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一特例子会社および福祉工場の調査を通して-

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重度障害者の雇用を拡大する政策の在り方に関する一考察 一特例子会社および福祉工場の調査を通して-

人間社会研究科人間福祉専攻 博士後期課程3年山田雅穂 Iはじめに

本論文の目的は、重度障害者雇用の場として定着し機能を果たしてきた特例子会社と福祉工場の制度の経緯、

その後の展開、および筆者が行った調査による現状把握を通して、重度障害者の雇用をさらに拡大するための方 策を考察することである。

これまで欧米諸国では、障害者差別禁止法や、雇用率制度(雇用割当制度)などの差別是正措置といった取り 組みがなされてきたにもかかわらず、障害者の就業率は低い。特に、通常の企業での雇用が困難な重度障害者の 就業率は、非重度障害者に比べてさらに低い。また、日本では、機能的な障害や職業的障害が比較的軽度なケー スについては一般雇用への支援策が整いつつあるが、通常の企業での雇用が困難な重度障害者の就労を促進する 政策は不十分である。したがって、障害者と労働契約を締結した企業として重度障害者の雇用を行ってきた特例 子会社と福祉工場に焦点を当て、重度障害者の雇用・就労を拡大し、促進する政策を明らかにすることが本研究 の目的である。

Ⅱ障害者雇用対策の経緯と現状および障害者雇用の実態

1日本の障害者雇用対策の現状と課題

日本の障害者雇用対策の基本は、1960年の身体障害者雇用促進法を母体とする障害者の雇用の促進等に関する 法律(障害者雇用促進法)である。この法の理念は社会連帯による障害者の雇用であり、第5条で、事業主は「障 害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有する」と規定されてい る(障害者雇用促進法第5条「事業主の責務」)。この法に基づく障害者雇用率制度および障害者雇用納付金制度 が、日本の障害者雇用政策の柱である。

雇用率制度とは、事業主にある一定比率以上の障害者雇用義務を課すことで障害者雇用の促進を図る制度であ る。現在の法定雇用率は、従業員数56人以上の民間企業は1.8%、国・地方公共団体と特殊法人等は2.1%である。

重度身体障害者と重度知的障害者は1人を2人とダブルカウントする。2007年6月1日現在の実雇用率は全体で 1.55%であり、法定雇用率の1.8%に達していない。この実雇用率を企業規模別に示した厚生労働省の統計(図1)

を見ると、最も高いのは従業員1000人以上の企業で1.74%である。平成14年以降、1000人以上の大企業の実雇用 率が上昇しているが、これは平成14年の同法改正により、後述する特例子会社のグループ適用が可能になり、関 係会社を含めグループ全体を親会社に合算して実雇用率を算定することができるようになった影響もあると考え

られる。

一方、厚生労働省の統計(図2)の企業規模別の雇用率達成企業割合を見ると、1000人以上の企業は最も低く 40.1%である。最も高いのは56~99人の企業で44.8%、続いて100~299人が44.4%、300~499人が40.8%、500

~999人が40.4%となっている。全体では43.8%である。

(2)

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図1企業規模別の障害者雇用の状況企業規模別実雇用率

出典:厚生労働省ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について http://www・mhlw・gojp/houdou/2007/11/dl/hll20-1apdf

(3)

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(56~99人)

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図2企業規模別の障害者雇用の状況企業規模別達成企業割合

出典:厚生労働省ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について http://www・mhlwgojp/houdou/2007/11/dl/hll20-1a・pdf

(4)

次に納付金制度とは、雇用率未達成の常用労働者301人以上の事業主から、不足1人当たり月額5万円の納付金 を徴収し、それを財源として、法定雇用率を超えて障害者を雇用している事業主に助成金、報奨金、調整金を支 給する制度である。その目的は障害者雇用における経済的負担を企業間で調整し、企業間の連帯責任により障害 者雇用を図ることである。各種助成金は、事業主等が行う障害者雇用のための作業施設の設置・整備、重度障害 者の雇用管理のための職場介助者の配置などに対して支給される。

両制度の問題点は、第一にこれまで一度も法定雇用率を達成していないこと、第二に納付金制度の制度設計に よる助成金額の限界である。後者について、制度の目的はあくまでも事業主が目標とされる雇用率を達成するこ とを奨励するものであり、財源の増加を意図するものではない。また、すべての企業が雇用率を達成すれば、納 付金による基金はなくなるため、こうした財源は雇用率制度と納付金制度の目的と原則から見て一時的なもので ある。したがって、雇用率制度と納付金制度が、国による障害者雇用政策を実施する責任にとって代わるわけで はない。そのため、助成金額にも一定の限界がある。この2つの問題点は後述する欧州における両制度について も共通している。

2障害者雇用の実態

厚生労働省が公表している「障害者雇用・就業の概況」の内容を見ると、日本における障害者総数は身体障害 児・者、知的障害児・者、精神障害者を合計して709万1000人である。そのうち障害者雇用施策の対象となる障害 者数(18~64歳、精神障害者については20歳以上)は約360万人である。うち、身体障害者が134万人、知的障害 者が約34万人、精神障害者が約192万人である1゜この障害者総数のうち雇用者数2は全体で49万6000人、うち身 体障害者は36万9000人、知的障害者は11万4000人、精神障害者は1万3000人で、身体障害のある雇用者が多数であ る。

次にこの雇用者数を企業規模別に見ていくと、5人以上規模企業に雇用されている障害者は計49万6000人(平 成15年度障害者雇用実態調査)であり、56人以上規模企業に雇用されている障害者数は22万3737人(厚生労働省 ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について)である。よって、従業員が5人以上55人以 下の小規模企業に雇用されている障害者数の方が多いことがわかる。また、重度障害者数(身体障害者と知的障 害者のみ)は、2007年6月1日の時点で企業規模別障害者の雇用状況を見るとシングルカウントで合計7万9469 人であり3,重度以外の障害者の合計13万8651人4に比べて低い。従業員規模5人以上の民営の事業所を対象とし て行われた厚生労働省の「平成15年度障害者雇用実態調査」からも、重度障害者の雇用数が少ないこと、身体 障害者も知的障害者も製造業での雇用者数が最も多いこと、雇用率制度の対象となっていない常用労働者55人以 下の小規模企業で積極的に雇用されていることが明らかとなっている。

表1障害者の雇用者数 5人以上規模企業(平成15年度障害者雇用実態調査)

