ロピーの本質の解明
著者
中村 久人
著者別名
Nakamura Hisato
雑誌名
経営論集
巻
49
ページ
119-146
発行年
1999-03-31
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005595/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja経 営 論 集 第49 号 (1999 年3 月 )
多 国 籍 企 業 の 社 会 的 責 任
一
企業フイ ラソスロピーの本質の解明
中 村 久 人 はじめに ! 「企業 と社会」 論U 多国籍 企業 の社 会的 責任 の 分析 枠 組 Ⅲ コ ーポレ ート・ ガバ ナン ス と多 国籍 企業 の 社会性 Ⅳ ステ ータホル ダ ー関 係の 国際的 拡大V 多 国籍企業 の社 会問題 領 域 お わりに 119 は じ め に 現代 企業 は、 社 会 のな かで存 続し 、社 会に 認知 さ れ て初 め て生 き残 るこ とが でき る社 会的 存 在で あ る。 企業 は 社 会 の ニ ーズや動 向を 敏感 に感知 し 対 応す る 必 要が あ る。 特に、 今 日 の よ うに 企業 を 取 り巻 く環 境 が 激変 し てい る状 況下 では 、多 国籍 企業 は 国 内 のみ なら ず 国際 社会に おけ る動 向を 十 分に 考慮 し た 企業 行 動 が求 めら れる。 多 国籍 企業 ばか りで な く、来 るべ き21世 紀 の企業 は社 会 と の関 係で 環境変 化 に対 し て 単に 内部調 整機 構に よっ て自 己 存 在を 図れ るほ ど対応 は容 易 では な く、 場 合に よっ ては構 造的 変 動 の揺ら ぎを 受け 入れ て 創造 的 破 壊を 行 った後、 再 秩序化 を 行い 自己 を 再 組 織化 す る といっ た能 力 が求 めら れ よ う。 さ ら には 、 環 境変 化 に対 して受 動 的な 適応 行動 だけ でな く、 環 境形 成 行動を 伴 う戦 略 的対 応を とるこ と に よ り、 自己 の構造変 革 が迫ら れ よ う1)。21 世 紀 の 日本企 業 が 直面 す る最大 課題 の一 つ は、 企業 の社 会関 係 対応 能力 の 改善 であ る。 グp ー バル 化や 価 値 創 造が 重 視 され る現代企 業 に とっ て、 オ ープ ンで利 他 的・ 互酬 的 な価値 体 系に 基づ い た 異質 な も の も受 け 入 れ調 整 する企業 シ ステ ムを 創 造す る こ とが 緊 要で あろ う。 日本 多 国籍 企 業 は 、い うま でもな く日本 の 大企業 ・ 現 代 企業 の 代表 格 であ るが、 そ れ らが 日本 と は政治 的、 経済 的 、 社会 的 、文化 的に 異な る海 外 諸国 で 現 地経 営を 行 う際、 国 内では 遭遇 し たこ と のない多 く の困 難 な 問題 に 直面す る。 特に、 企 業 の社 会 的責 任 へ の対 応 はこ の 領域で の シ ンボ リ ッ クで代 表的 な 企業 の社 会 的問 題であ り、 そ れは21世 紀 の 日本 企業 が 国 内 で経験 す る社 会的 諸 問題 の 先験 的 学習 事 例 と 目さ れ る のであ る。 特 に、 企業 の社 会 的 責任 の うち最 高次 の責 任 と 考 え ら れ る 社 会 貢 献 (corporatephilanthropy)は、 貿 易摩 擦 や、 投資 摩擦 とも関 連し て、 日本 企業 の存 亡 を も左 右し かね ない 重要 な 課題 が凝 集 さ れた 学 問的 に も 未開拓 な 分野 であ ると 考え ら れ る。 本 稿 では 、多 国 籍企 業 の社会 的責 任( 特 に社 会 貢 献) の 問題 を、「企業 と社 会」 論を 起 点 とし て、 国 際 経営 学 の 観点 から 他 の隣接 科学 であ る 哲学 、 倫 理学 、 経済 学、 社会 学、 宗 教学 、 異文 化 コ ミュ ニ ケ ーシ ョン な どの成 果を 摂取 しな がら 、 分析 を 進 めて ゆ きた い。 そ の 目的 は、 社 会的 責任 の問 題 が一 部 を 形成 し てい る、「 コ ーポレ ートガ バ ナン ス (企業 統治)」、 「ス テ ー クホ ルダ ー( 利害 関 係者)」、お よび 「企業 の社 会 問題 領域」 と 比較 検討 す る こ とに より、 そ の 本質 を 解 明し、 以 て 日本多 国籍 企業 に21世 紀 の新 し い行 動 基 準を 提示 す る こ とに あ る。 I 「 企 業 と 社 会 」 論1 現 代企 業 と 社会 企業 と 社会 に 関 する 議論 は、「企業 と社 会」 のテ ーマだけ で なく、「企業 と環 境 」 や 「企 業 の社 会 的責 任 」 とい った主 題 の下 で も、 こ れま で多 くの論 者 に より展 開さ れて きた。 本節 で は、 まず、「企業 と社 会」論 の基本 的 構成 、そ の特質 と動 向、現 代企業 の社 会的 責 任 の動 向 と類 型 、お よび多 国 籍 企業 の社 会的責 任 の 現代 的特 質 等に つ い て検討 し たい。 (1) 「企 業 と社会」 論 の基 本的 構成 企 業 と社 会 につ い て の理論 の展 開は 、企 業 が 大規 模化 し 、 社会 と の相 互関 連性 が増 大 し た アメ リ カ に お い て も 比 較 的 最 近 の こ と であ り、 ボ ー エ ン (H.R.Bowen,1953 )^)や マ ク ガ イ ヤ (J、w.McGuire,1963 )*の著 作を 以 て、特に 後 者を 以 て「企業 と社 会」の理 論的 系譜 の起 点 と する こ とが で き るであ ろ う4) マ クガイ ヤ以降 、多 くの論 者に よって 論 じら れて き た [企 業 と 社 会 ] 論 に は 、 そ の 基 本 的 構 成 ( 問題 領域 と そ の体系 )に おい て かな りの共 通性 が み ら れる。 まず、 問題 領 域に おい て は、 ① 自由 企業 制 度に 向げ て の企業 の発展 段 階 ② 社 会 の 目的 ・価 値 ・倫 理な ど の動 向に 照応 し た 経営 理 念( 経営 哲学) の展 開 ③ 企 業 権力 の拡大 と 社会的 責 任 ④ 主 要 な ステ ーク ホル ダ ーと企業 と の関 係 ⑤ 企業 の社 会的 責 任 の今 日的 課題、 等 、 であ る。 ①∼ ⑤ に よ って 構成 さ れる 「企業 と社会 」 論は 、 単 なる 事 実や 問題 の寄 せ集 め では な く、そ こ に 理 論的 体系 性が 存 在す る と考え ら れる。 つ ま り、 ① お よび ② では 、 ③の企業 の社 会的 責任 が中 心的 課題 と し て 登場 し てき た背 景 とそ の関 連 領域 が論 じ ら れ 七い る。 また 、 ④では 、 ③に おけ る社会的
多 国籍 企業 の社 会的 責任 121 責 任 の議 論 が 企業を 取 り 巻 く主要 な ス テ ー クホル ダ ー( 株主 、従 業 員、 消費 者 、 地 域社 会、 お よび 政 府 等) との 関連で 議 論 さ れてい る。 ⑤で は、 ③に つい て、 特に 今 日的 問題 ( 企 業 の環 境問 題、情 報 の開示 、 企業 の多 国 籍化 等 )に 焦 点が 当 てら れ てい るの であ る。 (2) 「企業 と社会 」 論 の特 質 と動 向 次 に、 こ うした 「企業 と社 会」 論 の特 質 と内 容動 向に つい て 検討 す る。 まず 、 そ の特質 につ いて は 、 以下 の3 つ を 挙げ る こ とが でき よう。 ① 企 業 環 境論 つ ま り、[企 業 と社 会]論 は企 業 の 社会 的 もし くは 環境 的適 応理 論 であ ると ころ の企 業環 境 論」の 性 格 を 色濃 く有 して い る とい う特 質を 持 つ。 し かし 、 この よ うな 企 業 環 境 論 と し て の 「企 業 と社 会 」 論 は、 しだ いに より広 い 環境 な いし 社 会 との 関係を 対 象領 域に 含 めつ つ あ る とは い え、 企業 と 環 境 全般 もし くは社 会 全般 との関 係 を必 ず し も包括 的、 総 合的 に論 じ る もの で は ない 。 従 来の経営 理 論 が、 企業 の内外 環境 の経 済的 側面 へ の適応に 焦 点を 当 ててい た のに 対 し、 そ れは 社 会的 側面に 焦 点を シフ ト してい る。 ② 企 業 の社 会的 責 任論 [企業 と 社会] 論 で は、 企 業 の社 会的 責 任論 が中 核的 テ ーマ の1 つ にな る こ と が第2 の 特質 であ る。 社会 にお け る企 業 権力 の 増大 に よ り、企 業 の 社会的 責任 が 社会 と企 業 の双 方 に とっ て 重要な課 題 と なっ た ので あ る。 こ の場 合、「企 業 と社会 」論 は、企業 の社会 的 責任 を、具 体 的 に は、企業を取 り巻 く 内外 の ステ ー クホ ルダ ーとの 関 係を 中心 に、 展 開す る こと が多 い とい え よ う。 ③ 経 営 学的 アプ ロ ーチ 「企 業 と 社会」 論 は、 政 治 学、 経 済学 、 社会 学 等の経 営学 との 隣接 科学 の成 果を 摂 取 し てい るが、 あ く まで 企業 自体 もし くは 経 営者 の 観点 に 立脚 し て、 経営 学 の観点 か ら企 業 と 社会 の関 係 を考察 す る アプ ロ ―チを と るこ とを 第3 の特 質 とす る。 経 営学 が中核 に あ り、 基本 的に は経 営学 の 範躊に 属 す るこ とに な るレ 次に 、「企業 と社会」論 の動 向につ いて み て み よう。そ れ は次 の3 段 階に 分け て把 握 す る こ とがで き よ う5)。 ① 企 業 の社 会的 適 応 第1 段 階 は、企業 の社 会 的 適応 とし て 社会 的 責任 の 問題 が検 討 さ れる「企業 と社 会」論 の登場 であ る。そ こで は、社会的 責 任 問題 は、企業 権力 の増 大、し たが っ て市 場支 配力 お よび 社 会的 影 響力 の増 大 に 起因 す る のであ るが、 企 業 の経 済的 適 応 よりも専 ら社 会的 適 応 の課題 を 考 察 の 対 象 とし てきた。
