• 検索結果がありません。

1 離接的 if 節と推論用法の since 節 および比較相関構文の従属節について 岩 田 良 治 要 旨 本稿では 次の! にあるような文体離接詞 style-disjunct としての if 節 " にあるような推論用法 inferential use の since 節 および # にあ る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "1 離接的 if 節と推論用法の since 節 および比較相関構文の従属節について 岩 田 良 治 要 旨 本稿では 次の! にあるような文体離接詞 style-disjunct としての if 節 " にあるような推論用法 inferential use の since 節 および # にあ る"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.序

本稿では,次の(1)に例示したような文体離接詞(style-disjunct)としての ‘if ’ 節(以下, 離接的 ‘if ’節),(2)に示した推論用法(inferential use)の ‘since’ 節,つまり文のもう一方 の 節 を 述 べ る 根 拠 を 表 す 用 法 の ‘since’ 節,お よ び(3)に 示 し た よ う な 比 較 相 関 (comparative correlative)構文の従属節について考察する。

(1)We can do with some more butter, if you’re in the kitchen. (Quirk et al. 1985 : 1072)

(2)Elizabeth enjoyed last night’s concert, since her brother told me so. (op. cit. : 1073)

(3)The more you eat, the less you want. (= If/When/As you eat more, you want correspondingly less.) (Culicover and Jackendoff 1999 : 545)

離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節はそれぞれ次の(4)と(5)にあるよう な ‘if ’ 節 と

離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節

および比較相関構文の従属節について

〔要 旨〕 本稿では,次の(!)にあるような文体離接詞(style-disjunct)としての ‘if ’ 節,(")にあるような推論用法(inferential use)の ‘since’ 節,および(#)にあ るような比較相関(comparative correlative)構文の従属節とそれらの節を含む文につ いて考察する。

(!)We can do with some more butter, if you’re in the kitchen. (Quirk et al. 1985 : 1072)

(")Elizabeth enjoyed last night’s concert, since her brother told me so. (op. cit. : 1073)

(#)The more you eat, the less you want. (= If/When/As you eat more, you want correspondingly less.) (Culicover and Jackendoff 1999 : 545) これら三種類の節は従属節であるが,標準的な従属節と異なり,文の主節から遊離・独 立しているという特徴を持つ。しかしながら,典型的な独立節である文等位接続構文の 標準的な等位節ほど独立してはいない。これら三種類の節のこのような記述的特徴が生 成文法の「原理とパラミター理論」の枠組みでどのように説明されるのかについて考察 を試みる。 〔キーワード〕 離接的 ‘if ’ 節,推論用法の ‘since’ 節,比較相関構文の従属節,記述的特 徴,三次元文法機構を仮定する文法理論

(2)

‘since’節とは文法的に異なる特徴を持つ。(cf. Quirk et al. (1985))

(4)We’ll take along Sharon, if she’s ready. (Quirk et al. 1985 : 1072)

(5)I have been relaxing since the children went away on vacation. (op. cit. : 1070) そして(3)の比較相関構文の従属節は標準的な従属節とは異なる文法的特徴を持つ(cf. Culicover and Jackendoff (1999))。では,離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構 文の従属節は文法上どのような特徴を持っているのか。その特徴を,まず,第2節で記述する。 次に,第3節で,それらの特徴が文法理論の中でどのように説明されるべきかについて生成文 法の「原理とパラミター理論(GB 理論)」の枠組みで考察する。 2.記述的特徴 2.1.離接的 'if' 節 (!)離接的 ‘if ’ 節は,常に音調(intonation)と句読法(punctuation)によって主節 から分離されている。(Quirk et al. 1985 : 1073)

(6)a.We can do with some more butter, if you’re in the kitchen. (=(1)) b.I could use some help next week, if anyone is available.(1)

(cf. You’ll be able to tell the folks up at corporate headquarters to buzz off if you solve this problem. (cf. (19)))