56人以上規模企業

出典:厚生労働省ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について ppl5より筆者が計算し作成。

,:"wwwmhlw・gojp/houdou/2007/11/dl/hll20-1a、pdf

1厚生労働省ホームページ:障害者雇用・就業の概況 http://Wwwmhlwbgojp/bunya/koyou/shougaishaO2/pdD/35.pdf

2雇用者数は、従業員5人以上規模の企業に雇用されている身体障害者、知的障害者、精神障害者である。厚生労働省ホームページ:障害者 雇用・就業の概況

http:"wwwmhlw、gojp/bunya/koyou/ShougaishaO2/pdf735・pdf

3出典:厚生労働省ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について

〕://Wwwmhlw6且0.i、/houdou/2007/11/dl/hll20-1apdf ppl4 1在の ppl4

4出典:厚生労働省ホームページ:平成19年6月1日現在の障害者の雇用状況について http;wmhlw20.1poudo 200711/dl/hll20-ladf

計 身体障害者 知的障害者 精神障害者

49.6万人 36.9万人(74.4%) lL4万人(23.0%) 1.3万人(2.6%)

計 身体障害者 知的障害者 精神障害者

22万3737人 18万985人(80.9%) 3万8529人(17.2%) 4223人(1.9%)

(5)

3欧州の雇用率制度と納付金制度の現状および課題

戦後初めて両制度を創設した欧州では、雇用率制度はアファーマテイブ・アクション(積極的な差別是正措置)

の-種と捉えられており、労働市場において不利な立場にある、有資格の障害者に雇用機会を均等化することを 目的としている5.EU各国の現在の法定雇用率は、イタリアでは労働力の7%、フランスとポーランドは6%、

ドイツは5%、オーストリアは4%、トルコは3%、スペインは2%である6。なお、イギリスは、1944年の障 害者(雇用法)によって雇用率制度を採用し、3%の雇用率を設定していたが、雇用率が達成されず雇用率制度 は機能を果たさないと評価され、1995年に障害者差別禁止法の制定と共に廃止されたという経緯がある。

雇用率制度と納付金制度の実施方法は各国で様々であるが、共通原則は、障害者雇用は社会の責任・義務であ るということ、最終的な責任は仕事を提供する事業主にあり、納付金による基金の分配は事業主の連帯責任に基 づくことの3点である。

ドイツでは法定雇用率が5%で、納付金は達成率に応じて定められている。フランスでは従業員20人以上の事 業所に法定雇用率6%が義務付けられている。日本と両国の共通点は雇用率が一度も達成されていない点である。

相違点は両国では日本より雇用率が高く設定されている点、両国では雇用率達成手段として障害者授産施設等へ の発注契約等も認められている点である。

こうした施策にもかかわらず、欧州での障害者の就業率は低く、その中でも重度障害者の就業率はさらに低い。

表2を見ると、EU加盟国(11カ国)における障害者の就業率は40.8%である。障害をもっていない人の67.9%

に比べて著しく低い。さらに、障害者の中でも重度障害者の就業率は24.9%であり、軽度障害者の48.7%に比べ てさらに低いことがわかる。よって、上述の施策にもかかわらず、欧州における障害者の就業率および重度障害 者の就業率は低いということがわかる。また、国によって障害者政策アプローチの違いがあるにもかかわらず、

障害者の就業率は国による差異が少ないこと、そして重度障害者の就業率は、障害のない人の約3分の1である ことがわかる7.

64歳人口での障害度別就業率(1990年代後半)

表220

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OECD(19力匡 OECD(14力'五 狄小11潭合(11力区

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-:データ不明

(a)カナダ、メキシコ、ノルウェー、ポーランド、スイスは、障害度に関するデータが利用できない。

出典:OECD編著/岡部史信訳:図表でみる世界の障害者政策、明石書店、pp36(2004)

5日本障害者雇用促進協会・障害者職業総合センター:資料シリーズNo.26障害者の雇用率・納付金制度の国際比較、pp、5、日本障害者雇用 促進協会・障害者職業総合センター(2002)

6沢邉みさ子:第5章雇用支援サービスの動向、調査研究報告書No.81「EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向(独 立行政法人高齢・障害者雇用支援機構、障害者職業総合センター)pp70、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構、障害者職業総合センター(2007)

7工藤正:第2章障害者の就業状態、調査研究報告書No.81EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向、(独立行 政法人高齢・障害者雇用支援機構、障害者職業総合センター)pp41独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構、障害者職業総合センター(2007)

国 全体 障害をもつ人

もつ人全体障害を 重度 軽度 障害を

もっていない人

オーストラリア 72.1 41.9 31.4 46.9 76.6

オーストリア 68 1 43 23.9 50.2 71 8

ベルギー 58 7 33 5 21.1 40.0 61

カナダ 74 9 56 3 78 4

デンマーク 73 6 48 2 23.3 55.1 79 4

フランス 63 6 47 9 36 55 5 66 6

ドイツ 64 8 46 1 27 0 52 9 69 0

イダリア 52 2 32 1 19 4 37 9 53 8

61 2 45 9 13 51 5 61

メキシコ 60 1 47 2 61 1

オランダ 61 9 39 9 26.5 46.4 67 0

ノルウェー 81 4 61 7 85 8

ポーランド 63 9 20 71 2

ポルトガル 68 43 9 27.6 55.3 74 0

スペイン 50 5 22 1 15.1 26.5 54 2

スウェーデン 73 7 52 6 33.8 69.0 75 8

スイス 76 6 62 2 79 1

イギリス 68 6 38 9 19.3 46.8 73 9

アメリカ合衆 80 2 48 26.4 58.8 83 9

OECD(19力 ) 67 1 43 70 8

OECD(14力 )(a) 65 5 41 3 24.5 48.8 68 1 狄州連合(11ヵ ) 64 40 8 24.9 48.7 67 9 非欧州連合(3ヵ国)(a) 71.2 45 5 23.7 52.4 74 1

(6)

雇用率制度の利点は法定雇用率と対比しての実雇用率で企業の障害者雇用上のパフォーマンスを評価しうるこ と、障害者がグループとして均等の機会を妨げられている構造的な不利を認めることで、差別是正措置の実施を

正当化していることである8.