② 社 会的 適 応課 題 の新 展 開 第2 段 階は 、企 業 の 環境 変 化 に 伴っ て生 じる新 た な社会 的責 任 お よび社 会 的 適応 課題 につ い て考 察 す る「企 業 と社 会 」 論 であ る。 具 体的 に は、近 年 の社会 価値 の変化 、 新 た な 社会 問題 の出現、 企 業 の多 国籍 化 等に 伴 っ て生 じ る新 た な責 任問 題 であ る。 また、 企 業 自 体の 行動 に直 接 起因 する もの で な くて も、 社会 や 政府 が 企 業 の所 有 する資 源や 能力 の ために 期 待 す るこ とに よ曹 生 じる責 任も 追 加 さ れる。 ③ 社会 経 済的 適 応 第3 段階 は、 企 業 の社 会 的 適応 だけ で な く、 経 済的 適応 (競 争 市場 的 適応 ) の側面 も併 せて考 察 す る「企 業 と社 会」 論 で あ る。 今 日 の企業 は寡 占企 業 とい え ど 乱 経 済 成長 の 鈍化、 国 際的 なメ ガ コ ンペテ イ ショ ソ の展 開 、 技術 革新 の進展 等に 晒 され てい る。 企業 は 企業 維 持 のた めに も、 また 社 会 的責 任を 果 す た めに も、 競争 市 場で の企業 適 応、 づ ま唐 企 業 の 経済 的 適応 に つ い ても 再度十 分 な 考 察 と実 践を 迫 ら れて い る。 今 日 の 「企業 と社 会」 論に おい て は √競 争市 場 に おけ る企業 の経 済的 適 応が 社 会的 適応 と の均 衡点 を 模索 す る方 向で 、そし て 企業 の新 たな 環境 適 応 論 とし て、 より広範 な 理論 的枠 組 と実 践 的 意義 を 持つ もの とし て志 向さ れてい るとい え よ う。 (3)多 国籍企 業 の社会 的 責 任 の現 代的 特質 以 上 、「企 業 と社 会」論 の 基本 的 構成 お よびそ の特質 と動 向に つい て検 討し た。本稿 で ぽ、企業 の 社会 的責 任 の今 日的 課題 と し て の多 国籍 企業 の 社会的 責任 につ い て 、「企業 と社 会 」 論 の発 展 の 第3 段 階 であ る [企業 の社 会 経 済的 適 応] の観 点か ら考 察し たい 。 こ れ まで みて き た よ うに 、企 業 は当 初 そ の経 済的適 応( 競争 市 場的 適 応 )に の み専念 し ていた が、 既 述 の よ うな新 しい 環 境 変化 に 伴 う て、 社会的 適応 が 要請 さ れる よ うに な った ので あ る。そ れ以 降 の展 開につ い て は、 既 述 の 「企 業 と 社会」 論 の3 つ の発展 段階 と し て把 握 さ れ るわけ であ るが、企 業 、 特に多 国 籍 企業 の社 会的 責 任論 では、 第3 段階 とし て の企 業 の 社会 経 済的 適応 が 喫緊 の課題 と な っ てい る。 第1 段階 お よ び第2 段 階 での 社会 的責 任 は、 企業 から み れば 経 済的 適 応に 社 会 的 適応 が とって代 わ った ので は な く、 従来 の経 済的 活 動に 社 会的 責任 が 付加 され た だけ の も ので あ っ た とい え よ ‰ そ れが証 拠 に は、 例 えば 、 日 本企 業 の場合、 利 益が 上が って い る時 期 に は社 会 的 貢献 活 動が喧 伝さ れた が、 バブ ル 崩 壊後 、 そ の 言葉 は 閉塞 状態 に 陥っ てい る。 犬 社 会的 責任 、 特に そ の最 高 次 の責 任 として の 社会貢 献 は、 企業 の本業 とは 直 接 関 係の ない 領域に お い て もそ れが 所 有す る 資 源や 能 力を 活 用す る諸 々の貢献 が期 待 さ れ る よ うに な った の であ る。 こ れで は利 益が で な くな れ ば 社会 貢 献 が沙 汰止 みに な るの は当然 と もい え よ う。
多 国 籍 企 業 の 社 会 的 責 任 123 本稿 の主 唱す る多 国籍 企 業 の社 会 的責 任は 、企業 の社会貢 献 活動 を重 要 な 企業 の競 争 優位 の源泉 の1 つ として 位 置づけ るも のであ る。 つ ま り、 そ れは 決し て企業 に と っ て付 加的 な も のでは な く、 企業 がそ の有 す る資 源や 能 力を 本業 と の関連に おい て充 分に 駆 使で き る現 実 的 な も ので ある。 具体 的に は 、海 外 子会 社 で の現 地人管 理 者 の 教育 訓練、 海外 子会 社 へ の積 極的 な 技術 移転 、 現地に おけ る企 業 情報 の充 分 な 開示 、 地 球環 境 問 題へ の 自発的対 応 、等を 通 じ た社 会 貢献 で あ る。 この ように、多 国籍 企 業 の社会 的 責 任 の現代的 特質 は 企業 の社 会的 適 応 と経 済 的 適 応 とが車 の両 輪 のご と くタイ アップ し 、そ れの促 進を 促 す ものであ る こと が求 めら れ よ う。 2 企業 環 境 分 析 の た め の モ デ ル (1 )SEPTEmber モ デ ル 現 代 の 企 業 環 境 を 分 析 す る た め の1 つ の モ デ ル と し て 、Wilson (1977 )')、Wood(1994 )')ら は 、図1 に 示 す よ う な 「SEPTEmber 」モ デ ル を 開 発 し た 。こ の モ デ ル で は 、企 業 を と り 巻 く 環 境 を 下 記 の5 つ の 部 門 と そ の 構 成 要 素 に よ っ て 説 明 し て い る 。 社 会 的 環 境 (S:SocialEnvironment ): 文 化 、価 値 観 、人 口動 態 、社 会 的 組 織 形 態 、権 力 関 係 な ど 経 済 的 環 境(E:EconomicEnvironment ): 生 産 ・ 分 配 ・ 交 換 の 状 況 、GNP 、 市 場 構 造 、 競 争 状 態 な ど 政 治 的 環 境 (P:PoliticalEnvironment ): 法 律 、 公 共 政 策 、統 治 、( 政 治 的 )影 響 力 、 権力 の 配 置 な ど 技 術 的 環 境 (T:TechnologicalEnvironment ): 生 産 機 器 と 生 産 方 法 、 資 源 操 作 、 コ ミ ュ ニ ヶ − シ ョ ソ 、 知 識 の 生 産 と 利 用 、 イ ンフ ラ 開 発 な ど エ コ ロ ジ ー ( 自 然 環 境 )(E:Ecology ): 天 然 資 源 、 自 然 の 美 あ る い は 審 美 に 対 す る 情 緒 的 涵 養 、 生 命 の 持 続 な ど こ れ ら5 つ の 部 門 と そ の 構 成 要 素 は 複 雑 に 相 互 に つ な が っ て い る 。 例 え ば 、80 年 末 か ら90 年 代 初 頭 に か け て 勃 発 し た 東 欧 や 旧 ソ 連 の 政 変 で は 次 々 と 共 産 政 府 が 倒 さ れ た の で あ る 。 こ れ ら の 国 々 の ビ ジ ネ ス ・ 経 済 環 境 は 、 そ れ ら の 政 変 の 結 果 と し て 、 遅 か れ 早 か れ 国 有 企 業 や 計 画 経 済 の 終 わ りを 告 げ た の で あ る 。 そ れ は3 桁 の イ ン フ レ に よ る 通 貨 価 値 の 大 暴 落 、株 式 市 場 の 設 立 、「全 体 に よる 所 有 」 と い う ユ ート ピ ア 思 想 に 代 わ る 私 有 財 産 概 念 の 漸 次 的 な 普 及 、 を 招 来 し た 。 社 会 的 環 境 で は 、 価 値 観 が 民 主 主 義 や 私 企 業 に 向 け て 移 行 し 、 社 会 は ま た 長 年 地 下 で く す ぶ り続 け て い た 民 族 紛 争 を も 再 燃 さ せ た の で あ っ た 。 国 境 が オ ープ ン に な る に つ れ て 、 労 働 力 人 口 の 移 動 も 増 大 し た 。 技 術 的 中 核 に 生 じ た 変 化 は 、 西 側 企 業 が 新 し く 誕 生 し た 企 業 に 技 術 支 援 を 開 始 す る こ と に よ っ て 生 じ た 。 ま た 共 産 主 義 者 や そ の 政
府 に よって 実施 さ れ た エ コロ ジ ーの破 壊が 明らか に なるに つ れて、 天 然資 源 の環 境保 護が多 国籍 企 業 の経営 者 や政 府 に と って重 大な 問題に な った。 こ のよ うに、 今 日 の グ ロ ーバル な企業 環境 を理 解し 、そ れに対 応 す る ため に 、SEPTEmber モ デ ル は、企 業環 境を 単に 資 金、 財 、技 術 のフp ―とし て設定 する ので は な く、一 連 の相互 に 連結 され た 人的・ 物的 要 素 の集 合 体 とし て理 解す る第一 歩 を 提供し たも ので あ る。 図1 企業 環境のSEPTEmber モ デ ル SOCIAL ENVIRONMENT Culture,values, people,organizations ECOLOGY(NATURAL ENVIRONMENT)E Naturalresources, sustenance,beauty - ・-ECONOMIC \ENVIRONMENTConditionsofproductionanddistribution _ _ |  ̄ " ] │ ∴ ・・ │ THE FIRM T P TECHNOLOGICAL ENVIRONMENT Tools,methods, knowledge POLITICAL ENVIRONMENT Governance,law policy,influence Source:Wood,1994 (2 ) 機 関 − イ デ オ ロ ギ ー ・ モ デ ル
