2?2 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (159)
H刑 事 責 任
刑 法447条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 重 要 な捕 虜 も し くは多 数 の捕 虜 を許 可 な く逃 走 させ ,ま た はそ の他 の情状 が 重 大 な と きは,5年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
2捕 虜 虐 待 罪 〈虐 待 俘 虜 罪 〉
捕 虜 虐待 罪 とは,捕 虜 を虐 待 して,そ の 情状 が 劣 悪 な行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 客 体 は,捕 虜 の 管 理秩 序 で あ る。
(2)本 罪 の 主 観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 はs捕 虜 を虐待 す る行 為 で あ る。 虐待 の対 象 で あ る 「捕 虜 」とは,作 戦 に お い て我 軍 に捕 ら え られ た 敵 方 の 武 装 人員 そ の他 の武 装 部 隊 に服 務 す る人 員 を い う。 「虐 待 」とは ,殴 打 罵 倒 ・体 罰 ・苦 痛 酷 刑 の付 与 な ど非 人道 的 な処 遇 をい う。
さ ら に,本 罪 が 成立 す る に は,そ の情 状 が劣 悪 で な け れ ば な らない 。 皿 刑 事 責 任
刑 法448条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲役 に処 す る 。
3戦 時住 民殺 害 略 奪 罪 〈哉 酎 残 害 居 民 、掠 存 居 民財 物 罪 〉
戦 時 住 民殺 害略 奪 罪 とは,戦 時 に軍 事 行 動 地 区 にお い て,無 事 の住 民 を 殺 害 し,ま た は無 肇 の 住 民 か ら財 物 を略 奪 す る行 為 をい う。
刑 法446条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 そ の 情 状 が 重 大 な と き は,5年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 そ の 情 状 が特 に重 大 な と きは,死 刑,無 期 懲 役 ま たは10年 以 上 の 有 期 懲 役 に処 す る。
(160) 何 乗松 編 著 ・刑 法 教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 271
りなが ら,重 傷 ・重 病 の 軍 人 に対 し救護 ・治 療 を行 わ ない 行 為 で あ る。本 罪 の客 観 面 は,相 互 に関連 ・作 用 す る次 の三 要件 か らな る。① 行 為 時 が 戦 時 で あ る こ と,② 行 為 対 象 が 重 傷 ・重病 の 軍 人 で あ る こ と,す な わ ち,傷 病 軍 人 の負 傷 の程 度 ・疾 病 の 症状 が 重 大 で,直 ち に救 護 ・治療 しな けれ ば 極 め て 重 大 な結 果 が 発 生 す る こ と,③ 行 為 形 態 が不 作 為 で あ る こ とで あ る。 行 為 者 が そ の特殊 身分 お よび法 律 規 定 ゆ え に,重 傷 ・重 病 の軍 人 を救 護 ・治療 す る職 務 を有 し,か つ救 護 ・治 療 し うる条件 下 にあ りなが ら,自
己 の 職 務 履 行 を拒 否 す る こ とで あ る 。 これ ら三 要件 を充 足 した と きにの み,本 罪 の客 観 面 が構 成 され る。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特殊 構成 はs「 傷 病 軍 人 の重 大 な身体 障 害 も し くは死 亡 を発 生 さ せ,ま た は そ の 他 の情 状 が重 大 な」 犯 罪構成 で あ る。
皿 刑 事 責 任
刑 法445条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。傷 病 軍 人 の重 大 な身体 障 害 も し くは死 亡 を発 生 させ,ま た はそ の他
の情 状 が重 大 な と きは,5年 以 上10年 以 下 の有 期懲 役 に処 す る。
第9節 捕虜 および住民 を害す る罪
1捕 虜釈 放 罪 〈私 放 俘 虜 罪 〉
捕 虜 釈 放 罪 とは,許 可 な く捕 虜 を逃 走 させ る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の主 観 面 は,故 意 で あ る。
(2)本 罪 の客 観 面 は,許 可 な く捕 虜 を逃 走 させ る行 為 であ る。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊構成 は,「 重 要 な捕 虜 も しくは多数 の捕 虜 を許可 な く逃 走 さ せ,ま た は そ の他 の 情 状 が重 大 な」 犯 罪 構 成 で あ る。
2?0 神 奈 川 法学 第34巻 第3号2002年 (lfil}
第8節 戦時の救護秩序 を害 す る罪
1傷 病 軍 人 遺 棄 罪 〈遺 奔 儒 病 軍人 罪 〉
傷 病 軍 人 遺棄 罪 とは,戦 場 にお い て,傷 病 軍 人 を遺 棄 して ,そ の 情 状 が 劣 悪 な行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の客 体 は,戦 場 の救 護 秩 序 で あ る。
(2)本 罪 の 主 観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の 客 観 面 は,戦 場 で傷 病 軍 人 を遺棄 す る行 為 で あ る。 「遺 棄 」とは ・傷 病 軍 人 を救 護 し うる条 件 下 にあ りなが ら救 護 せ ず,そ の ま ま 放 置 す る行 為 をい う。 遺 棄 の対 象 は,傷 病 軍 人す な わち負 傷 ・疾病 の た め
に救 護 を要 す る者 で あ る。
さ らに ・劣 悪 な情 状 が な け れ ば ,本 罪 は 成 立 しな い。 「劣 悪 な情 状 」 と は,① 反 復 的 に また は多数 の傷 病 軍 人 を遺 棄 した場 合,② 作 戦 指 揮 官 ・極 秘 保持 者 を遺 棄 した場 合,③ 傷 病 軍 人 を遺 棄 して死亡 ・身 体 障 害 を発 生 さ せ た場 合,④ 劣 悪 な影 響 を発 生 させ た 場合 等 をい う。
II刑 事 責 任
刑 法444条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。
2戦 時 傷 病 軍 人 救 護 拒 否 罪 〈哉 肘 拒 不 救 治 傷 病 軍 人 罪 〉
戦 時 傷 病 軍 人 救 護拒 否 罪 とは,戦 時 にお い て,救 護 ・治 療 の職 務 にあ る 者 が,救 護 ・治療 しうる条 件 下 にあ りなが ら,重 傷 ・重 病 の軍 人 に対 し救 護 ・治 療 を行 わ ない行 為 を い う。
1犯 罪構 成 1.基 本 犯罪 構 成
(1)本 罪 の 主 体 は,現 に救 護 ・治 療 を職 責 とす る 医務 員 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 はs戦 時 に お い て,救 護 ・治 療 しう る条 件 下 に あ
X162} 何 乗 松 編 著 ・刑 法 教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 269
器 装 備 の 重 大 な損 失 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 は,「 特 に重 大 な結 果 発 生 」 の犯 罪 構成 で あ る。
II定 罪
本 罪 と戦場 逃 亡 罪 との 限界 両 罪 は,主 に次 の点 で 区 別 され る・① 主 体 が 部 分 的 に異 な る。 本 罪 の 主 体 は指 揮 者 また は当 番 ・当 直 員 に 限定 され るが,後 罪 の主 体 は 軍 人一般 で あ る。② 客 観 面 が 異 な る。 本罪 の行 為 は軍 事 職 務 の放棄 で あ るが,後 罪 の行 為 は戦場 か らの逃 亡 で あ る。③ 結 果 の要 件 が異 な る。本 罪 の成 立 には重 大 な結 果発 生 が必 要 で あ るが,後 罪 はそ の 要 件 が な く と も成 立 す る。
皿 刑 事責 任
刑 法425条;本 罪 を犯 した者 はs3年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 特 に重 大 な結 果 を発 生 させ た と きは,3年 以 上7年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 戦 時 に本 罪 を犯 した と きは,5年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
2職 務 違 反 指 令 罪 〈指 使 部 属 遠 反取 責 罪 〉
職 務 違 反指 令 罪 とは,職 権 を濫 用 して,部 下 に職 務 違 反 活動 を行 う よ う 指 令 し,重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 をい う。
刑 法427条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が 特 に重 大 な ときは,5年 以 上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。
3部 下 虐 待 罪 〈虐待 部 署 罪 〉
部 下 虐 待 罪 とは,職 権 を濫 用 して,部 下 を虐 待 した 情 状 が 重 大 で あ っ て,重 傷 そ の他 の重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 をい う。
刑 法443条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 人 を死 亡 させ た と きは,5年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
268 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 {163}