(")同じ定形節でも,次の(7)に見られるような内容離接詞(content disjunct)で ある ‘although’ 節では,譲歩(concession)は主節の内容に関係している。一方 (8)に見られるような離接的 ‘if ’ 節で述べられている状況は,話し手が ‘we can do with some more butter’と主張する条件(condition)を表している。(つまり, ‘I tell you this if you’re in the kitchen.’ということを表している。)したがって, 離接的 ‘if ’ 節は内容離接詞である節と比べて主節から独立している。(cf. Quirk et al. 1985 : 1072−1073)

(7)Elizabeth enjoyed last night’s concert although part of the programme included Wagner. (Quirk et al. 1985 : 1072)

(8)We can do with some more butter, if you’re in the kitchen. (=(1))

(#)次の例からも分かるように,離接的 ‘if ’ 節は,主節の疑問の作用域(scope)に入 らない。

(9)If you’re so clever, what’s the answer? (Quirk et al. 1985 : 1072)

2.2.推論用法の 'since' 節

(!)推論用法の ‘since’ 節は,(離接的 ‘if ’ 節と同じように,)常に音調と句読法によって 主節から分離されている。(Quirk et al. 1985 : 1073)

(3)

(10)Since you don’t seem to know, all further negotiations have been suspended. (Quirk et al. 1985 : 1073)

(")同じ定形節でも,次の(11)のように内容離接詞の ‘although’ 節内に主節の名詞 (句)と同一指示の名詞(句)が生じる場合,それは通常,代名詞である必要があ る。一方,推論用法の ‘since’ 節の場合には,(12)にあるように,同じ名詞(句) を繰り返すことができる。(Quirk et al. 1985 : 1073)

(11)Elizabeth enjoyed last night’s concert although the programme was not entirely to % ' ) her ?Elizabeth’s& ( * taste.

(12)Elizabeth enjoyed last night’s concert, since % ' ) her Elizabeth’s& ( * brother told me so. これは,推論用法の ‘since’ 節が,内容離接詞である ‘although’ 節とは違って,統 語的に,もう一方の節に従属しておらず,その節から独立している節であることを 示唆している。 (#)理由を表しているという点で同じ ‘since’ 節でも,次の(13)に見られるように内 容離接詞の ‘since’ 節では,その節で述べられている理由は主節の内容に関係して いる。一方(14)に見られるように推論用法の ‘since’ 節で述べられている理由は, 話し手が ‘Elizabeth enjoyed last night’s concert’ と主張する動機を表している。 (つまり, ‘I tell you this since her brother told me so.’ ということを表してい る。)(Quirk et al. 1985 : 1072−1073)

(13)a.I have been relaxing since the children went away on vacation.(=(5)) b.Since you know Latin, you should be able to translate the

inscription. (Quirk et al. 1985 : 1072)

(14)Elizabeth enjoyed last night’s concert, since her brother told me so.(=(2)) これは,推論用法の ‘since’ 節が文中のもう一方の節から意味的に遊離・独立して いることを示唆している。

($)推論用法の ‘since’ 節は主節の疑問の作用域に入らない(cf. (15))。

(15)What does the word mean, since you’re so clever? (Quirk et al. 1985 : 1072−1073)

2.3.比較相関構文の従属節

Culicover and Jackendoff(1999)によると,比較相関構文には以下のような文法的特徴が ある。

(4)

後続することもでき,従属節の位置によって文の意味が変わることはない。 (16)a.If/When Mary listens to the Grateful Dead, she gets depressed.

b.Mary gets depressed if/when she listens to the Grateful Dead.

それに対し,比較相関構文 C1,C2の C1と C2の順を並べ替えることが可能な場合に, 並べ替えると,条件を表す節が逆になり,意味が変化する。

(17)a.The more she looked at the pictures, the angrier Mary got.

b.The angrier Mary got, the more she looked at the pictures. (≠(17 a)) 同じことは,等位構文(cf. (18))についても言える。

(18)a.Mary listens to the Grateful Dead and she gets depressed.

b.Mary gets depressed and she listens to the Grateful Dead. (≠(18 a)) 以上のように,意味的には,比較相関構文において,従属節が主節に対する条件を 表 し て い る が,そ の 従 属 節 は,標 準 的 な 従 属 節 と 異 な り,文 等 位 接 続 構 文 (sentence conjunction)の一方の等位節と類似している。

(!)従属節(例えば付加詞(adjunct)の ‘if ’ 節)からの抜き出し(extraction)はでき ない(cf. (19))。(Culicover and Jackendoff 1999 : 566)

(19)??This is a problem that you’ll be able to tell the folks up at corporate headquarters to buzz off if you solve t. (ibid.)

