避難できるようになることで避難者の移動時間を短縮できる可能性につい て調べる.本評価では,民間企業へのアンケート調査の結果から避難場所を提供できる民 間企業を抽出し,抽出した民間企業に避難者が避難できる範囲を地理情報システムを用い て道路ネットワークデータ上で調べる.

4章では,大分川の将来の河川管理における衛生指標の数値目標を定めるための情報 を蓄積することを目的として,ふん便指標細菌(大腸菌群,ふん便性大腸菌群,大腸 菌,腸球菌)の存在実態調査を実施する.調査地点は大分川の上流から下流の全 17 地点とし,調査期間は201312月から201411月の1年間で毎月一回の調査(計 12回)を実施する.

5 章では,大分川のふん便指標細菌の調査の結果に基づき,ふん便指標細菌(大腸菌 群,ふん便性大腸菌群,大腸菌,腸球菌)と土地利用の相関分析を行う.ふん便指標細 との相関分析を行う土地利用の項目として,田,田以外の農用地,森林,建物用地,河 川地・湖沼の5項目を取り上げる.また,土地利用データとしてふん便指標細菌の観測地 点から任意の半径に含まれる土地利用の割合を求めるが,ふん便指標細菌との相関が高く なる半径も調べる.

6章は,本研究の総括であり,結論を述べ,今後の課題について論じる.

(7)

5 2. アンケート調査による民間企業の共助の可能性

2.1 まえがき

東日本大震災を契機として,”共助”の重要性が再認識されている.通常,共助は自治会 や自主防災会等の地域住民組織が担うことが想定されており,自治体の地域防災計画2-1) では民間企業が共助の一翼を積極的に担うことは規定されていないのが現状と思われる.

しかしながら,大分市の臨海部のように,民家に比べ中小の工場・事業所が大部分を占め る地域では,震災時に近隣,血縁,コミュニティ等の従来の共助組織が機能するか否かは 疑問である.このような用途混在地域では,むしろ民間企業自体が共助を担うことが望ま しいと考えられる.

民間企業が地域防災の中でどのような共助を担うべきか,あるいは企業の共助意識に関 する研究は,住民の防災意識に関する研究に比べ,そう多くは見られない.企業の共助を 役割分担の観点から扱った事例として,例えば,災害発生時において官民のそれぞれの長 所を生かした役割分担を行い,お互いの弱点を補完することの意義を検討する研究 2-1, 2-2) や,災害復興時における民間企業の取り組みを示し,その優位性を示す研究2-3)が見られる.

またコミュニティや組織間の連携の観点からは,生活意欲や共同意識を高めることにより,

自然や人工の脅威に対しても屈しない強いコミュニティをつくる必要性を示した恩田2-4) 研究や,公助の行き届かない地域や災害弱者地域を含む被災地全域の人的被害を軽減して いく上で,地域間の住民連携による共助の有効性を示した臼杵ら2-5)の研究,田口2-6)は,市 民・事業者・行政による連携や協働した防災対策の取組の重要性について理解促進を図り,

主体的な行動につなげる必要性と重要性を示している.一方,企業とエリア防災の観点か ら,日高2-7)は,都心部に立地する

2.1 調査対象地域 調査対象地域

大分川

大分駅

(8)

6

会員企業を対象としてのアンケート調査結果から,地方都市の都心部のエリア防災推進上 の課題と対策を明らかにしている.しかし,いずれも地域防災に関わる企業の共助の具体 的な役割や共助意識の解明までは言及しておらず,企業の共助意識に関する研究蓄積は乏 しい現状と思われる.今後の超高齢社会の進展や一層の地域コミュニティの希薄化2-2)等を 想定した時,従来の共助組織を補完・代替する役割として民間企業を共助組織の一員とし て位置づける意義は小さくないと考えられる.

本研究では,震災時において,民間企業が地域の防災活動に積極的に関わり,企業の防 災担当者が震災発生時の地域コミュニティのリーダーも兼ねる等,従来の共助組織を補 完・代替する役割として,民間企業を共助組織の一員として位置づける可能性2-3)をアンケ ート調査を通して明らかにすることを目的としている.

2.2 方法

2.2.1 調査対象地域の概要 本研究では南海トラフ巨大地震で

震度6強,最大津波高7.2m2-4)が予 想されている大分市臨海部の大分川 左岸地域を調査対象地域(図2.1)と し,そこに立地する全民間企業・事 業所へのアンケート調査を実施した.

