新版
L
A
TEX
で言語学の論文を書くために
∗
郡司隆男 (神戸松蔭女子学院大学)
[email protected]
第 3.0 版
2017 年 7 月
目 次
1
はじめに
2
2
例文などの提示
2
2.1
例文の表示と参照
. . . .
2
2.2
文法性の判断マーク
. . . .
6
2.3
グロス付きの例文
. . . .
6
3
素性構造の行列表示
7
4
木の作図
8
5
文献の参照
10
6
プリゼンテーション
14
7
その他
18
7.1
国際音標記号
. . . 18
7.2
Times, Palatino
. . . 19
7.3
論理式
. . . 19
7.4
JIS 第 1、第 2 水準にない漢字を含む人名
. . . 21
8
おわりに
21
∗2002 年の 2.3 版の改訂版、というより、新版として、より新しいものの紹介に徹した版を作ることにしました。最近の TeX Live 2016 などの配付一式に標準装備されているパッケージを中心に、例文提示に gb4e.sty(グロスの表示を含む)、素性構造に avm.sty、 木の表記に tikz-qtree.sty を紹介しています。文献参照の節も標準配付の natbib.sty を使うように改め、新しく、発音記号に tipa.sty、Times/Palatino フォントに newtxtext/newtxmath.sty、newpxtext/newpxmath.sty を紹介しています。また、簡単な beamer.cls のサンプルもつけました。1
はじめに
(p)L
ATEX で言語学の論文を書くのに向いたスタイルファイルを紹介した、前作「L
ATEX で言語学の論文を
書くために」(http://researchmap.jp/muzti40hk-38603/#_38603) では、Stanford 大学 CSLI の Emma
Pease さんが作ってくれた、便利なスタイルファイルを中心に紹介していましたが、15 年もたつと、その後
に出てきた同じように便利なスタイルファイルに触れていないという問題点を感じてくるようになりまし
た。そこで、より最近のものを紹介してみたいと思います。なお、筆者は前作で紹介したものも今でも使用
はしており、これから紹介するものと並用しています。前作同様に、以下では、L
ATEX についての最小限の
知識は仮定します。
2
例文などの提示
ここでは、通し番号を自動でつけてくれる、例文などの提示用として、前作の、lingmacros.sty の代替
として gb4e.sty を紹介します。TeX Live 2016 では標準配付ですので、
\documentclass{(j)(s)article} .. . \usepackage{gb4e}とすれば使えます。1
2.1
例文の表示と参照
例文を提示する際に、exe 環境を用い、\ex とすると、丸括弧の中に通し番号を入れた形で例文などを表
示できます。2 つ以上の例文を、1 つの通し番号の中に、a.∼、b.∼ という形で提示する場合には、xlist
環境の中で、\ex を使います。xlist 環境の中に xlist 環境を埋めこむと、自動的にラベルが変わります。
また、明示的に、xlisti 環境などを用いると、i.∼、ii.∼ などの形になります。数字にする xlistn、大文
字のアルファベットの xlistA、大文字のローマ数字の xlistI などが用意されています。
例えば、次の左のような入力が右のような出力となります。
\begin{exe} \ex これは単一の項目の例文です。 \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 a. です。 \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 b. i. です。 \ex これは複数の項目の例文 b. ii. です。 \end{xlist} \end{xlist} \ex \begin{xlistA} \ex これは複数の項目の例文 A. です。 \ex これは複数の項目の例文 B. です。 \end{xlistA} \end{exe} (1) これは単一の項目の例文です。 (2) a. これは複数の項目の例文 a. です。 b. i. これは複数の項目の例文 b. i. です。 ii. これは複数の項目の例文 b. ii. です。 (3) A. これは複数の項目の例文 A. です。 B. これは複数の項目の例文 B. です。1以下の例で、documentclass の (j)(s)article となっている部分は、このまま入力するのではなく、英語用の article、日本 語用の jarticle ないし jsarticle のいずれかを選んでくださいということです。
gb4e では、下付きの _ と上付きの ˆ を数学モードでなくても使えるようにしているため、他のパッケージでこれらを使っている場 合には、gb4e.sty はその後に読み込む必要があります。例えば、後で紹介する tikz-qtree より前に読み込むと、
! TeX capacity exceeded, sorry [parameter stack size=10000].