で あ る。 「兵 役 法 規 の違 反」 とは ,公 民 の 兵役 履 行 に関 す る兵 役 法 の規 定 に違 反 す る こ とをい う。 「部 隊 か らの逃 亡 」 とは,行 為 者 が,兵 役 服 務 免 脱 の た め 許 可 な く部 隊 か ら離 脱 す る行 為 をい う。
部 隊 逃 亡 行 為 は,そ の情 状 が 重 大 な と きにの み本 罪 を構 成 す る。 「重 大 な情 状 」とは ・① 武 器 を携 帯 して 部 隊 か ら逃 亡 した場 合,② 車 両 ・船 舶 を 操 縦 して部 隊 か ら逃 亡 した場 合,③ 他 人 を組 織 し,共 同 して部 隊 か ら逃 亡
した 場 合,④ 規 制 効 果 な く反復 的 に部 隊 か ら逃 亡 した場 合 等 をい う。 n刑 事 責 任
刑 法435条;本 罪 を犯 した者 はf3年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る・ 戦 時 に本 罪 を犯 した と きは,3年 以 上7年 以 下 の有期 懲 役 に処 す る。
第7節 軍人 の涜職の罪
1軍 事職 務塀 怠 罪 〈檀 寓 、玩 忽 軍 事取 守 罪 〉
軍 事 職 務解 怠 罪 とは,指 揮 官 また は 当番 ・当 直 員 が ,軍 事 職 務 を放 棄 ま た は僻 怠 して,過 失 に よ り重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 をい う。
1犯 罪構 成 1.基 本 犯罪 構 成
(1)本 罪 の主 体 は,指 揮 官 また は当 番 ・当 直 員 で あ る。 本 罪 は,軍 人職 責 違 反 罪 の うち,特 殊 主 体 に よる罪 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,過 失 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 は,軍 事 職 務 の放 棄 ま た は慨 怠 に よ って ,重 大 な 結 果 を発 生 させ る行 為 で あ る。 「軍事 職務 の 放棄 」 とは ,行 為 者 が 自己 の 指 揮 ま た は当 番 ・当 直 にか か る任 地 か ら許 可 な く離 脱 す る こ と をい う。
他 方,「 軍事 職 務 の解 怠 」 とは,行 為 者 が 著 し く職 責 を禦 怠 して ,自 己 の 職 務 を履 行 せず また は真 摯 に履 行 しな い こ とをい う。本 罪 は,結 果犯 で あ る の で,「 重 大 な結 果 」 が なけ れ ば成 立 しな い。 「重 大 な結 果」 とは ,戦 機 を誤 らせ て軍 事 行動 を妨 害 した場 合r事 故 を惹 起 して人 の死 傷 または 武
(164) 何 乗 松 編 著 ・刑 法教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 267
また は当番 ・当直 員 の職 務執 行 を妨 害 した場 合,④ 職務 執 行 妨 害 に よ り重 大 な結 果 を発 生 させ た場 合等 をい う。他 方,「 そ の他 の特 に重 大 な情 状 」
とは,① 武器 を使 用 して職 務 執 行 を妨 害 した多 衆 の首 謀 者 で あ る場 合 ・② 緊急 時 に重 要 な職 責 を担 う指 揮 官 ま た は当 番 ・当直 員 の 職 務 執 行 を妨 害
した場 合,③ 職 務 執行 妨 害 に よ り特 に重 大 な結 果 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
皿 定 罪
1.本 罪 と公 務 妨 害 罪(刑 法277条)と の法 条競 合 両 罪 は法 条競 合 の 関係 に あ るの で,軍 人 に よる職 務執 行 妨 害 の対象 が軍 隊 の指 揮 官 また は 当 番 ・当直 員 の職務 執 行 で あ る ときは,本 条が 優先 適 用 され本 罪 と して処 断
され る。
2.本 罪 と軍 事 職 務 執 行 妨 害 罪 との 限界 両 罪 は,主 に次 の点 で 区別 さ れ る。① 犯 罪 の客 体 が 部 分 的 に異 な る 。本 罪 の 客 体 は指 揮 ・当番 ・当 直 の正常 な秩 序 で あ るが,後 罪 の 客体 は軍 人 の職 務 執行 活 動 で あ る。② 行 為 対 象 が 異 な る。 本 罪 の対 象 は 現 に職 務 執 行 中 の指 揮 官 また は 当番 ・当 直 員 で あ るが,後 罪 の対 象 は職 務 を執行 す る軍 人 で あ る・③ 犯 罪 主体 が異 な
る。 本 罪 の 主体 は軍 人 で あ るが,後 罪 の 主体 は 一般 主体 で あ る。
皿 刑 事責 任
刑 法426条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期懲 役 ま た は拘 留 に処 す る。 人 の重傷 ・死 亡 を発 生 させ た と き,ま た はそ の他 の情 状 が特 に重 大 な と きは,死 刑 また は無 期 懲役 に処 す る。 戦 時 に本 罪 を犯 した ときは ・重
く処 罰 す る。
2部 隊 逃 亡 罪 〈逃 禽 部 臥 罪 〉
部 隊逃 亡 罪 とは,兵 役 法 規 に違 反 して,部 隊 か ら逃 亡 し,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
1犯 罪構 成
(1)本 罪 の 主観 面 は,故 意 お よび兵役 免 脱 を継続 す る 目的 で あ る。
(2)本 罪 の客 観 面 は,兵 役 法規 に違 反 して,部 隊 か ら逃 亡 す る行 為
266 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (165)
6武 器 装 備 遺 失 罪 〈遺 失武 器 装 各 罪 〉
武器 装 備 遺 失 罪 とは,武 器 装備 を遺 失 して,即 時 の報 告 をせ ず ,ま た は そ の他 の 情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
刑 法441条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。
7軍 用 地 不 法 販 売罪 〈檀 自 出嚢 、装 辻 軍 臥 房地 声 罪 〉
軍 用 地 不 法 販売 罪 とは,軍 隊用 地 の 管理 規 定 に違 反 して,軍 隊 用 地 を権 限 な く発 売 また は 譲 渡 し,そ の情 状 が 重大 な行 為 をい う。
刑 法442条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が特 に重 大 な と きは,3年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る 。
第6節 部隊 の管理秩 序 を害 す る罪
1軍 事職 務 執 行 妨 害 罪 〈阻 碍 抗 行 軍 事 取 多 罪 〉
軍 事 職 務 執 行 妨 害 罪 とは,暴 力 ま た は脅 迫 を用 い て,指 揮 官 ま た は 当 番 ・当 直 員 の職 務 執行 を妨 害 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪構 成
(1)本 罪 の 客 体 は,指 揮 ・当番 ・当直 の 秩 序 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の客観 面 は,暴 力 ・脅 迫 の方 法 に よ り指 揮 官 また は 当番 ・ 当直 員 の 職 務執 行 を妨 害 す る行 為 で あ る 。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 に は,「 情 状 が 重 大 な」犯 罪構 成,「 人 の重 傷 ・死 亡 を 発 生 させ る」 犯 罪構 成s「 そ の他 の情 状 が 特 に重 大 な」 犯 罪構 成 が あ る 。
この 「重 大 な情 状 」 とは,① 武 器 を使 用 して職務 執 行 を妨 害 した場 合 t② 職 務執 行 を妨 害 した 多衆 の首 謀 者 で あ る場 合,③ 重 要 な職 責 を担 う指揮 官
(166) 何 乗 松 編 著 ・ 刑 法 教 科 書(各 論 編30章 一434章) 265
自己管 理 物 の窃 取 が あ る。 そ れ ゆ え,軍 人が 職 務 上 の 便益 利 用 に よ り,自 己 の取 扱 ・管 理 にかか る軍 用物 資 を窃取 す る と きは,汚 職横 領 罪 の 基本 的 特 徴 を備 え るの で,よ り刑 の 重 い刑 法382条 の よ り処 断 され る。
2.軍 人が 銃 器 ・弾 薬 ・爆発 物 を窃 取 ・奪取 した と きの法 適 用 の 問題 例 え ば,軍 人が 部 隊 の武 器 装 備 ・軍 用物 資 を複 数 種 窃 取 ・奪 取 して,こ れ
に銃 器 ・弾 薬 ・爆 発 物 が 含 まれ てい た場 合 で あ る。 これ につ い て,刑 法 は,軍 人 に よる部 隊 の銃 器 ・弾 薬 ・爆発 物 の窃 取 ・奪 取 を本 罪 と して処 断 しな い,と 明 定 してい る。 そ れ ゆ え,銃 器 弾 薬 爆発 物 窃盗 奪 取 罪 と して処 断 され る。
皿 刑 事 責 任
刑 法438条1項;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の有期 懲 役 ま た は拘 留 に処 す る 。 そ の情 状 が重 大 な と きはr5年 以 上10年 以 下 の有 期懲 役 に処 す る。 そ の情 状 が特 に重 大 な と きはs死 刑,無 期懲 役 また は10年 以 上 の 有 期懲 役 に処 す る。
4武 器 装 備不 法 販 売 罪 〈非 法 出嚢 、装 辻武 器 装 各 罪 〉
武 器 装 備不 法 販 売 罪 とは,他 人 に部 隊 の武器 装備 を不 法 に販 売 また は譲 渡 す る行 為 をい う。
刑 法439条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 大量 の武 器 装備 を販 売 ・譲 渡 し,ま た は そ の他 の情 状 が 特 に重 大 な と き は,死 刑,無 期 懲 役 ま た は10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
5武 器 装 備 遺 棄 罪 〈遺 奔 武 器 装 各 罪 〉