その結果をもとに民間企業が地域防 災の中で果たす役割を見出し,地域 防災に関する民間企業の共助意識を 分析する.

大分川左岸地域は,大分市内で最 も大きな津波被害が想定されている が,この理由として,同地域が埋立 て部のため高台がなく,海に面して いるため逃げ遅れる可能性が高いこ と等が挙げられている.また,同地 域は大分港の臨港地区(大半が工業 港区)として指定されていることか ら,港湾機能の利便促進を図る中小 の事業所や倉庫,商店が民家に交じ

って多数立地しており,臨海部を埋め立ててできた工業団地としての性格を有している地 域である.そのために,現時点では自治会は存在・機能しているが,住工混在地域である

2.1 アンケートの調査項目

調査項目

1)防災活動に積極的に取り組む必要性とその理由

2)地域防災活動に対する民間企業の関わり方とその重要度 3)地域防災活動における民間企業の担う役割

4)企業が地域防災に積極的に関わることで生じる効果(メリット) 5)地域防災に積極的に関わることについての総合評価 6)地域の防災活動に積極的な関与が可能になる条件 7)地域防災に一緒に取り組んでいる団体

8)地域への防災活動の周知の方法 9)今後の地域防災活動の展開方法

10)自治体等との防災に関する協定締結の有無 11)震災時に提供可能な物品・人員について 12)避難者のための受入れ場所の提供について 13)避難者の受入れ可能人数

14)企業の属性:従業員数 15)企業の属性:建物階数 16)企業の属性:創業年数 17)企業の属性:業種

(9)

7

が故の事業所との連携不足,自治会長の高齢化やそれに伴う震災時のリーダー不足という 課題が出ている地域である2-5)

2.2.2 調査の方法

本調査では,市販の住宅地図(ゼンリン社発行)を用いて,同地域に立地する学校,病院等 の公共公益施設を含む全事業所 527 箇所を抽出した.調査票の送付・回収とも郵送法を用 い,調査期間は2013102日~11月中旬の約6週間とした.実発送数は宛先不明で返 却されてきた数を除く451枚であり,有効回収数161,回収率は35.7%であった.アンケ ートでの設問項目は表1に示すように企業の属性を含め計17問あるが,本稿では主要な結 果のみを示す.

2.2.3 分析手法

アンケートの集計方法には単純集計を用いた.また,企業が地域防災に関わることで生 じる効果(メリット)の項目では,多変量解析の一種である因子分析を用いて項目の集約を図 ると共に,各企業がどのような効果を得ているのかを因子得点を用いて 2 次元座標平面上 に展開することで,視覚的にわかりやすくするための類型化を試みた.

2.3 結果と考察

2.3.1 回答企業の属性について

従業員数をみると,「10人以下」が50.9%と半数を占めた.以下「30人以下」が21.7%,

「50人以下」が13.0%となり,本対象地域は全体の72.6%が30人以下の中小企業が占め ている.建物の階数では,「2階」が55.3%と最も多く,次いで「1階」が21.7%となり,

全体の77.0%が2階以下の建物となっている.創業年数をみると,「1~10年未満」が8.7%,

「11~20年未満」が16.1%,「21~30年未溝」が24.2%,「31~40年未満」が25.5%,「41

~50年未満」が13.0%,「50年以上」が11.8%となり,当該地域が1960年代に埋め立て られて以来,立地が継続している企業が多いことも分かる.業種別では,「運輸業・郵便業」

31.1%と最も多い.次いで,「建設業」が16.8%となり,これら以外の業種は少数で分布

しており,当該地域の産業構成の特徴が表れている.

2.3.2 地域防災に対する企業の認識

(1)防災活動に積極的に取り組む必要性とその理由(図 2.2 参照)

企業が防災活動に積極的に取り組む必要性については,「大いにある」が 53.4%,「少し

ある」が38.5%となり,合計すると91.9%が必要だと回答した.このような高い値を示し

たのは,当該地域には大津波が襲来した時に避難するための高台が全くないことから,2011 年の東北地方大震災が他人事ではという危機感を有していることの表れだと解釈されるし,

(10)