図2 は 、SEPTEmber モ デ ル を 一 歩 進 め 精 緻 化 し た「 機 関 − イ デ オ ロ ギ ー・モ デ ル バinstitutionaトideologicalmodel:IIM ) で あ り、Wartick =Wood (1997 )')に よ っ て 開 発 さ れ た も の で あ る 。こ の モ デ ル は 広 く人 的 活 動 と い う も の が い か に 組 織 化 さ れ て い る か を 説 明 す る 論 理 的 枠 組 と 考 え ら れ る 。 こ の モ デ ル で ぱ 、 技 術 と エ コ ロ ジ ー が 中 核 に 据 え ら れ て い る が 、 そ れ は こ れ ら の 要 素 が 最 も 重 要 で あ る と い う 意 味 で は な く 、 こ の2 つ が 社 会 に おけ る 可 能 性 の 核 に な る も の で あ り 、 そ れ ら は ビ ジ ネ ス ・ 政 府 ・ 公 共 活 動 の 制 度 的 プ ロ セ ス ( 機 関 ) を 通 じ て 明 確 に さ れ 、 さ ら に 経 済 的 ・ 政 治 的 ・ 社 会 的 イ デ オ ロ ギ ー に よ っ て 特 定 の 形 態 と 関 係 が 形 成 さ れ る と い う 理 由 か ら で あ る 。 ま た 、 天 然 資 源 ( エ コ ロ ジ ー) は し ば し ば 無 視 さ れ て き た が 社 会 シ ス テ ムに と っ て 非 常 に 重 要 な 物 理 的 要 素 で あ り 、 制 度 上 の 諸 活 動 を 実 現 さ せ る 際 の 資 源 の 核 を 提 供 す る か ら で あ る 。 さ ら に こ の モ デ ル で は 、 社 会 的 ・ 経 済 的 ・ 政 治 的 環 境 部 門 を 各 々 イ デ オ ロ ギ ー要 素 と 機 関 要 素 に2 分 し て い る。 イ デ オ ロ ギ ー要 素 は 集 団 行 動 の 根 底 に あ る 思 想 、 価 値 観 、 信 念 で あ り 、 機 関 要 素 は
多 国 籍 企 業 の 社 会 的 責 任 125 活 動 の場 とし て の グル ープ や組 織を 意味 し てい る。 つ ま り、 こ の モデル では、 人 的 活 動を 駆 り立 七 る イ デ オ ロギ ー的 思想 体系 とそ うし た活 動 が実 際 に 行 われ る装 置とし て の機 関や 組 織を 区別 し てい る の であ る。 機 関 とは 何ら か の基 本的 な社会的 目的(societalpurpose )を もつ組 織化 さ れた 進 行中 の人 的 活動 であ る。 そ うし た観 点に 立 てば、 社会 は 次 の3 種類 の機 関活 動を 有す るこ とに な る/。 ビ ジネ ス( 経 済的 )、 政 府 (政 治的 )、 公共( 社会 的) の諸 活 動 であ る。 こ れら の機 関は 社会 の 問 題 と進 歩を 生 み 出す 装 置 とし て すべ て の社会に 存在 す る。 まず、 ビ ジ ネス機 関は 、イ ンプ ット( 土 地 、 労 働、 天然 資 源、 アイデ ィア、資 本 な どの) を 社 会 の物 的 ニ ーズ や 欲求を 満 たす アウト プ ット ( 財、 サ ービ ス、 雇用、 富、利 益 、 収入 な ど) に転 換 す る こ とを 主 に 意図 した 組織 化さ れた 進行 中 の 諸活 動 で 構成 さ れてい るよ そ して 、 こ こで、 ビ ジ ネス とい う言葉 は 、企 業 だけ でな く物 的転 換 過程 自体 とこ の過 程に 参 加 す る ど の よ うな 種類 の組 織 も含め てい る。 例 え ば、 私 的所 有企 業 の他 に 、 国営 企 業 、 政 府 支 援 イ ン キ ュベ ー タ ー、 公益 法人 の病院や 教育 機 関、 飢え た 人 々の ため に食物 を 支給 す る食 堂 、 都市 の リサ イ クル 組 織 、農 業団 体 など である。 図2 機関 − イデ オロ ギー ・モデ ル 政 府 機 関は す べて の人 々に 適用 さ れる 規則 を 制 定 し、 施 行し 、 またそ れら の 規則 の例 外を 正 当化 し つつ 、社 会を 組 織だ て るこ とを主 た る 目的 と し て組 織化 さ れ た進行 中 の諸 活動を い う。通 常 、規則 に は 社 会 の資 源、 便益 、 負担 を再 配分 す る だけ で な く社 会的 に コント ロ ール す る要 素 が含 まれ る が、 機 関 プ ロ セ スとし て の 「政府 」は、 そ の言葉 が 通常 示 す 社会 構 造や 組織を 遥 かに超 え た概 念 に な る。
公 共 機 関 と は 、 家 族 、 教 育 、 宗 教 、 ク ラ ブ 、 ボ ラ ン タ リ ー 協 会 等 を 指 し て お り 、 主 と し て 友 好 (affiliation)、 親 善 (socializatin)、 理 解 (interpretation) に 役 立 つ 組 織 化 さ れ た 進 行 中 の 活 動 で あ る 。 た だ 、 こ れ ら の 活 動 に つ い て は 、 こ れ ら の 組 織 だ け で な く 企 業 や 政 府 組 織 も 主 た る 目 的 と し て で は な い が 実 施 す る こ と が で き る 。 し か し 、 機 関 を そ の よ うに 個 別 に 区 分 す る こ と は 、 組 織 や そ の 活 動 の 実 際 に 照 ら し て み た 場 合 現 実 的 で は な い 。 工IM モ デ ル で は 、 社 会 シ ス テ ム、 機 関 、 組 織 と い っ た も の を み る 場 合 、 よ り相 互 関 連 的 に 現 実 的 な 見 方 を 採 用 し て い る。 実 際 に は 、 あ ら ゆ る 種 類 の 組 織 は 、 程 度 の 差 こ そ あ れ 、3 つ の 基 本 的 な 機 関 的 機 能 の す べ て を 実 行 し て い る の で あ る 。 企 業 は ビ ジ ネ ス 機 能 が 中 心 で は あ る が 、 他 の2 つ の 機 関 的 機 能 も 果 た し て い る 。 ま た 、 報 道 機 関 な ど は 典 型 例 で あ る が 、3 つ の 機 能 を 使 い 分 け て い る と い え る し 、 大 学 と い え ど も 公 共 的 機 能 だ け を 実 行 し て い る わけ で は な い 。 次 に 、 イ デ オ ロギ ー は 、 社 会 の 主 要 な 局 面 に つ い て の 思 想 や 構 想 を 描 写 し た 価 値 観 の 集 合 と 定 義 で き る (Cavanagh,1990 )≒IIM モ デ ル で は 、3 つ の 社 会 的 機 関 ( ビ ジ ネ ス 、 政 府 、 公 共 ) は そ れ ぞ れ 経 済 的 、 政 治 的 、 社 会 的 イ デ オ ロ ギ ー と 対 応 し て 形 成 さ れ て い る 。 こ こ で い う イ デ オ ロ ギ ー の 種 類 と そ の 活 動 の 範 囲 は 、 図3 に 示 す 通 り で あ る 。 機 関 上 の 活 動 は 根 底 に あ る 基 本 的 な イ デ オ ロ ギ ーに 基 づ い て 説 明 さ れ 正 当 化 さ れ る の で 、 機 関 に 比 べ て イ デ オ ロ ギ ー の 位 置 は 優 位 に あ る。 し か し 、 機 関 上 の 機 能 と イ デ オ ロ ギ ー の 対 応 は1 対1 で は な く 相 互 関 連 的 で 同 時 的 な 対 応 に な っ て い る 。 自 由 市 場 資 本 主 義 個 人主 義 図3 イ デ オ ロ ギ ー の 連 続 体 規 制 さ れ た 資 本 主 義 混 合 社 会 主 義 経 済 的 イ デ オ ロ ギ ー の 範囲 交 渉 に よる 合 意 単 純 な 民 主 主義 共和 的 民 主 主 義 政 治 的 イ デ オロ ギ ーの 範 囲 社 会 的 イ デ オ ロ ギ ー の範 囲 社 会 民 主主 義 ユ ー ト ピ ア 共 産 主 義 全 体 主 義 集 団 主 義
多 国 籍 企 業 の 社 会 的 責 任 127 n 多 国 籍 企 業 の 社 会 的 責 任 の 分 析 枠 組 前 節 で 考察 し た多 国籍 企業 の社会 的責 任 の現 代 的特 質 を 念頭 に置 き、 企業 環境 分析 の モデ ル( 特 に、 機 関 −イ デ オロギ ーモデ ル) の概念を 援 用 す る形 で 、本 節 では多 国籍 企業 の社 会的 責 任( 特 に 社 会 貢 献) に つい て 、境 界領 域的 アプ ロ ーチ に よる概 念的 枠 組 の構 築に よ りそ の本質 の解 明を 行い た い。 ま た、 企 業 の社 会的 責任 は、 コ ーポレ ート ・ ガ バナ ン ス、 ス テ ー クホル ダ ー、 企業 の社会 問 題 領 域 、 の各 概念 の一 部を 構成 するこ とに 着眼 し、 そ れ ら と の比較 研 究に より、そ の 本質を 把 握 せ ん と す る もの であ る( 図4 参 照)。特 に、社 会的 責 任 の一 部 とし て の企 業 の社 会貢 献は 、上 記3 つ の 理論 の重 複 す る部 分 に位 置づけ ることが 可能 であ る と考え る。 また 、社 会 的責 任 お よびそ れを 包 含す る上 記3 つ の概 念 は、 機 関(制 度) とし て 把 握す る こ とが 可 能 であ り、 前節 の機関 −イ デオ ロギ ーモデ ルを 援 用 し 、そ れ ら は政治的 ・経 済的 ・社 会 的イ デ オ ロギ ーの中 に包 含 さ れる も のと考 え る。 ① 企業 内 部 の ガバ ナ ン ス ② 企業 間 関係 の ガバ ナ ン ス ③ 社 会 的 関係 に お け る ガ バ ナ ン ス 図4 企 業 社 会 貢 献 の 概 念 的 フ レ ー ム ワ ー ク 図4 に示 さ れ る 「企業 社会 貢献 の概念 的 フ レ ー ム ワ ーク」 は、 本 社 の所在 す る母国 で の分 析枠 組 として だげ で な く、海 外 におけ るそ れぞ れの子 会 社 の受 入 国 で も適用 可 能な グ ロ ーバルな 理 論的 枠