のようなエラーメッセージが出ます。gb4e のこの機能は、gb4e を読み込んだ直後に、\noautomath と書くことによって抑制するこ
引き継がれます。
\begin{exe} \ex これは単一の項目の例文です。 \end{exe} ここに途中の文が入ります。 \begin{exe} \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 a です。 \ex これは複数の項目の例文 b です。 \end{xlist} \end{exe} (4) これは単一の項目の例文です。 ここに途中の文が入ります。 (5) a. これは複数の項目の例文 a です。 b. これは複数の項目の例文 b です。xlist 環境に対して、lingmacros.sty の\eenumsentence と同じような形式の方が好みならば、次のよ
うにして、\eex コマンドを定義することによって実現できます。
\newcommand{\eex}[1]{% \ex\begin{xlist} #1 \end{xlist}} \begin{exe} \eex{ \ex これは複数の項目の例文 a です。 \ex これは複数の項目の例文 b です。 } \end{exe} (6) a. これは複数の項目の例文 a です。 b. これは複数の項目の例文 b です。脚注などで、一時的に通しの番号と違ったラベルを付けたい場合には、\ex の代わりに \exi を使い、ラ
ベルを引数として与えます。この例文の次の例文から、通し番号が再び使われます。
\begin{exe} \exi{(i)} これはラベルを変えた例です。 \end{exe} (i) これはラベルを変えた例です。 \begin{exe} \exi{(ii)} \begin{xlist} \ex これはラベルを変えた例 a です。 \ex これはラベルを変えた例 b です。 \end{xlist} \end{exe} (ii) a. これはラベルを変えた例 a です。 b. これはラベルを変えた例 b です。番号付けが自動なので、参照するときには、その番号はプレビューするか印刷するまでわかりません。
実は、番号は、exx というカウンターに保存されているので、例えば、\arabic{exx} とすれば、最後の
番号が数字として表示されます。
\arabic{exx}
6
これをもとに、lingmacros.sty の \ex(上の \ex とは別物!)と同じ働きをする \exn というコマンド
を次のように定義することができます。
\newcounter{tempcnt} \newcommand{\exn}[1]{% \setcounter{tempcnt}{\value{exx}}% \addtocounter{tempcnt}{#1}% \arabic{tempcnt}}\exn{0} が、現在の番号、すなわち、最後に使われた番号を示しますから、すぐ上の例文を指すときに
使います。\exn{1} はすぐ下、\ex{-1} はすぐ上の一つ前の例文の番号を指します。このとき、丸括弧は
付きませんから、自分で (\exn{1}) とか (\exn{1}a) のように書く必要があります。
\begin{exe} \ex \begin{xlist} \ex この文は直後で参照されます。 \ex この文も直後で参照されます。 \end{xlist} \end{exe} 上の文は (\exn{0}a) と (\exn{0}b) になり ます。また、下の文は (\exn{1}) になります。 \begin{exe} \ex この文は直前で参照されています。 \end{exe} (7) a. この文は直後で参照されます。 b. この文も直後で参照されます。 上の文は (7a) と (7b) になります。また、下の文は (8) になります。 (8) この文は直前で参照されています。\exn は、すぐ近くの例文を参照するのには便利ですが、はるか以前に出てきた文を参照する場合には、
(\exn{-19}) のようになってしまって、編集をしているうちに番号が狂いがちです。このような場合には、
L
ATEX の \label コマンドを使います。例えば、
\begin{exe} \ex\label{foo} この文は後で、foo というラベルで参照します。 \end{exe} したがって、上の文は (\ref{foo}) です。 (9) この文は後で、foo というラベルで参照します。 したがって、上の文は (9) です。のように、(\ref{∼}) によって、この文の番号を論文中のどこからでも参照できます。ただし、\label を
使った場合には、L
ATEX が、参照の対応を決められるように、同じファイルを 2 度 L
ATEX に通す必要があり
ます。
\label を頻繁に使うのならば、次のように、\exl を定義しておくと便利でしょう。
\newcommand{\exl}[1]{\ex\label{#1}}\begin{exe} \exl{bar} この文は後で、bar というラベルで参照します。 \end{exe} したがって、上の文は (\ref{bar}) です。
(10) この文は後で、bar というラベルで参照します。 したがって、上の文は (10) です。xlist 環境 の中で、a や b までも含めて参照したい場合には、xlist の内側の \ex の後で\label コマン
ド(あるいは、上記で定義した \exl コマンド)を使います。例えば、
\begin{exe} \ex \begin{xlist} \exl{fooa} この文はあとで、fooa と いうラベルで参照します。 \exl{foob} この文はあとで、foob と いうラベルで参照します。 \end{xlist} \end{exe} という文の最初は (\ref{fooa}) で、2 番目 は (\ref{foob}) です。 (11) a. この文はあとで、fooa というラベルで参照し ます。 b. この文はあとで、foob というラベルで参照し ます。 という文の最初は (11a) で、2 番目は (11b) です。長い論文で番号が 3 桁以上になると、xlist 環境で一番最初の a. のところだけへこんでしまうということ
がおきます。例えば、番号が 2017 などという大論文の場合、次のような見苦しいものができます(gb4e.sty
ではもともとラベルの幅を 3 桁分とっているので、ずれをはっきり出すために、ここでは 4 桁にしています)。
\begin{exe} \ex \begin{xlist} \ex 一つ目---へこんでいる。 \ex 二つ目---へこんでいない。 \ex 三つ目---へこんでいない。 \end{xlist} \end{exe} (2017) a. 一つ目—へこんでいる。 b. 二つ目—へこんでいない。 c. 三つ目—へこんでいない。このようなときには、exe 環境のオプションとして、必要な桁数のダミーの数字を入れておきます。次の
例では、4 桁分をとっています。4 桁の数字は幅の大きめのものを入れておくとよいでしょう。
\begin{exe}[(9999)] \ex \begin{xlist} \ex 一つ目---へこんでいない。 \ex 二つ目---へこんでいない。 \ex 三つ目---へこんでいない。 \end{xlist} \end{exe} (2018) a. 一つ目—へこんでいない。 b. 二つ目—へこんでいない。 c. 三つ目—へこんでいない。以降の文番号がすべて大きな幅が必要なときには、\exewidth によって、必要な桁数分の幅を宣言して
おきます。
\exewidth{(9999)} \begin{exe} \ex \begin{xlist} \ex 一つ目---へこんでいない。 \ex 二つ目---へこんでいない。 \end{xlist} \end{exe} (2019) a. 一つ目—へこんでいない。 b. 二つ目—へこんでいない。2.2
