1.はじめに
高岡市は、本州のほぼ中央で日本海に面する富山 県の北西部に位置し、平成17年11月1日に旧高岡市、
旧福岡町が合併し誕生した。日本の渚百選に選ばれ た雨晴海岸からは、海越しに3,000m級の立山連峰 の大パノラマを見ることができる。面積は、東西約 24.5㎞、南北約19.2㎞の209.57㎢(20,957ha)である。
高岡市の人口は、平成30年11月で172,142人、世帯 数は68,585世帯となっており、核家族化の影響から 世帯数が増加傾向にある一方で、人口は昭和60年
(1985)をピークに年々減少傾向にある。
市の財政規模は一般会計当初予算が約677億円、
そのうち文化財関連予算は約2億円となっている
(平成30年度)。
高岡市の特徴として注目すべきは、第2次産業の うち特に製造業が主要な産業となっている点であ る。開町以来、旧高岡市域では銅器・漆器・捺染な どが伝統的な産業として位置付けられてきた。また、
旧福岡町地域においては、主な伝統産業として菅笠 産業と養鯉業がある。
2.史跡の概要
高岡城跡は、加賀前田家2代当主、前田利長が慶 長14年(1609)、自らの居城として築城した城跡で ある。城跡は、富山県高岡市の中心部、小矢部川と 庄川とに挟まれた高岡台地上に位置する。
前田利長は、永禄5年(1562)利家の子として生 まれ、慶長3年(1598)家督を継ぎ、利家の没後は 豊臣政権の五大老に列したが、徳川家康と対立、母 芳春院を江戸に人質として出し、同5年(1600)、関ヶ 原の戦いでは東軍に属した功により、加増を受けて 加賀・能登・越中3か国119万石の大名となった。
同10年(1605)家督を弟利常に譲るも、養老領とし て越中国新川郡22万石を領しながら、利常を支えて 前田家存続の策を廻らした。同14年(1609)3月に 居城の富山城が焼失したため、新たに同国射水郡関 野を選んで築城を開始し、9月に完成して入城、地 名も「高岡」と改称した。「高岡」の地名は、『詩経』
の一節「鳳凰鳴けり、かの高き岡に(鳳凰鳴矣 于 彼高岡)」から引用して、この地が繁栄することを 願って名付けたと伝えられている。
同15年(1610)に腫れ物を生じ次第に悪化、同19 年(1614)、5月、53才にて高岡城で没したが、大 図1 高岡市の位置
20㎞
史跡高岡城跡保存活用計画
田上 和彦
(高岡市教育委員会生涯学習・文化財課)坂冬の陣を間際とするタイミングに、「我死なば、
すなわち天下自ら統一して太平ならん」という遺言 が残されており、病状を考慮して、利長が自ら命を 絶った可能性が指摘されている。翌元和元年(1615)
一国一城令により高岡城は廃城となったが、加賀前 田家3代当主、前田利常が高岡町人らの城下町から の転出を禁止し、また、高岡町奉行の管理下にあっ た城跡内に米蔵等を置き、廃城後寂れゆく城下町を 商工の町へと転換する再興政策を行った。
明治維新後、城跡は払い下げの危機にあったが明 治6年(1873)の太政官布告第16号(公園条令)が 布達されたことも追い風となり、高岡町民の公園指 定運動によって、明治8年(1875)、「高岡公園」と して指定を受けた。これは、太政官布告を制度的背 景としながらも地元篤志家が主導して誕生した近代 公園という点において、特色のある成立経緯を有す ると評価される。また、明治6~8年に公園化され た城跡は全国12例であり、高岡公園はそのひとつと して、初期城址公園としても評価できる。
主な整備改修は、明治36年(1903)から同40年
(1907)頃にかけて、京都の高名な庭師である「植治」
の7代目小川治兵衛の弟子・廣瀬萬次郎による改良 設計、及び古城の滝造成などの改築工事である。明 治40年(1907)には「中の島」が造成され、翌41年
(1908)からは明治42年(1909)秋に決定した皇太 子殿下(のちの大正天皇)の北陸行啓に向けての大 改修が行われた。明治44年(1911)には、近代庭園 の先駆者で「祖庭」と号した長岡安平による公園改
良設計案が提出された。その提案は全て実行されて いないが、植樹や四阿、架橋などの造園に影響をあ たえたものと思われる。このように明治期の高岡公 園は日本を代表する東西の造園家による関与があっ たことが知られている。