問題点は、現時点で法定雇用率を達成した国がないこと、前述のように、全ての企業で雇用率が達成されれば 納付金による助成金はなくなる設計であり、国の障害者雇用の責任を代替するものではないこと、障害者を障害 のない人と区別するためインクルージョンの点から問題があること、障害者の雇用の質までは考慮に入れていな

い点である。

Ⅲ重度障害者の代替雇用政策の経緯と現状

医学的見地から見た機能障害(impainnent)と職業上の障害とは必ずしも-致せず、重度障害も後者の視点か ら捉える必要があることが、先行研究によりすでに明らかになっている9.しかし、職業的重度障害の視点から 職業能力などを把握する普遍的な基準はいまだ確立されていない。よって本論文では重度障害者を「機能障害が 重度であり、通常の企業および労働市場での雇用が困難な障害者」とする。

日本では、生産活動に参加することを目的として行う就労で、労働法規が適用されない授産施設や小規模作業 所等の福祉的就労が、多くの重度障害者の働く場となっている。だが、訓練と生産との区別が明確でなく工賃も

低いため、より望ましい働く場の創設が求められている。

欧州諸国では戦後ILOの99号勧告に基づき、保護雇用制度が重度障害者の雇用の場として制度化された。保 護雇用制度とは、一般雇用への就職に見込みが立たない障害者を対象とした保護工場制度や、通勤困難者のため の在宅雇用制度を言い、障害の特性に応じた何らかの配慮を伴う雇用であると捉えることができる。また、安井

(1989)が指摘しているように、一般雇用との密接な連携の下に運営されるとの原則が示されている10・ヨーロ ッパ諸国における社会(保護)雇用の形態の一覧は図3のとおりである。

①保護エ場b…。.……特別に設置されたエ場における雇用

②企業内保護雇用……一般企業の生産エ程の-部を保護エ場から 出向する障害者が受け持つ方式。グループで 出向するエンクレーブ方式と個人が出向する インターワーク方式がある

③在宅雇用..……・…保護エ場への通勤が困難な障害者のための プログラムで、保護エ場の在宅部門として 運営されるもの

④戸外作業プロジェクト・・・公園や学校等、公共施設の維持管理業務を 中心としたもの

⑤事務作業プロジェクト・・・図書館や博物館等で専門的、技術的作業を 中心としたもの

⑥準保護雇用・・・・……個人商店や小企業、市当局によって働く場所が 準備され-定の助成が行われる

⑦援助つき雇用..…・・・・一般企業の現場にジョブコーチの支援を つけて就業する方式

この他に賃金補助による雇用政策がある。

図3ヨーロッパ諸国における社会(保護)雇用の形態

出典:朝日正也:ヨーロッパにおける重度障害者の就労施策一保護工場から社会雇用への転換

一、月刊福祉1998年10月号、pp80(1998)

8松井亮輔:障害者雇用をめぐる国際的潮流、労働政策研究報告書Nq32CSR経営と雇用~障害者雇用を例として~、(独立行政法人労 働政策研究・研修機構編)、ppl40(2005)

9日本障害者雇用促進協会・障害者職業総合センター:職業的困難度からみた障害者問題一障害者および重度障害者の範囲の見直しをめぐ って-、日本障害者雇用促進協会・障害者職業総合センター(1994)

10安井秀作:職業リハビリテーション、pPl92、中央法規出版(1989)

(7)

しかし、各政府の財政事情の悪化や、インクルージョンの概念に反するという批判等により、一般雇用への移 行とさらに「開かれた保護雇用」という方向に向かっている。日本でも保護雇用制度が提言されたが、導入には 至らなかった。保護雇用と福祉的就労の違いは、前者では障害者を労働契約を締結した労働者とし、賃金補填制 度がある点であり、共通点は一般雇用への移行率の低さと、インクルージョンに反するという批判の存在である。

Ⅳ福祉工場と特例子会社の設立経緯と背景

一方、日本で重度障害者雇用の場として機能を果たしてきたのは福祉工場と特例子会社である。特例子会社と 福祉工場を本研究の調査対象に選んだ理由は、第一に両者とも福祉的就労とは異なり、障害者と労働契約を結ん だ雇用の場であるからである。第二に、両者とも重度障害者の働く場として一定の機能を果たしてきたからであ る。そして第三に、両者を比較した調査はこれまでにないからである。

福祉工場とは、ある程度の作業能力があるが、職場の設備や通勤の交通事情等のため一般企業での雇用が困難 な重度障害者を雇用し、社会的自立を支援する施設である。福祉施設の一種であるが、障害者と労働契約を締結 している。福祉工場は、障害者従業員の給与は独立採算制である点、保護雇用における賃金補填制度はない点か ら、経営面でも国からの支援を受けることを条件としている保護雇用制度とは異なる。福祉工場の問題点は、障 害者従業員の障害の重度化と高齢化への対応の不十分さ、定員の充足率の低さ、仕事の受注量の減少と経営の困 難さで、その役割を再考する時期に来ている。

特例子会社は、障害者雇用促進法に基づき、親会社が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合、

一定の要件のもとに、雇用されている労働者を親会社に雇用されているとみなして、実雇用率及び納付金、調整 金、報奨金を利用することができる制度である。その利点は、企業の社会的責任としての障害者雇用の有効な実 現方法であること、従来外部委託していた業務を子会社の業務とすることで効率化できること、障害者が働きや すい環境整備を集中して行うため企業側には効率的で障害者の定着率が向上すること、障害者側には配慮された 職場環境で能力を発揮する雇用機会が増大すること、賃金等の労働条件が親会社の影響を受けず実態に合わせた 評価ができることである。一方で問題点は、営業上の依存が高い親会社の経営状況の悪化が直接影響する点、親 会社の障害者雇用に対する当事者意識が低下する傾向、障害者の働く場所が限定されノーマライゼーションに逆 行する恐れがある点などである。

制度としての目的と特徴から、福祉工場は福祉行政からの福祉的アプローチによる、特例子会社は労働行政に おける雇用アプローチによる障害者雇用の場であるといえる。その理由は、第一に上述の根拠法および行政の管 轄の違いから、第二に福祉工場が対象とする障害者は、通常の企業での雇用が困難な重度障害者であるが、特例 子会社は広く障害者一般であり、必ずしも重度障害者のみに特化しているわけではないということ、第三に福祉 工場は、特例子会社と同様に納付金制度による助成金を得られることに加え、施設の創設および指導員の人件費 等に国からの補助金が給付されている一方、特例子会社は納付金制度による助成金のみで、国からの補助は一切 受けていないからである。

(8)