文法性の判断マーク
文法性の判断を示す * や ? などは、\ex の後にオプションの引数として、[*] などを与えれば文頭にそ
のマークが付きます。
\begin{exe} \ex[]{この文には問題ありません。} \ex[*]{この文あります問題。} \ex \begin{xlist} \ex[]{この文にも問題ありません。} \ex[??]{この文問題もあります。} \end{xlist} \end{exe} (12) この文には問題ありません。 (13) * この文あります問題。 (14) a. この文にも問題ありません。 b. ?? この文問題もあります。ここで注意することは、[*] などの後の例文は、{ } で一つのグループとしておくことです。さもない
と、次の 1 文字だけにマークがつき、残りは次の行に送られてしまいます。もう一つは、文法的に全く問題
のない文にも、ダミーの [ ] を置いておくことです。こうしないと、マークを除いた、文頭が揃いません。
\begin{exe} \ex[] この文には問題ありません。 \ex[*] この文あります問題。 \ex \begin{xlist} \ex この文にも問題ありません。 \ex[??]{この文問題もあります。} \end{xlist} \end{exe} (15) こ の文には問題ありません。 (16) * こ の文あります問題。 (17) a. この文にも問題ありません。 b. ?? この文問題もあります。2.3
グロス付きの例文
論文執筆用の言語と対象としている言語とが異なる場合には、論文執筆用の言語によるグロスを付ける
のが普通です。gb4e では、グロス用のパッケージ cgloss.sty を内部的に読み込んでいるので、グロスの
ある例文提示が簡単にできます。
\begin{exe} \ex\gll Kore-wa gurosu tuki-no rei desu.\\ this-TOP gloss with-GEN example be\\ \glt ‘This is an example with a gloss.’ \end{exe}
(18) Kore-wa this-TOP gurosu gloss tuki-no with-GEN rei example desu. be ‘This is an example with a gloss.’\gll は原文と、改行
(\\) 後の行でそのグロスを示します。空白ごとにそれぞれの行の対応がとられるの
で、lingmacros.sty の \shortex のように & は必要ありません。原文全体の翻訳は \glt で始めます。
長い文の場合、頁の幅に応じて自動的に折返した上で、逐語的に対応をつけてくれるので、原文・グロ
ス・翻訳を、\\ ではさんで、このままの順番で書けば大丈夫です。
\begin{exe} \ex
\gll Kore-wa gurosu tuki-no totemo totemo totemo nagai rei desu.\\
this-TOP gloss with-GEN very very very long example be\\
\glt ‘This is an example with a very, very, very long gloss.’
\end{exe}
(19) Kore-wa this-TOP gurosu gloss tuki-no with-GEN totemo very totemo very totemo very nagai long rei example desu. be‘This is an example with a very, very, very long gloss.’
3
素性構造の行列表示
LFG や HPSG などの制約に基づく文法理論では、素性構造、特に属性-値行列 (AVM: attribute-value matrix)
の表示は欠かせません。そのためのパッケージが、avm.sty です。これによって、n 行 2 列の行列を簡単に
描くことができます。avm.sty も TeX Live の標準配付ファイルの中にありますので、\usepackage{avm}
で読み込んで使うことができます。
\begin{exe} \ex \begin{avm}
\[SUBJ & [PRED ‘健’] \\ OBJ & [PRED ‘奈緒美’] \\ PRED &
‘会う$<(\uparrow$SUBJ$)(\uparrow$OBJ$)>$’ \\ TENSE & PAST
\] \end{avm} \end{exe}
(20) SUBJ [PRED ‘健’] OBJ [PRED ‘奈緒美’] PRED ‘会う< (↑SUBJ)(↑OBJ) >’ TENSE PAST 素性構造は入れ子にできます。次の例では、\avmoptions{active} によって、\[ . . . \] を [...]
で書けるようにし、さらに \avmoptions{sorted} によって、[ の直後に置いたものを、左下に、素性構造
の種類として示すようにしています。\avmsortfont の行で、種類のフォントをイタリックにしています。
下で定義されている \seq はリストを表示するものです。また、@{1} などは、同一性をあらわすタグで、□
で囲まれた数字などになります。
\avmoptions{sorted,active} \avmsortfont{\itshape} \newcommand{\seq}[1]{$\left\langle\mbox{#1}\right\rangle$} \begin{exe} \ex \begin{avm}[\textsc{morphon} & \seq{見る} \\ \textsc{synsem} & [\textsc{local} &
[\textsc{head} & \textit{verb} \\
\textsc{cont} & [{see}\textsc{seer} & @{1} \\ \textsc{seen} & @{2}\\
\textsc{argst} & \seq{[\textsc{head} &\textit{noun}\\ \textsc{cont} & \@{1}$j$], [\textsc{head} &\textit{noun}\\ \textsc{cont} & @{2}$k$]} ] ] ] \end{avm} \end{exe}
(21) morphon ⟨見る⟩ synsem local head verb cont see [ seer 1 seen 2 ] argst ⟨[ head noun cont 1j ] , [ head noun cont 2k ]⟩
4
木の作図
枝も含めた木を L
ATEX に描かせたい場合には、前作で紹介したもの以外に、もっと書式が簡単でありなが
ら、バランスのよい木を描いてくれる、tikz-qtree.sty があります。
言語学の論文で、行数を節約するために角括弧で木の構造を表示することがあります。例えば、次のよう
な形です。
(22)
[
S[
NP健が] [
VP[
NP奈緒美を] [
TVP[
PP部屋で] [
TV見た]]]
tikz-qtree.sty は、ほぼこのままの記法で
2 次元の木に変換してくれます。tikz-qtree.sty も TeX
Live の標準配付ファイルに含まれていますので、\usepackage{tikz-qtree} で読み込んで使うことがで
きます。
なお、tikz-qtree.sty を使用して、Postscript ファイルを経由せずに、 dvipdfmx で PDF ファイルを作
る場合には、\documentclass の行に、[dvipdfmx] のオプションをつける必要があります。