8

42.9 32.9 31.1 30.4 36.0 26.1 20.5

29.2 26.1

30.4 36.0

40.4 18.0

45.3 39.1

44.7 29.8

35.4 41.0 39.1

37.9 38.5 24.2

39.1 37.9 34.2

9.3 19.9

19.3 28.0

19.9 25.5 32.3

24.2 28.0 27.3

19.9 16.8 36.6

0.6 5.0

3.1 7.5

5.6 5.0 5.0 5.6 5.0 7.5

2.5 2.5 7.5

0.6 2.5

0.6 2.5

0.6 1.2 1.2 0.6 0.6 4.3

1.2 0.6 1.2

1.2 0.6 1.2 1.9 2.5 1.2 1.9

2.5 1.9 6.2

1.2 1.9 2.5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①避難訓練への参加

②自社で の防災研修会の開催

③地域で の防災講習会等への参加

④行政との防災協定の締結

⑤防災担当の設置

⑥自治会(自主防災組織等)との連携

⑦地域全体での「防災協議会」への参加

⑧自社内で の自主防災組織の設置

⑨地域( 住民)との日頃からのつながり

⑩津波避難ビル登録への協力

⑪災害時における物資の提供

⑫災害時における人手の提供

⑬自社内での男女の役割分担の明確化

重要である 少し重要である どちらでもない あま り 重要でない 重要でない 無回答 . また,そのために,企業として地域防災に一定の役割を果たすことは当然であるとする意 識が醸成されていたと考えることができる.そのことは,「大いにある」と「少しある」に 回答した事業所にその理由を尋ねた結果において,「企業が災害時に一定の役割を果たすの は当然と考えている」(59.5%),及び「企業の社会的責任の一環と考えている」(58.8%)

2つが半数を超えていることからも,裏づけられていると言えよう.

2.2 防災活動に積極的に取り組む必要性

2.3 地域防災活動に対する民間企業の関わり方とその重要度

(11)

9

54.0 28.0

36.6 29.8 16.1

23.6 7.5

2.5

0 10 20 30 40 50 60

災害時の避難の呼びかけを行う 災害時に避難場所までの誘導を

行う

避難揚所に物資を運ぶ 公助が始まるまで避難場所で

支援活動を行う 支援物資の備蓄を行う 支援物資の提供を行う その他 無回答

( %)

(2)地域防災活動に対する民間企業の関わり方とその重要度(図 2.3 参照)

ここでは,地域防災への関わり方として,「重要である」と「少し重要である」と回答し た合計値によって重要度を把握することにした.それによると,これらの値が最も高いの は,「避難訓練への参加」(88.2%)である.次いで「災害時における人出の提供」(78.3%)

となった.当該地域には,1970年代半ばに互助組織である「大分五号地協議会」2-6)が設 立されたが,東日本大震災以降,避難訓練の実施や防災講演会の開催等,地域防災活動が 活発に展開されてきている.この協議会の活動によって当該地域の企業の防災意識が高ま り,「避難訓練への参加」や「災害時における人出の提供」等が地域防災活動に対する民間 企業の関わり方として重要と判断されていることが推察される.

(3)地域防災活動における民間企業の担う役割(図 2.4 参照)

大津波発生のような大きな災害時において企業が地域の防災活動を担う役割としては,

「避難の呼びかけを行う」(54.0%)が最多となった.次いで,「避難場所に物資を運ぶ」

(36.5%),「公助が始まるまで避難場所で支援活動を行う」(29.8%),「震災時に避難場所 までの誘導を行う」(28.0%)等が並び,震災時における役割として,民間企業は「避難の 呼びかけ」を担うべき最大の役割と考えていることが明らかになった.このような結果と なった理由としては,前問(2)と同様,最近の「大分五号地協議会」主催の避難訓練等 の実施等により,津波到達までの間は互いに「避難の呼びかけ」を行ったり,「震災時に避 難場所までの誘導」を行う等のことは,企業自らが実践できる役割であるとの自覚が芽生 えてきている表れだと推測できる.