V福祉工場と特例子会社への調査の結果と考察

1先行調査で明らかになっていることとそうでないこと

福祉工場と特例子会社について、先行調査'1から明らかにされているのは以下の3点である。第一に、福祉工 場と特例子会社の企業としての一般的な側面である。具体的には、経営主体、企業規模、従業員数、売上高、事 業内容などである。第二に特例子会社については経営状況の判断、親会社からの受注比率、経営と障害者雇用に 関する課題である。第三に、福祉工場については、授産施設と合同の調査であるが、障害種別の人数など「施設

利用者」の個別状況は明らかにされている。

一方、これらの調査からも明らかにされていないことは次の6点である。第一に障害者が労働契約に基づいた 従業員として働いている福祉工場と特例子会社を比較した調査は、これまでにない。第二に障害者一般について、

雇用においてどのような取り組みをしているかについては厚生労働省の「障害者雇用実態調査」で調査されてい るが、重度障害者の雇用における取り組みとして何を行っているかは調査されていない。第三に特に重度障害者 に焦点を置いた調査はない。つまり、重度障害者を雇用しているがゆえの取り組みや生じている困難要因につい てはこれまで調査されていないのである。第四に、重度障害者を雇用しているがゆえの困難要因を解決する方策 として、現場の方々は何を望ましいものと考えているかについてもこれまで調査されていない。第五に特例子会 社については重度を含む障害者の個別状況についての詳細なデータは得られていない。第六に福祉工場について は授産施設と合同の調査のみであるため、福祉工場のみのデータが少ない。

したがって本調査の目的は、両者の企業としての現状把握と共に以下の3点とした。第一に、障害を配慮した 組織として重度障害者を多く雇用している両者の差異、共通点、特徴を明らかにすることである。第二に、上記 の点から、重度障害者の雇用拡大の参考となる点や課題を明らかにすることである。第三に、重度障害者雇用に おける問題点についての現場(経営側)の方々の考えを明らかにすることである。調査方法、事業所のデータソ

ース、郵送数、回収率は以下のとおりである。

<調査方法>

○調査票郵送による調査

○調査時期:2007年4月~5月の1ヶ月間 く事業所のデータソース>

・福祉工場は、全国社会就労センター協議会ホームページ

(http://WWW・selporjp/database/index、html)の「全国セルプ名簿」に所在地が掲載されている福祉工場すべて(110

社)に調査票を郵送。

11先行調査は以下の文献を参考にした。

<福祉工場>:社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営禾Ⅱ法人日本セルプセンター:平成15年度社会就労センター実態調査報 告書(2004)、全国社会福祉協議会・授産施設協議会:授産施設・福祉工場実態調査報告書昭ポロ54年4月1日現在、全国社会福祉協議会・授産施設協議会(1979)、

全国社会福祉協議会:昭和58年度授産施設・福祉工場実態調査報告書、全国社会福祉協議会(1985)、全国社会福祉協議会:昭和62年度授産施設・福祉工場 実態調査報告書、全国社会福祉協議会(1989)、当雪社会福祉協議会:平成4年度授産施設・福祉工場実艤周査報告書、全国社会福祉協議会(1994)

<特例子会社>:日本経営者団体連盟・障害者雇用相談室:特例子会社の経営に関するアンケート調査結果報告、日本経営者団体連盟(平成10 年3月)、日本経営者団体連盟・障害者雇用相談室:特例子会社の経営に関するアンケート調査結果報告、日本経営者団体連盟(平成11年3月)、

日本経営者団体連盟・障害者雇用相談室:特例子会社の労働条件に関するアンケート調査結果報告、日本経営者団体連盟(平成11年3月)、東 京経営者協会:特例子会社の経営・労働条件に関するアンケート調査結果報告、東京経営者協会(平成16年6月)、東京経営者協会:特例子会 社の経営・労働条件に関するアンケート調査一精神障害者の雇用状況も踏まえて-結果報告、東京経営者協会(2007年3月)

<重度障害者多数雇用事業所>:労働省・日本障害者雇用促進協会:平成4年度研究調査報告-2重度障害者多数雇用事業所における雇用 管理上の諸問題に関する調査研究報告書、日本障害者雇用促進協会(1993)、労働省・日本障害者雇用促進協会:平成5年度研究調査報告一 3重度障害者多数雇用事業所における従業員の高齢化と雇用管理に関する調査研究報告書、日本障害者雇用促進協会(1994)、労働省・日本 障害者雇用促進協会:平成6年度研究調査報告書-6重度多数雇用事業所における障害者の雇用状況と雇用管理に関する調査、日本障害 者雇用促進協会(1996)、労働省・日本障害者雇用促進協会:平成7年度研究調査報告書-4重度多数雇用事業所における障害者の雇用状 況と雇用管理に関する調査Ⅱ、日本障害者雇用促進協会(1997)、労働省・日本障害者雇用促進協会:平成9年度研究調査報告書-7重度 多数雇用事業所における障害者種類別にみた雇用等に関する研究調査、日本障害者雇用促進協会(2000)、独立行政法人高齢・障害者雇用支援 機構:平成15年度研究調査報告-2重度障害者雇用事業所における障害者の雇用状況及び福祉機関との連携に関する研究、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構(2005)、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構:平成16年度研究調査報告一H16-1重度障害者雇用事業所 における障害者の雇用状況に関する調査、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(2006)

<障害者雇用のための取り組み、課題などについて>

厚生労働省「平成15年度障害者雇用実態調査」(厚生労働省による従業員5人以上の事業所への調査(5年毎に実施))

(9)

特例子会社は、2007年1月26日に厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課(調整係)

よりご提供いただいた名簿(課として公表していないものであるため、筆者の調査研究の用途のみの使用に限 るという条件でご提供いただいた)。

データの内容は2007年1月26日現在のもので、全数調査(203社)。

<回収率>

福祉工場:45社(40.9%)、特例子会社:81社(39.9%)

全体:126社(40.3%)

2調査票の調査結果

以下に述べる調査結果および筆者が作成した図表は全て、上述の筆者による調査で特例子会社と福祉工場の 方々にご提供いただいたデータに基づく。

2-1経営形態

福祉工場の経営の形態は「社会福祉法人」が40社(88.9%)、特例子会社は「100%民間資本」が62社(76.5%)