比較相関構文 C1,C2の C1が従属節で C2が主節だとすると,C2からの抜き出しは 問題ないが(cf. (21 b)),C1からの抜き出しは「取り出し領域条件(Condition on Extraction Domain)」に違反することになり,非文法的となると予測される。し かし事実は,C2からの抜き出しと同様,C1からの抜き出しも可能である(cf. (21 a))。 (op. cit. : 564)

(20)The sooner you solve this problem, the more easily you’ll satisfy the folks up at corporate headquarters.

(21)a.This is the sort of problem whichithe sooner you solve ti, the more easily you’ll satisfy the folks up at corporate headquarters.[C1から の抜き出し]

b.The folks up at corporate headquarters are the sort of people whoi the sooner you solve this problem, the more easily you’ll satisfy ti. [C2からの抜き出し]

(5)

このように,比較相関構文の C1,C2は,標準的な従属構造とは統語的に異なる。 そして,この C1,C2の特徴は,先行節が後続節の条件を表す等位構文の特徴と似 ている。つまり,その等位構文においてもどちらの節からの抜き出しも可能である。 (op. cit. : 566)

(22)a.?This is a problem that you solve t and you’ll immediately be able to tell the folks up at corporate headquarters to buzz off.[cf. (22 a) は??This is a problem that you’ll be able to tell the folks up at corporate headquarters to buzz off if you solve t. (=(19))より容認可能 性が高い。]

b.?Those are the folks that you just solve this problem and you’ll be able to put t on ice.[cf. (22 b)は??This is a problem that you’ll be able to tell the folks up at corporate headquarters to buzz off if you solve t. (=(19))より容認可能性が高い。]

等位構文の一方の等位節からの抜き出しは(23)の等位構造制約(the Coordinate Structure Constraint : CSC)に 抵 触 す る。こ の 点 に 関 し,Culicover and Jackendoff(1999:566)は,CSC は標準的な等位構文に適用され,(22a,b)に あるような一方の節が他方の節の条件を意味する等位構文には適用されないと仮定 している。

(23)CSC

In a coordinate structure, no conjunct may be moved, nor may any element contained in a conjunct be moved out of that conjunct. (Ross 1967 : 89) 以上のことは,比較相関構文は標準的な従位構文よりは等位構文に近いが,標準的な等位構文 よりは従位構文に近いことを示唆している。 2.4.等位節との違い 上記の2.1節∼2.3節から離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文の従属節は,音 韻的に,統語的に,および意味的に,標準的な従属節とは異なり,主節から遊離・独立してい ることが分かる。しかしこれら3種類の節は,典型的な独立節である標準的な等位構文の等位 節とは以下の点で異なる。 (!)離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節は,等位節(cf. (24))と異なり,もう一方の節 が疑問文であってもよい(cf. (25), (26))。

(24)*Sally’s sick and what did you bring me? (Ross 1967 : 103) (25)If you’re so clever, what’s the answer? (=(9))

(6)

(!)Culicover and Jackendoff(1999:543―571)によると,比較相関構文 C1,C2(例 えば,[[C1the more you eat ],[C2the fatter you get]])では,C2が主節で C1 が従属節であるという証拠がある。以下,比較相関構文 C1,C2が等位構文と異な る証拠,つまり,C1と C2は完全な等位の関係にあるのではなく,C1は従属節で C2 は主節であるといういくつかの証拠を Culicover and Jackendoff(1999:543― 571)に従って示す(2)

(!―1)文等位接続構文の一方の節のみを疑問節にすることはできないが(cf. (24)), 比較相関構文 C1,C2の C2のみを疑問節にすることはできる。

(27)The harder (that) it rains, how much faster a flow do you see in the river? (op. cit. : 550)

