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<シンポジウム1―3>脳梗塞UP TO DATE経頭蓋超音波血栓溶解療法

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49:804

<シンポジウム 1―3>脳梗塞 UP TO DATE

経頭蓋超音波血栓溶解療法

古幡

(臨床神経,49:804―806, 2009) Key words:急性脳梗塞,再開通率,経頭蓋超音波,血栓溶解,rt-PA静注法 1.はじめに Rt-PA 静注療法(IVrt-PA)は,急性脳梗塞(AIS)発症後 の第一選択的治療法とされている.しかし,早期再開通法はそ の神経予後をいちじるしく改善することから,血栓溶解加速 法の一つとして経頭蓋超音波法が注目されている.超音波は その診断的応用に広く使われているが,その条件次第では(た とえば強度を増せば)組織損傷・壊死を招くことができる.今 日,超音波医学応用は診断ばかりではなく,超音波治療へのパ ラダイムシフトが生じつつある.ここでは,次世代 IVrt-PA として期待される経頭蓋超音波脳血栓溶解療法の内外の現状 を報告し,その将来展望を略説する. 2.超音波診断装置による脳血栓溶解法 超音波併用血栓溶解法は,立花ら1)やわれわれの報告2)がオ リジナルである.とくに後者は,冠動脈や中大脳動脈などの中 動脈血管径における塞栓モデルについての成績であり,IVrt-PA 治療下の犬両側股動脈閉塞モデルにおいて,片側に超音 波(以後 US と略す)を照射した時の比較成績を報告したもの である.われわれの手法は関口3)や Siegel ら4)の犬冠動脈閉塞 実験を経て臨床応用へと結びついている.しかし,その US 条件は数十∼数百 kHz の低周波数帯で,後述するように AIS 適用法としては未だ完成していない. ここでは,ここ数年の診断用 US 装置をもちいた欧米の成 果を示しておきたい.Fig. 1 に Alexandrov ら5)と Eggers ら6) の臨床成績を示した.前者は診断装置 TCD をもちい,後者は カラードプラ断層診断装置(TC-CFI)をもちいた結果であり, いずれも IVrt-PA に比較し,早期再開通率が高く,3 カ月後の 神経学的改善も良好であった.TCD と TC-CFI の間にも溶解 効果に差があり,60 分後では TCD 併用が約 30% 程度であっ たものが,TC-CFI では約 2 倍の 60% に達していた.この差 の原因は両診断装置の US 条件に起因すると考えられるが, 現在のところ不明で,真の理由は追求できない状態である.た だ症候性出血の発症率が TC-CFI の方では 15.7% と高値を 呈していたので,安易にその手法を試みることは控えねばな らない. 3.低周波数超音波血栓溶解法 周波数が低ければ低いほど,溶解効果の増高することが知 られ,数百 kHz の超音波を活用した IVrt-PA 併用経頭蓋超音 波法が考察されてきた. 3―1 TRUMBI 治験失敗の原因 周波数 300kHz をもちいた臨床成績は完全再開通率こそ増 加させるが,部分再開通をふくめれば,超音波を併用する効果 が無いばかりか,出血率は 90% を超し,死亡例の発生(1 例)をもって中止となったことが Daffershofer によって報告 された7).その原因を,われわれは音響学的および医学生物学 的に明らかにした. TRUMBI ではバ ー ス ト 波(BW)を も ち い て い た.BW は平均音圧は低くてもパルス波と類似しており,強度の高い 時間(ここでは 0.5ms)が存在し,その間の音響強度は非常に 強く,それを直径 30mm の円形振動子 4 個から 2 個ずつペア で発射していた.そのため頭蓋内では多重反射がおき,キャビ テーションを発生させ8),それが出血に結びついたと考えられ た.また,装置として再開通状態を監視する機能もなかった. 医学生物学的にいえば,彼らはウィスターラット(WR)を 使った前臨床試験から,臨床へ移行していた.しかし,ASI 患者の多くには背景因子として脳動脈硬化亢進がある.した がって,われわれは脳動脈硬化亢進のあるラット動物モデル をもちいて実験をおこない,その結果 TRUMBI の US 条件で は皮質壊死の発生率が 40% を超えることが示された.同条件 で WR のばあいだと,まったくみられなかった.より安全性 を考慮した US 条件をもちいなければ,低周波数 US の脳血 栓溶解への活用は困難であると考えられる. 3―2 新提案とその特徴 TRUMBI 治験の失敗は,US 条件の難しさを示している.そ の原因解明結果を,以前から開発中のわれわれの装置9)の安全 条件に反映させ,現在も 22 年度の治験開始に向け評価中であ る.同装置は,同一プローブ内に積層した TC-CFI 機能で,血 流再開通状態を監視・診断できる点を特徴とするものであ る.Fig. 2 は同装置の原理と機能をまとめたものである. 3―3 TCT-LoFUT の有効性と安全性 開発中の TCT-LoFUT の US 条件として,有効性に加え, 東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター医用エンジニアリング(ME)研究室〔〒105―8461 東京都港区西新橋 3―25―8〕 (受付日:2009 年 5 月 21 日)