組 とし て普 遍性 を 有す るも のと考 え る。 以下 順を 追 って こ の概念 的フ レ ームワ ークの 各構 成 要 素に つ い て概 説 し よ う10)。(1) イ デ オ ロギ ーの局面 経 済的 イ デ オロ ギ ー、 政治的 イ デ オロ ギ ー、 社 会的 イ デ オロ ギ ー各 々の 具体 的 内 容に は 以下 のも の が含 ま れ る。 ① 経 済的 イ デ オロギ ー( ア) 社 会 での企 業 の役割 と地 位に つい て広 く行 き渡 って い る考え 方 は どの よ うな も のか( イ) 企業 に対 し て なさ れる期 待は 何 か( ウ) 私 有財産 に対 し て どの よ うな 見方 が さ れ るか( エ) 自 由主義 企業 と社会主 義 の思 想 は うま く ミ ッ クスす るか( オ) 独占 は受け 入 れら れ るか。 競争 市場 は 独占 市 場 よ りも好 ま れるか 、そ の反 対 は ど うか( 力) オ ーナ ー、 従業員 、管 理者 、顧 客、 地 域社 会 の各 々が持つ 権利 は ど の よ うな も の か( キ)そ の国 の経 済的 イデ オ ロギ ーは 自社 の文 化 と一 貫 性 があ るか ② 政 治 的イ デ オ ロギ ー( ア) 社 会 で の政府 の役 割と 地位 につ い て広 く行 き渡 っ てい る考 え方 は ど のよ うな も のか( イ) 政 府に 対し て なさ れる 期待 は何 か( ウ) 政 治的 意 向は ど の程度 政府を 通 じ て行 使 さ れ るか( エ) 自 由主 義企 業 と社会 主義 の 思想 は うまく ミ ッ クス す るか( オ)国 民は 、官 僚的 、民 主的 、全 体 主義 的 、 の ど の政府 形 態を 信じ るか 、あ るい は受 け 入 れる か( 力)そ の国 の経 済的 イデ オロギ ーは 自 社 の文 化 と一貫 性 が あ るか ③ 社会 的 イデ オロギ ー( ア)社 会 で の公 共機 関の 役割 と地 位 につ い て広 く行 き渡 っ てい る考 え方 は ど のよ うな も のか( イ)公 共 機 関に対 し てな さ れる期 待 は 何か( ウ) 公 共 組織 の メ ンバ ーは どの程 度 自発 性 があ る と考 え ら れるか( エ) そ の国 の社会 的 イデ オ ロギ ーは 自社 の文 化 と一 貫 性 があ るか さら に 、 全体的 な立場 から 、そ の 国で の 経 済的 、 政治 的 、 社 会 的 な 各 エ ネル ギ ー の 関 係 は ど う な って い る のか、 自社で 問題 にな りそ うな矛 盾 や コソフ リ クト は存 在す るか 、 とい っ た3 つ のイ デ オ ロギ ーの 相互作 用を 考 察す る必 要 があ る。
多 国籍企業 の社会的責 任 129 (2 ) 機 関 ( 制 度 ) の 局 面 / ① コ ー ポ レ ート ・ ガ バ ナ ン ス 十 コ ー ポ レ ート ・ ガ バ ナ ン ス を 機 関 ( 制 度 ) と し て 把 握 す る と き 、 主 体 は も ち ろ ん 企 業 で あ る 。 よ り 具 体 的 に は 、 企 業 統 治 に 関 わ る 機 関 と し て は 、 株 主 総 会 、 取 締 役 会 、 経 営 委 員 会 ( 常 務 会 ) な ど の 企 業 の 最 高 意 思 決 定 に 関 わ る機 関 で あ ろ う。 但 し 、 株 主 総 会 は 一 般 的 に 無 機 能 化 し て い る が 、 次 に 取 り 上 げ る ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 有 力 メ ン バ ー と し て の 株 主 と 重 複 す る こ と に な る 。 し か し 、 よ り重 要 な の は そ れ ら の 機 関 が 果 た す 機 能 で あ る。 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 論 の 系 譜 は 、 バ- リ = ミ ー ン ズ (Berle =Means,1932 )'"の 「経 営 者 支 配 論 」 に そ の 源 流 を 見 い 出 す こ と が で き る が 、 そ れ 以 降 、 マ ー チ = サ イ モ ン (March =Simon,1958 )'^)に よ る 「組 織 意 思 決 定 論 」、 フ ェ ッ フ ァ ー = サ ラ ン シ ッ ク (Pfeffer =Salancik,1978 )'^)ら に よ る 「資 源 依 存 論 」、 さ ら に は コ ー ス(Coa-se,1937
)'^)に よ り創 始 さ れ ウィ リ ア ム ソ ン (Williamson,1986 )'^)ら に よ り精 緻 化 さ れ た 「 取 引 費 用 論 」 な ど を 挙 げ る こ と が で き る 。 そ れ ら 理 論 の 特 色 と 欠 点 を 中 心 に 検 討 し た い 。 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス は 、 ① 企 業 内 部 の ガ バ ナ ン ス 、 ② 企 業 間 関 係 の ガ バ ナ ン ス 、 ③ 社 会 的 関 係 に お け る ガ バ ナ ン ス 、に 分 類 で き る が16)、企 業 の社 会 貢 献 と の 関 係 で は 、当 然 「 社 会 的 関 係 に お け る ガ バ ナ ン ス 」 が 最 も 関 係 の 深 い 領 域 で あ る 。 も っ と も 、 こ の 領 域 に は 、 イ ン ペ ス タ ー リ レ ー シ ョ ソ ズ( ス テ ー ク ホ ル ダ ー と も 重 複 ) や 顧 客 満 足 (consumersatisfaction ) も 存 在 し て お り 、こ れ ら も広 い 意 味 で の 企 業 の 社 会 的 責 任 の 構 成 要 因 と み る こ と が で き よ う。 ま た 、 日 本 型 ガ バ ナ ン ス の 欠 陥 に つ い て 考 察 し 、 そ れ を 補 強 す る 方 策 と し て 米 国 企 業 で 導 入 さ れ つ つ あ る 公 共 利 益 代 表 取 締 役 (PID ) の 制 度 に つ い て も 検 討 す る 。 ② ス テ ー ク ホ ル ダ ー 現 代 企 業 に お い て は 、 ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 範 囲 は 国 内 的 に も 国 際 的 に も 拡 大 し て い る 。 国 内 企 業 に お い て は 、 具 体 的 な ス テ ー クホ ル ダ ー と し て は 、 株 主 、 従 業 員 ( 女 性 、 身 障 者 、 高 齢 者 を 含 む )、 取 引 先 、 競 争 企 業 、 顧 客 ( 消 費 者 )、 政 府 ( 中 央 、 地 方 )、 地 域 社 会 、 一 般 社 会 、 環 境 保 護 団 体 、 マ ス コ ミ機 関 な ど が 存 在 す る が 、 抽 象 的 な も の ま で 含 め る と 、 自 然 ・ 環 境 保 全 、 文 化 ・ 芸 術 関 係 、 学 術 ・ 研 究 関 係 、 教 育 関 係 、 ス ポ ー ツ関 係 、 福 祉 関 係 、 製 造 物 責 任 ( 製 造 業 で な け れ ば 消 費 者 保 護)、 異 質 な 価 値 観 、 国 際 交 流 ( 留 学 生 支 援 、 難 民 救 済 な ど )、国 際 貢 献 な ど と 無 限 に 拡 大 し て い く の で あ る 。 従 っ て 、 多 国 籍 企 業 の ス テ ー ク ホ ル ダ ーは 海 外 子 会 社 の 数 が 増 加 す れ ば す る ほ ど そ の 数 と 種 類 が 拡 大 さ れ る こ と に な る。 し か し 、 海 外 子 会 社 ご と に ス テ ー タ ホ ル ダ ーの 数 と 種 類 は 異 な る の で あ り、 優 先 順 位 も 異 な る こ と に な る 。 さ ら に 、 ス テ ー ク ホ ル ダ ー 管 理 と い っ た 立 場 か ら 、 ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 確 認 、 そ れ ら の 権 力 基 盤 、
ステ ークホル ダ ーの特 徴お よびそ れら の関係 につ いて も分 析を 行 う。 以 上の よ うな、 ステ ー クホ ル ダ ーの優 先順位 やそ れら との 関係 は時 間 の経過 に 伴 っ て変化 して い くこ とに 注 目した い。 ③ 企業 の 社会 問題 領域 こ こでは まず 、 ダ ラ ッド ウィソ = ウォ ルタ ー(Gladwin =Walter,1979)")の所 論 を 参 考 に し な が ら、 多 国籍 企業 と受 入 国 政 府 の摩 擦 の構図 と 内容、 紛争 対応 行 動 の決 定 因 と解 決 の ため の様式 につ い て検討 す る。 こ うし た 摩擦 や 紛争 を多 国 籍企業 の一 種の社 会 問題 とみ て も差 し 支 えない と 思わ れ る。 次 に、多 国籍 企業 の社 会的 成 果(CorporateSocialPerformance:CSP) の 観点 から、シ ェテ ィ(Sethi,1975)'^) 、 キ ャロ ル(Carol,1979)'")、 ワ ーティ ッ ク= コ ク ラン(Wartick =Cochran,1985)20)