これは「従属節+主節」の主節を疑問節にすることができるのと同等である(cf. (28))。

(28)When/As it rains harder, how much faster a flow appears in the river? (op. cit. : 550) (!―2)標準的な等位構文は CSC に従う。つまり,等位構文の一方の等位項のみから ある要素を抜き出すことはできない。一方,比較相関構文の一方の節のみからある 要素を抜き出すことは,2.3節の(!)で示したように,可能である。 (!―3)比較相関構文 C1,C2が仮定法を支配する動詞あるいは形容詞の補文である場合, 仮定法を表す形態は C2には現れるが,C1には現れない(op. cit. : 548) (29)" $

&I demand that It is important that#

% '

a.the more John eats, the more he pay(s)(3).

b.*the more John eat, the more he pay(s).

(!―4)比較相関構文 C1,C2の C2に基づいて(主節現象(main-clause phenomena) である)付加疑問を形成できるが,C1を基に付加疑問を作ることはできない。(op. cit. : 548)

(30)a.The more we eat, the agrier you get, don’ you. b.*The more we eat, the agrier you get, don’ we. c.*The more we eat, don’t we, the agrier you get.

(!―5)C1,C2という比較相関構文(e. g. (31 a))は「条件節―主節」という構文(e. g. (31 b))と言い換え(paraphrase)関係にある。(op. cit. : 545 ; 548)

(7)

(31)a.The more you eat, the less you want. (= (3))

b.If/When/As you eat more, you want correspondingly less. (= (3)) (!―6)「条件を表す従属節―主節」という構文において,主節の主語を(随意的に)省

略して命令節にするという主節現象が起こりうる(cf. (32 a))。それと同じように, 比較相関構文 C1,C2の C2に適切な総称主語(generic subject)を使用すれば,あ る程度容認可能な命令節を使うことができる(cf. (32 b))。一方,C1をそのように 命令節にすることはできない(cf. (32 c))。(op. cit. : 550)

(32)a.If/When/As John eats more, (everyone) keep your mouth shut tighter, OK?[(32b)に対応する]

b.?The more John eats, the tighter everyone keep your mouth shut about it, OK?/if you would.

c.*The more everyone eat, the more John keeps his big mouth shut about it, OK?

以上から,離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文の従属節が標準的な等位構文 の等位節とは異なることが分かる。そして,2.1節∼2.4節の特徴から,離接的 ‘if ’ 節と推論用 法の ‘since’ 節と比較相関構文の従属節について次のように記述することができる。 (33)離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文 C1,C2の C1節は音韻的にも, 統語的にもそして,意味的にも文中のもう一方の節から遊離・独立している。しか しながら,標準的な文等位接続構文の等位節とは異なり,ある程度,文中のもう一 方の節に従属している(4) 3.記述の説明 (33)の離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文 C1,C2の C1節に関する記述は, 非制限的関係詞節(nonrestrictive relative clause : NRC)などについて岩田(1998)で示さ れている記述と同じである。岩田(1998)は,本稿の離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比 較相関構文 C1,C2の C1節と同様,文中において等位節ほど独立してはいないが,文中の他の 要素から遊離・独立している NRC などについての記述を生成文法の「原理とパラミター (GB 理論)」の枠組みで,概略,以下の仮説に従って説明している(5) まず,「原理とパラミター理論(GB 理論)」の文法機構である三次元構造生成条件と X バー 理論の原理および等位構造条件などに従うと,例えば,概略,次のような三次元基底構造が得 られる。

(8)

(34) " % # % $ C3max 等位節 C1max C’ " % # % $ C2max C Imax NRCなど N2max N1max I’ I VP この三次元構造において,C3maxと C2maxは三次元構造生成条件に従って三次元の空間である C1maxの背部に生成された範疇であり,N2maxはその条件に従って三次元の空間である N1max の背部に生成された範疇である。このうち,C3maxと N2maxは,それぞれ,前部の C1maxと N1maxと対等の位置にある等位項である。そして,C2maxは前部の C1maxに直接支配されてお り,NRC などになる。なお,NRC などを含む文の三次元構造は,便宜上,(34)の代わりに, 次のように略記される。 (35) A1 A2 (35)において,A2は NRC など(の構造)を表し,A1は文のそれ以外の部分(の構造)を表 している。例えば,(36)の NRC を含む例は,概略,次の(37)のような基底構造を持つ。