戦後も引き続き都市公園(高岡古城公園)として 機能し、昭和22年(1947)に本丸球場の造成や、昭 和26年(1951)の高岡産業博覧会に向けた大改修が 行われた。これらは現在の高岡古城公園の原形をな すものである。
高岡市教育委員会では、平成20年度から24年度に かけて、高岡城跡の測量・発掘調査、地中レーダ探 査、石垣調査、文献調査等を実施し、郭および水堀 の平面形状は築城当初の状態を良く留めているとと もに、地下遺構の保存状況も良好であることを証明 した。高岡城跡は、豊臣から徳川への政権移行期の 政治・軍事的緊張のなか、江戸幕府と微妙な関係に あった前田利長が、自らの新たな隠居城として、ま た、加賀藩の東の拠点として造営した城跡である。
本丸の周囲に二重の馬出郭を配し、郭の周囲に堀を 巡らした特徴的な城郭遺構が良好に残る。近世初頭 の政治・軍事の状況や築城技術を知る上で貴重であ る。平成27年3月10日に官報告示を受け、国史跡に 指定された(図2)。
3.保存活用計画の策定経緯
高岡城跡の歴史を振り返ると、明治8年(1875)
の公園指定によって、近世城郭から市民に親しまれ る公園となり、現在まで至っている。しかし、平成 21年の開町400年を契機として、改めて城跡として 認識され、詳細調査等を経て国史跡となった経緯が ある。詳細調査の目的は、高岡城跡を学術的かつ総 合的に価値を高め、近世城郭としての実態に迫るこ とであった。しかし、高岡城跡は近世城郭と近代公 園の性格を有しており、その両方が重層的になって 現在まで保存されてきたことから、近世城郭(史跡)
としての実態解明を主目的にしながらも、近代公園 としての視点も含めて調査する計画を策定した。そ 図2 高岡城跡の位置(赤線は指定範囲、南から)
平成30年度 遺跡整備・活用研究集会報告書
24
のため指定後は、国史跡としての観点から保存・活 用・整備を進めるため、都市公園の整備の方針(『高 岡古城公園保全・活用方針報告書』)と調和を図る 必要が生じた。そこで、高岡城跡の保存・活用・整 備等に関する現状と課題の把握を行い、それに基づ く今後の基本方針や方向性、方法を明確にするため、
「国指定史跡 高岡城跡保存活用計画」を策定するに 至った。平成28年度から文化庁の国庫補助金を活用 するとともに、「国指定史跡高岡城跡保存活用計画 策定委員会」及び歴史・自然環境・観光の3部会を 設置し、1年間で策定した。
4.策定時の課題と解決方法
高岡城跡は、近代以降の公園整備によってさまざ まな施設等が立地している。具体的には、本丸に児 童公園、高岡市営弓道場、射水神社、二の丸に高岡 市民会館、護国神社、鍛冶丸に高岡市立博物館、明 丸に高岡古城公園動物園、三の丸に高岡市民体育館
が立地している。内堀の一部には、明治40年(1907)
に造成された中の島がある。また、郭の平坦面およ び法面には、樹木が高密度で分布しており、城郭の 本質的価値である土塁、法面、堀が隠れている状態 である。
保存活用計画の策定にあたり、最大の課題は、史 跡と都市公園の調和をどのように図るかという点で ある。史跡の本質的価値は、築城時と藩政期の遺構 であり、その顕在化を図るには、本質的価値以外の 諸要素(建物、樹木等)の移転・撤去が必要である。
しかし、近代の公園化によって、大部分の本質的価 値が良好に保存された事実もあることから、史跡と 公園の価値観をどのように調和させるかが困難で あった。そこでまず、高岡城跡を構成する諸要素を 分類し、それらの要素が、築城前から現代に至る歴 史的・時間的な重なり(歴史的重層性)の中でどの ように形成されているかを整理した。これは、高岡 城跡がどのような歴史で現代まで受け継がれてきた
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10.95 11.69 15.08 15.89
8.50
13.38
10.35 7.36
13.82
10.64 9.95
8.57 9.13
9.72 10.66
9.19
9.86
7.38 7.66 8.35
10.89 12.12 8.00 12.28
19.02 18.65 19.06
19.16 18.86
20.15
20.16
18.68 20.57
20.12 19.71 19.99
20.36
20.81 19.01 18.98
18.93 19.21 19.03
19.39 19.63 19.70
18.86 19.69