の先行 研 究を 参考 に し て、 企 業 の社 会的 責任 、社 会的 感応 性 、 お よび イ ッ シ ュ ー・ マ ネ ケメ ソ ト ヘ の理 論展 開 過程 を 概 観 す るこ とに より、3 つ の類似 概念 につ い て の性 格と 位 置づ けを 明確に する。 また 、 イ ッシ ュ ー・ マ ネジ メ ント が対 象 とす る問題 、特 に 社会 問題 を 多 国籍 企業 との関 係で考 察 す る。 そ こで は、 テ ロ リズ ム、 人 権、 政 治、 不 明瞭 な支 出、 マ ー ケテ ィ ン グ、 労 使関 係、 環境、 技 術、 経 済・ 金融 等 の 各分 野 にお い て さまざ ま な社 会問 題 が存 在す る。 以 上、3 種 のイ デ オ ロギ ーと機 関に よって 構成 さ れる社 会的 責 任( 特 に 社会 的 貢 献) の 概念的 フ レ ー ムワ ー クを 概 説 して き た が、 既述 の よ うに 企業 の社会 貢献 は、 こ れら3 種 の機 関 が重 複する中 心点に 位 置づけ ら れ る もの であ る。 また、 こ のフ レ ー ムワ ータに おげ る3 種 の イデ オロギ ーと各機 関 と の関 係 は、 ワー テ ィ ック= ウ ッイ の 機関− イ デ オロギ ーモデ ル と同 様、 機 関 上 の機 能 とイデ オ ロギ ーの 対応 は1 対]。に 限定 さ れ る もので はな く、 相互 関 連的 で同 時 的 な対 応 に な って い る。 Ⅲ コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス と 多 国 籍 企 業 の 社 会 性1 コ ーポ レ ー ト・ガ バ ナ ン ス21 世紀 に おげ る企業 の維 持 成長 を 考え る とき、 企業 は 国 内的に も国 際的 に も 機 能す る均 衡 のとれ た コ ーポ レ ート ・ ガ バ ナ ンス(corporategovernance: 企業 統 治、企 業 支 配あ る い は企業 運 営)を 構 築す る こ とが緊 要 で あ る。 寺本 = 坂井 ==西村(1997)'"に よれ ば、 機能 的 な コ ー ポレ ート ・ガ バナ ン スを 構築 す るに は 、 ガ バ ナン ス の基本 的 な方 向性 を示 す 「戦 略性 」 を 明確 に し 、 経営 情報 の積極 的 な開示 に よる 「透 明性」 を 確保 し 、広 く 企業外 部 に開 か れた 「社 会 性」 を 確立 す る ことに より、 企 業 の 「革 新性」 を 実 現 す る こ とが 求 めら れ る。 日本 の コー ポレ ート ・ ガバ ナン ス論 は、 企業 の所 有 関 係を 中 心 とし た 「企業 は 誰 のも のか」 とい う議 論に 傾 きが ちで あ っ た が、今 日 の ように 大規模 化 し、 国 際化 し、 複雑 化 した 企 業 を対 象 とし て と り上げ る場 合、 そ れ だけ で は不 十分 で あろ う。
多 国籍 企 業 の 社 会 的 責 任 131
こ れ ま で 、 コ ー ポ レ ー }・ ガ バ ナ ン ス 論 の 系 譜 と し て は 、Berle=Means (1932 )'''に 始 ま る 「経 営 者 支 配 論 」 か ら の ア プ ロ ー チ 、Barnard (1938 )'')に よ り 創 始 さ れ 、Simon (1957 )'"に よ り 展 開 さ れ 、March
=Simon (1958)'' )に よ り 集 大 成 さ れ た 「 組 織 意 思 決 定 論 」 か ら の ア プ ロ ー チ 、Pfeffer =Salancik (1978 )'^)、Pfeffer(1981)'"ら に よ る「資 源 依 存 モ デ ル 」的 ア プ ロ ー チ 、さ ら にCoase (1937 )'') に よ り 創 始 さ れ 、Williamson べ1975 、1985 、^ggg )29)`31)に よ り 精 緻 化 さ れ た [取 引 費 用 論 ] か ら の ア プ ロ ー チ な ど が あ る 。 ① 経 営 者 支 配 論 か ら の アプp ー チ 大 企 業 に お け る 支 配 の 実 質 的 な 主 体 が 所 有 者 ( 株 主 ) 支 配 か ら 経 営 者 支 配(managementcontrol ) に 移 行 し た こ と を 実 証 し た 。 し か し 、 コ ー ポ レ ー ト ・ ガ バ ナ ン ス 論 と し て は 、「誰 が 企 業 を 支 配 し て い る か 」 と い う こ と を 問 題 と す る だけ で な く 、 も っ と多 様 な ス テ ー ク ホ ル ダ ー の利 害 関 係 に ま で 対 象 を 拡 大 し 、「社 会 の公 器 と し て の 企 業 は 誰 の た め に 、何 を な す べ き か 」 とい う 問 題 に ま で 踏 み 込 ん だ 議 論 を し て い な い と こ ろ に 限 界 があ る。 ② 組 織 意 思 決 定 論 か ら の ア プ ロ ー チ こ の 理 論 で は 、 企 業 内 部 の ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 利 害 調 整 と い うガ バ ナ ン ス 問 題 に 対 し て 、 組 織 的 協 働 な ど の 解 決 方 法 を 提 示 し てい る 。 し か し 、 こ の ア プp ー チ は 、 主 と し て 組 織 内 部 の 意 思 決 定 問 題 に 向 け ら れ て お り 、 組 織 を 外 部 環 境 と の 関 係 で 十 分 に 検 討 し て い る と は 言 い 難 い 。 企 業 を と り巻 く多 様 な 外 部 の ス テ ー ク ホ ル ダ ー ど の ガ バ ナ ン ス 問 題 に つ い て は 充 分 解 明 さ れ て い な い 。 ③ 資 源 依 存 モ デ ル 的 ア プp ー チ こ の モ デ ル は 、 組 織 と 環 境 の 資 源 依 存 関 係 な ら び に そ こ か ら 派 生 す る パ ワ ー 現 象 に 注 目 し 、 依 存 性 と パ ワ ー と い う 観 点 か ら 、 組 織 構 造 が一 定 の 条 件 と 適 合 し て い る か ど うか を 説 明 す る 。 し か し 、 こ の モ デ ル は 、 企 業 内 部 の ス テ ー ク ホ ル ダ ー の 利 害 調 整 の 取 扱 い に つ い て は 分 析 が 不 十 分 で あ る。 ④ 取 引 費 用 論 か ら の ア プp ー チ 市 場 と組 織 は 経 済 的 取 引 を 行 う た め の 代 替 的 手 段 の 関 係 に あ る と い う分 析 枠 組 で あ る 。 取 引 費 用 理 論 と ガ バ ナ ン ス 問 題 の 関 連 性 を 挙 げ て み よ う。 例 え ば 、 効 率 的 な 市 場 で は 機 関 株 主 で あ る 企 業 は 、 投 資 先 企 業 に 不 満 が あ れ ば 、 市 場 取 引 を 選 択 し 、 そ の 株 式 を 売 却 す る 。 反 対 に 効 率 の 悪 い 市 場 で は 、 監 視 の た め の 費 用 が か さ む た め 、 そ の 企業 は 投 資 先 企 業 を 買 収 す る こ と に よ り 、 市 場 よ り も 組 織 を 選 択 す る こ と に な る 。 ま た 、 組 織 か 市 場 か と い う2 分 法 で は な く 、 そ の 間 の 「中 間 組 織 」 に つ い て の 議 論 も 可 能 で あ る 。 特 に 日 本 企 業 の ガ バ ナ ン ス 問 題 と し て は 重 要 な 鍵 を 与 え て く れ る 。 し か し 、 取 引 費 用 理 論 は 、 事 後 的 な 分 析 で あ る た め 企 業 の 方 向 性 を 論 じ る 戦 略 論 と し て は 無 力 で あ る こ と 、 ま た 、 取 引 の 収 益 性 に 十 分 な 配慮 が な さ れ て い な い と い う欠 陥 が あ る 。 以 上 の よ う な コ ー ポ レ ー ト ・ガ バ ナ ン ス の 理 論 を 基 礎 と し て 、 現 実 と し て の 企 業 に お け る ガ バ ナ
ソ スの課 題 を考 察 す る場 合、 問題 の 領域は 、 ①企業 内部 の ガバ ナン ス、 ②企業 間関 係に おけ る ガ バ ナ ンス、 ③ 社会 的 関 係に おけ るガ バ ナン ス、 に 区 分 する こ とが 可 能 であろ う。 当 研究 テ ーマは、 こ の うち特 に 「 社会 的 関 係におけ るコ ーポ レ ート ・ ガ バナ ン ス」 と 直接 関 係を 有 するこ とにな るが 、 こ の領域 に は、 企 業 フ ィラ ンス ロピ ーだけ でな く、 イ ソ ペ ス タ ー・ リレ ーシ ョ ソズ(Ik: 投 資 家 や アナ リスト な どに 自社 の実 像を正 確に 理 解し て もら い 、彼 ら と の信 頼関 係を 築 くこ と) や顧 客 満 足 (CS : 製品 、 サ ービ スに対 す る満足 だけ で な く環 境 問題 、 高齢 者 や身 体障 害者 へ の配 慮等 も 含 まれる ) 等 への 対 応 も必要 となる。 2 公 共利 益 代 表取 締役 (PID ) 制度 の導 入(1) 日本 型 ガ バ ナ ンス の欠 陥 日本 企業 のガ バ ナ ンス構 造 の欠陥 につ いて い えぼ 、 日本 の取締 役 は取 締役 会 とい う会議 体 のー員 とし て 決定 と 監 査に 携 わ る一面 と、 執行 に携 わ る他 面 と が切 り離 さ れな い形を 採っ てい る点 て あ る。 換 言す れば 、取 締 役 会 のな かに 、業 務執 行上 の 内部 職階 制 ( 会長 一社長 一 副社 長 一専務 一常 務 一取 締役 部長 ) が持 ち込 まれて い るこ とであ るノ そし て 、取 締 役会 の実 質的 決定 機 能は 名称 はい ろい ろ だ が、 常務 会や 経 営 会議 ( 経営委 員 会)に 移 っ てい る。 さ らに 、 ガ バ ナンス 構 造と して の最 大 の問 題は 、取 締 役、 監 査 役 の人 事権 が被 監督者 ・ 被監 査 者 であ る 代 表 取 締 役 ( 通 常 は社 長 や 会 長 ) に よっ て事 実 上握 られ てお り、監 査機 能( チ ェ ック・ シ ステ ム) が欠 落し てい る点 で あ る。 取 締役 会 を機 能 化 さ せる ため の有力 策 とし ては 、取 締 役 会 へ の社外 取 締役 の導 入 が言 わ れて久 し い。 日本 企業 で もい くつ か の国 際的 な優良 企業 で は 社外 重 役 が 定 着 し て き て い る が 〔 例 え ば、 ソ ニ ーでは 代表 権 を 持つ 副社長 以上 の 社内取 締役7 人 と社 外 取締 役3 人 (外 国 人1 人を 含 む)〕、大 部 分の企 業 で は、 特 に企 業 規 模が 小さ くな るにつ れ、 社 外 重 役は 導 入 されて い ない。 社外 取締 役 導 入 の利 点 とし て、Koontz(1967)'')に よれ ば、彼 ら が経営 執行 者 から 相対 的に 独立 し て お り、 社会 の 要 請に より正 し く応え ら れる広 範 かつ 多 様 な経 験 をそ の企 業 の経 営指 導に 活 かさ れ るこ とで あ る。 ま た、 こ れら の人 々 は問題 点を 洞察 す る優 れた 能力 を 有し てい る。 特 に細 か い業務 上 の問題 や 個 人 的忠 誠 、 意思 決定 の 際の前 例な どに 煩 わ さ れな い とす れば なお さ らで あ る。 しか し、 外 部取 締 役 制 度 が導入 さ れて も、次 の 事項 が存 在 す れ ば そ の利 点 は 活 か さ れ な くな る (谷 本:1987 )≒ ① 資 本 系 列や 金 融 機 関か らの 派遣 者が 圧 倒的に 多 く な る場 合 ② 外 部 取締 役 の うちで 企業 社 会 の既成 権力 者層 ( 他企 業 の 取締 役等 ) の占 め る割 合が圧 倒的 に 高い 場 合 アメ リカ で は、 企業 内部 権力 へ の市民 か ら の対 抗 の一 形 態 と し て、 公共 利益 代表 取 締 役(public