武 器 装 備 遺 棄 罪 と は,命 令 に違 反 して,武 器 装 備 を遺 棄 す る行 為 をい う。
刑 法440条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 ま た は拘 留 に処 す る。 重 要 な武 器 装備 も し くは大 量 の武 器 装備 を遺 棄 した とき,ま た は そ の他 の情 状 が 特 に重 大 な と きは,5年 以上 の有期 懲 役 に処 す る。
264 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 {167}
傷 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
II刑 事 責 任
刑 法437条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。特 に重 大 な結 果 を発 生 させ た と きは ,3年 以上7年 以 下 の 有 期 懲 役 に処 す る。
3武 装 軍 用 物 資盗 奪 取 罪 〈盗 窃 、拾 寺 武 器 装 畜 、軍 用 物 資 罪 〉 武 装 軍 用物 資 盗 奪 取 罪 とは,不 法 占有 〔不 法 領得 〕の 目的 を もっ て ,部 隊 の 武器 装 備 も し くは軍 用 物資 を秘 密 裏 に窃 取 し,ま た は公 然 と奪 取 す る 行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の主 観 面 は,故 意 お よび武 器 装 備 ・軍 用物 資 の不 法 占 有 の 目的 で あ る。
(2)本 罪 の 客 観 面 は,部 隊 の 武 器 装 備 ・軍 用 物 資 を秘 密 裏 に窃 取 しsま た は他 人 の不 備 に乗 じて公 然 と奪 取 す る行 為 で あ る。 この 「軍 用 物 資 」とは,軍 事 的使 用 に供 され る寝 具 衣 服 ・食 料 ・燃 料 ・薬 品 ・建 材 等 , 武 器 装 備 以 外 の もの を い う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 には,「 重 大 な情状 」 の 犯 罪 構 成 と 「特 に重 大 な情 状 」 の犯 罪 構 成 とが あ る 。 この 「重 大 な情 状 」 とは ,① 重 要 な武 器 装 備 を窃 取 ・奪 取 した場 合,② 大 量 の武 器 装 備 ・軍 用 物 資 を窃 取 ・奪 取 した 場 合 ,
③ 反 復 的 に武 器 装 備 ・軍 用物 資 の 窃 取 ・奪 取 を行 った場 合 等 をい う。 他 方,「 特 に重 大 な情 状 」 とは,① 重 要 な武 器 装 備 を大 量 に窃 取 ・奪 取 した 場 合,② 窃 取 ・奪 取 した武 器 装 備 ・軍 用 物 資 の量 が 特 に膨 大 な場 合 ,③ 戦 時 に武 器 装備 ・軍 用物 資 を窃 取 ・奪 取 して,軍 事 利益 を著 し く害 した場 合 等 をい う。
皿 定 罪
1・ 本 罪 と汚 職横 領 罪 との 区別 汚職 横 領 罪 の行 為 形 態 の 一 つ と して,
(168) 何 乗 松編 著 ・刑 法 教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 263
則 違 反 が あ って も,本 罪 と して処 断 され る。 これ に対 して,交 通運 送規 則 違 反 のみ に よっ て重大 事 故 を惹 起 して,人 の重 傷 ・死亡 また は公 私 の財 産 の 重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは,後 罪 と して処 断 され る。
皿 刑 事 責 任
刑 法436条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 下 の有期 懲 役 ま た は拘 留 に処 す る。 そ の結 果 が特 に重 大 な ときは,3年 以上7年 以 下 の有期 懲 役 に処 す る。
2武 装 配 分 用 途不 法 改 変 罪 〈檀 自改 変武 器 装 各 編 配 用 途 罪 〉
武 装 配 分 用 途 不法 改 変 罪 とは,武 器 装 備 管 理 規 定 に違 反 して,武 器装 備 の配 分 または用 途 を権 限 な く改 変 し,過 失 に よ り重 大 な結 果 を発 生 させ る 行 為 をい う。
1犯 罪構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の客 体 は,武 器 装 備 の 管 理 制 度 で あ る 。 (2)本 罪 の 主観 面 は,過 失 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 は,武 器 装 備 の管 理 規 定 に違 反 して武 器 装 備 の配 分 ま た は用途 を権 限 な く改 変 し,重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 で あ る。 こ の 「武器 装 備 管 理 規 定 」とは,武 器 装 備 の使 用 権 限 ・配 分 用 途 ・使 用 範 囲 等 の 管 理 に関 す る規 定 をい う。 「武 器 装 備 の 配 分 また は用 途 の 無 権 限 改 変 」とは,権 限 あ る機 関 の 許 可 を得 ない で,一 定 用 途 の武 器 装 備 を他 の用 途 に権 限 な く流 用 す る こ とをい う。 本 罪 は結 果 犯 で あ る ので,重 大 な結 果 が 発 生 しなけ れ ば成 立 しな い 。 「重 大 な結 果 」 とは,① 主 要 な武 器 装 備 を 殿 損 した場 合,② 武 器装 備 が 違法 な犯 罪 活 動 に用 い られ た場 合,③ 人 の 死 傷 また は財 産 の重 大 な損 失 が発 生 した場 合 等 をい う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 は,「 特 に重 大 な結 果発 生 」の 犯 罪構成 で あ る。 この 「特 に重 大 な結 果」とは,重 要 な武 器 装 備 を大量 に殿 損 した場 合,多 数 人 の 死
262 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (lfi9}
(1)本 罪 の客 体 は,武 器 装 備 の使 用 制 度 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,過 失 で あ る。 この過 失 は,行 為 者 が 惹起 した 事 故 に対 す る もの で あ り,そ の軽 率 不 注 意 ・過信 に 由来 す る 。 これ に対
して,武 器 装 備 使 用 規 定 の 違 反行 為 自体 は,故 意 に犯 され る。
(3)本 罪 の客 観 面 は,武 器 装 備 使 用 規 定 に情 状 重 大 な違 反 を して, 事 故 を惹 起 し,人 の重傷 ・死 亡 ・そ の他 の重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 で あ る。 これ は,次 の三 要件 か らな る。 第一 に,武 器 装 備 使 用 規 定 に違 反 す る行 為 が 要件 とな る。 この 点 がs本 罪 成 立 の前 提 条 件 とな る。 第 二 に,武 器 装備 使 用 規 定 違 反 の情 状 が重 大 で な け れ ば な らな い。① 武 器 装 備 の使 用 操 作過 程 で故 意 に規 定 また は操 作 手 順 に違反 した場 合s② 粗 雑 な取扱 ま た は著 しい責 任解 怠 が あ る場 合,③ 許 可 な く武 器 装 備 を使 用 ・操 作 した場 合 等 が,こ れ に該 当 す る。第 三 に,重 大 事 故 に よ り,人 の重 傷 ・死 亡 また はそ の他 の重 大 な結 果 を発 生 させ ね ば な らな い。例 えば,① 爆 発 ・火災 ・ 大 規 模 な汚 染 を発 生 させ た場 合t② 重 要 な武 器 装 備 を使 用 不 能 に した場 合,③ 公 共 の 財 物 の重 大 な損 失 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 は,「 特 に重 大 な結 果発 生」の犯 罪構 成 で あ る。 この 「特 に重 大 な結 果 」とは,重 要 な武 器 装備 の殿 損,多 数 人 の 死 傷,国 家財 産 の 特 に重 大 な損 失 等 をい う。
II定 罪
1.本 罪 と偶 発 事 件 との限 界 両 者 の結 果 は,同 じで あ る。 しか し,後 者 に は,本 罪 の客 観 面 ・主観 面 の特徴 となる武 器 装備 使 用規 定 違 反 お よび 過 失 が 欠 け る。 この点 で,両 者 は 区 別 され る。
2.本 罪 と交 通事 故 罪(刑 法133条)と の 限 界 軍 人 が 軍 用 装備 の あ る 軍 用 車 両 を運 転 中 に事 故 を惹 起 した と き,本 罪 ・後 罪 の い ず れ が 成 立 す る か 。 中国 人 民 解 放 軍 軍 事 法 院 の 「軍 人 職 責 違 反 事 件 の審 理 に お け る若 干 の 具体 的 問題 の処 理 に関 す る意 見 」(1988年10月19日)に よれ ば,軍 人 が軍 用 車 両 を運 転 して軍 用 装 備 使 用 操 作 規 定 に対 す る情 状 重 大 な違 反 に よ って,人 の 重傷 ・死 亡 そ の他 の重 大 結 果 を発 生 させ,同 時 に交 通運 送規
(170) 何 乗松 編 著 ・刑 法教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 261
な結 果 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の 特 殊 構成 は,「 情 状 が 重 大 な」犯 罪 構 成 で あ る。 この 「特 に重 大 な情状 」とは,一 般 に,① 極 め て重 要 な軍事 秘 密 を漏 泄 した場 合,② 秘 密 漏 泄 に よ り戦 闘 ・戦役 に重 大 な損 失 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
II刑 事 責 任