\documentclass[dvipdfmx]{(j)(s)article} .. . \usepackage{tikz-qtree} \begin{exe} \ex \Tree [.S [.NP 健が ] [.VP [.NP 奈緒美を ] [.TVP [.PP 部屋で ] [.TV 見た ]]]] \end{exe} (23) S VP TVP TV 見た PP P で NP 部屋 NP P を N 奈緒美 NP P が N 健構成素のおわりを示す閉じ括弧 ‘]’ は、直前が別の閉じ括弧でない場合には空白を入れておかないとエ
ラーになるので注意してください。
次の例では、名詞句、後置詞句の内部構造を省略して大きな三角形であらわしています。三角形の省略形
は、親ノードの次に、\edge[roof]; を置くことによって描くことができます。\edge[roof]; の後に書
く、三角形の底辺にくるものの間に空白がある場合には、{ } でグループ化しておきます。
\begin{exe} \ex \Tree [.S [.NP \edge[roof]; {健 が} ] [.VP [.NP \edge[roof]; {奈緒美 を} ] [.TVP [.PP \edge[roof]; {部屋 で} ] [.TV 見た ] ] ] ] \end{exe}
(24) S VP TVP TV 見た PP 部屋 で NP 奈緒美 を NP 健 がなお、\usepackage{tikz-qtree} に続けて、\usepackage{tikz-qtree-compat} として補助パッケー
ジを読み込んでおくと、tikz-qtree.sty の前身となった qtree.sty の \qroof を使って、三角形を書く
ことができます。節点のラベルが後ろにくるなど、やや、わかりにくいところがありますが。
\begin{exe} \ex \Tree [.S \qroof{健 が}.NP [.VP \qroof{奈緒美 を}.NP [.TVP \qroof{部屋 で}.PP [.TV 見た ] ] ] ] \end{exe} (25) S VP TVP TV 見た 部屋 で PP 奈緒美 を NP 健 が NP移動を仮定する理論では、木の中の節点を曲線で結ぶ表示をしたいことがあると思いますが、そのよう
な場合には、結びたい節点を \node で(丸括弧の中に)名前をつけておいて、\draw で線を引きます。例
えば、上の木の「部屋で」を文頭に移動した状態は次のようになります。なお、線を引く場合には明示的に
tikzpicutre 環境の中で木を描く必要があります。[baseline=0pt] は図の上に文番号がくるようにする
ためのおまじないです。これがないと文番号が図の下にきてしまいます。
\begin{exe} \ex \begin{tikzpicture}[baseline=0pt] \Tree [.S[.PP_i \edge[roof]; \node(p){部屋 で}; ] [.S [.NP \edge[roof]; {健 が} ] [.VP [.NP \edge[roof]; {奈緒美 を} ] [.TVP \node(t){\emph{t_i}}; [.TV 見た ] ] ] ] ] \draw[semithick, ->]
(t) to [bend right=-90] (p.south) ; \end{tikzpicture} \end{exe}
(26) S S VP TVP TV 見た ti NP 奈緒美 を NP 健 が PPi 部屋 で最後に人類の系統図を示しておきましょう。
\tikzset{every tree node/.style={align=center}}
\tikzset{level 1+/.style={level distance=4\baselineskip}} \tikzset{frontier/.style={distance from root=28\baselineskip}}
\Tree [. 類人猿 [. 小型類人猿\\その他 テナガザル\\その他 ] [. 大型類人猿\\(1500 万年前) オランウータン % [.(1000 万年前) ゴリラ % [.(500 万年前) [.\qquad(250 万年前) チンパ\\ンジー % ボノボ ] [. ヒト [. ホモ・\\エレクトス\\(180 万年前) (絶滅) ] [. ホモ・\\サピエンス [. ネアンデ\\ルタール\\(20 万年前) (絶滅) ] [. クロマ\\ニヨン\\(10 万年前) われわれ ] ] ] ] ] ] ]
類人猿 大型類人猿 (1500 万年前) (1000 万年前) (500 万年前) ヒト ホモ・ サピエンス クロマ ニヨン (10 万年前) われわれ ネアンデ ルタール (20 万年前) (絶滅) ホモ・ エレクトス (180 万年前) (絶滅) (250 万年前) ボノボ チンパ ンジー ゴリラ オランウータン 小型類人猿 その他 テナガザル その他5
文献の参照
言語学での文献の参照は、Harvard style と言われる、“著者 (発表年)” ないしは、“(著者 発表年)” という形
をとるのが普通ですが、L
ATEX 標準の\cite コマンドでは角括弧の中に文献通し番号が入ってしまいます。
また、論文末の文献表も、角括弧の中に文献通し番号が入った形で並んでしまいます。これを言語学での風
習に近づけるためのスタイルファイルがいくつか公表されており、前作では theapa.sty を紹介しました。
を紹介しましょう。natbib.sty は標準配付ですので、
\documentclass{(j)(s)article} \usepackage{natbib}として下さい。\begin{document} の前でも後でも構いませんが、最初の文献引用の前に、必要ならば、
\bibpunct[: ]{(}{)}{,}{a}{ }{,}のようにしてください。これは、発表年を丸括弧で囲み、複数の参照の場合にはコンマでつなぎ、発表年の
後にページ数などの注釈がある場合にはコロンを使うということを意味します。{a} の部分は、言語学の様
式に沿った形のものができますが、理科系の文献のようにしたい場合には、{n} として、数字での引用とす
るか、{s} として、上付数字での引用とします。その次の{ } の付わりに {,} とすると、著者名と発行年の
間にコンマが入ります。最後の {,} は、同一著者の複数文献がある場合の発行年の区切りです。
もちろん、好みや、掲載誌の様式によって変えることは自由です。実際の形はこのテキストの末尾の文献
表を見て下さい。なお、上のような指定が面倒な人は、何もしなければ、デフォールトのままになり、これ
は、次と同じことになり、発表年が角括弧で囲まれます。
\bibpunct{[}{]}{,}{a}{,}{,}“著者 (発表年)” という形の参照は、\citet{キー} という形を用い、“(著者 発表年)” という形の参照は、
\citep{キー} という形を用います。例えば、
\citet{Chomsky1995} は LGB \citep{Chomsky1981} に比べて、\ldots Chomsky (1995) は LGB (Chomsky 1981) に比べて、 . . .上記は、複数の著者がいる場合には、第 1 著者の名前のみあげて、後は、‘et al.’ という形になります。全
員の名前をあげたい場合には、\citet*{キー} および、\citep*{キー} というコマンドを用います。
\citet*{GKPS1985} すなわち、{\em Generalized Phrase Structure Grammar} \citep{GKPS1985} は HPSG \citep{PollardSag1994} に比べて、\ldots \ldots
\citet{郡司 2017} は \ldots
Gazdar, Klein, Pullum and Sag (1985) すなわち、Gener-alized Phrase Structure Grammar (Gazdar et al. 1985) は HPSG (Pollard and Sag 1994) に比べて、. . . .