(36)Many people, who live in town, are deprived of life’s greatest blessing − a healthy environment. (Leech and Svartvik 1975 : 285)

(37) [C” [NPi many people ] are deprived of life’s greatest blessing − a healthy environment ]

[C” [C’C [I”whoilive in town ]]]

次に,(37)に示したような三次元構造は,文法の PF 部門に存在する規則によって解釈され るのであるが,その際に,その規則は次の規約に従って適用され,その結果,それらの三次元 構造は,直線的な連鎖(e.g. (36))に並べ換えられる。 (38)直線化規約!:次の構造において,A1の構成素と A2を任意の順で解釈せよ。 A1 A2

(9)

上述のように離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文 C1,C2の C1節は NRC (など岩田(1989)で扱われた要素)と同じ記述的特徴を持つ。すると,本稿の離接的 ‘if ’ 節 と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文 C1,C2の C1節の記述的特徴は NRC などに関する上記 の仮説に基づいて説明されると仮定される。では,本稿の2.1節から2.4節に示したこれら3種 類の節の特徴が上記の岩田(1998)の仮説に基づいて説明できるかどうか,そして説明される としたら,どのように説明されることになるかを以下で考察する。 まず,離接的 ‘if ’ 節を含む文と推論用法の ‘since’ 節を含む文あるいは比較相関構文 C1,C2 は概略,次の三次元構造を持つ(6),(7) (39) CP1 % ( & ( ' CP2 離接的 ‘if ’ 節 推論用法の ‘since’ 節 比較相関構文の従属節 標準的な従属節を含む文の構造である(40)に示した二次元の構造の場合と違って,この (39)の三次元構造では,CP1と CP2は同一次元にあるのではなく異なる次元に存在している。 したがって,離接的 ‘if ’ 節あるいは推論用法の ‘since’ 節である CP2は主節である CP1と分離さ れた音調単位(tone unit)を構成すると考えられる。また,これらの節は,書き言葉では句 読法によって主節と区切られる。(cf.2.1節の(!),2.2節の(!))。 (40) CP1 CP2 上例の(7)は(40)の構造を持つのに対し,事例(8)は(39)の構造を持つ。標準的な 従属節である(7)の従属節が表す「譲歩」は当然,主節の内容に関係する。一方,主節とは 異なる次元に存在する(8)の従属節(=(39)の CP2)は,主節(=(39)の CP1)からは 独立した発話行為を表すと考えられる。(cf.2.1節の("))そして同じことが(13)と(14) についても言える。(cf.2.2節の(#)) (9)の離接的 ‘if ’ 節と(15)の推論用法の ‘since’ 節は(39)の構造の CP2であり,標準的 な従属節である(40)の CP2の場合と違って,主節である CP1とは異次元に存在する要素であ るため,CP1の疑問の作用域には入らないと考える。(cf.2.1節の(#)と2.2節の($)) (11)の内容離接詞である ‘although’ 節は標準的な従属節であり,(40)の CP2の位置に生 成される(cf. (41))。一方,(12)の推論用法の ‘since’ 節は上述のように,(39)の CP2として

(10)

生成される(cf. (42))。 (41) CP1

Elizabeth enjoyed ...CP2

although ... to#Elizabeth taste % ' $ & ( her (42) CP1 CP2

since#Elizabeth’s brother ... %

'

$ & ( Elizabeth enjoyed ... her

(41)において,CP2の ‘Elizabeth’ は,CP1の ‘Elizabeth’ に束縛(bind)され,自由(free) ではないので,(43b)に示した束縛理論の原理(C)によって不適格となる。一方,CP2内の ‘her’は,統率範疇内で自由であるので,(43a)の束縛理論の原理(B)によって適格となる。