刑 法432条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 し,そ の情 状 が 特 に重 大 な と きは,5年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る 。戦 時 に本 罪 を犯 した と きは,5年 以 上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 し, そ の情 状 が 特 に重 大 な と きは,無 期 懲 役 また は10年 以 上 の 有 期懲 役 に処 す る。
3過 失 軍 事秘 密 漏 泄 罪 〈道 失 泄 漏 軍 事 秘 密 罪 〉
過 失 軍 事 秘 密 漏 泄 罪 とは,秘 密 に関 す る国家 法 規 に違 反 して,過 失 に よ り軍 事 秘 密 を漏 泄 し,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
刑 法432条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の 有 期 懲 役 また は拘 留 に処 し,そ の情 状 が特 に重 大 な と きは,5年 以 上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 戦 時 に本 罪 を犯 した と きは,5年 以上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 し, そ の情 状 が 特 に重 大 な と きは,無 期懲 役 また は10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
第5節 部隊 の戦力の物的基礎 を害す る罪
1武 器 装 備 事 故 罪 〈武 器 装 各 肇 事 罪 〉
武 器 装備 事故 罪 とは,武 器 装 備 使 用 規 定 に情 状 重大 な違 反 を して,過 失 に よ り事 故 を惹起 し,人 の重傷 ・死 亡 また はそ の他 の 重大 な結 果 を発 生 さ せ る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪構 成
260 神 奈 川 法 学 第34巻 第3丹2002年 (i71)
画 お よび組 織 編 成 番 号,部 隊動 員 の状 況,武 器 装 備 ・後 方 勤務 の保 障 能力 等 が あ る。行 為 形 態 は,窃 取 ・探 索 ・買 収 で あ る。
2.特 殊 犯 罪構 成
本 罪 の 特 殊 構 成 に は,「 情 状 が 重 大 な」犯 罪 構 成 お よ び 「情状 が 特 に重 大 な」犯 罪 構 成 とが あ る。 この 「重 大 な情 状 」 とは,① 職権 を利 用 して軍 事 秘 密 を取得 した場 合,② 作 戦 部 門 ・機 密 部 門等 の重 要 部 門の軍 事 秘 密 を 取 得 した場 合,③ 軍 事 秘密 不 法 取得 の 手段 が特 に劣 悪 な場 合 等 をい う。他 方,「 特 に重 大 な情状 」 とは,① 作 戦 部 門 ・機 密 部 門等 の重 要 部 門 の重 要 な秘 密 また は大 量 の秘 密 を取得 した場 合,② 不 法 に取得 した重 要 な軍事 秘 密 また は大 量 の軍 事秘 密 を漏泄 した場 合,③ 軍 事 秘密 の不 法 取得 に よ り特 に重 大 な結 果 を発 生 させ た場 合 等 をい う。
II刑 事 責 任
刑 法431条1項;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の 有 期懲 役 に処 す る。
そ の情 状 が重 大 な と きは,5年 以上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 そ の 情 状 が特 に重 大 な と きは,10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
2軍 事 秘 密 漏 泄 罪 〈故 意 泄 漏 軍 事 秘 密 罪 〉
軍事 秘 密漏 泄 罪 とは,国 家 秘 密 法規 に違 反 して,故 意 に軍 事 秘 密 を漏 泄 し,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(2)本 罪 の 客観 面 は,国 家 秘 密 法 規 に違 反 して,故 意 に軍 事 秘 密 を 漏 泄 す る行 為 で あ る。 この 「国家 秘 密 法 規 」とは,主 に 国家 秘 密 保 護 法 お よ び中 国 人 民 解 放 軍 秘 密 保 持 条例 等 をい う。 「漏 泄 」 とは,口 頭 ・書 面 等 に よ っ て,秘 密 を認 識 して は な らない 者 に認 識 させ る行 為 を い う。
本 条 に よれ ば,「 情 状 が 重大 」で な け れ ば本 罪 は成 立 しな い。 この 「重 大 な情 状 」とは,① 大 量 の軍 事 秘 密 を漏 泄 した場 合,② 重 要 な 軍事 秘 密 を 漏 泄 した場 合,③ 秘密 漏 泄 の手 段 が 極 め て劣 悪 な場 合,④ 漏泄 に よ り重 大
(172) 何 乗 松 編 著 ・刑 法 教 科書(各 論 編30章 〜34章) 259
7戦 時 軍 人 動 揺 罪 〈哉 士 軍 人造 瑠 惑 森 罪 〉
戦 時 軍 人 動 揺 罪 とは,戦 時 にお い て,軍 人 が,流 言 飛 語 に よ って軍 人 の 心 情 を惑 わ し,軍 隊 の 士 気 を動 揺 させ る行 為 をい う。
刑 法433条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 下 の有期 懲 役 に処 し,そ の情 状 が重 大 な と きは,3年 以 上10年 以 下 の 有期 懲役 に処 す る。 敵 方 と結 託 して本 罪 を犯 した と きは,無 期 懲 役 また は10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 し, そ の情 状 が 特 に重 大 な と きは,死 刑 に処 す る。
8戦 時 自傷 罪 〈哉 吋 自務 罪 〉
戦 時 自傷 罪 とは,戦 時 にお い て,自 己の 身体 を傷 害 し,軍 事 義 務 を免 脱 す る行 為 をい う。
刑 法434条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 そ の 情 状 が 重 大 な と きは,3年 以上7年 以 下 の 有 期懲 役 に処 す る。
第4節 軍 事秘 密 を害す る罪
1軍 事 秘 密不 法 取 得 罪 〈非 法 荻 取 卑 事 秘 密 罪 〉
軍 事 秘 密 不 法 取 得 罪 とは,窃 取,探 索 ま た は買 収 の方 法 を用 い て,軍 事 秘 密 を不 法 に取得 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の客 体 は,軍 事 秘 密 の 安全 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 は,窃 取 ・探 索 ・買 収 の方 法 を用 い てr軍 事 秘 密 を不法 に取 得 す る行 為 で あ る。 本 罪 の対 象 は,軍 事 秘 密 で あ る。 「軍 事 秘 密 」とは,国 防 の安全 ・軍 事利 益 に直接 関 わ る事項 の うち,一 定期 間 に一 定 範 囲 の者 のみ が そ の認 識 を許 され,外 部へ の公 開が 禁 じ られ る もの をい う。 国家 秘 密 保護 法 お よび秘密 保 持 条 例 に よれ ば,軍 事 秘 密 に含 まれ る主 要 な もの として,国 防 ・軍 事行 動 に関す る戦略 方 針,部 署 ・軍 隊 の建 設 計
25S 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 {1?3}
5命 令 違 反作 戦 消 極 罪 〈達 舎 作 哉 消 板 畢 〉
命 令 違 反 作 戦 消 極 罪 とは,指 揮 官 が,戦 闘 にお い て,畏 縮 し,命 令 に違 背 し,作 戦 に消 極 的 に な ってr過 失 に よ り重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 を い う。
1犯 罪構 成 1.基 本 犯罪 構 成
(1)本 罪 の 主体 は,特 殊 主 体 す な わ ち指揮 ・管 理 の職 責 を負 う指i揮 官 で あ る。
(2)本 罪 の 主 観 面 は,過 失 で あ る。
(3)本 罪 の 客観 面 は,戦 闘 で畏 縮 し,命 令 に違 背 し,作 戦 に消極 的 に な って,重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 で あ る。 本 罪 は,作 戦 の 過程 で の み 成 立 しうる。 「命 令 違 背 」 とは ,上 官 の作 戦 命 令 に違 反 して これ を執 行
しな い こ とを い う。 「戦 闘 で 畏縮 す る」 とは,作 戦 の 過 程 で 戦 闘 に怯 み前 進 す る気 力 を失 う こ と をい う。 「作 戦 に消極 的 に な る」 とは,作 戦 の過 程 で進 取 の精 神 を失 い,戦 闘 に消極 ・怠惰 に な る行 為 をい う。 本 罪 は,結 果 犯 で あ るの で,重 大 な結 果 が発 生 した と きの み に成 立 す る。
2.特 殊 犯罪 構 成
本 罪 の 特 殊 構 成 は,「 戦 闘 ・戦役 の重 大 な損 失 発 生 」 の 犯 罪 構 成 で あ る。
皿 刑 事 責 任
刑 法428条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 戦 闘 ・ 戦 役 の重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは,死 刑,無 期 懲 役 また は10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
6友 軍 救 援拒 否 罪 〈拒 不 救 援 友 郭部 臥 罪 〉
友 軍救 援 拒 否 罪 とは,指 揮 官 が,戦 場 に お い て,危 機 に瀕 した友 軍 部 隊 か らの救援 要 請 を知 りなが ら,友 軍 部 隊 を救 援 しう るの に救 援 せ ず ,重 大 な損 失 を発 生 させ る行 為 を い う。
刑 法429条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。
(174} 何 乗i松編 著 ・刑 法教 科 書(各 論編30章 〜34章) 257