郡司 (2017) は . . .
これ以外にも、著者名のみ(\citeauthor)、発表年のみ(\citeyear)の参照の仕方がありますが、詳
しいことは、natbib.sty の初めの方の説明を見て下さい。
参照されるべき文献は、BibTEX で用意するのが手間が省けてよいのですが、BibTEX のしきたりにのっ
とって書くにはいささかの慣れが必要です。例えば、上で引用されている文献には、最低限、次のような記
述が必要です。
@Book{Chomsky1981,
author = "Chomsky, Noam",
year = 1981,
title = "Lectures on Government and Binding", address = "Dordrecht",
publisher = "Foris", }
@Book{Chomsky1995,
author = "Chomsky, Noam", year = 1995,
title = "The Minimalist Program", publisher = "The MIT Press" }
@Book{GKPS1985,
author = "Gazdar, Gerald and Ewan Klein and Geoffrey K. Pullum and Ivan A. Sag",
year = 1985,
title = "Generalized Phrase Structure Grammar", address = "Oxford",
publisher = "Basil Blackwell", }
@Book{PollardSag1994,
author = "Pollard, Carl J. and Ivan A. Sag",
year = 1994,
title = "Head-Driven Phrase Structure Grammar", publisher = "The University of Chicago Press", address = "Chicago",
}
@Article{郡司 2017,
yomi = "Gunji, Takao",
year = 2017,
author = "郡司 隆男",
title = "「知りたくなかった」は「知らない方がよかった」?",
journal = "TALKS (Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin)", volume = 20, pages = "13--34" }
各々の文献項目の一行目の中括弧の後に書かれているのが、引用の際に使用するキーです。これは、
自分で覚えやすいものにして構いません。後は、自明でしょう。このような記述の書かれたファイルを
linguistics.bib とでもしておいて、論文の最後に、
... \section{その他} ... \bibliographystyle{plainnat} \bibliography{linguistics} \end{document}としてやれば、論文中に自分で文献表を書く必要はありません。BibTEX が、linguistics.bib の中から、引
用されている文献のみを取り出して、natbib.sty と対で使われる plainnat.bst という文献書式を指定した
ファイルに基づいて、L
ATEX 用にコマンドを付け加えたファイルを作り出してくれます。linguistics.bib
には余計なものがはいっていても構いませんから、日頃から、文献データベースを作っておくとよいでしょう。
BibTEX を用いる場合には、L
ATEX に 1 度通してから、BibTEX に 1 度通し、その後で L
ATEX に通常 2 度通
す必要があります。つまり、論文の本文のファイルが foo.tex の場合、次のような処理の流れになります。
[1]% latex foo (引用される文献を書き出した foo.aux ができる) [2]% bibtex foo (foo.aux に基づいて foo.bbl ができる) [3]% latex foo (foo.bbl を読み込んで foo.aux を更新する) [4]% latex foo (foo.aux に基づいて foo.dvi を作る)
ただし、foo.bbl が一旦できていて引用文献に変更のない場合には、上の [3]、[4] の部分だけで十分で
す。また、日本語の文献を扱う場合には、[1, 3, 4] で日本語に対応した platex、[2] で日本語に対応し
た pbibtex を用いる必要があります。plainnat.bst は日本人の著者名などには対応していませんので、生
成された bbl ファイルを手動で修正して下さい。2
BibTEX は次のような、natbib.sty 向けの書式で文献表を作りますので、直接自分で文献表を書くこと
も可能です。
plainnat.bst を用いて
BibTEX が生成した文献表では、日本語の名前の姓と名の間に空白が残り、yomi
フィールドが使われていないので、並び位置がおかしくなります。。
... \section{その他} ... \begin{thebibliography}{} \bibitem[Chomsky(1981)]{Chomsky1981} Noam Chomsky.\newblock \emph{Lectures on Government and Binding}. \newblock Foris, Dordrecht, 1981.
\bibitem[Chomsky(1995)]{Chomsky1995} Noam Chomsky.