多 国籍 企業 の社会 的責任 133 interestdirector:PID) の制 度 が検 討 ・ 導入 さ れてい る。こ れは企 業 の意 思 決定 機関 に 社 会性 を 導 入し 、 以 て取 締役 会 の機能 を活 性 化 させ よ うとの試 み と理 解で き る。 これ は、 ア メリカ で企業 の社会 的責 任 が 社会 問 題化 した1970年代 に、 市民 運 動( 特 に 、 黒人 そ の 他 の少 数民 族 ・婦 人 ・学 生な ど のマ イ ノ リテ ィ ー・ グル ープ、 消費 者、地 域住 民 な ど) の一 環 とし て、 そ の利 害を 代表 し て 、 企 業 の取 締 役 会 に 参 加 し 、 大 企 業 の 経 済 的 業 績 と そ の 社 会 的 責 任 の ギ 申 ヅプ を 埋 めさ せ よ うとす る運動 に 端を 発 し てい る。PID の 参加 を初 め て提 唱 したBuchanan(1953)'" は、 企業 を 一種 の政 治 機構 と みな し 、 民 主 的 な コー ポレ ート ・ガ バ ナン ス の必 要 性を 説 き 、PID の参 加に よって 企業 は 共和 的 組 織 と 民主 主義 の 手続 を備 え た 健全 な統 治体 にな る と述 べ てい る。PID は、 企業 を と り巻 く諸利 害者 集 団 の代 表 であ る① 特別 利益 代表 取締 役 、 お よび 州、 政 府 レ ベ ルの 代表 で あ る②政 府指 名 取締役 、 に 分類 で き る。後 者 の具 体例 と しては 、 ア メ リカ で は ユニ オ ンパ シフ ィ ッ ク鉄 道や コミ ュニ ケ ーシ ョン ・ コ ープ 等 の企業 が あ る。 前 者 の例 とし て、 特 に 、GM が有 名で あ る が、 他社に お い ても黒 人 取締 役 や 女性 取締 役 の数 は年 々増 加傾 向 に あ る。 しか し 、 い くら外 部取 締役 としてPID が 選 出さ れて も、 企業 におけ る意 思 決定 の統 一 性 、同 質 性 が強 調 さ れ るため、 彼 ら が単 なる 飾 りに な っ た り、 他 の取 締役 や社 内 の従業 員 か ら敵 視 さ れ る よ うな 環 境 では 、外 部取 締役 とし ての 基本 的 機能 も果た しえ ない と いえ る。GM で最 初 の黒 人取 締役 に 選任 さ れたSullivan(1974)'^)は、PID は 株主 以外 の 特定 集 団 の 利 害 を 直 接代 表 す る意 図を もた なけ れば 、 ま た 従来 の取 締役 の枠 組 をそ の まま に して お い て 単に 外 部 か ら の取 締 役を 利 害 関係者 だ か らとい う理 由だ け で導 入し て も、 真に 市民 の 立場 か ら の 活 動は 期待 で き ない と述 べて い る。 しか し、PID 導 入 の試 みは、 今 後 の コ ー ポレ ート・ ガバ ナン ス問題 の 改善 にお い てそ の積極 的 意義 が 高 く評 価 され よう。Blumberg(1973)^'^)やSturdivant(1977)'"は、PID が取 締 役 会 に 加わ る こ とに よって 起 こ りうる変 化 と して 、 ①企 業 内に 力関 係 の変化 が 生 じる、 ②企業 に 社 会 的存 在 とし て の 正当 性を 与 え る、 ③取 締 役会 で 社会 関 連 問題 が議 論さ れ る よ うに な り、 そ の意 思決 定 過程 に変 化 を も たら す、 ことを 挙げ て い る。 つ ま り、PID の導 入に より取締 役 会 の 視野 が広 が り、 従来 と は違 った 観点 か ら 企 業 の 社会 関 連 問題 を みる こ とがで き る よ うに な る ことを 重 視 して い る。 そ れ は、 ま た企 業 の意 思 決 定 過程 に 直接 制度 的 批 判 の手 段を持 た ない 利 害関 係者 集団 に 、企業 の一 方 的 決定 に対 し て市 民 の 側 か らチ ェッ ク す る ことを 可 能 とす るも の であ る。 別 の 言い 方を す れば 、PID の役割 は 基本 的に は 取締 役 会 での 意思 決定 に 対 し て社会 的監 査 役 とし て の機 能 を果 たす ことで あ る といえ よ う。
IV ス テ ー・ク ホ ル ダ ー 関 係 の 国 際 的 拡 大 海 外 に 展開し た多 国籍 企 業 と ステ ー クホル ダ ーの関 係に つい て み て み よ う。 図5 は 、海 外の2 ヵ 国 で事 業を 行 って い る多 国 籍企 業を 仮定 した 簡単 な例 であ る')ノ3 ヵ国( 母 国 と受 入国2 つ ) で の ス テ ー クホル ダ ーの図 は一 様で は ない 。 母国 で の顧客 と所 有者 、受 入国B で の 従業 員 、受 入国C で の サプ ライ ヤ ーがそ れ ぞ れ枠 で 囲 ま れてい る こ とに 注 意し ょ り。 こ のこ と は、 こ の企業 の資 本は 主 に 国 内 の所 有者 に よ り出資 され 、主 とし て製 品を 国内 の顧 客に 供 給し てい る こ とを 示し てい る。七 かし 、そ の企業 は重 要 な 原 材料を 受 入国C の サプ ライ ヤ ーから 調達 し て お り、 実 際 に は受 入国B で 製 品 を生 産し 、 包装 し てい る √ サ プ ラ イ ヤ ー 従 業 員-図5 グ ロ ーバ ルなス テークホ ルダ ーの 構図 倫 理の 争い ステ ークホル ダ ーの図 が3 ヵ国 で 異な る わけ を 検討 し て み よう。 母国 の親会 社 では 、所 有 者( 株 主 ) は、 配 当金 、株 価 の値上 が り、 会社 の財 務的 ・ 組織的 健 全性 を望 んで い る と仮 定 さ れる。 顧客 は、一 段上 の、 製品 の 特 徴、 品質 、 価 値 、包 装、安 全性 などを 望 ん でい るノ 母 国政 府 は規 則、税 金、 金 融政 策 な どの 規制 を 行 う。 以下 の ステ ークホル ダ ーにつ い て もそ れぞ れ の利 害 関 係を 有 してい る。 受 入 国B で は、 状 況 は少 し 異 な ってい る。 ここ では そ の企業 は工 場 を もって お り、 従っ て従業員 と 地域 社会 のステ ー クホル ダ ーを 有 し てい る。 受 入国 政府 は 同国 の宗 教 と 結び つ い て運 営 さ れてい る。 そ のこ と は対 象企 業 が 母国 では 経 験し た こと のない 従業 員 や地 域 社 会 との 関 係 に特 別 な制約 が 課さ れ るこ とを 意味 す る。 受 入国B では 、 対象 企業 は 顧客 も所 有者 もい ない が 、 生 産設 備を 有す る
多 国 籍 企 業 の社 会 的 責 任 135 い くつ か の競 争企 業 が存 在 す る。 こ の国 では企業 の競争 状況 は、 顧 客 や製 品 − サ ービ ス市場を いか に よく満足 させ るか で は な くて、 いか に う まく政府 や従 業員 関 係に 対 処 で きる か に かか っ てい る。 さ らに、 対 象企 業 は受 入国C に 小 規模 な購買 事 務所を 置 いて お り、 そ の企 業 に とって 重 要な 天然 資 源を 大 量に 調達 し てい る。 そ の企業 の購買 量は受 入 国C に とっ て大 きな 経済 的 価 値を 持つ か もし れな いが 、そ こ では 少 人数 の従業 員 しか おら ず、 地域 社会 で のプ レ ゼ ン スは非 常 に 小 さい。 そ の国 に は 配慮 す べ き顧 客 と か所 有 者ぱ おら ず、 また環 境保 護や 消費 者保 護 のグル ープ か ら の抗 議 とい っ たも の もない。 他方 、受 入国C に は、 対 象 企業 が ど の地域に も ない ス テ ー クホル ダ ー関 係が 存 在す る。受 入 国C の政 府は 政 情不安 で 、 戦 闘的 な対 策、 民 族紛 争 の確執 、権 力を 求 め る軍 部 将校 た ち、に より常 に脅 か さ れて い る。 こ れら の紛 争 の一 部 とし て、 テ ロリ スト の拠 点が あ り、 外 国に 拠 点を もつ い くつ か のテ ロ リスト ・ グル ープ が、受 入 国C を 彼ら の地 域活 動 のた め の本拠 地 とし て使 ってい る。 こ の種 の ステ ー クホル ダ ー関 係に 経 営者 が ど の ように 対 処す べ きか 困難 な 問題 で あ る。 以 上 のよ うに海 外 子 会 社に 派遣 さ れ た経営 者は 国際 的 な ステ ー クホル ダ ー関 係に 対 処す る必 要が あ り、彼 ら の本 国親 会 社 で の ステ ー クホル ダ ー関 係 の理 解だけ では失 敗 す る 可能 性 があ る。そ の企 業 に と って の色 々な ステ ー クホル ダ ーの重 要性 は国に よって 違 って く る。 ステ ークホル ダ ーと の関 係を管 理 す るこ とを ステ ークホル ダ ー管 理 とい うが、 そ れは経 営 戦略を 社 会 的・ 倫理 的 問題 と 結 びつけ る こと ので きる手 段を 提供 す る こ とに なる。 