情 報 を い う。例 えば,敵 軍 お よび我 軍 の 兵 力 ・装 備 ・部 署 等,戦 闘 地域 の 自然 ・地理 に関 す る情 報 が あ る。本 罪 の 行為 形 態 は,軍 情 の隠 匿 また は虚 偽 報 告 で あ る 。 「隠 匿」 とは,報 告 す べ き真 実 を隠蔽 して 報 告 しない こ と
をい う。 「虚 偽 報 告 」 とは,軍 事 情 報 につ き真 実 を偽 り歪 め て上 官 に報 告 し,上 官 を欺 岡す る行 為 を い う。
2.特 殊 犯罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 は,「 戦 闘 ・戦 役 の重 大 な損 失 発 生 」 の犯 罪構 成 で あ る。
n刑 事 責 任
刑 法422条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 上10年 以下 の有 期 懲 役 に処 す る。 戦 闘 ・戦役 の重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは,死 刑,無 期 懲 役 また は 10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
3軍 令伝 達 拒 否 虚 偽 伝 達 罪 〈拒 伎 、假 俊 軍 令 罪 〉
軍 令 伝 達拒 否 虚 偽 伝 達 罪 とは,軍 令 の伝 達 を拒 絶 しまた は虚 偽 の 軍令 を 伝 達 して,作 戦 を害 す る行 為 を い う。
刑 法422条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 戦 闘 ・戦役 の重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは,死 刑,無 期 懲役 また は 10年 以上 の有 期 懲 役 に処 す る 。
4戦 場 逃 亡 罪 〈哉 吋 職 吋 逃 脱 罪 〉
戦場 逃 亡 罪 とは,戦 時 にお い て,戦 闘任 務 に直 面 す る者 が,任 地 を離 れ て戦 闘 か ら逃 避 す る行 為 をい う。
刑 法424条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 そ の 情 状 が 重 大 な と きは,3年 以 上10年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。 戦 闘 ・戦 役 の重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは,死 刑,無 期懲 役 ま た は10年 以 上 の 有 期 懲 役 に処 す る。
256 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年
(175)
第3節 作 戦の秩序 を害す る罪
1戦 時 命 令 反 抗 罪 〈哉 吋 遠 抗 命 舎 罪 〉
戦 時命 令 反抗 罪 とは,戦 時 にお い てr上 官 の 命 令 に違 背 し執 行 を拒 否 し て,作 戦 を害 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 客 体 は,作 戦 指 揮 の秩 序 で あ る 。 (2)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の 客観 面 は,戦 時 の命 令 に違 背 し執 行 を拒 否 して,作 戦 を 害 す る行 為 で あ る。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構 成 は,「 戦 闘 ・戦 役 の 重 大 な損 失 発 生 」 の 犯 罪 構 成 で あ る・ この 「戦 闘 ・戦役 の重 大 な損 失 の発 生 」とは ,我 軍 の兵 員 の 重 大 な死 傷,武 器 装 備 ・軍 用 物 資 の重 大 な損 失,戦 闘 ・戦 役 の敗 北 等 を い う。
n刑 事 責 任
刑 法421条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 上10年 以 下 の 有 期懲 役 に処 す る。 戦 闘 ・戦 役 の重 大 な損 失 を発 生 させ た と きは ,死 刑,無 期 懲 役 また は 10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
2軍 情 隠 匿 虚 偽 報 告罪 〈隠 購 、流 扱 畢 情 罪 〉
軍 情 隠匿 虚 偽 報告 罪 とは,上 官 に軍 情 の報 告 をせ ず,ま た は虚 偽 ・改 変 した軍 情 を報 告 して,作 戦 を害 す る行 為 を い う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の主 観 面 は,故 意 で あ る 。
(2)本 罪 の客 観 面 は,軍 情 の 隠匿 ・不 報 告 に よ り作 戦 を害 す る行 為 で あ る。 本 罪 の行 為 対 象 であ る 「軍 情 」とは ,軍 事 と りわ け作 戦 に関 わ る
(176) 何 乗 松 編著 ・刑 法 教 科書(各 論編30章 〜34章) 255
船 舶 を操 縦 して逃 亡 した と き}ま た は そ の他 の情 状 が特 に重 大 な と きは, 死 刑,無 期 懲 役 ま た は10年 以 上 の 有期 懲 役 に処 す る。
3軍 事 秘 密 国 外 提 供 罪 〈力 境 外 窃 取.刺 探 、牧 契 、非 法 提 供 卑 事 秘 密 罪 〉
軍事 秘 密 国外 提 供 罪 とは,外 国 〈境 外 〉の機 関 ・組 織 また は個 人 の ため に軍 事 秘 密 を窃 取,探 索,買 収 また は不 法提 供 す る行 為 をい う。
1犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 主観 面 は,外 国 の 機 関 ・組 織 ・個 人 と知 りなが ら・そ の た め に軍 事 秘 密 を窃 取 ・探 索 ・買 収 ・不 法 提 供 す る決 意 で あ る。
(2)本 罪 の客観 面 はs外 国 の機 関 ・組 織 ・個 人 の ため に軍 事 秘密 を 窃 取 ・探 索 ・買 収 ・不 法 提 供 す る行 為 で あ る。 「窃 取 」 とは,不 法 な隠 密 手 段 に よ っ て軍 事 秘 密 を取 得 す る行 為 をい う。 「探 索 」 とは,各 種 の 経 路 ・手段 を用 い て関係 者 か ら聴 取 を行 い,軍 事 秘 密 の内容 ・保 管場 所 ・秘 密 関与 者 等 を調 査 す る こ とをい う。 「買 収 」 とは,金 銭 ・色 情 ・物 品 に よ る誘 引 また は承 諾 等 の手 段 を用 い て,秘 密 を知 る者 を籠 絡 し,関 連 す る 軍 事 秘 密 を 自己 に漏 洩 させ る行 為 をい う。 「不 法 提 供 」 とは,軍 事秘 密 を保 管 ・認 知 す る者 が,軍 事 秘 密 の認 識 を許 され な い者 に対 し,許 可 ・権 限 な
くそ の保 管 ・認 知 に か か る軍 事 秘 密 を提 供 す る こ とをい う。 「窃 取 ・探 索 ・買 収 ・不 法提 供 」の全 行 為 を同時 に行 う必 要 は な く,そ の 一行 為 を行 え ば本 罪 が 成立 す る。
II定 罪
本 罪 と国家 秘 密 情 報 不 法 提 供 罪(刑 法111条)と の法 条 競 合 の問題 両 罪 は法 条 競 合 の 関係 に あ り,軍 人 が外 国 の 機 関 等 の た め に軍 事 秘 密 の窃 取 ・探索 ・買 収 ・不 法 提 供 を行 っ た と きは,本 条 が 優 先 適 用 され るの で ・ 本 罪 と して処 断 され る。
皿 刑 事 責任
刑 法431条2項;本 罪 を犯 した者 は,死 刑,無 期懲 役 ま た は10年 以 上 の有 期 懲 役 に処 す る。
254 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年
X17?) 2軍 人反 逆 逃 亡 罪 〈率 人 叛 逃 罪 〉
軍 人 反 逆 逃 亡 罪 とは ・軍 人 が,公 務履 行 期 間 に許 可 な く任 地 を離 れ て , 国外 〈境 外 〉へ と逃 亡 し,ま た は 国外 〈境外 〉で逃 亡 して ,国 家 の 軍 事利 益 を害 す る行 為 を い う。
1犯 罪 構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の 客 体 は,国 防 の安 全 利 益 で あ る。
(2)本 罪 の 主観 面 は,故 意 で あ る。
(3)本 罪 の 客観 面 は,公 務 履 行期 間 に許可 な く任 地 を離 れ て国外 へ と逃 亡 し ・また は 国外 で逃 亡 して 1国 家 の 軍 事 利益 を害 す る行 為 で あ る。
離反 逃 亡 行 為 には,公 務 履 行 期 間の軍 人が 許 可 な く任 地 を離 れ て 国 内か ら 国外 へ と逃 亡 す る場 合 と,国 外 で の公 務履 行 期 間 に許 可 な く任 地 を離 れ て 逃 亡 ・逃 走 す る行 為 とが あ る。
2.特 殊 犯 罪 構 成
本 罪 の特 殊 構成 に は,「 情 状 が重 大 な」犯 罪構 成 と 「航 空 機 ・船 舶 を操 縦 して逃 亡 し,ま た は そ の他 の 情状 が 特 に重 大 な」犯 罪構 成 とが あ る。 こ の 「重大 な情状 」 とは,重 要 な職 務 を担 う軍 人 が逃 亡 した場 合
,共 同逃 亡 の主 犯 で あ る場 合,軍 事 秘 密 を携 え て逃 亡 した場 合 等 をい う
。他 方,「 そ の他 の特 に重 大 な情 状 」とは ,重 要 な軍事 秘 密 を携 え て逃 亡 した場 合,指 揮 官 その他 の重 要 な職 責 を担 う者 の逃 亡 を策動 した場 合 ,逃 亡 後 わが 国 の 国 防利 益 を害 す る活 動 に積 極 的 に従 事 した場 合 等 をい う。
皿 定 罪
本 罪 と反逆 逃 亡罪(刑 法109条)と の 法 条 競 合 の問 題 軍 事 機 関 の専 属 で あ る軍 人 が 反 逆 逃 亡 した と きは ,本 罪 と刑 法109条 との法 条 競 合 とな る。 この場 合 に は,一 般 法 に対 す る特 別 法 の優 越 原 則 に従 って
,本 罪 と し て処 断 され る。
皿 刑 事 責 任
刑 法430条;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が重 大 な と きは,5年 以 上 の 有期 懲 役 に処 す る。航 空機.