(4)地域防災に積極的に関わることで生じる効果(メリット)及び総合評価(図 2.5 参 照)

企業が地域防災に積極的に関わることで生じる効累(メリット)としては,「企業の社会的 責任を果たすことができる」(83.2%),「社内での防災意識が向上する」(82.6%)が双璧で,

2.4 地域防災活動における民間企業の担う役割

(12)

10

9.9

18.6

1.9 6.8

31.7

38.5

5.6

13.0

25.5

49.1

8.1

24.8

50.9

44.7

24.8

36.0

37.3

20.5

50.9

47.8

11.8

13.0

47.8

35.4 11.8

7.5 19.9

8.1

3.1

0.6

12.4

9.9 11.8

1.2

14.9

6.2

0.0

0.0 4.3

1.2 3.7

3.1

4.3

6.2

2.5 3.1

5.0

4.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

①自社のイメージアップにつながる

②地域住民や自治会との関係が良くなる

③営業(売上、利益)成績がよくなる

④社員の(本業への)士気が上がる

⑤社内での防災意識が向上する

⑥企業の社会的責任を果たすことができる

⑦社内での備蓄が進む

⑧社内で の防災担当者の設置が進む

重要で ある 少し重要である どちらで もな い あま り 重要でない 重要で ない 無回答 .

2.6 地域防災に一緒に取り組んでいる団体

3 位に「地域住民や自治会との関係が良くなる」(67.7%)が入り,「営業成績がよくなる」

(10.0%)や「自社のイメージアップにつながる」(35.4%)等の効果を考えている回答は少 数であった.また,総合的にみて,民間企業が地域の防災活勤に積極的に関わることにつ いては,「大変良いこと」(31.7%)と「良いこと」(60.8%)を合計すると92.5%となり,

大半の企業が積極的に関わることに対しては高く評価していることが分かった.これら の結果から,民間企業は地域防災に積極的に関わることで,外部に対しては,企業の社会 的責任を果たすことができ,同時に自社内での防災意識が高まるという内外両面に渡る効 果を期待していることが示唆された.

(5)地域防災に一緒に取り組んでいる団体(図 2.6 参照)

8.1 3.7

5.0 8.1

15.5

53.4 6.8

8.1

0 10 20 30 40 50 60

自治会・ 町内会(自主防災組織) 消防団 市役所 他の民間企業 地域全体で組織する協議会 一緒に取り組んでいる団体はない

(自社のみにて実施) その他 無回答

( %)

2.5 地域防災に積極的に関わることで生じる効果(メリット)

(13)

11

2.7 地域への防災活動の周知・広報について

9.3 3.1 1.2

16.1 1.9

65.8 5.6

0 10 20 30 40 50 60 70

サインボード(活動内容を広報する…

会社の広報(ホームページ等) 自治会等での総会時に周知 協議会での総会時に周知 その他 広報は行っていない 無回答

( %)

この設問の回答には,「一緒に取り組んでいる団体はない」が(53.4%)で最も多く,次いで,

「地域全体で組織する協議会」(15.5%)が続いた.これらの結果から,半数以上の企業が自 社のみで地域防災に取り組んでいる実態が明らかになり,「地域全体で組織する協議会」,

つまり,当該地域においては「大分五号地協議会」に加入して地域防災に取り組んでいる 企業は,少数であることが示された.当該地域のような中小の事業所が臨海部を埋め立て てできた工業団地に多数立地しているところでは,大津波に対して実効性ある地域防災シ ステムの構築が必須と思われる.そのためには,自社のみの取組みでは自ずと限界がある ことから,地域全体で組織する協議会で取り組む必要性・重要性は論を待たないと考えら れる.その意味でも,現在の大分五号地協議会への参加企業が60社台にとどまっているこ とから,今後,企業の同協議会への加入促進が大きな課題となると思われる.

(6)地域への防災活動の周知・広報について(図 2.7 参照)

地域での防災活動の周知(広報を含む)としては, 「広報は行っていない」(65.8%)が最 多であり,前問の,地域防災に自社のみで取り組んでいることと併せて,情報発信のあり かたに課題があることが示された.その他の周知活動としては,「協議会での総会時に周知」

(16.1%),「サインボード(活動内容を広報する表札・看板)」(9.3%)が挙げられた.

民間企業を共助組織の一員として位置づけようとする場合には,従来型の自治会等が実 施しているように自ら情報発信を行うことが望ましいと考えられる.そのような観点から は,当該地域では「広報を行っていない」現状が示されたが,今後,地域の防災活動に積 極的に関わり,企業の防災担当者が震災発生時の地域コミュニティのリーダーも兼ねる等,

従来の共助組織を補完・代替する役割を想定した時には,大分五号地協議会のような既存 の協議会で統一した広報活動を展開する必要があると思われる.

