Resonating Valence Bondとスピン波(物性研究小解説)

全文

(1)

Title

Resonating Valence Bondとスピン波(物性研究小解説)

Author(s)

小口, 武彦

Citation

物性研究 (1985), 44(2): 323-326

Issue Date

1985-05-20

URL

http://hdl.handle.net/2433/91579

Right

Type

Departmental Bulletin Paper

Textversion

publisher

(2)

物性研究

小 解 説

Resonating ValenceBond

とス ピン波

東京工大 ・理 小 口 武 彦 反 強磁性体 のHeisenbergモデルの基底状態 は古 くか ら研究 され てきた。 そ の代表的 な方法 の一 つ はス ピン波理絵 で あるので, まず,その概 略 を述 べ よ う。 結 晶格子 が2つの部分格子 に分 け られ るFrustrationがない場合 を考 えよ う。 ス ピンの大 き さはS, ス ピンゐ総数 はN,最隣接格子点 の数 をZ,交換相互作用の係数 を

2l

J

rとする.最初 にス ピンを古典的 に扱 ってみ る。 この ときの基底状態 中では,

2

つの部分格子点 のス ピンのZ 成 分がそれ ぞれ S,一一Sである。 これ をN6el状態 と呼ぶ ことにす るO・その基底状 態のエ ネルギ

ーEgはEg(N占el

)

ニーNZJJJs2であるoN占el状態 ではス ピンの tT,y成 分 の寄 与 は ないo こ

れ に対 しス ピン波理論 では,N6el状 態 を基 とし,ス ピンのx,y成 分 を考 慮 す る。調 和近似 の ス ピン波理論の結果 ではハ ミル トニア ンは N --NZ冊 (

S

・ 1)

+

; ek(a*kak

・!)

+

;ek

(

鵜 弓 )

(1) となる。ak,bk(

a

,

堤 )は2つ のモー ドに属 す る波数kをもっス ピン波 の消滅 (生成 )ボー ズ演算子 であ り,ekは波数kのス ピン波のエネルギーである。 1/2の項 は調和振動子 の零点 エ ネルギーに相 当す るものである。 (1)の第 1項 を分析 してみ る と,最隣接 の 2個 のス ピンのベ ク トル合成 が 0で ある ときのエネル ギー-2IJIs(S+ 1)に pairの総数ZN/2を掛けたものに なってい る。 しか し,すべ ての pairを構 成 す るス ピンのベ ク ト/レ合成 を 0にす ることは不可 能 であるか ら,第1項 は低 くな り過 ぎてい る。第 2,第 3項 の零点 エネル ギーがその一部 をキ ャンセル して Egを多少持 ち上 げ ては い るが, この補正 はそ う大 き くないので,一般 にス ピン 波理論 によるEgQまか な り低 い値 が得 られ るo とくにス ピン波の近似 を進 めると,例 えば1次 元の場合 は厳密解 よ り低 い値 になって しま う。 さ らに, ス ピン波理論 はN6ei状 態 とい う秩序 状態 を出発点 としているか ら,1次元格子 のよ うに明か に秩序 がない場合 は,その基礎 があや しくな る。

1973年 にAndersonl)はResonatingValenceBond(RVB)の考えを反強撒 性体のHeis en-bergモデルに適用 した。RVBは金属 中の電子 についてPaulingが以前 に提案 した もので ある。

RVB状態 はS

-1

/

2

,格子 は三角格子や面心立方格子 の よ うに frustrationを持 っ 場合 が適

(3)

-小 口武彦

している. こ うい う場合 はAndersonによると隣接格子点上 のス ピンは2個づっ対にお って,

singletの関数 (i,I)≡ (α

i

J

g

j-

Piα

j)

/

Jす を作 るO ここにa石,PiQまi番 目の格子点 のス ピ ン関数 を表 わす o Lか.も, このsingletは (i

,j)

に固定 されず に,その近 くの (k,i)k移動 して もよい とい う考 えで ある。Andersonは第2論文 でFaz。kasと共著2)でRVBの具 体 的 な 計算 を してい るが,卒直 に言 って私 は この第2論文 は満足すべ き結果 とは思 えない。以下 に私 の考え と計算 結果 を述 べたい。

S

-1/2の三角格子 で第 1図はその4個 のス ピン波で ある。ス ピンを古典的 に考 えて,S言- Sz2-1/2,SIS-Sz4 --1/2の とき,4ス ピン系のエネルギーはE--0.5刷 である。 しか し, 三角格子 を3個の部分格子 に分 け,それ ;i S.

鋼 ∼

:

.