(178) 何 乗 松 編 著 ・刑法 教 科 書(各 論 編30章 〜・34章) 253
1犯 罪構 成 1.基 本 犯 罪 構 成
(1)本 罪 の客 体 は,国 家 の安 全 秩 序 と軍 人 の参 戦 秩 序 で あ る。
(2)本 罪 の主観 面 は,故 意 お よび命 を惜 しんで 死 を恐 れ る動 機 で あ る。
(3)本 罪 の客 観 面 は,戦 場 で 自発 的 に武 器 を放 棄 して敵 方 に投 降 す る行 為 で あ る。 「戦 場 」 とは,敵 軍 と我 軍 とが 直 接 交 戦 す る地 点 をい う。
「武器 の 自発 的放 棄 」 とは,武 器 を使 用 して敵 兵 を殺 傷 す る条 件 ・能力 が あ る の に これ を使 用 せ ず,自 発 的 に抵 抗 を放 棄 す る こ と をい う。 「敵 方へ の投 降」とは,本 罪 の 重 要 な客 観 的 要 素 で あ り,我 軍 と交 戦 す る敵 方 に屈 服 す る こ とをい う。
2.特 殊 犯 罪 構 成
これ には,「 情 状 が重 大 な」犯 罪 構 成 お よび 「投 降後 に敵 方 に尽 力 す る」
犯 罪 構 成 が あ る。 こ の 「重 大 な情 状 」 とはs① 部 隊 を率 い て投 降 した場 合,② 指 揮 官 が 投 降 した場 合,③ 重 要 な武 器 装備 を携 帯 して投 降 した場 合,④ 投 降 に よ り戦 闘 ・戦 役 の重 大 な損 失 を招 来 した場 合 等 をい う。
H定 罪
本 罪 と投 敵 反 変 罪 との限 界 両 罪 の 主 な相 違 はf次 の点 にあ る・① 主体 が異 な る。本 罪 の主 体 は作 戦 に参 加 す る軍 人 で あ るが,後 罪 の 主体 は 中国 国 籍 を有 す る全 て の公 民 で あ る。② 行 為 地 が 異 な る 。本 罪 は敵 軍 と我 軍 とが 直接 交 戦 す る戦 場 の み で行 わ れ う るが,後 罪 は この ような空 間的 条件 に制 約 さ れ ない 。③ 行 為 の動 機が 異 な る。 本 罪 は命 を惜 しん で死 を恐 れ
る動 機 に よるが,後 罪 は信 念 ・動 揺 等 の動 機 で 行 わ れ る 。 皿 刑 事 責 任
刑 法423条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 上10年 以下 の 有期 懲 役 に処 す る。 そ の情 状 が 重 大 な と きは,無 期 懲 役 また は10年 以 上 の 有期 懲 役 に処 す る。
252 神 奈 川法 学 第34巻 第3号2002年 (179)
第430条 軍 人反逆逃 亡罪 〈軍人 叛逃罪 〉
第431条 軍事秘密不 法取得 罪 〈非法荻取軍事秘密 罪 〉 軍事秘密 国外 提供罪 〈力境 外窃取 、刺探 、牧英 、非法提供軍事秘 密罪 〉 第432条 軍事秘密漏泄罪 〈故意泄漏軍事秘密罪 〉 過 失軍事 秘密 漏泄
罪 〈迂失泄漏軍事秘 密罪 〉
第433条 戦時軍 人動揺罪 〈哉肘軍 人造揺惑余 罪 〉 第434条 戦 時 自傷 罪 〈哉吋 自傍罪 〉
第435条 部 隊逃 亡罪 〈逃寓部臥罪 〉
第436条 武器 装備事 故罪 〈武 器装各肇 事罪 〉
第437条 武装 配分用 途不法改変罪 〈檀 自改変武 器装各 綿配用途 罪 〉 第438条 武装 軍用物 資盗奪 取罪 く盗窃 、拾寺武 器装各 、軍用物 資罪 〉 第439条 武器装備不法販 売罪 〈非法 出一.、鞍止武 器装各 罪 〉
第440条 武器装備遺棄罪 〈遺奔武 器装各畢 〉 第441条 武器装備 遺失罪 〈遺失武 器装各 罪 〉
第442条 軍用地不 法販売罪 〈捜 自出奨r鞍 辻軍臥房地声罪 〉 第443条 部 下虐待 罪 〈虐待部 署罪 〉
第444条 傷病軍 人遺棄罪 〈遺 奔侮病 軍人罪 〉
第445条 戦時傷病軍 人救護拒 否罪 〈哉肘拒 不救治侮病軍 人罪 〉 第446条 戦時住民殺害略奪罪 〈哉吋残 害居民 、掠奪居 民財物 罪 〉 第447条 捕虜釈放 罪 〈私放 俘虜罪 〉
第448条 捕虜虐待罪 〈虐待 俘虜罪 〉
第2節 国防の安全 を害 す る罪
1投 降罪 〈投 降罪 〉
投 降 罪 とは,戦 場 に お い て,命 を惜 しみ死 を恐 れ た ため,自 発 的 に武 器 を放 棄 して敵 方 に投 降 す る行 為 をい う。
(180) 何 乗松 編 著 ・刑 法 教 科 書(各 論 編30章 一34章) 251
時 自傷 罪 ・戦 時 軍 人 動揺 罪 ・傷 病 軍 人 遺 棄 罪 ・戦 場 逃 亡 罪 ・戦 時命 令 反 抗 罪 ・軍 人反逆 逃 亡 罪 で は,「 戦 時 」,「 公 務 履 行 期 間」,「 戦場 」,「 軍 事 行 動 地 区」等 が 要件 とされ,こ れ らの特 定 の時 間 的 ・空 間 的 要件 が 充 足 され な い 限 り,犯 罪 が 成 立 しない。 第 二 に,本 罪 で は,特 定 の 時 間 ・場 所 が成 立 要件 とは され な くと も,特 定 の時 間 的 ・空 間的条 件 が 量 刑 を制 約 す る重 要 な情状 とな る こ とが 多 い。例 え ば,軍 事 秘 密 漏泄 罪 ・部 隊逃 亡 罪 ・ 軍 事 職 務 解怠 罪 ・軍 事 職務 執 行妨 害 罪 で は,立 法 に よ り「戦 時 に犯 した と
きは重 く処 罰 す る」 と定 め る 。
本 罪 を認定 す る際 には,犯 罪 と非 犯 罪 との限 界 づ け を厳 格 に行 わ ね ば な らな い。 軍 人 の職 務 違 反行 為 は,国 家 の 軍事 利益 に対 す る危 害 の軽 重 に応 じて,軍 人 の職 務 違 反 の 罪 と軍 人 の軍 紀 違 反行 為 とに分 け られ る・ 刑 法 13条 但 書 は,「 そ の情 状 が 著 し く軽微 で危 害 が 大 き くな い と きは,犯 罪 と
して認 定 しない 」と定 め る ので,こ れ に該 当す る軍 人 の職 務 違 反行 為 は, 犯 罪 と して は認 定 されず 軍 紀 違 反 と して処 理 され う る。 本 章 に軍 人 の職 務 違 反 の 罪 と して 定 め る犯 罪構 成 に該 当 す る行 為 は,要 罰性 の程 度 に達 し
て い れ ば,犯 罪 と して処 断 され る。
刑 法 各 則 第10章 は,軍 人 の職 責 違 反 の罪 と して全32条 に30の 罪 名 を 定 め る。 これ ら を条 文 の序 列 に従 っ て,次 に掲 げ る。
第421条 戦 時 命 令 反 抗 罪 〈哉 吋 逃 抗 命 令 罪 〉
第422条 軍 情 隠 匿虚 偽 報 告 罪 〈隠 購 、慌 振 軍 情 罪 〉 軍令 伝 達 拒 否 虚 偽 伝 達 罪 〈拒 倍 、假 佑 軍 令 罪 〉
第423条 投 降 罪 〈投 降 罪 〉
第424条 戦 場 逃 亡 罪 〈哉吋 晦 陣逃 脱 罪 〉
第425条 軍事 職 務解 怠 罪 〈檀 寓 、玩 忽 軍 事 取 守 罪 〉 第426条 軍事 職 務 執行 妨 害 罪 〈阻 碍71'L行軍 事 取 劣 罪 〉 第427条 職務 違 反 指 令 罪 〈指 使 部 属造 反取 責 罪 〉 第428条 命令 違 反 作 戦 消 極 罪 〈造 令作 哉 消 扱 罪 〉 第429条 友 軍 救 援 拒 否 罪 〈拒 不 救 援 友 郭 部..,〉
250 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (181>
軍 人職 務 違 反 罪 の 実 質 的 な危 害 は,武 装 力 整備 の 阻害 ・部 隊 の戦 闘力 弱体 化 を通 じた 国家 軍 事 利益 の危 害 にあ る。
(3)本 罪 の 主 観 面 〔主 観 的要 件 〕は,故 意 犯 が 多 数 を占 め る が ,武 器 装 備 事 故罪 ・軍 事 職 務 慨 怠 罪 の よ う に少 数 の過 失 犯 もあ る。 さ らに,こ の故 意 犯 の 中 に は,あ る特 定 の動 機 を要件 と し,こ の 動 機 が ない 限 り成立 しな い罪 もあ る。 例 えばa戦 時 自傷 罪 は 「軍 事 的義 務 の免 脱 」r投 降罪 は
「命 を惜 しんで 死 を恐 れ る」 動 機 で 行 わ れ ね ば な らな い。
(4)本 罪 の客 観 面 〔客 観 的 要 件 〕は,国 家 の 軍 事利 益 を害 す る行 為 で あ る。
軍 人 の職 務 とは,軍 人 が 法律r軍 事 命 令 また は 自己 の任 務 に従 って職 責 を負 担 ・履 行 しな け れ ば な らな い義 務 をい う。 この職 責 に は ,一般 的職 責 ・具 体 的 職 責 ・専 門 的職 務 の三 つ が あ る。 まず,「 一 般 的 職 責 」 とは, 例 え ば 「命 令 ・指揮 へ の 服 従 」,「い か な る事 情 下 で も祖 国 を裏 切 らない」
とい った 全 軍 人 が尽 力 しな け れ ば な らな い職 務 をい う。 そ の主 要 な もの は,中 国 人 民 解 放 軍 内務 条 令 に定 め られ て い る 。次 に ,「 具体 的職 責 」 と は,軍 隊 の兵 士 ・士 官 ・司令 官 ・主管 人員 の 軍事 任 務 執行 時 に お け る職 務 をい う。 中央 軍事 委 員 会,各 解放 軍 の本 部 さ らには各 軍 の兵 種 に よ り公 布 され る各 種 の条 例 ・条 令 が,こ れ を定 め る。 最 後 に,「 専 門的 職 責 」とは s 艦 長 ・車 長 の職 責 な ど軍 隊 で 専 門的 な職 務 に従 事 す る軍 人 に対 して 定 め られ た職 務 をい う。 軍 人 の職 責 違 反行 為 が 犯 罪 となる に は,国 家 の軍 事利 益 を害 す る必 要 が あ る。 そ の危 害 が,要 罰 的 な程 度 に達 す る と,本 罪 が 成 立 す る。