\newblock \emph{The Minimalist Program}. \newblock MIT Press, Cambridge, Mass., 1995.
\bibitem[Gazdar et~al.(1985)Gazdar, Klein, Pullum, and Sag]{GKPS1985} Gerald Gazdar, Ewan Klein, Geoffrey~K. Pullum, and Ivan~A. Sag. \newblock \emph{Generalized Phrase Structure Grammar}.
\newblock Basil Blackwell, Oxford, 1985.
\bibitem[Pollard and Sag(1994)]{PollardSag1994} Carl~J. Pollard and Ivan~A. Sag.
\newblock \emph{Head-Driven Phrase Structure Grammar}. \newblock The University of Chicago Press, Chicago, 1994.
\bibitem[隆男 (2017)]{郡司 2017} 郡司 隆男.
\newblock 「知りたくなかった」は「知らない方がよかった」?
\newblock \emph{TALKS (Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin)}, 20:\penalty0 13--34, 2017. \end{thebibliography} \end{document}
ここで、\bibitem の後の角括弧の中には、著者名(複数の場合には et al. 形)、丸括弧の中に発表年、
もしあれば、et al. 形でないフルの形を書きます。角括弧の後には、引用の際のキー、その後は、通常の
形で文献情報を書いておきます。上では、日本語の文献の場合、著者名が姓でなく名の方になってしまって
いるので、手動で作る場合には正しく直しておく必要があります。
jecon.bst を用いて
BibTEX が生成した文献表では、日本語の名前の姓と名の間の空白が取り去られ、yomi
フィールドによって、正しい位置に並びます。
2文科系の文献引用形式を日本語対応にしたものに、経済学用として開発された、jecon.bst というものがあります。標準配付ファ イルには含まれていませんので、http://shirotakeda.org/ja/tex-ja/jecon-ja.html から入手してください。使い方もここで解 説されています。
なお、TeX Live の texmf-dist/bibtex/bst には様々な出版社に対応していると思われる bst ファイルが登録されていますので、参 考にしてください。
Chomsky, Noam (1981) \textit{ Lectures on Government and Binding}, Dordrecht: Foris.
\harvarditem[Chomsky]{Chomsky}{1995}{Chomsky1995}
\bysame{} (1995) \textit{ The Minimalist Program}, Cambridge, Mass.: MIT Press.
\harvarditem[Gazdar et~al.]{Gazdar, Klein, Pullum and Sag}{1985}{GKPS1985} Gazdar, Gerald, Ewan Klein, Geoffrey~K. Pullum, and Ivan~A. Sag (1985)
\textit{ Generalized Phrase Structure Grammar}, Oxford: Basil Blackwell.
\harvarditem[郡司]{郡司}{2017}{郡司 2017}
郡司隆男 (2017) 「「知りたくなかった」は「知らない方がよかった」?」,『TALKS (Theoretical and Applied Linguistics at Kobe Shoin)』,第 20 巻,13--34 頁. \harvarditem[Pollard and Sag]{Pollard and Sag}{1994}{PollardSag1994}
Pollard, Carl~J. and Ivan~A. Sag (1994) \textit{ Head-Driven Phrase Structure Grammar}, Chicago: The University of Chicago Press.
\end{thebibliography}
ここで、\harvarditem の後の角括弧の中には、著者名(複数の場合には et al. 形)を書きます。角括
弧の後には、et al. 形でないフルの形の引用の際の著者名、発表年、キーを書きます。その後は、通常の
形で文献情報を書いておきます。
6
プリゼンテーション
L
ATEX で、プリゼンテーション用のスライド (pdf) を作ると、論文の中の例などをそのままもってくるこ
とができるので、別ソフトにコピー・ペーストする必要がありません。今までにいくつかのパッケージが
作られましたが、今日広く使われているクラスに beamer.cls があります。これは、L
ATEX でプレゼンテー
ション用の PDF ファイルを作りだすパッケージです。
beamer.cls は非常に多機能ですが、詳細なマニュアルが、標準の配付ファイルとして、.../texmf-dist/
doc/latex/beamer/doc/beameruserguide.pdf にありますので、その最初の
40 ページほどを読めば一通
りのことがわかります。
また、見かけを大きく変える theme のセットが用意されており、気に入ったものがあれば、そのまま使
うことができます。次に簡単なサンプルを示しましょう。
\documentclass[dvipdfmx,11pt,aspectratio=1610]{beamer} %%%% kanji default \renewcommand{\kanjifamilydefault}{\gtdefault} %%%% no navigation symbols \setbeamertemplate{navigation symbols}{} %%%% animation \setbeamercovered{highly dynamic} \useinnertheme[shadow]{rounded} \useoutertheme{infolines} \usecolortheme{rose} \usecolortheme{whale}イルを作る場合には必要なオプションです。aspectratio は縦横の比で、1610 は横長の 16:10 を意味しま
す。デフォールトは 43 (4:3) で、他に、169 (16:9)、149 (14:9)、141 (1.41:1)、54 (5:4)、32 (3:2) などが指定
できます。
日本語のスライドではゴシックフォントに統一した方が読みやすいので、\kanjifamilydefault を
\gtdefault としておきます。