であった。この結果より、先述した福祉工場と特例子会社の制度としての設立背景が、経営形態に反映されてい ることが明らかである。すなわち、福祉工場は福祉施設の-種として、重度障害者の雇用創出の場として福祉行 政の枠組みの中で設立されたのに対し、特例子会社は労働行政の枠組みにおいて、一般企業、特に大企業が障害 者雇用率を達成するための手段として創設された制度であるということである。

2-2売上高と-人当たり売上高

福祉工場の直近の決算における売上高は、「1億-5億円未満」が最も多く18社(40.0%)、続いて「5000万一 1億円未満」が10社(22.2%)、「5000万円未満」10社(22.2%)である。後述する特例子会社と比較して、「1億

-5億円未満」と答えた社数が1位となっているのは共通しているが、「5億円以上」と答えた社数がかなり低い ことと、売上高の最大値のカテゴリーが「10億円未満」であり、特例子会社の「20億円以上」と比べて低いこと である。売上高の平均値は5.2857百万円(528万5700円)である。最小値は2.7百万円、最大値は5139百万円(51 億3900万円)である。

特例子会社の直近の決算における売上高(子会社のみ)は「1億円以上5億円未満」が最も多く28社(34.6%)

で、次いで「5000万円未満」が19社(23.5%)、「5億円以上」が18社(22.2%)であった。売上高の平均値は3.7534 百万円(375万3400円)であり、福祉工場の平均値の5.2857百万円(528万5700円)に比べて低い。

表3福祉工場と特例子会社の売上高区分

社数一セント社数一セント

1022219235 10222899 1840028346

48918222 367899 451000811000

次に、生産性を表す「従業員一人当たり売上高」を見てみる。福祉工場は「500万円未満」が最も多く31社(68.9%)、

次に「500万-1000万円未満」が7社(15.6%)である。

特例子会社も、最も多いのは「500万円未満」で35社(43.2%)、次に「500万-1000万円未満」が20社(24.7%)、

「1000万-5000万円未満」が14社(17.3%)となっている。福祉工場に比べて、-人当たり売上高はやや高い事業

売上高区分 福祉工場

社数 パーセント

特例子会社 社数 パーセント 5000万円未満 10 22.2 19 23.5

5000万-1億円未満 10 22.2 9.9 1億-5億円未満 18 40.0 28 34.6

5億円以上 8.9 18 22.2

未記入 6.7 8 9.9

合計 45 100.0 81 100.0

(10)

所が多いと考えられる。この点をさらに正確に確めるため、

売上高のX2乗検定を行ってみると、次の通りとなった。

SPSSにより福祉工場と特例子会社の-人当たり

表4福祉工場と特例子会社の-人当たり売上高

表5特例子会社と福祉工場の従業員一人当たりの売上高のX2乗

種類と階級のクロス表 度数

カイ2乗検定

自由度 漸近有意確 率(両側)

a.Oセル(、0%)は期待度数が5未満です。最小期待度数は 665です.

上の表5を見ると、X2=7.432(漸近有意確立の値が0.024)で、5%水準で差があるといえる。よって、福祉 工場と特例子会社の-人当たり生産高には差があると認められる。すなわち、この調査の結果からは、特例子会 社の方が福祉工場よりも-人当たり生産高が高く、生産性が高いということが言える。

2-35年前もしくは創業5年以内の場合は設立年の売上高を100とした時の変化率

表6を見ると、福祉工場の売上高の変化率は、「120以上200未満」が15社(33.3%)と3割を占める。次に「100 未満」が13社(28.9%)、「100以上120未満」が9社(20.0%)である。また、売上高が減少している「100未満」

の社数が全体の約3割もある。

一方、特例子会社の売上高の変化率も、福祉工場と同様に最も多いのは「120以上200未満」で18社(22.2%)

である。次に「100以上120未満」が15社(18.5%)である。また、「100未満」が9社(11.1%)ある。売上高が 2倍以上増加している事業所は全体としては少数で、設立時とさほど変化のない事業所や2倍の事業所がほとん どである。その一方で、売上高が減少している「100未満」の事業所が約1割も存在することも軽視できない。ま た、特例子会社では、売上高が減少している企業数は1割程度であるのに比べ、福祉工場では売上高が減少して

いる企業の割合が高い。

-人当たり売上高区分 福祉工場 社数 パーセント

特例子会社 社数 パーセント 500万円未満 31 68.9 35 43.2

500万-1000万円未満 15.6 20 24.7

1000万-5000万円未満 4.4 14 17.3

5000万円以上 2.2 1 1.2

未記入 8.9 11 13.6

合計 45 1000 81 100.0

皆級

500万円未満 500万-100万円未満 1000万-5000万円未満 合計 種類福祉工場

合計 特例子会社

156 336

20 27 15 18 111 41 70

値 自由度 漸近有意確 率(両側)

Pearsonのカイ2乗 尤度比

線型と線型による連関 有効なケースの数

2761 3391 4801

7Z7 221

、024 .020 .008

(11)

表6福祉工場と特例子会社の売上高変化率

社数パーセント社数パーセント

13289111 20015185 1533318222

0074

2225 13327333 451000811000

2-4事業内容(複数回答可)

次に事業内容であるが、その前に事業内容の選択項目について説明する必要がある。一般の労働統計等では、

企業の業種分類は「日本標準産業分類」が用いられている。しかし、今回の調査では、障害者の就労分野、特に 通常の企業では雇用が困難な重度障害者の就労分野を考慮して項目を作成してあり、特殊な分類となっている。

なぜなら、重度障害者の就労分野は、日本標準産業分類をそのまま適用することができないものが多いからであ

る'2。この点について、過去に行われてきている社会就労センター(授産施設)の調査内容を見ると、まず「平

成15年度社会就労センター実態調査報告書」13では、分野の集約カテゴリーを前回調査と変更したことによって、

「分類不能」が最多で1,248件(20.4%)も出てしまったとある(表7)。

表7作業種目・前回との比較(抜粋)’4

20.4CO

82CO 77%

(社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター:平成15年度社会 就労センター実態調査報告書、ppl33、社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日 本セルプセンター(2004)をもとに筆者作成)

また、全国社会福祉協議会による「平成4年度授産施設・福祉工場実態調査報告書」によれば、その調査か ら1日通産省の産業別分類コードを採用して集計しており、「分類不能の産業」に786施設が回答しており、前回調 査までの「簡易作業」を作業としている施設が増加していることがうかがえる」とある'5゜よって、大きな分類 を日本標準産業分類にしているため、平成15年度の調査では、先述したように「分類不能の産業」が20.4%にも 達したのではないかと考えられる。したがって今回筆者が行った調査では、日本標準産業分類は採用せず、重度