軍 人 の職 務 違 反 の罪 は,軍 事職 務 執 行 妨害 罪 ・部 隊逃 亡 罪 ・武 装 軍用 物 資盗 奪 取 罪 な ど多 くの犯 罪 が作 為 の行 為形 態 に よ り行 わ れ る。 しか し,傷 病 軍 人 遺棄 罪 ・軍 事 職務 解 怠 罪 の よ う に不 作 為 の行 為 形 態 に よ る罪,戦 時 命 令 反 抗 罪 の よ う に作 為 ・不 作 為 の両 形 態 に よる罪 もあ る。
行 為 時 お よび行 為 地 は,軍 人 職責 違 反 罪 の 定 罪 ・量 刑 に重大 な影 響 を及 ぼす。 第 一 に,本 罪 で は,特 定 の時 間 ・場所 が 犯 罪構 成 の全 体 機 能 の形 成 に直接 影響 す る た め に,そ れ が成 立 要件 と され る こ とが あ る。 例 え ば,戦
(182} 何 乗 松 編著 ・刑 法 教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 249
第34章 軍人の職務違反 の罪(蒔 瑞麟)
長井 圓 共訳 藤井 学
第1節 軍人の職 務違反 の罪 概説
軍 人 の 職務 違 反 の 罪 とは,軍 人が そ の職 責 〔職 務 〕に違 反 して国 家 の軍 事利 益 を害 す る行 為 の うち,法 律 にお い て刑 罰 に よる処 罰 を受 け ね ばな ら な い行 為 をい う。
特 殊 な犯 罪 類 型 で あ る軍 人 の職 務 違 反 の罪 は,次 の構成 要 件 か らな る。
(1)本 罪 の 主体 は,軍 人 で あ る。 刑 法450条 に よれ ば,軍 人 に は, 中 国 人民 解放 軍 の現役 士 官 ・文 官 幹部 ・兵 士 ・軍籍 を有す る学 生,中 国 人 民 武 装警 察 部 隊 の 現役 警 官 ・文 官幹 部 ・兵 士 ・軍 籍 を有 す る学 生,お よび 軍 事 任 務 を執 行 す る予 備 役 人 員 そ の他 の 人 員 が 含 ま れ る。 この 「予 備 役 人 員 」とは,民 兵組 織 に編 入 され,ま た は登 録 を経 て予 備 役 に服 務 す る地 方 の 人員 をい う。 兵役 法 に よれ ば,予 備 役 人員 は,平 時 に も定 期 的 に軍 事 訓 練 に参 加 して軍事 任 務 を執 行 しな け れ ば な らずrま た,随 時 の徴 用 ・服 務 に備 え 現役 兵 士 と な る た め の 準備 を して い な け れ ば な らな い。 他 方,
「そ の他 の 人員 」 とは,(武 装 部 隊 を含 め)軍 隊 の機 関 ・部 隊 ・学 校 ・病 院 ・・基地 等 の 隊列 単 位 ・事 業 単 位 に お け る職 務 を担 う正 式 の職 員 ・従 業 員 のほ か,臨 時 に徴 用 され ま た は軍 事任 務 の執行 を委託 され た地 方 の 人 員 をい う。 同規 定 の 内容 か らす れ ば,軍 人 の範 囲 は,以 前 よ りも拡 大 され て い る。 軍 人 の職務 違 反 の罪 の 主体 には,現 役 軍 人 の み な らず,予 備役 人 員 お よびそ の他 の 人 員 も含 ま れ る。 しか し,予 備 役 人 員 ・そ の他 の 人員 は, 戦 闘 ・軍 事訓 練 へ の参 加 等 の軍 事任 務 の執 行 時 で な けれ ば,本 類 型 の罪 の 主 体 に な りえな い 。
(2)本 罪 の客 体 〔法 益 〕は,国 家 の軍 事 利 益 で あ る。 国家 の軍 事 利 益 とは,軍 事 活 動 に直接 関 わ る国 家利 益 をい うが,こ れ は,軍 隊 の組 織 ・ 編 成,戦 争 の準 備 ・実行 等 の 軍事 活 動 にお い て 具 体化 され る利 益 で あ る。
248 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (183)
本 罪 と犯 人蔵 匿庇 護 罪 とは,い ず れ も犯 罪者 の処 罰 逃避 を常助 す る行為 で あ るの で極 め て類 似 す る。 しか し,本 罪 と後 罪 とは,次 の点 で 区 別 され る。① 主 体 が 異 な る。本 罪 の 主 体 は特 殊 主 体 す な わ ち犯 罪 活 動 取締 を職 責 とす る国 家機 関 の 公務 員 で あ るが,後 罪 の主 体 は 一般 主 体 であ る。② 行 為 形 態 が 異 な る。 犯 罪者 の処罰 逃 避 を常助 す る本 罪 の行 為 には ,情 報提 供 行 為 と便 益 提 供行 為 とが あ り,一 般 に はそ の職 務 を利 用 して行 わ れ る。 こ
れ に対 して,後 罪 の 主 要 な行 為 形 態 は ,便 益提 供 で あ って,情 報提 供 を含 ま ない。 情報 提 供 自体 が庇 護 罪 の行 為 とな るの は,旅 館 業 ・飲 食 業等 の職 員 が 売 春 行 為 者 に情 報 提 供 をす る特 殊 な場 合 の み に限 られ る 。
刑 法417条;本 罪 を犯 した 者 は,3年 以 下 の有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が 重 大 な と きは,3年 以 上10年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。
(1)1997年12月 最高 人民検 察院 「検察機 関が直接 受理 して捜 査 ・立件 を行 う事 件の数額 ・数量 の基準 に関す る若干の規定(試 行)」
X184) 何 乗 松 編 著 ・刑 法教 科 書(各 論編30章 〜34章) 247
17被 誘 拐 婦 女 児 童不 救 助 罪 〈不 解 救被 拐 輿 、廓 架 妃女 、几 童 罪 〉 被 誘 拐 婦女 児 童 不救 助 罪 とは,誘 拐 売買 拉 致 され た婦 女 ・児童 の解 放 ・ 救助 を職 務 とす る 国家機 関 の公 務 員 が,被 害 者 本 人 も し くはそ の家 族 か ら 解 放 ・救 助 の 要請 を受 け,ま た はそ の他 の者 か ら通 報 を受 け た に もか か わ らず,誘 拐 売 買拉 致 され た婦 女 ・児 童 の解 放 ・救 助 を行 わず,重 大 な結 果 を発 生 させ る行 為 を い う。
刑 法416条1項;本 罪 を犯 した者 は,5年 以 下 の 有期 懲 役 ま た は拘 留 に処 す る 。
18被 誘 拐 婦 女 児童 解 放 妨 害 罪 〈阻 碍 解 救 被 拐 妻 、螂 架妃 女 、几 童 罪 〉 被 誘 拐 婦 女 児 童 解 放 妨 害 罪 とは,誘 拐 売 買 拉 致 され た婦女 ・児 童 の解 放 ・救 助 を職 務 とす る国家 機 関 の公 務 員 が,そ の職 務 を濫 用 して被 害 者 の
解放 ・救 助 を妨 害 す る行 為 をい う。
本 罪 と被 誘 拐 婦 女 児 童 不 救助 罪 とは,次 の 点 で区 別 され る。 本 罪 は,解 放 ・救 助 の職務 不 履 行 とい う不作 為 の み な らず,職 務 を濫 用 した解放 ・救 助 の妨 害 とい う積極 的 な作 為 に よって も行 わ れ うる。 これ に対 して,後 罪 は,解 放 ・救 助 の 職 責不 履 行 とい う不 作為 の み に限 られ,解 放 ・救 助 の妨 害行 為 に よっ て は行 わ れ ない 。
刑 法416条2項;本 罪 を犯 した者 は,2年 以上7年 以 下 の 有期 懲 役 に処 す る。 そ の情 状 が軽 い と きは,2年 以 下 の有 期懲 役 また は拘 留 に処 す る。
19犯 罪 者 処 罰 逃避 割 助 罪 〈幕 助 犯 罪 分 子 逃 避 赴 罰 罪 〉
犯 罪 者 処 罰 逃 避 討 助 罪 とは,犯 罪 取締 を職 責 とす る国 家 機 関 の公 務 員 が,犯 罪者 に情 報 提 供 ま た は便 益 提 供 を行 っ て,そ の処 罰 逃 避 を帯 助 す る 行 為 をい う。
関 連 す る司法 解 釈 に よれ ば,公 安 職 員 が窃 取 ・強 取 され た 自動 車 につ き,車 両 番 号 票 の不 法 提 供 また は車 両・番号 票 の取 得 にか か る便 宜 提 供 を 行 っ て,犯 罪 者 の処 罰 逃 避 を帯 助 した と きは,本 罪 と して処 罰 され る。
246 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (X85)
14偽 劣 商 品 製 造 販 売放 任 罪 〈放1制 醤 伽 劣 商 晶犯 罪 行 力 罪 〉
偽 劣 商 品 製造 販 売 放任 罪 とは,偽 劣 商 品 の生 産 ・販 売 にか か る犯 罪行 為 の取 締 責任 を負 う国 家 機 関 の 公務 員 が,私 利 不 正 を図 っ て 〈狗 私 舞 弊 〉, 法 律 の 定 め る取 締 の 職 責 を履 行 せ ず,そ の 情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
行 政 法 執 行 官 が 偽 劣 商 品 の 生 産 ・販 売 に か か る 違法 行 為 の調 査 ・処 分 を行 うに あた り,犯 罪 を構 成 す る違法 行 為 を発 見 しなが ら も調査 ・処 分 を 行 わ ない と きは,本 罪 と して処 断 され る。 私情 ・私 利 に と らわ れ て行 政 処 分 の み に とどめ て司 法機 関 に送 致 せず,そ の刑 事 責任 の追 及 を免 脱 させ た
と きは,刑 事 事 件不 送 致 罪 と して処 断 され る。