(7)自治体との防災に関する協定締結の有無

自治体との協定を締結している企業は8.7%に過ぎず,大半の企業は自治体との連携が遅 れている現状にあることが分かった(図は省略する).協定を提携している企業では,・大

(14)

12

19.9

35.4 11.8

15.5

28.6 9.3

6.2

0 5 10 15 20 25 30 35 40

避難者のために物品を提供できる 避難誘導のための人員を提供できる 物品・ 人員のいずれも提供できる 物品・ 人員とも提供できない 避難者のための場所を提供できる 避難者のための場所を提供できない 無回答

( %)

18.6 13.0

13.0 3.1

1.2 1.9 1.2

27.3 20.5

0 5 10 15 20 25 30

15名程度 6~10名程度 1120名程度 21~40名程度 4160名程度 60名以上 100名以上 受入れは不可能 無回答

( %)

分市及び自治会との津波避難ビル協定 ・国土交通省との防災協定 ・九州地区高圧ガス 防災協議会との協定等が見られた.これらの結果及び前問(5)の回答結果と照らし合わ せると,現状では地域防災に自社のみで取り組んでいる企業が多いことから,地元自治体 との防災に関する協定を締結していないことが判明した.しかしながら,大分五号地協議 会としては地元大分市と防災協定を締結していることから,今後多くの企業が大分五号地 協議会に加入することにより,この問題は解決されるのではないかと思われる.

(8)震災時に提供可能な物品・人員について(図 2.8 参照)

震災時にどのような物品・人員を提供できるかどうかの設問では,「避難誘導のための人 員を提供できる」(35.4%)と「避難者のための場所を提供できる」(28.6%)の2つが上位 を占めており,反対に「物品・人員とも提供できない」は,15.5%と低い値を示したことか ら,当該地域の企業は,人員か場所のいずれかの提供を考えていることが示された.

2.9 避難者の受入れ可能人数

2.8 震災時に提供可能な物品・人員について

(15)

13

(9)避難者のための受入れ場所の提供及び受入れ可能人数(図 2.9 参照)

災書時に避難者のための受け入れ場所の提供については,「提供できる」が 32.9%,「提 供できない」が39.1%,「わからない」が24.2%となった.また,受入れ可能人数について は,「1~5名程度」が18.6%,「6~10名程度」が13.0%,「11~20名程度」が13.0%とな った.前述したように,回答企業の73%は従業員数が30人以下の小規模の企業であるが,

可能な範囲で受け入れたいとする意欲が伺える.前問の(8)と併せて考えてみると,当 該地域の民間企業においては,小規模な企業規模にも関わらず震災時には人員か場所のい ずれかの提供を考えており,さらには避難者のための受入れにも積極的であることが示さ れたと言えよう.

2.3.3 民間企業のポジショニング(類型化)

企業が地域防災に関わることで生じる効果(メリット)についての設問は多数あるので,こ こでは集約を図るために因子分析(バリマックス回転)を適用した.ただし,未記入の項目が ある回答は除いた.そのため,因子分析の対象は71社である.分析を行ったところ,2 の因子が抽出された.因子負荷量は表2.2に示す通りである.

因子1に影響しているのは「社内での防災担当者の設置が進む」であり,「社内での防災 意識が向上する」,「企業の社会的責任を果たすことができる」,「社内での備蓄が進む」と 続く.これより,因子1は「社内での体制整備」の因子であると解釈した.因子2に最も 強く影響しているのは「営業(売上,利益)成績が良くなる」であり,「自社のイメージア ップにつながる」と続く.このことから,因子 2 は「イメージ向上」の因子であると解釈 した.

2.3 に各因子の寄与率を示した.因子 1の「社内での体制整備」は 30.3%で,因子 2 の「イメージ向上」は 24.1%となった.これら 2つの因子で54.3%が説明できることがわ かり,因子モデルとしては妥当な結果と思われる.