(43)a.代名詞的要素(pronominal)は,その統率範疇内で自由でなければならない。 b.指示表現(R(eferential)−expression)は自由でなければならない。

(Chomsky 1981 : 188)

一方,(42)の三次元構造においては,CP2の ‘her’ は(41)の ‘her’ の場合と同様に,(43a) の原理によって適格となる。CP2の ‘Elizabeth’ は(41)の CP2の ‘Elizabeth’ と違って,先行 の ‘Elizabeth’ を含む CP1とは異次元の構造 CP2内に存在している。そして,束縛関係は二次 元構造内の要素間に適用される概念であり,それぞれが異なる次元の構造に存在する要素間に 適用されるものとして提出されている概念ではないので,(42)に関して言えば,CP1の ‘Elizabeth’と CP2の ‘Elizabeth’ の間には束縛関係は成立しないと考えられる。そのため, CP2の ‘Elizabeth’ は束縛理論の原理(C)を満たし,(12)の推論用法の ‘since’ 節内にある場 合は,適格となる。(cf.2.2節の(")) 次に,比較相関構文に見られる文法的特徴について上記の仮説に基づいて考察してみる。ま ず,比較相関構文では,2.3節の(!)で示されているように,従属節が意味的に主節に対す る条件を表す。したがって,(39)に基づいて言えば,「(39)が比較相関構文である場合, CP2(=従属節)は CP1(=主節)の条件を表す」という意味解釈が与えられる(8)。そして, 比較相関構文 C1,C2において,原則として,C1が従属節で,C2が主節である。(cf. Culicover

(11)

and Jackendoff (1999))すると,例えば(17a)の構造は次の(44)であり,(17b)の構造は 次の(45)である。

(44) CP1

CP2

the more she looked at the pictures the angrier Mary got

(45) CP1

CP2

the angrier Mary got the more she looked at the pictures

したがって,比較相関構文 C1,C2の C1と C2の順を変えると,条件を表す節が逆のものとなり, 意味の変化が生じることとなる。(cf.2.3節の(!)) 次は,「抜き出し」について考えてみる。2.3節の(")で述べられているように,標準的な 従属節からの抜き出しはできない(cf.(19))。では,比較相関構文 C1,C2の C1からの抜き出 しと C2からの抜き出しを見てみる。例えば,C2(=主節)からの抜き出しの例である(21b) は概略,(46)の構造を持ち,C1(=従属節)からの抜き出しの例である(21a)は概略, (47)の構造を持つ。 (46) CP2

the sooner you solve this problem the more easily you’ll satisfy ti

(12)

(47)

CP2

the sooner you solve ti the more easily you’ll satisfy

the folks up at corporate headquarters

This is the sort of problem whichiCP1

(46)は主節からの抜き出しであり,問題ない。一方,(47)は,従属節からの抜き出しであ るが,比較相関節の従属節は,(19)にあるような標準的な従属節と違って,主節に近い特徴 を持ち,三次元の空間に独立して存在する。それゆえ,等位構造の三次元の構造に存在する等 位節の場合(cf. (22))と同じように,抜き出しが可能であると考えられる(9) 最後に,本稿で考察している3種類の節に関して2.4節で示された特徴を本稿の仮定に基づ いて考察する。文等位接続構文の一方の等位節を疑問節にすることはできないが,離接的 ‘if ’ 節を含む文と推論用法の ‘since’ 節を含む文と比較相関構文 C1,C2は(33)と(39)からも分 かるように,等位構文ではなく,従属節を含んでいる構文である。それゆえ,主節(=CP1) を疑問節にすることができる。(cf.2.4節の(!)と("―1)) 比較相関構文の構造は(39)からも分かるように,等位構造ではないので,標準的な等位構 文と異なり,CSC の適用を受けることはない。(cf.2.4節の("―2)) 事例(29)の構造は,概略,次の(48)である。 (48) CP It is Important CP1 # % ' $ & ( I demand

the more he pay(s)

CP2

the more John eats

この構造において,動詞 ‘demand’ あるいは形容詞 ‘important’ は同じ次元にある CP1(の内 部)を支配することはできるが,それらと異なる次元にある CP2(の内部)を支配することは できないと考える。すると,その結果,仮定法を表す形態は CP1つまり主節のみに現れる。 (cf.2.4節の("―3))