次の、\setbeamertemplate{navigation symbols}{} は、右下に小さく出る、次のスライドに移った
りというボタンを表示しないようにするものです。実際ここをクリックしての操作はやりにくいので、な
い方がすっきりします。
\setbeamercovered{highly dynamic} は、リストを
1 つずつ見せていく場合の見え方で、うっすらと
次に出てくるものが見えているものです。\setbeamercovered{invisible} とすると、完全に見えなくな
ります。
次の theme に関する指定は、以下のサンプルに対応したものです。このように innertheme、outertheme、
colortheme を自由に組み合せることができますが、面倒な場合は、世界の様々な都市名のついたセットが
ありますので、それを使ってみてください。
あとは、通常のように、\title、\author、\date などを指定します。所属をあらわす\institute も使
えます。beamer では、スライドの一枚を frame 環境の中に書きます。frame の中に \titlepage あるいは
\maketitle とだけ書いておくと、表紙のスライドができます。
この theme では、下に navigation bar ができ、左に、
「著者(所属)
」
、中央にタイトル(\title の [ ] の
部分)
、右に、日付と「何枚目/総枚数」の数字が出ます。上には、セクションのタイトルが左に、サブセク
ションのタイトルが右に出ます(表紙のページではどちらもまだないので、何も出ません)。
\title[新版 \LaTeX で言語学の論文を書くために]% {\textbf{\raisebox{0.2em}{\large 新版} \LaTeX で言語学の論文を書くために}} \author{郡司 隆男} \institute{神戸松蔭女子学院大学} \date{第 3.0 版(2017 年 7 月)} \begin{document} \begin{frame}{} \titlepage \end{frame} . . . 新版L
ATEX で言語学の論文を書くために
郡司 隆男 神戸松蔭女子学院大学 第 3.0 版(2017 年 7 月) 郡司 隆男 (神戸松蔭女子学院大学) 新版 LATEX で言語学の論文を書くために 第 3.0 版(2017 年 7 月) 1 / 7目次は frame 中に \tableofcontents を書きますが、下の [hideallsubsections] というオプション
は、サブセクションの部分を表示させないためのものです。また、frame 環境に与えた引数は frame のタ
イトルになります。タイトルは \frametitle コマンドで指定することもできます。
\begin{frame}{あらすじ} \tableofcontents[hideallsubsections] \end{frame}あらすじ
1 はじめに 2 例文などの提示 郡司 隆男 (神戸松蔭女子学院大学) 新版 LATEX で言語学の論文を書くために 第 3.0 版(2017 年 7 月) 2 / 7frame 環境のオプションに [<+->] を書いておくと、itemize 環境などのとき、各
item ごとに表示して
いきます。はじめに、highly dynamic を指定しているので、次の item がうっすらと見えていて、段々薄
くなっていっています。
\section{はじめに} \begin{frame}[<+->] \frametitle{今回紹介するパッケージ} \begin{itemize} \item \texttt{gb4e.sty} \item \texttt{avm.sty} \item \texttt{tikz-qtree.sty} \item \texttt{natbib.sty} \item \texttt{tipa.sty}\item \texttt{newtxtext.sty, newtxmath.sty} \item[] etc.
\end{itemize} \end{frame}
今回紹介するパッケージ
gb4e.sty avm.sty tikz-qtree.sty natbib.sty tipa.sty newtxtext.sty, newtxmath.sty etc. 郡司 隆男 (神戸松蔭女子学院大学) 新版 LATEX で言語学の論文を書くために 第 3.0 版(2017 年 7 月) 4 / 7次の例では、block 環境を使って、それぞれ、
「入力」
「出力」というタイトル付の箱を並べています。間
に \pause があるため、「入力」の箱の表示の段階では「出力」の箱は表示されません。(なお、「入力」の
箱の中は verbatim 環境を使っているため、frame 環境に [fragile] オプションを与えておく必要があり
ます。)
\section{例文などの提示} \subsection{例文の提示と参照} \begin{frame}[fragile]{\texttt{exe}環境} \begin{block}{入力} \begin{verbatim} \begin{exe} \ex これは単一の項目の例文です。 \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 a です。 \ex これは複数の項目の例文 b です。 \end{xlist} \end{exe} \end{verbatim} \end{block} \pause \begin{block}{出力} \begin{exe} \ex これは単一の項目の例文です。 \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 a です。 \ex これは複数の項目の例文 b です。 \end{xlist} \end{exe} \end{block} \end{frame}次に、
「入力」の箱を表示した段階のスライドを示します。「出力」の箱全体がうっすらと見えています。
上にセクションのタイトル(
「例文などの提示」
)とサブセクションのタイトル(
「例文の提示と参照」
)が表
示されていることに注意してください。これは、frame 環境の外にある\section コマンドと \subsection
コマンドによって定義されています。
例文などの提示 例文の提示と参照
exe 環境
入力 \begin{exe} \ex これは単一の項目の例文です。 \ex \begin{xlist} \ex これは複数の項目の例文 a です。 \ex これは複数の項目の例文 b です。 \end{xlist} \end{exe} 出力 (1) これは単一の項目の例文です。 (2) a. これは複数の項目の例文 a です。 b. これは複数の項目の例文 b です。 郡司 隆男 (神戸松蔭女子学院大学) 新版 LATEX で言語学の論文を書くために 第 3.0 版(2017 年 7 月) 6 / 77
その他
7.1
国際音標記号
音韻論、音声学などでは、発音記号(国際音標記号 IPA: International Phonetic Symbols)が必要となるこ
とが多いと思いますが、L
ATEX の標準の数式用記号では、一部(例えば、\ae で æ、\oe で œ など)をカバー