2.2 因子負荷量

項目 因子 1 因子 2 社内での防災担当者の設置が進む 0.750 0.123 社内での防災意識が向上する 0.745 0.179 企業の社会的責任を果たすことができる 0.676 0.269 社内での備蓄が進む 0.642 0.273 営業(売上,利益)成績がよくなる 0.183 0.797 自社のイメージアップにつながる 0.140 0.743 地域住民や自治会との関係が良くなる 0.253 0.489 社員の(本業への)士気が上がる 0.563 0.551

(16)

14

2.3 各因子の寄与率

次に,因子分析の結果から得られた因子得点に基づいて,各企業のポジションを視覚的 にわかりやすくするために,因子1と因子 2を軸とし,四つの象限に区分された二次元座 標平面に各々の企業をプロットした.図2.10 は縦軸が因子 2 の「イメージ向上」を表し,

横軸が因子 1 の「社内での体制整備」を表している.これより,第Ⅰ類型に配置された企 業群は,「イメージ向上」,「社内での体制整備」ともに高いため,「企業が地域防災に関わ ることで生じる効果」が上がっている企業と考えられ,防災リーダーとなるには相応しい 企業と思われる.一方,第Ⅲ類型に属する企業群は,「イメージ向上」,「社内での体制整備」

ともに低いため,「企業が地域防災に関わることで生じる効果」が上がっていない企業と考 えられるので,今後,これらの企業群を如何に第Ⅰ類型に持っていくかが課題になると思 われる.

因子 No. 二乗和 寄与率(%) 累積寄与率(%)

1 2.42 30.3% 30.3%

2 1.93 24.1% 54.3%

2.10 各企業のポジショニング(類型化)

(17)

15 2.4 まとめ

本研究では,大津波による甚大な被害が想定されている大分市の大分川左岸地域を対象 に,従来の共助組織を補完・代替する役割として民間企業を共助組織の一員として位置づ ける可能性を企業へのアンケートを通して明らかにしようとしたものである.得られた結 果を要約すると以下の通りである.

(1)対象地域の企業は,地域防災活動に積極的に取り組むべきと考えており,地域防災 への取り組みは「企業の社会的責任」として捉えていることが明らかになった.

(2)企業は地域防災にどのように関わるべきかについては,「避難訓練への参加」が最も 重要と考えていることが示されたが,これには当該地域に存在する「大分五号地協 議会」主催の最近の防災訓練等の影響が示唆される.また,地域防災において,企 業は「避難の呼びかけ」を最も重要な担うべき役割と考えていることが判明した.

これらのことから,震災時において企業は地域コミュニティの防災リーダーとして,

既存の自治会や自主防災会等の住民組織の補助あるいは代替として活躍できる素地 は十分あると考えられる.

(3)企業が地域防災に積極的に関わることで生じる効果(メリット)としては,「企業の 社会的責任を果たすことができる」と「社内での防災意識が向上する」の二つが挙 げられた.このことは,地域防災に関わることで,社外に対しては「社会的責任」

を果たすと同時に,社内に対しては「防災意識の啓発」に繋がると企業は捉えてい ることを意味していると解され,地域防災への関わりは社内外に対する効果がある と考えていることが示唆される.

(4)地域防災に対する企業側の課題として,地域防災を自社のみで行っていることから,

自社の防災活動を地域へ周知・広報を実施していない現状が明らかになった.これは,

地域と情報の共有が図られていないことを意味している.前述したように,地域防災 への民間企業が関わり方としては,避難訓練への参加や避難の呼びかけが可能と回答 していることから,どの会社が日常的に避難訓練に参加しており,どの会社が避難の 呼びかけを行うことが可能であるか等の情報は,平時から地域に広く共有されている ことが重要と思われる.その意味においても,今後は「大分五号地協議会」の果たす 役割がますます大きくなることが予想されるが,現在,大分五号地協議会への企業の 加入率は低く,企業の横のネットワーク化が大きな課題として挙げられる.

(5)地域防災に対する各企業のポジションを視覚的にわかりやすくするために,因子分 析を行なったところ,2つの因子が抽出され,因子1は「社内での体制整備」,因子 2は「イメージ向上」の因子であると解釈された.企業はこの2つの心理側面で地域 防災の効果を見ていることが示唆された.また,因子得点に基づいて,各企業を二 次元座標平面にプロットしたところ,第1類型には両方の因子とも効果が上がって いると思われる企業が22社上がったが,防災リーダーとなるのに相応しいと思われ

(18)

16

る企業を抽出する一つの試みとして因子分析は使用することができるのではないか と思われる.

以上から,本研究の対象範囲が大分川左岸地域のみを対象としていることから,研究成 果には自ずと限界があるが,それらを踏まえた上で,本研究の目的である民間企業を地域 防災において共助組織の一員として位置づけることは,上述した幾つかの課題を克服する ことで,十分可能性があることが示されたと思われる.