例えば,‘The more we eat, the angrier you get.’ という比較相関構文は,概略,次の構造 を持つ。

(13)

(49) CP1

CP2

the more we eat

the angrier you get

この構造において,CP1(=‘the angrier you get’)が主節であり,CP2(=‘the more we eat’) は従属節である。「付加疑問形成」という操作は,上述のように,主節現象であるので,CP1 にのみ適用され,CP2には適用されない。(cf.2.4節の(!―4)と事例(30)) 比較相関構文 C1,C2は,(39)の構造が示しているように,一方の節が主節でもう一方の節 が従属節で,その従属節は上述のように,意味上,条件を表すので,「条件節―主節」という 構文と言い換えの関係にあることになる。(cf.2.4節の(!―5)) (32a)から分かるように,「命令節形成」という操作は主節現象である。(39)が示してい るように,比較相関構文 C1,C2の C2は主節であり,C1は従属節である。したがって,命令文 形成は C2のみに生じ(cf.2.4節の(!―6)の(32b)),C1には生じない。(cf.2.4節の(!― 6)の(32c)) 以上から分かるように,離接的 ‘if ’ 節を含む文と推論用法の ‘since’ 節を含む文と比較相関構 文を岩田(1998)の提案に基づいて(39)の三次元構造を持つものと分析・仮定することによ って,本稿2.1節∼2.4節に示されたこれら3種類の節の特徴をすべて説明することが可能であ る。そして,(39)の三次元構造が上述の直線化規約に従って音韻解釈をされると,直線的な 離接的 ‘if ’ 節を含む文,推論用法の ‘since’ 節を含む文,あるいは比較相関構文が生成されるこ とになる(10),(11) 4.結び 本稿では,まず,文体離接詞としての ‘if ’ 節,推論用法の ‘since’ 節,および比較相関構文の 従属節という英語の三種類の節とそれらの節を含む文の記述的特徴を観察した。その結果,そ れらの節は文のもう一方の節から音韻的にも,統語的にも,意味的にも遊離・独立しているが, 文等位接続構文を構成する標準的な等位節と比べると,もう一方の節にある程度従属している ということが分かる。次に,この記述的特徴は,三次元文法機構を仮定する生成文法理論(= 三次元文法理論)に基づけば説明できるということを論じた。その結果,三次元文法理論の記 述的妥当性を高めたことになる。 (1) 本稿の事例のいくつかについては M. W. シュタール先生にご教示いただいた。ここに記して 深く感謝の意を表したい。 (2) 比較相関構文 C1,C2において,(C1が従属節で)C2が主節である証拠は渡辺(1987)によっ て も 提 示 さ れ て い る。つ ま り,主 節 現 象 で あ る「主 語・助 動 詞 倒 置(subject-aux (iliary) inversion)」が比較相関構文に生起する場合,その現象は次例から分かるように C2に生起する。

(14)

(!) The less distinct the message was, the more beautiful is often the speech in which he proclaims it.

(3) 直説法を表す形態 ‘pays’ も可能である。(Culicover and Jackendoff 1999 : 548)

(4) 比較相関構文が伝統文法とアメリカ構造言語学において,どのように扱われていたかを高橋 (2011)が解説している。それを紹介すると以下のようになる。まず,伝統文法における Kruisinga(1931)の分析によると均衡比較(Comparative of Proportion)は,対比比較が二 つの平行する節で用いられ,同等割合で増減する二つの特性を対比させる機能を持つ(cf. (!))。

(!) The more she thought of him, the sorrier she became for him.

Jespersen(1933:225)では,比例比較構文は,程度(degree)を表すための手段として,the . . . theが互いに依存しながら,二つのものが平行して増加することを表すために使われると分 析されている(cf.("))。

(") The noisier they weren’t, the better was their mother pleased.

渡辺(1987)によると比例比較構文の後半の節は “V+S” に倒置することがある(cf.(iii))。 (#) The less distinct the speech was, the more beautiful is often the speech in which

he proclaims it.(=註(2)の(!))