12この点については、先行調査である以下の文献に基づく。

社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター:平成15年度社会就労センター実態 調査報告書、社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター(2004)

全国社会福祉協議会:昭和58年度授産施設・福祉工場実態調査報告書、全国社会福祉協議会(1985)

全国社会福祉協議会:平成4年度授産施設・福祉工場実態調査報告書、全国社会福祉協議会(1994)

13社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター:平成15年度社会就労センター実態 調査報告書、社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター(2004)

14社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター:平成15年度社会就労センター実態 調査報告書、ppl33、社会福祉法人全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会・特定非営利法人日本セルプセンター(2004)

15全国社会福祉協議会:平成4年度授産施設・福祉工場実態調査報告書、pp21、全国社会福祉協議会(1994)

変化率区分 福祉工場

社数 パーセント

特例子会社 社数 パーセント

100未満 13 28.9 11.1

100以上120未満 20.0 15 18.5 120以上200未満 15 33.3 18 22.2

200以上400未満 0.0 7.4

400以上700未満 2.2 4.9

700以上 2.2 2.5

未記入 13.3 27 33.3

合計 45 100.0 81 100.0

前回(平成12年度)調査 平成15年度の調査

産業分野 % 産業分野 %

パルプ・紙・紙加工製造業 7.8% 分類不能 20.4%

医療・その他の繊維製品

製造業 7.7% その他製造業 8.6%

農業 7.2% 食料品製造業 8.2%

食料品製造業 6.7% 農業 7.7%

(12)

障害者の就労分野を列挙した東京都セルプセンターのホームページにある'6項目を採用し、それにあてはまらな

い事業内容については「19.その他」という項目を設け、さらに自由記述欄に書いていただく形とした。

2-4-1福祉工場の業務内容

福祉工場の業務で最も多いのは「依託・サービス(クリーニング、レストラン、宅配給食、公園/庭園管理、

清掃業務、出向補助業務)」で17社(38.6%)である。次が「食品」16社(36.4%)、「その他」13社(29.5%)、

「印刷・製本」7社(15.9%)の11頂となっている。続いて「繊維・縫製」、「製袋・製函」、「リサイクル」がそれ

ぞれ4社(9.1%)と並んでいる。

福祉工場事業内容

8642086420

11111

□i2画

蝋11$iiiiRll;,蕊Wid。

図4福祉工場の事業内容

2-4-2特例子会社の事業内容

次に特例子会社の事業内容である。最も多いのは、「その他」の40社(49.5%)を外すと、「依託・サービス」

が28社(34.6%)である。続いて「印刷・製本」が19社(23.5%)、「`情報処理」が14社(17.3%)、「ダイレクト メール発送代行」が13社(16.0%)、「精密電子機器・電機製品」が11社(13.6%)である。

特例子会社事業内容

5050505050 44332211

□画

轡《'1$iili'iiiiI《ii111lI'夢WKs欝

図5特例子会社の事業内容

2-4-3事業内容についての考察

以上の特徴から次のことが言えると考える。特例子会社は、親会社が従来外部委託していた周辺業務のうち、

障害者ができそうだと思われるものを子会社の業務として集約している背景がある。また知的障害者を雇用する

場合、知的障害者が比較的従事しやすい事業として、一般的には食品や精密機器などの製造業や、依託・サーピ

16束京都セルプセンター「セルプの仕事のご紹介」より http:"wwwbselponjp/tokyo/about/about、html

|圭化Ⅲ 畠品iimAm

13

17

(13)

ス(クリーニング、レストラン、宅配給食、公園/庭園管理、清掃業務、出向補助業務)が挙げられている。よ って福祉工場も特例子会社も以上のような事業内容に集中していると考えられる。

また、この点を福祉工場と特例子会社における障害種別による障害のある従業員の割合に即して考えると、両 者からご提供いただいた障害者従業員個々人の'情報である「個人票」の結果(後述)から、福祉工場においては 知的障害者の雇用割合が多く、特例子会社では身体障害者の雇用割合が最も多い。したがって、福祉工場では知 的障害者が従事しやすい「食品」や「繊維・縫製」といった製造業や依託・サービスが多く、特例子会社では身 体障害者が従事しやすく、さらに親会社の周辺事業で確実に受注できる「印刷・製本」、「`情報処理」、「ダイレク トメール発送代行」が多くなっていると考える。つまり、両者の制度としての創設背景と目的を反映し、さらに 主に雇用している障害者を考慮した事業内容となっているわけである。

これに加えて、両者とも「その他」の割合が非常に大きい理由として、福祉工場も特例子会社も障害者ができ るあらゆる業務を行うという姿勢のため、日本標準産業分類には入りきらない細かい「その他」の事業内容が多 いのではないかと考えられる。

2-5障害のある従業員の状況と考察

次に、福祉工場と特例子会社における障害のある従業員および障害のない(以下健常者)従業員の現状を把握 するため、雇用形態別および障害程度別に調査を行った。福祉工場と特例子会社における従業員数の比較をまと めると、表8のとおりである。両社それぞれにおける実数と、1企業平均従業員数、従業員総数を100とした時の 構成比の値を算出した。このデータに基づき、特例子会社と福祉工場の従業員数の比較を行う。

福祉工場と特例子会社それぞれにおける障害のある従業員には、どのような特性があるといえるのか。それぞ れが対象とする障害者が違うのかどうかについて考察する。

2-5-1重度障害者数について

まず、障害者数について、重度障害者数を中心に考察する。ここで調査票で用いた障害程度について説明して おく。「重度」とは身体障害者等級の1~2級と、知的障害者の療育手帳の「A」を合計したものである。「重度 以外」とは身体障害者等級の「3~6級」であり「軽度の身体障害」である。「軽度」は知的障害者の療育手帳の

「B」である。ただし、精神障害者は現行の障害者雇用促進法ではダブルカウントの対象になっていないため、

精神障害者については「重度」の区分をしなかったことを注記しておく。なお、重度障害者の範囲等については、

毎年出版されている独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構編「障害者雇用ガイドブック」(発行:社団法人雇 用問題研究会)の内容に従った。

表8から、重度障害者数は福祉工場では363人で-企業平均数は8.1人、従業員総数における構成比は18.9%で ある。一方、特例子会社では1056人で一企業平均数は13.0人、従業員総数における構成比は325%である。した がって、重度障害者数は、福祉工場よりも特例子会社の方が多い。