刑 法414条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の 有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る 。
15密 出 入 国不 正 証 明処 理 罪 〈梵 理愉 越 国(迦)境 人 艮 出入 境 証 件 罪 〉 密 出入 国不 正 証 明処 理 罪 とはs旅 券 ・査 証 ・そ の他 の 出 入 国証 明書 の処 理 を行 う国 家 機 関 の公 務 員が,密 出入 国 を意 図 す る 者 と知 りなが ら,そ の
出入 国証 明書 の 処 理 を行 う行 為 をい う。
行 為 者 が密 出 入 国 者 の組 織 ・運 送 を行 う犯 罪 者 と共 謀 して 出 入 国 証 書 の処 理 を不 法 に行 った と きは,密 出入 国組 織 罪 ・密 出入 国 者運 送 罪 の共 犯
と して処 断 され る。
刑 法415条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が 重 大 な と きは,3年 以 上7年 以 下 の有 期 懲 役 に処 す る。
16密 出 入 国放 任 罪 〈行 倫 越 国(辺)境 人 昊 罪 〉
密 出入 国放 任 罪 とは,国 境 防備 ・税 関等 の 国家 機 関 の公 務 員 が,密 出 入 国者 と知 りなが ら,そ の密 出 入 国 を放 任 す る行 為 をい う。
行 為者 が 密 出入 国者 の組 織 ・運 送 を行 う犯 罪者 と共 謀 して本 罪 を犯 し た と きは,密 出 入 国組 織 罪 ・密 出 入 国 者 運 送 罪 の共 犯 と して処 断 され る。
刑 法415条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 そ の情 状 が重 大 な と きは,3年 以 上7年 以 下 の有期 懲役 に処 す る。
{186) 何 乗 松 編 著 ・刑 法教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 245
10商 品 検 査 不 正 罪 〈商栓 絢 私 舞 弊 罪 〉
商 品検 査 不 正 罪 とは,国 家 の商 品検査 部 門 ま た は商 品検 査 機 関 の 公務 員 力㍉ 私 利 不 正 を図 って 〈御 私 舞 弊 〉,検 査 結 果 を偽 造 す る行 為 をい う。
刑 法412条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。 重 大 な結 果 を発 生 させ た と きは,5年 以 上10年 以 下 の有 期 懲 役 に 処 す る。
11商 晶検 査職 務 惚 怠 罪 〈商 監 失 取 罪 〉
商 品検 査 職 務辮 怠 罪 とは,国 家 の商 品検 査 部 門 また は商 品検 査 機 関の職 員 が,職 務 を著 し く解 怠 して,検 査 を要 す る商 品 を検 査 せ ず,検 査 結 果 証 明 書 の提 出 を遅 滞 し,ま た は誤 っ た検 査 結 果 証 明書 の発 行 を行 って,国 家 ・人 民 の利 益 の利 益 に重大 な損 失 を与 え る行 為 をい う。
刑 法412条2項;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る。
12動 植 物 検 疫 不 正 罪 〈劫 植 物 栓 疫 絢 私 舞 弊 罪 〉
動植 物 検 疫 不 正 罪 とは,動 植 物 検 疫 機 関 の検 疫 員 が}職 権 を利 用 して, 私利 不 正 を図 って 〈徊 私 舞 弊 〉,検 疫 結 果 を偽 造 す る行 為 をい う。
刑 法413条1項;本 罪 を犯 した場 合 は,5年 以 下 の 有 期懲 役 ま た は拘 留 に処 す る。 重大 な結 果 を生 じさせ た ときは,5年 以上10年 以 下 の有期 懲 役 に処 す る。
13動 植 物 検 疫 職 務憺 怠 罪 〈幼 檀 物 栓 疫 失取 罪 〉
動 植 物 検 疫 職 務解 怠 罪 とは,動 植 物 検 疫 機 関 の検 疫 員 が,職 務 を著 し く 慨 怠 して,検 疫 を要 す る物 品 の検 疫 を行 わず,検 疫結 果証 明書 の 提 出 を遅 滞 し,ま た は誤 った検 疫 結 果 証 明書 の発 行 を行 って,国 家 の利益 に重 大 な 損 失 を与 え る行 為 をい う。
刑 法413条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の有 期 懲 役 また は拘 留 に処 す る 。
244 神 奈 川 法 学 第34巻 第3号2002年 (187)
罪 は 生 産 ・生 活 の過 程 で発 生 す る 。③ 侵 害 され る客 体 が 異 な る 。本 罪 で は 国家 機 関 の環 境 保 護 の職 能 が害 され るが,後 罪 は 自然 環 境 に対 す る 国家 の保 護 ・管 理 の 秩 序 が 害 さ れ る。
刑 法408条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の 有期 懲 役 また は拘 留 に処 す る 。
8伝 染 病 防 治 職 務慨 怠 罪 〈俊 染 病 防 治 失取 畢 〉
伝 染病 防治 職務 解怠 罪 とは,伝 染 病 の予 防 ・治 療 に従事 す る政 府衛 生 行 政 部 門 の職 員 が,職 務 の著 しい解 怠 に よって伝 染 病 の伝 播 または 流行 を引
き起 こ し,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
本 罪 と伝 染 病 防治 規 定 違 反 罪 との 限界 両罪 は,次 の点 で 区別 され る 。
① 主 体 が 異 な る 。本 罪 の 主 体 は伝 染 病 の 予 防 ・治療 に従 事 す る職 務 を担 う者 で あ るが,後 罪 の 主 体 は一 般 の 個 人 ま た は単 位 で あ る。 これ らの 者 は,多 くの場 合,伝 染 病 予 防治療 職 員 の 職務 対 象 で あ る。 ② 行 為 形 態 が 異 な る。本 罪 は法 律 に定 め る伝 染 病 予 防 治 療 の職 務 に反 す る涜 職 性 を有 す るが,後 罪 には この性 質 が な い。③ 客体 が 異 な る。本 罪 の客 体 は 国家 の 関 係 部 門 の 伝 染 病 予 防 治 療 の 職 能 で あ るが,後 罪 で は公 共 の衛 生 が 害 され る。
刑 法409条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以 下 の有期 懲 役 ま た は拘 留 に処 す る。
9密 輸 放 任 罪 〈放 鰍 走 私 罪 〉
密 輸 放 任 罪 とは,税 関 の公 務 員 がs金 銭 ・財 物 の取 得,親 戚 ・友 人 の庇 護 また は そ の他 の私 利 私 情 の ため に,密 輸 行 為 をそ れ と知 りなが ら放 任
して 追 及 せ ず,そ の情 状 が 重 大 な行 為 をい う。
刑 法411条;本 罪 を犯 した者 はs5年 以 下 の有 期 懲 役 ま たは拘 留 に処 す る 。 そ の情 状 が 特 に重 大 な と きは,5年 以 上 の有期 懲 役 に処 す る。
(188) 何 乗 松 編 著 ・刑 法教 科 書(各 論 編30章 〜34章) 243
5輸 出税 還付 証 書 不 法 提供 罪 〈遠 法 提 供 出 ロ退 税 尭 証 罪 〉
輸 出税 還 付 証 書 不 法 提 供 罪 とは,国 家 機 関 の公 務 員 が,国 家 の規 定 に違 反 して,輸 出貨物 税 関 申告 書 ・輸 出為 替収 入審査 書等 の輸 出税 還付 証 書 を 提 供 す る職 務 の遂 行 に あ た り,私 利 を図 るた め に不 正行 為 を行 い〈狗 私 舞 弊 〉,国 家 の 利益 に特 に重 大 な損 失 を与 え る行 為 をい う・
刑 法405条;本 罪 を犯 した 者 は,5年 以 下 の有 期 懲役 ま た は拘 留 に処 す る 。
6林 木伐 採許可証不法発行 罪 〈達法麦放林木采伐群可 証罪 〉
林木伐採許可証不法発行 罪 とは,林 業主管官庁 の公務 員が,森 林法 に違 反 して,年 間伐採 限度 を超過す る林木伐採 許可証 を発 行 し,ま たは林木伐 採許可証 を濫発 して,そ の情状 が重大で森林 の重大 な破壊 を招来す る行為
をい う。
本罪 と林木濫伐 罪 との限界 林木採伐 許可書 の違法発行行為 に よって 濫伐行 為が助 長 され,濫 伐 の結果が発生 して も,当 該行為 は林木濫伐罪 の 共犯 と して処 断 されない。
刑法407条;本 罪 を犯 した者 は,3年 以下の有期懲役 または拘留 に処 す る。
7環 境 監理 職 務塀 怠 罪 〈圷 境 盗 管 失取 罪 〉
環 境 監 理職 務慨 怠 罪 とは,環 境 の保 護 ・監督 ・管 理 の職 責 を担 う国家 機 関 の 公 務 員 がs職 務 の著 しい解 怠 に よ って 重 大 な環 境 汚 染 事 故 を発 生 さ せ,公 私 の財 産 の重 大 な損 失 または 人 を死傷 させ る重 大 な結 果 を発 生 させ
る行 為 を い う。
本 罪 と重 大 環 境 汚 染 事 故 罪 との 限界 両 罪 は,主 に次 の 点 で 区 別 され る。① 主 体 が 異 な る。本 罪 の 主 体 は環 境 監 督 監 視 を担 う国 家 機 関 の公 務 員 で あ るが,後 罪 の主体 は 一般 の個 人 ・単 位 で あ る。② 事 故 の発 生 す る場 所 が 異 な る。本 罪 は環境 保 護 を管 理 監督 す る活 動 にお い て発 生す るが,後