ス テ ー クホル ダ ー管理 は、 ス テ ーク ホルダ ーの 確認 、彼 ら の利 害 と権力 基 盤 の分析 、彼 ら と 自社 間 の関 係 な どを 理 解して い なけ れば始 まら な い。 以下 こ れら につ い て概略 的 に 検討し たい 。 ① ステ ー クホル ダ ー・ グル ープ の確認 ステ ークホル ダ ー管 理 は い ったい 誰 が当 社 のス テ ー クホル ダ ーなの か、 国 内 国 外 に関 わら ず、 で きる だけ 厳密 に 分析 す る こ とから 始 まる。 経営者 は 当初 予想 し て い な く て も 重 要 な ス テ ー ク ホル ダ ーであ る場 合 もあ り慎重 な精 査が 必 要で ある。 ② 何が利 害 か 次 の段 階 は、 当該 企 業 の 理念 や 目的 や活 動 との関 連 で ステ ークホル ダ ーの様 々 な 利害 につ い て考 察 する こと であ る。 こ れに は理 論的 に 推論 で きる も のもあ る が、 現地 国 の ス テ ー ク ホルダ ーの利 害 に 関 して は、 特 にそ の 国 で 何か 起 こ ってい る のか、 どの よ うな人 が 自社 に関 心を 持 って い る のか、 政 府 は どの よ うな活 動 を し てい る のか 、 どの政 府団 体や 宗 教 団体 が重 要 な のか 、 と い った ことを 現 地 の人 々と 話し て みる こ とが必 要 であ る。 現地 事情 に より、 外部 者に は 見 えな い ス テ ークホル ダ ー の利 害を 確 認す る こ とが で き よ う。
③ ステ ー クホ ル ダ ーの 権力 基盤 ステ ーク ホル ダ ーの もつ 議 決 権 の力 、 経済的 力 、政 治的 力 等 の力 の基 盤 は 何 な のか。議 決 権を 持 つ ステ ーク ホル ダ ー( 株主 ) は 当該企 業 の事業 活 動に つい て の 情報 が提 供 さ れ、 彼ら の 意見が 企業 の意 思決定 過 程に 反 映 さ れ るこ とを願 っ てい る。 経済 的力 を もつ ステ ー クホル ダ ーは彼ら の利 益 が 何 であ り、 い かに す れ ばそ れらを 彼ら の 経済力を 使っ て手 に 入 れる こ とが で きる か正 確に 知る こ と を 願っ てい る。 政 治 力 のあ る ス テ ークホ ルダ ーは、 通常 、 情報 や 経 済的 便 益を 得 る だけ で は満足 し ない のであ り、 彼 ら は 公式 ・非 公 式 の影響 力 の増 大につ な が るチ ャネ 疹に最 も良 く反 応す る。 ④ ステ ーク ホル ダ ーの特 徴 ステ ー クホル ダ ーの利 害 や力 の基盤 以外 に もそ の特徴 につ い て知 るこ と は有 益 であ る。 例えば 、 ス テ ータホル ダ ーの 使命 や存 在理 由は 何な のか。 彼ら は1 つ の充 分に 組 織 され た グル ープ なのか 、 そ れ と も類似 の利 害 関 係は 持う てい る/がそ れを満 た すた め の 組 織 に は な っ て い な い 拡 散し てい る 「公 衆」 な のか。 ス テ ー クホル ダ ーは、 ロ ーカル 的か 、 地 域的 か、 全 国的 か 、多 国籍的 か、 ある い は グa ーバル 的か 。 そ の グル ープ の規模 は どの くらい か。 メ ンバ ーは ど うい う人 々か。 彼ら は社 会 の権力 構造 と うま くつ な が ってい る か。 ス テ ーク ホル ダ ーの財 務的 基 盤 は何 か 、そ し てそ れは どこ か ら出て い る か。 そ の グル ープ はそ の財 源を どの ように 使っ てい る か。 ステ ータ ホル ダ ーは主 に1 つ の問題 だけ に 関 心を 持 って い る のか、 それ と も複数 の問 題 か。 こ れら の問題 に対 す る解答を 用 意 す るこ とが 、 ステ ー タホル ダ ーの管理 戦略 で最 も賢 明 な 選択を 可 能 に す るこ とに な る。 ⑤ ステ ーク ホル ダ ー間 の 関 係 ステ ー タホル ダ ーの構 図 で はい つ も中央 に位 置 する対 象 企業 を と り 巻く形 で グル ープ や組織 が描 かれ てい る。 し か し、 そ の 構 図は 現実 的 ではな い。 ス テ ー クホル ダ ーの グル ープ は 互い に関 連し て お り、 そ の企 業 の ス テ ー クホ ルダ ーの構 図には 直接 含 まれ ない か もし れない が 、 そ れら の ステ ーク ホル ダ ーを 通 じ て活 動 す る場 合 に影 響 力を 持つ よ うにな る グル ープや 組 織 も存 在す るの であ る。 企 業 の ステ ークホ ル ダ ー論 の 大 きな利 点 は、 企業 活動 が実 際に 行 わ れ る複 雑 な社 会 組織 に順 応で きる 理 論で あ る とい う点 で あ る。 企 業 とそ の ステ ー クホル ダ ーと は複 雑 な ネ ット ワ ー クで 連結 されて い て、1 つ のネ ット ワ ー ク局面 で の活 動 は社 会組 織ネ ット の 他 の活 動に 影 響を 及 ぼ すこ とに なる。 ⑥ 時間 の 経過 に 伴 うス テ ー クホル ダ ー関係 の変化 企業 の ステ ーク ホル ダ ー の構 図に は 時間を 組 み込 んで お く 必 要 が あ る。 ス テ ー ク ホ ル ダ ー・ グ ル ープ は環 境 の他 の 側面 と同 様に 、 時間 の経 過に より安定 状 態 は変 化 す る。 ス テ ークホル ダ ーは 誕 生し た り消滅 し た りす る。 彼 ら の利害 は変 化 する か もし れな い。 彼 ら は 他と 提 携し た り関 係を 解 消 し た りし て、 規 模 が 大 き くな っ た り縮 小し た りす るか もし れない 。 彼ら は 自 ら の経 済的 ・政 治的 支 援 の源泉を 変 え る。 そ れ ら の メ ンバ ーの特 徴 も変化 し 、利 害 や力 の基 盤 も変 化 す る。
多国 籍企業 の社 会的責任 137
従っ て 、 ス テ ー クホル ダ ーの配置 ( コンフ ィギ ュ レ ーショ ソ) は、文 化 特殊 的 で あ る だけ で な く 時 間 特 殊 的 で もあ り、 一 国 内の社会 的 政治 的 状況 が 変 化す るに つ れて更 新 さ れる 必 要 があ る。
図6 ス テ ー ク ホ ル ダ ー の3 つ の 基 本 的 属 性 と タ イ プ
と ころ で 、Mitchell=Agle =Wood (1997)'*の研 究 では、 合 法 性 (legitimacy)、 緊 急 性 (urgen-cy )、 権力(power ) とい う3 つ の基 本的 属性 の 有無 に 基づ いて 、 ステ ー ク ホ ル ダ ー の 活 動 を 理 解 し、 予 測す るモ デル が開発 さ れてい る。 図6 は 、 そ の ステ ータホル ダ ーの3 つ の基 本 属性 を示 し た基 本 モデ ルで あ る。3 つ の主 要 な 属性 と は、 ① そ の グル ープ の ステ ーク ホル ダ ーと して のあ るい は当 該企 業 に対 す る要 求 の合 法 性 、② 企 業 行 動 に 影響 を 与え るステ ークホル ダ ー の権力 、 ③ ス テ ーク ホルダ ーの当 該企 業お よび そ の経 営に 対 す る 要 求 の緊 急性 、 であ る。 長 期 の中 核 ステ ー クホルダ ー(long-termcorestakeholder )は、権力 と合 法性 は もっ てい るが緊 急 な要 求 は し ない グル ープ で ある。 そ し て彼 ら が 何ら か の機 会に緊 急 の利 害 や要 求 を もつ よ うに な れ ば現 下 の中核 ス テ ー クホル ダ ー(immediatecorestakeholder )に変 化 す るこ とに な る。依存 的 ス テ ークホ ル ダ ー(dependentstakeholder ) とは 、合 法的 地 位や 緊急 な 要求 は もっ て い る が当 該企 業 に 単 独 で影 響 を 及ぼ すほ ど の権力 は もた な い グル ープで 、 他 の強力 な ステ ータ ホル ダ ー と提携 を 組 むこ とに な る。4 つ 目は 当該 企業に 対 す る 権力 と緊急 な 要 求 は も つ が 、 合 法 的 地 位 を も た な い グ ル ープ は 、 自 ら の 利 益 の 獲 得 を 求 め て 暴 力 的 ・ 威 圧 的 ス テ ー ク ホ ル ダ ー(violentorcoercivestakeholder ) にな る 傾向 かあ る。 図6 で 、残 りの タイプ の ステ ークホ ル ダ ーは、3 つ の主 要 属性 の うち の1 つ のみ を 所 有す る も の であ る(「 目に 見え な い ステ ー クホ ルダ ー」で、[ ニコ 枠 で 囲んだ も の]。 要 求 ステ ーク ホ ル ダ