13.95
15.50
19.30 15.50
19.37
19.30 19.35
17.60
20.19 14.50 14.00 12.50
22.05
16.50 18.84 8.77
8.87 11.50 13.50 18.20
12.50
17.33
8.80
12.50 17.45
11.25
16.50 18.60 7.90
7.66 7.74 7.72 7.71
7.77 7.85
7.72
7.80 7.73 7.78 7.82
7.91
7.95
9.25
7.95 7.90
7.30
20.50
15.85
10.00 9.72
8.60 8.80 8.20
7.75
9.50
9.13
20.81
19.91 19.71
13.85 15.69
14.28
18.41
21.92
15.27
16.27
12.75
13.01
12.42 16.77
13.97 13.61
13.30
13.27
16.11 12.85
14.75 14.58
12.67
16.17 13.40 13.34 13.52
13.23
13.51 13.48 13.46
10.75
12.76 11.49
10.40 9.06
12.63 10.20 12.83
12.88 7.368.73 12.86
13.80 12.90
11.83 13.25 13.34 10.54
10.62 13.40
14.69 10.58
12.73 9.53
15.68 14.44
14.71
15.20
14.93 13.01
13.03
13.21
13.72
15.32
13.73
15.84
10.62 13.16 16.33
13.28 11.59 13.89 16.18 13.83
15.60 15.65 13.74
11.25 13.88 13.77
15.53 14.92 15.31 15.30 13.82
14.74 13.85 12.92
12.55 12.70 12.79
13.3212.76
14.95
16.45 17.00
12.69
13.19 15.80 15.25
11.53 16.06 17.23
12.81 16.37 16.80 14.46
12.56 15.70 13.32 11.72 11.12 13.64
11.97
11.02 13.26 12.63
12.40
12.18
16.16
16.10
10.81 16.17
12.29 16.47 16.59
14.93 11.41
15.64 15.83
14.91 16.79 13.46
15.60 16.74
14.56
12.33
11.99 11.90
11.86
11.77 11.25 11.74 11.54 11.59 11.62 11.49
11.56 11.46
11.57 11.60
11.69 11.62
11.49 11.51
11.73 11.57
11.80 11.87 12.03
14.30
11.70
11.68 11.59
11.59 11.77
11.71 12.54
12.23
12.07
11.93
11.82
11.44 11.64 11.67
16.37 13.20
16.30 16.82
13.33 13.50
13.47 13.10 13.18
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19.02 19.02 18.65 19.06
19.16 18.86
18.68
20.81 19.01 18.98
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9.68
7.82
護国神社 高岡市民会館
高岡市立博物館
高岡古城公園動物園 射水神社 高岡市営弓道場
児童公園
中の島
高岡市民体育館
図3 高岡城跡内の主な施設等の分布
かという概念を整理する作業である。
整理すると、近代以降のその他の諸要素が本質的 価値の上にあり、その分量が多いことがわかる。ま た、近代以降の構成要素は、①本質的価値に大きな 影響を与えているもの、②本質的価値への影響が軽 微なものに分けられる。①は、本質的価値に対して 物理的な影響や景観への影響が大きいものであり、