∫ナ (孔 J tb) 第 1図 ぞれのス ピンの向 きを00,120O,2400に したいわゆる1200構 造では,Frustr,ationが緩和されて E-ll.25JJlとなる。つ ぎに, ス ピンを量子力学 で扱 う。第 1図(a),(b)で2重線 はsinglet を意味す るO この ときは(a),(b)図は ともに E--3lJlとな り非常 に低 くなる. これ は古 典 的 のス ピンpairは単 に1成 分 が反平行 になっているのに対 し,singlet状態 はス ピンの3成分 がすべ て反平行にな っているためである。 とに角 singletが如何 に有効 エネル ギー を下げ るこ とがで きるかがわか る。 さ らに,(a),(bJを同 じ重 みで1次結合 をとった(1,2)(3,4)十 (1,3) (2,4)とい う状 態 は,この 4ス ピン系の正 しい固有関数になっていて,その固有値はE±-3.5IJJ である。 この状態 はsingletsが固定 され ずに(a),(b)図の間 で resonateしていると考 えて も よいので, これ がRVBで ある といえよ う。

1

ヱ十

1ケ

L

Z♂ 広喜7∠

/

3T/3

T

I3

T

t

8

7

(占J

l

?

)

第 2図 第2図ではス ピンが6個 で,singletsは3個作れ る。その配列方法は (a),(b),(C)の3通 り ある。、古典的 な1200構造 で はE- - 2.25lJIである。それ に対 し(a),(b),(C)の各 々単独 で はE--4.5lJIである。前 と同様 に(a),(b),(C)を等 しい重 みで加 えたRVB状 態 で はE --5.318lJlであ る。厳密解 はE

-

-5.417lJlであ るか らRVBにお ける誤差 は1.8%Oである. 波動関数 については厳密 なものは -3

(4)

24-¢rig。,。us-

(0

461

(PααPPα)+

0

271[

(PαPααP)+ (αPPαPα)]

+0.

21

0[

(αPαα

PP)+(

αα

P

P

aP)

]+

0

.

1

3

2

[(αPPPαα) + (ββαααβ)]+

0

.

11

8

(αβαβαβ)+

0

.

058

(βββααα) 十

0

.

02

0

(ββαβαα)I- (α←βの交換 ‡ (2) ただ し, ス ピン関数 はス ピン

1

,2

,-

,6

番 の順 に並べ てある。一方

,RVB

の波動関数 を規格化 して整理す る と ¢ RVB

-(0

4

52

(PααA♂a)+

0・

302

[(PαPααP)+ (αA♂aPa)] +

0

.

1

51

[(αPααPP)十(ααPPαP)+ (α

PP

Paα)+ (A♂αααP) + (αpαpαP)]I- (α

Pの交換 ) (3) となるか ら

(

3)

(

2)

と比較す る と

,RVB

の波動 関数 の構 造 は厳密な もの と殆ん ど同 じであ り, しか も, その数値 も極 めて よい近似 になっている ことがわか る。第2図 に さらに三角形 を横 に 2つ着 けた 8ス ピンの場合 は,厳密 な値 E

-

-7.363IJlに対 し,singletsを4個 もつ 5組の配 列 か ら作 った

RVB

状態 では

E

--

7

.

1

53

lJlであるか ら(この計算 は大学院生 , 田口善弘君に よる ),誤差 は2.9%である。 以上 の例 か ら類推 して,一般 にsingletsをで きるだけ沢 山作 り,それ らの配列 を等 しい重 み で加 えた

RVB

状 態 は,近 似 的 にはかな りよ心、基底状態 を表 わ しているもの と思 われ る。 もち ろん係数 をすべ て等 しくせず に,変分パ ラメー タに した り, またはsingletsの全体的 な配置か ら係数 を決 め るよ うな精密化 をすれば,結果 は一層改善 され るで あろ う。 以上 のように

RVB

状態 ではsingletsが固定 され ていないので movablespin singlet smo-delといった方が適 当か もしれ ない。ス ピン波理論の基底状 態 は固定 しているので, もしそれ をspin solidとい うな ら

,RVB

状態 は spin liquidといえ るで あろ う。 それでは

S-1

/2

,三角格子 の反強赦性体 Heisenbergモデルの基底状態 はス ピン波理論 に よる

1

2

00

構造 か ら作 った もので あるのか, あるいは

RVB

状態で あるのか, とい う質 問が出 る であろ う。上 に述 べ たよ うに, ス ピン波理論 はエネルギー の上 限 を与 えてい るわけではないの で,単 にエネルギー を比べ るだけでは正確 な判定 はで きない。む しろ波動 関数 が大切であろ う。 ス ピン波理論 では

3

部分格子 の痕跡 が残 るのに対 し

,RVB

状 態で はそれが ない。この間題 では 理論 と実験 の両面か ら研究 す るのがよい と思 う。理論面で は厳密解 に少 しで も近づ くため, 目 下,西森秀 稔氏 と共 同で研究 を遂行 中で ある。 紙面 の都合 でそれ らにつ いては割愛す る。

-3

2

(5)

5-小 口武彦 参 考 文 献

1) P.W.Anderson

,

Mate

r

.Res.Bull.8(1973)153.(PergamonPress) 2) P.FazekasandP.W.Anderson,Phil.Mag.30(1974)423.

Updating...

参照

Updating...

関連した話題 :