ー(de-mandingstakeholder ) は、 緊 急 な要 求 は す るが 権力や 合法 性を もたな い グル ープ で あ る。 自 由裁 量 ステ ークホル ダ ー(discretionarystakeholder)とは 、合法 的 立場を とっ てい るが、当 該 企 業に 対 す る影響 力や 緊急 な 要 求を もた ない グル ープで ある。 例え ば、 地方 の交 響 楽 団や い ろい ろ な 慈善 団 体な どで あ る。企 業 側 は彼 らを 金 銭的 に支 援し た り、共 同 でプ ロ ジ ェ タト を 実施 し た りす る が、 こ れら ス テ ークホル ダ ーと の関 係 は純 粋に 企業 側 の 自由 意思に よる も ので あ る。 休眠 ス テ ー クホル ダ ー(dormantstakeholder) とは、当 該企 業 の行動 に 対 す る 影響 力 は もつ が、 合法 性 と緊 急 な要求 は 保有 し てい な い グ ル ープ であ る。彼 ら はいつ の日か 緊急 の 要 求を す る よ うに な ると 暴力 的 ・威圧 的 ス テ ー クホル ダ ーに 変 身し 、当 該企 業 の脅威 に な る可 能 性 もあ る。 こ の モデ ル では、3 つ の属 性 の うち2 つ を もつ ス テ ー クホ ルダ ーは 残 りの 属 性を 獲 得 す る行 動に 出る 可能 性 があ るこ とを 予 測し て い る( 自己 の利 益 が満 たさ れ てい る と 感 じ て い る 長 期 の 中 核 ス テ ー クホル ダ ーは除 く)。 従 っ て、 暴 力 的 ・威 圧的 ステ ー クホル ダ ーは恐 ら く政 治 プ ロ セ スを 通 じ て 、あ る い は既存 の 中核 ステ ー タホ ル ダ ーと 協力 しあ って 、 合法性 を 獲得 す る こ と が予 想 され る。 同 様に 、 依存 的 ステ ークホ ル ダ ーは、 企 業 行 動に 対す る影 響力を 獲 得し よ うと す るこ と が予 測さ れ る。 目に 見 え ない ステ ークホル ダ ーに つ い て は、2 つ の属性を 持つ 場 合以 上に 予 想し 難 い。 目に見 え ない ステ ークホル ダ ーが2 つ 目の 属性 を 獲得 する と、彼 ら は活 発な ス テ ー クホ ル ダ ー・ グ ル ープに 変 身 す る が、 当該 企業 とそ の経 営者 た ち に と って 、そ れが 暴力的 ステ ー クホル ダ ーに な る のか、 依 存 的 ス テ ー クホル ダ ーにな る の か、 あ るい は長 期 の中核 ス テ ー クホ ルダ ーに な る のか 、見 定 める こ とが 重 要 であ る ○ こ の ス テ ー クホル ダ ー属 性 に よ る予 測 モデ ル は、 自社 の ステ ークホル ダ ーに つ い て 「顧 客」 とか 「政 府」 とい った一 般的 分 類 以上 のこ とを 経 営者 が知 る こ との重 要性 を示 し て い る。 V 多 国 籍 企 業 の 社 会 問 題 領 域1 多 国 籍企業 と受 入国 政 府 (国 民) 間の 摩擦 の 構図 多 国 籍 企業 の社会 的責 任 ( 特に 、 社会 貢 献) を マ クロベ ースで 考察 す る場 合 の1 つ の有 力な 分析 視 覚は そ の企 業 と受 入国 政 府 (国 民) と の摩擦 の構図 を把 握 す るこ とで あ ろ う。 な ぜな ら ば、企 業 の 社会 的 責任 は、 グI=r―バ ル企 業 が外 国 のい ろい ろな 地 域に 参入 ≒ 事業 を 営 む 際、 そ れ ら国民 ・ 住民 と の 間で 引 き起 こさ れ る緊 張 、不 和 、 摩擦 、 あつ れ き、 葛藤、 衝突 、 紛 争 等を 少 し で も回避 あ るい は 緩和 し、 企 業本 来 の 経 済的 目的 を 効 果的 に 達成 す るた めの1 つ の企 業 戦 略 あ るい は 社会戦 略 とし て 位置 づけ るこ とが 可能 で あ るか ら で あ る。Behrman(1970 )'°)は、ま さに 当 時 の主 とし て米 国系多 国籍 企業 と受 入 国政 府 との 関 係を 企業利 益
多 国 籍 企 業 の社 会 的 責 任 139 と国家 利 益( もし くは 政 治的 利益) との 相克・ 背反 の構 図 とし て 分析 し てい る。 そ こで は、多 国籍 企 業 の行 動あ るい は 能力 の2 面性 が扱 わ れてい る。1 つ はそ れ が受 入 国 の国 家利 益 と独 立主 権を尊 重 して 、受 入 国に 貢 献す る側面 であ る。 具体的 に は、 そ れは 資本 形 成、 工 業 技術 ・ 経営 ノ ウハ ウの移転 、 雇用 の 創造 、地 域 開 発、 国際収 支 の改善 等 の分野に み ら れる。 も う一 つ の側 面 は、 そ の企 業 が行 動を 統一化 し、 意 思決 定を 集 権化 す る こ とに よって受 入 国と の 対 立を 惹 起さ せ、 現 地 国 政府 (国 民) を 不安に 陥 れる要 素 であ る。 圧 倒 的な パ ワ ーに よって受 入国 を 経 済的に も、政 治 的に も、 そ の企業 の母 国に 従属 せし め、 パ ート ナ ーとし て の 地位 を 喪失 させ る 方 向性 であ る。 そ れ は、 具 体 的に は、 そ の企 業 の技術 依 存 への恐 怖 、受 入国 政 府 の経 済計 画へ の障 害 (基 幹産業 への 影響 、 国 家的 秩序 へ の非協 力、 経 済的 不均 衡 の 創出、 過 剰 設備 投 資 や過剰 生 産能 力 の発 生な ど) と い った も の であ る。 こ の よ うに 、多 国籍 企業 の社 会的 責任 は、 両者 間 の利益 の宿 命 的 と もい え る攻 めぎ合 い の中で 位 置 づけ ら れ るべ き であ り、 個人に よる慈善 に基 づ くあ るい は西 欧 風 の ノブ レ ス・ オブ リ ージ ュに よ る社会 貢献 と い った もの とは 基本 的に 区別 さ れるべ き であ ろ う。 とこ ろで 、多 国 籍 企業 に 起 因す る マ クロ/ ミ クロの国 際的 摩 擦 の引 き金 とな る 要因 は、 無数 に存 在す る。Gladwin =Walter (1979)")に よれば、 以下 に示 す 相互 に 有機 的 に 関 連す る9 つ の問 題 領 域 が挙げ られ る。 ① テ ロ リズ ム ー誘 拐 、暗 殺、 爆破 ・攻 撃 の脅威 、焼 き 討 ち、放 火 、 身 代金 要 求、 武装 攻 撃、 ハイ ジ ャ ッ クな ど直 接に 生命 、 財産 の危 険を もた らす 行為 。 ② 人 権 一圧 政 の 続 く国 家 との 貿易活 動、 そ れら の国 々 へ の借款 供 与、 内政 干 渉、 植民 地主義 な ど広 義 の人 権 問題 に 抵 触す る 行為 ③ 政 治 一国家 主 権 へ の 介入、 ナシ ョナ リズ ム、 収用、 国 有化 、 政 情不 安 、政 治 的干 渉 、企業 帝国主 義 な ど。 ④ 不 正支 出 − グリ ース(潤 滑 金 の支 出)、 汚職 、不 正融 資 、経 済 犯 罪 な ど。 ⑤ マ ー ケテ ィ ン グ ー誇 大広 告 、製 品 の安全 性、 コン シ ュ ーマリ ズ ム、 欠陥 商 品 ・不良 品に 対 す る補 償 な ど。 ⑥ 労使 関 係 一団 体交 渉 、産 業 デモ ク ラシ ー、ル イ オフ お よび工 場 閉 鎖、 雇 用 機会 均等 、 労働 搾 取 な ど。 ⑦ 環境 一大気 汚 染 、 水質 汚 濁、 毒性 廃棄物 処 理、 工場 爆 発、 天 然 資源 の 枯 渇 な ど。 ⑧ 技術 一特 許 権 侵 害、 不 適 正技術 、頭 脳流 出、 ライ セ ンス料 な ど。 ⑨ 経済/ 金 融 一不 正 な移転 価 格操 作、 タ ッ クス・ ヘイ ブ ンを 利 用し た 脱税 、 反 ト ラス ト法違
反 、 買 収な ど。 多 国 籍 企業 と受 入 国政 府 間 の摩擦に は 、上記 の よ うな広 範 な政 治 、 社会 、環 境、 倫理 的 領域に 及 ぶ諸問 題 と の関 係が 含 まれ、 そ れら がマ クロ/ ミ クロ の摩 擦 の起 爆 剤 とな る可 能性を 内 包し てい る とこ ろ で、 日本 多 国 籍 企業 に 特有な 社会 問題を 挙げ れば 、 社 内的 に は、 ①現 地人 の経営 者 ・管 理 者 へ の採用 ・ 登用 の少 な さ(glassceiling)、 ② 女性 や マイ ノリ テ ィに対 す る雇 用 ・昇 進差 別、 ③ セ クハラ 事件 ( 米国 三 菱 自動 車 製造 等)、 ④労 働組 合 の回避 、 な ど の問 題 があ る。 また、 対外 的に は、 金融業 界 の不 祥事(米 国 大 和銀 行不 正取 引、住友 商 事銅 不 正取 引、証 券 会 社損 失 補填 等)、対 米輸 出 半導 体 ダ ンピ ン グ、 地 球環 境 問題等 が 挙げ ら れ る。 2 多 国 籍企 業 の紛 争 対応 行 動の 決定 因とそ の 様式 の 動 態 既述 の ように 、多 国 籍 企業 がそ の目的( 権益 )を 達成 し よ うとす る と き、 他 方にお い てこ れに対 峙 す る制度 (受 入 国政 府、 現 地産 業 ・企業 、 労働者 、 消費 者 等) が 存 在し 、そ れぞ れが 自己 の利 権 を 顕在 的に 「意識 」 し 、そ の 目的 達成 の「欲求」 を 具 体化 し ようと す る ときに 摩擦や 紛争 は発 生 す る。Gladwin =Walter (1979)'"に よ れば、そ の発現形 態 とそ の後 の展 開 は、 以下 の4 つ のパ ラメ タ ー の相 互作 用 に よっ て 決 まる 。 ① [紛 争] の 結果 、 当 事 者に 期待 で きる権益 の大 きさ ② 対 抗 する 相 手 と比 較 し た当 事者 の力( 権力 や能 力 ) ③ 関 係当 事 者 間 の相 互 依存 関 係 ④ 両 者間 の 関 係 の特 性 ①お よび② は、 主 体 側 の 目的お よび達 成能力 に 関わ る 決定 因 であ り、 ③、 ④ は客 体 側の相対 的 位 置 関 係とそ の質 的 重 要 性に 関 わ る紛 争決定 因 であ る。 ①、 ②に おい て 、 当 事者 が と る行動 は、 断定 的(assertive) と非断 定的 (unassertive) の2 極 の 間に 位置 づけ ら れる発 現形 態 とな り、 ③、 ④に つい て は、 客 体 側 の状 況に 対 す る主 体側 とし ての グ ロ ―バ ル企業 の行 動 が協 力 的(cooperative)か 、そ れ と も非 協 力的(uncooperative )か の2 極 の間 の どこか に位 置 づけ ら れる。 図7 は、 これ ら紛 争 対 応 の決 定 因 との関 係で 紛争処 理 に 関 す る5 つ の異 なる 様式 ( ス タイル) が 描か れてい る。 具 体的 に は 、5 つ の紛 争対応 行動 領 域 とそ の 極点 が示 され てト る。 そ れら は、a.
競 争的 領域(competitivezone )、b. 回 避的 領 域(avoidancezone )、c. 協調 的 領 域(collabora-tivezone )、d. 同 調的 領域(accommodativezone )お よび、e. 妥協 的 領域(compromisezone)