2章注釈

2-1)大分市(2013)「大分市地域防災計画 震災対策編」

2-2)大分市ホームページ:

http://www.city.oita.oita.jp/www/contents/1369124834166/index.html

2-3)(公財)都市防災美化協会(2012)「企業・都民参加による防災コミュニティづくり の新手法開発に関する調査研究-公共空間美化システム アダプト・プログラム の防災分野への導入と検証-」

2-4)地震情報サイトJIS:http://j-jis.com/news/nankai_trough/20120331/ oita.shtml

2-5)対象地域の自治会長等への聞き取り結果である.

2-6)「大分五号地協議会」は,2013年度末現在61社の企業が加入している任意団体で

あり,現会長は安藤一郎氏(大成倉庫会長)である.本稿における大分五号地協議 会に関する記述の大半は,会長及び事務局長へのヒアリングに基づいている.

2章参考文献

2-1) 青田良介,室崎益輝,北後明彦:減災に向けた民間セクターの役割と公共連携のあり かたについて,災害復興研究,Vol.1,No.1,pp.9-23,2009.

2-2) 臼井真人,浅野耕一:防災力向上を目的とした地域間の住民連携に関する研究,日本 建築学会計画系論文集,Vol.79,No.696,pp.571-578,2014.

2-3) 小野哲:活力ある共生・共助の地域社会・まちづくり~被災地の復興に向けて~,立 法と調査,No.324,pp.156-166,2012.

2-4) 恩田守雄:共助の強化によるコミュニティの再生,計画行政,Vol.35,No.3,pp.3-8,

2012.

2-5) 田口厚志:特集 災害に強いまちづくり:自助・共助・公助による地域防災力の向上

をめざして,日本赤十字豊田看護大学紀要,Vol.8,No.1,pp.75-81,2013.

2-6) 田中怜以子,田村さつき,森麻美,金田周平:共助の促進による避難所生活の向上に 向けて,ISFJ 日本政策学生会議政策フォーラム,2007.

2-7) 日高圭一郎:地方都市都心部におけるエリア防災の推進についてー福岡市天神地区を 事例としてー,日本都市学会年報,No.47,pp.127-135,2014.

(19)

17

3. アンケート調査と地理情報システムを用いた民間企業の共助の評価

3.1 まえがき

津波発生時の複数の民間企業の共助による効果を視覚的かつ定量的に評価する試みを行 う.このとき,民間企業の共助として避難者の受け入れ場所の提供に注目し,複数の民間 企業に避難できるようになることで避難者の移動時間を短縮できる可能性について調べる.

本評価では,民間企業にアンケート調査を行い,避難場所を提供できる民間企業を抽出し,

抽出した民間企業に避難者が避難できる範囲を地理情報システムを用いて道路ネットワー クデータ上で調べる.これによって,距離や時間的に避難しにくい場所を明らかにするこ とができるため,本研究の成果は今後の行政機関の基礎資料になると考える.

本評価の対象地域として,大分県大分市三佐地区を取り上げる.三佐地区は,図3.1に示 すように大分市の沿岸部に位置し,南北約2.7km,東西約1.6kmの範囲に広がり,平地で 地形的な高台がなく,高いビルが少なく,少子高齢化のため地域コミュニティが希薄とな っているが,民間企業が多く存在している.また,三佐地区は,南海トラフ巨大地震が発 生した場合,津波高3.66mの津波が88分後に到達することが予測されている.また,現在 三佐地区で公的に指定されている津波避難ビルは三佐小学校だけである.三佐地区の避難 者は津波の到達時間内に三佐小学校に全員避難できると考えられるが,三佐小学校への避 難者の人数が多く,三佐小学校の建物入口での混雑が予測される.また,津波発生前の地 震によって建物が倒壊して道路が寸断することで避難者が三佐小学校に移動できなくなる ことも予測される.

3.1 大分県大分市三佐地区

三佐地区

YAHOO! Japan 地図 参照

西

0.0km 1.0km

(20)

18 3.2 方法

民間企業の共助の評価は,三佐地区の民間企業へのアンケート調査の結果3-1~3-3)(2章参 照)を用いて,避難場所の提供が可能な民間企業を抽出する.かつ,津波高以上の階数に 入居している民間企業を抽出する.次に,地域住民が民間企業に避難できる範囲を地理情 報システム上で道路ネットワークデータを色分け表現することで調べる.