そのうち重度身体障害者数は福祉工場では298人(1企業平均従業員数は6.6人、従業員数における構成比は 15.5%)、重度知的障害者は65人(1企業平均従業員数は1.4人、従業員数における構成比は3.4%)である。特例 子会社の重度身体障害者数は795人(1企業平均従業員数は9.8人、従業員数における構成比は24.5%)、重度知的 障害者数は261人(1企業平均従業員数は3.2人、従業員数における構成比は8.0%)である。重度以外の障害者総 数(精神障害者はのぞく)は、福祉工場では800人(1企業平均従業員数は17.8人、従業員数における構成比は 41.6%)、特例子会社では870人(1企業平均従業員数は10.7人、従業員数における構成比は26.8%)である。こ の割合を見ると、福祉工場では軽度障害者の方が重度障害者よりも多いこと、一方、特例子会社では、軽度障害 者よりも重度障害者が多いが、そのほとんどが重度の身体障害者であることが明らかとなった。

軽度障害者数については、福祉工場が800人(1企業平均従業員数は17.8人、従業員数における構成比は41.6%)、

特例子会社は870人(1企業平均従業員数は10.7人、従業員数における構成比は26.8%)である。また知的障害者 総数は、福祉工場が700人(1企業平均従業員数は15.6人、従業員数における構成比は36.4%)、特例子会社が877 人(企業平均従業員数は108人、従業員数における構成比は27.0%)である。精神障害者数は福祉工場では109 人(1企業平均従業員数は2.4人、従業員数における構成比は5.7%)、特例子会社では32人(1企業平均従業員数

(14)

|土0.4人、従業員数における構成比は1.0%)である。

したがって、以上の結果から以下の4点が言える。第一に、福祉工場が制度化された本来の目的は、障害者福 祉法に基づき、競争的な環境下にある通常の企業での雇用が困難な重度障害者の雇用の場を創出することであっ たが、現在では重度障害者よりも軽度障害者の従業員の方が多くなっていることである。

第二に、特例子会社は、障害者雇用率達成のために大企業を主な対象として制度化されたものであり、重度障 害者を重点的に雇用することは直接的な目的ではなかったが、福祉工場と比較して重度障害者の割合が高いとい うことが明らかになった。それは、重度障害者はダブルカウントできるという障害者雇用率制度の仕組みが大き く影響していると考えられる。また、その重度障害者のうちのほとんどが重度身体障害者であるということであ る。

第三に、重度障害者のうち、福祉工場も特例子会社も重度身体障害者が主な対象となっている一方、知的障害 者数と精神障害者数は福祉工場の方が多いという結果がわかった。

第四に、したがって以上の結果より、福祉工場と特例子会社は対象とする障害者が異なっていることが明らか となった。具体的には、上述のように福祉工場では軽度障害者が相対的に多く、特例子会社では重度障害者の方 が多いことがわかった。

(15)

表8雇用形態別および障害程度別の障害者従業員数

192432542.8401100.01000

一一一■四 一一一一一一 一一一一画■-

----■■-

-妬一■ ̄旧■屈一

7008775610.8364270

10861653241204564508 7611317144035 11019224245759 4009738912020.830.0

59665913.28.1310203

902.0034706

2-5-2雇用形態別従業員数について

雇用形態別の従業員数について、まず正社員の障害者数は福祉工場が1086人で1企業平均従業員数は24.1人、

従業員数における構成比は56.4%である。一方特例子会社では1653人で1企業平均従業員数は20.4人、従業員数

における構成比は50.8%である。よって正社員の障害者数は福祉工場の方が若干多い。

この内訳を見ていくと、正社員の身体障害者総数と重度身体障害者数は特例子会社の方が多く、正社員の身体

障害者(重度以外)数は若干福祉工場が多いものの両者とも大差はない。正社員の知的障害者総数は福祉工場の 方が多いが、正社員の重度知的障害者数は特例子会社の方が多い。また準社員・嘱託とパートタイムの障害者総

数は、両者とも正社員に比べて圧倒的に数が少ない。

総人数(人)

福祉工場 (N=45社)

特例子会社 (N=81社)

1企業平均従業員数(人)

福祉工場 特例子会社

構成比(従業員総数=100)

福祉工場 特例子会社 従業員総数 1924 3251 42.8 40.1 100.0 100.0

正社員総数 1540 2433 34.2 30.0 80.0 74.8

準社員・嘱託総数 128 262 2.8 3.2 6.7 8.1

パートタイム総数 256 556 5.7 6.9 13.3 17.1

健常者総数 652 1293 14.5 16.0 33.9 39.8

障害者総数 1272 1958 28.3 24.2 66.1 60.2

重度障害者総数

(精神は除く) 363 1056 8.1 13.0 18.9 32.5 重度以外の障害者総数

(精神は除く) 800 870 17.8 10.7 41.6 26.8 身体障害者総数 463 1049 10.3 13.0 24.1 32.3

身体障害者

(童度)総数 298 795 6.6 9.8 15.5 24.5 身体障害者

(重度以外)総数 165 254 3.7 3.1 8.6 7.5 知的障害者総数 700 877 15.6 10.8 36.4 27.0 知的障害者

(重度)総数 65 261 1.4 3.2 3.4 8.0

知的障害者

(重度以外)総数 635 616 14.1 7.6 33.0 18.9

精神障害者総数 109 32 2.4 0.4 5.7 1.0

正社員の障害者総数 1086 1653 24.1 20.4 56.4 50.8

準社員・嘱託の障害者総数 76 113 1.7 1.4 4.0 3.5

パートタイムの障害者総数 110 192 2.4 2.4 5.7 5.9

正社員の身体障害者総数 400 973 8.9 12.0 20.8 30.0

正社員の身体障害者

(重度)総数 264 751 5.9 9.3 13.7 23.1 正社員の身体障害者

(その他)総数 136 222 3.0 2.7 7.1 6.8

正社員の知的障害者;総数 596 659 13.2 8.1 31.0 20.3

正社員の知的障害者

(重度)総数 48 206 1.1 2.5 2.5 6.3

正社員の知的障害者

(重度以外)総数 548 453 12.2 5.6 28.5 13.9 正社員の精神障害者総数 90 21 2.0 0.3 4.7 0.6

(16)