高岡市民会館や高岡市民体育館、本丸広場のブロン ズ像などが該当する。②は、①よりも影響が軽微な ものであり、滝や橋、本丸広場以外のブロンズ像な どが該当する。しかし、①、②の中には、近代の公 園化に関するものや、藩政期以来からの由緒がある ものなどが含まれるため、それらは、高岡城跡の歴 史の理解に重要なものと位置づけ、③指定地の歴史 的重層性を示すものに分類し、個別の保存(保存管 理)の方法を示した。
例えば、本来①に分類される中の島(図5)を、
近代の公園化の歴史を伝えるものとして、③へ分類 し「現状を維持管理し、中の島の歴史を解説した看
板等を設置する」と示した。また、①に分類される 高岡市立博物館(図6)を高岡城跡の魅力を発信す る場として、③へ分類し「展示等を充実させ、観光 等に繋げる」と示した。
次に本質的価値を隠している高密度の植栽につい ては、公園部局が作成した『高岡古城公園保全・活 用方針報告書』に基づきつつ、保存活用策定委員会 の委員(樹木医)から助言をいただき、今後の樹木 の整理については、次の4点についても考慮するこ
時 期 内 容 構成要素
近代以降
①本質的価値に大きな影響を与えているもの (高岡市民会館等)
②本質的価値への影響が軽微なもの (朝暘橋、本丸橋等)
③指定地の歴史的重層性を示すもの (中の島、高岡市立博物館等)
※③は本来①、②に分類されるものの中から、高岡城 跡の歴史を理解するうえで重要なもの
その他の諸要素
藩 政 期 廃城後の藩政期の遺構
本質的価値を構成する諸 近世城郭 高岡城築城から廃城までの遺構 要素
近世以前 高岡城に先行する縄文時代の遺跡 その他の諸要素 指
定 地 の 歴 史 的 重 層 性
図4 本質的価値を構成する諸要素とその他の諸要素の関係性
図5 造成される中の島
平成30年度 遺跡整備・活用研究集会報告書
26
ととした。
・カシなどの常緑樹は伐採する。
・下層植生も一定の高さ(例えば50 ~ 100㎝程度)
に維持する。
・落葉樹の大径木が込み合っていれば間引きをし て、法面に光が入るように管理する。
・大径木の枝打ちを実施する。
このような管理が実施できれば、秋から春にかけ て落葉し法面や土塁、郭の形が顕在化されるととも に、葉が繁茂する時期でもある程度顕在化されるよ うになる。
また、サクラの中でもタカオカコシノヒガンは個 別の方法を示した。タカオカコシノヒガンは、高岡 市指定天然記念物「越の彼岸桜」である。このサク ラがもたらされたのは、江戸時代まで遡り、3代当 主前田利常の命により、砺波(現砺波市)の十村役 太田宗右衛門が山中から300株のサクラを高岡城下 の馬場に移植したことに始まる。この馬場のサクラ は、昭和30年代まで存在していたが、自動車の往来 の増加に伴う排気ガスの悪影響や樹木自体の寿命も あり、高岡古城公園の小竹藪に移植されることに なった。移植されたものは6~7本であったが、現 在では約30本余りが分布している。そこで、歴史的 にも高岡城跡と深い関係にあることから、「本質的 価値と調和を図りながら、適切に保護育成し、可能 であれば増殖、植栽も検討する」とした。
このように、歴史的重層性を整理、可視化させ、
細かく個別の保存(保存管理)の方法を示すことで、
史跡と公園の価値観を調和させることとした。
2つ目の課題は、調査研究が不足している点であ る。詳細調査によって短期間に成果を蓄積したが、
史跡全体の様相(保存されているか、破壊されてい るか)を発掘調査によって確認していないことから、
現状変更の取扱基準やゾーニングの設定について曖 昧な表現になっている。郭の大部分を占める既存施 設の整備の方向性も、発掘調査、史料調査の不足か ら、明確な考えを示せていない。
3つ目の課題は、高岡城跡に関係する諸機関の連 携が不足している点である。保存と整備については、
文化財部局と公園部局で役割を分担したが、活用に ついては、明確な役割分担をしていない。
これら2つの課題は未解決であり、内部での体制 整備などとともに今後も検討が必要である。
5.保存活用計画策定で工夫した点
保存活用計画策定で工夫した点は3つである。ま ず、高岡城跡の保存活用計画は、1年間という短期 間で策定を目指したため、策定委員会の下に歴史、
自然、観光の専門部会を設置し、多くの方々から意 見を集約するように心掛けた。この部会では地元の 方に入ってもらい、市民レベルの意見を集めること を目的とした。これらの意見は活用の部分で参考と した。