できるものの、全部を表記することはできません。
標準配付の tipa.sty は、IPA で定義されている文字をすべて含み、diacritical marks も多彩に定義され
ています。
一番簡単な使い方は、IPA 環境の中で特定の文字を使うやり方です。その文字が発音記号として表示され
ます。英字小文字は基本的にそのままですが、‘g’ は形が変わります。
\begin{IPA} abcdefghijklmnopqrstuvwxyz \end{IPA} abcdefghijklmnopqrstuvwxyz一文字ずつ発音記号にするには、\textipa コマンドを使います。
\textipa{a} got \textipa{g}
a got g英字の大文字や数字は大分形が変わります。
\begin{IPA} ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ0123456789@;:"<> \end{IPA} ABCDEFGHIJKLMNOPQRSTUVWXYZ0123456789@;:"<>対応がわかりやすいように表にしてみましょう。
A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z A B C D E F G H I J K L M N O P Q R S T U V W X Y Z 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 @ ; : " < > @ ; : " < >
これらを使って、単語の発音を表記することができます。
language, Japanese, \LaTeX
\begin{IPA} [l\’\ae NgwIdZ] [dZ\‘\ae p@n\’I:z] [l\’eitEx] \end{IPA}
language, Japanese, LATEX
[l ´æNgwIdZ] [dZ `æp@n´I:z] [l´eitEx]
英数字や一部の記号であらわすことができる文字数は限られていますので、それ以外は、\textctyogh
などの文字の呼び名を用います。いくつかの例を示します。上の dZ (dZ) を一体化した文字も定義されてい
ます。これらは IPA 環境の中でなくても、また\textipa の引数の中でなくても、使えます。
\textdyoghlig \textdzlig \textltailn \textcloseomega \textteshlig p\textsuperscript{h}
à dz ñ Ñ Ù ph
7.2
Times, Palatino
前作では、英字に関しては、TEX の標準である Computer Modern と呼ばれるフォントで組版していまし
た。これは、TEX の創始者である、Donald Knuth が、数式がきれいに出力されるように、ゼロから開発し
たフォントで、それなりの美しさをもっていますが、今日、圧倒的に多い、Times などのフォントとはかな
り見かけが異なります。L
ATEX で Times などのフォントを使う試みはいろいろとありましたが、今日では、
txfonts.sty、およびその後継の newtxtext.sty および newtxmath.sty を使うのがおすすめです。この
新版も、これで組版してあります。
数式は用いないのならば、\usepakcage{newtxtext} のみ、数式も用いるのであれば、これに加えて、
\usepakcage{newtxmath} を始めの方に書いておきます。
なお、英文で Times と同じようによく使われる、Palatino フォントにも同じようなパッケージがあり、
\usepakcage{newpxtext}、\usepakcage{newpxmath} で使うことができます。
7.3
論理式
形式意味論で多用する論理式は、L
ATEX の数式モードで、大体書けます。例えば、単純な量化を伴う一階
述語論式などは次のようにして書けます。
\begin{exe}
\ex $\forall x\in D[P(x)\rightarrow Q(x)]$ \ex $\exists x\in D[P(x)\wedge \neg Q(x)]$ \ex $\lambda x\in (D\cap E)[R(x)\vee S(x)]$ \end{exe}
(27) ∀x ∈ D[P(x) → Q(x)] (28) ∃x ∈ D[P(x) ∧ ¬Q(x)] (29) λx ∈ (D ∩ E)[R(x) ∨ S(x)]しかし、これは一見してわかりにくいので、筆者は、日本語フォントの論理記号やそれに似たものを利用
して、次のようなコマンドを定義しています。
\let\∧=\wedge \let\∨=\vee \let\¬=\neg \let\→=\rightarrow \let\∈=\in \let\∩=\cap \newcommand{\∃}[1]{\exists#1\,} \newcommand{\∀}[1]{\forall#1\,} \newcommand{\λ}[1]{\lambda#1\,}すると、上のような式は次のように見た目もわかりやすく書くことができるようになります。しかも、日
本語のフォントをそのまま使うよりも見栄えがよくなります。
\begin{exe} \ex $\∀ x\∈ D[P(x)\→ Q(x)]$ \ex $\∃ x\∈ D[P(x)\∧ \¬ Q(x)]$ \ex $\λ x\∈ (D\∩ E)[R(x)\∨ S(x)]$ \end{exe} (30) ∀x ∈ D[P(x) → Q(x)] (31) ∃x ∈ D[P(x) ∧ ¬Q(x)] (32) λx ∈ (D ∩ E)[R(x) ∨ S(x)]意味論でよく使われる、値を示す関数 [[・]] は、L
ATEX の数式記号の中にありませんので、次のようにし
て、自分で定義して使います。
\newcommand{\sem}[1]{\lbrack\kern-0.15em\lbrack#1\rbrack\kern-0.15em\rbrack} \newcommand{\【}{\lbrack\kern-0.15em\lbrack} \newcommand{\】}{\rbrack\kern-0.15em\rbrack}$\sem{p\∧ q} = 1$ iff $\sem{p} = \sem{q} = 1$
$\【p\∧ q\】= 1$ iff $\【p\】 = \【q\】 =1$
[[p ∧ q]] = 1 iff [[p]] = [[q]] = 1 [[p ∧ q]] = 1 iff [[p]] = [[q]] = 1意味のタイプ理論などで使われる、リストの括弧は、数式モードで
< ($<$) や > ($>$) を使うよりは、⟨
(\langle) や
⟩ (\rangle) を使った方が綺麗なので、次のようなコマンドを定義しておくと便利です。
\newcommand{\seq}[1]{\langle#1\rangle} \let\〈=\langle \let\〉=\rangle$<<e, t>, t>$ $\seq{\seq{e, t}, t}$ $\〈\〈e, t\〉, t\〉$
<< e, t >, t > ⟨⟨e, t ⟩, t ⟩ ⟨⟨e, t ⟩, t ⟩