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経頭蓋超音波血栓溶解療法 49:805 Fig. 1 US診断装置をもちいる脳血栓溶解治験成績 42 29 9 3434 1515 18 18 8 4545 9 8 34 45 15 18 0% 20% 40% 60% 80% 100% Target Control 0-1 2 3-5 Death 21 3232 24 24 32 32 65 65 16 16 12 12 32 24 32 65 16 12 0% 20% 40% 60% 80% 100% US No US 0-1 2-3 4-5 Death 0 20 40 60 80 100 Start 20 40 60 1440 (24 h) Time [min.] Percentage of Pat ients No US US 0 20 40 60 80 100 t-PA bolus 30 60 90 120 Time [min.] Percentage of Pat ients Control Target

Andrei V. Alexandrov, New England J of Med, 2004 Eggers J., Stroke, 2008

TCD (2MHz, pulse) TC-CFI (2MHz, pulse)

[0-1] 13%増加 [0-1] 21%増加 同一プローブから交互 にビームを発射 (インターミンテント法) T-beam 500kHz D-beam 2MHz 150 mm 15 0 50 100 (mm) 500kHz 連続波 治療用 T ビームの標的性 2MHzパルス波 20mm 20mm 20mm

conventional sector probe conventional sector probe conventional sector probe

診断用 D ビームによる中大脳動脈描出例 Fig. 2 TCT-LoFUTの原理と機能 上述の高血圧自然発症脳卒中易発症ラットや霊長類脳梗塞モ デルをもちいた安全性を現在検証中である.未公表であるが, 有益な結論がえられつつあり,PMDA の治験事前相談をおこ なっている. 4.新たな超音波溶解効果増強作用 マイクロバブル(MB)は診断用 US の造影剤として普及し つつあるが,MB を併用することにより,さらに脳血栓溶解率 の向上することが報告された10).TCD!MB!IVrt-PA の三者の 複合作用で,きわめて良好な成績を収めている.さらに rt-PA

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臨床神経学 49巻11号(2009:11) 49:806 をもちいず MB を中心とした TUCSON 治験も展開されてい る.しかし,MB の持つキャビテーション圧壊力は血栓のみな らず,虚血によって脆弱化した BBB の破壊を招来する危険も ある.一時,出血例発生で中断したが,TUCSON は欧州を中 心に継続中である.血圧制御,および血管拡張,抗血小板薬, 抗凝固薬との併用がさらに新たな超音波併用脳血栓溶解法の 臨床技術となる可能性が十分予想される. 5.おわりに US 併用 IVrt-PA が,次世代の超急性期治療技術となる可 能性は高い.とくに副作用の軽減や再開通の加速化の期待が 寄せられる.しかし,救急現場でその活用拡大を図るには,更 に使いやすい US 適用技術が待たれるところである. 1)立花俊郎,古賀悦子:ウロキナーゼのブースターとして の超音波応用.血液と脈管 1981;12:450―453 2)Kudo S : Thrombolysis with ultrasound effect. Tokyo

Jikeikai Medical Journal 1989; 101: 1005―1012

3)関口博仁:超音波照射併用による新しい血栓溶解療法. 慈恵医大誌 1994;109:863―871

4)Siegel RJ, et al: Noninvasive, transthoracic, low-frequency ultrasound augments thrombolysis in a canine model of

acute myocardial infarction. Circulation 2000; 101: 2026― 2029

5)Alexandrov AV, et al: Ultrasound-enhanced systemic thrombolysis for acute ischemic stroke. N Engl J Med 2004; 351: 2170―2178

6)Eggers J, et al: Sonothombolysis with transcranial color-coded sonography and recombinant tissue-type plasmino-gen activator in acute middle cerebral artery main stem occlusion: Results from a randomized study. Stroke 2008; 39: 1470―1475

7)Daffershofer M, et al: Transcranial Low-frequency ultrasound-mediated thrombolysis in brain ischemia: in-creased risk of hemorrhage with combined ultrasound and tissue plasminogen activator: results of phase II clini-cal trial. Stroke 2005; 36: 1441―1446

8)Azuma T, et al: Bubble generation by standing wave in water surrounded by cranium with transcranial ultra-sonic beam. Jpn J Appl Phys 2005; 44: 625―630

9)古幡 博:経頭蓋超音波脳血栓溶解療法.生体医工学 2005;43:197―202

10)Molina CA, et al: Microbubble administration accelerates clot lysis during continuous 2-MHz ultrasound monitor-ing in stroke patients treated with intravenous tissue plasminogen activator. Stroke 2006; 34: 425―429

Abstract

Transcranial sonothrombolysis Hiroshi Furuhata

ME Lab. Research Center for Medical Science, The Jikei University School of Medicine

Transcranial ultrasonic diagnostic equipment has been approved to enhance the thrombolytic effect of IVrt-PA. Moreover, transcranial sonothrombolysis with low frequency ultrasound has a great advantage in lytic effect of IVrt-PA. It is remarkable to choose a optimal ultrasonic condition for transcranial sonothrombolysis. We are de-veloping a new transcranial targeting Low Frequency Ultrasonic Thrombolysis system (TCT-LoFUT). This sys-tem is anticipated to be a useful therapeutic equipment to realize a early recanalization in the acute ischemic stroke treatment.

(Clin Neurol, 49: 804―806, 2009)

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