次に、活用の現状と課題の項目では、国史跡の近 世城郭における車の乗り入れ状況について調べ、本 丸まで車が乗入れできる国史跡の近世城郭は、高岡 城跡と宮城県仙台市の仙台城跡だけであることを示 した。これは、今後の駐車のあり方の検討に向けて、
史跡としての考え方を牽制するためのものである。
また、章構成においては、本文の最後に「総括」を 設けて「大綱」と保存、活用、整備などの大事な方 針、現状変更の取扱いの原則と基本方針を掲載した。
これにより、計画書をすべて読まなくても、大事な 部分を確認することができ、組織内および外部に向 けて、容易に発信することができるようになった。
図6 鍛冶丸に立地する高岡市立博物館
6.策定後の良かった点、反省点
国史跡に指定される前から、高岡城跡にサクラを 植栽したいとの要望があったが、この計画を策定し たことで、タカオカコシノヒガン以外の植栽につい ては、ある程度牽制することができるようになった。
また、保存活用計画を策定することにより、内外部 で「高岡古城公園」ではなく「高岡城跡」としての 認識され始めたことは良かった点である。
反省点は、現状変更の取扱基準を明確にすること ができず、曖昧になってしまったこと、史跡の活用 のあり方を具体的に示せなかった点である。課題に も挙げた点であるが、本質的価値の対応、今後予想 される開発や施設移転・撤去に伴う跡地利用の議論 において文化財部局としての考え方を明確に示せな かったことが残念である。活用のあり方については、
今後も検討し、高岡城跡らしいものを示したい。
全国の都市公園となっている史跡では、史跡の保 存活用計画とともに「植栽管理計画」が策定されて いる事例がある。例えば、盛岡城跡では樹木等に対 する基準が明確になっている。
城郭においては、史跡の保存活用計画とともに、
樹木の植栽管理計画を両輪に保存・活用を図った方 が良いと考えられる。
7.おわりに
「保存」と「活用」のあり方は、個々の史跡等の 立地・性質をはじめ、それを取り巻く社会的環境等 によって全く異なっている
5)
。また、近世城郭は都 市公園化が進み、史跡の構成要素が複雑に絡み合い、多様化しているため、近世城郭の保存活用計画策定 には、本質的価値、史跡の現状と課題を適切に把握 することが最も重要である。そのため、策定に関し ては、文化財保護の基本を理解した職員を配置し、
最低2年間はじっくりと取り組んだ方が良いと考え られる。行政のスピード感は必要であるが、本質的 価値、史跡の現状と課題を正しく理解しないまま計 画を策定することは、今後の事業に悪影響を与える
とともに、地域の文化財の保存・活用を描き出す機 会を失う危険がある。
また、城郭を中心としたまちづくりを実施してい る市町村は、施策の中心に城郭を据えていることか ら、体制確保が有利であるが、そうでない市町村で は体制すらままならないまま事業が進むことが恒常 化していると思われる。その中では、なおさら文化 財保護に対する知識、技術の伝承が重要である。市 町村の中で難しいのであれば、都道府県でバック アップできる体制があれば望ましい。
最後に、史跡指定のための詳細(総合)調査から、
意見具申書の作成、保存活用計画の策定という一連 の流れを理解し、事業を実施することが大切である。
例えば、史跡の範囲確認調査は、緊急発掘調査と異 なり、史跡の破壊を最小限に抑えつつ、最大限の成 果を挙げる必要があるため、適切な調査と体制が求 められる。詳細調査の段階から保存・活用を見据え た調査計画が策定されるべきである。近世城郭の史 跡指定には、国庫補助事業の対象外の調査も必要で あり、早めに組織内部で調整した上で着手すること が大事である。
「地域の文化財をどのように次世代へ継承するか」
を常に頭の片隅に置き、組織の中で何ができるか考 え続けることが今後重要である。
【参考文献】
1) 高岡市教育委員会 2013『富山県高岡市 高岡城跡詳 細調査報告書』
2) 高岡市教育委員会 2017『国指定史跡 高岡城跡保存 活用計画書』
3) 高岡市教育委員会 2018『国指定史跡 高岡城跡整備 基本計画書』
4) 高岡古城公園保全・活用方針策定委員会 2010『高 岡古城公園保全・活用方針報告書』
5) 文化庁文化財部記念物課 2015『史跡等・重要文化 的景観マネジメント支援事業報告書』
平成30年度 遺跡整備・活用研究集会報告書