アンケート調査で「受け入れは不可能」以外を回答した民間企業(津波発生時に避難場 所を提供できる民間企業)を抽出した結果,26社であった.この民間企業26社のビルを建 物データから抽出した.この結果抽出された建物データを図3.2に示す.また,アンケート 調査によって民間企業の事務所が入居している階数も聞き,建物データの重心の地盤に5m メッシュのDEM(Digital Elevation Model)を用いて高さを付与し,階数に1階の高さを 乗じることで高さを付与し,民間企業が入居している階数が津波高より高ければ,津波発 生時に避難者の受け入れが可能であるとした.本実験では,建物データの1階の高さを3m,

津波高を南海トラフ巨大地震が発生した場合を想定して3.66mとした.この結果抽出され た建物データを図3.3に示す.

3.2 アンケート調査の結果から得ら 3.3 津波高以上の階数に入居し避難

れた避難場所の提供が可能な民間企業 場所の提供が可能な民間企業

抽出した民間企業からある時間内に移動可能な範囲を地理情報システム上で道路ネット ワークデータを色分け表現し,複数の民間企業を避難場所とすることで得られる効果を評 価する.このとき,健常者と災害時要援護者別で評価を行う。移動可能な範囲は,平岡ら の方法3-4)を用いて計算した.平岡らの方法では,道路ネットワークの構成点にDEMを用 いて高さを付与し,移動距離は3次元の斜距離を用いている.本実験では,5mメッシュの DEMを用いた.また,建物データの重心から最近隣の道路ネットワークデータまでの移動 時間と建物データの民間企業が入居している階数までの移動時間を考慮している.本研究

0.0km 0.5km

(21)

19

では,国土交通省都市局の報告3-5)を参考に,健常者と災害時要援護者の歩行速度をそれぞ 0.78 m/s0.54 m/sとした.また,内閣府津波避難ビル等に係るガイドライン検討会3-6) と浜松市教育委員会3-7)の報告を参考にして,健常者と災害時要援護者の避難時の階段を昇 るために要する時間をそれぞれ15s/階と 20s/階とした.さらに,南海トラフ巨大地震が発 生した場合を想定して,津波高を3.66m,津波到達時間を88分とした。国土交通省が東日 本大震災におけるヒアリング調査を行った結果,30分以内に避難した人が約80%だったこ 3-8)から,また後の実験での道路ネットワークデータの色分け表現をきりのよい時間で区 分して設定させるため,避難開始時間を32分とした.

3.3 実験と考察

まず,現在大分市三佐地区で公的に指定されている津波避難ビルは三佐小学校のみであ るため,三佐小学校のみからの移動可能な範囲を地理情報システム上で道路ネットワーク データを色分け表現した.このとき,三佐小学校への出入口は,現地調査の結果,図3.4 示す黒丸の 2 箇所のみであった。この結果得られた健常者と災害時要援護者の移動可能範 囲をそれぞれ図3.4と図3.5に示す.図3.4と図3.5の道路ネットワークの青色が14分未 満,緑色が14分から28分,黄色が28分から42分,茶色が42分から56分,赤色が56 分以上で津波到達時間内に移動できない範囲である.また,三佐地区全体の道路ネットワ ークの総延長34.4kmに対する14分未満,14 分から28分,28分から42分,42分から 56分,56分以上で移動に要する道路ネットワークの長さの割合は,健常者でそれぞれ40.7%,

45.4%,13.8%,0.1%,0.0%,災害時要援護者でそれぞれ18.8%,46.2%,23.1%,11.8%,

0.1%であった.三佐小学校から距離の離れた北側(上側)は移動に時間のかかることがわ かる.

3.4 三佐小学校までの移動可能範囲(健常者)

- 14 分以内で移動可能(40.7%)

- 14 分から 28 分で移動可能(45.4%)

- 28 分から 42 分で移動可能(13.8%)

- 42 分から 56 分で移動可能(0.1%)

- 移動不可能(0%)

三佐小学校 0.0km 0.5km

図 4.5 に各地点における ENT の CFU 値を示す.ENT の CFU 値は 5.0~1.6×10 3 CFU/100 mL の範囲で検出された。 ENT の CFU 値は他の 3 種類の FIB とは異なり, TC,
図 5.2  各観測地点の大腸菌数
図 5.6  大腸菌数と土地利用の相関分析

参照

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