以上の結果より、特例子会社でも福祉工場でも、障害のある従業員の多数は正社員であることが明らかとなっ た。

2-5-3障害のある従業員全体の状況

次に、福祉工場と特例子会社への調査票の「障害のある従業員の`性別、障害種別、程度、年齢」で回答いただ いた個人票の結果をまとめる。なお、精神障害者については障害程度を回答項目として定めていないため、独立 して集計した。

また、障害者の従業員の総数は、この個人票における人数と、雇用形態と障害程度別に書いていただいたデー タに基づく表8での人数が一致していない。その理由は、第一に表8のデータは未記入だが、個人票へは記載い ただいている事業所が複数あること、またその反対の事業所も複数あることが挙げられる。第二に、両方に記載 していただいた場合でも、両者の数が一致していない場合があり、その理由は個人情報をご提供いただく障害者 の従業員の方々の意思を尊重し、個人票への記載をしていない場合があることなど、各事業所によって様々な理 由があると考えられる。今回の調査は、あくまでもお答えいただく事業所の皆様および従業員の方々の意思を最 大限尊重した上でご協力いただいているので、その点をここで了承いただきたい。

2-5-3-1障害種別の従業員数について

障害種別の従業員数について、まず注記しておくことがある。個人票で視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内 部障害と具体的な記載がない場合、「身体障害(分類不明)」として集計してある。ここでの「身体障害」は、「身 体障害者であることは明らかであるが、具体的な障害名が不明な者」の意味である。また、重複障害の場合、先 に表記してある障害名が主たる障害である。したがって、身体障害者全体の合計数はこの「身体障害(分類不明)」

を含めた数となる。

(1)福祉工場について

福祉工場における身体障害者全体の数は、視覚障害8名(障害者総数における構成比は0.7%、以下同様)、聴 覚障害33名(2.8%)、肢体不自由196名(16.5%)、内部障害22名(19%)、身体障害(分類不明)167名(14.1%)、

重複障害である肢体不自由・内部3名(0.3%)、肢体不自由・知的障害1名(0.1%)、肢体不自由・内部障害・知 的障害1名(0.1%)の合計431名である。

知的障害者数は637名と知的・聴覚1名、知的・身体7名、知的・精神3名の合計で648名(障害者総数の54.5%)

である。また、精神障害者数は110人(障害者総数の9.3%)である。したがって、障害者数の合計は1189人であ り、福祉工場では知的障害者が最も多いことがわかる。

福祉工場障害別従業員数(、=1079)

00000000 0000000 7654321

凪 196167

,翌H,Ⅲ

311731

:;;il:i1i妻

図6福祉工場の障害種別従業員数

(17)

表9福祉工場の数と雇用されている障害者数

3613121546341.735.3

■旧1693-700369413

■F ̄■391-109278279 1193396Fロ1272370375

※福祉工場の設置数の欄は、厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課:平成17年社会福祉施設等調査(2007)より。データ は平成17年10月現在。

なお、このデータの解釈について、今回の調査は表9より実際の工場数に対し、概ね3割から4割の回答状況 であるが、身体障害者および精神障害者福祉工場からの回答率が若干高くなっているので、データの解釈に当た

ってはこの点に留意する必要がある。

(2)特例子会社について

身体障害者の合計は、視覚障害45人(障害者総数における構成比は2.2%、以下同様)、聴覚障害(言語障害も 含む)198人(9.7%)、肢体不自由435人(21.4%)、内部障害82人(4.0%)、身体障害(分類不明)340人(16.7%)、

視覚・知的1人(0.1%)、聴覚・肢体不自由1人(0.1%)、聴覚・内部障害1人(0.1%)、肢体不自由・視覚3人

(02%)、肢体不自由・内部障害3人(0.2%)、内部障害・視覚1人(0.1%)、内部障害・知的1人(0.1%)で、

合計で1111人である。

知的障害者の合計は、知的障害890人、知的・身体2人で合わせて892人(障害者総数の43.8%)である。

精神障害者は、精神障害が32人、精神障害・肢体不自由の重複障害が1人で合わせて33人(障害者総数の1.6%)

である。

よって全障害者数は2036人である。福祉工場の1189人の約2倍である。また、福祉工場では知的障害者が最も 多いが、特例子会社では身体障害者が最も多いことが明らかになった。また、精神障害者数は特例子会社よりも

福祉工場の方が多いことも明らかになった。

特例子会社障害種別従業員数(、=2003)

00000000000 0000000000 0987654321

皿0

435 340 198

45 82 11133112

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図7特例子会社の障害種別従業員数

福祉工場の設置数 調査回答数 回答率(%)

工場数 雇用障害者数 工場数 雇用障害者数 工場数 雇用障害者数 身体障害者福祉工場 36 1312 15 463 41.7 35.3 知的障害者福祉工場 65 1693 24 700 36.9 41.3 精神障害者福祉工場 18 391 109 27.8 27.9

合計 119 3396 44 1272 37.0 37.5

(18)

特例子会社精神障害の障害種別従業員数(n=33)

50505050 332211

精神障害 精神・肢体不自由

図8特例子会社の精神障害者の障害種別従業員数

2-5-3-2障害程度別従業員数

次に障害程度別従業員数である。身体障害者の重度と知的障害者の重度を合算する理由についてあるが、障害

者雇用促進法における実雇用率の算定において重度障害者(身体及び知的のみ)はダブルカウントの対象になる。

したがってこの意味で、「ダブルカウントの対象となりうる障害者の数」と考えれば合理性があると考える。ただ

し、精神障害者は現行法ではダブルカウントの対象になっていないため、精神障害者については「重度」の区分 をしなかったことを注記しておく。

(1)福祉工場について

福祉工場での「重度」の障害者数は328人(30.4%)で、「重度以外(身体障害者等級3~6級)」が711人(65.9%)、

「軽度(知的障害)」が39人(3.6%)である。したがって、福祉工場では重度以外の障害者が最も多い。

福祉エ場障害程度別従業員数(n=1078)

000000000 00000000 87654321

711

328

39

重度 重度以外 軽度

図9福祉工場の障害程度別従業員数

(2)特例子会社について

特例子会社の障害程度別従業員数は、「重度」が最も多く1062人(53.0%)である。「重度以外(身体障害者等 級3~6級)は818人(40.8%)、「軽度(知的障害)」が112人(5.6%)である。特例子会社で重度障害者の割合 が多い理由として、障害者雇用促進法に基づき重度障害者はダブルカウントできることが影響していると思われ る。

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