次に,アメリカ構造言語学における Nida(1960)の統語分析は,従属関係(Hypotactic)と 並列関係(Paratactic)を捉え,従属関係は外心構造(Exocentric)と内心構造(Endocentric) に区分される。そして比較相関構文(例えば,The more they came, the more the people shouted.)の二つの節の関係は従属関係の外心構造としている。 以上のことからも,比較相関構文の二つの節は文等位接続構文の二つの等位節に類似しては いるが,標準的な等位節とは違って,比較相関構文の一方の節は他方の節に従属していること が推測できる。 (5) 詳細は岩田(1998)を参照。 (6) 勿論,離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文(C1,C2構文)の C1節が主節に対 して同じ程度に従属しているわけではない。しかし本稿では,その問題については立ち入らな い。

(7) Citko(2011:5.6節)は比較相関構文の統語構造として,次の対称標示(symmetric label) 構造を仮定している。

(!) {CP1,CP2}

CP1 CP2

(15)

しかし,この構造では CP2が主節で CP1が従節であるというこの構文の特徴を説明することが できない。 (8) 比較相関構文の「CP2(=従属節)は条件を表す」という意味解釈がどのように与えられる かについては,稿を改めて論考する。 (9) 等位構文が三次元構造を持つことについては岩田(1987;1998)などを参照。 (10) 情報構造的に言えば,CP1という主節が焦点を含む新情報を担うので,従属節より後位の文 末に生じる。したがって,原則として,従属節を表す CP2が先に解釈される。 (11) 離接的 ‘if ’ 節と推論用法の ‘since’ 節と比較相関構文(C1,C2構文)の C1節を含む三次元構造 が直線化規約に従って解釈規則によって直線化された結果,これらの要素を不適切な位置に持 つ連鎖が生じた場合,それらの連鎖は,語順に関する何らかの装置によって排除されると考え る。 参考文献

Chomsky, N. (1981) Lectures on Government and Binding. Dordrecht : Foris Publications. Citko, B. (2011) Symmetry in Syntax : Merge, Move, and Labels. Cambridge University Press. Culicover, P.W. and R. Jackendoff (1999) ‘The View from the Periphery : The English

Comparative Correlative.’ LI 30, no.4, 543―571.

岩田良治(1987)「等位構造の三次元性」,天理大学学報第155号,27―63.

(1989)「離接詞と非制限的関係詞節の統語的再分析」,天理大学学報第160号,41―65. (1998)『三次元文法論』,英潮社.

Jespersen, O. (1933) Essentials of English Grammar. London : Geirge Allen & Unwin.

Kruisinga, E. (1931) A Handbook of Present-Day English. Part II, Vol.2 English Accidence and Syntax 1. Groningen : P. Noordhoff.

Leech,G.N. and J. Svartvik. (1975) A Communicative Grammar of English. London : Longman. Nida, E.A. (1960) A Synopsis of English Syntax. Norman : University of Oklahoma.(太田朗(訳

注)(1970)『英語シンタクスの概要』英語教育シリーズ8,東京:大修館.)

Quirk, R., S. Greenbaum, G. Leech and J. Svartvik. (1985) A Comprehensive Grammar of the English Language. Longman.

Ross, J.R. (1967) Constraints on Variables in Syntax. Ph.D. dissertation, MIT. Reproduced by the Indiana University Linguistic Club, 1968.

高橋順一(2011)「英語比例比較構文「the+比較級 . . . (,) the+比較級 . . .」について」,北海道文教 大学論集 no.12,15―29.

参照

関連したドキュメント

‘ 備考111本稿は、 咀刊)によった。

(16) に現れている「黄色い」と「びっくりした」の 2 つの繰り返しは, 2.1

節の構造を取ると主張している。 ( 14b )は T-ing 構文、 ( 14e )は TP 構文である が、 T-en 構文の例はあがっていない。 ( 14a

音節の外側に解放されることがない】)。ところがこ

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

著  節節節節節  節節節節  注射試験 非分離温州於ケル拘攣 實験方法 丈 献

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研